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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2013/8/1 Rio Tinto、住友金属鉱山等とのJVの豪州の銅・金鉱山を中国企業に売却  

Rio Tintoは7月29日、豪州のNorthparkes鉱山の権益 80% を中国のChina Molybdenum(洛陽欒川鉬業集団)に820百万米ドルで売却する契約を結んだと発表した。

同社では、同鉱山は成功しているが、充分な規模ではなく、同社戦略に合わないとしている。

Northparkes鉱山の残りの権益は、住友金属鉱山(13.3%)と住友商事(6.7%)が保有して いる。
両社が
JV契約で先買権を持っており、これを放棄するかどうかによる。
関係筋によると、2社が残りの80%全部を取得する見込みは薄いという。

China Molybdenumはモリブデンやタングステン鉱を生産しており、2012年10月に上海で新規上場した。銅の生産に参入するのはこれが初めて。

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Rio Tintoは戦略に合わない事業の売却を進めている。

2012年12月に同社は南アで銅山を運営しているPalabora Mining Company の持株(57.7%)を373百万米ドルで売却する契約を締結した。
売却先は南アのIndustrial Development Corporationと中国の河北鋼鉄集団が率いるコンソーシアム。

Palabora Mining の他の株主のAnglo American も持株16.8%を同じ相手に売却する。残りは一般株主が所有。

全ての手続きが完了しており、7月31日に成立する。

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Rio Tinto は6月12日、ミシガン州のUpper PeninsulaにあるEagle ニッケル鉱山を、カナダに本社を持ち、ポルトガル、スウェーデン、スペインで銅、亜鉛、鉛、ニッケルなどを採掘するLundin Miningに325百万ドルで売却する契約を締結した。

 

Rio Tintoは2007年にBHP Billitonから買収提案を受けたが、2007年11月の企業戦略を説明する投資家向けセミナーで、Northparkes銅・金鉱山を含む資産売却リストを公表した。

2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案

2008/11/27 BHP BillitonRio Tinto 買収を断念

本年6月初めには、Rio TintoはNorthparkes鉱山の売却に向け、月内の最終入札を計画しており、豪州のOZ Mineralsと中国の五砿資源が応札するのではと報道された。
China Molybdenumの名はこれまでに出ておらず、意外な結果と見られている。

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Northparks鉱山は豪州のSydneyの西方約300kmにある銅鉱山で金を随伴する。
Rio Tintoの100%子会社のNorthminingが鉱区を所有している。

当初、1993年7月に住友金属鉱山と住友商事がNorth Broken Hill PecoとJV契約を締結し、1994年に操業を開始した。
North Broken Hill Peco(1995年にNorth Ltd. に改称)は2008年8月にRio Tintoに吸収合併された。

2006年12月に212百万豪ドルを投じて新たな鉱床開発を決めた。
これにより、鉱山寿命を2009年から2016年まで7年間延長されるとしていた。

2016年以降については、増強計画を検討中で、本年にプレFSを作成し、2016年にフル生産を目指すとしている。
(一時は2008年6月以降の銅価格下落や世界的経済不況により、山命延長を断念している。)

既存の3鉱体の地下と新規の1鉱体の開発により生産規模を拡大する。

  現状 2016年
選鉱能力 580万トン 3000万トン
生産銅量 38千トン 150千トン

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住友金属鉱山は2013年2月、2012年中期経営計画「世界の非鉄リーダー&日本のエクセレントカンパニーをめざして」を発表した。

ターゲットとして、銅権益 30万トン、ニッケル 15万トン、金 30トンとしている。

海外資源獲得のうち、①自社探鉱は相当な時間を要するとし、②開発案件への参加は他社との競合が問題としている。
残る③既存鉱山については、権益比率拡大は困難で、増産しかないが、増産案件は少ないとしている。

本件は、権益比率を大幅に拡大し、かつ増産計画があるものだが、住友金属鉱山はこれまで取得の意向を示していない。

 

参考  2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加


2013/8/2 Bayer、CO2を原料にポリウレタン原料ポリオールを生産 

Bayerは7月25日、CO2を原料にポリウレタン原料のポリオールを商業的に生産する計画を明らかにした。
ドイツのDormagenに製造設備を建設する計画をスタートさせた。2015年以降、特定の需要家に大量の製品を供給する。

生産能力は5~6千トン(several thousand metric tons)の見込み。
今後、ライセンスも検討するとしている。

生産するのはポリエーテルカーボネートポリエーテルで、 温暖化の原因となるCO2を石油などの化石原料の代替とする。
同時に既存法と比較して経済的に有利なものであるとしている。

このポリオールとイソシアネート(TDI、MDI)とでポリウレタンフォームを生産する。

このプロジェクトは“Dream Production”と呼ばれ、Bayerは何十年もかけて探した結果、最適の触媒を見付け、産業界や学会のパートナーと協力し、製法を開発した。

CO2とアルキレンオキシドとを非結晶性の二重金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で共重合するもの。

過去2年間テストを行い、Leverkusen のBayerの本社工場につくったパイロットプラントでCO2を原料に少量のポリオールを製造した。
原料となるCO2は
エネルギー会社RWEのKölnにある発電所で発生したものを燃焼排ガスから取出し、輸送のために液化した。

この触媒は反応時のエネルギーを減らすのに貢献しており、大学による調査では、生産工程全体で省エネとなっており、排出するCO2も少ないとしている。

次のプロジェクトとして CO₂RRECTが進められている。

CO2と再生可能エネルギーを結びつけるもので、風力発電の余剰電力は蓄電できないが、これを電気分解に使用し、水素を生産し、これとCO2を原料としてポリカーボネートやMDIなどの合成樹脂を製造する。


 


2013/8/3 タイのパイプラインで原油流出 

タイ南東部ラヨーン県沖で7月27日、海中のパイプラインから石油が流出した。

事故のあったパイプラインは、タイ国営石油会社 PTTの子会社の化学大手 PTT Global Chemial が運営している。

会社側によると、Map Ta Phutの製油所の沖合20kmでタンカーからパイプラインに原油を移しているときに流出した。
流出した石油は約50千リットルと推定されている。

朝 6時50分頃、Map Ta Phut seaportの南東20kmで、一点係留(single-point mooring:タンカーを係留し、かつ積み揚げ荷役を行うためのシー・バースの一方式)で船からパイプラインに原油を移している際に、16インチのフレキシブルホースから漏れた。

直ぐにパイプラインのバルブを閉め、それ以上の流出を防いだとしている。

事故時、海軍も出動して回収作業に当たったが、原油は強風などのため拡散し、人気観光地の Samet島西岸のPrao Bay に到達した。
同島は有名なリゾート地で、年間100万人の観光客が国内外から集まる。

原油は更に島の北側に流れ、本土に接近している。

 

海洋生物への影響が懸念され、恢復に半年から1年かかるのではと見られている。

漁業と観光への影響が大きいが、同社は48百万ドルしか付保していない。

副首相は7月30日、「タイはこのような事故に対応するのに準備不足である( "ill-equipped" )」と指摘、「政府は委員会を設置するとともに、シンガポールに支援を求めるべき」との考えを明らかにした。

