2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2015 http://blog.knak.jp
 



2015/6/15   パナソニック ヘルスケア、Bayerの血糖測定器事業を買収

パナソニック ヘルスケアHD は6月10日、Bayerの子会社Bayer HealthCare傘下のBayer Diabetes Care事業(血糖測定器事業) の株式および資産譲渡契約を締結し たと発表した。

Bayerが実施した事業売却の入札に応札していたもので、1,022百万ユーロ(約1,380億円)で買収する。

付記 2016年1月5日、買収手続き完了

付記 社名をAscensia Diabetes Care とした。

Bayer Diabetes Careは世界中で糖尿病患者および医療従事者向けに血糖値測定システムを提供する企業で 、現在では125カ国以上で事業を行っており、2014年の売上高は909百万ユーロ。

パナソニック ヘルスケアは、顧客のニーズに応え、世界中の糖尿病患者向けに高品質かつ生活の質の向上を目指す製品提供の取組みを強化していくことで、糖尿病ケア分野におけるグローバルトップクラスの企業を目指す。

ーーー

パナソニック は2013年9月、パナソニック ヘルスケアの全株式をKKRの関連投資ファンドが実質的に全株を保有するパナソニック ヘルスケア HDに1650億円で譲渡する契約を締結することを決めたと発表した。

パナソニックはパナソニック ヘルスケア HDの20%を引き受ける。

2014年3月31日に手続き完了した。

2013/9/11 パナソニック のヘルスケア事業売却、米KKR に優先交渉権 

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パナソニック ヘルスケアの診断薬事業部は、糖尿病患者向け血糖値測定器・センサーの開発製造を手掛けており 、同社の売上高の3〜4割を占めるが、全量をOEM(相手先ブランドによる生産)供給してきた。

Bayer Diabetes Careは、20年来、同社の製品を販売してきたパートナーで、ContourTM NextおよびContourTMシリーズについては独占販売を行っており、パナソニック ヘルスケアの売上の7割強を占める。

WHOによると、世界中に糖尿病患者は3億5千万人近く存在し、1985年より3千万人増加したと推定されている。今後、特に中低所得国において、さらに増加するとみられている。

しかし、パナソニック ヘルスケアの場合、製販が分離していたため、新興国戦略でも調整に手間取ることが多く、意思決定の遅さが課題だったとされる。

今回、世界に広がるBayerの販路を手に入れ、製販一貫体制を築く。柔軟な価格設定などで新興国需要をつかみ、世界トップを狙う。

Bayerの世界シェアは15%程度とみられ、Roche(シェア30%程度)、米Johnson &Johnson(同25%程度)に次ぐ3位グループに位置する。

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パナソニックヘルスケアの歴史は以下の通り。
当初はエレクトロニクスが中心であったが、2007年4月の改組でヘルスケアが中心となった。

1969/11   松下寿電子工業として発足
     松下グループ内で「四国の天皇」とも呼ばれた稲井隆義(赤外線電気コタツの考案者)が四国で創業
     
2002/10   株式交換により松下電器産業の完全子会社に
     
2005/4   パナソニック四国エレクトロニクスに改称
   
ヘルスケア分野:血糖値測定システムほか
ビジュアル分野:デジタルビデオカメラ(DVD・DVC)、マルチメディアディスプレイ他
デバイスインダストリー分野:ブルーレイディスクドライブ、スーパーマルチドライブ、HDD用流体軸受モータ他
     
2007/4   松下電器改組
    ・松下電器の社内分社である「ヘルスケア社」をパナソニック四国に統合
・PC用光学ドライブ事業をパナソニック コミュニケーションズ(現:パナソニック システムネットワークス)に譲渡
   
     
2010/4   ヘルスケア事業のさらなる拡大に向け、ヘルスケア事業としての事業領域別体制に再編
    ・「デバイスプロダクツBU」「流軸モータBU」を統合し、「医療デバイスBU」
・「補聴器 BU」を新設
・「ビジュアルプロダクツBU」に、医療システム事業を加え、「医療機器・システムBU」
     
2010/10   パナソニックヘルスケアに改称
     
2012/1   パナソニック改組
    ・パナソニックに新たな社内分社としてヘルスケア社を設立
・三洋電機のバイオメディカ事業とメディコム事業はパナソニック ヘルスケアに統合
・パナソニック電工四日市のFCメディカル事業をパナソニック ヘルスケアの医療機器・システムBUに統合
・パナソニック ヘルスケアの医療デバイスBUを医療機器・システムBUに統合
   
   
・医療機器・システムBU:
  高性能で高品質な医療機器・システムの提供
  人口歯一次加工事業や注射薬払い出しロボット、医療用データストレージなど
・補聴器BU: 「オーダーメイド耳あな型」、「耳かけ型」、「ポケット型」など、豊富なラインナップ
・画像診断BU: 超音波診断装置を中心に、画像診断技術を駆使した機器を展開
         超音波診断装置や4Dプローブ、 POD半導体レーザー
・バイオ診断BU: 独自のバイオセンシング技術を駆使し、体外診断デバイスを展開
         血糖値測定シテテムや乳酸値測定システムなど
      * 補聴器と超音波診断は今後売却
     
2014/1   超音波診断機器関連事業をコニカミノルタに譲渡
     
2014/3   補聴器事業をパナソニック システムネットワークスに事業移管
     
2014/4   新体制 (KKR 80%、パナソニック 20%)
     
現状  
・診断薬事業部 (in Vitro Diagnostics Division)
・メディコム事業部 (Medical Information Systems Division)
・バイオメディカ事業部 (Biomedical Division)
・R&Dセンター

 



2015/6/16 2014年のエネルギー事情  

BPは6月10日、“Statistical Review of World Energy 2015” を発表した。

http://www.bp.com/en/global/corporate/about-bp/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

そのなかで、2014年の6つの注目に値する事実を挙げた。

1)米国の石油生産、世界トップに

2014年の世界の生産量は88,673 千バレル/日となり、前年の86,579千バレルを2.3%上回った。

そのうち、米国は11,644千バレルで前年比で 1,576千バレル(15.9%) 増加となり、サウジ、ロシアを上回り、世界一となった。
前年比で日量160万バレルの増加は過去最大となる。

また、前年比では2012年は1,043千バレル増、2013年は1,165千バレル増となっており、3年連続で日量100万バレル増はこれも初めてとなる。

結果として、2014年の生産量は過去の米国のピークの1970年(11,297千バレル)を超えた。

シェールオイルの生産拡大によるもの。

サウジはこれに苛立ち、OPECの生産枠据置きを行い、原油価格の下落を招いた。

 

 

2) 非OPEC(旧ソ連を除く)の石油生産量が急増

2014年の旧ソ連を除く非OPECの生産量は38,278千バレルとなり、前年を2,117千バレル上回った。
OPECの生産量は日量 36,593千バレル。

米国の前年比 1,576千バレル増、カナダの315千バレル増、ブラジルの232千バレル増が貢献した。


3) 石油需要の伸びの停滞

2014年の世界の生産量は88,673 千バレル/日となり、前年の86,579千バレルを2.3%上回ったが、需要は日量 92,086千バレルで前年比 0.8%の伸びにとどまった。(世界経済は3.3%増)

うち、米国の需要は 0.5%増、中国は 3.3%増に止まり、日本は 5.2%減となった。
米国や欧州は天候の影響が大きいが、中国の伸びが減少したのが大きい。

 

 

4) 中国のエネルギー需要の減少

2014年に中国経済は7%以上の伸びを示したが、エネルギー消費は2.6%増にとどまった。
石炭の需要は前年比で僅か 0.1% の増となった。

中国の経済調整により、エネルギー市場がドラマチックに変わりつつある。

 
 
5) カーボン排出量

2014年のエネルギー使用からのカーボン排出は僅か 0.5%増に止まったと推定する。

これは1998年以来、最も少ない伸び率である。(過去10年の平均は約2%の伸び)

この最大の理由は中国の開発の停滞である。

 

6) 再生可能エネルギーの2面

 @ 2014年の再生可能エネルギー(含 バイオ燃料)の伸びはPrimary energy の全体の伸びの1/3を占める。

 A 2014年の再生可能エネルギーの伸び率は12%で、それなりに大きいが、過去10年の平均(15.4%)からはかなり低い。
    特に風力が、欧米での政府支援の減、中国の低風速の影響で、過去10年の平均の伸びの半分以下にとどまった。

全体としては、エネルギー需要の低迷のなかで、再生可能エネルギーは、それに影響を受けず、通常の伸びを示している。

 


2015/6/17    イランの石油化学の現状 

イランが石油化学の大増設を行っている。


イランの石油化学のスタートはイランと日本の合弁の
イラン・ジャパン石油化学で、
現在のBandar Imam Khomeyni で建設が開始された。

しかし、イラク・イラン戦争などで、実現が困難となり、1989年に清算を決めた。

1990年に入り、イラン国営石油化学(NPC)は韓国企業を使って設備の再建に着手した。

その後、隣接してPetrochemical Economic Zone をつくり、拡大を続けている。

2006/3/27 イラン・ジャパン石油化学(IJPC)の歴史

イランはその後、南部の Pars地区でもPars Economic Zoneをつくり、順次拡大している。

現在は、Pars からBandar Imam 経由でイラク国境沿いに北西部まで結ぶ West Ethylene Pipeline を建設するとともに、Parsから内陸部にエタンをパイプラインで送り、エチレンを生産、周辺で誘導品を生産する計画 (Central Ethane/Ethylene Pipeline )を進めている。West Ethylene PipelineはBandar Imam 近郊のGachsaranから内陸部のDENA Regionに延長している。

