ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2016/3/1 Samsung、Apple との特許闘争に逆転勝訴

米国連邦巡回控訴裁判所は2月26日、AppleとSamsungが互いに特許違反で訴え、2014年5月2日付で地裁で陪審が両社に賠償金支払を命じた事件に関し、実質的にApple側の勝訴に終わった法廷闘争の結果を覆し、Samsungに対する119.6百万ドルの支払い命令を取り消した。

 Samsungの控訴を受けて再審議された結果、「Samsung は主張される特許を侵害してはいない」との判決が正式に下された。
Samsungは損害賠償を払う必要がなくなり、またデザイン変更も不要となる。

Appleは、スマートフォンの画面上をスライドしてロック解除する方法、一連の数字が入力された際に検知して発信する方法、テキストの自動修正に関する特許を侵害したと主張していた。
3人の判事は、そのうち最初の2件の特許は“invalid” と裁定し、3つ目についてはSamsungは侵害していないとした。
2件の特許は、同じような技術が既に出回っていたため、“obvious”であるとした。
Appleの特許のうち、陪審が特許侵害はなかったと認定した2つについては、同様の判断を行った。

逆に、Samsungの動画圧縮特許を侵害したとしてAppleが支払うべき賠償金は158.4千ドルとする陪審判断を支持した。

Appleはコメントしていないが、仮に最高裁に上告しても、取り上げられないだろうと見られている。

また、巡回控訴審2015年9月17日、Appleの販売差し止め命令を判事が却下した一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻したが、侵害がないことが確定すると販売差し止めは当然、あり得ない

今回のケースは両社が争う2つのケースの一つである。

  今回のケース もう一つのケース
発端 時期 2014年3月 2011年4月
原告 Apple & Samsung Apple
内容 Appleは別の5つの特許侵害で、
Samsungは自社の2つの特許侵害で、相互を訴え
Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害
判決 2014年5月2日 連邦地裁の陪審
 Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令
 (Appleの22億ドルの請求に対し)
 Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令
 (Samsungによる620万ドルの請求に対し)
2015/5/18 連邦控訴裁判所の判決
    

2015/12/14
Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金支払
2015年末の
状況
Samsung 控訴

Appleの販売差し止め命令を判事は2014年8月、却下
  

巡回控訴審2015年9月17日、一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻し

Samsung  2015/12/14、米最高裁判所に上告
Apple 2015/12/23、付随的賠償および利子請求訴訟
最新ブログ 2016/1/23 
Samsung 製品に特許侵害で販売差し止め命令 
2015/12/30 
iPhone と iPad の特許をめぐるApple、Samsungとの特許係争、続く 
今回判決 Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令 取り消し
Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令 支持
 

 

もう一つのケースでは、Samsungは連邦控訴裁判所の判決に基づき548百万ドルの損害賠償金をとりあえずApple に支払ってはいるが、同時に最高裁に上告している。

最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、 その後は扱っていない。
(その当時の訴訟は、スプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものだった。)

Samsungは最高裁に対し、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示すことを求めており、最高裁が上訴を受理した場合、最高裁の最終判断がハイテク業界や消費者の購入できるすべてのガジェット類に波及的な影響を及ぼす可能性がある。

Samsungは、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている。

Appleは2016年2月4日、これに関する回答書を提出した。

Appleは、この訴訟が「法的に例外的な事例ではない」と主張し、法廷闘争を「長引かせる」ことがないよう最高裁に求めた。
さらに、この件には米国の最高裁による解決を必要とするほどの重要な案件ではないとも述べている。


2016/3/2   塩野義製薬、新規インフルエンザ治療薬の開発でRocheと提携 

塩野義製薬は2月29日、自社創製のインフルエンザ感染症治療薬S-033188の提携に関するライセンス契約をF. Hoffmann-La Roche との間で締結したと発表した。

付記

塩野義製薬は2017年10月25日、S-033188について、成人および小児におけるA型又はB型インフルエンザウイルス感染症を適応症として、日本国内における製造販売承認申請を行ったと発表した。

