ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2013/2/18  東燃ゼネラル石油、エネルギー供給構造高度化法への対応策を発表  

経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定めた。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

各社とも順次、設備処理案を発表してきた。

2012/11/6  JX日鉱日石エネルギー、室蘭製油所の原油処理を停止 

これまで削減計画が未達なのは大手ではコスモ石油と東燃ゼネラル石油であった。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 改善達成
のための
トッパー
能力
(万bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(万bbl/d)
トッパー能力
削減計画発表
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
コスモ石油

 

千葉 24.0           2013/7
坂出製油所
閉鎖
 
14万バレル
 
四日市 15.5          
10.0   31.3        
坂出 14.0          
合計 63.5 2.5 3.9 45 5.66 43.8 19.7
東燃ゼネラル石油

 

川崎 33.5   8.4          
15.6          
和歌山 17.0          
合計 66.1 2.8 4.2 45 6.09 45.6 20.5

コスモは坂出閉鎖を決めたが、まだ5.7万トンが未達で、2013年度中に追加の一部設備の廃棄か分解装置の増強を検討し基準を満たす方針とされる。

東燃ゼネラルの場合、堺も和歌山も存在意義があり、仮にどちらかを止めても、まだ不足する。和歌山県知事は影響が大きいとして和歌山工場廃止に反対した。

ーーー

2012年7月、ExxonMobilは東燃ゼネラル持株の一部を売却し、持株比率を22%に落とした。
本年1月には
東燃化学とDow子会社Union Carbide (UCC) との50/50JVである日本ユニカーのUCCの全持株を取得することで合意したと発表した。
    2013/2/6     Dow、日本ユニカー持株を売却

2012年6月以前
2012年7月以降(日本ユニカー100%化は2013年第3四半期)

東燃ゼネラルは2013年2月15日、新体制下での中期経営計画を発表したが、このなかで、エネルギー供給構造高度化法への対応策を公表した。

3工場体制は維持し、川崎と和歌山の小規模トッパー各1基を廃棄するとともに、川崎の残油水素化分解装置を増強することにより対応する。

付記  分解能力は増強後が34.5千バレルになる。表を修正した。(2014/7)

製油所 トッパー
処理能力
(千bbl/d)
重質油分解装置 改善達成
のための
トッパー
能力
(千bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(千bbl/d)

対応策

分解能力
(千bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
トッパー
能力
(千bbl/d)
分解能力
(千bbl/d)
川崎 3基  335 28 8.4         1基 -67 +6.5
1基  156              
和歌山 2期  170           1基 -38  
合計 6基  661 28 4.2 45 6.09 456 205    
対策 2基 -105 +6.5         -105 +6.5
対策後 4基  556 34.5     6.20        

トッパー能力削減は105千トンで、現状重質油分解能力での義務量の205千トンの半分程度だが、残油水素化分解能力増により、重質油分解装置率を目標の6.09%から11.24%に引き上げる。

トッパー能力削減は計算上の義務量を下回り、経産省と業界の「狙い」は未達となるが、経産省告知ではあくまで「重質油分解装備率の45%以上の改善」であり、これを満足する。
 


2013/2/19 ロシアとウクライナ、天然ガス で再び抗争

ロシアとウクライナが天然ガスを巡り、再び争っている。

ウクライナはロシアとの間で、ロシアの天然ガスの価格を巡り、長期にわたり争い、EUにも影響が出た。
2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

本年に入り、ロシアのGazprom はウクライナのNaftogaz に対し、70億ドルの請求を行った。
2009年の売買契約での"Take or Pay" 条項に基づくとしている。

ウクライナは2012年にロシアから329億m3のガスを購入した。
2009年の契約では購入義務量は毎年 520億m3で、20%の引き下げは可能となっており、420億m3が"Take or Pay" 義務量となっている。
Gazpromはこの不足量に対し請求を行った。

