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目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は
2006-5-1
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2014/10/1 住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上
住友商事は9月29日、米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表した。
本年度の株主帰属損益は当初予想の2500億円が100億円と、2400億円の悪化となる。
内訳は下記の通り。
付記 住友商事は2015年3月25日、損益予想を大幅に見直した。
計上損失
付記 2015/3 見直し
見直し後
米 タイトオイル
-1700億円
保有資産譲渡に伴う減損
-2000億円
継続方針の南部地区の減損
豪 石炭
-300億円
石炭価格下落に伴う減損
-260億円
ブラジル 鉄鉱石
-500億円
今後の市況、事業の動向
-650億円
米 タイヤ事業
-200億円
今後の市況、事業の動向
-220億円
米 シェールガス、
北海油田
ー
-400億円
原油・ガス価格下落、事業計画見直し
(合 計)
-2700億円
-3520億円
税効果等
300億円
280億円
株主帰属損益
-2400億円
-3250億円
それぞれの状況は下記の通り。
1)米国のタイトオイル
タイトオイル開発
タイトオイルはシェールオイルとも呼ばれる。
シェールガス開発と同じ水平掘削・水圧破砕技術を用いて頁岩層(シェール層)、石灰岩層(ライム層)、浸透率の低い砂岩層等から原油を抽出する事業で、副産物としてNGL、天然ガスが生産される。
テキサス州におけるタイトオイル開発プロジェクトへの参画
住友商事は2012年8月、米国の独立系石油ガス開発会社であるDevon
Energyがテキサス州Permian Basinで進めているタイトオイル開発プロジェクトに参画する契約を締結した。
プロジェクトの概要
・オペレーター
:
Devon Energy
・開発対象地域
:
米国テキサス州の13郡に跨る地域
・開発計画
:
プロジェクトライフは2012年より30年超を見込む
・生産物の割合
:
原油 6割、NGL 2割、天然ガス 2割
住友商事の参画
・参画比率
:
30パーセント
・取得対象資産
:
Devon社の既存資産(リース権、生産中の原油生産井、付帯中流設備)
・取得リース権
:
195,000エーカー(約790平方キロメートル)
・権益取得対価
:
約1,365百万米ドル
・住友商事はDevon向けに油井管を約20年間供給してきた実績がある。
住友商事は、ケーブルテレビ、スーパー、ドラッグストアなど「非資源」分野に強く、「資源」分野は弱かった。
このため、事業バランスを考え、資源分野の資産を現在の15%から2019年度(創立100周年)までに20%に引き上げる計画で、シェールへの投資を決めた。
今までに約19億ドルを投資している。
今後、「中期計画で見直す必要がある」としており、資源分野の縮小もありうる。
今回の処理
北部地域(約172千エーカー)については、投下資金を回収するほどの生産量が見込めないと判断、Devonと共同で売却する。
売却先、売却額等 詳細は未定だが、資産価値を見直し、固定資産評価損 約1700億円を計上する。
南部地域(約47千エーカー)は現時点では保有継続の予定。
2)豪州の石炭
石炭価格下落による減損 300億円
うち、Isaac
Plains炭鉱については2015年1月末をもって操業停止し、休山することを決定した。
簿価 100億円を減損する。
住友商事は2012年7月、豪州資源会社 Aquila Resources
Limited の子会社が保有するQueensland州のIsaac
Plains炭鉱権益の全て(権益全体の50パーセント)を、総額4億3千万豪ドル(約335億円)で取得した。残り50%はVale
Australia が保有している。
付記
住友商事とVale
は2015年7月、Isaac Plains炭鉱を豪資源開発会社Stanmore
Coal に 1 豪ドルで売却した。
鉄道や港湾業者にインフラ利用料を支払い続ける義務があり、Stanmore に補償金を払うが、引当計上済み。
住友商事はAquila社が同じくQueensland州に保有する探鉱権益(合計:最大21鉱区)に20〜50パーセント参画する権利を取得することについても、合意した。
Isaac Plains炭鉱は2006年に生産を開始し、年間生産能力280万トン(内、約70パーセントが鉄鋼用の原料炭、約30パーセントが電力用の一般炭)の露天掘りの炭鉱で、日本を含めアジアの需要家に石炭を供給してい
る。
3) ブラジルの鉄鉱石
今後の市況、事業の動向によっては減損の可能性あり。今回
500億円の減損を想定(金額は未確定)
住友商事は2010年9月28日、ブラジル鉄鋼大手Usinas
Siderurgicas de Minas Gerais S.A. (Usiminas) が設立する鉄鉱山会社 Mineração
Usiminas S.A. (MUSA) の第三者割当増資を引き受け、30%出資することにつき、最終合意した。
2010/10/4 住友商事、ウジミナスの鉄鉱山子会社に出資
4) 米国タイヤ事業
今後の市況、事業の動向によっては減損の可能性あり。今回
200億円の減損を想定(金額は未確定)
住友商事の子会社で交換用タイヤ販売および自動車修理・メンテナンス事業会社のTBC Corporationは2012年5月、
自動車修理・メンテナンス事業会社の Midas
Inc.を総額約3億1千万ドルで買収した。
TBC Corporationは米国内に56カ所の倉庫と、直営とフランチャイズを合わせて約1200店舗を有する
が、Midasは米国、カナダの1500店舗を含め、14カ国で2250店舗以上を展開する世界でも最大級の自動車修理・メンテナンス事業会社。
ーーー
シェール関連では他社も減損損失を計上している。
1)伊藤忠
伊藤忠は Samsonのシェール事業で 2013年3月期に300億円弱の減損損失を計上、2014年3月期にも290億円を計上した。
Samsonでは開発資金の効果的使用のため、安定生産が見込まれる既開発地域に集中、選択と集中の観点から未開発地域の再評価を行っている。
付記
伊藤忠は2015年4月1日、2015年3月期に本件で約380億円の損失を計上すると発表した。
この結果、Samsonに対する持分法投資の残存簿価は約40億円となる。
伊藤忠は2011年11月、Kohlberg Kravis
Roberts(KKR)などとともに、米エネルギーグループのSamson
Investment Co. を買収すると発表した。
買収後、 Samson Resourcesに改称 した。
KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP
Energy Capital Management とCrestview
Partners が残り15%を出資する。
伊藤忠の購入金額は 10.4億米ドル(約780億円) 。
2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samson を72億ドルで買収へ
2) 大阪ガス
大阪ガスは2014年3月期において、同社が参加している米国テキサス州のPearsall
Shale
ガス・オイル開発プロジェクトが経済性に見合った油・ガスを取り出せず、現時点では生産性の大幅な改善が見込めないとして、 減損損失290億円の計上を発表した。
2013/12/23 大阪ガス、米のシェールガス開発で減損損失計上
このほか、三井物産、丸紅も金額不詳だがシェール関連で減損損失を計上している。
また、 米国のシェールガス開発会社GMX
Resourcesは2013年4月に Chapter
11の申請を行ったと発表した。
2013/4/5
米国のシェールガス開発会社が破産法申請
2014/10/2 Dow Chemical の節税策、控訴審でも敗訴
ルイジアナ州Baton Rougeの連邦裁判所は2013年2月25日、Dow
Chemicalが約10億ドルの節税を行った2つのタックスシェルター行為を否認したうえ、20%の罰金を科した。
Chemtech I は1990年代にGoldman SachsとKing &
Spalding法律事務所が考案したもので、SLIPS(Special Limited Investment
Partnerships)と呼ばれる。
多国籍企業が海外の銀行とパートナーシップをつくり、所得控除を作り出すもの。
Dowは、1993年から1997年の間に、自社の特許をスイスの欧州本部がつくったパートナーシップに移し、それを使うために特許料を支払い、費用に落とした。
Chemtech U はKing
& Spalding法律事務所が考案したもの。
Dowは、1998年から2003年の間に、既に償却済みの一つの化学工場をパートナーシップに移し、それをリースして使用料を費用に落とした。
いずれの場合も、パートナーシップの収益はタックスヘイブンでの所得となり、Dowには課税されないこととなっていた。
Dowは控訴した。問題の金額は1993〜2003年の期間に既に仮払しているため、影響は小さいとしている。
2013/3/4
Dow Chemicalの節税策に違法の判決
付記 米最高裁は2017年1月9日、Dowの控訴を棄却した。
ーーー
