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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2012/6/1  主要石油化学製品生産能力調査 (2011/12/末) 

経済産業省は5月25日、2011年末時点の我が国の主要石油化学製品生産能力調査の結果を発表した。

PP、SM、VCM、PVCの能力が減少している。 ベンゼンとトルエンの能力にも変動がある。

(単位:千トン)

  2010/12 2011/12 増減
エチレン 定修年 7,216 7,210      -6
定修スキップ年 8,003 8,000 -3
LDPE 合計 2,322 2,310 -12
(うちLLDPE) (1,034) (1,046) (12)
HDPE 1,335 1,322 -13
PP 3,329 3,070 -259
EO 907 907 0
SM 3,278 2,907 -371
PS 906 861 -45
VCM 3,515 2,574 -941
PVC 2,115 2,005 -110
アセトアルデヒド 289 289 0
アクリロニトリル 726 723 -3
合成ゴム SBR 594 605 11
BR 269 269 0
IR 78 78 0
MMAモノマー 547 547 0
BTX ベンゼン 6,713 6,567 -146
トルエン 2,318 2,318 0
キシレン 7,808 8,057 249
パラキシレン 3,935 4,019 84

1.エチレン 

定修スキップ年ベースで8,000千トンで前年とほぼ同じ。

2011年の生産は6689千トン、エチレン換算内需量では5,205千トンのため、大幅過剰能力となっている。

2011年4月に 旭化成ケミカルズが100%子会社の山陽石化を合併した。

付記

三菱化学は6月11日、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革を発表した。

鹿島第1エチレンプラント390千トン(非定修年)、第1ベンゼンプラント90千トンを2014年の定期修理時に停止。
第2エチレンを490千トンから540千トンに増やす。

2.ポリエチレン 前年末と変わらず

付記  日本ポリエチレンは6月29日、川崎のHDPE1系列を2014年4月に停止すると発表した。

工場 川崎市川崎区(千鳥地区)  
    旧 東燃化学
設備 HDPE 第二系列(スラリー法)
能力 5.2万トン/年

3.PP  前年末比 259千トン減

・プライムポリマー(三井化学)が100%子会社の宇部ポリプロ90千トンを2011年3月に停止

・日本ポリプロは2009年に鹿島に300千トンプラントを新設した。
 今回、三菱化学鹿島の90千トンを2011年5月に、チッソ千葉の79千トンを6月に停止
 (131千トンの純増)

付記

プライムポリマーは6月20日、市原のPPプラント1系列90千トンを2013年6月に停止すると発表。
(三井化学2系列合計223千トンのうちの1系列)

付記

日本ポリプロは6月29日、川崎の1系列を2014年4月に停止すると発表した。

工場 川崎市川崎区(千鳥地区)  
    旧 東燃化学
設備 PP 第3系列(バルクー気相法)
能力 8.9万トン/年  旧東燃化学のプラントはゼロとなる。

 

4.EO  前年末と同じ

5.SM   371千トン減

三菱化学鹿島が2011年3月に停止(371千トン)

・新日鉄化学がSM事業をNSスチレンモノマー(新日鉄化学51%/昭電49%)に移管

6.PS  45千トン減

  日本ポリスチレンが2009年に解散し、PSジャパン、東洋スチレン、DICの3社体制となっている。
  PSジャパンから三菱化学が離脱した。

    2011年の国内出荷は649千トン、輸出は22千トン。

・PSジャパン 四日市の85千トンを停止 (三菱化学の離脱、工場停止
・DIC 四日市が40千トン増

DICのPS増設については発表はない。
今の時点でPSの増設は考え難く、同じ四日市ということから、三菱化学の設備を一部購入した可能性がある。
(下記のPVCでは廃業したヴイテックの設備を東亜合成が購入し、カネカからの受託用に使っている)

7.VCM 941千トンの大幅減

・ヴイテック水島 391千トンが2011年3月に停止

東ソー南陽で2011年11月に第二VCMプラント(年産能力55万トン)が爆発、大破

なお、2011年12月に鹿島電解および鹿島塩ビモノマーの運営変更の発表があった。
旭硝子、ADEKA、カネカの3社が、鹿島電解及び鹿島塩ビモノマー両社への出資を引き揚げる。