Gazpromの欧州とウクライナへの輸出は減っており、2012年の損益は前年比15%減となった。

これに対しNaftgasは、以前から2009年の契約が価格その他の条項がアンフェアだとして再交渉を要求している。

Naftgasは、本四半期の価格1000m3当たり430ドルという「法外な価格」であるとする。

これまで数度にわたり2012年の購入量を下げると通知しており、支払うべき金額は支払い済みであり、支払いの根拠がないとしてGazpromの要求を拒否した。

一方でウクライナは、国内でのシェールガス開発を進めるとともに、欧州から安いガスを大量に購入し、ロシアからの輸入を更に引き下げることを狙っている。

ウクライナ政府とShellは1月24日、ウクライナでのシェールガス開発に関する契約を締結した。
  
2013/1/29 Shell、シェールガス開発でウクライナと正式契約 

西部のLvivとIvano-Frankivsk地区のOlesskaシェールガス田の開発権を得ているChevronとの間でも正式契約に向け動いている。

別途、2012年8月に黒海沖合の天然ガス開発で、ExxonMobilが中心となり、Shell、ルーマニアのOMV、ウクライナのNadra Ukrainyが参加するコンソーシアムが落札したが、本年中に正式契約することを予定している。

ウクライナは供給先の多様化を狙い、スロバキアとハンガリーのガスの輸入交渉を行っている。
昨年11月には、Gazpromより安い価格でドイツのRWEからガス輸入を開始した。
また、トルコからブルガリア、ルーマニア経由でLNGを輸入することを検討している。

但し、欧州各国側は、Gazpromからのガス輸入契約に再販禁止条項があるため、問題となることを恐れ、ウクライナへのガス供給に積極的ではない。

ウクライナ大統領は、今回の70億ドルの請求問題で何度もEUに書簡を送ったが、なんら支援の表明がないと不満を表している。

また、需給状況にもよるが、欧州からのガスは必ずしも安くはない。

ウクライナの姿勢は価格面でロシアから譲歩を引き出す戦術とも見られるが、これに対しロシア側は、値引きの条件として、ウクライナが関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟)に参加するか、欧州に通じるパイプラインの経営権を渡すことを挙げている。

 

ウクライナはEUへの参加を希望しているが、EU側は現政権が野党指導者のユーリア・ティモシェンコ前首相を刑事起訴・拘束したことを問題視し、進展していない。


2013/2/20 中国、パキスタンのグワダル港の運営権を取得 

パキスタン政府は1月30日、パキスタン南西部のGwadar港の港湾管理権をシンガポールのThe Port of Singapore Authority (PSA)から中国のChina Overseas Port Holding Companyに移譲することを閣議決定した。

この調印式が2月18日、イスラマバードの大統領府で駐パキスタン中国大使らが出席して行われた。

Gwadar港は南アジアと中東を結ぶインド洋の戦略的要衝で、中国は中東やアフリカから石油を運ぶための拠点を確保したことになる。
今後、原油貯蔵設備や製油所を建設するとされる。

なお、以前からGwadar港からパイプラインでカラコルム・ハイウェイを通って新疆ウイグル自治区の喀什市(カシュガル、Kashgar)まで結ぶKashgar Corridor構想があり、これが実現すると、中東の原油を喀什から国内のパイプライン網を通じて中国各地に送ることが出来る。

インドは中国の軍港化を懸念しているが、パキスタン外務省は 「懸念するいかなる理由もない」としている。

パキスタンは中国に対して、グワダル港に海軍基地を建設し、中国海軍を駐留させるよう求めたとされるが、中国政府は同提案を検討しなかったと表明した。

このGwadarは面白い歴史をもつ。

1783年に対岸のオマーンの宮廷で内紛が発生し、Saiadという王族が追放された。当時パキスタンを支配していたカラート藩王国のハーンがSaiadにGwadarを与えた。

その後、1797年にSaiadがオマーンの国王に即位したため、Gwadarはオマーンの飛び地となった。
1958年にオマーンがGwadarをパキスタンに売却、飛び地は解消した。
 

Gwadar港は石油の豊富な中東、資源の豊富な中央アジア諸国、人口の多い南アジアの各地域の十字路として戦略的に重要な場所にある。
大規模積み替え港として、また内陸の中央アジア諸国、アフガニスタン、中国西部のための海上輸送のハブを目指し、2002年に建設を開始し、2007年に開港した。