第五巡回区控訴裁 は9月10日、Dowが偽のパートナーシップを利用して約10億ドルの脱税をしたとの地裁の判決を支持した。
税務当局(IRS)は、特許や工場は書類の上だけで移転しただけであるとしてDowの損金算入を否認したが、一審では、パートナーシップに2億ドル出資した外国の銀行(複数)は投資に対して
7%のリターンを保証されており、実質的には出資でなく貸付であると主張、地裁はこれを支持した。
控訴裁 は、これらの事実からは、Dowがパートナーシップで外国の銀行と損益を分かち合う意図を持ってはいなかったとする地裁の判断には誤りはなく、偽のパートナーシップ(sham-partnership
holding)であると認定した。
更に 控訴裁 は、「不適切な価格設定」と「不当価格設定」の罪が適用されるかどうかを決めるよう、地裁に差し戻した。
税法(6662条(e)) の「不適切な価格設定」(Substantial
Valuation Misstatements)では20%の過少申告加算税が課される。
税法(6662条(h)) の「不当価格設定」(Gross Valuation Misstatements)では40%の過少申告加算税が課される。
司法省は「不当価格設定」を適用し、40%の罰金を課すべきだと主張したが、地裁判決は「過失」と「不適切な価格設定」を適用し、20%の罰金を課していた。
2013年12月にWoods事件(U.S. v. Woods, 134 S.Ct. 557
(2013) )で最高裁の判決があった。
Gary Woods と雇用者のBilly Joe McCombs
はoffsetting-option のタックスシェルターを利用して多額の書類上の損失を出し、課税所得を減少させたとして訴えられた。
この事件の控訴審で、控訴裁は「不適切な価格設定」を適用した。
これに対し、最高裁は2013年12月、控訴裁の判断を却下し、「不当価格設定」を適用した
。
今回、 控訴裁 は、
地裁判決後に出されたWoods事件での最高裁の判断に基づけば、Dowにもっと厳しい罰則を与えることになるのかどうかを決めるよう、地裁に差し戻した。
控訴裁自体は
どうすべきかについては意見を述べないとしている。
2014/10/3 Ineos、英国でのシェール開発反対を抑えるため大盤振る舞い
Ineosは2014年8月18日、英国のPEDL(Petroleum
Exploration and Development Licence)の133鉱区の権益の51%を取得し、初めてシェール開発に参加すると発表した。
Grangemouth complex
で石化の原料及び燃料として使用する。現在、米国からのシェールガスエタンを輸入するためのインフラを建設中。
PEDL 133鉱区はMidland Valleyにあり、IneosのGrangemouth石油精製・石油化学コンプレックスを含む329km2 をカバーする。
133鉱区の権益の 残りの49%は Dart
Energy が所有する。
2014/8/22
Ineos、スコットランドのシェールガス開発に参加
英国ではシェール開発地域で反対運動が強まっている。
これに対し、Ineosは9月28日、開発地域に対して総額25億英ポンド(約4400億円)を支払う計画を発表した。
発表内容は下記の通り。
・
シェールガス井戸の周辺の住宅所有者、土地所有者、コミュニティにシェールガス収入の6%を支払う。
・ 推定では、新しいシェールガス事業から25億英ポンド以上を払うこととなる。
・ Ineos のシェールガス地域(100km2 ) の住民は掘削期間中、毎年375百万英ポンドを受け取る。
・ このうち、井戸の真上の住宅・土地所有者は、収入の4%を受け取る。(毎年250百万英ポンド)
・ 井戸の周辺のコミュニティは、収入の2%を受け取る。(毎年125百万英ポンド)
・ 井戸は約200あるため、1つの井戸ごとで、住宅・土地所有者は毎年
130万英ポンド、コミュニティは60万英ポンドを受け取る。
掘削期間は6〜7年と見ている。
(250+125) x 6.66 =2,500 百万英ポンド(総額)
(1.3 + 0.6) x
200≒375百万英ポンド(毎年)
同社では、シェールガスの利益をシェアするというのは米国で一般的であり、コミュニティを事業の当事者とし、コミュニティがシェールガス生産を支持するのに役立つと信じるとしている。
ーーー
Ineosの今回の発表は業界に激震を与えた。
英国のシェールガス開発の業界団体UK Onshore Oil & Gas (UKOOG)
加盟の各社は、掘削地域コミュニティに対し、開発段階ではサイトごとに10万英ポンド、生産時には収入の1%を払う約束をしている。
これに対し、Ineosの発表は6%である。
Ineosは
UKOOGのメンバーではあるが、差を付けるのが目的ではないとし、他社とは立場が違うとしている。
シェールガスのユーザーとしての参入であり、米国のやり方(コミュニティに大きな利益を与える)をよく知っている。
英国のシェールガス開発は行き詰っており、現在は否定的な影響のみが伝わっているが、大衆に利益を説明する新しいアプローチが必要である。
業界では、Ineos 提案は生産が始まってからの、今から数年先のことで机上の計算であり、まずシェールガス井戸を掘削し、生産することだとしている。
2014/10/4 Dow
Chemical、ポリウレタン独禁法違反の集団訴訟で控訴審でも敗訴
1999年〜2003年にDow
Chemical、Bayer、BASF、Huntsman、Lyondell の各社がポリエーテルポリオール、MDI、TDI、MDI-TDI ブレンドなどの
Polyether Polyol 製品で価格カルテルを結んだとして
、2005年に米国の需要家が集団訴訟を行ったが、2013年2月20日に陪審員はDowを有罪とし、4億ドルを支払えとする決定を行った。
Bayerは2006年に、違法行為はなかったとしながらも、和解し、55百万ドルを支払った。
2011年にHuntsmanは同様に和解し、33百万ドルを、BASFも同様に51百万ドルを支払った。
破産処理中のLyondellも和解した。
いずれも違法行為はなかったとしながら和解している。
原告側は1999年1月1日からの違法行為を問題としたが、男性2人、女性5人の陪審員は2000年11月以前については認めず、原告の11億25百万ドルの損害の主張に対し、4億ドルの損害を認定した。
Dowは裁判長に対し、有罪の証拠がないとして判決を取り消すように求めるとともに、集団訴訟の原告同士の被害が異なるとし、集団訴訟の要件である"共通性"
がないため、集団訴訟扱いを取り消すことを求めた。
2013/2/27
Dow
Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪
しかし、Kansas
City地裁の判事は2013年5月15日、陪審員決定を退けるよう求めたDowの要請を却下し、3倍賠償の12億ドルを支払うよう命じたが、その後、別の事情で12億ドルから10.6億ドルに減額された。
Dowは控訴した。
ーーー
コロラド州Denverの控訴裁は9月29日、一審判決を支持した。
Dow社員がカルテルを認めたこと、Bayerの証人が競争相手と不適切な会話をしたこと、会話を聞かれないよう公衆電話を使ったり、喫茶店やホテルで会ったりしたと述べたことを証拠とした。
Dow
Chemicalは判決を批判し、司法省が徹底的に捜査したが、起訴されなかったとし、これまで常にカルテル参加を否定しており、これについても徹底的に争うとしている。
もう一つの争点の「集団訴訟」を認めるかどうかについては、控訴裁は集団訴訟を認めた。
Dowの需要家の一部が交渉したり、ライバルの製品を使うことなどで値上げを防ぐことが出来た筈であったとしても、最近の最高裁の判決を基にしても、集団訴訟の要件である
"争点の共通性" はあると認め、個別に訴えることは必要でないとした。
ーーー
米最高裁は2011年と2013年の判決で、集団訴訟に厳しい制限を加えた。
米国の集団訴訟(Class
Action)は、一個人が同じような立場にある多数の人々を代表して訴訟提起し、集団的な請求を行うことを可能とする。
クラス構成員の定義(例えば某社の某製品を特定期間内にアメリカ国内で購入した者全員)に該当する者は、自ら参加する意思表明を行わなくとも、その訴訟から離脱する意思を積極的に表明しない限り、集団訴訟の原告になるため、原告の数が膨らみ、請求金額の合計も膨大なものとなる。
集団訴訟は裁判所に認められる必要があるが、その条件は下記の通り。
・クラス構成員が十分に多数であること (多数性)
・クラス構成員が共通の事実問題又は法律問題を有していること (争点の共通性)
・クラス代表者がそのクラスに典型的な請求又は防御を有していること (代表者の請求・防御の典型性)
・クラス代表者が公平適切にクラスを代表できること (代表の適切性)
・ 個人に固有の争点に対し、共通の争点が支配的であること
(共通争点の支配性)
・クラスアクションが当該紛争解決の方法として、他の方法に比して優れていること (紛争解決方法としての優越性)
これまでは 、裁判所は、中味の審理が重要として、集団訴訟を認めるかどうかについては厳しくなかった。
しかし、 最高裁は最近の判決で、これを厳しくした。
1) Wal-Mart Stores 事件
連邦最高裁判所は2011年6月20日、米小売大手Wal-Mart
の女性従業員が同社を相手取り、待遇面で性別による差別を受けたとして損害賠償などを求めた訴訟について、集団訴訟として扱うことは認められないとの判断を下した。
この裁判が集団訴訟になれば原告資格を持つ人が約150万人という史上最大規模の集団訴訟になる可能性があったため注目を集めていた。