ーーー

塩野義製薬は2015年10月30日の投資家向けの経営説明会で、インフルエンザを1回の投与で治療できる新薬(S-033188)を 2018年にも発売する計画を公表した。

従来のインフルエンザ治療薬とは全く異なる仕組みの薬で、売上高が年間500億円以上の大型薬になるとみられ、抗エイズウイルス(HIV)薬や、複数の薬に耐性ができた菌の治療薬とともに事業の柱に育てる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。

オセルタミビル(oseltamivir)  Roche 商品名 タミフル
ラニナミビル(Laninamivir) 第一三共 商品名 イナビル
ペラミビル (Peramivir)    米国 BioCryst Pharmaceuticals

発症後48時間以内に服用しなければ効果が得られず、タミフルの場合は5日間程度服用を続ける必要がある。

エボラ出血熱の治療に使われた富士フィルムのファビピラビル(favipiravir)(商品名アビガン)は元々インフルエンザ用治験薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

これに対し、塩野義が開発中の新薬(S-033188)はウイルスが細胞に進入後、最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するCapエンドヌクレアーゼ阻害剤である。ウイルスの増殖に必要なタンパク質が合成できなくなり、ウイルス粒子が形成されなくなる。
タミフルが5日間の服用が必要なのに対し、
1回の服用で治療できる。

2015/11/6  塩野義製薬、インフルエンザ新薬を開発、1回投与で治療

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日本では、 2015年10月には厚生労働省より先駆け審査制度対象品目に指定され、現在、国内における第U相臨床試験の段階にあり、最速で2017年度内の国内申請を予定している。

塩野義製薬は今後、日本と台湾を除く全世界におけるS-033188の開発をRocheとの提携下で進め る。

Rocheは、インフルエンザ治療薬タミフル®のグローバルにおける開発及び販売による豊富な経験と実績、高い専門性をもっており、Rocheと組むことで、欧米をはじめとする世界各地での早期実用化を目指す。

Rocheのタミフルはノイラミニダーゼ阻害剤で、同じ仕組みの薬の登場でシェアは年々低下している。
Rocheは、
タミフルに続く感染症領域の新たな収益の柱として、塩野義の新薬に着目した。

日本では、Roche が61.62%出資する中外製薬がタミフルを販売している。
今回のRocheの提携は日本と台湾以外であり、塩野義は今回の契約で、
一時金と、今後の開発進展や承認取得などに応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーをRocheから受け取る。


2016/3/3 タイのIndorama Ventures、インドのPET事業拡大 

タイのIndorama Venturesは2月29日、インドのDhunseri Petrochem Ltd. との間で、両社がインドに持つPET事業をそれぞれ、両社の50/50のJVとすることで合意した。

Indoramaは2015年12月にインド北部の唯一のPETメーカーのMicroPet (能力216千トン)を買収したが、この持分の50%をDhunseriに譲渡する。

Dhunseri はWest Bengal州のHaldiaで年産480千トンのPET工場を持つが、これを分離した上で、その持分の50%をIndoramaに譲渡する。

これにより、合計能力は696千トンとなり、Indoramaの持分は348千トンとなる。

インドのPETメーカーは両社とRIL (Reliance Industries Limited )、JBF Industries の4社で、両社のシェアは38%となる。


     JBF Industries Ltd.

インドのPET使用量は1人当たり 0.6kgであり、中国の2.6kg、米国の10.9kgと比較し、まだ少ない。
Indoramaでは、今後ペットボトル入りの清涼飲料の需要が急激に伸びると見ており、統合により、大きなシナジー効果が出ると見ている。

・北インドと東インドで唯一のメーカーである。
・それぞれが原料ソースと繋がっている。
  Dhunseri はPTAは近隣の三菱化学から購入、MEGは港からパイプラインで受け入れ
  MicroPetはIndian Oil Corporation (IOCL) のコンプレックスにあり、PTAとMEGをIOCLから供給を受けている。
・統合により、販売費・一般管理費と購買でコストダウン
・Indoramaのグローバルな活動に組み込まれる。