港の建設は中国が行い、当初の建設費の80%の248百万ドルを中国が低金利融資している。

港の管理権(40年間)は経験豊富なシンガポールのPSAが取得した

港を管理する会社には、PSAが60%出資、残りをパキスタンの金融会社Aqeel Kareem Dedhi Group とパキスタンの物流会社National Logistic Cellが20%ずつ出資している。

しかし、港はまだ完全には機能しておらず、追加の投資が必要だが、PSAは契約上の義務の履行が困難として、中国に譲渡することを決めた。(撤退の場合は多額の違約金の支払いが必要となる。)

ーーー

中国は原油の安定的確保のため、いろいろの手を打っている。

現在、マラッカ海峡を通らずに、ベンガル湾からミャンマー領土を横断して昆明に抜ける石油と天然ガスのパイプラインを建設している。

 

 

 

 

 

 

ミャンマー西部のベンガル湾に面したチャウピュー近郊のマデ島にガス集荷基地と石油タンカー専用港を建設し、沖合いで出る天然ガスと、マデ島で陸揚げした原油をマデ島 から国境の雲南省端麗を経由して昆明に送り、精製する。

事業主体となる企業には、中国石油天然気集団(CNPC)が50.9%を出資。ミャンマー側は国営石油ガス企業(MOGE)などが49.1%を保有する。総事業費は石油パイプラインが15億ドル、天然ガスは10億4935万ドル。

2009年10月31日、マデ島で着工式が行われた。


2013/2/21 中国政府、蓬莱油田の再開を認可 

2011年6月、ConocoPhillipsと中国海洋石油(CNOOC)が共同で開発している渤海湾の海底油田のPenglai (蓬莱) 19-3で原油流出が見付かり、7月10日には新たに油の流出が確認されたため、監督機関の国家海洋局は7月13日にConocoPhillipsに対し、Platform BとPlatform C(生産量は蓬莱油田の3分の1相当)の稼働停止を命じた。

ConocoPhillipsは期限として決められた8月31日に、原油流出が止まったと発表したが、国家海洋局は流出は完全に止まっていないと判断し、9月2日にPenglai (蓬莱) 19-3 全体の生産停止を命じ、ConocoPhillipsはこの命令に従った。

同油田はConocoPhillipsが権益49%を保有してオペレーターを務めており、残り51%はCNOOCが保有している。

2011/8/17  渤海湾の原油流出事故

国家海洋局は2013年2月16日、同油田が一連の改修工事を終え、正常操業再開の条件を満たしたと発表、操業再開を認可した。
当初は停止は6か月程度と見られていたが、17か月に及んだ。

原油漏洩によりシンガポールの9倍の広さの6,200km2の海が汚染され、遼寧省と河北省の観光と水産業に大きな被害を与えた。

ConocoPhillips に対しては、将来の漏洩を防止するため関連基準を守り、対策を取るよう命じ、CNOOCに対してはこれを支援するよう命じた。
国家海洋局は今後も同油田と周辺海域の監視を続けるとしている。

2012年4月に国家海洋局は、両社が汚染被害への補償と渤海湾の環境保護基金に合計で270百万ドルを支払うと発表した。

なお、 中国の法律では原油漏れの罰金は最高で20万元(3万ドル強)となっている。


2013/2/22  New York市長、発泡ポリスチレン容器禁止を提案 

市長としての最終年を迎えたNew York のMichael R. Bloomberg 市長は2月14日、2013年の市政教書演説(2013 State of the City address)を行った。市長はこのなかで、発泡ポリスチレンの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定すると述べた。

先ず、過去の実績を振り返り、New Yorkは911の悲劇から立ち直り、5つの区は全て以前より良くなり、NYは過去のいつよりも強くなったと述べた。

昨年の殺人事件は最低の419件に止まった。
観光客は最大の52百万人。
平均余命は80.9歳に上昇。
生徒10万人分の学校建設
320万人の私企業での雇用・・・・・

しかし仕事は完成しておらず、現在のプロジェクトを推し進め、新しいプロジェクトをスタートさせる必要があるとし、取り組むべき事項を列挙した。

環境問題に関しては、二酸化炭素排出量をたった5年で16%減らしたが、次の10年で30%減らすとし、更に新しい目標として、2017年までにリサイクル比率を倍増し30%にすると述べた。

