ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2013/6/1  平成24年度における独占禁止法違反事件の処理状況

公取委は5月29日、平成24年度における独占禁止法違反事件の処理状況を発表した。
   http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/may/130529.html

主な内容は以下の通り。

1.課徴金納付命令

  延べ113社に合計250億7644万円。

 入札談合・価格カルテル等の不当な取引制限に対する課徴金のうち、

 ・主導的な役割を果たした事業者に対する割増算定率適用 2件、延べ6社
 ・違反を繰り返した事業者(10年以内)に対する割増算定率適用  4件、延べ4社
  * 課徴金算定率が10%が15%に、両方の場合を満たすときは20%に。

 ・早期に違反行為をやめた事業者に対する軽減算定率適用 4件、8社
  * 違反行為の期間が2年未満で、調査開始日の1か月前までに違反行為をやめていた場合
   課徴金算定率が10%が8%に

2.刑事告発

 2012年6月、 軸受(ベアリング)製造販売業者による価格カルテル事件について、不二越 、日本精工、NTNの3社と社員7名を告発
   ジェイテクトは自主申告したため告発対象から外れた。

 不二越に1億8000万円 、日本精工に、3億8000万円の罰金 、両社の5名に懲役1年ないし1年2月(いずれも執行猶予 3年)の有罪判決。
 
NTNについては公判中 。

 (2013年12月24日の東京地裁での初公判でNTNは無罪を主張)

2012/4/23 東京地検、ベアリング大手4社をカルテル容疑で家宅捜索

3.課徴金減免制度

 課徴金減免制度の適用状況

年度  18  19  20  21  22  23  24 累計
申請件数 79 74 85 85 131 143 102 725
適用件数 6 16 8 21 7 9 19 86
適用事業者 16 37 21 50 10 27 41 202

平成18年1月4日  課徴金減免制度導入
平成21年独占禁止法改正法(平成22年1月1日から課徴金減免制度拡充) 

 実際の減免は個別に公表されている。

2012年 http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/itiran24.html

2013年 http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/itiran25.html

4. 不当廉売

 不当廉売事案の注意件数の推移

5.審判

     審判係属件数の推移
       審判事件数は行政処分に対する各社の審判請求ごとの事件番号の数

  1) 平成24年度中に係属していた審判事件数は170件(うち 課徴金納付命令 95件)

   47件(うち 32件は新潟市等のタクシー事業者に対する件)の審判手続を開始。
   13件の審決 (
2012年5月30日 MBSカルテルでカネカと三菱レイヨンに課徴金に関する審決)

  2) 排除措置命令に係る審判請求棄却審決  3件
    溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯の製造販売業者による価格カルテル事件に係るもの1件

   3) 排除措置命令を取り消す審決 1件

    音楽著作物の著作権に係る著作権等管理事業者による私的独占事件
     公取委の排除措置命令を公取委が取り消す審決を行ったもの。
            http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h24/jun/120614.html

6.審決取消請求訴訟

  年度当初係属中の審決取消請求訴訟 14件
  年度中に新たに提起            5件

  これらのうち、原告の請求を棄却する東京高裁判決 5件(うち3件は確定、2件は上訴)
  最高裁で上告棄却 1件 (多摩談合事件の課徴金納付命令事件)

  差引 係属中 15件


2013/6/3 オレゴン州で未承認の遺伝子組み換え小麦発見  

米農務省(USDA)は5月29日、オレゴン州の農家の畑で、政府が承認していない遺伝子組み換え小麦が見つかったと発表した。

現在、遺伝子組み換え小麦は全世界で承認されていない。

東オレゴンの農夫が80エーカーの畑に、植えていない小麦が勝手に生えているのを発見、除草剤の “Roundup”で除草しようとしたが、出来なかった。
不思議に思った農夫がサンプルをオレゴン州立大学に送り、遺伝子組み換え処理によるRoundup抵抗性遺伝子が含まれているのを発見した。
USDAが29日にこれを確認した。

Monsantoは1970年に除草剤 Roundup を開発、1996年にこれに耐性を持つRoundup Ready 大豆を、1998年にはRoundup Ready コーンを上市した。

同社は1998年から2005年にかけてオレゴン州を含む16州でRoundup抵抗性小麦の圃場試験を行った。

しかし、Monsantoはこの計画を中止、商業化のための承認を求めなかった。既に遺伝子組み換えコーンなどで海外で反対が出ており、小麦の輸出に悪影響を与えるとする米国の農家からの反対が強かった。

問題は、9年前に計画を中止したのに、なぜオレゴンの畑で見つかったかである。
種子が圃場から風で飛ばされ、何かの事情でこの畑で育った可能性があるが、小麦畑が汚染され、何年も気付かれなかった可能性もある。

最悪ケースはヒューマンエラーで通常の種子と混ざってしまったケース。被害が広く拡販する恐れがある。

USDAは、Monsantoの小麦種子開発プログラム終了後の9年間にどのようにして未承認の種子が育っていったかを調査していると発表した。

Monsantoでは、USDAは元のRoundup Ready wheat が市場に入り込んだ証拠はないとしているとし、同社の社内調査では、種子が土壌に残ったとか花粉が飛んだとかは考え難いとしている。
また、仮に小麦にRoundup Ready遺伝子が存在しても、食品、飼料、環境の安全性の懸念はないと強調している。10年も前にFDAが食品と飼料の安全性を確認しているとしている。

付記 松永和紀さんがこの問題を取り上げている。http://www.foocom.net/column/editor/9277/ 

ーーー

USDAの発表を受け、各国は直ちに対応に動いた。

Consumer Unionでは、「世界に影響が及ぶだろう。米国の貿易相手国は遺伝子が組み換えられた小麦を望んでいない。適切な検証がされておらず、この小麦を食べても安全なのかどうかは分からない」と述べた。

日本の農林水産省は5月31日、オレゴン州産が含まれる米国産小麦の銘柄 Western White (WW) の輸入を当面、停止することを明らかにした。
ケーキやビスケットなど菓子用や麺用に用いられる軟質小麦。

農水省は、政府が輸入した小麦を国内の業者に売り渡す入札を5月30日に実施したが、Western Whiteを対象から外した。
小麦の輸入量は年間500万トン程度で米国産が約300万トンを占め、うちWestern Whiteは80万トン前後。

韓国の食品医薬品安全処も、米国産輸入小麦粉のサンプルを入手し検査に着手した。
「小麦を輸入した時期ごとの検査も行って、遺伝子組み換え小麦が混じっていないかどうか、はっきり確かめたい」としている。
韓国の小麦輸入は241万トンで、米国産は120万トン、うちオレゴン州からは46万トンとなっている。


2013/6/4 国際石油開発帝石、ロスネフチとオホーツク海北部大陸棚マガダン沖開発で協力協定を締結  

国際石油開発帝石(INPEX )とRosneftは5月29日、オホーツク海北部大陸棚に位置するMagadan-2 とMagadan-3 鉱区開発で協力協定を締結したと発表した。最終契約は年末までに締結する予定。