タイの海洋局はPTT Global Chemical を裁判所に訴えた。


2013/8/5   水島地区エチレンセンター集約へ 

旭化成ケミカルズと三菱化学は8月2日、2011年4月1日から西日本エチレン有限責任事業組合として運営している水島地区の両社のエチレンセンター(いずれもエチレン能力 50万トン/年:非定期修理年)の集約について合意したと発表した。

両社は2009年6月に水島コンビナートでエチレン事業を統合することを検討していることを発表した。

2009/5/19  三菱化学と旭化成、水島でエチレン統合

その後、中国需要の急回復で統合を急ぐ必要性が薄れたこと、3年後をメドに2基のうち1基を停止・廃棄する考えだったが、どちらの設備を止めるかで交渉が難航したことで、一時は破談の危機を迎えたとされる。

設備能力削減については将来の需要をみて統合会社で柔軟に判断するとの方針に転換し、1年遅れで合意にこぎ着け、2010年5月に水島地区エチレンセンターの統合について発表した。

2010/6/2  三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合の共同出資会社の設立

両社は折半出資で西日本エチレン有限責任事業組合を設立し、2011年4月から、水島地区の両社のエチレンセンター事業の一体運営を開始した。

エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとした。

2011/3/1  三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合のためのLLP設立

 

国内需要の縮小、中東・中国での供給能力拡大、シェールガス革命を背景とした米国での供給能力拡大など、石油化学事業を取り巻く環境は今後も厳しさを増していくものと予想されることから、両社は現行の体制のままでは事業存続が困難になるとの共通認識のもと、両社の水島地区におけるエチレンセンターを1基に集約し、最適生産体制による効率的な事業運営を確立することで合意したもの。

概要は以下の通り。

集約時期の目処 2016年春
対象製品 エチレン、プロピレン
C4、分解ガソリン、粗水素その他の副生ガス(メタン、エタン、プロパン)、ヘビーエンド
集約の方法 三菱設備(50万トン/年:非定期修理年)に集約
運用の形態 50/50JVで共同運用
 JV形態は今後検討

設備の集約により、各社50億円ずつ、合計100億円のコスト削減を見込む。人員は配置転換などで対応する予定。
会見で、誘導品をどうするかについての質問には「ノーコメント」であった。

集約時期を2016年春としたことについては、「誘導品でどう対応していくかや顧客への説明、サプライチェーンを構築するのにその位は当然かかる」としているが、上記の通り、2009年6月には既に統合を検討している。

どちらを止めるか決められず、エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとしたため、1基に集約する検討はこれまでしていなかったものと見られる。

三井化学と出光興産の千葉ケミカル製造有限責任事業組合についても、1基への集約ではなく、稼働率を70%まで落としても高効率な安定運転を維持できる改造を行った。

2012/9/7   三井化学、千葉地区における石化事業の構造改革

日本の現在のエチレン能力は定修スキップ年ベースで8,000千トンとなっている。(定修ベースでは7,210千トン)
これまでに発表された三菱化学鹿島、住友化学千葉と今回の旭化成水島の停止を加算すると、能力は6,741千トンとなる。

工場別能力一覧表 定修スキップ年   単位:千トン/年
会社名 工場 2001年 2012/12/末 変更後  

三菱化学

鹿島1

410 390 0 2014年停止

鹿島2

491 490 540  
四日市 270 - - 2001/1 停止
水島 496 494 494

西日本エチレン
  有限責任事業組合

 (2011/4)

(1,667) (1,374) (1,034)
旭化成 水島 504 504 0   2016年春停止
三井化学 500 500 500  
千葉 612 612 612

千葉ケミカル製造
有限責任事業組合

 (2010/10)

(京葉) (192) (192) (  0)
(1,304) (1,304) (1,112)
出光興産 千葉 413 413 413
徳山 498 688 688  
(911) (1,101) (1,101)  

住友化学

千葉

415 415 0 2015年停止
(京葉) (192) (192) (384)
(再計) (607) (607) (384)  

丸善石油化学

千葉

525 525 525  

(京葉) (384) (384) (384)
(再計) (909) (909) (909)

京葉エチレン

丸善石化

千葉

384 384 384
住友化学 192 192 384
三井離脱
三井化学 192 192 0
合計 (768) (768) (768)  

東燃化学

川崎

515 540 540 Exxon 少数株主に
日本ユニカー100%化

JX日鉱日石エネルギー

川崎

443 443 443  

東ソー

四日市

527 527 527  

昭和電工

大分

635 691 691  

合計

8,022 8,000 6,741 三菱鹿島  -390+50
住化千葉  -415
旭化成水島 -504

    能力はMETI発表による。(公称能力と若干異なる)

これに対し、2012年のエチレンの内需は4,941千トンであった。
 (エチレン生産 ーエチレン換算輸出+エチレン換算輸入)   

このため、3工場が停止しても、定修スキップベースで170万トン、定修ベースで100万トンがまだ過剰となる。

国内需要の縮小、中東・中国での供給能力拡大、シェールガス革命を背景とした米国での供給能力拡大などを考えると、更なる縮小が必要である。

従業員を移転できるかどうかがキイとなるが、出来ないからといって放置すると、共倒れになるのは必至である。


2013/8/6 New York市の炭酸飲料規制、控訴審でも敗訴 

New York市が肥満対策の目玉として決めた炭酸入り飲料の販売規制をめぐり、飲料業界などが差し止めを求めた訴訟の控訴審で、ニューヨーク州高裁は7月30日、市側敗訴の一審判決を支持し、控訴を棄却した。
市は判決を不服として、州最高裁に上告する方針。

ーーー

2002年1月に就任したNew York市のMichael  Bloomberg市長は市民の健康増進を最優先課題とし、まず喫煙とトランス脂肪酸に取組んだ。

間接禁煙の健康被害を強調し、2003年に市内の飲食店は事実上、全面禁煙とし、その後、公園なども全面禁煙とした。

トランス脂肪酸については、米国においては、飽和脂肪酸及び食事由来コレステロールの摂取の他に、トランス酸の摂取が冠動脈心疾患のリスクを高めるLDL コレステロール(「悪玉」コレステロール)のレベルを上昇させるという科学的知見に基づいて、 2006年1月1日以降、食品の栄養成分表示欄に飽和脂肪酸、コレステロールに加えてトランス酸の含有量も明記することが義務付けられている。