8.PVC 110千トン減

   能力は2005千トンとなった。
   但し、2011年の国内出荷は1039千トン、輸出427千トン、合計1467千トンで、依然大幅な過剰能力。

・ヴイテック停止 200千トン(川崎 121、四日市 79千トン)

・上記の川崎を東亜合成が引き継ぎ(120千トン)
  カネカから製造受託

・カネカ鹿島、特殊塩ビシフトで一般塩ビの能力 34千トン減
 カネカは東亜合成への委託で、実質能力増。

9.アセトアルデヒド

昭和電工、2010年に徳山のアセトアルデヒド(140千トン)と酢酸エチル(150千トン)を停止

日本アルデハイド:2010年10月 住友化学が吸収合併

協和発酵ケミカル:2012年4月にKHネオケムと改称

 10.アクリロニトリル

11.合成ゴム

12.MMAモノマー

13.BTX  詳細 添付

     ベンゼン -146千トン(三菱化学 -179千トン 鹿島のSM停止に合わせて停止)
     トルエン    0
     キシレン +249千トン(コスモ石油・四日市新設 300千トン、東亜石油・扇町停止 -200千トン)

14.パラキシレン

ジャパンエナジー & 三菱化学 (いずれも自社工場停止)

   鹿島石油:ジャパンエナジー 70.675%、三菱化学 19.875%、東京電力、日本郵船
   鹿島アロマティックス(鹿島石油が製造受託):ジャパンエナジー 80%、三菱化学 10%、三菱商事 10%

JX日鉱日石エナジー:

大分パラキシレン
(新日本石油/九州石油)
新日本石油精製 JX日鉱日石
エナジー
新日本石油化学
新日本石油精製

水島パラキシレン:JX日鉱日石エナジー 51%、三菱ガス化学 49%(当初  100%)


2012/6/1 国際石油開発帝石、イラクの第4次公開入札で落札 

5月30-31日にイラクで第4次公開入札が行われ、国際石油開発帝石(Inpex)がロシア大手石油会社OAO Lukoil と共同でブロック10を落札した。
過去の3回の入札は既発見のものだが、今回は新しく開発する地域のもの。

過去の入札は以下の通り。

2009/11/12  イラク、第一次油田開放で進展

2009/12/14  イラクの石油第二次入札で石油資源開発が落札

2010/10/26  イラクでの天然ガス田開発、韓国連合が2ガス田を落札

日本勢では第二次入札で、石油資源開(Japex)がマレーシアのPetronasと組んで、イラク南部のGharaf油田を落札している。

今回の入札は、石油5鉱区、ガス7鉱区の合計12鉱区で行われ、25か国47社が参加した。
これまでと同様、
権益は与えず、生産量に応じ報酬を得るもの。

このうち、下記の3鉱区のみが落札した。

イラク石油相は、更に60ブロック以上の入札を予定しており、第5次入札も実施するとしている。

  鉱区   報酬  
Inpex 40%
Lukoil 60%
Block 10  $5.99  
Pakistan Petroleum Block 8 ガス $5.38 Japex/Itochu(80/20)は$10.57で敗退
Kuwait Energy 40%
Dragon Oil 30%
Turkiye Petrolleri 30%
Block 9 $6.24  

Block 12ではPremier Oil が PetroVietnam、Bashneft (Russia) と組んで入札したが、報酬が政府の限度 $5に対し、$9.85で提案、政府側の引き下げ要求を拒否し、不成立となった。

 

 

国際石油開発帝石は、ロシア大手石油会社OAO Lukoil の子会社 Lukoil Overseasとともに、第4次公開入札に共同で参加し、ブロック10鉱区を落札した。今後イラク政府当局との間で本鉱区に係る石油契約の締結について協議を進める。

本鉱区はバスラ市から西125kmに位置する陸上鉱区で、鉱区総面積は5,500km2。
同鉱区の東方にはルメイラ油田やウェスト・クルナ油田など世界有数の油田があり、また北方には
石油資源開Petronasと組んで開発するガラフ油田などがある有望なエリア。