最高裁は、ウォルマートの女性従業員に対する雇用方針は包括的ではなかったため、女性従業員が受けたと主張する差別の内容はひとりひとり違う可能性があると判断した。
「争点の共通性」は一つで足りるが、中心的な争点について具体的に共通することが必要であるとした。
原告は、(1)給与及び昇進についての男女差別を示す統計データ、(2)社会学者による分析、(3)差別を受けたことを述べる数百の女性従業員による陳述書、という証拠によって、ウォルマート全店舗に共通の差別的方針があるとしたが、最高裁は、これらでは全米3400店舗を包括する差別方針があることの立証としては足りないと判断し、「共通の争点」に欠けるため、クラスアクションの承認は認められないとした。
2)Comcast Corp 事件
フィラデルフィア地域の住民が、ケーブルテレビのサービス料金が高すぎるのは、CATV米最大手コムキャストが競争相手を買収し、競争を制限したのが原因として集団訴訟を申し立てたことについて、連邦最高裁判所は2013年3月26日に申し立てを認めない決定を下した。
連邦最高裁の多数意見は、「共通争点の支配性」の要件を満たす為には、クラス全体に適用される損害算定方法を提示しなければならず、損害の算定方法は、法的責任(liability)についての主張と一貫性がなければならないと述べた。
原告は「反競争的な効果」について4つの理論を主張したが、地裁はこのうち3つは否定、1つは認めた。しかし、損害賠償額の算定では4つの理論によるものが混在していた。
地裁は、原告の住民が勝訴した場合の損害賠償額の算定方法に関して、原告側が提示した方法を吟味しなくとも集団訴訟は進められるとしたが、最高裁は 原告提示の方法ではクラス全体に共通する方法で損害を算定できるものではないと判断し、地裁 の決定は誤りであるとの判断を示した。
今回のコロラド州Denverの控訴裁は、上記の最高裁判決を勘案しても、集団訴訟として認められると判断した。
2014/10/6 Dow Chemical、非戦略事業の売却を進める
Dow Chemical
は10月2日、非戦略事業の売却計画の進行状況を発表した。
同社では、2015年までに45億ドル〜60億ドルの非戦略事業、資産の売却を計画している。
ーーー
同社は2013年3月に 1年半で15億ドル以上の資産を売却すると発表した。
この時点では売却事業として、PP
Licensing and Catalysts 部門とPlastics Additives 部門を挙げた。
Dowは2013年10月11日、PP
Licensing & Catalysts Business をW. R. Grace
に5億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
Plastics Additives については、 DowのLiveris会長兼CEOは2013年9月17日の説明会で、買い手の価格が安すぎるため、売却を中止すると述べた。
2013/3/19
Dow Chemical、非中核事業の資産売却を促進
2013年7月の第2四半期決算の説明会では、更なる売却を検討していることを明らかにした。
各事業を市場の成長性とEBITDA率で分析、Performance Plastics、Agricultural
Sciences、Electronic & Functional Materials の3事業は有望事業とした。
残りのCoatings &
Infrastructure Solutions と Performance
Materialsの2事業のうち、エポキシ、欧州の建築資材(Building &
Construction)、塩素誘導品(クロロフォルム、メチルクロライドほか)などは期待以下であり、JVや売却などを含むあらゆる可能性を検討する必要があるとした。
2013/7/30
Dow も更なる事業売却を検討
この後、2013年10月には売却目標を30〜40億ドルに引き上げた。年末には塩素事業の売却を発表した。
2013/12/5 Dow
Chemical、塩素事業からの撤退を発表
ヘッジファンド、Third Point
LLCを率いるActivist Investor(物言う株主 )のDaniel
Loebは2014年1月21日、Dow
Chemicalに手紙を送り、石油化学事業とスペシャリティケミカル事業を分離するよう求めた。
Dow Chemical
はこの可能性を検討した結果、分割のメリットはないと判断し、要求を拒否した。
2014/2/18 物言う株主、Dow
Chemical の分割を要求、会社側は拒否
石油化学事業とスペシャリティケミカル事業の 分離要求に対抗するため、Dowは3月19日の投資家向け会議で売却目標を45〜60億ドルに引き上げた。
ーーー
今回、Dowは次の3事業の売却を進めていることを明らかにした。年末までに契約を結び、2015年早々に取引を完了する見込みで、3事業の売却額は20億ドルを超えるとみている。
1)子会社
Angus Chemical
Company
同社は 1936年に最初の特許申請をして以来、ニトロアルカン関連製品を開発、製造している。
現在、4つのニトロアルカン製品、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンを製造している。
付記
Dowは2014年11月12日、Golden Gate Capital に $1.215
billionで売却すると発表した。
2)水素化ほう素ナトリウム(Sodium Borohydride)事業
Dow
はファインケミカルの合成に使う試薬、水素化ほう素ナトリウムやホウ酸トリメチル ( TriMethyl Borate) などを供給している。
付記
Dow はこの事業をVertellus
Specialty Materials LLC に売却すると発表した。
また、オハイオ州Findlayのポリオレフィンフィルム工場をVALGROUP Packaging
Solutionsの子会社Valfilm North America, Inc. に売却する。
売却額は合わせて $225百万ドル。
3)AgroFresh
AgroFreshはDow AgroSciences部門に属する子会社で、果実の成熟を抑えたり、カットした果物の傷みを抑えるのに用いられる
1-MCP (1-Methylcyclopropene) などを扱う。
これに加え、Dow
は北米の貨車の大部分を450百万ドルで売却したと発表した。リースに切り替える。
塩素事業 (クロルアルカリ / クロルビニル、有機塩素、エポキシ)の売却も進めており、年末までにオファーを受け、2015年第2四半期初めまでには契約が締結できるとみている。
今までに完了した処分合計は13億ドルで、最終的に目標の45〜60億ドルの上の方に収まるとみている。
ーーー
Dowは上記の通り、PPの Licensing
& Catalysts 事業をW. R. Graceに売却したが、PE 技術のライセンサーであるUnivation
Technologies, LLCについては、JV相手のExxonMobil の50%持分を買収し、100%子会社とする。
Dow Chemical とExxonMobil Chemical
は10月2日、現在は両社の50/50JVであるUnivation Technologies, LLCをDowの100%子会社とすることで合意したと発表した。
Univation Technologies は UNIPOL™ PE Process Technology
のライセンサーであり、UNIPOL法の触媒(UCAT™
Conventional、ACCLAIM™ Advanced Unimodal、XCAT™ Metallocene、PRODIGY™ Bimodal Catalysts)の製造販売を行っている。
2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社 ウジミナスを巡る争い
アルゼンチンのTernium グループは10月2日、Usiminas (Usinas
Siderurgicas de Minas Gerais SA)の株式を買い増すと発表した。
ブラジル銀行年金基金から株式の10.2%を、過去半年の平均株価に42%のプレミアムを加えた 6億1670万レアル(約270億円)での買い取りで合意した。
Terniumグループの持ち株比率は27.66%から37.86%に上昇し、Usiminas
の経営方針を巡り対立している新日鉄住金グループの比率(29.45%)を上回る。
新日鉄グループ(新日鉄、日本ウジミナス、三菱商事グループ)、 Ternium
グループ 、従業員年金基金の3社は、2011年の ブラジルの鉄鋼大手CSN
(Companhia Siderurgica Nacional SA)
による買収提案に対抗し、株主間協定を締結している。
ブラジルの鉄鋼大手CSN (Companhia Siderurgica
Nacional SA) は2011年9月、同業のUsiminas の株主2社に対し、ウジミナスの議決権株式26%分の買い取りを正式に提案した。
CSNは8月末に、市場で同社株を購入し、現在、ウジミナスの普通株11.29%、優先株15.1%を保有していると発表している。
新日鉄は11月28日に、これに対抗し、大手鉄鋼会社Ternium
Groupと年金基金の間で、協定株購入に関する契約および同社に関する新たな株主間協定を締結したと発表した。
1)
新日鉄が、ウジミナスの従業員年金基金から、全議決権の約1.69%相当を購入。
2)
中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium
Groupが、CSNが株式購入を提案した相手の VotorantimとCamargo