これとは別に、アンモニアや肥料は以前から各地で生産している。

Parsでは10基のメタノール、5基のアンモニア(+尿素)を同時に建設中である。

現在稼動中、及び建設中のエチレン、プロピレンの能力は下記の通り。(千トン)

  稼働中 建設中
エチレン プロピレン エチレン プロピレン
Bandar Imam 2,031 471 0 600
Pars 3,821 305 3,200 327
北部 445 184 1,958 205
南部     1,500 0
合計 6,297 960 6,658 1,132

更にParsの南方のLavan Island に第三の石油化学センターを建設する構想もある。

2012/1/5    イラン、第三の石油化学センター建設を計画  

海外では、BP、住友商事、Petronasが出資し、その後一旦清算されたフィリピンのBataan Polyethyleneに60%出資し、NPC Alliance Petrochemical としている。

ーーー

現在のイランの石油化学基地は次の通り。 (赤枠はオレフィン製造)

 

 

イランの石油化学の一覧表と、各プラントの詳細は下記参照。

一覧表  http://www.knak.jp/iran/iran-petchem.htm 

詳細は、一覧表のプラント名をクリック

 


2015/6/18   世界の石油化学製品の需給動向 

METIは6月12日、例年の「世界の石油化学製品の需給動向」を発表した。

            http://www.meti.go.jp/press/2015/06/20150612001/20150612001.html


概要は以下の通り。

1.世界のエチレン系誘導品

 1)生産能力

世界のエチレン系誘導品の生産能力(エチレン換算)は、2013年末時点で157.5百万トンであった。
2019年末の生産能力は190.1百万トン(2013年比で32.6百万トン増)で、年平均3.2%で増加する見通し。

北米のシェールや中国の石炭化学によるプラントの生産能力の増加が主な要因となり、エチレンを含む世界のエチレン系誘導品の生産能力は増加する見通し。

しかしながら、北米では、旺盛に計画されたシェール関連プラントの新増設計画が建設コストの上昇を招いていることに加えて、原油価格の下落がナフサに対するエタンの優位性を低下させ、それらがプラントの稼働開始時期を遅らせる動きにつながっている。

 2) 需要

世界全体の需要量の伸び率は、エチレン系誘導品は2013年〜2019年で年平均3.5%(2006年〜2013年の実績は年平均2.6%)を見込む。


中国やインドで鈍化の傾向もみられるが、引き続きアジアが需要の伸びを牽引する見通し。

しかしながら、直近の需給動向に影響を与える要素として原油価格の下落に関心が高まっているところであり、産油国や資源開発企業への悪影響が経済全体に悪影響を与えるという見方もある一方、消費を刺激することで需要を喚起するという見方もあることから、原油価格の動向には注視する必要がある。

 3)バランス

エチレン系誘導品の需給バランスは、中国では石炭化学等の進展に伴い生産能力が増加するものの、それを上回る勢いで需要が増加し、2019年には需要超過幅が17百万トンに広がる見通し。
一方、中東では生産の拡大により2019年には19百万トンの供給超過になる見通し。
北米では供給超過幅が2019年には8.3百万トンに広がる見通し。

2.世界のプロピレン系誘導品

 1)生産能力

世界のプロピレン系誘導品の生産能力(プロピレン換算)は、2013年末時点で106.3百万トンである。
2019年末の生産能力は135.5百万トン(2013年比で29.3百万トン増)で、年平均4.1%で増加する見通し。

エチレン系誘導品と同様に、需要の伸びに応じて堅調に増加する見通しであるが、中東や北米のエタンクラッカーからはプロピレンは生産されないため、石炭化学やプロパン脱水素法(PDH)によりプロピレンの生産を進める中国の占める割合が大きくなる傾向にある。

 2)需要

プロピレン系誘導品の世界の需要(プロピレン換算)は、2013年の84.8百万トンから2019年には108.3百万トンに増加し、年平均伸び率は4.2%と見込まれる。

今後も引き続きアジアが需要の伸びを牽引していくものと見られるが、今後の経済成長率が鈍化することにより小幅な需要の伸びに止まることも考えられる。

 3)バランス

中国では2013年に需要超過幅が6.4百万トンに達して以降は、PDHプロジェクト等の進展に伴い、2019年には3.2百万トンまで需要超過幅が減少する見通し。

 

3.パラキシレン、PTA

世界のPTA生産量の半分を中国が占める構造となっており、その原料であるパラキシレンについて中国では大幅な輸入超過の状況となっており、PTAのプラントの新増設が見込まれる現段階において、この傾向はさらに拡大する見込み。

 

 

 

METIでは、中国の石炭化学の動向、米国のシェール革命の影響についてコメントしている。

 1. 中国の石炭化学の動向等

石炭化学プロジェクトは、公表済の50近い計画(エチレン換算で約1,700万トン)のうち、2016年末までに11(同 300万トン)プロジェクトが実行されると見込んでいるが、それ以降は、原油価格の急落、中国国内の環境規制の強化の動きにより、どの程度実行されるかは不透明。

エチレンの生産能力は、自給率向上の政府方針のもと、ナフサクラッカーも含めた新増設計画が進められ、1,900万トン(2013年)から3,000万トン(2019年)まで増加する見込み。

プロピレンについては、LPG価格の長期的な弱含み見通しのもと、PDHが急速に進展。MTPも合わせたプロピレンの生産能力は2,000万トン(2013年)から3,700万トン(2019年)まで増加する見込み。

 2. 米国のシェール革命の影響

シェール由来の新増設エチレンプロジェクトは、原油価格の値下がりによる優位性の低下や建設コストの上昇等の影響を受けるものの、ナフサに対する絶対的な価格競争力は変わらず。

一部のプラントでは稼働開始時期に1年程度の遅れが見られるが、2017年、2018年をピークに1,000万トンを超える能力増強が見込まれる。その結果、エチレンの生産能力は2,800万トン(2013年)から3,800万トン(2019年)まで増加する見込み。

 

製品別の、能力・需要・生産の地域別推移と、各国・地域ごとの能力・需要・生産の推移を下記のサイトでグラフ化した。

http://www.knak.jp/METI-world/index.html

 


2015/6/19 米FDA、トランス脂肪酸の禁止を決定 

米食品医薬品局(FDA)は6月16日、マーガリンなどの加工食品に含まれ、動脈硬化などの原因になるとされるトランス脂肪酸について、2018年6月以降、食品に加えることを原則禁止すると発表した。2013年に使用禁止の方針を打ち出し、科学的な検討を進めていた が、最終的に「食品への使用が安全とは認められない」と判断した。

発表によると、トランス脂肪酸の直接の発生源となる植物油を常温で固まるよう処理した「部分水素添加油」の使用が禁止される。

マーガリンやショートニングなど多くの加工食品の原料になっており、食品業界は対応を迫られる。

トランス脂肪酸は、マーガリンなどを製造する際、液状の不飽和脂肪酸を固形化するため水素添加を施して飽和脂肪酸に変化させる過程で発生する。
天然に存在する脂肪酸がほぼ全部シス型という立体構造だが、水素添加したものは、トランス型という天然にない構造になる。

米国では飽和脂肪酸及び食事由来コレステロールの摂取の他に、トランス酸の摂取が冠動脈心疾患のリスクを高めるLDL コレステロール(悪玉コレステロール)のレベルを上昇させるという科学的知見に基づいて、 2006年1月1日以降、食品の栄養成分表示欄に飽和脂肪酸、コレステロールに加えてトランス酸の含有量も明記することが義務付けられた。

この結果、 食品業界が自主的に使用を控えるなどしたため、米国民の消費量は2012年には2003年と比べ78%減ったとされるが、1食あたりの含有量が0.5グラム以下であれば「 ゼロ グラム」と表示できることもあり、冷凍ピザやパッケージパイ、電子レンジで調理するポップコーンなどの加工食品、ケーキにかける砂糖衣、マーガリン、コーヒー用クリームなどにまだ多く使われている。

FDAはトランス脂肪酸を禁止することで年間2万件の心臓発作を防ぎ、心臓病による死者が 7,000人減ると見込んでいる。
FDAでは、禁止で60億ドルのコストがかかるが、ヘルスケアや他のコストで20年以上にわたり1400億ドル近くが節約されると見ている。

食品業界では、3年間の猶予が与えられたことは喜んでいるが、完全除去は難しいとして、特定の製品に少量のトランス脂肪酸が残留するのは認めて欲しいとしている。

日本では平均摂取量がWHOの基準値よりも少ないことから、通常の食生活を送っていれば健康への影響は小さいとされ、厳格な規制はない。 

ーーー

FDAは2006年にトランス脂肪酸の含有量の表示を義務づけたが、ニューヨーク市は 同年12月に、全米の自治体として初めて、レストランでのトランス脂肪酸の使用を実質的に禁じることを決め、2007年7月1日に使用規制を施行した。

市内の計約 32,000の飲食施設は同日から、調理油などのトランス脂肪酸の量を1食当たり0.5グラム未満に抑えるよう義務付け 、違反したレストランなどは200ドル〜2000ドルの罰金を科される。ファストフード 1回分の食事には、多い場合10グラム以上が含まれているといわれており、これは実質的な使用禁止措置である。