5年間で総額1億4000万ドルを投資する。

 60%の権益を保有するLukoil Overseasは、ウェスト・クルナ油田ブロック2(同油田の北の部分)の開発・生産事業をオペレーターとして手掛けており、 今回もオペレーターとなる。

国際石油開発帝石はイラクにおいて石油・天然ガス開発事業に初めて参画する。


2012/6/2 東洋紡の海水淡水化用逆浸透膜、サウジの世界最大級の海水淡水化計画が採用

東洋紡績は5月24日、サウジアラビアの世界最大級の海水淡水化設備 Ras Al Khair Power and Desalination Plant Phase 1 に、同社の海水淡水化用逆浸透膜エレメント「ホロセップ® (Hollosep)」の採用が決定したと発表した。

東洋紡績は2012年10月1日に「東洋紡」と改称する予定。

海水淡水化用逆浸透膜エレメントは海水を淡水にろ過する中空糸で構成される基幹部材で、圧力容器の中にエレメントを充填し、海水淡水化プラントのモジュールとなる。
エレメントには、微生物の増殖を防ぐために使用される塩素殺菌に優れた耐久性を持つ三酢酸セルロース製の中空糸膜が使用されている。

この計画は、サウジの海水淡水化公団 (Saline Water Conversion Corporation:SWCC)  が Jubail市から100kmのRas Al Khairに計画しているもので、日量約100万トン (350万人分)の飲用水を製造、複合サイクル発電設備で2660 MWの発電を行うもの。

Ras Al Khair市は旧称 Ras Al Zawr市。
サウジは同国で産出されるリンとボーキサイトを活用するため、ここにMineral Industrial Cityを建設する。

リン酸2アンモン(DAP)、アルミナ 、アルミ精錬、アンモニア、リン酸、硫酸などのプラントを建設するが、電気と水はこれらのプラントに供給される。

アルミ計画はSaudi Arabian Mining Company (MA'ADEN) とAlcoa が担当する。

海水淡水化部分については2010年9月に 韓国のプラントエンジニアリング会社の斗山重工業 (Doosan Heavy Industries & Construction)が14.6億ドルで受注した。
2014年に運転開始の予定。

日量約100万トンのうち、逆浸透膜法が34.5万トン、蒸発法が72.8万トン(1基 9.1万トンx 8基)で、逆浸透膜法の海水淡水化設備にホロセップが使われる。

斗山重工業の蒸発器は1基で日量 91千トン(30万人分)の飲用水を造る世界最大のもので、大きさでも123m x 33.7m、重量 4,150トンと世界最大。
これまでの最大は、同社がAbu Dhabiの
Shuweihat 2期で建設中の76千トン。

 

東洋紡では今後も大型案件の受注が見込めるため、岩国機能膜工場の生産能力を3割以上増強する設備投資を行う。

同社は中東での海水淡水化事業の拡大のため、下記により海水淡水化事業の優位性をさらに高めるとしている。

@サウジアラビアでの「ホロセップ」の生産開始

東洋紡は2010年3月、サウジアラビアのArabian Company for Water & Power Development (APD)、伊藤忠と合弁で、サウジアラビアに海水淡水化用逆浸透膜エレメントの製造・販売会社を設立した。

社名 Arabian Japanese Membrane Company, LLC
設立 2010年3月
出資比率 APD 49%、東洋紡 36.1%、伊藤忠 14.9%
所在地 本社・工場:ラービグ市(Rabigh Plus Tech Park内)
事業内容 海水淡水化用逆浸透膜エレメントの製造・販売

APDはサウジにおける主要なIWPP(独立系水・電力事業)案件に出資するなど、同国のインフラ事業における有力企業として事業を展開している。
伊藤忠は1970年代から中東地域において多数の海水淡水化プラントの納入実績を持っている。

本年5月22日に竣工式を挙行、海水淡水化用逆浸透膜エレメント「ホロセップ」の生産を開始した。

今後、サウジアラビアのみならず、その他の中東、北アフリカ諸国にも海水淡水化用逆浸透膜エレメントを広く販売していく予定。

Aサウジアラビアの大学機関との共同研究

中東地域に即した海水淡水化技術を開発することを目的として、アブドラ国王科学技術大学(King Abdullah University of Science and Technology)とで共同研究を行うことで合意、5月23日に調印式を行った。


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