鉱区はマガダン沖約50ー150キロに位置し、水深約120 – 180 メートル、鉱区面積は28,082平方キロ。
2鉱区の推定可採埋蔵量は石油換算で15.77億トン(117億バレル)とされる。(地図に表示の数字は別)

両社で鉱区の開発及び生産にあたるJVを設立し、INPEXは33.33%を取得する予定。

INPEXはこの鉱区での地質探査の費用を全額負担する。これまでにRosneftが負担した開発費用を支払うほか、Rosneftがこの鉱区のライセンス取得のために支払った費用の33.3%も支払う。
更にINPEXは石油・ガスの発見ごとに一定のボーナスをRosneftに支払う。

この条件はINPEXにとって不利に思えるが、後記の通り、EniやStatoilも同様である。
2011年1月にBPが
Rosneftとグローバルな戦略的提携で合意し、ロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区の開発を決めた際にも、BPは1/3の出資で、開発コストの最初の20億ドルを負担することとなっていた。(TNK-BPの株主の反対でつぶれた)

Rosneftのセチン社長が同日、経済産業省を訪れて合意文書に署名した。
高原資源エネルギー庁長官は会談で「石油だけでなく深く幅広く連携していきたい。資源価格の安さも重要だ」と述べた。社長は「日本の事情はよくわかっている。是非良いパートナーになっていきたい」と応じた。

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Rosneftは深海での石油・ガス開発の技術を持たず、技術を持つ各社と相次いで提携している。

BP:2011/1/17  BP、ロシアのRosneft と戦略的提携  一旦破綻
  
2012/10/24  ロシアのRosneft、TNK-BPを買収         BPがRosneftに19.75%出資

ExxonMobil:2011/2/5 Rosneft、ExxonMobilとも海底油田開発で合意   サハリン1プロジェクトに次ぐ提携
                         2011/9/1    Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携 BPとの提携破綻による

Eni

両社は2012年4月、黒海(Western Chernomorsky油田)、バレンツ海 (FedynskyとCentral Barents)での油田開発の戦略的協力協定を締結した。
推定可採埋蔵量は石油換算で360億バレル。

Eniは地質探査の費用を全額負担する。

Statoil:

両社は2012年5月、バレンツ海のPerseevskyとオホーツク海での油田開発の協力協定を締結した。
オホーツク海は
KashevarovskyとLisyanskyとMagadan 1(INPEX開発地域に隣接)の3か所。

Statoilは33.33%を出資、開発段階の費用 (2016〜2021年にwildcat well 試験井を6本掘削)を全額負担する。

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RosneftのSechin社長は翌30日、北京で中国石油天然気集団(CNPC) 会長と会談、ロシア北極海の大陸棚などでの探鉱や生産など共同資源開発の可能性を話し合い、相互協力に関する合意文書に署名した。

対象となる地域は、バレンツ海とペチョラ海の大陸棚 (West Prinovozemelsky, Yuzhno-Russky、Medynsko-Varandeisky) と、Irkutsk地方、Krasnoyarsk地方、Nenets地方の陸上鉱区。


 


2013/6/5  南アフリカのマンガン開発 

5月31日付の日本経済新聞は以下のとおり伝えた。

南アでマンガン権益 レアメタル確保へ官民が連携 中国の攻勢に対抗

新興国でのレアメタル(希少金属)資源確保に向けた日本の官民連携が動き出す。世界最大の埋蔵量を誇る南アフリカの鉱山の採掘権を新日鉄住金グループの日本電工などが取得する。頑丈な鋼材を生産するのに不可欠なマンガン鉱石の権益を確保。中国の攻勢に対抗するため、日本の年間輸入量の2割にあたる20万トンを日本企業に優先して輸出する。

鉱物専門商社アジアミネラルズ(本社・香港)が南ア北部に広がるカラハリ鉱床の一部の鉱区で採掘権の49%を獲得し、特定目的会社(SPC)を設立する。日本電工が1割超の出資を検討している。

独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、鉱山開発など投資の回収に時間がかかる案件を対象とする「産業投資出資金」の枠から2.5%(約10億円)を出す計画。「産業投資出資金」から鉱物資源の案件に拠出するのは今回が初めてとなる。

記事はマンガン権益を初めて取得するような印象を与えるが、実際には既に住友商事が南アの二大マンガン生産企業の1社に約13%の権益を所有している。

記事にあるAsia Mineralsは香港の企業だが、創立者で会長は日本人。
マンガンその他の合金鉄を扱う日本電工は、本事業への参加は明らかにしていないが、Asia Mineralsがマレーシアのサラワク州サマラジュ工業団地に建設する合金鉄生産プロジェクトには参加を決めている。

南アのマンガン開発の状況と、Asia Mineralsの事業を2回に分けて紹介する。

南アのマンガン開発

南アフリカ共和国はアフリカ最大のマンガン生産国で、生産量では中国に次いで世界2位。

 

2012年の中国のマンガン輸入は1,223万トン と日本のおよそ10.5倍もある。資源メジャーは需要が急増する中国向けの供給を優先しており、「安定したマンガン鉱石の調達先を増やすことが産業界の課題」(資源エネルギー庁)。(日本経済新聞記事)

マンガン生産地域は北ケープ州北部のKalahari Basinに集中している。

これまではSamancorとAssmangの二大企業が生産を行ってきた。

SamancorはBHP Billiton とAnglo AmericanのJVで、Hotazel鉱山(Wessels坑内堀鉱山とMamatwan露天堀鉱山)を運営する。

Samancorの近隣にはAnglo Americanの傘下Kumba Iron Ore所有の同国最大のSishen鉄鉱山がある。

Assmangは高品位鉄鉱石、高品位マンガン鉱石及びクロム鉱石の3つの鉄鋼原料資源を保有する世界でも類を見ない資源鉱山会社で、African Rainbow Minerals とAssore(住友商事出資)のJV。

Nchwaningマンガン鉱山とGloriaマンガン鉱山を運営し、Port Elizabethから鉱石を輸出する。
また、Cato RidgeにあるCato Ridge Alloys(Assmang 50%、水島合金鉄 40%、住友商事 10% のJV)でフェロマンガンを生産し、Durbanから輸出する。

マンガン鉱の南部のKhumaniとBeeshoekに鉄鉱山があり、Saldanha港から輸出する。
北東部のDwarsrivierにクロム鉱山があり、近くのMachadodorpでクロム合金鉄にし、Richards Bayから輸出する。

住友商事は2007年1月、Assoreの持株会社Oresteel の株式20%をOld Mutualから取得。
その後、2回に分けて9%をSacco家から取得し2008年6月には更に20%を取得し、総額で約450億円の投資で49%とした。Assmangへの持分権益は約13%に増加した。

http://www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/2009f/mineral2_09.pdf

参考 Black Economic Empowerment政策(BEE政策)
南アでは不当な差別によって歴史的に不利な立場に置かれてきた黒人、カラード、女性など(HDSA: Historically Disadvantaged South Africans)に対するアファーマティブ・アクションとして、これらの経済進出を支援するBlack Economic Empowerment政策(BEE政策) が採られている。
従来のBEE企業は所有と経営参加だけを尺度としたが、少数の黒人のみが恩恵を受けるとの批判を受け、Broad-Based BEE (B-BBEE)が採用された。出来るだけ広範に富を配分するのが目的。