2008年8月からは調理油などだけでなく、すべてのメニューに含まれるトランス脂肪酸の量を、1食当たり0.5グラム未満に抑えるよう義務付けた。

2006/12/11 ニューヨーク市、トランス脂肪酸の使用禁止へ

カリフォルニア州のSchwarzenegger 知事は2008725日 、カリフォルニア州のレストランや食品小売設備でのトランス脂肪酸を含む油、マーガリン、バターの使用を禁止する法案にサインした。トランス脂肪酸は冠状動脈性心臓病の原因とされており、健康なカリフォルニアに向け強力な一歩を踏み出すと述べた。

トランス脂肪酸を含む油、マーガリン、バターをパンに塗ったり、フライに使うのは2010年1月1日から禁止された。ケーキバターでの使用などは1年間は認められ た。
違反者は25ドル〜1,000ドルの罰金が課せられる。

オハイオ州クリーブランド市では2011年4月に禁止を決めたが、2ヵ月後にオハイオ州議会が州予算を修正し、これを邪魔したたため、市長は憲法違反として訴えた。
2012年6月、市が勝訴した。

フィラデルフィア市は2007年2月、レストランでの1食 0.5グラム以上のトランス脂肪酸を含む油の使用を禁止した。


2015/6/19 米下院、TPA単独法案を可決 

米下院本会議は6月18日、大統領に通商一括交渉権を与えるTPA法案を賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 190 28 218
反対 50 158 208
棄権 6 2 8
合計 246 188 434

民主党からは6月12日にTPA法案に賛成した28名が今回も賛成した。

上院が可決した一体法案を単独法案に修正したため、成立には上院がTPA法案を再度、可決する必要があるが、TPA法案単独で可決されるかは予断を許さない。

今回除外した自由貿易拡大による失業者対策条項(TAA)については、別途、民主党が望んでいる他の法案(高速道路の整備を促進するための法律の期限延長など)と組み合わせるなどして上下両院で可決しやすくする案が浮上している。

ーーー

上院は5月22日にTPA法案を可決したが、これには、TPPなど自由貿易拡大による失業者対策条項(TAA)を含んでいた。

2015/5/25   米上院、貿易権限法案を可決 

下院は6月12日、関連法案を二つに分けて議決を行った。

@TPA法案:大統領に通商一括交渉権(TPA)を付与
ATAA法案(Trade Adjustment Assistance Bill ):
自由貿易拡大による失業者対策

採決の結果、@は可決されたが、Aは否決され、@とAの両方の法案が同時に可決されることが必要十分条件であるため、これで法案は事実上否決された。

2015/6/13 米下院、TPA法案を可決するが、関連法案否決で成立せず   

米下院の野党・共和党指導部はTAAを再度採決し、可決する方針を決めたが、「TPA阻止」の姿勢を取る民主党を短期間で説得するのは困難と判断、TAA法案について、6月16日の再採決を先送りし、最長で7月末まで審議できるようにする方針を決めた。

しかし、与党・民主党が態度を硬化させたままでTAAの過半数を確保するメドが立たない状況であるため、急遽、TPA法案を単独で再採決することを決めた。
6月12日に可決された法案はTAA法案と対になっているため、一部修正し、再採決するもの。

上院が5月22日に可決した法案とは異なるため、上院で再度議決する。

5月22日の採決では民主党から14名が賛成し、可決に必要な60票を辛うじて2票上回り可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 48 14   62
反対 5 30 2 37
棄権 1     1
合計 54 44 2 100

賛成の前提には、自由貿易拡大による失業者対策(TAA)があったため、今回、TAA部分を除いた法案が可決されるかどうか、予断を許さない。

 


2015/6/20 米商務省、中国製タイヤの反ダンピング及び反補助金調査でクロの最終裁定  

米商務省は6月12日、中国から輸入される乗用車・小型トラック用タイヤにダンピングおよび補助金問題が存在するという最終裁定の結果を発表した。

「中国が米国に輸出している乗用車・小型トラック用タイヤにはダンピングおよび補助金問題が存在する。ダンピング率は14.35%〜87.99%で、補助金率は20.73%〜100.77%。米国が発展途上国に求める補助金率2%以下の基準、先進国に求める補助金1%以下の基準を超えている」と指摘した。

2014年6月3日にAFL-CIO-CLC (PA)が調査の申請を行い、商務省が同年7月に調査を開始、同年7月22日にはITCが被害の仮決定を行った。

米国では、商務省がダンピングの有無、ITCが被害の有無を審査する。

商務省は2015年1月20日、ダンピングと補助金問題が存在するとの仮決定を行った。

今後、7月26日にITCが最終決定をする予定で、被害ありとの決定であれば、8月3日に最終決定が行われる。

付記 ITCは7月14日、米国の産業に実質的な 被害を与えたと認定した。
    副委員長と2人の委員が「被害あり」、委員長と2人の委員が「被害なし」で3:3となり、規則により「被害あり」認定となった。
        (仮決定時には全員が「被害あり」としていた)

中国からのタイヤの輸入は、2012年が3,148万本、12億6592万ドルであったが、2014年の5,801万本、22億6,456万ドルに増えている。

ーーー

今回の商務部の決定は下記の通り。

会社名 反ダンピング 反補助金
マージン 徴収税率 補助金レート 徴収税率
Giti Tire (Fujian) 29.97% 14.54% 37.20% 36.79%
他のGiti Tire グループ 30.87% 30.61%
Sailun Group 14.35% 0.00%
Cooper Tire(下記を除く) 25.30% 10.58%
Cooper Kunshan Tire 20.73% 20.73%
Shandong Yongsheng Rubber 87.99% 76.46% 100.77% 100.37%
その他調査対象会社 25.30% 8.18% 30.87% 30.61%
その他 87.99% 76.46%

徴収税率(Cash deposit rates) は輸出補助金の額や補助金利益の移転(pass-through)により調整した。

反ダンピング対象会社(マージン 25.30%) には、米国のCooper Tireのほか、米国のGoodyear、日本のBridgestone、Toyo Tire、韓国のHankook Tire、Kumho Tireなども含まれている。

Shandong Yongsheng Rubberは資料提出要請に応じなかったため、Adverse Facts Available条項により高率の課税となった。反ダンピングの「その他」企業も同様。

ーーー

中国商務部の担当者は6月15日、「今回の米国の措置は、WTOの規定に反するものであり、中国側は深い懸念を抱いている」と し、以下の通り述べた。

今回の米商務省による中国製タイヤ製品に対する反ダンピング・反補助金調査では、調査過程で、多くの不公平かつ差別的な方法が採用された。

米国が調査を進める過程で、中国政府関連部門は幾度となく、米国側の不合理なやり方に対して談判を繰り返した。WTO紛争解決機関が米側のやり方がWTO 規則に違反しているとの判断を下したにも関わらず、米国はその誤りを改めようとせず、中国製タイヤ輸出企業の合法的利益に甚だしい損害を与えただけではなく、WHO多国間貿易協定に背き、多国間貿易の秩序を壊した。

中国政府は、米国側に対し、国際貿易ルールを厳格に守り、貿易救済措置を慎重に使用し、責任感ある態度と行動をとり、自らの誤りを正し、多国間貿易体制と米中経済貿易関係の大局を守るよう、促している。


 


2015/6/20 ギリシャ支援合意できず 

EUのユーロ圏財務相会合は6月18日、財政危機のギリシャに対し金融支援をするかどうかを協議したが、支援の条件となる改革案で合意できなかった。

EUのトゥスク首脳会議常任議長(大統領)は、6月22日のユーロ圏首脳会議を緊急招集、「ギリシャ情勢を高度な政治的レベルで協議する」とし、首脳間で打開を図る。

EUは2月にギリシャに対する金融支援プログラムの期限を6月末まで延長したが、経済の構造改革を進めなければ支援を実行しない、との条件をつけ 、72億ユーロの融資を凍結していた。
この日の会合でも改革案で合意できず、6月末までに実行するのは難しくなった。

財政危機に直面するギリシャは、6月5日のIMFへの債務返済を月末に先送りした。6月中に期限を迎える4回分の返済計15.5億ユーロは、6月30日にまとめて支払う。

6/5 3.0

億ユーロ

6/12 3.4  
6/16  5.7  
6/19  3.4  
合計 15.5  

更に7月13日にはIMFへの4億5千万ユーロ、7月20日と8月20日にはECBへの各 35億ユーロの返済を控えている。

2015/6/8   ギリシャ、IMFへの6月分債務返済の一本化、月末先送りを要請  

ギリシャ側はEUなどの支援がないと返済できないとしており、IMFのラガルド専務理事は会見で「6月30日に返済がないと、7月1日にはギリシャはデフォルト状態になる」と警告した。「猶予期間や延期はない」としている。

ギリシャの中央銀行は6月17日、「合意に至らなければ、痛みを伴う道のりが始まり、まずデフォルト、最終的にユーロ圏離脱やEU離脱につながる」と警告した。

デフォルトに備えた動きも出始めており、ギリシャの銀行では預金の流出が続き、預金引き出し額の制限など資本規制が敷かれる可能性も指摘される。
英政府はATMなどが停止して旅行者がギリシャに取り残された場合などの対応策を準備し、ドイツ政府も緊急策を協議しているという。

