これまで、英国の広告主に対する広告費などの請求は海外事業の本社機能を置くアイルランド法人Facebook
Ireland Limited
から送り、アイルランド法人の収入として扱ってきたが、4月以降は、スーパーのTescoなど大口の広告主に対しては、請求を英国法人から送付し、英国法人の収入として会計処理する。
小規模の広告主に対する請求は従来どおり、アイルランド法人の収益とする。
British-Irish 租税協定では、Facebook Irelandが英国の広告主と取引をしても、英国の課税対象とはならない。
多国籍企業が租税回避策を工夫するなか、この協定は実態に合わないとの批判が強まっている。Facebook Ireland Limitedは多額のロイヤリティをFacebook Ireland Holdingsに送金する。これは Cayman Islands法人であるため、オランダでもCaymanでも課税されない。
この手法は “Double Irish” と呼ばれる。 詳細は 2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査
Facebookの2014年の英国での法人税の納付額は4,327ポンド(約70万円)と極めて少額にとどまる。
年収33,000ポンド以上の年収の英国の労働者は、Facebookが自分より少ない税金しか払っていないことに怒っている。
英国法人のFacebook UK Limitedは、グループ企業への支援料として若干の利益を計上しているだけ。
前日に、英国国税庁が国民に納税を求める広告をFacebookに出し、27,000ポンドを払っていたこと、これが Facebookの英国での納税額の6倍であることが報道され、問題が明らかになった。
1月にGoogleが英国での納税方針を変更したのに続くもので、実際に事業を営む地域で納税することを求める国際的な課税強化の動きに対応するのが狙い。
Googleは1月22日、英国の税務当局(歳入関税庁)との間で、過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。
2005年以降の追加分として130百万英ポンド(約220億円)を納税、今年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める。但し、英 Financial Times は、どのような基準で課税したのかが不明であり、新たに設けた税率の根拠も示しておらず、従来より公正かどうか分からないと述べ、不透明な合意と批判している。
英国政府は最近、Googleの納税が他国が受け入れるより少ないものであれば、再交渉すると述べた。
2016/1/26 Google、追加納税で英税務当局と合意
同社が英国でいくら利益を上げているかは明らかにされていないが、2015年の欧州全体の売上高は44.6億ポンドに上がっており、このうちかなりの分が英国と見られている。
英国の法人税は現在20%で、今年度以降の納税額は数百万ポンド増える見通し。
Facebook Ireland Limited (Cayman Islands法人)への多額のロイヤリティ支払があるため、課税所得は多額にはならない。
世界的に温暖化対策が喫緊の課題となっている中、輸送機器のエネルギー消費削減に向けた解決策の一つとして、部材の軽量化が挙げられており、炭素繊維等の軽量化素材の市場が急速に拡大すると見込まれている。
三井物産は、炭素繊維関連事業に相次いで投資を行った。
三井物産は3月1日、ノルウェーの Hexagon Composites ASA に25%出資(出資総額は約110億円を予定)することで合意するとともに、Hexagon と業務提携契約を締結した。
Hexagon Compositesは世界最大の樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンクのメーカーで、拡大する天然ガスなどの輸送・貯蔵需要に対応して、軽量かつ耐久性、安全性の高いコンポジットタンクを供給している。最近では燃料電池自動車向けに高圧水素タンクを開発している。
主な事業分野:LPG事業、高圧天然ガス輸送事業、高圧天然ガスタンク事業、高圧水素タンク事業
三井物産とHexagonは、コンポジットタンクの販売を軸として、約20年にわたり強固なパートナー関係を構築してきた。
今回の出資参画と業務提携を機に、事業資産及びグローバルネットワークを活用してHexagonの事業拡大に取り組むと共に、輸送機器分野における温暖化ガス排出削減の課題解決に貢献していくとしている。
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三井物産は3月3日、韓国の Hankuk Carbon Co., Ltd.