 Dhunseri PetrochemはDhunseri Petrochem & Tea Ltdの子会社で、お茶を専業とする Dhunseri Tea & Industries がSouth Asian Petrochem Ltd を買収・統合したもの。

PET専業メーカーで、2003年に輸出用に140千トンの生産を開始、その後増設した。
エジプトに進出、420千トンのプラントを持つ。

Indorama Venturesについては下記参照。
   2016/1/12 タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収 


2016/3/4   アルゼンチンとヘッジファンドとの15年に及ぶ争いが終結

アルゼンチン政府は2月28日夜、債務再編を拒否していたElliott Management など複数のファンドに対し、世界各国の訴訟で和解するため46億5300万ドルを支払うことで合意した。これは、ヘッジファンドが主張していた債務全額の約75%に相当する。

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アルゼンチンは2001年に債務危機が発生し、政府は 2002年1月、イタリア・リラ建て国債(2,800万ドル相当)の利払い停止を発表、国債のデフォルトとなった。3月には、円建て国債の利払いも不履行となった。

その後、IMFや他の国際機関とも債務返済について合意、民間債務について2004年12月に債務再編案を提示した。

対象となる民間保有の国債の元本総額は約810億ドルで、この75%をカットするというものであったが、2005年と2010年の合意でデフォルトに陥った国債全体の92.4%が受け入れた。

これに応じなかった"holdout"債権者のデフォルト状態の債権の残高は未払いの利息も含めてざっと150億ドルになっている。

米国の富豪Paul Singerが支配するヘッジファンド、 Elliott Managementの子会社NML Capital Fund とAurelius Capital Management が約15億ドルの支払いを求め、米国で訴訟を起こした。

これらは当初からの債権者でなく、"holdout"債権者から安く(再編案よりは高い)買い取って債権者になったもの。
アルゼンチン政府は「ハゲタカ」と呼んだ。

2012年にニューヨーク連邦地裁のThomas Griesa判事が判決を下した。

アルゼンチンが債務再編に応じた新債券保有者に支払いを続けるのであれば、"holdout"債権者の保有債券についても、全額支払わねばならない。
もし"holdout"債権者に支払わない場合は、米国の金融機関はアルゼンチン政府から新債権保有者への支払い手続きをしてはならない。
(複数の債権者に対し返済の優先劣後を設けないとするPari Passu 条項:債権者平等条項を適用)

これに対し、アルゼンチン政府は米国の最高裁判所に対し、アルゼンチンの債務再編に応じていない債権者への支払いを命じた下級審の判決を見直すよう求めていたが、最高裁は2014年6月16日、これを却下した。

この結果、アルゼンチン政府は新債券保有者に対し、利息を払う意思もあり、資金もあるにもかかわらず、利息を払えなくなり、デフォルトとなった。

米連邦地方裁判所のThomas Griesa判事は2015年6月5日、2001年のアルゼンチンのデフォルトの際に債務再編に応じなかった "holdout" (不服)債権者に対して新たに54億ドルを支払うようアルゼンチン政府に命じた。

その後、いろいろの動きがあったが、これまで解決に至らなかった。

2015/6/10    アルゼンチンの債務危機、更に深まる 

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今回の合意は、Elliott Management と、これと組むヘッジファンドのAurelius Capital Management、Davidson Kempner、Bracebridge Capital に対し、46億53百万ドルを支払うというもの。

この額は、原告側のニューヨークでの要求額(元本+金利)59億ドルの75%に相当する約44億ドルに、ニューヨークの裁判外で和解する手数料、弁護士費用など235百万ドルを加えたもの。

2004年12月の債務再編では75%がカットされており、これを拒否した債権者から債権を安く買い取ったヘッジファンドにとっては有利なもので、ヘッジファンドは「われわれは合意に達して満足している」としている。