ニューヨーク市は2006年12月、全米の自治体として初めて、レストランでのトランス脂肪酸の使用を実質的に禁じることを決めた。

2006/12/11  ニューヨーク市、トランス脂肪酸の使用禁止へ

Bloomberg市長は2012年6月、市民の肥満防止対策の一環として、ソーダなど砂糖入り飲料のビッグサイズでの販売を禁止する方針を打ち出した。

禁止される容器は16オンス(約470 ml)超のもので、アイスティーやスポーツドリンクを含め、飲食店や映画館、野球場などでの販売が禁止される。

違反者には200ドルの罰金が科される。

スーパーやコンビニでの販売は認められる。
ダイエット飲料や牛乳50%超、果汁70%超の飲み物も対象外となる。

市長はかねて、砂糖入り飲料を肥満の元凶として敵視していた。
市長は2010年10月、フードスタンプでの砂糖入り飲料の購入を禁止する条例案を提示したが、砂糖入り飲料だけ禁止するのは技術的に難しいとして農務省が認めなかったため、規制の目安としてサイズに注目した。

この条例は2013年3月12日から施行される予定であったが、飲料や食品の業界団体が、市は権限を逸脱しており、小規模事業者などが不当に影響を受ける恐れがあるとして訴えを起こした。

施行予定日の前日の3月11日、地方裁判所はこの条例を「恣意的かつ一貫性を欠いている」として無効とする判決を言い渡した。

判決は、コンビニなどが対象になっていないことや、同じコップに再び注ぐ「おかわり」を禁止していない点を挙げ、「抜け穴が多く、目的が達成されない」と指摘、市議会ではなく、市の保健委員会が決定したのは権限の逸脱で、無効だと判断した。

これに対し、市長は判決を不服として控訴する意向を表明した。
市当局には規制を利用して「肥満の蔓延」を食い止める権限があると述べ、「判決に誤りがあるのは明らか」と批判した。

 

高裁は控訴審で、規制を市保健当局が決めたことについて「権限を逸脱した」と指摘、市側敗訴の一審判決を支持し、控訴を棄却した。

高裁は満場一致で、このような広範な規制は州議会や市議会で決めるべきものであり、市保健当局が決めるものではないとした。

市は判決を不服として、出来るだけ早く州最高裁に上告する方針。

市長は、施行予定日以降の4か月で2千人以上が糖尿病で死亡しており、American Medical Associationが肥満は病気であるとしているとし、市保健当局が市民の健康を守るため、重要な決定をした例はいくつもあるとしている。

ーーー

市長としての最終年を迎えたBloomberg 市長は2月14日、2013年の市政教書演説のなかで、発泡ポリスチレンの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定すると述べた。

2013/2/22 New York市長、発泡ポリスチレン容器禁止を提案

炭酸飲料とは異なり、市長はこれを市議会に提案する予定で、議長もこれに強く賛成している。

議長は、このままでは、この世の終わりに残るのは、ゴキブリとStyrofoam (Dowの発泡ポリスチレンのブランド名)だけだろうと述べている。


2013/8/6     主要企業の第1四半期決算

主要各社の第1四半期の営業損益対比は以下の通り。(単位:億円)

全般に前期比では増益だが、前々期比ではマイナスとなっている。
信越化学はShintechの業績が好調なため前々期比でも増益となった。
旭化成も医薬・医療が大増益で、前々期に迫っている。

ケミカルでは 各社とも前期比では交易条件でプラスとなっている。
石化製品で原燃料価格上昇に伴う販売価格値上げを行っているが、コストアップ以上の値上げということではなく、値上げ時期のずれで当期は増益となったものと見られる。
当期は更に円安効果が大きい。

1)三菱ケミカルホールディングス 

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売買差 数量差 コスト
 削減
受払差他
エレクトロニクス 1 -4 -12 -9 -7 -10 11 -2
デザインド 105 38 111 73 12 36 12 13
ヘルスケア 247 209 186 -23 -2 -8 2 -15
ケミカルズ 160 -77 -14 63 42 25 19 -23
ポリマーズ 109 6 -14 -21 -14 -1 10 -15
その -2 3 -5 -8   -6 2 -4
調整 -22 -19 -17 2        
合計 598 156 235 79 31 36 56 -44

2)住友化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売買差 数量差他 コスト差
基礎化学 70 -25 -21 5 5 0 0
石油化学 58 1 21 20 45 -35 10
情報電子化学 41 12 100 89 -40 69 60
健康・納涼 81 65 81 16 -10 36 -10
医薬品 135 126 107 -19   -44 25
その他 12 12 9 -3   -3  
調整 -49 -60 -52 7   7  
合計 348 130 246 116 0 31 85

情報電子化学は、偏光フィルム需要増による販売増で増益となった。(売価はダウン)

 

3)三井化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比 増減  

増減内訳

交易条件 数量差 コスト差
石化 60 35 71 36 54 -3 -15
基礎化学品 128 -8 -27 -19 -3 -9 -7
ウレタン -26 -2 -17 -14 -3 -3 -10
機能樹脂 20 27 37 11 6 14 -9
機能化学品 27 38 39 2 4 3 -6
フィルム・シート 17 -3 7 10 -1 2 9
その -7 -18 -18 -1      
合計 220 69 93 24 57 4 -38

石化の貢献が大きく、交易条件が54億円のプラスとなっているが、ポリエチレンで原燃料価格上昇に伴う販売価格上昇をあげている。

なお、昨年4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。
   2012/4/24 三井化学大竹工場で爆発事故

昨年上期6か月の営業損益への影響は基礎化学品 -14億円、機能化学品 -4億円ほかとしている。

4)東ソー

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

交易条件 数量差 コスト差
石油化学 39 7 25 18 1 5 13
クロルアルカリ 15 -50 5 56 31 20 5
機能商品 45 24 36 12 14 1 -3
エンジニアリング -2 -1 -8 -7   -7  
その他 7 3 8 5   5  
合計 104 -18 66 84 46 24 15

クロルアルカリは生産再開で販売数量が増加した。
 2011年11月14日に南陽のVCM工場事故
 2012年5月に第一プラント、7月に第三プラントが再稼働

5)旭化成

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売価差 数量差 コスト差
ケミカル 194 43 102 59 67 -1 -7
住宅 36 36 66 30 4 39 -13
医療・医薬 26 47 90 43 15 42 -14
繊維 14 6 22 16 18 2 -4
クリティカルケア   -5 -15 -10 2 9 -21
エレクトロニクス 48 -4 38 42 24 6 11
建材 2 5 13 8 1 2 5
その他 4 8 4 -4     -2
全社 -22 -29 -37 -8     -8
合計 302 107 283 176 130 97 -52

ケミカルは円安の効果とスチレンモノマーの市況改善で増益となった。

6)信越化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
塩ビ・化成品 61 99 169 70
シリコーン 92 75 70 -4
機能性化学品 35 39 31 -9
半導体シリコン 104 66 67 1
電子・機能材料 92 104 107 2
その他 17 18 11 -6
調整 -1 3 0 -3
合計 400 403 455 52

Shintech の塩ビが好調で、業績を大きく伸張させた。


2013/8/7 米通商代表、ITCによるApple製品販売禁止命令を拒否 

米通商代表部(USTR)のMichael Froman 通商代表は8月3日、韓国サムスン電子の特許侵害を理由に Appleの一部製品(中国製)の米国への輸入と販売を禁止した米国際貿易委員会(ITC)の命令を拒否すると発表した。