南アでは最近、新しいマンガン鉱が次々に稼働しつつある。

    年産
能力
生産
開始
株主  
Samancor Hotazel鉱山
・Wessels坑内堀鉱山
・Mamatwan露天堀鉱山
300万t   BHP Billiton
Anglo American
 
Assmang ・Nchwaning
・Gloria鉱山
300万t   African Rainbow Minerals
Assore
 
United Manganese
  of Kalahari
Smart、Rissik、
Botha 地区
2011年
271万t
2011 Renova (ロシア) 49%
Majestic Silver (BBBEE) 51%
現状では世界4位
中国のSinosteelがRenova持分の買収を考えている。
Tshipi E nete
  Manganese Mining
Tshipi Borwa鉱山
(Kalahari地区)
 
240万t 2012 POSCOが参加(下図)
 
OM Holdingsはサラワクに合金鉄プラント建設
Tshipi Bokone鉱山    
Kudunane
  Manganese
  Resources
York地区鉱山 2014年
300万t
2013 Asia Minerals 49.0% (61.5%)
Bold Moves(BEE) 25.5%(25.5%)
NWC Manganese(BEE) 25.5%(13.5%)
 (  )は将来
Asia Mineralsがサラワクに合金鉄プラント建設
Hotazelピット    
Kalagadi Manganese Kalahari地区 300万t   ArcelorMittal 50%
Kalahari Resorces 40%
南ア産業開発公社  10%
鉱山サイトに焼結鉱設備(240万トン)
Coegaに製錬工場(32万トン)
Tshipi E nete 株主

南アフリカでは港までの輸送と港湾設備の整備が問題である。

現在、カラハリ地区から積み出し港 Port Elizabethまでの鉄道輸送能力は年間400万トンで、輸送枠は既存2社でほぼフルとなっている。
このほかダ−バン港積みでトラック便による輸送が年間100万トンとなっている。


2013/6/6 Asia Mineralsの事業

昨日の記事の通り、Asia Mineralsは南アのKudunane Manganese Resourcesに出資する 。

Asia Minerals Limited (亜州砿業有限公司) は1993年に香港に設立されたマンガン専業メーカーで、鉱石からアロイ、メタル、化学品までを一貫して扱う。

日本人のHirotaka Suzuki 氏が創業者・会長である。

Asia Minerals は2005年に内蒙古のフェロアロイ製錬会社 Inner Mongolia Resourceを取得した。
シリコンマンガン、中低炭素フェロマンガンなどを生産する。(年産7万トン)

2009年には第二の生産拠点として、遼寧省錦州市太和区にある製錬会社 Jinzhou AML Resources を買収した。

同社はAsia Minerals (AML) が81.67%出資し、他に CITIC Jinzhou Ferroalloy(中信錦州フェロアロイ)、日本電工、豊田通商が出資する。シリコンマンガンの年産能力は5万トン。

同社は日本を初め、韓国、中国、米国、EU、CIS、中東のほとんど全ての製鉄メーカーにマンガンアロイを供給している。

ーーー

2012年5月にKudumane マンガン計画の最初の爆破の式典が鉱物資源相やAsia Mineralsの鈴木社長やMr. Africaと称される矢野哲朗・アフリカ開発協会理事長が出席して行われた。

Kudunane Manganese Resourcesは、Northern Cape Manganese Company とDirleton Minerals & Energy が株主で、この2社にはAsia Minerals と現地のBBBEE企業のBold MovesとNWC Manganeseが出資する。
実質ベースでAsia Minerals が49.0%の出資となるが、将来は61.5%となる。

採掘はオープンピットと地下鉱山採掘の二つで、最初はオープンピットで始める。

鉱石は道路と鉄道でPort Elizabethに運び、輸出する。
現在Port Elizabethの近くで建設中のCoega Industrial Development ZoneとNgqura深水港が完成すると、そこから輸出する。

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Asia Mineralsはマレーシアのサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable Energy:SCORE)にマンガン精練所を建設している。

建設地はサラワク州ビンツル市北東のサマラジュ工業団地で、2013年7月〜9月から段階的に立ち上げ、2014年12月までにフル稼働に入る計画。

サマラジュ工業団地では、トクヤマが太陽電池向け多結晶シリコン生産工場を建設している。

年産能力はシリコマンガン12万トン、中低炭素フェロマンガン5.4万トン、フェロシリコン6万トン、原料用の焼結鉱20万トンで、投資額は約240億円 。

日本電工は2012年5月、この計画に参加することを発表した。事業会社はPertama Ferroally SDN. BHDで、Asia Mineralsが60%、日本電工が20%、神鋼商事が7%、中央電気工業が5%、マレーシアのCarbon Capital Corporation SDN.BHD.が8%出資する。

南アのマンガンもここで製錬する。

南アのTshipi E nete Manganese Mining に出資するOM Holdingsもサラワクに製錬所を建設している。
第一期はフェロシリコンアロイ年産308千トン。

ーーー

日本電工の主事業は合金鉄事業で、フェロマンガン、高炭素フェロクロム、フェロバナジウム、フェロシリコン、シリコンマンガンなど、ほとんどの品目をカバーして いる。他に機能材料事業として、マンガン酸リチウム、フェロボロン、酸化ジルコニウム、ほう素製品を扱う。

2010年に新日鉄(現・新日鐵住金)が14.86%を取得 した。

日本電工は南アに2つのJVを持っていたが、1社を売却した。

 NST Ferrochrome (Pty)Ltd ステンレス原料のフェロクロムの製造・販売

1993年設立。
Samancor Chromeとの50/50JV
(2009/11にInternational Mineral Resources がSamancor Chromeの70%を取得した)

日本電工は2012年5月、下記のマレーシアへの投資集中のため、JV相手への売却を決定した。

 SAJ Vanadium(Pty) Ltd. フェロバナジウムの製造・販売

2002年設立。
日本電工 50%、Vanchem 40%、三井物産 10%
(当初はHighveldとのJV)


2013/6/7  ExxonMobil のシンガポール石化2期計画完成 

ExxonMobil は5月30日、シンガポールの第2エチレンクラッカーが稼働したと発表した。

既存の第1クラッカーと合わせ、数週間のうちにポリエチレン3系列、ポリプロピレン2系列、メタロセンエラストマー1系列と、能力増となったオキソアルコール、芳香族プラントが稼働することとなる。これを動かすコジェネレーション設備も220メガワットから375メガワットに増強された。

付記
ExxonMobilは2014年3月、
ハロブチルゴム(年産14万トン)とEscorez 脂肪族系炭化水素樹脂(年産9万トン)の建設を発表した。

メタロセンエラストマーはアジア太平洋地区で初の製品となるとしている。

同社は2007年9月、シンガポールでの2計画の詳細検討を終了し、建設の最終決定を行なったと発表した。

当初は2011年末のスタートを予定したが、需要動向などを勘案し、遅らせた。

  2007/9/10 ExxonMobil、シンガポールでの2計画発表

同社の1期計画(2001年スタート)も含めた能力は以下の通り。(単位:千トン) 