2015年12月に就任したマクリ大統領は経済再建のために外資の流入が不可欠だと考えており、債務問題の解決を重要視した。
2016年1月からニューヨークで交渉を再開し、すでに複数の欧米のファンドとは合意に達していた。

アルゼンチンの経済財務相は「15年間で初めて、アルゼンチンはデフォルトからの脱却を開始した」と述べた。

アルゼンチン政府は、この支払のため、海外債券市場で借り入れる必要がある。

地元報道によると、引き続き合意していない小規模な投資家は残っている。さらに最終的な合意はアルゼンチン議会の承認が必要となるが、与党は議会で過半数を占めておらず、承認には曲折も予想される。


2016/3/5 SABMiller、華潤雪花ビールを売却 

香港の華潤ビール(China Resources Beer)は3月2日、SABMiller とのJVの華潤雪花ビール(China Resources Snow Breweriesを100%子会社化すると発表した。
SABMillerの持分49%を総額16億ドルで買収する。

SABMillerの買収を決めたAnheuser-Busch InBev (AB InBev) との間で合意したもので、中国当局の認可と、AB InBevによるSABMiller買収の完了が条件となる。

華潤雪花ビールは、遼寧省瀋陽市の国有ビール工場が生産していた「雪花ビール」のブランドが前身で、1994年に華潤創業が51%、SABMillerが49%の合弁会社となった。

華潤創業は中国中央政府系コングロマリット華潤集団の子会社で、スーパーやコンビニエンスストアなど中国全土に約4800店の小売店を展開してきた。
しかし、英小売大手のTescoから引き継いだ店舗の採算が改善せず、2014年 12月期には上場以来初の赤字に転落した。

このため、2015年9月1日付けでビール以外の事業を親会社の華潤集団に譲渡し、華潤ビールに改称した。

中国では、華潤雪花、青島ビール、AB InBevが3強で、AB InBevSABMillerを傘下に収めると中国でのシェアは40%近くになる。

中国のビール市場の2014年のシェア(華潤ビール発表)は、華潤雪花が23.2%、青島ビールが 18.4%、AB InBev(バドワイザー、Harbinビールなど) が14.0%、燕京ビールが10.7%、Carlsbergが4.6%となっている。

華潤雪花ビールは中国国内で90カ所を超える醸造所を運営している。

これだけでもAB InBevによるSABMiller買収承認の障害となるが、2008年11月の InBev によるAnheuser Busch 買収の際に、中国商務部は、「華潤雪花ビールの株式保有を求めてはならない」との条件を付けて承認している。

このため、AB InBev はSABMiller買収の承認を得るため、華潤雪花ビールを手放すこととしたもの。

InBev によるAnheuser Busch 買収の際に中国商務部が付けた条件は下記の通り。

(1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。
(2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。
(3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。
(4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。

上記のうち、青島ビールについては、AB InBevは2009年4月に、所有する株式27%のうち、19.99%を6億6700億ドルでアサヒビールに売却した。
アサヒビールは2009年8月に青島ビールとの間で「戦略的協力合意」を締結した。

別途、サントリーが2012年6月に、 青島ビールとの間で、上海および江蘇省におけるビールの事業会社と販売会社を50/50の合弁で上海に設立した。

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

華潤ビールは「中国のトップメーカーの一つである華潤雪花ビールを完全に所有し、世界最大のビール市場である中国での発展戦略を有効に実施できるようになる」と述べた。

ーーー

ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)は2015年11月11日、英のSAB Miller を697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。

両社の合併については、各国の独禁法当局が問題視するのは必至だが、AB InBev は対策に "best efforts" を約束、承認を得られない場合には30億米ドルのReverse Break-Up Fee(買主からの解約金)を支払うことも約束した。

AB InBevは、米当局からSABMiller 買収の承認を得るため、SAB Miller所有のMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却した。