具体的な計画は以下の通り。

・通りに1000個のリサイクルコンテナーを置き、リサイクルを容易にする。

・プラスティックをもっとリサイクルできるようにする。
 開発中のBrooklynの
Sunset Park WaterfrontにSIMSという私企業が北米最大の家庭用リサイクル工場を建設する。
  全ての種類のプラスチック廃棄物を受け入れる。
         子供にリサイクルを教える教育センターを備える。
  New York市で最大級の太陽光発電で運転

・New York市の最後のリサイクルのフロンティアの食品廃棄物の処理。
 New Yorkは毎年120万トンの食品廃棄物を埋め立て、トン当たり80ドルをかけている。
 これをもっと安いコストで、肥料にしたり、エネルギーに変換する。
 
本年春にStaten Islandで堆肥化の試行を行い、成功すれば全市に展開する。
 全市で学校の食品廃棄物リサイクルを行う。教育にもなる。

・問題はStyrofoamで、リサイクルがほとんどできず、生分解もしない。
  環境にとって恐ろしいものだが、納税者にとっても恐ろしい。
  取り除くことが必要なため、リサイクル費用がトン当たり20ドルも増える。
  これらは他のもので代替可能で、無しで済まされる。

 このため、Styrofoamの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定するよう市議会と協力する。

New York市によると、発砲ポリスチレンの廃棄物は年間で2万トンに達するという。

ーーー

市長は発泡ポリスチレンのことをStyrofoamと述べているが、これはDow Chemical の商標。
Dowでは同社の製品はコップや食品トレイや包装ではなく、断熱材として使用されていると反論した。

発泡ポリスチレン禁止は既にLos Angeles、Portland, Ore、San Francisco、Seattleなどで行われている。

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本ブログは2006年2月15日に始まりました。

2006/2/15 プラスチック100周年

7年経ちましたが、本日が2500回目となります。


2013/2/23 住友金属鉱山、旧四阪島製錬所の大煙突を解体 

住友金属鉱山は2月15日、瀬戸内海の四阪島(愛媛県今治市宮窪町)にある旧四阪島製錬所の大煙突(直径10.5メートル、高さ64.2メートル)が老朽化して倒壊のおそれがある ため、4月中旬から半年かけて解体すると発表した。

元禄4(1691)年に開かれた住友家の別子銅山は、明治に入り、機械設備の導入、索道、鉄道の敷設などによって出鉱量の拡大が図られ、これに対応する製錬能力を確保するため、別子山中にあった製錬所は新居浜の沿岸部に移設された。

1883年に惣開に洋式製錬所(新居浜製錬所)が建設され、翌年からの試験操業を経て1893年から本格的な生産が始まった。
別途、1888年に山根湿式製錬所が完成、亜硫酸ガスから硫酸を回収したが、排煙により周辺の農作物に被害が出はじめ、1895年に廃止した。

しかし、製錬所の移転で、亜硫酸ガスが周辺地域の農作物に被害を及ぼすという、予期せぬ事態が発生した。

当時は亜硫酸ガスの回収方法が確立されておらず、技術的に解決することは極めて困難だったため、時の住友総理事伊庭貞剛は、製錬所を無人島の四阪島へ移転するという決断を下した。

一般に「四阪島」と呼称されるが、家ノ島、美濃島、明神島、鼠島、梶島の5つの島で構成される。

四阪島は新居浜から約20キロ離れた無人島で、ここに製錬所を移転すれば、亜硫酸ガスは瀬戸内海上で拡散され、煙害が発生することはないと考えた。
しかし、無人島に製錬所を作るには、港や道路、住宅をはじめとするインフラをいちから整備しなければならず、総建設費は、当時の別子銅山の2年分の純利益に相当する約170万円という、まさに社運を賭けた大事業であった。

製錬所造成時に家ノ島と美濃島は埋め立てられ陸続きとなり、家ノ島に精錬所、美濃島には社宅等が設置された。(1915年のピーク時の人口5500人)
1905年に製錬所を四阪島に移転、大煙突は1924年に完成した。

     
 

