2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2006-5-1 http://blog.knak.jp
 


2015/1/5   リトアニアがユーロ導入 

バルト3国の1つ、リトアニアが2015年1月1日にユーロを導入した。

リトアニア政府は、2007年1月からのユーロ導入を目指したが、その時点ではユーロ導入の要件の一つであるインフレ率が基準を上回り、ユーロ導入が認められなかった。

欧州委員会は2014年6月発表の収斂報告(2014 Convergence Report)でリトアニアが、GDP比での公的債務60%以下と財政赤字3%以内、低インフレと低金利の基準を満たしており、ユーロ導入の基準に合致しているとの結論を示し、7月23日にEUの財務大臣会議で正式に承認した。

収斂(Convergence )基準はマーストリヒト条約で決められたユーロの参加条件で、マーストリヒト基準ともいう。

@ 物価:

加入検討の前年の消費者物価上昇率が、EU加盟国の中で最も消費者物価上昇率の低い3カ国の平均値の±1.5%以内であること。

2006年では、欧州委員会はリトアニアのインフレーション率が基準よりも0.06パーセントポイント高いとしてユーロ導入の延期を勧告した。

A 政府財政:

実質、計画の双方において、年間財政赤字額の対GDP比が3%以下であること。但し赤字率が3%に近い水準に達している場合、例外的または一時的な3%以上の赤字の場合、赤字率が3%に近づいている場合は除く。
また政府債務残高が対GDP比で60%を超えないこと。但し負債の割合が十分に減った場合、十分なペースで60%に近づいている場合は除く。

B 為替レート:

加入検討時点以前の2年間、欧州為替相場メカニズムで定められた変動幅を超えてはならない。
他のERM加盟国の通貨に対して自発的な切り下げを行っていないこと。

リトアニアは2002年2月、1ユーロ=3.4528リタスのユーロ・ペッグ制を導入した。

C 利子率:

加入検討の前年の政府長期債における利回りが、EU加盟国の中で最もインフレ率の低い3カ国の政府長期債における利回りの平均から2%以上乖離しないこと。

ーーー

2014 Convergence Reportではブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スウェーデン、そして初めてクロアチアも審査したが、リトアニアのみが全ての基準を満たした。

ただ「持続可能な水準で低インフレを維持するのはリトアニアの課題」と指摘した。

欧州連合加盟国は収斂基準を満たして単一通貨を導入することが義務付けられている。
ただし、イギリスとデンマークは EC条約第122条の適用除外規定(Opt-Out)で導入しないことが認められている。

これまで近い将来のユーロ圏加盟を目指してきた各国が方針を変更しつつある。
ブルガリアは2011年には基準を満たしたが、ブルガリア側からユーロの導入計画を無期限に凍結した。

2011/9/15 ブルガリア、ユーロ導入を無期限に凍結

 

これでユーロ導入は19カ国(約337百万人)となった。

    EU加盟 Euro採用
1 フランス 1952 1999
  ドイツ
  イタリア
  オランダ
  ベルギー
  ルクセンブルグ
7 英国 1973  
  アイルランド 1999
  デンマーク  
10 ギリシャ 1981 2001
11 スペイン 1986 1999
  ポルトガル 1999
13 オーストリア 1995 1999
  フィンランド 1999
  スウェーデン  
16 エストニア 2004/5 2011/1
  ラトビア 2014/1
  リトアニア 2015/1
  ポーランド  
  チェコ  
  スロバキア 2009/1
  ハンガリー  
  スロベニア 2007/1
  キプロス 2008/1
  マルタ 2008/1
26 ブルガリア 2007/1  
  ルーマニア  
28 クロアチア 2013/7  
  合 計 28カ国  19カ国

 

 

 

参考  2010/5/10 統一通貨ユーロの危機


2015/1/6   2014年の人民元の動き

2014年12月31日の人民元終値は1ドル=6.2040元となった。
2013年末は1ドル=6.0539元だった。

人民元は2014年1月14日に過去最高値(終値 6.0412元、一時 6.0406元)を更新した後、下落に転じた。

人民銀行は1月14日に基準値を過去最高値の6.0930元に設定した後、低目の設定をしていたが、2月中旬以降、 基準値を急に下げた。
人民元の一方的な上昇を見込んだ投機筋に対する断固たる措置として、元の下落を誘導したとみられている。

大手国有銀行も人民銀行の要請で元を売っているとされた。

この結果、旧正月の連休直前に下落に転じ、2月20日頃からは急落、終値は基準値を下回るに至った。

中国は3月17日以降、人民元の対ドルでの許容変動幅をこれまでの上下1.0%から2.0%に2倍に拡大した。
それに合わせ、元は急落、4月30日には一時6.2676元、終値 6.2593元と、拡大した変動幅の下限に近付いた。

その後人民元は下落分をいくらか取り戻し、8月中旬には基準値を上回った。

しかし、中国人民銀行は11月21日、予想外の利下げを発表した。

 

貸出金利

 

預金金利

  基準金利

下限

基準金利

上限

2012/7 6.00%

基準 x 0.7

4.20% 3.00%

基準 x 1.1

3.30%
2013/7 6.00%

撤廃

     
2014/11 5.60%   2.75% 基準 x 1.2 3.30%

この中国の利下げに米国の利上げ観測が重なったことも受け、元は再び急落した。

元安は輸出競争力の下支えとなる。

但し、商務部報道官は「為替操作による輸出競争力の向上を必要としていないし、その意図もない」と話している。

 

これまでの人民元の動きは下記の通り。

中国は2005年7月21日に2.1%の切り上げを発表、その後、管理フロート制を取ってきたが、2008年夏の金融危機以降、レートを1ドル≒6.8人民元でほぼ固定してきた。

その結果、米国からの切り上げ圧力が強まった。

2009/11/9 米中貿易戦争、更に激化

2010/3/24 米国、人民元切り上げを要求

中国の中央銀行である中国人民銀行はG20サミットを控え2010年6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

中国人民銀行は2012年4月16日、人民元の米ドルに対する変動幅を1日につき上下 0.5%から1.0%に拡大した。


2015/1/7   中国、レアアース輸出枠を撤廃 

中国政府は2015年からレアアース(希土類)の輸出枠を撤廃する。

商務部は2014年12月31日の公告97号で、2015年の輸出許可証管理品目を発表した。

レアアースについては、輸出契約があれば輸出許可証を申請・取得することができるようになる。
これは、レアアースの輸出割当制度が廃止されたことを意味する。

同様に、ボーキサイト、コークス、タングステン、炭化珪素、マンガン、モリブデン、ホタル石などの輸出割当も廃止される。

世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会が2014年8月に、中国のレアアース輸出規制がWTO協定に違反するとの報告を発表しており、それに対応したもの。