欧州中央銀行(ECB)がデフォルト後もギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を承認し続けるのかという問題もある。

欧州中央銀行(ECB)は2月4日、ギリシャ救済に伴う公約を順守する同国政府の姿勢に懸念が生じたことを理由に挙げ、ギリシャ国債に対する適格担保ルールの適用除外を停止することを決めたと発表した。

担保として差し入れているギリシャ国債は、2月11日をもって適格担保要件を失った。

ギリシャの銀行は今後は金利がそれほど有利でないギリシャ中央銀行のELAでの資金供給に頼るしかなくなる。

ECBはギリシャ中央銀行に対し、最大595億ユーロの緊急資金を国内銀行に供与することを認めたが、ECBにはこれを許可しない権限があり、2週間ごとに手続きを見直すこととなっている。

現在の枠は841.5億ユーロになっているが、ギリシャがデフォルトになればELAを凍結、もしくは枠を縮小する可能性がある。
ギリシャの銀行や企業の破綻につながる。

付記 ECBは6月19日、当面の資金繰りを支えるため、緊急支援枠を17.5億ユーロ拡大し、859億ユーロとすることを決めた。ギリシャ中央銀行は35億ユーロの増額を求めたが、ECBは当面の資金繰りには、その半分でも十分だと判断した。

ーーー

交渉の主な対立点は下記の通り。

)年金制度改革

ギリシャの年金は政府が不足額を補填する状態が慢性化しており、EUなどは財政赤字を膨らませる主因とみて、GDPの1%(約18億ユーロ)の支給減額を要求しているが、ギリシャが応じたのは約7千万ユーロの節約にとどまる。

軍や警察では、いまだに50歳代での年金の満額受給を許しているとされる。

他方、ギリシャでは過去5年で大幅な年金減額を実施 し、平均受給額は4割近く減少したとされており、さらなる年金減額は政権の公約違反となる。

ギリシャの財務相は、年金はすでに削減しているとしたうえで、「低所得の年金生活者に大きな不満を生み出す」と述べた。

2)付加価値税

現在は一般税率23%、軽減税率 13%,  6.5% だが、EUはこれを、原則23%とし、食品・医薬品・ホテル代のみ11%とすることを求めている。
簡素な税制に改めれば、毎年GDPの1%の増収が見込めるとしている。

中でも焦点となっているのが電気代の税率で、EUなどは現在は13%の税率を23%に上げるよう提案しているが、ギリシャは低所得者の生活を直撃することから電気代の税率据え置きを強く主張し ている。

なお、ギリシャ危機前の税率は19%、軽減税率 9%,  4.5%であった。

3)軍事費

EU側は年金削減の代替案として、軍事費の削減も提案しているが、ギリシャ側は連立政権維持への配慮から慎重にならざるを得ない。



ギリシャの銀行はこのところ大規模な預金流出に直面している。6月15日〜17日にギリシャの銀行から約20億ユーロが流出した。4月末の預金総額は1336億ユーロのため、3日間で約1.5%が流出した。ギリシャ中央銀行によると、2014年10月から2015年4月までの間に約300億ユーロが流出した。

ECBの専務理事は、ギリシャの銀行の営業は6月19日については可能だが、6月22日に関しては分からないとしている。

 

日本経済新聞によると、ギリシャ中央銀行は定額積み立てのように少しずつ金を買い進めており、ギリシャの外貨準備に占める金の割合は65.7%にのぼる。60%を超えるのは世界でも米国やドイツなど9カ国のみで、日本は2.3%にとどまる。

ユーロの下落が鮮明になり始めた20115月から買い始めており、「ユーロを離脱して通貨ドラクマの復帰を念頭に金を保有して一定の信用力を担保しようとしている」という臆測は根強い。


2015/6/22  韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学

韓国の Lotte Chemicalは6月18日、ルイジアナ州に2つの石油化学JVを設立すると発表した。

第一のJVはシェールガスに付随するエタンを分解し、エチレンを生産するもので、 Lotte Chemicalが90%、Axiall Corp.が10%出資する。
立地は最終的には決まっていないが、
Lake Charles近郊とされている。

両社はエタンクラッカーの設計、建設、運営のため LACC LLC を設立した。

付記 

2015年12月17日、立地をAxiallのLake Charlesコンプレックスの隣地に決めた。

2016年6月14日、LACC LLC の年産100万トンのエチレン、Lotte Chemical の年産70万トンのEGの起工式を行った。

付記

2016年8月にWestlakeがAxiallを買収した。エチレン計画を引き継ぐ。   

付記

2019年5月9日にエタンクラッカーの完工式 辛東彬(重光昭夫)会長、外遊中の李洛淵首相が出席

 

エチレン能力は年産100万トンで、出資比率に応じ、Lotteが90万トン、Axiallが10万トンを引き取るが、Lotteは自社枠のうち40万トンをAxiallに販売する。Axiallはエチレンを自社のPVCに使用する。

Axiall Corp.は2013年1月にGeorgia Gulf がPPG Industriesのcommodity chemical divisionと合併したもので、Chlorovinyls 部門(電解〜PVC〜PVC製品)とAromatics部門(フェノール、アセトン、キュメン等)を持つ。

両社は2014年2月10日、年産100万トンのエタンクラッカーの50/50JV設立の Heads of Agreementを締結した。その際、Axiallは自社のPVC用のエチレンの50%を確保するのが目的としていた。

今回、90:10に変更したが、エチレン引き取りは売買契約を通して50:50とする。なお、Axiallは出資比率を50%に引き上げるオプションを持っている。

Lotteは残りのエチレンを使い、エチレン隣接地でエチレングリコール 70万トンを生産する。

Lotteでは三菱商事とのJV設立を検討しており、その場合はLotte 70%、三菱商事 30%とする。

各紙の報道では単に「三菱」となっているが、Reutersは申請書に「三菱商事」となっているとしている。

エタンクラッカーとEGの合計投資額は26.3億ドルと見込まれているが、詳細が明らかになる本年下期に最終決定を行う。

2018年末に生産を開始する予定で、Lotteでは年間15億ドルの売上高を見込んでいる。

ーーー

Lotte Chemical は韓国(2箇所)とマレーシアに合計280万トンのエチレン能力を持つが、引取枠90万トンの追加で、370万トンとなる。

旧 湖南石化 麗川 1,000千トン
旧 現代石化(第二系列) 大山 1,000千トン
Lotte Chemical Titan マレーシア @ 345千トン
A 495千トン
 合計 2,840千トン

合計では2,840千トンとなるが、Lotteでは2,830千トンとしている。

Lotteグループは韓国政府から湖南石油化学の株式を取得し、石化に進出した。

湖南石油化学は当初、韓国政府と三井グループのJVとして設立された。その後、ロッテが韓国政府の持ち株を取得、日本側も撤退した。

2006/4/11  韓国の石油化学-2

2003年1月に、現代石化をLGと共同で買収し、第一系列をLGが、第二系列をLotteが分割所有した。

2006/4/12  韓国の石油化学-3

2010年7月に湖南石油化学はマレーシアの石油化学大手 Titan Chemicalsを買収すると発表した。
Titan Chemicalsは2006年3月にはインドネシアのPEメーカー P.T. PENI (BP/三井物産/住友商事合弁、LLDPE/HDPE 450千トン)を買収している。

2010/7/20 湖南石油化学、マレーシアのTitan Chemicalsを買収 

2012年12月、湖南石化とKP Chemical が合併し、Lotte Chemical となった。

Lotte Chemical はウズベキスタンでもアラル海に近いSurgil ガス田を開発し、ガス化学プラントを建設する計画を進めており、本年下半期に完成する。
今回の計画で、ナフサに依存しない石油化学を更に拡大する。

ウズベキスタンのアラル海に近いSurgil ガス田を開発し、ガス化学プラントを建設する総額41億6千万ドル規模の超大型プロジェクト契約が2011年8月23日に締結された。

2006年に韓国ガス公社(KOGAS) とウズベキスタン国営ガス公社(UNG) が了解覚書を締結し、2008年に双方が50%ずつ出資する合弁会社 (Uz-Kor Gas Chemical) を設立し交渉を続けてきた。

Uz-Kor Gas Chemicalの株主は下記の通り。

ウズベキスタン Uzbekneftgaz(UNG)     50.0%
韓国 韓国ガス公社(KOGAS) 17.5%
Lotte Chemical 17.5%
STX Energy(双竜グループ) 5.0%
LG International 5.0%
SK Gaz 5.0%

Surgil のガス埋蔵量は1300億立方メートルで、液化天然ガス換算で9600万トン、原油換算で8億3000万バレルに上る。

Uz-Kor Gas Chemicalは45億立方メートルのガスを処理し、エチレン/HDPE 40万トン、プロピレン/PP 10万トンなどを生産、発電した電気の余剰分を外販する。 

2011/8/29   韓国の李大統領、中央アジア3か国歴訪、ガス田開発、石化事業などで合意 


2015/6/23 BPとロスネフチ、長期戦略関係を強化 

BPとロシア国営 Rosneft は6月19日、両社の長期的な戦略提携を強化する数件の契約に調印した。

BPはRosneft から東シベリアの最大の油田の一つで、現在日量2万バレルを生産するSrednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発権を有するTaas-Yuryakh Neftegazodobycha (Taas)の20%をRosneftから取得し、新しいJVを設立する。