Correa 及び 従業員年金基金から全議決権の約27.66%相当を22億ドルで購入。
3)
新日鉄グループ(新日鉄、日本ウジミナス、三菱商事グループ)、テルニウム・グループ、従業員年金基金の間で、新たな株主間協定を締結。
重要事項を決める際には事前に協議し、株主総会でも共同歩調を取る。
2011/9/24
ブラジル鉄鋼大手CSN、ウジミナス株買い取りを提案
新日鉄住金とTerniumの間には経営方針を巡る対立があった。
2012年1月に社長に就いた Ternium出身の Eguren氏は、投資と経費の削減、生産性向上、資産売却、人員整理など経営再建に努め、業績は目立って改善されてきた。
新日鉄住金は自動車用鋼板など高級品で収益拡大を目指しているのに対し、Terniumはコスト圧縮による短期収益改善と南米での自社販売網を活用した汎用品の販売拡大を
狙っているとみられる。
Usiminasの経営審議会は9月26日、 Ternium グループ出身のJulián
Eguren社長と子会社社長、製造担当取締役の3人の解任を発表した。
経営審議会で賛否は5対5だったが、議長の判断で解任が決まった。
Terniumは、事前協議がなく、株主間協定に違反するとしたが、新日鉄住金は、会社の規定にない賞与を受け取ったコンプライアンス違反が理由とし、協定違反でないと主張した。
日本側は経営権の掌握のため、今回の社長を含む役員解任に出たと見られている
が、表に出ている事実からだけでは、ちょっと強引すぎる感がある。
Terniumは「権利と投資に見合う適切な行動を取る」との声明を出したが、協定は失効したとみなし、自社が経営権を握るために買い増しをしたとみられ
る。
両サイドの投資目的が異なっているのであれば、妥協は困難と思われ、どちらかが支配権を握り、他方が撤退するしかないのではないかと思われる。
付記
ウジミナスは2015年4月6日、臨時株主総会を開き、取締役を選ぶ経営審議会の議長に中立派が選ばれ、ひとまず「引き分け」となった。
付記
CEO解任をめぐる法廷闘争で、ブラジルの裁判所は2015年5月5日、解任を支持する判断を下した。
議決権推移
〜2011年11月
2011/11協定
今回
新日鉄住金・日本ウジミナス社
26.14
27.83
27.83
三菱商事・メタルワン
1.62
1.62
1.62
日本グループ合計
27.76
29.45
29.45
Votorantim
13.0
Camargo Correa
Group
13.0
V/Cグループ合計
25.97
0
ウジミナス社年金基金
10.13
6.75
6.75
Ternium Group
27.66
37.86
協定株主計
63.86
63.86
付記
株主間協定では、新たに購入した株を協定に盛り込むには、両社の合意が必要だが、新日鉄住金側は応じておらず、協定上の比率は2011/11協定のまま。
Terniumが追加購入した株については、“Controlling Group”の決定に従うのみ。
協定は2031年11月まで有効
2014/10/8 パナソニック、リチウムイオン電池の生産会社を米国に設立
パナソニックは10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic
Energy Corporation of North America をネバダ州スパークスに設立した。
新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。
この新工場の立ち上げにより、長い航続距離を実現するリチウムイオン電池パックの製造コストを削減し続けるとともに、Tesla Mortorsが計画している大衆向け電気自動車用に必要となる生産量を確保し、電気自動車の普及に貢献する。
Tesla Motors
は2014年2月26日、転換社債によって16億米ドルを調達する計画を発表するとともに、米国南西部に「Gigafactory」と呼ぶ大規模なリチウムイオン電池工場を建設する方針を明らかにした。
同社が販売するEV「モデルS」などに搭載されている
18650サイズ(直径18×長さ65mm)のリチウムイオン電池セルと、その電池セルを使った電池パックをこれまでにない規模で大量に生産する。2017年に稼働を開始し、2020年にはフル生産に入る計画で、フル生産時の年間生産規模は、電池セルで35GWh相当、電池パックで50GWh相当に達する。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを用いて生産を行う方針。従業員数はフル稼働時で最大6500人を見込む。
総投資額は40億〜50億米ドルになるが、Teslaが直接投資するのは20億米ドル程度にとどまり、残りは、パナソニックなどのパートナー企業が負担する。
Gigafactoryで生産する電池セル35GWhは2013年の全世界のリチウムイオン電池セル生産量を超えるものである。
パナソニックとTeslaは、EV用の次世代電池を開発、EV市場の拡大を加速するなど、これまで複数年に亘る協力関係を築いてきた。
パナソニックは2010年11月にTeslaに3000万米ドルを出資したと発表した。
Teslaは、Tesla製の先進的な電池パックにパナソニックのリチウムイオン電池を搭載しており、またEV用の次世代リチウムイオン電池を共同で開発するなどパナソニックとは親密な関係があり
、パナソニックを優先サプライヤーとして位置づけている。
パナソニック
は、2013年6月でTesla Mortorsの高級EVセダン「モデルS」向けリチウムイオン電池セルの累計出荷1億個を達成した。
パナソニックとTesla Motors は2013年10月30日、パナソニックがTeslaにEV用リチウムイオン電池の供給を拡大する契約を締結した。
パナソニックは2014年〜2017年に約20億セルのリチウムイオン電池を供給する。
Teslaがパナソニックから購入する電池は、モデルSと同様に2014年末までに量産予定の多目的車のモデルXにも搭載される。
パナソニックとTesla Mortorsは2014年7月31日、米国においてギガファクトリーと呼ばれる大規模な電池工場の建設に関して、両社が協力することに合意した。
Teslaは土地、建物、そして工場設備を準備し、提供・管理する。
パナソニックは、双方同意のもと、円筒形リチウムイオン電池セルを生産・供給し、リチウムイオン電池セルの生産に必要な設備、機械、およびその他の治工具などに投資
する。
ギガファクトリーで必要な材料の前駆体は、パートナーサプライヤーで構成されるネットワーク内での生産を計画して
おり、Teslaは、セルや他の部品を用いて電池モジュールおよびパックを製造する。
ギガファクトリーでは 2020年までに年間
35GWh 相当のセルと 50GWh 相当のパックを製造することを計画している。
付記
住友金属鉱山は10月20日、車載用二次電池の需要拡大に対応するために、二次電池用正極材料(ニッケル酸リチウム)の生産設備の増強投資を行うと発表した。
同社はパナソニックと共同で二次電池用正極材料の高性能ニッケル酸リチウムの開発に成功し、パナソニックに提供しているが、パナソニックのTesla Motors 向け出荷が今後増加するため、磯浦工場他でニッケル酸リチウムの生産設備の増強を行う。
設備投資額は総額約150億円で、850トン/月から1,850トン/月に増設する。2015年12月完成を予定。
ーーー
パナソニックは2013年3月期までの2年間で計1兆5千億円の連結最終赤字を計上し、プラズマテレビからの撤退など構造改革を進めてきた。
2019年3月期に連結売上高を前期比約3割増の10兆円にする計画を掲げ、オートモーティブ関連事業(車載マルチメディア関連機器、環境対応車関連機器、電装品等)では2兆円をめざし
ている。
2014年度事業方針(2014/3/27)
¥
この一環として、パナソニックは9月30日、スペインのFicosa
International S.A.と資本業務提携で合意した。49%を取得する予定。
Ficosaはバルセロナに本社を置く自動車用システムや部品の製造販売を行う
Global Tier 1 サプライヤーで、全世界18カ国に拠点を持つ。
ミラー事業は最大の主力事業で、サイドミラーでは世界第3位のシェアを誇る。
パナソニックはFicosaが保有する欧米自動車メーカーへの強い販売力を活用し、Display
Audio などの車載マルチメディア機器および車載用デバイスの事業拡大を加速させる。
Ficosaは 画像認識技術を持ち、自動運転関連技術の共同開発も視野に入れる。
Ficosaはパナソニックのルート(特に日系自動車メーカー)を活用し、カメラ洗浄システム(カメラの視界をさえぎる汚れ等を水や風圧で除去する機能)、テレマティックス制御視システム(車両と車両、車両と外部の無線通信を可能とする通信ユニット)、電子シフター(車両の変速機を電気的に操作するためのデバイス)などの販売を促進する。
2014/10/9
Chevron、カナダのシェール権益の30%をクウェート石油子会社に売却、JV運営
Chevronは10月6日、カナダAlberta 州のDuvernay
シェール層の30%の権益をKuwait Petroleum の100%子会社 Kuwait Foreign Petroleum Exploration
Company(KUFPEC)に15億米ドルで売却する契約を締結したと発表した。
両社はパートナーシップを組み、Duvernay シェールプレイのKaybob
地域の約33万エーカーの土地で liquids-rich のシェールの評価、開発を行う。
Chevron は70%の権益を維持し、オペレーターを続ける。