しかし、瀬戸内海上で拡散されると考えた亜硫酸ガスが風に乗って、そのまま四国本土にまで流れ、予想に反して煙害を愛媛県の東予地方全体にまで拡大させることとなり、農民達は、煙害の根絶と損害賠償を求めて激しい運動を繰り広げた。

1910年、住友は被害者農民との間で、損害賠償と亜硫酸ガス排出抑制のための操業制限に関する契約を結ぶ一方で、煙害克服に向けたさまざまな技術改良に着手した。

まず、原料中の硫黄分を減少させるため、1913年に惣開に住友肥料製造所(後に住友化学となる)を開設し、硫化鉱に含まれる硫黄から硫酸を作り、さらにこれから過燐酸石灰を製造することとした。また、煙害の除去、軽減のため、いくつもの試験研究を実施した。

これらの対策により、四阪製錬所から排出される硫黄量は、192年には1919年の半分にまで減少した。

その後もいろいろの対策を行い、1939年の中和工場の完成で煙害の被害は根絶することができ、大煙突の役割を終えた。
四阪島に製錬所が移転してから34年後のことである。

 (住友金属鉱山 「環境への取り組みの歴史」から)


 

別子銅山は1973年に閉山、283年に亘る歴史に幕を閉じた。

別子銅山の閉山、新居浜東予精錬所の操業開始により、四坂島精錬所の重要性は低下、順次合理化が図られ、1976年12月に溶鉱炉が停止した。

現在、四坂島では(株)四阪製錬所が、製錬技術を活かし、製鋼煙灰に含まれる亜鉛を回収するリサイクル事業を行っている。


2013/2/23  Moody's、英国債を格下げ 

Moody'sは2月22日、英国債の格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。

英経済には構造的な強さがかなりあるものの、世界経済の減速に加え、国内の公的・民間部門で続いている負債圧縮による英経済への影響を踏まえると、成長は低迷する見通しだと指摘した。

現在のS&PとMoody'sの各国の格付けは以下の通り。

青字2013年に変更があったもの    赤字は2014年

S&P Moody's
- ユーロ ユーロ圏外 - ユーロ ユーロ圏外
AAA ドイツ
(オランダ
↓11/29
フィンランド
ルクセンブルグ
(EU
↓12/20)
英国
カナダ
 
Aaa EU
ドイツ
オーストリア
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
米国
カナダ

英国↓2/22)
AA+ EFSF(欧州金融安定基金)
EU
(フランス↓ 11/8)
オーストリア
オランダ
米国 Aa1 EFSF(欧州金融安定基金)
ESM (欧州安定メカニズム)
フランス
英国
AA ベルギー
フランス
  Aa2 -  
AA- エストニア
 
日本
中国
Aa3 ベルギー
 
(日本 12/1)
中国
韓国
A+   韓国 A1 エストニア 日本
A スロバキア
スロベニア
A2 スロバキア
 
A- マルタ   A3 マルタ  
BBB+ イタリア↓7/9)
アイルランド
Baa1
BBB (イタリア↓12/5)   Baa2 イタリア
(スロベニア
↓4/30)
 
BBB- スペイン
イタリア
Baa3 スペイン
 投資適格     投機的格付
BB+   ハンガリー Ba1 アイルランド
スロベニア
ハンガリー
BB ポルトガル Ba2
BB-     Ba3 ポルトガル  
B+ キプロス B1
B     B2    
B- ギリシャ B3 (キプロス1/10)
CCC+ (キプロス↓3/21)
(キプロス↑ 2014/10/25)
  Caa1 ギリシャ  
CCC (キプロス↓6/28) Caa2
CCC-     Caa3 キプロス
(ギリシャ
↑ 2014/8/1)
 
CC - -
SD (キプロス↑ 2013/7/3   Ca    
D     C (ギリシャ↑11/29)  
SD:Selective Default 選択的デフォルト       
D :Default デフォルト
Ca:一部デフォルト
C:デフォルト