付記

Rosneft とBPは2015年11月30日、上記の取引を完了した。

JVはSrednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発を進めるとともに、同地域の埋蔵量の更なる探査・開発のための適切なインフラを開発し、115千平方kmに及ぶ地域を共同探査する。

Srednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発については、Rosneft はBP以外にも中国その他の企業との協力を検討している。

Rosneft はBPと調印した同日(6月19日)に、英国のSkyland Petroleum との間で、Taas-Yuryakh Neftegazodobychaの株式29%をSkylandに売却し、Srednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発を行うJVを設立するHeads of Agreementに調印した。

発表では、Skyland Petroleumは旧ソ連、南アジア、中東での豊富な経験を有するとしているが、Vazon Energyが2015年1月に設立した新しい会社である。

これに加え、両社は西シベリアとYenisey-Khatanga 盆地の26万平方kmに及ぶ地域を共同で開発することで合意した。共同で調査を行い、結果がよければ新しいJVを設立し、ライセンスを取得し、開発を行う。両地域とも、JVはRosneft が51%、BPが49%出資とする。
この一環で、Yenisey-Khatanga 盆地で2009年にRosneftが発見したBaikalovskiy油田に関して更なる評価を実施するJVも設立する。

両社は別途、ドイツの石油精製のJV、Ruhr Oel GmbH の再編の基本契約を締結した。所属する4つの製油所と付属インフラの持株比率を再編する。
RosneftはBayernoil製油所の持株比率を12.5%から25%に、MiRO製油所を12%から24%に、PCK Raffinerieを18.75%から37.5%に、それぞれ倍増する。
見返りにBP はGelsenkirchen製油所と溶剤製造のDHC Solvent Chemieの持株比率を100%とする。


各国によるロシア制裁で各社とロシアの石油事業での提携が停滞するなか、BPは提携強化を進める。

BPは2014年5月24日にRosneft との間でボルガ・ウラル地域のドマニク累層のシェール鉱区などの開発を推進する覚書を締結したが、2014年6月27日にはRosneft から1200万トンの精製石油製品を購入する5年契約を締結した。

2014/7/3   BP、ロシア制裁開始後にRosneft との関係を強化

BPのDudley CEO は2014年11月、ロシアでの投資を継続する方針を示すとともに、Rosneftの持株(保有比率 19.75%)を売却する計画がないことを明らかにした。

今回の提携に際し、BPのロシア法人トップは「国際的な制裁をこれからも順守しつつ、ロシアが持つ大規模な資源を開発できる魅力的な投資機会を引き続き模索する」と述べた。
 

ーーーー

新しい開発提携の場所は下記の通り。

 東シベリア Srednebotuobinskoye 油田

 

Taas-Yuryakh Neftegazodobycha は2014年11月に、Srednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田での2013年10月の採掘開始以降100万トンを生産した。現在、51の油井を稼動させている。同社が権益を持地域の埋蔵量は原油が133百万トン、天然ガスが1370億立法メートルとなっている。

同社は169km のPipelineを建設し、Eastern Siberia-Pacific Ocean Oil Pipeline (ESPO pipeline) に接続した。

Taas-Yuryakh Neftegazodobychaの当初の株主は下記の通りであった。
  Urals Energy 35.3%
     Yakut Energy   37.4%
     Finfund             16.8 %
  Limenitis Holding 10.5%

Urals Energyは2008-2009の金融危機の際にSberbank Capital に持株を譲渡、2012年にRosneftが買収した。
Rosneftは2013年10月に残り3社の持株を買収した。

   西シベリアとYenisey-Khatanga 盆地

ーーー

Ruhr Oel BPとベネズエラ国営石油会社PdVSA JVであった。
1983年に当時のVeba Oel AG PdVSA JVとして設立され、その後、Degussa Veba を買収したが、2002年にDegussa 親会社のE.On Veba BP に売却した。)

Rosneft 2011年5月1日にPDVSA50%持分を16億ドルで買収した。

Ruhr Oel はドイツ国内に4つの製油所を持つ。また、5つのパイプラインと、北海・バルチック海・地中海・アドリア海に4つの原油海洋ターミナルを有する。
Gelsenkirchen製油所には、solvent その他を製造するDHC Solvent Chemieがある。

RosneftはBayernoil製油所の持株比率を12.5%から25%に、MiRO製油所を12%から24%に、PCK Raffinerie (Schwedt市)を18.75%から37.5%に、それぞれ倍増する。
見返りにBP はGelsenkirchen製油所と溶剤製造のDHC Solvent Chemieの持株比率を100%とする。

これにより、Rosneft はドイツの石油製品市場に参入することとなり、BPの技術と製油所運営ノウハウにもアクセスできることとなる。各製油所でのロシア原油の処理量も増加すると思われる。

 

Ruhr Oel 持株

他株主 能力 (万トン)

うちRosneft

現在 今回 Ruhr Oel
Gelsenkirchen 100% 50% 0%  − 1280 1280
MiRO 24% 12% 24% Shell 32.25%
ExxonMobil 25%
ConocoPhilips 18.75%
1490 358
PCK Schwedt 37.5% 18.75% 37.5% Shell 37.5%
AET(Eni/Total JV) 25%
1100 413
Bayernoil 25% 12.5% 25% OMV 45%
BP 10%
Eni 20%
1100 275
合計         4970 2326

 


2015/6/24  サウジでソーダ灰と塩化カルシウムの製造計画スタート 

Jacobs Engineering Groupは6月16日、サウジの"InoChem"がYanbu Industrial City に建設するソーダ灰と塩化カルシウム工場のPMC( Project Management Consultancy)サービスの契約を締結したと発表した。Jacobs は本計画の構想段階から参加している。

"InoChem"の正式名はKhair Inorganic Chemical Industries Co. で、IDEA International for Investment and Development Company、MEDA Chemical Group や、実業者グループや投資会社などが出資している。("InoChem" の設立準備段階の法人名は IDEA Soda Ash & Calcium Chloride Co. :ISACC )

能力はソーダ灰が年産30万トン、塩化カルシウムが 同30万トンで、2018年初めの生産開始を目指す。
工場は先進的は設備とリサイクル設備を備え、最高レベルの環境保護とコスト低減を目指す。

ソーダ灰の生産は湾岸地区では初めてで、ソーダ灰と塩カルの能力各30万トンはMENA地区(中東及び北アフリカ)では最大となる。 

サウジのソーダ灰の需要(ガラス、洗剤、無機化学品等)は2013年が394千トンだが、2018年には627千トンと予想されている。同様に石油・ガス田で使われる塩カル需要は2013年が165千トンで、2018年には187千トンと予想される。現在はいずれも海外から輸入されている。


2NaCl (工業塩)+ CaCO3 (石灰石)→ Na2CO3  (ソーダ灰)+ CaCl2 (塩化カルシウム)


2015/6/25 ExxonMobil とPDVSA、ルイジアナ州の製油所JVを売却 

ExxonMobilは6月21日、ルイジアナ州のChalmette Refining LLCの50%持分をPBF Energy Inc. に322百万ドル売却すると発表した。
JV相手のベネズエラの国営石油会社Petróleos de Venezuela (PDVSA)も残り50%を売却する。

2015年末に取引が完了する予定。

取引対象には、Chalmette製油所と、MOEM Pipeline LLC(PlaqueminesからChalmette Refiningまで原油を送る54 miles のパイプライン)、及び Collins Pipeline CompanyとT&M Terminal Companyの80%持分を含む。

ExxonMobilでは、売却は戦略的評価の結果であるとしている。

JVの売却により、PDVSAとの米国内の関係は消滅する。

PBF Energyは独立系石油会社大手で、Toledo, OH、Delaware City, DE、Paulsboro, NJの3箇所に合計能力日量54万バレルの製油所を持つ。

付記

これとは別にExxonMobil は2015年9月30日、PBF Energy にカリフォルニア州の下記施設を売却する契約を締結した。

Torranceの製油所
Vernon の潤滑油販売センター
VernonとAtwood の製品ターミナル
パイプライン等

ーーー

PDVSAは2014年に米国子会社Citgoが操業する製油所等の一部もしくは全部の売却を含めベネズエラ国外の資産を再編する計画を立てた。
国外資産売却により得た資金を国内の既存設備の拡張、改良や新規施設建設に充てるとした。

PDVSAの米国内の設備は下記の通り。

 
      能力
日量
 千bpd
ガソリン
日量
万ガロン
CITGO PDVSA 100% Corpus Christi, TX 157 420
Lake Charles, LA 425 880
Lemont, IL 167 400
Chalmette Refining LLC PDVSA 50%
ExxonMobil 50%
Chalmette, LA 184  
Hovensa L.L.C. PDVSA 50%
Hess Corp 50%
St. Croix, Virgin Islands 495  

CITGO Petroleum

同社は元々、1910年に設立されたCities Service Companyである。1965年に商標をCITGOとした。
1982年にOccidental Petroleum が買収したが、1983年に当時7-ElevenのオーナーであったThe Southland Corporationがコンビニチェーンへのガソリンの安定供給のために買収した。
1986年9月にPDVSAが50%を買収、1990年1月に残りも買収し、100%子会社とした。
1993年に
Lyondellとの合弁会社Lyondell-Citgo(Lyondell 58.75%)を設立した。
Houstonに268千bpdの製油所を持っていたが、両社の関係が悪化し、2006年8月にLyondellがCitgoの持株41.25%全てを買取った。