中国はレアアース、タングステン、モリブデン3品目について2006年から5〜25%の輸出税を課し、2010年からは輸出枠数量も大幅に減らしてきた。

これに対し、日本、米国、EUは2012年3月13日、中国によるレアアース、タングステン、モリブデンの輸出制限について、WTOに提訴した。

WTOは2014年3月26日、日米欧の提訴内容を全面的に認める第一審の報告書を公表した。

中国の輸出規制について、GATT第11条1項(輸出数量制限の禁止)及び中国のWTO加盟議定書第11条3項(輸出税の禁止)等に違反するとした。

環境や天然資源の保護のためと主張してきた中国の言い分を退け、国内産業を恣意的に優遇する政策だと断定し、「環境や天然資源の保護のためなら、国内生産を制限する代替措置をとるべきだ」と判断した。

中国はこれに反論したが、WTOの紛争処理上級委員会は8月7日、日米欧の提訴内容をほぼ全面的に認める最終報告書を公表し、中国の敗訴が確定した。

中国商務部は本報告について遺憾の意を表し、WTOの紛争解決手続きに基づき今後の後続作業を行うとしていた。

中国国内ではレアアースの輸出税についても近く、撤廃などの方針が示されるとの見方が強まっている。

日本企業は、輸出枠の削減、価格の大幅上昇を受け、調達先の多様化や代替品の開発などで、中国産レアアースへの依存度を下げるよう取り組んできており、中国が輸出枠を撤廃しても、日本企業がただちに中国からの調達量を増やすかどうかは不透明である。

ーーー

2009年に全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、中国で幅広い注目を集めた。

中国のレアアース生産量は2005年に世界の96%を占め、輸出量で世界一となったが、乱開発されており、無秩序な開発で採掘現場での回収率も低効率の状態にあった。

国家発展改革委員会の報告によると、乱開発がこのまま続けば、20〜30年で中国のレアアースは枯渇するとする。

レアアースの埋蔵量が世界第二の米国は早くから国内最大のレアアースが埋蔵するMountain Pass鉱山を封鎖、モリブデンの生産も停止し、毎年中国から大量のレアアースを輸入していた。

2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限?

2010年に入り、中国政府はレアアースの規制に乗り出した。

中国全国レアアース等鉱物資源秩序特別調整事務室は、7月20日までに内モンゴル、吉林、浙江、広東、四川、重慶、雲南、新疆ウイグルの8省自治区に対して、レアアース産出コントロール指標を提示したことを明らかにした。

7月には本年の輸出許可枠が前年比4割減ることも決まり(下期は7割減)、供給不足への懸念が一気に強まった。

更に、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件以降、レアアースの対日輸出が中国の税関で滞る問題も発生した。

  2009 2010 削減率
上期  25千トン  22千トン  
下期 25千トン 8千トン 7割 
年間 50千トン 30千トン 4割

価格は急騰した。

これを受け、日本や米国などは下記の対策を行った。

・レアアース使用量の削減
・代替品の開発
・リサイクル
・備蓄
・中国以外の鉱山の開発

この結果、輸出枠は2010年以降、横ばいだが、実際の輸出量はこれを下回ったままである。

      2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
輸出枠 上期 軽希土               18,585 13,563 13,314
中重希土 2,641 1,938 1,796
合計         21,728 22,282 14,446 21,226 15,501 15,110
下期 軽希土               8,537 13,821 13,692
中重希土 1,233  1,679  1,809
合計         28,417 7,976 15,738 9,770 15,500  15,501
年間 軽希土               27,122 27,384  27,006
中重希土 3,874 3,617  3,605
合計 65,580 61,070 59,643 49,990 50,145 30,258 30,184 30,996 31,001   30,611
輸出実績 65,198 66,409 54,367 54,963 43,918  39,813 18,600 16,265 22,493  1-11月
24,866 

参考  過去のレアアースの記事

 

中国政府は今後、輸出枠や輸出税に代え、生産の抑制や不法生産・密輸の取締り強化により、レアアースの価格支配力強化を図る。
環境規制を強化し、中小生産者の国営企業への統合を行う。


2015/1/8 「ありえない数字」

河野太郎衆議院議員のメールマガジン「ごまめの歯ぎしり」(2014/12/29) はありえない数字」というタイトルで、経産省と電力会社が出した「再生可能エネルギーの受け入れ量」について書いている。

電力会社による事実上の再生可能エネルギーの買取拒否を受けて、経産省が対応策なるものを出してきた。

今回の受け入れ量は、「ベースロード」と称する原発や地熱をフルに利用し、その残りに「ベースロードではない」再生可能エネルギーを受け入れ、差分を火力発電で調整するという前提で、再生可能エネルギーを受け入れることができる量だという。

そのベースロードである原発は、老朽原発を含め全ての原発を最大限に稼働させるという前提だ。
しかも2021年度までは完成しない大間原発や再稼働は難しい日本原電の東海第二まで計算に算入されている。東北電力は、東京電力の柏崎刈羽の電力まで算入している。

それでいて、電力会社間の連系線の利用は無視されている。

太陽光や風力の発電量は、過去の実績値でも何でもない想定出力を使い、過大に想定されている。

自民党のエネルギー資源調査会やその傘下の再生可能エネルギー小委員会の幹部会でもこのままの受け入れはできないという結論に達している。

 

ーーー

九州電力などが再生可能エネルギーの受け入れ手続きを中断している問題で、経済産業省と7社は12月16日、専門部会で太陽光発電の受け入れ可能量の試算を公表した。

それによると、原子力、地熱、水力(下図のB)を「ベースロード」とし、更に火力の最低出力(C)を超える分を風力、太陽光発電(D)の受入可能量としている。
需要(A)を超える余剰能力を揚水発電の揚水用(E)に使用し、更に余れば、太陽光の出力抑制(F) を行う。 臨時の需要増は揚水発電(E)で賄う。

ベースロードの原子力については下記の通り、保有する原発がすべて震災前の30年間の平均稼働率で発電するという非現実的な前提である。

東北電は東日本大震災で被災した女川原発や日本原子力発電東海第二原発の稼働を見込む。建設中の大間も含むほか、何故か柏崎刈羽や福島第二まで入っている。
北陸電も、活断層問題に揺れる志賀原発や日本原電敦賀原発の再稼働を想定している。