Chevronは開発費負担を軽減するため、パートナー企業を探していた。
同社のCEOは先月、未公開株投資企業からの出資受け入れも否定しない考えを明らかにしていた。
パートナーを探すChevronと、シェール開発に参加して技術を獲得しようとするKuwait の思惑が一致した。
Chevron
は開発の開始後、16の井戸を掘削し、13の井戸が完成している。このうち10の井戸がパイプラインに接続されており、天然ガスを日量750万立方フィート、コンデンセートを日量1300バレルを生産している。
Chevronは2017年にかけての評価を実施しており、その後開発を行う。
これはKUFPECにとって北米での最初の投資であり、ワールドクラスのシェール採掘者と共同でシェールの技術を開発する好機であるとしている。事業参加により、シェールの知識と技術を学ぶ。
KUFPECはKuwait Petroleum Corporation
の100%子会社で、クウェート国外で原油と天然ガスの探査、開発、生産を行っている。
現在、14カ国で60のプロジェクトに参加しており、2020年までに原油換算で埋蔵量で650百万バレル、生産量で20万バレルを目指している。
ーーー
ChevronはカナダのBritish Columbia州でApache
Corp. との50/50JVでKitmat LNG Project (Summit LakeからKitimat港まで直接結ぶ Pacific
Trail Pipelines計画と、Kitimat 郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設の計画)を進めている。
日揮は2014年1月、米国Fluor と共同で、Kitmat LNG
Project に係わるLNGプラント建設の発注内示を受けたと発表した。
2014/1/17 日揮と千代田化工、北米でLNGプラント建設
また、ChevronとKUFPEC、Apache Corp.、東京電力等は 豪州
Wheatstone LNG プロジェクトに参加している。
2012/5/17 東電の豪州LNG計画
しかし、Apache Corp.は、 物言う株主の
Jana Partners LLC(ヘッジファンド)からリストラ実施の圧力を受け、本年7月にカナダのKitmat LNG
計画と豪州のWheatstone LNG 計画からの離脱の意向を明らかにした。
Chevron はKitmat
LNGについては新しいパートナーを探す意向だが、計画を進めるには州政府との税その他を巡る交渉や、パイプラインのルートを決める交渉、需要家との供給契約など、決めるべき多くの問題がある。
Wheastone LNG については、Apache
は年内に売却先を決めるとしている。アジア勢や豪州のWoodside が噂に上がっている。
ーーー
マレーシアの国営石油会社
PetronasはカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸でLNGプロジェクトを計画しており、 石油資源開発(JAPEX)、 ブルネイの PetroBRUNEI 、インドのIOCLが参加している。
2014/3/15
Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加
Petronasは10月7日、税金と環境コストが悪影響を与えており、現在の評価では利益はほとんど見込めないとし、州政府に対し、税金や規制面での特典を要請した。
10月末までに回答を求め、それまでに好回答がない場合、計画は10〜15年遅れるだろうと警告した。
州政府は10月7日に始まる議会に、LNG工場への新しい課税プラント排出基準を提案する。
ーーー
天然ガス価格の下落を受け、シェール計画やLNG計画にも逆風が吹き始めている。
2014/10/10 アスベスト訴訟、最高裁 「国に責任」の判断
大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟( 大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣) で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。
元従業員は1、2陣に分かれて集団提訴し、1審はいずれも勝訴したが、2審・大阪高裁で国の責任の有無について判断が分かれ、双方が上告していた。(詳細下記)
小法廷はまず「労働環境を整備し、生命、身体に対する危害を防止するため、国は技術の進歩や医学知識に合うよう適時・適切に規制権限を行使すべきだ」との枠組みを示し、具体的に3つの点について、規制時期が適切であったかどうかを検討した。
判決
(1)1971年の粉じん排気装置の設置義務化
原告主張 認める
「1958年には実用的な技術も普及しており、義務化が可能だった」
(2)1988年の粉じんの濃度規制強化
退ける
「1988年以前から専門的知識に基づき一定の規制がされていた」
(3)1995年の防じんマスク着用義務化
退ける
「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」
結論として、裁判官5人全員一致の意見で、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」とし、国の責任を認めた。
粉じん装置設置義務化の1971年以降に作業に従事した7人(1陣6人、2陣1人)については、国の責任はないとして敗訴が確定した。
このうち、「濃度規制強化」と「マスク着用義務化」の遅れを理由に2審で賠償が認められた1名は逆転敗訴となった。
賠償金については下記の通り。
地裁
高裁
最高裁
1971年以前から作業に従事
1971年以降従事
第1陣
4億3500万円
敗訴
28名
賠償額確定のため、審理差し戻し
6名 敗訴
第2陣
55名計
1億8000万円
55名計
3億4500万円
54名計
3億3200万円
1名 敗訴
菅官房長官は10月9日の記者会見で、最高裁が判決で国の賠償責任を認めたことについて「国の責任が認められたことは重く受け止めている。厚生労働省で判決に従って適切に対応する」と述べた。
塩崎厚生労働大臣は記者団に対し、「判決が国の責任を認めたことを重く受け止めており、原告には誠に申し訳なく思う。判決に従って対応したい。今後、アスベストの健康被害を防止するための対策を徹底していく」と述べた。
付記
第1陣28名については賠償額の算定のため2審の大阪高等裁判所に審理が差し戻され、国は早期解決のため和解に応じる意向を示した。
12月26日、原告27人(最高裁判決後
1人死亡)が国と和解した。
和解内容は(1)国が謝罪する(2)国は責任割合を2分の1とした最高裁判決に沿い、約2億7300万円を賠償する(3)被害者を掘り起こすために厚生労働省が周知する(4)泉南地域の工場跡に残る石綿の除去を進めるよう厚労省が関係省庁に伝える−−の4点。
国は今後、最高裁判決の条件に合う被害者が新たに同種訴訟を起こせば賠償に応じる方針で、新たな訴訟は来年2月にも提起される見通し。
全国のアスベスト訴訟で、国の賠償責任を認める最高裁判決は初めてで、各地の同種訴訟に影響を与えそうだ。
厚生労働省によると、アスベストの健康被害では、今回のものも含め、全国で830人余りが14の裁判を起こし、国や企業に対し総額で265億円余りの賠償を求めてい
る。
但し、原告によっては、今回の判決は直ちには影響しない。
アスベスト工場従業員
影響を与える可能性あり
周辺住民
影響を与える可能性あり
但し、 1975年以前に 周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見がなかったことをどう判断するか。
建設現場でのアスベスト製品の使用(屋外、屋内)
アスベスト製品の使用であるため、「排気装置義務付け」とは関係なし。
「防じんマスクの着用義務づけ」 は 「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」が、建設現場では主な手段であるため、裁判での争点となる。
本件の一審、二審の結果は下記の通り。
大阪アスベスト訴訟(第1陣)
泉南地域の工場の元労働者、近隣住民及びその遺族が9億4600万円の損害賠償を求める。
大阪地裁(2010/5)
大阪高裁(2011/8)
結論
原告勝訴
「石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」
一審判決取消
賠償金
34人
1人あたり 687万円〜4,070万円
総額は 約4億3500万円。
対象外
工場近くで石綿粉じんにさらされたとして「近隣暴露」を訴えた元周辺住民
理由
・国が石綿被害の実態と対策の必要性を認識した時期
石綿に関係する医学的な知見は1959年に石綿肺について、72年には肺がんと中皮腫についておおむね集積された。国はそれぞれの時期に、防止策をとる必要性を認識していたと言うべきだ。
・1960年時点で国が石綿肺防止のための省令を制定しなかったこと
石綿肺の医学的知見が59年におおむね集積され、重大な被害が発生していることを認識しているのだから、被害の防止策を総合的にとる必要性も認識していたということができる。
省令を制定・改正し、排気装置の設置を義務づける規定を設けなかったのは、著しく合理性を欠き、違法だというべきだ。
・1972年時点で国が石綿肺防止の省令を制定しなかったこと
測定結果の報告などを義務づける必要があったが、国はこれを怠った。これは著しく合理性を欠き、違法だったというべきだ。
・省令制定権限不行使の違法と石綿粉じん暴露による損害との因果関係