2015/10/14   ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ   

更に欧州での承認を得るため、SABMillerの欧州事業の一部をアサヒビールに売却する。

2016/2/16 アサヒビール、英SABMillerの欧州事業の一部を買収 

付記

AB InBev は4月29日、SABMillerの中東欧事業を売却する意向と発表した。

SABMillerのハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキア、ポーランドの全ての資産を売却する。売却額は50億ドル程度と推定される。
ブランドでは、ポーランドのTyskieとLech、ハンガリーのDreher、ルーマニアのUrsusなど。


2016/3/7 BASF、DuPontの全部又は一部の買収を検討 

Dow Chemical と DuPontは12月11日、対等で経営統合すると発表した。 それぞれの取締役会が満場一致で賛成した。

2015/12/14   Dow と DuPont、経営統合を発表

しかし、BASFが数週間にわたりDowに対抗してDuPontの買収を検討していることが判明した。
Deutsche Bank とCitigroupを使って検討しており、正式なオファーはしていないが、DuPontに打診を行っている。

Bloomberg が3月4日に初めて報じ、Financial Times がこれに次いだ。

BASF は除草剤、殺虫剤、その他農薬ではSyngenta とBayer に次ぐ世界第三位で、DuPontを買収すれば、Bayer に並ぶ。

ソース http://www.sumitomo-chem.co.jp/ir/library/presentations/docs/20140919.pdf

DuPontは1999年に種子会社のPioneer Hi-Bredを買収した。
BASFは種子事業を持っておらず、もしDuPontを買収できれば、農業科学分野でのギャップを埋めることが出来るとともに、Monsantoに次ぐ世界第二位のメーカーとなる。

ソース http://mitsui.mgssi.com/issues/report/r1207i_matsuura.pdf

 

BASF はSyngentaの買収を真剣に検討したが、ChemChinaに取られた。

 2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収

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BASFは、DuPont とDowの統合が発表される前に、DuPontに買収を提案していた。

DuPontは、Dowとの合併の是非を株主に問う目論見書で、“Company 2” との交渉について述べている。
これが、実はBASFであったことが判明した。

2015年11月にCompany 2 の会長がDuPont のCEOを訪問した。
会長はDuPontの事業について、一般的な、好意的な印象を述べたが、具体的な提案はしなかった。
その後、Company 2 はDuPontのアドバイザーのEvercore社に対し、DuPontの農業科学事業を現金で購入したいというおおまかな、予備的な提案を行うとともに、DuPontの他の事業についても話をする用意があると述べた。

2015年12月1日のDuPontの取締役会では、Company 2 との交渉は、「金銭上、戦略上、タイミングなどいろいろの理由で、問題がある」とし、Dowとの交渉を進めることとした。

その後12月10日にDuPont のCEOはCompany 2 の会長から、統合に関する予備的な話し合いをしたいとのレターを受け取ったが、12月11日にDow とDuPontの統合が発表された。

もし DuPontがDowとの契約を破棄する場合は、違約金19億ドルの支払が必要となる。

BASFのアドバイザーは、DuPont全体の買収は独禁法上で大きな問題があり、無理ではないかと見ている。

BASFのKurt Bock CEOは2月末の2015年決算発表の際に、大々的な買収の可能性を否定している。

「大きな買収の期待があるが、BASFでは買収については極めて冷静に見ており、むしろ、非コア資産の売却に焦点を当てたい」

しかしCEOは農業科学関連の分野で買収を検討していることは否定していない。
 


2016/3/8 Facebook、英で法人税納付拡大

Facebookは3月4日、英国での法人税納付を拡大する方針を明らかにした。

これまで、英国の広告主に対する広告費などの請求は海外事業の本社機能を置くアイルランド法人Facebook Ireland Limited から送り、アイルランド法人の収入として扱ってきたが、4月以降は、スーパーのTescoなど大口の広告主に対しては、請求を英国法人から送付し、英国法人の収入として会計処理する。
小規模の広告主に対する請求は従来どおり、アイルランド法人の収益とする。