まさに「ありえない数字」である。

この結果、再生エネの受け入れ可能量は少なくなり、中国電力、北陸電力を除く 5社で、政府が認定した事業計画が受け入れ上限を上回っている。

太陽光発電の接続可能量(万kW)
  北海道 東北 北陸 中国 四国 九州 沖縄
風力接続可能量 56 200 45 100 60 100 2.5
太陽光接続可能量 117 552 70 558 219 817 35.6
合計 173 752 115 658 279 917 38.1

以上  http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/keitou_wg/pdf/003_09_00.pdf

東京電力や関西電力は一部地域を除き、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みへの回答保留は行っておらず、まだ余力があるが、電力会社間の連系線の利用は無視されている。

北陸電力は自社分としての70万kWに加え、関電や中部電力に送電できる40万kWを加え、合計110万KWを受入可能量としている。
現時点での太陽光は接続契約済み、接続検討分を含め、97万kWとなっている。

九州で発電し、関電や中部電力に送電することを考えるべきではないか。

北海道、東北、四国、九州、沖縄電力の太陽光受入可能量は合計 1,740.6万kWだが、国が認定した再生エネの発電能力は計約3,600万kWで、受入可能量の2倍もある。
 

河野代議士によると、「ヨーロッパや北米では自然エネルギーによる優先的な給電が行われる。そして、もちろん、再生可能エネルギーの導入が進んでいるので供給が需要を追い越せば、出力抑制はおこなわれる。しかし、365日24時間のなかで出力抑制が行われた時間の割合は、スペインで 0.46%、イタリア 1.24%、イギリス 1.6%にすぎない。」

それに対し日本では、国が固定価格買取制度を設定して推進している再生可能エネルギーを、電力会社と経産省が妨害している形である。

河野代議士は、「年明けに、きっちりと自民党案が議論されることになる」としているが、どうなるか注目したい。

 

対策として、資源エネルギー庁は12月18日、「再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について」を発表した。

http://www.meti.go.jp/press/2014/12/20141218001/20141218001-B.pdf

発電側で出力を落とす「出力制御」の制度を見直す。

これまで500kW以上の大規模ソーラーだけを対象にしていたのを変え、 全ての太陽光発電に出力抑制を求められるようにする。

また、出力抑制は「年間30日まで」としていた枠を外し、無制限で求められるようにし、この条件をのんだ事業者だけを受け入れる。

需要を超えているこの時間帯に出力を抑えるものだが、今後は、電力会社側から遠隔操作で、時間毎に調整できるシステムを開発する。 

今後の導入拡大策としては下記を挙げている。

1) 蓄電池の活用  
    再生可能エネルギー発電側の導入支援、電力会社の大規模蓄電池実証事業の支援

2) 更なる系統の活用・増強

3) ローカルな上位系統の制約がある場合の増強費用負担方法

固定価格買取制度の運用見直しも行う。

 

NHKの時論公論「曲がり角に来た再エネ買い取り制度」(2014年12月24日 (水) 午前0:00〜)が分かり易い。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/206084.html


2015/1/9 三菱ケミカル、炭素繊維事業を統合、強化 

三菱樹脂と三菱レイヨンは1月7日、炭素繊維・複合材料事業の強化を目的とし、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業と三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業を統合すると発表した。

PAN 系炭素繊維事業を行う三菱レイヨンが、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業を会社分割の方法で継承し、2015年4月1日付で統合新組織を発足させる。

三菱ケミカルグループはPAN 系炭素繊維と石炭ピッチ系炭素繊維の両方の技術を持つ世界で唯一の炭素繊維メーカー。

両社は2012年9月に炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足させ、共同マーケティングや技術交流などを通じてグループシナジーを追求してきたが、今後、ピッチ系炭素繊維事業に由来する知見をPAN 系炭素繊維の領域に応用し、戦略重点分野である自動車、圧力容器、風力発電翼など産業用途における顧客へのソリューション提案力を強化する。

また、すでにグローバルに展開中のPAN 系炭素繊維・複合材料事業の製造・販売・開発に係る事業インフラを活用し、ピッチ系炭素繊維事業の価値を最大化していく。

ーーー

三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業

炭素繊維トウ

炭素繊維を数千〜数万の単位で束ねたもの。クロスに織ったり、一方向に揃えて樹脂を含浸させたり、さまざまな使い方をする。

中間材料(クロス、プリプレグ)

炭素繊維を織ったクロス、炭素繊維を一方向に引き揃えて樹脂を含浸させたUDプリプレグなど、様々な形態の材料を提供している。
釣竿、ラケットなどスポーツ・レジャー用品から、各種工業機器、X線関連の医療機器、土木建築、航空宇宙分野まで、幅広い用途に使用される。

成型加工品

印刷機用ロールなどの一般産業用品、航空機部品製造用ツール材、自動車部品等、成形加工品の製造も行っている。

 

炭素繊維の製造能力は下記の通り。(トン)

   

能力

   
三菱レイヨン 豊橋 5,400    
大竹 2,700 2011/6稼動 付記 2017/2Q 3,900t
小計 8,100    
Mitsubishi Rayon Carbon Fiber and Composites Sacramento, CA 2,000 2016年増強
増強後 4,000
1991年 Courtauldsから買収
Grafil, Inc.に改称
2013年 三レ100%のNewport Adhesives and Compositesと統合し、改称
SGLに生産委託 スコットランド 750    
三菱レイヨン合計 10,850 米増強後 12,850 付記 2017/2Q +1,200
SGL Automotive Carbon Fibers 3,000 2015年増強後 9,000 BMWが49%、SGL Technologiesが51%出資

SGL Automotive Carbon Fibersにプレカーサーを供給するMRC-SGL Precursor は、三菱レイヨンが66.66%、SGLが33.34%出資。

   
2014/5/14     BMW、米で炭素繊維の生産能力を3倍に


三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業

三菱樹脂はピッチ系のなかでも、コールタールを液晶化(メソフェーズ化)し、紡糸・不融化後、高温焼成して製造する、光学的に異方性を示すメソフェーズピッチ系と呼ばれる炭素繊維「ダイアリード®」を製造しており、現在、世界約7割のシェアを誇って いる。(坂出で製造、能力は1,000トン/年)

軽量・高剛性・高熱伝導・ゼロ熱膨張(熱変形がほとんどない)などの特性を活かし、人工衛星、ブレーキ材、工業用ロール、ロボットハンド、大型アンテナ、鉄橋の補強プレートなどさまざまな分野で活躍してい る。

ダイアリード®は、三菱化学の永年にわたる石炭化学の成果。

2000年4月1日に、三菱化学の機能資材カンパニー所管事業の内、アルミ・樹脂複合板、石炭ピッチ系炭素繊維、耐震補強炭素繊維シート、アルミナ繊維、透湿性フィルム、耐熱ラップフィルム事業を三菱化学産資に移管し、同社に統合 した。