ITCへのレター http://www.ustr.gov/sites/default/files/08032013 Letter_1.PDF

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本件は、Samsung と Apple が全世界で繰り広げている特許戦争の一部である。

ITCは6月4日、Appleがスマートフォン(高機能携帯電話)などで用いる技術をめぐり、Samsung Electronics の3G/UMTS 無線通信技術関連の特許1件を侵害したと認定する決定を下し、AT&T向けの4機種、iPhone 4、iPhone 3GS、iPad 3G、iPad 2 3G(中国で製造)米国への輸入を禁じた。

米国の関税法337条は、米国への輸入における不公正な行為により米国産業に被害が生じる恐れがあるときに、輸入品の排除、不公正行為の差し止めをITCが判断し、命令を発する権限を規定している。特許侵害は典型的な不公正行為にあたる。

Samsungでは該当端末1台あたり市販価格の2.4%にあたるライセンス料の支払いをAppleに求めていた。

それに対し、Appleはこの特許がいわゆる「必須標準特許」(FRAND特許)にあたると反論したが、ITCは「FRAND宣言をしていることは、限定的な差止め命令を妨げるものではない」とした。
(Samsungでは、
Appleはライセンスを受けようとしなかったとしている。)

FRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory):
ある企業の特許が技術標準として採択される場合、他企業がその特許を使用する時、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」に協議しなければならないという義務。
特許権利を使用する企業はまず特許なしに製品を製造し、後に特許権利者にライセンスを購入し使用権を保有する。

Samsungは欧州でもAppleとの一連の特許訴訟のなかで、3G/UMTS 関連技術の必須標準特許の侵害を根拠に、iPhoneなどを対象とした販売差し止めを求めている。

欧州委員会はこれをFRAND特許濫用として問題視し、独禁法違反の疑いがあるとして調査を実施した。
Samsungは1998年に欧州電気通信標準化機構に対し、同社が保有する3G/UMTS関連技術の特許を、FRANDの原則に沿ってライセンス提供すると約束していた。

報道によると、Samsungは「必須標準特許」濫用問題の和解に向け、EU当局と協議中とされている。

欧州ではGoogle傘下のMotorola Mobilityも特許侵害を巡ってドイツでAppleに対する差し止めを求めているが、EUの欧州委員会は5月6日、Motorola Mobilityが欧州競争法に違反している可能性があるとの初期判断を明らかにした。

特許はモバイル・無線通信にとって重要な必須標準特許で、Motorola MobilityはFRAND(公正で合理的かつ差別のない)条件のもとで提供すると公約していたが、AppleがFRAND条件にもとづいたライセンス契約に前向きであったにもかかわらず、公正な交渉を行わなわず、差止めを求めたとしている。

欧州委員会はMotorolaに対し、「差し止め要請は特許侵害の対策の1つではあるが、問題とされているのが必須標準特許であり、ライセンシーが FRAND条件にもとづくライセンス契約を望んでいる場合は、優位性の乱用となる可能性がある」との見解を示した。

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ITCが6月4日に下した輸入禁止命令はオバマ政権へと送られ、60日以内に決定を審査し、判断を下すことになっていた。

通商代表は、命令を覆す理由について「米国における販売競争や米消費者への影響を考慮した」と指摘した。

米司法省は
必須標準特許は法廷でロイヤルティーを争うべきもので、輸入を禁止すべき案件ではないという考えで、輸入禁止を特許権の乱用とする見方を強めており 、通商代表のITCへのレターでもこれに触れている。
今回の命令拒否はこうした方針に沿っている。

なお、Samsungに対しては、引き続き裁判を通じて特許侵害の有無を争うことができるとしている。

ITCによる輸入・販売禁止命令が拒否されるのは1987年以来、26年ぶり。

1987年にReagan政府はアルカリ乾電池の輸入禁止命令(Duracellが並行輸入品の禁止を要請)を拒否した。
それ以前にも、成形サンドイッチパネルと製紙に関して拒否している。

Carter政権も溶接ステンレススチールパイプで拒否した。

今回の決定を受けSamsung は、ITCの決定が拒否されたのは残念であるとし、ITCの決定は、Samsungが誠意をもって交渉してきたのに、Appleがライセンスを受けようとしなかったという事実を正しく認識したものであると述べた。


韓国紙は「
知的財産権保護の伝統が退歩」、「オバマ政権、拒否権発動でサムスンをけん制」などと報じている。

ーーー

ITCは8月1日、サムスン電子製の携帯電話やタブレット型端末の一部がAppleの特許を侵害しているかが争われている特許紛争で、判断を9日まで延期すると明らかにした。理由は明らかにしていない。

ーーー

オバマ政権が輸入禁止の決定に拒否権を発動したことについて、韓国政府は公に懸念を表明した。
韓国産業通商資源部は8月5日、今回の拒否権発動について、「サムスン電子が保有する特許権の保護に与えるマイナスの影響に懸念を表明する」とした。

また、9日に予定されるAppleとSamsung電子の特許紛争をめぐるITCの決定と、それを受けた米政府の決定を鋭意注視するとし、「決定が公正かつ合理的に下されることを期待する」と注文を付けた。

Samsung電子は8月5日、オバマ政権の拒否権発動とは関係なく、既に米ITCの決定について、米連邦控訴裁に抗告を行ったことを明らかにした。
ITCは4件のうち1 件について、Appleが特許を侵害したと認め、輸入禁止措置を下したが、Samsungは残る3件についても特許を侵害しているとして、抗告を行った。


2013/8/8 加里の国際輸出カルテル 崩壊? 

世界第二のカリのメーカーのロシアのOAO Uralkali が200億ドルの世界のカリ市場を崩壊させようとしている。

Uralkaliは7月30日、ベラルーシのBelaruskaliとのJVのカリの輸出会社 Belarusian Potashから離脱し、輸出限度量を超えて輸出すると発表した。
来年はフル生産する。

ベラルーシ政府が同国産のカリについてBelarusian Potashに与えていた輸出独占権を取り消し、Belaruskaliが自分で輸出を始めたため、JVは機能しなくなったとし、自社のUralkali Tradingを通じて輸出するとしている。

 

世界のカリの生産量はカナダ、ロシア、ベラルーシが大半を占める。(米地質調査所 2011年推定) 

  千トン
カナダ  11,200
ロシア 7,400
ベラルーシ 5,500
ドイツ 3,300
中国 3,200
イスラエル 2,000
4,400
合計 37,000

各国のカリメーカーは輸出会社を通じて輸出しており、事実上のカルテル組織で、輸出数量と価格をコントロールし、毎年、輸入国(中国が1位でインド、ブラジルがそれに続く)と秘密裏に交渉してきた。

輸出会社 構成メーカー
Canpotex Potash Corporation of Saskatchewan(カナダ)54%
The Mosaic Company(米) 37%
Agrium(カナダ) 9%
Belarusian Potash Uralkali(ロシア)
Belaruskali(ベラルーシ)