(韓国カーボン)と炭素繊維などの複合材料加工事業分野で包括的な業務提携契約を締結した。
また、韓国カーボンへ306億韓国ウォン(約28億円)を出資し、株式10%(議決権ベース)を取得する。
韓国カーボンは1984年の設立以来、炭素繊維をはじめ多様な複合材料を組み合わせた部品・材料加工事業を拡大させてきた。
主な事業分野:炭素繊維プリプレグ、LNG船断熱パネル、ハニカムペネル材
今後成長が期待される航空機・自動車などの輸送機器向けに複合材料加工事業の展開を加速する。
韓国カーボンの趙文秀代表は「自動車、航空機の軽量化に合わせ、炭素繊維複合素材を利用した素材・部品の開発で協力していく。30年間取引を続けてきた三井物産との戦略的パートナーシップがさらに強化された」と述べた。
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三井物産は2015年4月には、金沢工業大学の革新複合材料研究開発センター(「ICC」)と、炭素繊維複合材料による自動車部品等製造の新製法に関する実証研究を行うことで合意し、複合材料研究に関する協力協定書及び機械貸借契約を締結している。
ICCは2013年7月、金工大により設立され、異業種・異分野の技術融合による炭素繊維複合材料の可能性を開拓することを目的とする国内最大級の複合材料研究センター 、全国の産学官研究者を集結し、中間加工分野における国際競争力を向上させるべく、革新的技術の開発を目標としている。
三井物産はこれまで、経済産業省のコーディネートの下、ICC及び炭素繊維複合材料ユーザー企業との取り組みの検討を行ってきたが、実証用設備一式 (3億円)を購入し、ICCを中心とするユーザー企業を含む関連企業コンソーシアムに同設備を提供し、共同で炭素繊維複合材料による自動車部品を始めとした幅広い部材等製造の新製法開発及び実用化を目指 す。
(欧州では自動車メーカー主導で、材料供給から加工までの体制が確立され、炭素繊維複合材料が自動車の主要骨格部材等の部品として採用されている事例があ る。)
ICCでの取り組みの模式図
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三井物産は新中期経営計画で掲げた7つの攻め筋における事業展開に取り組んでいる。
ハイドロカーボンチェーン エネルギーの上流〜下流、関連事業の展開 資源(地下 + 地上)・素材 資源採掘から素材加工、循環型社会構築への取組 食糧と農業 食糧増産と食の安定供給に貢献するソリューション提供 インフラ 国造りへの貢献とインフラを起点とするビジネスの広がり モビリティ 輸送機械等の製造・販売・金融・関連サービス メディカル・ヘルスケア 病院を中核とした事業展開と医薬バリューチェーン 衣食住と高付加価値サービス 次世代機能(IT/金融/物流)活用による消費者連動型ビジネス
炭素繊維関連事業は、「資源・素材」・「モビリティ」の2つの攻め筋に跨 る。
三井物産では、グローバルに炭素繊維関連事業の拡大に取り組んでいく。
2016/3/10 世界初の「浮かぶLNG工場」完成
3月7日に韓国巨済市の大宇造船海洋の玉浦造船所で世界初のFLNG(Floating
LNG) の命名式が行われ、“PFLNG Satu” (Petronas FLNG No.1) と命名された。
Petronasが2012年6月に、Technipと大宇のJVのTechnip Daewoo
Consortiumに、9098億ウォン(約850億円)で発注した。
設計はTechnipで資材購入はPetronasが担当した。
4月にはPetronasに引き渡され、サラワクの180km沖合いのKanowitガス田でLNG製造にあたる。
当初の引渡し予定は2015年6月であったが、工事の遅れで2015年9月に延期され、更に延期された。
船体の長さは300m、幅は60mで、フレアタワーは海面から130m 。
最大で180人を収容でき、スクリーンゴルフ場や映画館、プールまで備えている。
LNGの年産能力は120万トンで、船体部分には177千m3のLNGを貯蔵できる。
Kanowitは小規模ガス田で、まずKanowitガス田開発から始めて、順次、近隣の小規模ガス田へと開発対象を移していくと見られる。
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Petronas はPFLNG 2 を建設中で、2018年に完成する予定。日揮が設計、購買を担当、三星重工業が建造する。
PFLNG 2 は マレーシアのSabahの沖合いの深海ブロックHのRotanガス田に係留し、年150万トンのLNGを生産する。
2016/3/10 高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分決定
大津地方裁判所は3月9日、高浜原子力発電所3号機と4号機について、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。
滋賀県内の高浜原発から約30〜70キロ圏内に居住する住民29人が、地震災害に伴う重大事故が原発で起きた場合、放射性物質で琵琶湖が汚染されて水が飲めなくなり、生命や健康を脅かされるとして、運転の停止を求める仮処分を申し立てていた。
裁判長は、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法、基準となる地震の揺れの策定についても危惧する点がある」、「津波対策や避難計画についても疑問が残り、住民の権利が損なわれるおそれが高いにもかかわらず、安全性について電力会社は十分な説明を尽くしたとは言えない」とした。
住民らは2011年8月にも高浜原発などの再稼働禁止を求める仮処分を申し立てたが、大津地裁が2014年11月、避難計画が未整備な点などを挙げて「原子力規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」と却下した。その後、規制委で再稼働に向けた審査が進み、2015年1月に再び仮処分を申し立てた。