  1期
(現状) 
 2期 合計
エチレン  900  1,000 1,900
プロピレン  520   450 970
ブテン 270   270
PE  600 650 x 2 1,900
PP  405   450 855
specialty elastomers  −   300 300
ベンゼン  240   +340 580
paraxylene  450 +80 530
oxo-alcohol  220   +125 345
isopar  35   35
n-butylene  270   270
MTBE  85   85

同社は、第二期の完成で、中国とインド亜大陸その他の成長市場に製品を供給できることとなるとし、「この地域の石化製品需要に対応し、シンガポールの成長に貢献する」としている。

ExxonMobilの2期計画の完成で、シンガポール3社のエチレン合計能力は3,800千トンとなる。

ExxonMobil       1,900千トン

Petrochemical Corp. of Singapore (PCS) 1,100千トン

日本シンガポール石油化学(JSPC) 50%、QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 50%
   2006/4/3   シンガポールの石油化学の歴史−2
             2009/11/26  カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資

Shell (Bukom島)800千トン

20031月、住友化学 とShell はシンガポールでの新たなエチレンプラントの建設についてFSを開始する旨の契約を締結した。

シェルの日量50万バレルのリファイナリーがあるブコム島(ジュロン島の5.5km南東)にエチレンプラントを建設、パイプラインで ジュロン島に送り、住友化学が誘導品を増設する計画であった。

20045月、住友化学はサウジ・ラービグ計画に参加する覚書を締結、これにより、ブコム島でのエチレン計画から撤退することとなった。

シェルは住友化学の離脱後もシンガポールの経済開発局とともに本計画を進めることとした。
製品はジュロン島のシェルのMEGプラント等で使用する。

2010年3月スタートした。

エチレン 800 千トン
プロピレン 450  
べンゼン 230  
ブタジエン 155  


2013/6/7   中国、韓国・SKグループのシノペック武漢エチレンへの参加を承認、2つのエチレン計画も承認

中国国家発展改革委員会(NDRC)は6月5日、SK GroupがSinopecの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
Sinopecが27億ドルを投じて単独で建設し、2012年末に完成しているが、Sinopec 65%、SK Group35%出資のJVとなった。

SKは2008年5月にシノペックの武漢エチレン計画に35%出資することで合意したことを明らかにしたが、その後、2009年に中国SKのトップが中国メディアに対し、現在の経済危機のなかで、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにしていた。

  
2008/6/2  韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資

両社は2011年12月に予備契約に調印した。SKの出資額は明らかにされていない。

付記

両社は新しい合弁法人の資本金を1兆1800億ウォン(10.3億ドル)規模に策定した。工場建設に投入された3兆3000億ウォン(28.9億ドル)の中で、残りの2兆1200億ウォンは負債に回し、両社が持分に応じて負担することにした。

エチレン能力は80万トンで、以下の誘導品を含む。7月末に商業生産開始。
  LLDPE 300千トン
  HDPE  300千トン
  PP    400千トン
  EO   100千トン

ーーー

NDRCは今回、下記の2件プロジェクトの承認も発表した。

1) CNOOC 惠州製油所2期計画

CNOOC(中国海洋石油総公司)は現在、広東省恵州市の大亜湾の大亜湾経済技術開発区に年産11百万トン(日量220千バレル)の製油所を持つ。
同社は同地にShellとの50/50JVの中海シェル石油化学
CNOOC and Shell Petrochemicals)を持ち、2006年1月にエチレン 年産80万トンの石化コンプレックスの本格生産を開始した。エチレン能力は現在、95万トンとなっている。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社

今回、製油所第二期(年産10百万トン)と、他に年産100万トンのエチレンが承認された。
CNOOC単独で、中海シェル石油化学については言及されていない。

2011/1/11付 China DailyはShellがこの第二期計画への参加を求めたと報道している。

CNOOCは第二期計画に必要な資金も技術も持つため、仮にShellの参加を認めたとしても、中海シェル石油化学のように50%参加は認めないだろうとされ、Shellは中海シェル石化の持分のうちの20%を放棄して、代わりに第二期計画への30%の出資を求めたとの説も伝えられた。

2)Sinopec 海南島石化計画(Hainan Refining & Chemical Company)

エチレン年産100万トンと製油所の増設が承認された。

製油所は海南島の洋浦経済開発区(Yangpu Development Zone)にあり、2006年9月に800万トン(日産16万バレル)の製油所がスタートした 。

計画では製油所を1300万トンに増設し、隣接してエチレン年産100万トンを新設する。

Sinopecは2008年4月、海南省政府との間で年産100万トンのエチレン計画に関する契約に調印した。

2008/4/14 Sinopec の新しいエチレン計画


2013/6/8   中国、レジ袋規制開始から5年

中国国家発展改革委員会(NDRC)は5月31日、開始から5年経ったレジ袋規制の状況を発表した。

中国は2008年6月1日にレジ袋の規制を開始した。
6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止する。
また、ゴミ公害(白色汚染)対策として極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用を禁止する。

同年7月10日には規制を強化する通達を出している。

2008/7/16 中国、「レジ袋規制」を強化

それによると、規制開始後、5年が経過したが、レジ袋の使用と廃棄は著しく減少し、ゴミ公害(白色汚染)もある程度減った。
レジ袋の使用は1/3になり、これまでに670億枚のレジ袋消費が減 った。これは600万トンの石油の節約となるとしている。

「白色汚染を減少し、美麗な家屋を建てよう」とのスローガンで、検査チームを各地に派遣し、従わない者を厳重に罰した。

しかし、まだレジ袋を無料で配ったり、禁止されている極薄の袋を使用するケースも残っており、今後も監視を続ける としている。

実際には、International Food Packaging Associationが調査したところ、スーパーマーケット10店が全てレジ袋を有料としていたが、Wal-Martを含む4店のみが0.025mm以上のものであった。

一般の商店では調べた全てが無料で配っており、10店のうち1店のみが0.025mm以上のもので、他はすべて極薄品であった。


2013/6/8 住友化学のOlyset Net  

6月4日に日本経済研究センター50周年記念国際セミナー「持続可能な開発と企業の役割」が開催され、コロンビア大学のJeffrey Sachs 教授の基調講演と、パネラーの三井物産・木下専務と東大・澤田康幸教授の発表があった。
 (録画 http://www.ustream.tv/recorded/33797605

このなかで期せずしてSachs教授と澤田教授が企業の活動例として住友化学の名前を挙げた。

Sachs教授は温暖化問題を取り上げ、人類世(Anthropocene)では既に安全に活動できる領域(Planetary boundries)を超えたとし、MDGs (Millenium Development Goals)からSDGs(Sustainable Development Goals)に変えるべきだと主張した。

昨年の大統領選で気候変動について双方が一切言及しなかったことを挙げ、石油会社の宣伝によるものと批判、企業が政治を動かすロビー活動を禁止すべきだと主張したが、企業もSDGsに大きな役割を果たせるとした。