三菱ケミカルホールディングスは三菱樹脂をTOBを行って100%取得し、2008年4月1日付けで三菱化学ポリエステルフィルム、三菱化学産資、三菱化学MKV及び三菱化学の機能材料分野の事業も含めて、 三菱樹脂に再編・統合した。

 

三菱グループは2012年9月、炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足した。
グループの有する材料・成形加工技術を融合するとともに、これまで築いてきたマーケットチャネルを活かし、用途展開を積極的に進めてきた。

PAN系とピッチ系の特性を生かしたゴルシャフトも発売した。
手元部のフープ層には、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維「ダイアリード®」を用いてつぶれ変形を防ぎ、切り返しのパワーを損なうことなくダウンスイングに移行することができる。
シャフト先端部には三菱レイヨンが開発した速硬化/高靭性プリプレグシート「タフキュア」を採用、当たり負けしない振りぬき感と、心地よいインパクトフィーリングを実現した。

Aldila, Inc.TK Industries、潟`ャレンヂを経営統合し、炭素繊維と、それを基材とした中間材から加工品に至るまでの一貫したプロダクトチェーンをさらに強化し、将来の成長分野である自動車、圧力容器、風力発電など、大型産業用途における事業拡大に向け、競争優位なバリューチェーンを構築することとした。

・Aldila, Inc. (米):2012/12 買収、プリプレグ、炭素繊維製ゴルフシャフト、アーチェリー製品の製造販売
・TK Industries GmbH(独):2012/10 買収炭素繊維製多軸ファブリック開発製造
・潟`ャレンジ(
狭山市):2012/11 買収、炭素繊維強化樹脂(CFRP)部品の製造販売

今回、これを更に進め、統合することとした。
 


2015/1/10   Solvay、Chevron Phillips ChemicalからPPS事業を買収 

Solvay は1月5日、Chevron Phillips Chemical CompanyからのPPS事業買収を完了した。

2014年9月4日に買収契約を締結したもので、Chevron Phillips のRyton® polyphenylene sulfide (PPS) 事業を220百万ドルで買収した。

取引の一部として、Solvay は下記のプラントを手に入れる。

テキサス州 Borger のRyton® PPS resin 生産プラント(2系列、合計2万トン)
オクラホマ州 Bartlesville のパイロットプラントと研究所
ベルギー Kallo-Beveren のコンパウンド工場

なお、テキサス州La Porte のコンパウンド工場は売却対象外だが、需要家のスムースな引継ぎのため、一定期間受託製造を行う。

PPSは、1967年にPhillips Petroleum のEdmondsとHillがパラジクロルベンゼンと硫化ソーダから合成する方法を発明、1972年Phillips Petroleum が商標名“Ryton®”で最初に工業化した。

2000年7月にChevronとPhillips Chemical のオレフィン、ポリマー、芳香族部門を統合し(PPSを含む)、Chevron Phillips Chemical が設立された。

Chevron Phillips Chemical では、PPSの発明者としてこの事業に誇りを持つが、Chevron Phillips がPPS事業を単一事業として行うより、エンプラ事業を幅広く行う Solvay が行う方が、戦略的に適しているとしている。

Solvay Specialty Polymers は高機能性プラスチック の分野における世界的リーダーで、世界中のどのポリマーメーカーよりも高性能で豊富な製品群を提供していると自称している。

今回買収するPPSは、コスト、機械的強度、耐薬品性、熱安定性の組み合わせがユニークで、Solvay の既存の製品群を補完する。


 

不思議なことだが、Solvay は以前にPPSコンパウンドを扱っていたが、2011年9月30日にDICにPPSコンパウンド事業を譲受している。

2011/10/14 DIC、PPS事業を増強

今回、Chevron Phillipsから米国のPPS resin 生産プラントとベルギーのコンパウンドプラントを買収する。(米国では当面コンパウンドを生産委託)

2013年のChevron PhillipsのPPSの売上高は1億ユーロで、欧州の販売が46%、北米が22%、アジアその他が32%となっている。

世界のPPSの需要は64千トンで、自動車向けが30%を占める。

ーーー

日本では、大日本インキ化学(現 DIC)がPhillips Petroleumからベース樹脂を輸入し、ガラス繊維補強材や充填剤を混練し成形用コンパウンドとして市場開発を進めた。
1984年11月のPhillips Petroleum の基本特許の失効後、大日本インキを含む数社が相次いでPPS国産化プラントを稼働させた。

現在の世界のPPSの能力は下記の通りで、ほとんどが日本勢だが、中国のLumena Resources(旭光資源)が最大メーカーである。2014年に25千トンの増設を行った。

  立地 現状 (トン)  
Chevron Phillips Chemical Borger, Texas

20,000

2009年に倍増した。
DIC EP 鹿島工場 19,000  
千葉工場
東レ
   東レ尖端素材
東海工場 19,000  
韓国・セマングム産業団地 (8,600) 2016/4稼動
クレハ
   Fortron Industries LLC
錦工場 10,000 コンパウンドはポリプラスチックが担当
Wilmington, N.C 15,000 (JV of Ticona and Kureha )
東ソー 四日市工場    2,700  当初 東ソー・サスティール
  (東ソー70%、保土ヶ谷化学30%)
1992/6 東ソー100%、1996吸収合併
出光ライオンコンポジット
(出光興産 50%、ライオン50%)
千葉工場 10,000 2013/10/1 出光興産から移管 
INITZ(帝人/SK Chemical) 韓国・蔚山 (12,000) 2015年稼動
Lumena Resources(旭光資源) 四川省成都 6,000 2010年SINO Polymerを買収
(当初、華東理工大學華昌聚合物有限公司
2014年 25千トン増設
四川省徳陽 49,000

2011/10/14 DIC、PPS事業を増強

2013/10/9    帝人、韓国SK Chemical とPPS樹脂JV設立、東レも韓国でPPS樹脂生産


中国の芒硝石メーカーのLumena Resources(旭光資源)が2010年に買収したSINO Polymer は1981年に華東理工大學Huachang Polymer華昌聚合物)の名で設立した企業で、PPSレジンからPPSコンパウンド、PPS繊維までを扱う世界最大のPPSメーカー。

能力はレジンが30千トン、コンパウンドが30千トン、PPS繊維が5千トンであったが、2014年にレジン25千トンの増設が完了し、6月に試運転を開始した。
レジンは、射出成形グレード、コーティンググレード、繊維グレードを持ち、各種のコンパウンドを扱う。