3、4号機をめぐっては福井地裁が再稼働前の2015年4月、運転を禁じる仮処分を決定。同12月、別の裁判長がこれを取り消し、住民側が抗告している。
2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定
高浜3、4号機はいずれもプルサーマルで、2015年2月12日に安全審査に合格、3号機は本年1月29日に再稼動した。4号機は2月26日に再稼動したが、直後にトラブルで停止している。
なお、高浜1、2号機は40年超であるが、原子力規制委員会は本年2月24日、事実上の審査合格とした。
今後は老朽化対策に特化した運転延長審査に焦点が移るが、7月7日の期限までに延長審査や、設備の詳細設計をまとめた工事計画の認可など、残りの手続きを終えなければ廃炉になる可能性が高い。
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判決では、以下の記述が注目される。
原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実のみによって、十分な検討をしたとはいえない。
福島第一事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに真摯に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講じるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。
この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が、関電ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとすれば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。
地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、
常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、
新規制基準を策定すべきものと考える。
避難計画について
福島第一事故を経験した我が国民は、事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。
安全確保対策としてその不安に応えるためにも、地方公共団体個々によるよりは、国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、
この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、それ以上に、
過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではなかろうか。
大津地裁は2014年11月に再稼働禁止を求める仮処分申し立てを却下したが、この際の裁判長は今回と同じ裁判長である。却下理由として以下の通り述べている。
「原発事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず、これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ないことに照らしても、このような段階にあって、同委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく、上記特段の事情が存するとはいえない。」
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菅官房長官は3月10日、以下のように述べた。
「世界最高水準の規制基準に適合すると、原子力規制委員会が専門的見地から判断したものであり、政府としてはこの判断を尊重し、再稼働を進めていくことに変わりはない」
「避難計画の作成段階から国が関与し、総理大臣を議長とする原子力防災会議で了承する仕組みであり、国が前面に立って支援はしっかり行っている」
子会社の買収を巡る東京国税局の追徴課税を不服として、ヤフーが国に約178億円の課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は2月29日、ヤフーの上告を棄却した。課税を適法とした一、二審判決が確定した。
第1小法廷は、合併など企業の組織再編において、税負担を不当に減少させる租税回避に当たる要件について初めて判断し、通常は想定されない方法や、実態とかけ離れた形をつくり出すなど不自然なものかどうか、合理的な理由があるか―という基準を示した。
その上で、ヤフーが行った一連の組織再編は「明らかに不自然で、税制を乱用した」と指摘し、請求を棄却した東京高裁の判断は正当とした。
事態は以下の通り。
当初の状況
IDCソルージョンズ(IDCS)は2007年3月期以後利益を上げるようになったが、繰越損失の繰越期限切れが予想された。
2008年12月26日、ヤフーの代表取締役がIDCSの取締役副社長(“非常勤で無報酬”)に就任した。
合併による損失引継ぎの条件として、「合併法人と被合併法人との間に支配関係が生じる前から被合併法人の社長、副社長等の経営者クラスの役員となっている者が、合併後の合併法人でも、同じく特定役員として残ると見込まれること」(特定役員引継要件)がある。
なお、ヤフーによるIDCS買収時にはIDCSの他の役員はすべて退任している。
そのわずか2か月後 の2009年2月、IDCSが会社分割により営業部門を切り出し、100%子会社のIDCフロンティア(IDCF)を新設した。