国の省令制定権限不行使の違法と、60年以降に石綿粉じんに暴露し石綿関連疾患になった労働者の原告、またはその相続人らの損害には、相当因果関係がある。
「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」
但し、「過去に吸い込んだアスベストによって深刻な被害が現実化していることを考えると、長期的な危機管理として必ずしも十分でない部分があったことは否定できない」
詳細
2010/5/22
アスベスト被害で国の責任認定
2011/8/30 アスベスト被害訴訟、高裁で逆転判決
大阪アスベスト訴訟(第2陣)
泉南地域の工場の元労働者ら 55人が約11億3千万円の損害賠償を求める。
大阪地裁(2012/3/28)
大阪高裁 (2013/12/25)
結論
原告勝訴
原告勝訴
賠償金
総額約1億8千万円賠償命令
原料搬入の運送業者の元従業員1人の遺族の請求も認定
総額3億4500万円賠償命令
損害賠償額を増額
喫煙による減額を否定
対象外
1960〜71年の期間外に勤務していた従業員や、勤務先から十分な賠償を受けたと認められる原告の請求は棄却
国の責任負担割合
従業員の健康被害について最終的責任を負うのは使用者で、被害額に対する国の責任の割合は 1/3
被害額に対する国の責任の割合は1/2
理由
1959年までには石綿肺の医学的知見が集積され、国は粉じんによる被害が深刻だと認識していた。
旧じん肺法が制定された60年までに対策を取るべきだった。
1971年までに石綿粉じんを除去する排気装置の設置を罰則付きで義務づけなかったのは著しく合理性を欠き、違法
工場内の石綿粉じんの濃度規制については、1988年まで学会の勧告値に従わなかった点は「遅きに失した」
以下はその他の国を対象とした訴訟の判決
神戸アスベスト訴訟(第1陣)
尼崎地域のクボタの工場付近居住者2名の遺族らが クボタと国を相手取り、計7900万円の損害賠償を求める。
クボタは被害発覚後、周辺住民らに最高4600万円の救済金を支払ってきたが、遺族らは受け取らず、「責任を認めて謝罪してほしい」として提訴した。
男性は1939〜75年に、同工場の約200メートル先の工場に勤務、自宅は約600メートル離れていた。
女性は1960年から1995年まで、1.1〜1.5キロ離れた家に住んでいた。
神戸地裁 2012/8/7
大阪高裁 2014/3/6
国の責任
1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、健康被害を防止する立法をしなかったことが違法とはいえない
1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、国が被害防止の立法や規制をしなかったことに違法性はない
クボタの責任
男性: 賠償金 約3190万円
女性:認容せず
男性: 賠償金 約3190万円
女性:認容せず
詳細
2014/3/13 近隣住民によるアスベスト訴訟、高裁も企業に賠償命令、国の責任は否定
付記
原告側と企業側が上告していたが、最高裁判所第3小法廷の大谷剛彦裁判長は、2015年2月17日付けで、いずれも退ける決定をした。
この結果、国の責任は認めず、企業の責任を認めて賠償を命じた判決が確定した。
アスベストを扱う工場の周辺住民の健康被害について、企業の責任を認めた判決が最高裁で確定するのは初めて。
屋外型の横浜建設アスベスト訴訟
建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどを発症した建設労働者や遺族計87人が、国と建材メーカー44社に総額約29億円の損害賠償を求める。
横浜地裁 (2012/5/25)
結論
原告の請求を全て棄却
理由
「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」
2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。
屋外型の東京建設アスベスト訴訟
東京地裁 (2012/12/5)
結論
国に対する請求を一部認容
賠償金
170人に総額10億6394万円の賠償命令
理由
1) 国は石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ。
遅くとも1981年以降は
・事業者に防じんマスクの着用を罰則つきで義務づける
・建材に「肺がんなどを生じさせる」と警告表示する――
などの対策をとれば、多くの被害を防止できたと結論づけた。
2) この時期以降に屋内で 建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある。
3) 屋外作業では危険性を容易に認識できたと言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない。
4) 石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない。
詳細
2012/12/10 建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令
付記 2014/11/7 下記の判決があった。
建設アスベスト訴訟で国の責任を認めるのは、東京地裁判決(控訴中)に次いで2例目
屋外型の 九州建設アスベスト訴訟
福岡地裁 (2014/11/7)
結論
国に対する請求を一部認容
建材メーカーへの訴えは却下
「一人親方」などの原告15人については認めず。
賠償金
36人に総額1億3700万円の賠償命令
理由
建設現場での防じんマスク着用は「被害防止対策としては唯一有効な手段」
国は遅くとも1975年までには石綿被害の危険性を認識できた。
同年から罰則付きでマスク着用を義務づけるべきだった。
危険性を知らせる警告表示について、建材や建設現場などで義務づけるべきだった。
1995年まで国がこうした規制を怠ったのは「違法」
一人親方は個人事業主で労働基準法が適用される労働者に当たらない。
建材メーカーについては加害企業の特定が出来ないとした。
「建材メーカーは製造販売の時期や製品がそれぞれ異なり、加害行為の一体性を一律に認めることはできない」
「42社以外に損害を与える企業がなかったと証明されていない」
詳細
付記
2016年7月25日、国が対策を怠ったためアスベスト(石綿)で肺を患ったとして、元ボイラー設備工が国に1045万円の損害賠償を求めた訴訟は東京地裁で和解が成立した。
国が請求全額を支払う。
アスベスト訴訟で国が石綿工場の元従業員(遺族含む)以外と和解するのは初めて。
勤務時間の8割はボイラー設備工場で石綿を使った断熱材などの製造に携わっており、石綿工場労働者と認められた。
2014/10/11 Rio Tinto、Glencoreからの統合提案を拒否
英豪資源大手のRio Tinto は10月7日、スイスのGlencoreが7月に経営統合の打診を
したが、取締役会は統合は株主の利益にならないとの満場一致の結論に達し、8月初めに拒否回答を行い、その後コンタクトはないとの声明を発表した。
前日にBloombergが下記の報道を行っていた。
Glencore は来年にもRio
Tintoと経営統合すべく基礎固めを行っており、成立すると世界最大の鉱山会社となる。
(Rioの時価総額は560億ポンド、Glencoreは448億ポンドで、世界最大手の豪英BHP Billitonを規模で上回る。)
その準備として、Glencoreは 近く
Rioの株式の9.8%を持つ最大株主の中国のAluminum Corp. of China (Chinalco)
と会談し、統合計画への関心を探る。
Glencore ではChinalco は、Rio
に取締役を出すことが出来ずに終わったこと、ギニアでの鉄鉱石JVが進展しないことなどから、経営体制の変更に賛成するとみている。
Glencore は他のRio
株主の意向も探っており、同時に、戦略面、金融面、規制面での障害の検討を行っている。
Rio Tintoには非公式には伝えているが、正式の提案はしていない。
中国の資源需要の減速を受け、資源価格は下落基調にあるが、特に、Rio
の主な収益源である鉄鉱石の価格が5年ぶりの低水準となっている。
アナリストによると、 鉄鉱石の価格が1ドル下がるごとにRioの資産価値が15億ドル低下すると分析しており、銅などの非鉄金属が主力のGlencoreが買収を狙うとの観測が高まっていた。
今後については、Glencoreが敵対的買収に進むという見方と、その可能性は低いとする見方が混在している。
しかし、Glencoreは下記の通り、Xstrata 買収時に中国政府と交渉を行い、中国に有利な条件で合併の承認を得ている。
報道のとおり、Rio Tintoに不満を持つChinalcoと提携する可能性はある。
ーーー
Glencore はXstraを買収している。
スイスの商品取引最大手Glencore
Internationalは2012年2月、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。 2012年11月にそれぞれ株主総会を開き、合併案を承認した。
新会社の社名はGlencore Xstrata International PLCとなる。
2012/11/26 Glencore
とXstrataの合併
なお、Xstrata は2009年6月にAnglo American
に対等合併の提案書を送付したが、Anglo Americanはこれを拒否し、 2009年10月にXstrataは交渉を断念した。
2009/6/25
スイスの資源大手 Xstrata が英国のAnglo American
に合併提案
中国商務部は2013年4月22日、 スイスの商品取引大手Glencoreと鉱山大手Xstrata の合併を厳しい条件付きで承認した。