SINO Polymer は2012年にPolysulfone (PSU) の生産を開始した。


2015/1/12 原油値下がりがインドネシアを救済                   

2014年10月20日に、Joko Widodo大統領が誕生した。

大統領は就任後、しばしば公の場で「過去5年の燃料補助金は700兆ルピアを超えたが、保健支出は220兆ルピア、インフラ支出は574兆ルピアにすぎない」と述べ、燃料補助金を削減し、港湾や道路、発電など社会インフラ整備や、教育・保健水準の向上へ予算を重点配分すると述べた。

インドネシアは初代大統領スカルノの時代から燃料補助金政策を採っている。
2010年に82兆ルピアだった燃料補助金の支出は、2015年予算では3倍以上の276兆ルピアに膨張した。

インドネシア政府は11月17日、石油製品の販売価格を抑えるための補助金を削減し、ガソリン価格を3割引き上げると発表した。
値上げにより100兆ルピア(80億ドル)を確保し、インフラ等の投資に充てる。 

大統領は「資金を生産的なセクターに振り向け、より国民の役に立つようにする」と強調した。

  2013/6以前 2013/6以降 2014/11/8〜
レギュラーガソリン 4,500ルピア 6,500ルピア
(52セント)
 
8,500ルピア
(68セント)
軽油 4,500ルピア 5,500ルピア 7,500ルピア

1,000 ルピアは$0.08で、値上げ後でも 68セント/リッターで極めて安い。

前回のユドヨノ政権下の燃料値上げ直前の2013年5月に5.47%だったインフレ率は、2013年8月に8.79%まで上昇した。
2014年10月は4.83%と落ち着いているが、燃料値上げにより年内にインフレ率が7.3%に高まる見通しで、ルピア安による輸入物価の上昇も企業や家計の重荷になっており、経済成長率が5%台と5年ぶりの水準に減速するなか、補助金の削減に反対が強まるのは必至だった。

しかし、OPECが11月27日の総会で原油の減産見送りを決定し、原油価格は下がり続けた。

インドネシア政府は11月以降の世界な原油価格の下落からガソリンの補助金の必要性がなくなったと判断、2015年1月1日、石油燃料向け補助金の新たな政策を導入した。

  新補助金 2014/12価格 2015/1 価格  
レギュラーガソリン 付与しない 8,500ルピア 7,600ルピア 「価格は毎月見直されることになる」
軽油 1,000ルピアに固定 7,500ルピア 7,250ルピア  

バンバン財務相は、今回の補助金燃料の新政策で、今年の燃料補助金の支出を予算の276兆ルピアから60兆ルピアに減らすことができるとの試算を明らかにした。

ーーー

インドネシアの燃料補助金政策は初代大統領スカルノの時代に始まったもので、国内の燃料価格を市場のそれよりも安く提供するという一種の福祉政策である。
燃料のほかに電気料金その他の補助金もある。

最近になって、市場価格の高騰が補助金政策のための予算を容赦なく吊り上げ、政策自体を維持できなくなった。

みずほ総合研究所の「インドネシアの燃料補助金の弊害」に詳しく書かれている。

ガソリン価格が抑えられた結果、自動車販売台数が急増、更に燃料消費が増えるとともに、公害が増えるという逆効果が出ている。
電気料金補助金等を加えた補助金合計は政府予算の30%弱にまでなり、社会インフラ整備などが遅れる結果となっている。

インドネシアは産油国だがエネルギーの内需が拡大し、約10年前に石油の純輸入国に転落している。
   

補助金は麻薬のようなものであり、一度始めると簡単には止められない。
燃料補助金→自動車増→燃料使用量増→補助金増というような逆効果が出てくる。

結果として政府の財政を悪化させ、経済成長に必要な社会インフラ整備や、教育・保健水準の向上のための支出を抑えることとなった。

Joko Widodo大統領はこの連鎖を断つべく、11月に補助金削減に踏み切った。

本来なら、国民の不満が爆発し、デモが多発して、経済を麻痺させる恐れもあった。

原油安がこれを防いだ。
これを機にガソリンの補助金を廃止し、軽油補助金を1000ルピアに固定したのも、今後、原油価格が再び上昇に転じた際にはプラスに効いてくることとなる。



2015/1/13  LG と Dow Chemical、量子ドット技術で提携 

Dow Chemical は1月8日、LG Electronicsにカドミウムフリーの量子ドット(Quantum dot) を供給すると発表した。

LGは1月6日にLas Vegasで開かれた2015 Consumer Electronics Show で量子ドット技術により色再現性や視野角などを向上させた4K対応テレビを発表した。
2015年の液晶テレビや有機ELテレビに順次対応を拡大していく。

液晶バックライトの前に量子ドットのフィルムを加えることで、映像の色再現性や彩度、全体の明るさなどを大幅に向上する。 「広色域で表現でき、4Kコンテンツに理想的」としている。
量子ドットのフィルムにより、IPSパネルの色再現性は既存のLEDバックライト液晶テレビに比べ30%以上改善され、IPSの特徴である広視野角性も向上するとしている。

サムスン電子も量子ドット技術使用の新型テレビ「SUHDテレビ」をブース入り口に掲げた。

2014年9月にベルリンのエレクトロニクスショー「IFA2014」で、中国のTCLと海信グループ(Hisense)が量子ドットテレビを発表し、TCLは間もなく発売するとしている。

LGはDowとの提携により、安定的に必要な量子ドットの供給を受けることが出来ることとなる。

量子ドットとは、数n〜数十nmの大きさを持つ化合物半導体や酸化物半導体の微粒子で 、青色LEDからの光の波長変換を行い、望む光の色を得ることができる。
大きさが一様にそろった量子ドットを用意すれば、スペクトルのピークの鋭い、色純度の高い発光が得られ、これによって、ディスプレーの色再現性の向上や低消費電力化が実現可能にな る。

量子ドット技術はもともと1970年代に開発されたが、これまで実用化されていないのは、量子ドット素材として、毒性の強いカドミウムが使われていたため である。

たとえば、Quantum Designの量子ドットの中心核(コア)は、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造で、この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特長を持っている。

例えば
直径3.0nmの場合:530nm(緑色の蛍光)
直径8.3nmの場合:620nm(赤色の蛍光)
この間も直径を変えることで任意の蛍光波長を作製可能

量子ドットの蛍光は非常にシャープなバンドを描くため、他色への波長の重なりが少ないという特長を持つ。

 

しかし、最新のRoHS 指令では、カドミウムの最大許容値は0.01%となっており、これが障害となる。

英国の Nanoco Group PLCはカドミウムや重金属を全く使用しない量子ドットを開発した。
同社は量子ドットの製法として分子シーディング法を開発したが、この方法は他の化合物半導体材料(III族〜V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られる。