IDCSが有していた繰越欠損金の一部はIDCF株式譲渡益によって消滅したが、IDCFにおいて「のれん」(5年間にわたって損金算入可能な資産調整勘定)が計上された。(これにより、繰越損失の繰越期限が延長される)
2009年2月、ソフトバンクがIDCS株式100%をヤフーに約450億円で譲渡した。
その後、2009年3月29日にIDCSがIDCF株式100%をヤフーに譲渡、翌日の3月30日にヤフーがIDCSを吸収合併した。
IDCFの資産調整勘定(5年間の損金算入)を先ずヤフーに移してしまってから、その後にIDCSを合併した。
ヤフーはIDCSの欠損金約540億円を自社の利益と相殺して税務処理しようとしたが、税務当局が認めず約178億円を追徴課税した。
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本件は@ヤフー事件、AIDCF(IDCフロンティア)事件の2つに分かれる。
@ヤフーとIDCSの合併においてIDCSの青色欠損金の引継ぎが認められるか。
直前に IDCS取締役副社長に就任させた行為を含めてヤフーの一連の行為が、IDCSの未処理繰越欠損金額をヤフーの欠損金額とみなして損金算入することを目的とした異常ないし変則的なものであるのかどうか。
AIDCFの会社分割は適格分割かどうか、資産調整勘定が認められるか。
「のれん」(資産調整勘定)を計上し、その損金算入を目的とした異常ないし変則的なものかどうか。
東京地裁は、ヤフー社長のIDCS取締役副社長就任を以下の理由で税法上否認し、その結果、IDCSの繰越欠損金のヤフーへの承継も否認した。
IDCSの取締役副社長に就任してからIDCS買収までの期間が約2か月程度しかなく極めて短いこと
IDCS取締役副社長としてIDCSのデータセンター事業に固有の経営に関与していたと評価することはできないこと
IDCSの経営を担ってきた役員はいずれもヤフーとの合併後に役員に就任しなかったこと
IDCFの分割についても、租税回避行為と認め、国税局による「のれん」の損金否認を認めた。
ここでは、営業部門のみIDCFをさきにヤフーに譲渡する事業上の必要性等が認められなかった。
2016/3/12 第7回化学遺産に写真家の「上野彦馬」など5件認定
日本化学会は平成21年度から化学関連の学術あるいは化学技術遺産の中で特に歴史的に高い価値を有する貴重な史料を認定する『化学遺産認定制度』を開始し、これまでの6回で33件をそれぞれ認定・顕彰している。
このほど5件を第7回化学遺産に認定した。これで化学遺産認定は38件となった。
3月26日に日本化学会第96春季年会に合わせ、第10回化学遺産市民公開講座を開催し、内容を紹介する。
実施日 3月26日(土) 9:30-12: 30
会 場 同志社大学京田辺キャンパス 恵道館2階203教室(京都府京田辺市多々羅都谷1-3)
新たに化学遺産に認定されたのは次の5件。
◇「日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料」
上野彦馬は、幕末期から明治時代にかけて活躍した日本初の写真家として知られる。
長崎でオランダ語を学び、化学をポンペに師事するなど積極的に知識の蓄積を図る過程で湿板写真の研究に没頭する。
1862年には『舎密局必携』を発表、化学の教科書として明治6,7年頃まで使用された。
銀板写真から湿板写真、乾板写真へと写真技術が進展する中で、常に最先端の技術を習得し日本の写真化学・撮影術の基礎を築いた。
◇「明治期日本の化学の先駆者・化学会初代会長 久原躬弦関係資料」
1877年に東京大学理学部化学科を最初に卒業生した3人のうちの1人。
化学会(現在の日本化学会)初代会長となる。
東京大学教授・第一高等中学校校長などを経て京都帝国大学教授となり、総長にも就任。日本の理論有機化学の草分けとなり、国際学会で活躍した。
◇「野副鐵男の化学遺産 / 非ベンゼン系芳香族化合物資料と化学者サイン帳」
野副鐵男は、台北帝国大学でタイワンヒノキの精油からヒノキチオールと名付けた物質を単離し、1948年帰国後これが不飽和七員環構造を含み、芳香族を示すことを明らかにした。その後、非ベンゼン系芳香族化学という新しい分野を創始し確立した。
野副博士はその発見と構造研究により文化勲章を受章した。
◇「日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料」
第二次大戦中、海軍は連合国から捕獲した電波兵器の同軸ケーブルの蝋状のポリエチレンをテストした結果、化学薬品に対して非常に安定していると同時に電気的特性が抜群で、なかでも高周波絶縁性が特に優れていることが分かった。そこで海軍は、電気通信試験所、阪大の谷久也・呉祐吉両研究所、京大の児玉信次郎研究室に緊急研究開発を委託した。電気通信試験所はこれの研究員が野口研究所に移ったため、野口研究所に任せた。
(栂野棟彦 「昭和を彩った日本の石油化学工業」)戦時中のポリスチレンの研究については 2011/4/16 塩野香料とポリスチレン
1943年から海軍の委託を受けて野口研究所―日本窒素肥料、京都大学―住友化学工業、大阪大学―三井化学工業の3グループで研究され、1945年1月に日本窒素肥料水俣工場で小規模に工業化された。しかし、同年5月に空爆を受けて設備が完全に破壊された。
戦後、京都大学で研究が再開され、連続中間試験が行われた。その設計図、研究ノート、研究報告書が化学遺産に認定された。
◇「日本の近代的陶磁器産業の発展に貢献したG・ワグネル関係資料」
ドイツ出身のGottfried Wagenerは1881年に東京大学理学部化学科教授となり、渋沢栄一と共同で日本の近代的陶磁器産業の礎となる吾妻焼の窯を築いた。
吾妻焼は「旭焼」と名が改められた。旭焼は、日本画の持つ筆の運びと多彩な色彩における濃淡表現をそのまま損なうことなく、絵付けされた陶器として知られる。http://www.shibusawa.or.jp/museum/newsletter/338.html
過去の化学遺産