The Mosaic Companyはフロリダでリン酸、カナダでカリを生産
ロシアのSilvinitはこれまでInternational Potash Co.を通して輸出していたが、2011年にUralkaliと合併した。

2010/12/25 ロシアの2大肥料会社が合併へ 

ーーー

米国の需要家が2008年にカルテルで訴訟を起こし、各社は2013年1月に和解した。
  Potash Corp 、Mosaic は各 $43.75 million、Agriumは$10 millionを支払った。
  Uralkali は2012年9月に $12.75million を払い和解している。
  Silvinit、International Potash、Belarusian Potash も訴えられている。

 

Uralkaliの発表は世界のカリメーカーに戦慄を与えた。
カリの価格が急落すると見られ、各社の株価は急落した。

最近のカリの価格は400ドル/トン程度だが、300ドル以下になると見られている。

Uralkaliのコストは業界最低で、62ドル程度と見られている。これに対し、北米のメーカーのコストは100ドル超、欧州メーカーは240ドル程度とされる。

Uralkaliはまた、最大の輸入国である中国と直接、鉄道でつながる唯一のメーカーで、Belaruskaliに対し、有利な地位にある。

Uralkaliにとっては、価格は下がっても数量の大幅増により、利益は維持できる見込み。


2013/8/9   中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件 

中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件が明らかになった。

国家発展改革委員会(NDRC)は8月7日、粉ミルクを巡る競争阻害や卸売業者に対する最低販売価格の制限などで、6社に合計 670百万人民元(約109百万ドル)の罰金を課した。

上海市高級人民法院は8月1日、Johnson & Johnson(J&J)に対し、独禁法違反で旧代理店の北京鋭邦涌和科貿に賠償金530千人民元(約87千ドル)を支払うよう命じた。

規定価格以下で販売したことを理由に代理店契約を取り消されたとして鋭邦涌和科貿がJ&Jを訴えていた控訴審で、原判決を覆し た。

中国の独占禁止法は、以下の行為を禁止している。

水平的協定 価格協定
・供給制限
・市場分割
・新技術又は新設備の購入の制限、新技術又は新製品の開発の制限
・共同ボイコット
垂直的協定 再販価格維持行為
最低再販価格の制限
キャッチオール条項 独禁当局が別途定めるその他の独占的協定を包括的に禁止
業界団体のカルテル 業界団体が事業者に対し、上記の各行為を行わせる行為を禁止

担当は以下の通り。

国家発展改革委員会(NDRC) 価格独占行為の調査・処分
商務部 事業者集中行為
工商総局 独占協定、市場支配的地位の濫用、
行政権力を濫用した競争の排除、制限

販売価格を巡っては、既に下記の独禁法違反行為が摘発されている。

1)NDRC2011年11月独禁法違反で製薬会社2社に合計で約110万ドルの罰金を科した。

2011/11/18 中国が価格カルテルを摘発

2)NDRCは2013年1月4日、LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万人民元(約49億円)の制裁金を科したと発表した。
中国当局が外国企業に価格カルテルで制裁金を科すのは初めて。

2013/1/9  中国政府、価格カルテルで外資に制裁金

3)NDRCは2013年2月22日、中国酒のトップメーカーの四川省のWuliangye (五粮液) と貴州省のKweichew Moutai (州茅台)に対し、価格カルテルで総額449百万元(71.4百万ドル)の罰金を課した。五粮液は202百万元、貴州茅台は247百万元。
発表では、両社は独占契約を結んでいる卸業者に対し、酒類の販売最低価格を決めていたという。

2013/3/2  中国、中国酒メーカーに価格カルテルで罰金

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粉ミルク事件    

国家発展改革委員会(NDRC)は8月7日、乳児向け粉ミルクの価格操作と独占禁止法違反をめぐる調査の結果、米Mead Johnson Nutritionほかの計6社に合計109百万ドルの罰金支払いを命じた。中国の独禁法違反の罰金額としては過去最高額。

各社は卸売業者に対する契約で最低販売価格を制限し、違反者に罰金を課したり、リベートをカットしたり、商品供給を制限するなど行ったと発表している。

  罰金
(千人民元)
売上高比
(2012年)
Mead Johnson Nutrition(米) 203,800  4%
Dumex Baby Food(仏)Danone 子会社 172,000 3%
Biostime International (香港)
合生元国際
162,900 6%
Royal FrieslandCampina(蘭) 48,000 3%
Fonterra Co-operative Group (NZ) 4,000 3%
Abbott Laboratories (米) 77,000 3%
Wyeth Nutrition(スイス)Nestlé 子会社 免除
Zhejiang Beingmate Technology Industry and Trade
貝因美科工貿(中国)
免除
明治ホールディングス 免除
合計 667,700
109百万ドル
 
直近レートは1人民元=0.16342 米ドル
Biostimeは違反行為がひどく、是正措置を取らなかったとして最高の6%の罰金となった。Mead Johnsonは積極的に協力せず、4%となった。
Wyeth (Nestle)、貝因美、明治の3社は「独占禁止法執行機関に対して、独占に関する取り決めの関連情報を自発的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ自発的に改善を行った」ため、処罰の対象外とされた。

関連企業が提出した改善措置には、「違法行為の即時停止」、「実質的な行動による過去の違法行為の処理、消費者への実益の提供」が含まれた。

本年7月に価格独占行為の調査・処分を担当するNDRCの価格監督検査・反独占局が 国内メーカー数社を含む粉ミルクメーカー10数社に対し、独占価格の疑いがあるとして調査を行っていることが報じられた。

中国では2008年に石家荘三鹿集団のメラミン混入粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎臓結石となるケースが相次ぎ、5人が死亡、多数が入院した。
調査の結果、他の22社の69品目からメラミンが検出された。

2008/9/29 中国粉ミルク汚染事件のその後

この結果、海外ブランドは価格が国内産の2倍もするが、国産品よりも安全として需要が増大していた。

2008年以降、海外ブランドは価格を30%引き上げたが、海外ブランドのシェアは2008年以前の30%から60%にまで上がっている。

大手チェーンでは1人当たり購入を2~4缶に制限しており、香港では本年3月、2缶以上を本土へ持ち帰るのを犯罪とした。

中国の粉ミルク市場は2012年が127億ドルで、2014年には184億ドル、2017年までに250億ドル規模にまで拡大すると見られている。

調査を受け、Mead Johnson、Dumex、Nestlé などは相次いで20%程度の値下げを行っ ている。

なお、NZのFonterraは、これ以外に、大きな問題を起こした。

ニュージーランド一次産業省は8月3日、同国の乳業最大手のFonterraの一部商品にボツリヌス菌が含まれる可能性があると発表した。

中国はFonterraが調整粉乳に利用している乳製品原料粉末と乳清タンパク(ホエイプロテイン)の輸入を停止した。

乳製品はニュージーランドの輸出全体の約4分の1を占め、Fonterraはニュージーランドで生産されるミルクの89%を扱っている。
今回の輸入制限は中国への輸出に頼るニュージーランド経済にとって打撃である。