。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族〜V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf
。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族〜V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf

Dow Chemicalは2013年1月28日、Nanoco Groupと、カドミウムフリーの量子ドット技術に関するグローバルライセンス契約を締結したと発表した。
この契約により、ダウはNanocoの持つカドミウムフリーの量子ドットを販売、マーケティングおよび製造する全世界での完全独占権を得た。

Nanocoは契約期間中、製品改良のための技術供与を続けるとともに、Dowと共同で製品のマーケティングおよび技術サービスを顧客に提供する。

Nanocoは2001年創業の量子ドットの開発と商業生産における世界的なメーカーで 、同社の量子ドットは重金属を含まず、RoHS規制に適合しており、照明、太陽電池、生体画像など、さまざまな分野で使われている。(太陽電池では光を電気エネルギーに変換する「光電素子」として使われる)

Nanocoは研究開発レベルから少量の量産レベルに拡大させつつあるが、市場のニーズに応えるためには、大規模な生産体制が必要であり、そのためにDow と提携した。

Dowは以下の通り述べた。

Nanocoのカドミウムフリーの量子ドットがディスプレー産業における新基準になると確信してい る。
Nanocoの量子ドットはコスト効率が良く、LCDディスプレーの色彩を向上させ、同時に重金属の使用を避けることができる。Nanocoの技術とDowのフィルム、LCD、LED、有機ELディスプレー産業における知見が一つになることにより、顧客に対して強力な材料技術を提供することができる。

Dow Chemical は2013年1月に韓国の天安(Cheonan)市に100万ドルを投資し、世界初の大規模、カドミウムフリー量子ドット製造工場を建設すると発表した。

同社は2014年9月30日に製造開始を発表した。年間数百万台のテレビに供給可能な量子ドット素材を生産する計画。

Dowは2012年3月、韓国の京畿道器興区にディスプレイ・テクノロジーおよび半導体関連の技術向上に注力したグローバル研究開発センター Dow Seoul Technology Center を開設している。

京畿道器興区は、ダウの顧客である半導体企業やディスプレイ企業も数多く所在し、戦略上重要な地区となっている。

Centerでは主にリソグラフィ、有機EL、ディスプレイ材料、半導体パッケージングなどの用途で、先端技術の研究開発に取り組 む。

なお、Nanocoは2014年10月、一般照明でのナノコ量子ドット利用に関連して、ドイツのOsramとの共同開発契約を締結した。

ーーー

日本メーカーは量子ドット以外の技術に注力しているとされる。

ソニーはTRILUMINOUS Displayで量子ドット技術を採用していたが、「コスト的に高く付く量子ドット光学シートをあえて使わなくても、同等の広色域は新世代のLEDバックライトシステムで実現出来る」としている。

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dg/20150109_683147.html

 


2015/1/14   米国商務省、コンデンセート輸出を許可 

米国は1973年のアラブ石油禁輸(Arab oil embargo)に伴い、 米国の石油資源を保護し、米国の消費者が値上げショックを受けるのを防ぐため、1975年12月にEnergy Policy and Conservation Act:EPCAを成立させ、原油の輸出を禁止した。

現在もこの法律は生きており、ガソリンやディーゼルなど精製燃料は輸出できるが、原油そのものの輸出はできない。 

2014年6月25日、Pioneer Natural ResourcesとEnterprise Products Partners  は商務省がテキサスのEagle Ford Shaleの超軽質油を輸出する計画を承認したと発表した。

輸出するのはシェールガスに随伴して出る超軽質油(コンデンセート)で、蒸留装置を通すことで蒸気圧を下げ、揮発性の軽質炭化水素を除外する。
商務省では原油輸出についての方針に変更はないとし、Pioneerのやり方は「精製」というには足りないが、コンデンセートをもはや原油とは言えないほど変質させているとした。

コスモ石油が30万バレル分を購入、10月9日に入荷した。

2014/6/30 米国が原油輸出を一部解禁 

これが明らかになって米国内で論争が起こり、米上院議員が商務省に対し、商務省が少しだけ処理した原油の輸出を承認する権限があるのかとの質問状を送った。
商務省はその後の個別申請に対し、保留していた。

ーーー

米政府は2014年1230日、密かにコンデンセートの輸出を許可した。

商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS) は12月30日、websideのRegulation FAQ 欄に FAQs – Crude Oil and Petroleum Products を掲載した。

1. What are the restrictions on the export of crude oil?  では、原油輸出制限の根拠と、例外の輸出承認事例を記載、

2. How do I determine if my commodity is crude oil?  では、原油の定義(原油の蒸留塔を通す処理を未だしていないもの)をしている。

3. Is lease condensate considered crude oil?   では、タールサンド、天然アスファルト、オイルシェールからの“lease condensate” も原油と定義されるとしている

4. What is required in order for liquid hydrocarbons to have been “processed through a crude oil distillation tower”? が本件。

「原油の蒸留塔を通す処理をした」即ち、輸出禁止の対象にならないものの条件として6つを記載している。

(1) 原油を熱を使って蒸発、凝縮させ、入れた原油と化学的に異なる液体流(liquid stream)に変換したもの
(2) 原料と製品でAPI 比重が異なること
(3) 原料と製品で組成のハイドロカーボンの種類の構成比率が異なること。
(4) 蒸留塔を通す目的が、石化原料や溶剤やガソリンブレンドなどにするためのものであること。
(5) 蒸留プロセスの限定
(6) 蒸留塔の限定

2014年6月の承認時点では、コンデンセートをもはや原油とは言えないほど変質させているとしていたが、今回、輸出解禁が本格化するという前提で、輸出基準をより厳格にしたとの見方が一般的である。

政府はまた、企業の自己認証(“self-certify”)を認め、規則に合致すると考えれば、許可を求めずに輸出できるとしている。

Citi Research では、軽質油、超軽質油の生産は日量381万バレルを超えており、2015年末には輸出は日量100万バレルを超えると見ている。
逆に、
重質原油とのブレンディング用としてコンデンセートの需要があり、それほど輸出は伸びないとの見方もある。

BHP Billiton では、テキサスの原油の輸出を検討しているとされる。

 


2015/1/15 第一三共、米司法省に46億円の和解金支払い 

第一三共は1月13日、米国子会社のDaiichi Sankyo, Inc.が、高血圧症治療剤と高コレステロール血症治療剤のプロモーション活動の一環としてなされた医師講演施策に関する米国司法省による調査につき、1月9日付で、米国司法省およびその他の政府機関との間で民事上の和解に至ったと発表した。