企業はいろいろな技術で貢献できるとし、アフリカでトヨタ、住友化学、ソニーなどと一緒に仕事を出来て誇りに思っている、もっと多くの企業に加わって欲しいと述べた。

三井物産・木下専務は同社の方針を説明、「YOI SHIGOTO」を世界中でキーワードとしているとし、モザンビークの天然ガス開発、エネルギー分野、水事業、マレーシアのSmart City計画の4つの活動例を説明した。 

Sachs教授は特にSmart City計画に関心を示し、ODAの対象にしてはどうか、もしかするとアベノミクスの3本目の矢になるかもと述べた。

澤田教授は世界の重心がアジアとアフリカに移っているとし、ODAの役割を強調した。

その中で住友化学のOlyset Net (防虫蚊帳)のマダガスカルでのインパクト評価の結果を説明した。

ーーー

住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、WHOからも使用を推奨されている。

マラリアは「ハマダラカ」という蚊が媒介する。毎年3.5〜5億人がマラリアを発症し、100万人以上が死に至っている。(その90%がサハラ以南のアフリカで発生、犠牲者の多くは5歳以下の子供 。)

以前はハマダラカの駆除にDDTが使用され、効果を生んでいたが、DDTの生態系への影響 から1980年代に各国で使用禁止となった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万人を数えたマラリア患者の数を31人にまで激減させることに成功していたが、DDT禁止後には僅か5年足らずで年間250万人に逆戻りし た。

WHO2006年9月にマラリア蔓延地区においてDDTの室内散布を推奨すると発表したが、これには賛否両論が出ている。

2006/10/23  WHO、マラリア防止にDDT使用を推奨

WHOは当初、マラリア対策として既存の蚊帳に薬を何回もしみこませて繰り返し使用するよう指導したが、再処理が面倒で、この方法はうまく機能しなかった。

住友化学は防虫網戸の技術に着目し、Olyset Net を開発した。蚊帳の糸に練りこんだ ピレスロイドが、洗濯等により表面の薬剤が落ちても中から徐々に染み出し、防虫効果が5年以上持続するもので、世界各地でテストを行った。

1998年にWHO、UNICEF、UNDP、World Bank 主導でRoll Back Malaria Partnership が始まり、2001年にWHOからOlysetがマラリア防止に有効との認定を受けた。

2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。

ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。

CBS News 録画 http://www.cbsnews.com/1606-500251_162-670124.html

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、 50以上の国々に供給されている。

住友化学は2003年からタンザニアのA to Z Textile Mills社にこの生産技術を無償提供し、2003年から年間1,200万張の生産開始した。

2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。

2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。

2010年8月現在、タンザニアでの生産能力は年間約2900万張りになり、タンザニアではこの生産だけで約7,000人の雇用機会を創出している。

同社はまた、オリセットネット事業で得た売上を役立てたいと考え、特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の協力を得て、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、エチオピアの各国で小中学校の校舎・給食設備の建設・教材・先生の宿舎などに取り組んでいる。

 

付記  2017/7/29 本の紹介 「日本人ビジネスマン、アフリカで蚊帳を売る: なぜ、日本企業の防虫蚊帳がケニアでトップシェアをとれたのか? 


2013/6/10    EU、中国の太陽光パネルに反ダンピング関税、中国は欧州産ワインで反ダンピング調査開始

EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

EUは当初平均 47.6%の税率を加盟国に提示したが、反ダンピング関税に中国が反発したことや、通商摩擦激化を避けたい加盟国の多くが慎重だったことに配慮し、当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。

中国品はEU市場の80%以上を抑えており、その生産能力は世界の消費の1.5倍もある。中国企業の不公正な競争でEU企業は倒産の危機にある。2012年の中国の過剰能力は欧州の需要のほとんど2倍もあり、今回の措置はEUの25千人の職を維持し、更に業界で新しい仕事を作り出すこととなるとしている。

EUでは、平均ダンピング率は88%もあるが、47.6%にとどめたとしている。

EUは、中国の輸出業者、中国商工会議所との会話で問題を解決し、暫定関税を取り止める用意があるとし、また、EU・中国合同委員会を近いうちに開催し、WTOルールと戦略的パートナーシップの精神に基づき貿易関係の全ての問題を建設的に解決する用意があると述べた。

中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査を始めると発表した。
昨年の中国の欧州産ワイン輸入量のうち約60%はフランス産で、EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復の可能性がある。

ーーー

中国の太陽光パネルの大増産により、米国やEUの企業で倒産が相次いでいる。
中国企業も経営難に落ち込んでおり、中央・地方政府による救済が行われている。

昨年来、中国の太陽光パネルを巡る貿易戦争が激化している。

EUは昨年9月に反ダンピング調査、11月に反補助金調査を開始、これに対し中国は、EU加盟国のイタリアとギリシャの“feed-in tariffs” (固定価格買い取り制度)現地の部品を中心に使っている電力会社を価格面で優遇しているのは協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

更に中国商務部は欧州から輸入される多結晶シリコンに対するダンピング・補助金調査を開始した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争 

中国は世界の太陽光パネル生産量の6割を占めており、うち約85%を輸出している。中国の統計によると、2011年のEU向け輸出額は210億ドルで、中国の生産量全体の約60%を占め、反ダンピング課税が与える影響は大きい。

景気低迷が続くなか、欧州各国でこの問題で意見が分かれた。ドイツなどは太陽光パネルへの課税を決めた場合、中国が対抗措置をとることを警戒して消極的であり、中国もEU加盟国への働きかけを強めた。

メルケル独首相は5月26日、ベルリンでの中国の李克強首相との会談後、太陽光パネルへの反ダンピング課税を回避すべきだとの立場を鮮明にし、「ドイツは反ダンピング課税を避けるためにできるだけのことをする」と述べた。

EU加盟27カ国のうち、英国やオランダを含む少なくとも過半数の国が課税に反対し、賛成はフランスやイタリアなど少数派とされる。ギリシャのサマラス首相は5月中旬に訪中し、中国側と貿易や投資、海運などで協力する文書を交わした。

これに対し欧州委は、「仮決定をするのは欧州委だ」と強調。「中国が友好的な解決に動くべきだ」と述べ、中国にダンピングや不当な補助金の是正に向けた取り組みを求めた。さらに、「中国が個別国に圧力をかけているのは明らかだ」と不快感を募らせた。

EU発表の前日の6月3日、李克強総理は欧州委員会のバローゾ委員長と電話会談を行い、以下の通り述べた。

中国政府は中国・EUの太陽パネル製品を巡る貿易紛争に注目している。
本件は中国の重大な経済利益に関連し、適切に処理されなかった場合は中国側の利益を著しく損ね、また必然的に欧州側の利益を損ねることになり、中国・EU提携の大局に影響を及ぼす。
双方は貿易戦争ではなく、対話・協議により問題を解決するべきだ。貿易戦争に勝者は存在しない。

中国側は自国産太陽光パネル製品の輸出価格が安くなりすぎないように規制する案をEUに提案しているとされている。

EU発表を受けて中国が反発を強め、中国商務省は「中国政府は対話による解決に向けて誠意を示して最大限の努力をしたが、EUはこれを理解せず不公正な課税措置を取った。断固反対する」と批判する声明を発表した。