Chalmette Refining LLC

1915年に設立された。
PVDSAは1997年10月に持分50%を買収した。JVの製品の50%を引き取り、CITGOに販売している。

Hovensa LLC (バージン諸島のセントクロイ製油所)

1966年にHess により建設され、その後能力を増強、1998年にPDVSAとのJVとなり、現社名に改称した。

2012年1月18日、製油所を2月半ばに閉鎖し、石油貯蔵ターミナルに転用すると発表した。

2012/2/1 バージン諸島のセントクロイ製油所閉鎖へ  

今回、Chalmetteの売却を決めたが、CITGOについては売却を試みたものの、入札価格が提示価格を大幅に下回ったことを受け、2014年10月に売却停止を発表した。
原油価格の下落により、外貨不足が深刻化しているため、売却を実行する可能性は高い。

ーーー

ExxonMobil とPDVSAはベネズエラの石油国営化をめぐり、2007年から争っている。

2007年にベネズエラは石油の国有化を決め、各石油会社は国営石油会社 PDVSAと条件交渉を行なった。
Chevron、Total、BP、StatoilHydroはPDVSAの条件を呑み、Minority partner として操業を続けることとした。

しかし、Exxon Mobil はこれを拒否した。同社は油田国有化で損害を被ったとして補償を求めて訴訟を行い、米国と英国の裁判所は2008年に同国が支払いに応じなかった場合に備え、PDVSAが海外に保有する資産を差し押さえる命令を下した。(米ニューヨーク連邦地裁は3億ドルの現金、英裁判所は120億ドルまでの資産の差し押さえを命じた。)

CITGOは社債等が大きく、社債権者が優先権を持つことから除外された。
その後、英裁判所はPDVSAの資産の凍結命令を撤回した。

ExxonMobilは世界銀行付属の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴した。これに対し、ベネズエラ側はパリに本部を置く国際商業会議所(ICC)に問題を提起した。

2011年12月の国際商業会議所の裁定は、PDVSAがExxonMobil にネットで746.9百万ドルを支払うというもので、接収資産の簿価にほぼ等しい。

裁定額は907.6百万ドルだが、PDVSAのExxonMobilへの債権(ロイヤリティや税金)161百万ドルを控除した。

907.6百万ドルは1997年に両社で結ばれた契約に基づくもので、1997年の原油価格(27ドル/bbl)を基に、2035年までの失われた収益を高い割引率で現在価値に換算したものであり、資産の評価額ではない。

PDVSAはこの裁定を受け入れ、この額からNew York で凍結されている300百万ドルとExxonのベネズエラ子会社の債務191百万ドルを除外し、残りの255百万ドルを支払うとしている。

ExxonMobilはこの裁定に同意せず、ICSIDの判断を待つとした。

2014年10月、ICSIDはベネズエラがExxonMobilに16億ドルを支払うという裁定を行った。

ExxonMobil は145億ドルを要求、ベネズエラは353百万ドルの支払を主張していた。

ICSIDは判決の中で、「ベネズエラ政府は国際投資条約に基づき、補償金を支払う必要がある」と述べているが、接収手続きの違法性については言及しなかった。

ベネズエラ政府は、当該判決に対して、最終的な支払額は10億ドル未満にとどまるとの認識を示唆した。
同じ問題で2012年に国際商工会議所(ICC)の国際仲裁裁判所から命じられてExxon Mobilに支払った補償金7.47億ドルを、今回の16億ドルから差し引くと主張した。

「Exxon Mobilへ補償金を支払う準備はできている」とコメントした上で、「ベネズエラ政府は当該判決を履行し、国家経済への脅威となった当該訴訟を終わらせる」と明言した。
ベネズエラ政府は、当該判決による補償額が事前予想額を大幅に下回ったことを受け、ベネズエラ側の勝利として捉えている。

その一方で10月末に判決の見直しを求める手続きを申請した。対外債務の返済が重なったこともあり、支払時期を延期させることを決断したとみられる。
最終判決が下されるまでに長ければ2〜3年かかる可能性もあるとされる。また、債券や原油資産の提供といった現金ではない支払手段を模索する可能性もある。


 

本件ではConocoPhilipsもICSIDでベネズエラ政府と争っている。

ICSIDは2013年9月、ベネズエラが「誠意を持って」補償条件を交渉することを怠ったと判断した。補償額についてはまだ決定されていない。

 


 

2015/6/25    米上院がTPA法案可決 近く成立     → TAA法案も両院で可決

 

米上院は6月24日、TPPの合意のカギを握る「貿易促進権限(TPA)」法案を賛成60、反対38で可決した。
前日 審議打切りを決めており、議事妨害は出来ないため、採決は単純多数決となる。
  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 47 13   60
反対 5 31 2 38
棄権 2     2
合計 54 44 2 100

すでに下院を通過しており、週内にも大統領が署名し、成立する見通し。

失業者対策を盛り込んだ貿易調整援助制度(TAA) 法案の下院での可決を待つ可能性もある。

付記

上院はこの日、TPA法案可決後にTAA法案も可決した。

先ず審議打切りの動議が可決された。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 30 44 2 76
反対 22 0 0 22
棄権 2 0 0 2
合計 54 44 2 100

その後、記名投票ではなく、発声投票(Voice vote)で可決した。

米国では、上下両院とも、表決の方法には、@ 発声投票、A 起立投票、B 記録投票 がある。

発声投票では賛成者に賛成(Aye)、次いで反対者に反対(No)と応えるよう求め、議長が判断する。
可決しても、異議があれば記録投票を要求できることとなっている。

TAA法案は下院に送られることになった。

下院では、多くの民主党議員がこれまでTAAに反対していたが、今回、共和党首脳は民主党が主張していたAfrica Growth and Opportunity Actの延長などを折り込んだため、多くが賛成に回るとみられている。

付記

下院は6月25日、TAA法案を可決した。すでに両院で可決されたTPA法案とともに、オバマ大統領が近く署名し、成立する見通し。

  共和党 民主党 合計
賛成 111 175 286
反対 132 6 138
棄権 2 7 9
欠席 1   1
合計 246 188 434

付記

オバマ大統領は6月29日、TPA法案に署名、成立した。

ーーー

上院は5月22日にTPA法案を可決したが、これには、TPPなど自由貿易拡大による失業者対策条項(TAA)を含んでいた。

2015/5/25   米上院、貿易権限法案を可決 

しかし、下院ではTPP法案は可決したが、TPA法案を否決したため、新たに6月18日にTPA法案を単独で再採決し、可決した。

2015/6/19 米下院、TPA単独法案を可決   

しかし、上院が5月22日に可決した法案とは異なるため、改めて上院で採決する必要がある。

上院は6月23日、TPP交渉の合意に必要なTPA法案の審議を打ち切り、法案採決に移るための動議を可決した。採決の結果は下記の通りで、前回5月22日にTPA法案を可決した際に賛成した民主党議員の1名が反対に回ったが、審議打ち切りに必要な60票をギリギリで確保した。
 

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 47 13   60
反対 5 30 2 37
棄権 2 1   3
合計 54 44 2 100

5月22日の議決は下記の通りであった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 48 14   62
反対 5 30 2 37
棄権 1     1
合計 54 44 2 100

ーーー

TPA法案の可決見通しを受け、甘利明TPP担当相は6月24日、今後の交渉について「7月中に参加12カ国の閣僚会合で合意される必要がある。それは可能だと思う。8月以降にずれ込むとは想定していない」との見方を示した。

 


2015/6/26 伊藤忠、米シェール事業から撤退 

伊藤忠商事は多額の減損損失を計上した米シェールオイル・ガス事業からの撤退を決めた。

北米での天然ガス価格の今後の回復見通しなどを総合的に判断し、25%出資する合弁会社Samson Resourcesの保有株式を1ドルで売却した。
Samson Resourcesは6月19日に米証券取引委員会に提出した資料で、伊藤忠保有のサムソン株すべてを1ドルで買い戻したと報告した。

既に損失を計上(後記)しているため売却に伴う損益への影響はなく、逆に、税効果の影響で2016年3月期の連結純利益を約330億円押し上げる要因になるという。

伊藤忠では「北米ガス価格の回復見込み、サムソン社の経営環境や今後の開発再開見通し等を総合的に勘案した結果、撤退を決定した」としており、今後のシェールガス・オイル事業への投資については「油ガス価格低下リスクや開発リスクなどの精査を尽くし、厳選して対応していく方針」という。

ーーー

伊藤忠は2011年11月24日、Kohlberg Kravis Roberts(KKR)などとともに、私企業としては米国最大の石油開発・生産会社の一つであるSamson Investment Co.を72億ドル(負債込み?)で買収すると発表した。
KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementCrestview Partnersが残り15%を出資する。
伊藤忠はSamsonの25%株式を10.4億米ドルで買収するとしている。

買収完了後はSamson Resourcesに改称する。

Samsonは1971年設立で、米国で1万以上の油田の権益を所有し、そのうち、4000以上を運営している。

近年は非在来型資源権益を競争力のある価格で取得し、石油と天然ガスのバランスのとれた資産を保有しており、今後はこれらの開発を促進して2021年には日産16億立方フィート(天然ガス換算)への生産拡大を計画している。

主なものは以下のガスシェールと油田。

シェール:Bakken、Powder River(ワイオミング州北東、モンタナ州南東)、Green River、
      Cana Woodford、Haynesville/Bossier
油田:Granite Wash(北テキサス)、Cotton Valley(東テキサス)