和解に基づき、約39百万米ドルの和解金を支払うとともに、保健福祉省監察総監室との間で、今後の法令順守に関する協定(Corporate Integrity Agreement)を締結する。

第一三共では、調査は高血圧症治療剤や高コレステロール血症治療剤のプロモーション活動の一環として行った医師講演に関するものだが、「詳細については非公表」としている。(日本経済新聞)

しかし、外電によると、医師に同社の薬を処方するようキックバックを払った容疑であり、第一三共の元 Sales rep のKathy Fragoules が内部告発奨励法(False Claims Act)に基づき告発した。

False Claims Actは南北戦争における連邦請負業者の不正に対処するため1863年3月2日に制定された。

裁判書類では、第一三共は2004年から2011年の間に、いろいろの医師講演を開催し、医師に講演料名目で(同社の薬を処方することへの)キックバックを払ったとしている。

司法省はこの医師講演は問題で、医師が自分のスタッフだけに話すケースや、聞き手が配偶者の場合などがあったり、医薬会社が払う食事会で話した場合にも払われており、そういった食事会は第一三共の社内基準の1人当たり140ドルを超えた豪華なものであったりする。同じ食事会で何人もの医師に同じことを話させたこともある。

連邦検事はステートメントを発表し、「医薬会社は自社の医薬品を処方してもらうために豪華な接待をしたり、講演料名目で支払うことは禁止されている」と述べた。

医師が処方するよう依頼された薬は、高血圧症治療剤の「Benicar」、「Benicar HCT」、「Azor」、「Tribenzor」や、高コレステロール血症治療剤の「Welchol」である。

告発した元 Sales rep のKathy Fragoules は解決金として第一三共から 610万ドルを受け取る。

ーーー

米国では1990年代には医師に特定の薬を処方してもらうよう、接待攻勢をかけることが流行した。

しかし、2013年に Physician Payment Sunshine Act が施行され、医師・教育用病院への支払情報を開示することが求められることとなった。

開示対象者:全ての米国の医師、教育研修医療機関

個別公開開示対象:コンサルティング等業務委託費、提供された物品、研究費、特許料・ライセンス料、
         講演会等の謝礼、株などの付与、旅費、贈答・食事・接待費など


2015/1/16   SABIC、カーボンナノチューブでJV 

SABICは1月5日、米国のMolecular Rebar Design との間で、特定の市場向けのカーボンナノチューブ(CNT)を開発・販売するため、合弁契約を締結したと発表した。

JVの名称はBlack Diamond Structures LLC で、Molecular Rebar Design 社のユニークなCNT技術 “Molecular Rebar” を使う。

ーーー

カーボンナノチューブは幅広い用途を持つが、実際のCNTは一般的な製法(アーク放電法レーザーアブレーション法、流動床リアクターなど)では、沢山のナノチューブが絡まった束の“fuzzy balls”の状態で生成する。長さ、直径、らせん度が揃っていないだけでなく、ナノチューブの配向や配列もまったくのランダムということが多い。

絡まった束をほぐし、理想的なチューブにしないと利用できないが、通常のやり方では難しく、これが商業利用を妨げている。

Molecular Rebar Design の“Molecular Rebar”は、一般に入手できる“fuzzy balls”の状態のCNTからスタートし、いくつかの工程を経て、理想的なアスペクト比(60〜100)の 綺麗なチューブになる。

両社のJVのBlack Diamond Structures LLC は、エネルギー貯蔵、発電、自動車・軽トラック、家電、建築などの特定の市場に的を絞る。

ーーー

SABICは以前からカーボンナノに関心を持っており、2014年5月には、多方面の市場向けにカーボンナノ構造材料を開発するため、Lockheed Martin とのJVをサウジに設立することに向けパートナーシップをつくると発表した。

Lockheed Martin の子会社のApplied NanoStructured Solutions, LLC はナノテクノロジーの開発、商業化を行っており、カーボンナノ構造体を連続製法でいろいろな物質に浸出する革命的方法を開発した。

2014/5/31 SABIC、Lockheed Martinとカーボンナノ構造材料のJVを設立


2015/1/17 アイルランド製薬Shire Pharmaceuticals 、米バイオ医薬品 NPSを買収 

アイルランドの医薬品大手Shire Pharmaceuticalsは1月11日、米バイオ医薬品のNPS Pharmaceuticals, Inc. を52億ドルで買収すると発表した。

Shire Pharmaceuticalsは2014年7月、米同業AbbVie Inc.に買収されることで合意したが、AbbVie は10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断したもの。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる

AbbVie による買収案の撤回により、Shire は違約金16億ドルを受け取った。


Shire は患者数の少ない希少疾病に強い製薬会社で、競合を避けながら4割弱の高い営業利益率を誇っている。

NPS Pharmaceuticals は、希少疾病用医薬品(Orphan drug)に重点を置いたバイオ製薬企業で、下記の有力製品を持つ。

成人の短腸症候群 (SBS) 治療薬としてGattex®が米国と欧州で承認されている。
成人の副甲状腺機能低下症における NatparaTM(遺伝子組み換えヒト副甲状腺ホルモン)は、第3相試験が完了した。1月24日に米FDAが承認するかどうかを決定する予定。

今回の買収により、難病治療薬への軸足移動が加速するとともに、消化器疾患や内分泌疾患などの治療薬の拡充を図る。

ShireのCEOは、バイオテクノロジー企業としての存在感を増すために、引き続き買収機会を模索していくと述べた。

 


2015/1/17 武田薬品、米国で痛風治療薬を巡る訴訟を継続 

武田薬品は1月13日、同社の痛風治療剤Colcrys®に関連する訴訟を継続し、争っていくと発表した。

Takeda Pharmaceutical USA は米国で痛風治療剤としてColcrys®(一般名:colchicine)を販売している。

痛風は、全米で800万人以上が罹患しており、その数はさらに増加している。
Colcrysは、米国において初めてFDAに処方薬として承認された単一成分の経口 colchicine製剤で、米国で2009年に発売され、現在、武田薬品の痛風治療ポートフォリオの1つになっている。2028年もしくは2029年まで複数の特許により保護されている。

Colcrys®は成人の痛風発作の予防および急性治療、成人および4歳以上の小児における家族性地中海熱の治療の効能を有する。

Colchicineはユリ科のイヌサフランの種子や球根に含まれるアルカロイド。

Colchicineは1820年にフランスの化学者P.S. Pelletier とJ.B.Caventouによって初めて分離された。

 

2014年9月26日、FDAはヨルダンに本拠を置く Hikma Pharmaceuticals と米国子会社West-Ward Pharmaceutical Corp. が痛風炎予防薬として新薬申請したMitigare (colchicine) Capsules, 0.6 mg を承認した。