商務部は同時に、EU産ワインを対象にダンピング調査に入ると発表した。報復をちらつかせて太陽光パネルの課税に賛成に回ったフランスをけん制し、EU側から譲歩を引き出す狙いとみられる。

欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しており、中国のワイン産業に打撃を与えていると主張、「貿易保護主義には一貫して反対する」とした。

2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。


2013/6/11 出光興産と三井化学、ベトナムのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックスへの最終投資決定 

出光興産と三井化学は6月6日、両社とクウェート国際石油、ペトロベトナムとの合弁事業である総投資額約90億米ドルのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックス建設プロジェクトの最終投資決定を行ったと発表した。

ベトナムのタインホア省ニソン経済区にコンプレックスを建設し、クウェートからの原油の安定供給をベースに、ベトナムの急増する石油製品需要を捕捉し、今後需給逼迫が予想されるアロマおよびポリプロピレン製品の輸出販売を行うもの。

JV:Nghi Son Refinery & Petrochemical Limited Liability Company(NSRP)
  出光興産 35.1%
  三井化学 4.7%

 
 クウェート国際石油 35.1% 
  ペトロベトナム 25.1%

設備:
 常圧蒸留装置(CDU) 日量 20万バレル
 重油直接脱硫装置(RHDS) 日量 10.5万バレル(世界最大級)
 重油流動接触分解装置(RFCC)
日量 8万バレル

 パラキシレン 70万トン/
 ポリプロピレン 37万トン
/年 三井化学が技術供与

総投資額 90億米ドル(うち、40億米ドルが出資者による出資比率での直接負担)

 

最終投資決定を受け、合弁会社は公的金融機関及び民間銀行等との間で総額50億米ドルのプロジェクト・ファイナンス契約を締結した。

国際協力銀行(JBIC)16.5億米ドル、韓国輸出入銀行からの直接融資6.6億米ドル(他に保証 4.4億ドル)計約23億米ドル
国内外民間銀行等からの融資 計約27億米ドル
(民間銀行等の融資に対しては日本貿易保険(NEXI)および海外輸出信用機関の保険または保証が付保される。)

本年7月に建設工事を開始し、2016年完工および2017年の商業運転開始を目指す。

 

付記

出光興産は2016年4月、クウェート国際石油とともに、ベトナム国内での燃料油販売を目的とした50/50 合弁会社「Idemitsu Q8 Petroleum Limited Liability Company」を設立した。
 
2017年10月2日、ハノイ タンロン工業団地内に、同国で外国企業では初めてとなるSSを建設し、営業を開始すると発表した。

付記  ニソン製油所が2018年11月14日商業運転を開始した。

ーーー

2004年10月、出光興産は石油開発鉱区取得の調印後、ペトロベトナムより、本案件への参画検討の打診を受け、2006年に共同スタディを開始した。
同年2月に出光が
クウェート国際石油と三井化学に参加を打診した。

20083月に、出光興産三井化学がNghi Son Refinery & Petrochemical コンプレックスの建設に向け、装置の詳細設計や経済性、資金調達方法などを検討する合弁会社への参加を決定したと発表した。

合弁会社にはPetroVietnam25.2%、Kuwait Petroleum 35.1%、出光が35.1%、三井化学が4.7% 出資し、Nghi Son 経済区に日量20万バレルの製油所を建設する。2013年末の操業開始を目指した。(その後、上記の通り変更)

当時、出光興産は、出資理由を以下の通りとしていた。
@ベトナムのエネルギー供給事業に参画することで、同国とのパートナーシップのさらなる発展に貢献、
Aクウェート原油の安定供給、出光の石油・石油化学事業で培ってきた建設・運転技術、ベトナムで急増する石油製品需要という三つの条件が揃った案件で、ベトナムでの収益基盤が構築できる。
Bアジアでのさらなる事業拡大のチャンス、
Cクウェートとベトナムとの一層の関係強化が図れ、安定した原油調達の確保にも寄与する。

三井化学はアロマ原料を安定的に調達することにより、PTAおよびフェノール事業の安定化と収益拡大につなげるとした。

ーーー

ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111〜121万バレルとした。

しかし、確定したのは3つのみ。
現在稼働しているのはPetroVietnam のズンクワット(Dung Quat)製油所で、2009年に稼働した。
能力は日量14.8万バレルで、
同社は増設を検討中。

ロンソン製油所には、当初ベネズエラ国営石油のPDVSAが参加を表明していたが、見送られた。

この製油所に隣接し、タイのSiam Cementグループとベトナム側のJVのLong Son Petrochemical が石化コンプレックスを建設する。
2012年1月、
Qatar Petroleum がこれに参加することが明らかになった。

2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工

2010/6/30付の日本経済新聞はJXホールディングスがズンクワットの拡張計画とロンソンの新設計画に加わると報じた。
(JXは、「当社が発表したものでもないし、具体的に検討している訳ではない」と述べ、報道を否定した。)


2013/6/12 公取委、オリエンタル白石に対する課徴金を返還 

公取委は6月5日、プレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札で課徴金を納付したオリエンタル白石に対し、課徴金を返還したと発表した。

公取委は2011年6月15日、国土交通省関東地方整備局と近畿地方整備局並びに福島県が発注するプレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札参加業者10社に対し、課徴金の納付命令を行った。(千円)

  関東 近畿 福島県 合計
オリエンタル白石 105,740 375,810 55,750 537,300
合計  592,630  1,806,540  221,070  2,620,240

これに対し更生会社であるオリエンタル白石の管財人から審判手続の開始の請求があり、審判となったが、2012年 9月25日に課徴金の納付を命ずる審決があった。
オリエンタル白石はこれを納付のうえ、 10月17日に違法であるとして審決取消訴訟を提起した。

オリエンタル白石は、公取委は課徴金債権を債権として裁判所に申告しておらず、会社更生法の定めるところにより失権しており(更生法204条1項)、納付を命じる審決は違法であるとした。

これに対し公取側は、違反行為者に対する制裁として罰金と同じであり、免責されないと主張した。

争点
(1)本件課徴金債権は、更生債権に該当するか。
(2)本件課徴金債権は、更生計画認可の決定により免責されるか。
(3)本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責されるかどうかにかかわらず、公取委は課徴金の納付を命ずることができるか。

2013年5月17日、東京高裁の判決があった。

まず、公取委は、独占禁止法の違反行為があると認めるときは、当該課徴金債権が会社更生法204条1項の規定により免責されるかどうかといったことは考慮することなく、課徴金の納付を命じなければならないとした。
独禁法の課徴金には繰り返し違反に対する割増の規定があり、今後違反があった場合、再犯とする必要がある。

仮に課徴金債権は会社更生法の定めるところにより失権している(そのため、強制執行が出来ない)としても、納付を命じる審決そのものは違法とは言えないとして、オリエンタル白石の訴えを却下した。(形式論)

以下、判決書別紙で実質判断を行った。

課徴金の対象となる独占禁止法に違反する行為が更生手続開始前にされた場合には、(課徴金納付命令が更生手続開始後にされたとしても)更生債権に該当する。

更生債権に該当する本件課徴金債権は、会社更生法上は「租税等の請求権」に該当する。

会社更生法は、租税等の請求権と罰金等の請求権とを、法的性格が異なるものとして明確に峻別し、その取扱いをまったく異にしている。
本件課徴金債権について、債権届出がない場合に、罰金等の請求権について定められた免責の例外規定を類推適用して、更生計画認可決定によっても免責されないとすることは許されない。