過去の推移は  2012/2/14 Moody's、ユーロ圏6か国の国債格付けを引き下げ 

付記 2013/6/28 S&P、キプロスをSDに引き下げ

 キプロス政府は6月27日、10億ユーロ相当の既発政府債を償還期間の長い新たな政府債と交換するプログラムを導入すると発表した。S&Pは声明で「交換により実質的に当該国債の投資条件が変わり、われわれの基準上、ディストレス債の交換に相当する」と説明した。

2013/7/9 S&P イタリアを1段階引き下げ

2013/11/8 S&P フランスを1段階引き下げ

2013/11/29  S&P  オランダを1段階引き下げ 、Moodys ギリシャを引き上げ

2013/12/20  S&P  EUの長期信用格付けを1段階引き下げ


2013/2/25  大日本住友製薬、「がん幹細胞」治療薬のフェーズ3試験開始、2015年にも上市目指す  

大日本住友製薬は2月18日、第三期中期経営計画を発表した。ビジョンとして、「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」「最先端の技術で医療に貢献」を設定した。

経営目標は以下の通り。(億円)

  2012年度
 予想
2017年度
 目標
売上高  3,480 4,500
営業利益 280 800
EBITDA 630 1,100
研究開発費 592 800

大日本住友製薬は本年1月、癌幹細胞標的抗癌剤BBI608の大腸癌を対象にした単剤のフェーズ3試験を、米国・カナダで開始した。

がん幹細胞はがん細胞の供給源と考えられているが、がん幹細胞に対する抗がん剤が成功した事例はなく、通常のがん細胞を抗がん剤などでたたいても、がん幹細胞は、生き残るため、がんが再発、転移する。

BBI608と(同時に開発中の)BB1503は、癌幹細胞の自己複製を阻害し、癌幹細胞と癌細胞に細胞増殖抑制・細胞死を誘導すると考えられており、世界初のがん幹細胞に対する抗がん剤となる可能性を有している。

付記

大日本住友製薬は2013年10月9日、BBI608 の発売に向けて、米国に抗がん剤の販売会社 Boston Biomedical Pharma, Inc. を設立すると発表した。

大日本住友製薬は2012年4月、癌領域を専門とするバイオベンチャー企業で、癌幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製された低分子経口剤であるBBI608 及びBBI503 の2 つの有力な開発パイプラインを有するBoston Biomedical Inc.(BBI) の買収を完了し、完全子会社とした。

2012/3/3  大日本住友製薬、米国医薬品会社Boston Biomedical を買収

BBIの買収に伴い、大日本住友製薬は癌領域におけるグローバルな研究開発体制を構築した。

創薬研究の指揮は、BBIのCEOのChiang J. Li が行う。

米国では、BBIを2013年にボストン近郊(ケンブリッジ)に移転し、買収時点の人員30名を、新規採用や日本からの派遣も含めて、100名規模に拡張する。

日本では研究本部から独立した社長直轄の組織としてがん創薬研究所を2012年9月に新設した。総勢約50名。

当面の開発スケデュールは以下の通りで、BB1608については2015年の北米、2016年の国内の上市を、BB1503については2017年の北米及び国内上市を目標としている。

2017年度に世界で8億ドル超の売り上げを目指す。


 

ーーー

同社の研究開発戦略は、アンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域と精神神経領域を研究重点領域とし、革新的な新薬の創出に全力を注ぐ。

がん領域では、がん幹細胞の領域で世界をリードするとともに、画期的な製品の継続的創出を目指す。

精神神経領域では、治療満足度の低い症状の改善や、既存薬で充分な有効性が得られていない患者の治療に焦点を当て、統合失調症、うつ病やアルツハイマー病等の研究開発を推進する。

さらに、iPS 細胞などの最先端サイエンスを創薬に応用するとともに、細胞医薬や再生医療の取り組みを強化し、難治性疾患の治療薬の開発にも挑戦する。

大日本住友製薬は2011年4月、京都大学iPS細胞研究所との間で難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。

遺伝子の変異に起因する難治性希少疾患の一つに焦点を当て、その疾患特異的iPS細胞を用いて、産学協同して病気が進行するメカニズムを解明し、患者に特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。

 


2013/2/26 PetroChina、豪州と中国でのシェール開発などでConocoPhillipsと提携  

PetroChinaは2月20日、ConocoPhillipsから西オーストラリアの2つの権益を取得する契約と、四川盆地の内江-大足地区の非在来型資源探査の共同研究契約を締結した。