ーーー

Johnson & Johnson事件

上海市高級人民法院は8月1日、規定価格以下で販売したことを理由に代理店契約を取り消されたとして北京鋭邦涌和科貿がJohnson & Johnson(J&J)を訴えていた控訴審で、原判決を覆してこの行為を独禁法違反とみなし、J&Jに対し、鋭邦に賠償金53万元(87千ドル)を支払うよう命じた。

J&J は鋭邦との間で15年間にわたり、J&Jの子会社のEthicon Endo-Surgeryの医療用縫糸や吻合器などの代理店契約を結んでおり、契約は毎年更新されていた。
その契約では、「鋭邦はJ&Jが指定する地域で Ethicon Endo-Surgeryの商品を販売する。鋭邦はJ&Jの規定を下回る価格で商品を販売してはならない」と取り決めていた。

Ethicon Endo-Surgeryは、体内で吸収される抗菌性縫合糸や心臓血管外科手術などで用いられる縫合糸、合成皮膚用接着剤等々を扱う。
J&Jは創業1年後の1887年に消毒済み縫合糸を発売した。

鋭邦公司は2008年3月に北京大学人民病院で実施された入札で最低落札価格で落札、J&Jは低価格の入札行為に対して警告を発した。
その後、J&Jは縫糸および吻合器の供給を停止し、翌年、鋭邦との代理販売契約を更新しなかった。

これに対し鋭邦は2010年8月、J&Jを相手取った訴訟を起こした。
これは中国の独占禁止法の施行以来、法廷が審理した初の垂直的独占の民事訴訟となり、「中国初の垂直的独占」と呼ばれた。
(本件では独禁当局=NDRCは関与していない。)

鋭邦の主張:
J&Jは競争の直接的な制限を目的とし、代理販売契約の中の契約条項により、鋭邦が第3者に最低価格で転売することを制限し、鋭邦に警告を発し、契約を中止・終了するなどの手段をとり、鋭邦が最低転売価格を維持することを脅かした。

J&Jの行為は、独禁法が禁止する最低転売価格を制限する行為に当たり、鋭邦に損害をもたらしたため、法に基づきJ&Jに1400万元余りの賠償命令を出すよう求める。

上海市第一中級人民法院は2012年5月に下した一審判決で、鋭邦側の証拠が不十分だとして訴訟請求を退けた。

これに対し上海市高級人民法院は 今回、本件には独占禁止法が適用され、J&Jが代理商に自社の規定を下回らない価格での商品販売を求める行為は、独占行為に当たると判断した。
賠償金については、鋭邦の2008年に販売できなかったことによる利益だけとし、それ以降に契約を更新できなかったことによる損害については認めなかった。

1年ごとの契約であるという形式を重視したと見られるが、過去15年継続してきたことから考えるとおかしい。


2013/8/10 サムスン会長、工場事故で建設子会社社長を更迭 

サムスンは8月1日、Samsung Fine Chemicals の蔚山工場内のポリシリコンプラント建設現場で発生した死亡事故の責任を問い、Samsung Engineeringの社長を更迭したと発表した。

37日間の海外出張から帰国した李健煕会長の意向を受けたもので、会長はこれまで、「安全・環境には妥協しない」とし、事故に対する責任を最高経営責任者に問うとしてきており、一度でもダメ(「ワンストライク アウト」)を強調していた。

今回の事故について報告を受けた後、「ありえないことが起きた。後進的な事故は根絶しなければいけない」と叱責、捜査が進行中の段階で更迭した。

代表更迭のほか、責任がある関係者を厳重問責する予定。

事故は7月26日、Samsung Fine Chemicalsと 米国の半導体ウエハー製造大手MEMC Electronic Materials(2013年5月に SunEdison, Inc に改称)の合弁会社、SMP Inc.がSamsung Fine の蔚山工場内に建設中のポリシリコンプラントで発生した。

JVは2011年に50/50で設立された。能力は第一期年産10万トンで、2013年完成予定。
工事は
Samsung Engineeringが担当していた。

スプリンクラー用水や工業用水を供給する1300トン規模の貯水タンクのテスト中に発生した。
水圧テスト等のため、水を満タンに入れてテストを実施していた最中にタンクが突然破裂して横転、近くで作業をしていた作業員3人が死亡、12人が重軽傷を負った。

その後の調査で、水タンク破裂の原因が従来の溶接工法ではなく、ボルトを使った新工法のためだったと明らかにしている。
警察によると、事故現場の貯水タンクでは前日から4カ所のボルト部分で漏水が発生していたという。

ーーー

MEMCは1959年にMonsanto Electronic Materials Company として設立され、シリコンウエハを開発した。
1989年にE.ONの関連会社によって買収され、1995年に上場した。

当初、半導体用に販売していたが、2007年にソーラー市場向けに販売を開始した。

2009年に主要なソーラープロジェクト開発企業であるSunEdisonを買収した。

ーーー

本年1月28日には華城にあるサムスン電子の半導体ラインから有毒物質のフッ酸溶液が漏れ、 協力会社STI Service の職員5人が病院に運ばれ、うち1人が死亡した。
前日にフッ酸溶液供給装置で異常が発生、STI Serviceが作業員5人を投入して配管交換作業を行っていた。

同工場では5月1日にも再びフッ化水素酸が漏れ、現場にいた作業者3人が病院に運ばれた。

ーーー

Samsungはこれらの事故を受け、安全を強化する総合対策を打ち出した。

「サムスン安全管理スタンダード」を制定し、10月末までに各系列会社に配布する。
現在、国内だけでなく海外の関連法規とグローバル基準を分析し、外国のコンサルティング会社に検証を依頼している。

 また安全環境分野で経歴社員150人、新入社員150人を採用する従来の計画に加え、5大学に安全環境関連学科を新設し、産学協力を通じて安全環境関連学科の優秀学生を育成する。


2013/8/12 米エネルギー省、非FTA締結国向けLNG輸出で3件目の承認 

米エネルギー省は8月7日、Lake Charles Exports, LLCに対し、Louisiana州のLake Charles Terminal からの非FTA国向けのLNGの輸出を承認した。

20年間にわたり1日当たり最大20億立方フィート(2.0Bcf/d) 、年間1500万トンの輸出を認めた。
FTA締結国向けの輸出については2011年7月22日に既に承認を受けている。

Lake Charles Exports, LLCはSouthern Union Company と英国のBG Group が共同所有している。

Southern Union CompanyはEnergy Transfer Partners, L.P の100%子会社。
Energy Transfer Partners, L.PはSunocoの親会社でもある。

BG Groupは当初の名称はBritsh Gas。

Lake Charles Terminal はTrunkline LNG Companyの所有で、天然ガス液化設備と輸出設備はBG LNG ServicesとTrunkline LNGが共同で建設する。液化設備は3系列(合計年間1500万トン)で、2018年に第1系列の完成を予定している。
輸入LNGのガス化設備も設置する。
天然ガスはBG LNG Servicesが供給する。