制裁という点で性質を同じくするとしても、明文の規定もないまま、同号の規定を類推すべきであるとすることは、法律解釈の限界を超えるものであるといわざるを得ない。

原告は、平成22年7月1日に確定した更生計画認可の決定により、本件課徴金債権につきその責任を免れたものというべきである。

公取委はこの判決を受け、オリエンタル白石から公取委に対して納付された本件課徴金は「自然債務」となっており、不当利得に該当するものと解されるとし、2013年6月4日、納付された課徴金5億3730万円に利息7万3602円を加え、返還した。

「自然債務」とは、債務者が任意に弁済すれば有効な弁済となり、債務が消滅する効果が認められるものの、弁済が任意でない場合には、弁済により得た利得は法律上の原因に基づくものとはいえず、不当利得になると解されているもの。


2013/6/13 丸紅、米穀物大手Gavilonの買収額を引き下げ、エネルギー部門を除外  

丸紅は6月10日、100%取得の契約を締結しているGavilon について、持分譲渡契約を変更するための契約を締結したと発表した。

当初、穀物・肥料・エネルギー3事業を運営する同社の持分100%を36億米ドルで買収することとしていたが、穀物・肥料の2事業を26億米ドルで買収することとし、エネルギー事業は現持分保有者が継続して保有する。

なお、買収について、中国は4月22日に条件付き認可を行ったが、丸紅はその条件履行の施策について当局と協議中であるとしている。

ーーー

丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。

丸紅の輸出の99%が中国向けであり、Gavilonは北米の大豆の集荷、保管、輸送の巨大能力を持つため、両社の統合で中国への輸出で大きな強みを持つことになるとしていた。

しかし、中国商務部は2013年4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収の承認に厳しい条件を付けた。

2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


これにより丸紅は、中国への輸出にGavilonの大規模な米国のネットワークを利用できず、高額での買収の意義が失われることにもなる。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認

ーーー

今回、エネルギー事業を除外し、買収金額が10億ドル減少することとなったが、これの解釈は難しい。

Gavilonの事業は以下の通り。(売上高は2011年)

  売上高
(百万$)
従業員 当初の
 契約
今回の
 契約
穀物事業 14,555 1,326

肥料事業 2,907 311

エネルギー事業 390 124

合計 17,852 1,934 36億ドル 26億ドル

Gavilonは原油・天然ガス等を中心にエネルギー事業も展開しており、北米において約8百万バレルの原油在庫施設、約100億立方フィートに及ぶ天然ガス在庫施設および約50万バレルの石油製品在庫施設などの物流ネットワークを活用し、トレーディング事業を行っている。

丸紅としては、この事業買収の意義として、北米における原油・石油製品・天然ガスのトレードの拡充と、保有アセットからの手数料収入等安定収益の増大を挙げているが、年間売上高が390百万ドルの事業に10億ドル分の価値があるとは考えられない。
このため、穀物や肥料事業の買収金額が減額になったのではないかとも推定される。

上述の通り、今回の中国政府による条件付き承認で、買収の意義が失われかねないこととなった。

米大豆協会では、丸紅とGavilonの連合が中国のような大規模な市場で供給を管理したり、価格操作を行うことは不可能であり、中国が課した条件は驚きだとしている。

丸紅としても中国がここまで厳しい条件を付けてくるとは考えていなかったと思われるが、相手が中国であり、どんな条件が付くか分からないため、ケースごとに買収条件を変えるような工夫をしていたことも考えられる。
(当初の発表時に、「取得価格は36億ドルから持分取得の実行時における譲渡契約に定める調整を実施した金額」としている。)

当初契約では丸紅は36億ドルでの買収に加え、Gavilonの借入金 約20億ドル程度を引き継ぐこととなっているが、今回のエネルギー事業の除外で、債務の引き継ぎ額も変わるのかどうかは明らかにされていない。

このほか、エネルギー事業を放棄したことについては、丸紅がGavilonのエネルギー事業に余り魅力を感じていなかったとか、当初の契約時から円が19%も下がり、円換算での買収金額が増えたなどの報道もされている。

丸紅は現在、中国当局との間で買収の条件履行の施策について協議中であり、それが確定した時点で恐らく詳細についての説明があると思われ、それまではこの見直し後の買収の評価をすることは難しい。

 

なお、エネルギー事業は現持分保有者が継続して保有することとなる。
現在の保有者はOspraie、General Atlantic、Quantum Strategicの3ファンドと経営者・従業員。


2013/6/14 カナダのNOVA Chemicals、ポリエチレン拡大計画NOVA 2020 をスタート 

NOVA Chemicals は6月7日、アルバータ州Joffre でNOVA 2020計画の目玉の一つのポリエチレン拡大計画の起工式を行った。

Joffreには第一ポリエチレン(2系列)と第二ポリエチレンがあるが、第一ポリエチレンに第3系列(年産 43〜50万トン)を新設する。
建設費は約10億ドル、2015年秋にスタートする予定。

シェール革命で北米の石油化学が生き返ったが(各社の動き)、これもその一つ。

ーーー

Novaは2011年6月、コスト競争力のあるシェールオイル、シェールガスを活用し、拡大する北米のポリエチレン需要に対応するため、NOVA 2020計画を発表した。

同社はカナダ西部のアルバータ州Joffre と、東部オンタリオ州 Sarnia - Lambton に石化コンプレックスを持つ。
(Sarnia - Lambton地区にはCorunna、St. Clair River、Moore の3工場がある)

計画では、JoffreとMooreにそれぞれポリエチレン工場を建設する。更にMoore工場の既存プラントのデボトルネッキングを検討する。
Mooreの新工場は、同社が開発したポリエチレン技術 Advanced SCLAIRTECH 法を使用する第二のワールドクラスのプラントとなる。

原料のエチレンについては、既存のJoffreのエチレン利用増とCorunna のエチレンの増強で賄う。
エチレンの生産増には、シェールオイル・ガス、オイルサンドからのオフガスや、既存のエタンなど、多様化した原料ソースを使用する。
Corunnaのエチレンは原料を天然ガス100%利用できるよう改造する。2013年第3四半期からはMarcellus Shaleのエタンの使用を開始する。

NOVA Chemicals会長(親会社のアブダビのIPICの社長)は、IPICのグローバルの成長戦略の一環として北米におけるNOVAの拡大計画を喜んでおり、IPICはフルにサポートすると述べた。

ーーー

アブダビ国営の投資会社 IPIC(International Petroleum Investment Company )は2009年7月、カナダのNOVA Chemicals の買収を完了した。

その後、IPICはNovaの株式の24.9%を、Borealis(IPIC 65%:OMV 35%)に譲渡する構想が明らかとなった。
実際に当初はOMVのDeputy CEOがNOVAの会長になり、OMV主導でNova運営がなされた。
しかし、最終的にBorealisの出資はなかった。
2011年にはIPICが、NOVAとBorealisの合併を考えているとの噂が報道された。)