西オーストラリア

1)Browse BasinのPoseidon油田の権益の20%取得

Browse Basinには下記の3つの鉱区がある。

  油田 Operator

権益

ConocoPhillips Karoon Gas
WA-314-P   ConocoPhillips 10% 90%
WA-315-P Poseidon-1 60% 40%
WA-398-P Poseidon-2  
Kronos-1

今回、PetroChinaはPoseidon油田の権益の20%を取得した。

2)内陸のCanning BasinのGoldwyer Shaleの権益の29%を取得

権益:ConocoPhillips 75.0%
    New Standard Onshore 25.0%

2012年に試掘を開始、現在はNew Standard OnshoreがOperator だが、試掘の初期段階の完了後はConocoPhillipsがOperatorとなる。

今回、PetroChina は権益の29%を取得した。

中国

四川盆地の内江-大足区(Neijiang-Dazu Block)で非在来型資源探査の共同研究を行う。

両社は同地区の約50万エーカーで非在来型資源の探査を行い、技術的、商業的に見込みがあれば、共同研究期間中に合意する予定の生産物分与契約の下で開発に移行する。

ーーー

U.S. Energy Information Administration.によれば、中国のシェールの埋蔵量は通常の天然ガスの埋蔵量の12倍もあり、技術的に採掘可能な埋蔵量は米国のそれより50%も多い。
四川盆地は米国エネルギー省の報告でもシェールガスの可能性を認めている。

    http://www.eia.gov/analysis/studies/worldshalegas/pdf/fullreport.pdf

中国のPetroChina、Sinopec、中国海洋石油(CNOOC)は競って北米のシェールオイルやオイルサンド事業に参加している。

2005/4 中国海洋石油 カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2009/9/10 PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 Athabasca Oil Sands
2005/6 SinopecNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2010/4/16 Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada
2010/10/18 CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加 Niobrara shaleを追加
2011/2/16 PetroChina、カナダの天然ガス権益取得
2011/7/22 中国海洋石油、カナダのオイルサンド企業を買収
2012/1/9 PetroChina、カナダのオイルサンド権益を100%にアップ、Sinopecは米のシェールガスの権益取得
2012/2/7  Shell とPetroChina、非在来型ガス開発での提携強化 (カナダと米国)
2012/7/31  中国石油大手による買収 続く (CNOOCによる Nexen買収:2013年2月12日、米政府承認)

これには、事業参加によって技術を取得し、中国のシェール開発に役立てるという目的もある。 


2013/2/27   Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪

本年1月23日にKansas Cityの連邦裁判所で始まったDow Chemical の独禁法違反裁判で、2月20日、陪審員はDowを有罪とし、4億ドルを支払えとする決定を行った。

問題の製品はPolyether Polyol 製品で、酸化プロピレン系のポリエーテルポリオール、MDI、TDI、MDI-TDIブレンドなど。
1999年〜2003年の市場が危機的な状況の際に、Dow Chemical、Bayer、BASF、Huntsman、Lyondellの各社が価格カルテルを結んだとして 、2005年に米国の需要家が集団訴訟を行った。

Dow Chemical 以外は、いずれも違法行為はなかったとしながら、和解している。

2013/1/22 Dow Chemical の独禁法違反裁判、始まる 

原告側は1999年1月1日からの違法行為を問題としたが、男性2人、女性5人の陪審員は2000年11月以前については認めず、原告の11億25百万ドルの損害の主張に対し、4億ドルの損害を認定した。

判事はこの決定をまだ承認していないが、判事がこれを認めた場合、独禁法の規定で賠償額が3倍になる恐れがある。

Dowでは有罪の決定には不満を表したが、原告側の1999年1月に談合があったという主張を陪審員が認めなかったことは評価し、陪審評決の見直しを求める申立てを行うとともに、上告を含め、すべてのオプションを検討していると述べた。

付記

Kansas City地裁の判事は2013年5月15日、陪審員決定を退けるよ求めたDowの要請を却下し、3倍賠償の12億ドルを支払うよう命じた。

Dowは控訴するとしている。

その後、12億ドルから10.6億ドルに減額された。

付記

控訴審は2014年9月29日、上記の地裁の判断を支持した。

 