輸出契約については現時点では締結していない模様。

ーーー

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

米エネルギー省は2012年12月、LNGに関する報告書を発表し、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとした。
しかし、米国の天然ガス輸出を巡っては、Dow Chemical と ExxonMobileが米国の産業界を2分して争っている。

2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化

ーーー

エネルギー省はこれまで、非FTA国向けの輸出を2件承認している。

1)2011年5月のCheniere EnergyのSabine Pass LNG Terminal

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

2)2013年5月17日のFreeport LNG
  同社の計画には中部電力と大阪ガスが加わっており、2017年にも日本への輸出が始まる見通し。

2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

承認を受けた3つの計画の概要は以下の通り。

会社名 立地 概要
Cheniere Energy

本事業のため
Blackstoneが出資

Sabine Pass LNG Terminal
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5(FTA締結国向けは 2010/9)
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
輸出契約:
   BG Group   550万トン
   Gas Natural (スペイン)   350万トン
   Gail(インド)   350万トン
   Kogas(韓国)   350万トン
   合計    1600万トン

  注. 承認時は韓国はFTA未発効

Freeport LNG

株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
期間:20年間
輸出契約:
   大阪ガス   220万トン
   中部電力   220万トン
   BP Energy   440万トン
   合計     880万トン
Lake Charles Exports

株主:
Southern Union Company
BG Group
Lake Charles Terminal
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8(FTA締結国向けは 2011/7)
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
輸出契約:未定
    BG Groupがパートナーのため、当然BGは対象

認可待ちの計画は以下の通り。

会社名 立地 概要
Dominion Energy Dominion Cove Point
  LNG Terminal
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:未(FTA締結国向けは 2011/10)
数量: 年間525万トン
期間:
輸出契約:
    住友商事  

230万トン

 
     (東京ガス)  

(140万トン)

 
          (関西電力)   ( 80万トン)  
   Gail(インド)   230万トン  
   合計    460万トン  
  http://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#sumisho
Cameron LNG

株主:
Sempra Energy 50.2%
三井物産 16.6%
Japan LNG 16.6%
(三菱商事
/日本郵船)
GDF Suez  16.6%

Hackberry, LA 承認:未(FTA締結国向けは2012/1)
数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン)
期間:
輸出契約:
   三井物産  

400万トン

 
   三菱商事  

 400万トン

 
   GDF Suez   400万トン  
   合計    1200万トン  
  http://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#LNG
Jordan Cove LNG

株主:
Veresen Inc

Port of Coos Bay, Oregon 承認:未
数量:1.0 Bcf/d(年間 600万トン)
期間:
輸出契約:未定

8月10日にワシントンで始まった米中両国政府による「戦略・経済対話」で、中国側が、米国のシェールガスをLNGとして輸入することに興味を示したことが分かった。米国は「潜在的な輸出相手」と表現し、可能性を排除はしていない。


2013/8/12 米国際貿易委員会(ITC)、Samsung製品の販売差し止め 

米ITCは8月9日、Samsung ElectronicsがApple特許を侵害したとして、Samsung一部製品の米国内への輸入・販売を差し止める命令を出した。
オバマ大統領が60日以内に審査し、拒否権を発動しなければ有効となる。

8月3日には米通商代表部(USTR)が、Appleの一部製品を対象としたITCの輸入・販売差し止め命令を拒否したばかりで、米政府の対応が焦点となる。

2013/8/7 米通商代表、ITCによるApple製品販売禁止命令を拒否

今回対象となったのは、スマートフォンやタブレットを巡る特許侵害の有無で、Appleが2011年夏にITCに訴えたもの。

ITCは今回、画面のタッチ操作とヘッドホン差し込み口に関連した2件の技術特許で侵害を認定した。

U.S. Patent No. 7,479,949 (949特許:touchscreen) のクレーム 1, 4-6,10 と17-20
U.S. Patent No. 7,912,501 (501特許:headset plug detection) のクレーム 1-4 と8

Appleが侵害としていた他の4つの特許については侵害を認めなかった。

 U.S.Patent Nos. D618,678 (D’678特許)、D558,757 (D’757特許)、RE 41,922(922特許)、7,789,697 ( ’697特許)
(*Dはデザイン特許)

ーーー

「949特許」はAppleの創業者の故Steve Jobs が開発者として参加・登録したいわゆる「Jobs 特許」で、Appleの代表的な特許技術である。

2012年12月3日、米国特許庁は同特許の再審査の結果、20のクレームすべてについて無効との予備判定を下した。
この判定は最終的なものではないが、最終的に無効と判断されると今回のITCの決定にも影響する。


2013/8/13   政府、原爆症認定訴訟で控訴せず

広島、長崎での被爆者を原爆症と認めない国の処分を取り消した8月2日の大阪地裁の判決をめぐり、安倍首相は8月9日、控訴しない方針を表明した。

大阪地裁の判決について認定制度を否定する判決ではないと結論づけ、高齢化が進む被爆者の救済を加速する必要があると判断した。
首相は長崎市での平和祈念式典で、認定制度のさらなる見直し作業を加速させる考えを改めて示した。

大阪地裁が国の処分を取り消したのは、原爆投下時に広島や長崎にいたり、投下後に被爆地に入ったりした8人で、2008年に導入された新たな審査基準に基づき、国に申請を却下されていた。

ーーー

被爆者の救済策としては、1957年に健康診断と治療を目的にした原爆医療法が、1968年には健康管理手当など各種手当の支給を定めた原爆特別措置法が施行された。2つの法律は現在、被爆者援護法に一本化されている。

被爆者手帳の所持者で一定の疾病にかかっている人は健康管理手当(2013年4月時点で月額 33,570円)が支給されるが、厚生労働相により原爆症に認定されると、医療特別手当(2013年4月時点で月額136,480円)が支給される。

原爆症認定は、被爆時の放射線が原因で発病するか、治癒能力が低下し治療が必要な人が対象となり、対象となる病気やけがは、がん、骨髄性白血病、脳卒中、被爆の外傷で治療が遅れたことによる運動機能障害などで、熱線や爆風などに起因する被害は対象にならなかった。

2007年3月末時点で、被爆者健康手帳の交付を受けたのは251,834人で、このうち、原爆症認定者は2,242人で、1%に満たなかった。

原爆症の認定は、一定以上の放射線量を被爆しなければ病気や障害は発症しないとの放射線防護学の学説を根拠とした。

放射線量推定方式では、例えば、爆心地から2km地点の被爆線量は1km地点のわずか数%に激減する。
このため、遠距離被爆者などはほとんど認定されていない。

2001年からは年齢、性別、各種疾病と、被爆の因果関係を疫学調査に基づいて計算する「原因確率方式」も加味して適否判断をした。
白血病、胃がん、甲状腺がんなど疾病別に原因確率表が作成されており、50%以上ならほぼ認定するが、確率10%未満では原則却下した。

残留放射線や、降雨時の放射性降下物による被爆線量の算定も十分に評価されておらず、原爆投下の翌日以降、被爆地に足を踏み入れた「入市被爆者」などが認定されるケースも少なかった。