伊藤忠は長期保有を目的とした戦略的投資としており、同時に Samsonが生産する天然ガスの出資比率に応じた引き取り権(LNG換算年間100万トン:ピーク時)を確保し、米国に持つガストレード会社の販売拡大に加え、米国シェールガスの国際競争力に注目し、将来のアジア向けLNG輸出ビジネスも視野に入れた取り組みを行うとしている。

伊藤忠は、持分権益数量を現在の3万4千バレル/日から2015年迄に7万バレル/日以上に積上げる計画で、今回の買収を通じてこの目標達成を図る。

同時に、非在来型資源開発事業への参画を強化し、オペレーター機能も備えた本案件を北米における天然ガス事業の中核と位置付け、天然ガス・LNGトレード機能の拡充を目指す。

2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ 

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伊藤忠はSamsonのシェール事業で2013年3月期に300億円弱の減損損失を計上、2014年3月期にも290億円を計上した。
Samsonでは開発資金の効果的使用のため、安定生産が見込まれる既開発地域に集中、選択と集中の観点から未開発地域の再評価を行っている。

更に、2015年3月期に本件で約380億円の損失を計上した。累計では1000億円に達する。
この結果、Samsonに対する持分法投資の残存簿価は約40億円となった。

今回、持株を1ドルで売却し、撤退する。

ーーー

これとは別に伊藤忠は2010年10月15日、米国のエネルギー・電力・建設関連複合企業 MDU Resources Group Inc.の子会社で石油天然ガス開発会社のFidelity Exploration & Production Company との間で、米国ワイオミング州Niobraraエリア約88,000エーカーの石油ガス鉱区権益の25%を取得し、シェールオイル開発事業に参画する契約を締結したと発表した。

2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

これについては、その後発表がないが、報道では、前期までに売却済みとされる。

今回のSamson株の売却で伊藤忠は米国シェール事業から完全撤退することになる。

MDU Resources Group 自身も2014年11月にFidelity Exploration & Productionを売却すると発表した。魅力的な投資対象ではあるが、開発に必要な資金が大きすぎるとしている。

この時は売却が成功しなかったが、本年6月7日には再度売りに出した。

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住友商事もタイトオイル(シェールオイル)で2015年3月期に1992億円の損失を計上した。

住友商事は2012年8月、米国の独立系石油ガス開発会社であるDevon Energyがテキサス州Permian Basinで進めているタイトオイル開発プロジェクトに参画する契約を締結した。 

北部地域(約172千エーカー)については、投下資金を回収するほどの生産量が見込めないと判断、Devonと共同で売却する。
売却先、売却額等 詳細は未定だが、資産価値を見直し、固定資産評価損 約1700億円を計上する。

南部地域(約47千エーカー)は現時点では保有継続の予定だが、約300億円の評価損を計上した。

2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上 

 


2015/6/27 米最高裁、ObamaCare補助金支給は合法と判断 

米連邦最高裁判所は6月25日、オバマ米大統領が推進する医療保険制度改革法(Affordable Care Act :通称 ObamaCare)の一部の政府補助金支給の是非について争われた裁判で、6対3で支給は合法とする判断を下した。

ObamaCareは医療保険に未加入だった低所得者に安価な保険を提供するため、民間の医療保険購入者に政府が補助金を支給する仕組み。

条文では州政府のウェブサイト
("established by the state")を通じた保険購入者が支給対象だが、ObamaCareに反対する野党・共和党知事の州など34州がサイトを開設しなかったため、連邦政府サイト「HealthCare.gov」を通じた購入者にも補助した。

  毎日新聞 2010/3/23

連邦政府サイト「HealthCare.gov」を通じた購入者への補助が合法かどうかが争点となった。

原告のバージニア州民4人は、条文に基づき「州政府の運営するサイト」で加入した個人にのみ補助金が適用されるべきだと訴えていた。

オバマ政権は、法律の全体構造や設計を見れば、手ごろな医療保険の全米への拡大を目的としたものであることは明白だと主張していた。

最高裁は、連邦政府の医療保険登録サイト「HealthCare.gov」での加入者も含めた全州の住民への補助金支給を可能にするものと判断した。

ロバーツ最高裁長官は多数意見を代表し、下記の通り述べた。

問題の文章は曖昧だが、法の主旨は全体として明らかである。
法律の文脈や構造からは、文言をそのまま読むのとは異ならざるを得ない。

議会は健康保険市場を破壊するためでなく改善するためにObamaCare法を通した。我々は可能な限り、「破壊」を避け、「改善」に沿うよう、法律を解釈せねばならない。

これに対し、反対した Scalia判事は、議会が決めたずさんな法律を補うのは裁判所の仕事でないと述べた。
最高裁が補正しなければならないなら、ObamaCareではなく、SCOTUScareと呼ぶべきだとした。(SCOTUS=Supreme Court of the United States)

最高裁で違法判決が出れば、34州に暮らす650万人が税控除を受けられなくなるはずだった。
 

ObamaCareの保険加入の義務づけについては、2012年に最高裁は合憲と判断していた。 前回もロバーツ長官が主導した。

13の州が医療保険制度改革が憲法違反だとして政府を提訴した。
「憲法のどこでも、米国が直接あるいは罰則を科すとの脅しの下に、市民や合法的な住民がすべて適格な保険に加入するよう命じることは認めていない」としている。

フロリダ州司法長官が旗振り役で、サウスカロライナ、ネブラスカ、ミシガン、ユタ、ペンシルベニア、アラバマ、サウスダ コタ、アイダホ、ワシントン、コロラド、ルイジアナ州の司法長官が加わった。このほか、バージニア州が単独での提訴に踏み切った。


米バージニア州の連邦地裁は2010年12月13日、医療保険改革法について、国民に医療保険加入を義務づけ、未加入者に罰金を科す条項を立法権の逸脱と指摘し、この条項が憲法に違反するとの判決を下した。
米国憲法には、ある商品を買わないとする個人の判断を規制する条項は見当たらないとした。
同様の訴訟では、ミシガン州など2カ所の連邦地裁が既に合憲判決を出している。

オバマ政権は控訴した。

米最高裁判所は2012年6月28日、米国民に保険の加入を義務付ける医療保険改革法について、主要部分を支持するとの判決を下した。
最高裁の9人の判事のうち、ロバーツ長官を含む5人が支持、ケネディ判事ら4人が不支持だった。不支持とした4人は、医療保険改革法全体が違憲と判断した。
ロバーツ最高裁長官は「医療保険を取得しない特定の国民に対して罰金を課すことは、合理的に税金として位置づけられる可能性がある」とした。

米メディアは「オバマ政権にとって2回目の勝利となる」と伝えた。

オバマ大統領は判決後、ホワイトハウスで声明を読み上げ「勤労者の勝利だ」と述べ、同法により「1600万人以上の保険未加入者が保険を得た」と成果を強調した。

2010年に成立したObamaCareは、全米で約5千万人いた無保険者の削減を目指したオバマ政権の看板政策。共和は財政負担が増え、中間層や企業にとってマイナス面が大きいとして反対 している。

大統領選の共和党候補はこの判決を批判している。Jef Bush は、「これはObamaCareに対する戦いの終わりではない。大統領になれば、誤ったヘルスケアシステムの是正を最優先事項の一つとする」と述べた。
 


2015/6/27 ギリシャ、EU支援条件巡り7月5日に国民投票 

ギリシャのAlexis Tsipras 首相は6月27日の午前1時(現地時間)、突然テレビ演説し、EUなどから金融支援の条件として提案されている改革案の受け入れの是非を問う国民投票を7月5日に行うと表明した。

ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は6月26日、ギリシャ政府に構造改革を断行すれば、支援期間を5カ月間延長するとの新提案を伝えていた。
EU側は年金等のカットや消費税の引き上げなどを求めている。

首相は、債権団による提案は欧州の規則だけでなく、労働や平等、尊厳に関する基本的権利を脅かしているとした上で、「同提案はすべての関係者が納得できるものではなく、すべての人々にとって屈辱となりかねない」、「国民はいかなる恐喝からも自由だと意思を表明しなければならない」と述べた。

他方で、これはギリシャがユーロゾーンから離脱することを意味しないと述べた。

閣僚らも相次いで国民が反対に投票するよう呼びかけた。 

ギリシャへの金融支援プログラムは、今月末に期限切れを迎えるが、6月27日午後から予定されているユーロ圏財務相会合が最終局面とみられてい た。

ギリシャ政府は改革案の受け入れの是非を問う国民投票を行うとしているが、EUの関係者は、国民投票の対象の改革案は最早ないとしている。

付記 ユーロ圏19カ国は6月27日、緊急の財務相会合を開き、現行支援を延長せず、6月末で終了させることを決めた。

          ギリシャ国会は6月28日未明、14時間の審議の後、国民投票実施について、賛成178票、反対120票の賛成多数で承認した。

付記  オバマ大統領とメルケル独首相は6月28日、電話会談し、ギリシャをユーロ圏にとどめる方法を模索することが「非常に重要」との認識で一致した。

ーーー

7月5日の国民投票ということは、ギリシャが6月30日のIMFへの15億5千万ユーロの返済が出来ないことを意味する。
IMFのラガルド専務理事は「6月30日に返済がないと、
7月1日にはギリシャはデフォルト状態になる」と警告し、「猶予期間や延期はない」としていた。