陪審員裁判らしく、最終弁論では原告被告双方からカルテルについての説明が行われた。

被告側:
全員がいつもと変わらないことをやっているのが何がカルテルか? 単なる会話と取り決めとは別物で、価格カルテルはなかった。

原告側:
ウインクしたり、頷いたりするだけで協定は成立する。
陰謀は役員会議室で合意されるのではなく、裏部屋やゴルフコースやカクテルを飲みながら行われる。
もし、アヒルのようにガーガー啼き、アヒルのようにひょこひょこ歩けば、見なくても、それはアヒルだ。証拠は十分だ。

付記 ダウは裁判長に対し、有罪の証拠がないとして判決を取り消すように求めるとともに、集団訴訟の原告同士の被害が異なるとし、集団訴訟の要件である"共通性(commonality)"がないため、集団訴訟扱いを取り消すことを求めた。

ーーー

Dowは裁判開始に当たり、裁判所に対し、和解に応じた各社がいずれも違法行為はなかったとしていることを理由に、事実審理を省略する略式裁判で訴えを棄却することを要請した。

しかし裁判所は2012年12月18日、これを却下した。
裁判長は、原告側は陪審員が違法行為があったと考えるのに十分な直接的及び間接的証拠を提出しているとした。また、これらの会議が別の理由による合法的な会議であるとのDowの主張を否定した。

裁判長が事前にクロの印象を与えているように見える。


2013/2/28 JX日鉱日石エネルギーと出光興産、製油所停止で製品スワップ 

JX日鉱日石エネルギーと出光興産は2月26日、2014年4月以降に年間約230万KLの石油製品をスワップすることで基本合意したと発表した。

エネルギー供給構造高度化法に基づく重質油分解装置の装備率向上義務を果たすため、JXは2014年3月末に室蘭製油所の原油処理を停止、また出光は徳山製油所における原油処理機能を2014年3月に停止する。

 JX日鉱日石エネルギー

2012年11月2日、室蘭製油所での原油処理(日量18万バレル)を2014年3月末で停止すると発表した。

同製油所では新たに設備投資を実施のうえ、二次装置を活用して、SKグループと合弁で韓国に新設するパラキシレン製造設備用の原料となるアロマ基材等の製造・輸出を行う。キュメンも引き続き製造する。

参考 2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

また、石油製品の物流拠点としての油槽所機能は存続し、引き続き北海道地区への灯油をはじめとする石油製品の安定供給に向け、万全の体制を確保する。

 出光興産

2011年11月1日、エネルギー供給構造高度化法に則り、徳山製油所における原油処理機能(日量12万バレル)を2014年3月に停止すると発表した。

今後、徳山は、西日本における燃料油事業の物流拠点としての機能を強化するとともに、化学事業の主力拠点として競争力強化に向けた取り組みを進める。

  燃料油供給体制

(1)原油処理機能停止後も安定供給に努め、競争力強化を図る。
(2)入出荷設備を増強し、油槽所機能を向上させる。

  化学事業について

(1)ナフサの輸入ロット大型化などを通じて、さらなる競争力強化とコンビナート各社への安定供給を図る。
(2)化学事業の主力拠点として、新たな事業を検討していく。

2014年4月以降、JXは大分製油所から出光に、出光は北海道製油所からJXに、それぞれ年間約230万KL(日量約4万バレル)を供給する。

ーーー

2009年7月1日にエネルギー供給構造高度化法が成立した。

これに基づき、経済産業省は2010年7月5日の「告示」で、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。

重質油分解装置の新設は考え難く、実際には常圧蒸留装置の削減を求めるものである。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 58.0  下記
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5 10.5  分解能力 +3.45で基準充足
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  111.7  

JXグループ

  原油処理能力(千バレル)  
008/12 2014/3 削減量
室蘭製油所 180 0 -180  
仙台製油所 145 145 -  
根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止
大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
 
PetroChinaとのJV化
水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止
麻里布製油所 127 127 -  
大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止
鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減
日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止
合計 1,792 1,212 -580  

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