武田薬品は2014年10月6日、この承認手続きに行政手続法の違反があったとして、FDAを訴えた。

行政手続法では、FDAのような政府機関が不適切な手続をした場合等に異議を申し立てることができるとされている。

これは別に、同社は10月3日、Hikma社およびWest-Ward社に対し、両社のcolchicine製剤が武田の痛風治療剤Colcrys®に関する複数の特許を侵害しているとしてデラウェア州連邦裁判所に訴訟を提起した。

裁判所は2015年1月9日、両訴訟で Hikma社のcolchicine製剤の発売を認める旨の決定を下した。
(判事の判断理由は公開されていないので、詳細不明)

 対FDA

米国コロンビア特別区連邦地方裁判所は2015年1月9日、FDAのHikma社製品承認に対する武田の申立を却下した。

 特許違反訴訟

デラウェア州連邦裁判所は11月4日、武田によるHikma社およびWest-Ward社のcolchicine製剤販売に対する仮差止の申立を却下した。
武田は直ちに控訴した。

合衆国連邦巡回区控訴裁判所は2015年1月9日、デラウェア地区連邦地方裁判所がすでに下していた仮差止申立却下の判断を支持した。

Hikma ではMitigareブランドでの colchicine 0.6mg capsules の販売を準備中で、authorized generic(AG)も準備している。
調査会社によると、最近1年間の武田の米国での売上高は688 百万ドルで、Hikmaは少なくとも米国市場の半分を得ると見ている。

武田では、両訴訟を継続し、争っていくとし、「今後の裁判において勝訴するものと確信しています」と述べた。

 
裁判所が後発医薬品メーカーによる発売を認める旨の決定を下したことに対する対抗策である。

ーーー

本件は一般の後発薬を巡る争いと若干事情が異なっている。

Colchicine そのものは昔からある薬で、FDAの承認なしに何十年も販売されていた。

イヌサフランがリュウマチなどの治療に効くということが、紀元前1500年頃のエジプトの医学書Ebers Papyrusに書かれている。

ヒポクラテスは痛風治療薬としてイヌサフランからとれるコルチカム(コルヒチン)を記載していた。

1世紀に書かれたシチリア出身のローマ帝国の医者Pedanius DioscoridesのDe Materia Medica(薬物誌)にも痛風に効くと記載されている。

Benjamin Franklinも全権公使としてフランス滞在中にこのイヌサフラン療法でよくなり、米国へイヌサフランを持ち帰ったとされる。

Colchicineは1820年にフランスの化学者P.S. Pelletier とJ.B.Caventouによって初めて分離された。

Colchicine 単剤はFDA による承認はなかったが、尿中の尿酸排泄を促進する薬物を含有する合剤製品は 1939 年に FDA によって承認された。

FDAは2009年にMutual Pharmaceutical Company, Inc.による痛風予防、痛風炎治療、家族性地中海熱(炎症性の遺伝性疾患)治療のColcrys (colchicine) Tablets, 0.6 mg の新薬申請 (NDA) を承認した。

URL Pharma はジェネリック医薬品分野でMutual Pharmaceutical Companyと提携しており、この権利を引き継いだ。
2012年4月にTakeda America が
URL Pharma 買収で合意し、その後、URLをTakeda Pharmaceuticals USAに統合した。

このため、承認なしで販売していたcolchicineが問題となり、約1年後にFDAは未承認の colchicine 単一剤を販売しないよう命じた。

各社は後発薬申請(ANDA:Abbreviated New Drug Application) を検討した。

これに対し、Mutual Pharmaceutical とこれを買収した武田は各社を特許侵害で訴え、後発薬申請を防いできた。

Mutual Pharmaceuticalは2012年に Par Pharmaceutical Companies. Inc.を訴えた。Parは一旦申請を取り止めたが、武田に対し再び申請する旨通知した。

このため、武田は2013年9月に再度Par Pharmaceutical を特許侵害で訴えた。

続いて2013年10月に後発薬申請を計画しているAmneal Pharmaceuticals LLC を特許侵害で訴えた。

2014年2月には、武田はActavis Inc. の子会社のWatson Laboratories を14件の特許侵害で訴えた。
Actavisは、アイルランドのActavis Group と米国のWatson Pharmaceuticals が統合してできた世界第3位のジェネリック医薬品メーカー)

しかし、2014年9月26日 にFDAは Hikma Pharmaceuticals と米国子会社West-Ward Pharmaceutical Corp. の申請を承認した。

 



2015/1/17  スイス・フラン 急騰 

スイス国立銀行(中央銀行) は1月15日、対ユーロでのスイス・フランの上昇を抑えるため導入していた無制限介入を終了し、1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃した 。

これにより、急激なスイスフラン高が進み、ユーロ/スイスフランは短時間のうちに大暴落した。


    (毎日新聞 2015/1/17)

2011年9月以降、スイス国立銀行はフランのレートが上限を超えると外国為替市場で無制限にスイスフランを売り、ユーロを買ってフラン高を防いできた。

スイスは永世中立国で地域紛争の影響を受けにくく、国民1人あたりの金保有高も世界一であることから、スイスフランは「有事の際の避難通貨」とされる。

当時は欧州危機で、ユーロを売ってフランを買う動きが高まっており、輸出企業も多いスイス経済にとって、フラン高は大きな脅威であり、国立銀行はたびたび「為替レートの上限値は、金融政策の柱」と繰り返してきた。

しかし、欧州中央銀行(ECB)理事会の開催を1週間後に控え、量的緩和の可能性を考え、異例の政策の継続を断念したとみられる。

量的緩和が行われば大量のユーロが出回ってフラン買いの圧力が高まり、ユーロを買い続ける為替介入で抑えきれなくなる恐れがある。
膨大なユーロを抱えてから上限を撤廃すれば、ユーロ急落でスイス中銀が巨額の含み損を抱えかねないリスクがあった。

この決定は大きな衝撃を生んだ。

通貨高による輸出下押しへの懸念からスイス株は急落した。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は米CNBCの番組で「事前に私に連絡がなかったのは驚きだ」と苦言を呈した。

自国通貨より金利が低いスイスフラン建てで住宅ローンを組むことが珍しくない東欧にも及んだ。ポーランドは住宅ローンの約4割がスイスフラン建てという。

英国の外国為替証拠金取引業者Alpari は、スイス・フラン相場が急激に変動した影響を受けて、1月16日付で破綻したと発表した。
日本の金融庁はAlpari の破綻を受け、日本法人のアルパリジャパンに対して、顧客から預かった資産が流出しないように求める命令を出した。

 


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