認定基準見直しを求める訴訟が行われ、大阪、広島、東京など6地裁で、国は認定方法の不備を指摘され敗訴を続けたが、いずれも控訴した。

最高裁は2000年7月、原爆症認定審査をめぐる放射線量推定方式の機械的な適用を「健康被害を十分説明できない」として不当との初判断を示し、国に被爆者援護行政の再考を迫った。

これに対し厚労省は、放射線量推定方式は放射線防護の世界基準の基礎となっていることもあり、認定審査について「科学的知見に基づいて公平、公正でなければならず、現行の審査は科学的、客観的で医学的な合理性がある」と正当性を主張した。

北海道新聞 もっと知りたい 原爆症認定基準 (2007/09/15)


2007年8月5日の広島原爆の日の前日、辞任直前の当時の安倍晋三首相は原爆症の認定基準を緩和に向けて見直す意向を表明した。

これを受け、 2008年3月、厚生労働省の「原子爆弾被爆者医療分科会」は認定条件を大幅に緩和した新基準を決定した。

新基準では以下のケースについて、格段に反対すべき事由がない限り、当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとした

対象者
(1)被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者
(2)原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者
(3)原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下より約2週間以内の期間に、爆心地がら約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した者

対象疾病
(1)悪性腫瘍(固形がんなど)
(2)白血病
(3)副甲状腺機能亢進症
(4)放射線白内障(加齢性白内障を除く)
(5)放射線起因性が認められる心筋梗塞

客観的な資料が無い場合にも、申請書の記載内容の整合性やこれまでの認定例を参考にしつつ判断する。

これ以外の申請についても、申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を総合的に判断する 。

しかし、実際には、発病時期のずれや急性症状がないことなど、典型症例から外れた場合は不認定となるケースがあり、さらなる緩和を求める声が出た。

原告側の要求
 ・従来の認定行政を反省し、「疑わしきは認定」を明確にする
 ・少なくとも、がん、白血病は時間、距離の制限なし
 ・甲状腺機能低下症、肝機能障害なども加える

2008年の新審査基準導入後も却下が相次ぎ、取り消し訴訟が続いた。

2013年3月末時点の状況は以下の通りで、医療特別手当受給者は健康管理手当受給者の5%に過ぎない。

被爆者健康手帳保持者  約 20万2千人
健康管理手当受給者    約 17万1千人
医療特別手当受給者      8,552人

大阪地裁は2012年3月、広島で被爆した2名が原爆症と認めなかった国の処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、国の処分を取り消したほか、行政事件訴訟法に基づいて原爆症認定の義務づけを求めた男性の訴えも認めた。
原爆症認定をめぐり、国に対して認定を義務づける判決は初めて。

今回の裁判は大阪、兵庫、京都の3府県の被爆者9人(うち1人死亡)が却下処分の取り消し と、国の審査の遅れで精神的苦痛を受けたとして、慰謝料など1人123万〜300万円を求めた集団訴訟。

裁判長は、既に国の認定を受けている1人を除く8人について被爆と疾病の因果関係を認め、却下処分の取り消しと原爆症認定の義務付けを国に命じた。 国家賠償請求は退けた。

原告は72~87歳の男女9人で、被爆の影響で心筋梗塞や甲状腺機能低下症を患ったとして原爆症の認定を申請したが、8人は却下された。

大阪地裁は心筋梗塞と放射線との関連性を認め、甲状腺機能低下症と放射線との関連性について低線領域の因果関係を肯定した。

8人の症状について「放射線の起因性が認められ…申請を却下する処分は違法」と明確に判断。

新基準での被ばく線量の算定方法は「地理的範囲及び線量評価の両方において過小評価の疑いが強い」「あくまでも一応の目安とするにとどめるのが相当」とし、「さまざまな形態での外部被ばく及び内部被ばくの可能性がないかどうかを十分に検討する必要がある」と した。


2013/8/14 東洋紡、スペインの診断薬・診断機器メーカーを買収 

東洋紡は7月31日、スペインに拠点を置く診断薬・診断機器メーカーでグローバルに販売網を持つSpinreact,S.A.の全株式を取得した。
米国のHealth Management企業のAlere Inc.(旧称 Inverness Medical Innovations, Inc)から取得した。

Spinreact,S.A.は1975年設立で、2005年に英国の診断会社Cozart に買収された。
Cozart は2007年に欧州の薬物検査企業のConcateno PLC に買収され、そのConcateno PLCは2009年に Inverness Medical Innovations, Incに買収され、現在に至っている。

東洋紡は「環境、ライフサイエンス、高機能で、社会に貢献する価値を創りつづけるカテゴリー・リーダー」を目指しており、診断薬や診断システムなどのバイオ分野を注力する分野の一つとしている。

この分野は今後、新興国を中心に年率10%以上の拡大が予想され、海外企業とのアライアンスやM&Aの検討を行ってきた。

Spinreactはスペインをはじめ、アフリカ・中南米・欧州・アジアなど、世界90カ国に代理店を有し、新興国市場に合わせた診断薬関連製品などを豊富にそろえている。
買収を通じ、バイオ分野の海外拡大戦略をより一層加速させる。

買収の狙いは3つで、当初は両社の販売網を活用して既存事業の拡大を図り、将来は両社のバイオ技術を融合して新製品の開発、新市場の開拓を推進する。

1)Spinreactの世界的販売網の活用
   東洋紡の尿検査システム、遺伝子検査システムの販売にスピンリアクト社の販売網を活用

2)製品ラインアップの拡充
   Spinreactの生化学診断薬、免疫診断薬、血清学的診断薬などを東洋紡の中国・東南アジアの販売網で展開

3)欧州での生産拠点の獲得
   東洋紡のバイオ製品の海外展開でSpinreactの欧州生産拠点を活用

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東洋紡のライフサイエンス事業は、診断薬用酵素等のバイオ製品、医薬品、医用膜、医療機器と、海水淡水化用などのアクア膜等を扱っている。

売上高は少ないが、営業利益での貢献は大きい。

東洋紡は1941年、レーヨンの原料であるパルプの自給を目的としてパルプ事業を開始したが、戦時中に中断した。
戦後の1948年に再開、環境汚染対策として、酵母培養によるパルプ廃液処理の研究を開始した。
これがバイオ事業進出のきっかけとなった。

1972年に尿酸測定用診断薬を発売し、バイオ事業に進出、1975年には食品用途での酵素の研究・開発から、診断薬市場にバイオ事業の重点を置く方針を固めた。

その後、1982年に遺伝子工学用酵素の研究開発を開始、ライフサイエンス試薬(制限酵素)を開発した。

機能膜については、1979年に中空糸膜による逆浸透の原理を利用した海水淡水化装置の心臓部となるモジュールを開発、1989年にはサウジアラビアで世界最大の海水淡水化プラントの操業を開始している。
医療用では、1981年に人工腎臓用中空糸膜を開発した。


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