EUのギリシャに対する金融支援プログラムも6月末で終了する。

EUは2月にギリシャに対する金融支援プログラムの期限を6月末まで延長したが、経済の構造改革を進めなければ支援を実行しない、との条件をつけ、72億ユーロの融資を凍結している。

欧州中央銀行(ECB)が今後もギリシャ中央銀行にギリシャの銀行への緊急流動性支援(ELA)を認めるかどうかの問題もある。

欧州中央銀行(ECB)は2月4日に、ギリシャ国債に対する適格担保ルールの適用除外を停止することを決めたと発表し、ギリシャの銀行が担保として差し入れているギリシャ国債は、2月11日をもって適格担保要件を失った。

このため、ギリシャの銀行はギリシャ中央銀行による緊急流動性支援(ELA)での資金供給に頼るしかなくなったが、ECBにはこれを許可しない権限があり、2週間ごとに手続きを見直すこととなっている。

預金引き出しが続いているギリシャの銀行が6月29日以降に営業を行えるかどうか不明である。

ECBがELAの継続を認めない場合、ギリシャ政府は引き出し制限や銀行閉鎖など資本コントロールを行う可能性もある。

付記

欧州中央銀行(ECB)は6月28日、緊急理事会を開催し、緊急流動性支援(ELA)での資金供給を増額しないことを決めた。その上で「今回の決定を再検討する用意が理事会にはある」とした。

ECBは6月17日に緊急支援枠を引き上げ841億ドルとしたあと、19日に859億ユーロとすることを決めたが、22日に878億ユーロに引き上げた。
23日にも引き上げ、現在890億ユーロ前後とされる。

チプラス首相は6月28日夜、国民向けにテレビ演説し、29日から銀行を休業させ、資本規制を導入すると発表した。



2015/6/29 経産省、
産業競争力強化法第50条に基づく「板ガラス産業の市場構造に関する調査報告」を発表 


経済産業省は6月26日、産業競争力強化法第50条に基づいて、板ガラス産業の市場構造に関する調査を行い、調査報告を発表した。
    
http://www.meti.go.jp/press/2015/06/20150626001/20150626001.html

「産業競争力強化法」 は2014年1月20日に施行された。

アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化しようというもの。

産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。

同法第50条(調査等)は以下の通り。
「政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。」

経産省は2014年6月30日、これに基づく調査報告「石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。(下記 1.)

経産省は2014年11月7日、「石油化学産業の市場構造に関する調査報告」を公表した。(下記 2.)

今回は第三弾となる。

いずれも、設備の集約や事業の再編が必要との結論になっているが、このうち、石油精製業については、「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、「残油処理装置装備率」の向上を名目に実質的に常圧蒸留装置の処理能力の削減を強制している。

ーーー

今回の報告では、新設住宅着工戸数、国内自動車販売台数等の停滞・減少による国内需要の減少や供給過剰の中国を中心とする海外からの輸入の増加など、我が国の板ガラス産業の厳しい状況を想定し、将来の需給動向の見通しを示した。

厳しい状況においては、生産量の減少により、近い将来に設備の集約や事業の再編が必要となることなど、板ガラス産業の課題及び取組の方向性を提示している。
 

 日本の板ガラス業界の状況

我が国板ガラスメーカーは、グローバル市場において主要プレーヤーである。建築用ガラスは、コモディティー化し、ローカルメーカーとの競争が激化している。


国内市場の出荷額は、1990年をピークに減少し、2014年は1990年比約4割減。価格は下落傾向で、低い稼働率で推移。

海外市場は、先進国市場の需要は成熟化し、新興国等は、需要が大きく増加するが、中国は世界全体の生産能力の約6割を占め供給過剰の状態で、他地域への輸出超過傾向が拡大している。

国内板ガラスメーカー3社は、国内需要の停滞、低い設備稼働率、価格の低迷等により、板ガラス事業は低収益。

外国企業に比べ、日本企業の収益率が低い。

 将来の需給見通し:

  ベースシナリオ リスクシナリオ
2020年度 2030年度 2020年度 2030年度
国内の板ガラス生産量 14%減 24%減 21%減 40%減
生産量と生産能力のギャップ 41万t 52万t 49万t 70万t

 ガラス産業の競争力強化に向けた対応の方向性:

コスト競争力強化  
  国内の需給ギャップの解消 LLP等の組織を各企業が共同で設立し、
生産設備の運営統合等を行うことも選択肢の一つ
  生産プロセスの効率化等 スワップ取引等の適正な拡大、
生産プロセスの省エネルギー化、
物流の効率化
     
高付加価値化戦略
     
グローバル展開

ーーー

1. 経産省は2014年6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

我が国の石油精製業は「概ね過剰供給構造にある」と認められる。
今後、現在の収益状況や精製能力が継続するとすれば、本格的な過剰供給構造に陥るおそれが大きい状況にある。

課題
1)製油所の生産性の向上
  @過剰精製能力の解消
  A統合運営による設備最適化
  B設備稼働率を支える稼動信頼性(設備保全)の向上
  Cエネルギー効率の改善
  D高付加価値化(残油処理能力の向上、石油化学品等の得率向上)
2)戦略的な原油調達
3)公正・透明な価格決定メカニズム等の構築
4) 国際的「総合エネルギー企業」への成長

以上の課題を解決するため、今後、石油精製業者は「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた事業再編等に積極的に取り組むことが期待される。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。「残油処理装置装備率」の向上を目標とし、実質的に常圧蒸留装置の処理能力の削減を強制するものである。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

 

2. 経済産業省は2014年11月7日、産業競争力強化法第50条に基づく「石油化学産業の市場構造に関する調査報告」を公表した。

1.国内石油化学産業の現状

ナフサクラッカー 14基、生産能力 年 720万トンに対し、2012年国内生産量  610万トン

輸出が生産量の3〜4割を占める。

石油化学産業の収益は大きく変動しやすく、総じて利益率は低い。
過去10年の売上高経常利益率は2.5%(製造業平均は4.1%)
  

2. 国際的な需給構造の変化

3. 上記リスクの影響

エチレン生産量
 2020年までで 470万トンまで減少、2030年までで 310万トンまで減少

4. 対応策

@ 生産設備集約、再編による生産効率の向上
A 石油精製との連携による生産体制の最適
B 隣接企業とのエネルギー相互融通、発電設備等の共有化、共通部門の集約統合によるコスト削減
C 海外展開の促進

2014/11/10  石油化学産業の市場構造に関する調査報告

 



2015/6/30   アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定調印式 

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は6月29日、北京の人民大会堂で設立協定の調印式を開いた。

創設メンバーとして参加を表明していた57か国のうち、フィリピンなど7か国が設立協定への署名を見送った。

  署名 見送り (青字はその後署名)
域内

37カ国

 

アジア 中国、韓国、インド、バングラデシュ、モルディバ、
モンゴル、ネパール、パキスタン、スリランカ
 
ASEAN ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジャ、シンガポール、
ブルネイ、インドネシア
タイ、マレーシア、フィリピン
旧ソ連 ロシア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、
キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン
 
オセアニア 豪州、ニュージーランド  
中東 トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、ヨルダン、
オマーン、カタール、UAE
クウェート
域外

20カ国
欧州 英国、オーストリア、フィンランド、フランス、ドイツ、
イタリー、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、
ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、
アイスランド、マルタ
デンマークポーランド
南米 ブラジル  
アフリカ エジプト 南アフリカ
合計57カ国  50カ国 その後 +6 7カ国

 

フィリピンは南シナ海の領有権を巡って中国と対立しているが、中国が埋め立てを強行したことで関係がさらに悪化し、署名見送りにつながったとの見方が出ている。
フィリピン当局は「最終的にAIIBに加入するかどうかは、今後も検討を続ける」と含みを持たせている。

このほか、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイが署名をしなかったが、多くは事務手続きの遅れとしている。

中国財務省は「手続きが終わっていない一部の国は、年末までに署名できる」と説明した。

付記 

マレーシアは8月21日、タイは9月29日、ポーランドは10月12日、デンマークは10月28日に署名した。
南アは12月3日、クウェートは12月4日に署名し、署名国は56カ国となった。
残るのは南シナ海の領有権を巡って中国と対立しているフィリッピンのみとなった。

ーーー

協定では銀行の資本金は1000億ドルで、このうち中国が最も多い30.34%を出資する。

議決権は85%が出資比率によって配分され、残り15%分は創設国に均等に配分される。

新たな参加国の加盟や増資といった重要な案件は議決権ベースで75%以上の賛成が必要と規定され、中国は26.06%の議決権を持ち、中国は1国だけで重要案件を否決できる事実上の拒否権を持つことになる。

トップ10カ国は下記の通りとされる。

  出資比率 議決権
中国 30.34% 26.06%
インド 8.52% 7.51%
ロシア 6.66% 5.93%
ドイツ 4.57% 4.14%
韓国 3.81% 3.50%
オーストラリア    
フランス    
インドネシア    
ブラジル    
イギリス    

 

AIIBの本部は北京に置かれ、将来的には発展の需要に合わせ、他地域にも関連機関や事務所を設置する。
総裁は域内国から選出され、任期は5年間、1度の再選資格を持つ。

協定では、署名国のうち少なくとも10カ国で承認され、署名国の初期出資額が資本金総額の50%を上回れば、年末までの業務開始を確保できる


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