中国商務部は合併会社は世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れた。 これに対し、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示した。
このほか、Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。
Glencore
は2014年4月、Las Bambas copper mineを中国の Minmetals(中国五鉱集団公司)、CITICグループ(中国中信集団有限公司)、Guoxing
Invstment(中国国信集団)の3 社が設立したコンソーシアムMMG Ltd
に売却した。 対価は58.5億ドル+2014年初めからの投資額とされたが、総額は70億ドルであったことが8月に明らかになった。
ChinalcoがRio Tintoの株主となった経緯は下記の通り。
2007年5月に 米AlcoaがカナダのAlcanに対して敵対的TOBをかけた。
対抗してAlcan はRio Tinto をWhite Nightに選び、RioがAlcanを買収した。
2007/7/17 Rio
Tinto 、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に
Alcanの 買収手続きを進めているRio
Tinto に対して、BHP Billiton が買収の提案を行った。
2007/11/15 BHP
Billiton がRio Tinto
に買収提案
2008年2月、 Chinalco とAlcoa
はRio Tintoの英国本社の株の12%(全体の9%)を取得したと発表した。
BHP Billiton-Rio Tinto
連合ができると鉄鉱石やボーキサイトのような天然資源を圧倒的なサプライヤーに独占されることを懸念した。
豪州の財務相はChinalcoがRio Tinto
の英国本社の株を14.99%(全体の11%)まで買収することを承認した。
2008/2/8 中国アルミとアルコア、Rio Tintoに出資、BHP Billiton
はオファー引き上げ
2008年11月、BHPは買収を断念した。EUが鉄鉱石と原料炭の資産売却を要求する可能性が強まったため。
2008/11/27 BHP Billiton、Rio
Tinto
買収を断念
2014/10/13 名古屋議定書が発効、日本は批准間に合わず
名古屋市で2010年に開かれた国連生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)で、生物の保全と持続的利用を目指して採択された「名古屋議定書」が10月12日に発効する。
「 50カ国・地域の批准から90日後に発効する」となっており、2014年7月に批准国が50カ国に達した。
日本は2011年5月11日に署名し、政府(民主党政権)は2012年9月28日に、 生物多様性の保全と持続可能な利用に関する政府の基本的な計画となる「生物多様性国家戦略2012−2020」を閣議決定し、可能な限り早期に名古屋議定書を批准し、遅くとも2015年までに名古屋議定書に対応する国内措置を実施することを目指すとした。
しかし、現在はなお、関係省庁間で議論している段階。
第1回の議定書締結国会議が10月13日から韓国でCOP12と平行して開催されるが、日本は議決権のないオブザーバーとして参加する。
ーーー
生物多様性条約 の15条(遺伝資源の取得の機会)では以下の通り規定している。
5.
遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の 同意を必要とする 。
7. 締約国は、遺伝資源の研究及び開発の成果並びに商業的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と 公正かつ衡平に配分 するため、------
適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。
しかし、先進国と途上国の利害が対立し、この利益配分( Access
and Benefit-Sharing : ABS)
の具体的なルールが決まらないままとなっており、遺伝資源の持ち出しを禁止する国も出てきており(インドネシアは鳥インフルエ ンザのウイルスの国外への持ち出しを禁止)、どうしてもルールを設定することが必要であった。
「名古屋議定書」の要旨は次の通り。
・遺伝資源の利用で生じた 利益を衡平に配分 する。
・遺伝資源と並び、遺伝資源に関連した先住民の 伝統的知識 (薬草の使用法など)も利益配分の対象とする。
・利益には金銭的利益と非金銭的利益を含み、配分は互いに合意した条件に沿って行う。
・遺伝資源の入手には、資源の提供国から 事前の同意 を得ることが必要。
・利益配分の対象
「遺伝資源の利用に対し利益配分する」
遺伝資源を加工した「 派生物 」という語は削除し、玉虫色の表現で、実際には派生物を含む余地を残した。契約時に個別に判断することとなる。
・多国間の 利益配分の仕組みの創設 を検討する。
・人の健康上の緊急事態に備えた 病原体の入手 に際しては、早急なアクセスと利益配分の実施に配慮する。
・各国は必要な法的な措置を取り、企業や研究機関が入手した遺伝資源を不正利用していないか、 各国がチェック する。
2010/11/1 COP10、名古屋議定書を採択
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日本バイオ産業人会議、バイオインダストリー協会、日本製薬工業協会、日本漢方生薬製剤協会、日本種苗協会は10月2日、連名で政府に対し「生物多様性条約・名古屋議定書に関する要請書」を提出した。
名古屋議定書は政治主導の下で、産業界との調整を経ずに採択されたもので、内容が曖昧であるだけでなく、以下のようないろいろな問題がある。
批准に向けた議論を行うにあたっては、拙速に走るべきではなく、内容をひとつひとつ丁寧に検討し、産業界との調整を十分に経た上で結論を出して欲しいとしている。
「遡及」について
名古屋議定書では、適用対象となる遺伝資源を取得した「時期」について明文による規定がなく、取得時期が生物多様性条約の発効前まで遡るリスクが残っている。
(議定書では「 多国間の 利益配分の仕組みの創設 を検討する」としている。)
現在の締約国のうち先進国はEU、デンマーク、ハンガリー、メキシコ、ノルウェー、スペイン、スイスのみ。
批准国53ヶ国中23ヶ国を占めるアフリカグループは依然として大航海時代に移転された遺伝資源にまで遡って利益配分を求めている。
仮に、「遡及」が適用されれば、国内で影響を受けうる産業規模は最大21兆円になる。
中小企業への影響
名古屋議定書では、中小企業者に対する配慮が規定されておらず、このため、外国の遺伝資源を活用して生産活動を行っている中小企業者は、突然利益配分を求められ、事業活動が維持できなくなる可能性が残っている。
研究開発への影響
研究開発に対する配慮も十分には規定されていないため、利益の配分に関し各国がどのように実行するのかが明確にされなければ、外国の遺伝資源を活用した研究開発自体が後退するとともに、研究成果の実用化が見送られる可能性が高い。
フィリピンは議定書の発効に先立って、すでに売上の2%以上を分配金として設定すると大統領令で決めている。
仮に、他国がこれに準じると、遡及が認められた場合、最大21兆円の2%、約4000億円の支払いが必要となる。
2012年の名古屋議定書は、先進国と途上国が激しく対立して協議がまとまらず、最終日の朝に議長の松本龍環境相が自ら議定書案を各国に提示、ぎりぎりで各国がこれに同意したものである。
2014/10/14 EU、英国の 原発電力の「固定価格買取制度」を違法でないと認定
英国政府は 昨年、約20年ぶりとなる原発の新設計画( Hinkley
Pointの欧州加圧水型原子炉 2基) に 自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を導入した。
EUはこれが EU法が禁止する「国家補助」にあたるのではないかと調査を続けてきたが、10月8日にこれが合法であるとの結論に達したと発表した。
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フランスのEDF
と英国政府は2013年10月、2基の原発リアクターの建設で合意した。
英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。
Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR)
2基(総出力320万kW)を建設する。 これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。 同型のものを建設することで、設計、購入、建設における経費節減を図る。
EDFでは、機器メーカーのAREVA、提携している中国の中国広核集団( CGN: 旧称中国広東核電集団)と核工業集団公司
(CNNC) に加え、他社の参加を交渉している。
EDF
Group
45-50%
AREVA
10%
CGN &
CNNC
30-40%
その他(15%までの参加を認める)
英国のCentricaが2008年に20%の出資を決めたが、その後、福島事故による新しい安全対策などのさまざまな理由でコストが跳ね上がり、撤退を決めた。
広核集団はこれを海外原発事業への進出の足掛かりにしようとしている。