2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

NOVAとIneos20073月に、NOVAの北米のSMPS事業を両社の欧州の50/50JVに移管することで合意したと発表、Ineos NOVAが200710月に発足した。 

しかし、2010年にNOVAは持分をIneosに譲渡し、撤退した。

2010/11/22  Nova ChemicalsIneos Novaから撤退

なお、NOVAは上記のカナダ西部のアルバータ州と、東部オンタリオ州のほかに、米国に2つの工場を持っている。
 
Beaver Valley 工場(Monaca, Pennsylvania):EPS(発泡ポリスチレン)とARCEL® 発泡レジン
  Painesville工場(Painesville, Ohio):EPS

同社は上記の通り、SM、PS事業をIneos NOVAに拠出し、後に離脱し持分をIneosに譲渡したが、「発泡PS & 機能製品」部門に属しているEPSについてはIneos NOVAに出していない。

ーーー

IPICは活動を全世界に広げている。日本のコスモ石油の筆頭株主である。

UAE 内陸油田ハブシャンからの全長360kmの原油パイプラインとフジャイラ港でのタンクターミナルの建設
フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設
オーストリア 石油、ガス会社OMVに17.6%の出資
石化会社Borealisに65%の出資
  2006/11/10 
OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

AMI Agrolinz Melamine International に50%出資(OMVが残り50%)
日本 コスモ石油に出資
韓国 Hyundai Oil Bankに出資(70%)
    ↓
2009/11/21 
現代グループ、Hyundai Oilbank の経営権を奪還
パキスタン パキスタンのPak-Arab Refinery Co.株式40%を保有(残りはパキスタン政府)。
キスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)
オマーン Oman Polypropylene に出資(出資するGulf Investment Corporationを通して)
エジプト Arab Company に出資
スペイン CEPSAに出資(47%にアップ)
中央アジア 2008/8/27 Abu Dhabi のIPIC、中央アジアに進出
カナダ 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

2013/6/14 異性化糖及び水あめ・ぶどう糖の製造業者に対する排除措置命令、課徴金納付命令

公正取引委員会は6月13日、異性化糖と水あめ・ぶどう糖の製造業者らに対し、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行ったと発表した。

各社は日本スターチ・糖化工業会の会合の場を利用して情報交換を繰り返し行うなどし、価格の引き上げで合意したもの。
(群栄化学は工業会のメンバーではないが、問題の会合には出席していた。)

合意及び情報交換は工業会の会合の場を利用して行われており、工業会の専務理事は販売価格に関する情報交換が行われていたことを認識していたにもかかわらず、これを取りやめさせるための措置を何ら講じなかったことから、公取委は工業会に対し再発防止のための措置を講じるよう要請した。

排除措置命令及び課徴金納付命令の対象は以下の通り。(金額:千円)

  異性化糖 水あめ・ブドウ糖 課徴金合計  
排除命令 課徴金 排除命令 課徴金
昭和産業  365,680  329,700 695,380  
敷島スターチ 11,950 10,900 22,850 昭和産業子会社
日本食品化工 227,880 220,620 448,500  
加藤化学 222,840 165,520 388,360  
日本コーンスターチ 261,640 ー  261,640 水あめ・ブドウ糖課徴金減免
日本澱粉工業 160,130 87,050 247,180  
サンエイ糖化 27,290 218,920 246,210  
三和澱粉工業 78,460 44,580 123,040  
群栄化学工業 77,510 6,370 83,880 異性化糖課徴金 30%減額
王子コーンスターチ 45,360 10,050 55,410  
合計 10社 1,478,740 8社 1,093,710 2,572,450  

異性化糖では全社に排除命令と課徴金で、群栄化学のみが課徴金が30%減額、
水あめ・ブドウ糖では日本食品化工と日本コーンスターチには排除命令はなく、日本コーンスターチは課徴金減免となっている。

事情は次の通りと推測される。

1)2012年1月31日に異性化糖について公取委が立入検査。
  これを受けて、群栄化学が申告(立入検査後の申告のため、30%減額)
        但し、同社は立入検査対象外の水あめ・ブドウ糖については申告せず。

2)日本食品化工と日本コーンスターチが、異性化糖に加え、水あめ・ブドウ糖についても違反行為を取り止め。
  両社は水あめ・ブドウ糖については、立入検査前の違反行為取り止めにより、排除命令なし。

3)日本コーンスターチは同時に公取委に水あめ・ブドウ糖のカルテルを自己申告。(100%減免)

4)これを受け、公取委が2012年5月15日に水あめ・ブドウ糖について立入検査。

減免制度では、最大5社(但し、調査開始後の対象は最大3社)が減免対象で、減額率は@100%、A50%、B〜D30%であるが、調査開始後は全て 30% となっている。


2013/6/15   JNC(チッソ)、下請代金支払遅延等防止法違反で勧告処分 

公取委は6月6日、JNC(チッソから事業を引き継ぎ、2011年4月1日に営業開始)に対し、下請代金支払遅延等防止法(「下請法」)に基づき勧告を行ったと発表した。

JNCは、液晶材料の原材料の製造を委託している下請業者に対し、液晶材料の原材料の単価の引下げを要請し、この要請に応じた下請業者について、単価引下げ合意日前に発注した液晶材料の原材料について引下げ後の単価を遡って適用し、下請代金を減額した。

2011年6月〜2012年6月の間に、下請2社に総額3509万円を減額していた。

同社は既にこれを返還しており、2012年7月の取締役会で、違反を認め、今後違反行為を行わないことを決議確認している。
「下請法の理解が不十分だった。再発防止に努めたい」としている。

今回の勧告の概要は以下の通り。
 ・取締役会決議と返還の事実を社員に周知徹底すること
 ・再犯防止のための社内体制の整備と、その内容の社員への周知徹底
 ・下請業者への通知

ーーー

下請法は物品の製造等の場合、資本金3億円超の事業者が資本金3億円以下の事業者を下請けに使う場合などに適用される。

親事業者は以下の行為が禁止される。

(ア) 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
(イ) 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
(ウ) 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)ーーー今回のJNCへの勧告
(エ) 返品の禁止(第4条第1項第4号)
(オ) 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
(カ) 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
(キ) 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
(ク) 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
(ケ) 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
(コ) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
(サ) 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第4条第2項第4号)

ーーー

中小企業庁では、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者の利益を保護することを目的として下請法に基づき対処している。

平成24年度は、親・下請事業者あわせて約27万社に対し書面調査を行い、違反のおそれのある1,158社に立入検査等を実施し、このうち1,035社、2,715件の違反行為について、書面による改善指導等を行うとともに、減額した下請代金等の合計約12億9400万円の返還等を親事業者に指導した。

このうち、重大な違反行為のあった1社について、公取委へ措置請求を行った。(平成22、23年度は各4社)

JNCはこの措置請求には含まれていない。

平成24年度の1社は、壁紙、床材、カーテン等のインテリア製品のメーカーで、「見本帳協力金」としての減額や、引下げ後の単価の遡及適用で下請事業者63社に総額約5億5,701万円を減額していた。


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