この計画は、安全対策費などが膨らんで建設費は2基で総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)と巨額になり、電気料金が下がると、建設費を回収できなくなる。
このため、 英国政府とEDFは、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。
Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合 £92.50/MWh(約14.6円/kWh)
これは現在の卸価格の約2倍になる。
2013/12/27
英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入
これに対し、EUは2013年12月18日、英国政府が新しい原発の建設・操業に与える補助金が、EUが禁止する「国家補助」に当たるのではないか、慎重に検討すると発表した。
計画では、電力価格の変動に関係なく、原発の操業者は35年間安定した収入を得ることが出来る。
電力料が固定買取価格より低い場合、政府は差額を支払う。逆に高い場合には操業者は差額を政府に支払う。
いずれにせよ、操業者は35年間は市場変動のリスクから免れることとなる。
加えて、建設資金の借り入れに当たり、安い保証料で政府保証を得る。
EUの規則(欧州連合の機能に関する条約:TFEU)では、市場経済投資家原則(Market Economy
Investor Principle:MEIP)
により違法な「国家補助」に当たるかどうかを判断することとなっている。競争相手が受けられないようなメリットを与えるなら違法ということになる。
今回EUは、英国政府の提案した改正案はEUのルールに沿ったものであるとの結論に達した。
調査の過程で、英国政府は条件を大幅に修正したため、競争を阻害しないと判断した。
・英国政府は、EUの懸念と異なり、支援が市場ではどうしようもない事態に対応するものであることを示した。
特に、現状では必要な資金を得ることが出来ない状況にある。
EDFでは 総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド) としているが、欧州委員会では2023年の建設完了時点で建設費だけで240億英ポンド以上になるのではと見ている。 .
(毎日新聞報道では建設費は 2基で約245億英ポンド≒約4兆2630億円としている。)
・政府保証については、当初の保証料は余りにも安かったが、大幅に引き上げられた。
これにより、補助金は10億英ポンド以上減ることとなる。
・事業利益を英国の消費者とシェアすることとなった。
事業利益が計画を上回った場合、政府とシェアする。
更に、事業利益が一定レベルを上回った場合には、政府はその半分以上を受け取る。
利益率が1%ポイント増えただけで、12億英ポンド以上となる。
政府が受け取った利益は、電力料引き下げで消費者に還元する。
この仕組みは、EUの要請により、35年ではなく、事業の全期間(即ち60年間)適用される。
更に、建設費が計画より減った場合も、利益はシェアすることとなる。
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日立製作所は2012年10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社
Horizon
Nuclear Power の全株式を、同社株主の ドイツのエネルギー会社
No.1のE.ON及びNo.2のRWEから 6億7000万ポンド(約850億円)で 買収する契約を締結した。
Horizon が保有する 北ウエールズのAnglesey 島のWylfaと South
GloucestershireのOldbury の2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ 2〜3 基建設する予定で、日立が世界で唯一運転実績を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉( ABWR )技術を用いる。
2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収
東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola
S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration(NuGen)の株式50%を、またGDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。
NuGen は仏エネルギー大手GDF Suez とIberdrola
の50/50JVで、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。
Iberdrola はスコットランドのScottish Powerを所有する。
しかし、 Iberdrola
が2012年に、事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。
東芝は子会社Westinghouse Electric
の原発設備をNuGen に納入することを狙い、同社への出資を検討していた。
2013/12/27
英国が原発建設再開、 固定価格買取制度導入 、東芝と中国企業が計画に参加
今回のルールが適用されれば、両社の計画にも好影響を与える。
ただ、オーストリア は英国の公的支援に反対し、計画が承認されれば法的措置を取ると表明しており、欧州司法裁判所に提訴する可能性
がある。
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Hinkley Pointが採用する欧州加圧水型原子炉(EPR)
は稼働中のものはなく、4基が建設中である。
フランス西部のFlamanville
とフィンランドの Olkiluotoで1基ずつ、中国の広東省台山市で、中国広核集団が70%、フランス電力が30%出資する台山原子力発電所が2基を建設している。
2014/10/15 カナダ東部のLNG計画
カナダではアジアへの輸出を目指して、太平洋岸で多くのLNG計画が進められている。
1)Kitimat LNG輸出ターミナル計画と Pacific
Trail Pipelines計画
ChevronがApache Corp.
との50/50JVで、 Kitimat
郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設計画を進めている。
しかし、Apcheは本年7月に撤退を発表。
2)Shell、三菱商事等の 「LNG
Canada」計画
3)BC LNG Export
Co-Operative
4) 出光興産とAltaGasの計画
以上の4件の詳細は 2013/2/1
出光興産とAltaGas、カナダ産LNG、LPGのアジア向け輸出共同事業でパートナーシップを締結
5) Petronas、 石油資源開発等のLNG 計画
2014/3/15 Petronas
と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加
大西洋岸でも欧州への輸出を目指してLNG計画が進んでいる。
LNGインフラを事業目的として2011年に設立されたPieridae
Energy (Canada) のGoldboro LNG projectで、Nova Scotia州のGoldboro
Industrial Parkで下記の計画を進めている。
LNG能力 年産10百万トン
LNGタンク 23万m3 x 3基
生産開始 2019年初め
Nova Scotia州の沖合いのSable Island
周辺ではコンソーシアム(The Sable Offshore Energy Project)が天然ガスを開発している。
生産量は天然ガスが日量4億〜5億立法フィート、NGLが日量2万バレルとなっている。
1999年にSable島とGoldboroの間をつなぐ海底パイプラインが完成した。
Goldboroは天然ガスの消費地の米国東部へカナダの陸上、洋上の天然ガスを送るMaritimes
& Northeast Pipelineの基点でもある。
Spectra Energy(77.53%)、Emera, Inc (12.92%)、ExxonMobil
(9.55%)の所有で、マサチュセッツ州
Dracutで North American natural gas gridと接続し、メキシコ湾岸まで繋がっている。
Sable
Islandの天然ガスのほか、カナダの他の陸上、洋上の天然ガスもこのパイプラインでGoldboroに送られる。
Pieridae Energy
は2013年6月3日、ドイツの E.ONとの間で Goldboroの LNGの輸出契約を締結した。
E.On は2020年から年間
500万トンのLNGを購入し、欧州に輸送する。価格などは明らかにされていないが、E.On では年間数十億ユーロの取引としている。
ドイツ政府はこの計画を後押しするため、昨年、E.Onに対し20億ユーロの融資保証を認めた。
エネルギーを含む原料の供給確保に向け、年間500万トンの輸入のうち 150万トンをドイツ国内に振り向けることが条件となっている。
ーーー
Pieridae Energy
は本年6月、Goldboro LNGのFront-End Engineering and Design (FEED:基本設計)
業者として CB&I を選んだ。
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最新分は
2006-5-1
http://blog.knak.jp