British-Irish 租税協定では、Facebook Irelandが英国の広告主と取引をしても、英国の課税対象とはならない。
多国籍企業が租税回避策を工夫するなか、この協定は実態に合わないとの批判が強まっている。

Facebook Ireland Limitedは多額のロイヤリティをFacebook Ireland Holdingsに送金する。これは Cayman Islands法人であるため、オランダでもCaymanでも課税されない。
この手法は “Double Irish” と呼ばれる。 詳細は 
2014/6/13 
欧州委員会、Apple等の法人税を調査

Facebookの2014年の英国での法人税の納付額は4,327ポンド(約70万円)と極めて少額にとどまる。
年収33,000ポンド以上の年収の英国の労働者は、Facebookが自分より少ない税金しか払っていないことに怒っている。

英国法人のFacebook UK Limitedは、グループ企業への支援料として若干の利益を計上しているだけ。

前日に、英国国税庁が国民に納税を求める広告をFacebookに出し、27,000ポンドを払っていたこと、これが Facebookの英国での納税額の6倍であることが報道され、問題が明らかになった。

1月にGoogleが英国での納税方針を変更したのに続くもので、実際に事業を営む地域で納税することを求める国際的な課税強化の動きに対応するのが狙い。

Googleは1月22日、英国の税務当局(歳入関税庁)との間で、過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。
2005年以降の追加分として130百万英ポンド(約220億円)を納税、今年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める。

但し、英 Financial Times は、どのような基準で課税したのかが不明であり、新たに設けた税率の根拠も示しておらず、従来より公正かどうか分からないと述べ、不透明な合意と批判している。

英国政府は最近、Googleの納税が他国が受け入れるより少ないものであれば、再交渉すると述べた。

2016/1/26 Google、追加納税で英税務当局と合意 

同社が英国でいくら利益を上げているかは明らかにされていないが、2015年の欧州全体の売上高は44.6億ポンドに上がっており、このうちかなりの分が英国と見られている。
英国の法人税は現在20%で、今年度以降の納税額は数百万ポンド増える見通し。

Facebook Ireland Limited (Cayman Islands法人)への多額のロイヤリティ支払があるため、課税所得は多額にはならない。


2016/3/9  三井物産、炭素繊維関連事業に相次いで投資

世界的に温暖化対策が喫緊の課題となっている中、輸送機器のエネルギー消費削減に向けた解決策の一つとして、部材の軽量化が挙げられており、炭素繊維等の軽量化素材の市場が急速に拡大すると見込まれている。

三井物産は、炭素繊維関連事業に相次いで投資を行った。

三井物産は3月1日、ノルウェーの Hexagon Composites ASA に25%出資出資総額は約110億円を予定することで合意するとともに、Hexagon と業務提携契約を締結した。

Hexagon Compositesは世界最大の樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンクメーカーで、拡大する天然ガスなどの輸送・貯蔵需要に対応して、軽量かつ耐久性、安全性の高いコンポジットタンクを供給している。最近では燃料電池自動車向けに高圧水素タンクを開発している。

 主な事業分野:LPG事業、高圧天然ガス輸送事業、高圧天然ガスタンク事業、高圧水素タンク事業

三井物産とHexagonは、コンポジットタンクの販売を軸として、約20年にわたり強固なパートナー関係を構築してきた。
今回の出資参画と業務提携を機に、事業資産及びグローバルネットワークを活用してHexagonの事業拡大に取り組むと共に、輸送機器分野における温暖化ガス排出削減の課題解決に貢献してい
くとしている。

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三井物産は3月3日、韓国の Hankuk Carbon Co., Ltd. (韓国カーボン)と炭素繊維などの複合材料加工事業分野で包括的な業務提携契約を締結した。
また、韓国カーボンへ306億韓国ウォン(約28億円)を出資し、株式10%(議決権ベース)を取得する。

韓国カーボンは1984年の設立以来、炭素繊維をはじめ多様な複合材料を組み合わせた部品・材料加工事業を拡大させてきた。

 主な事業分野炭素繊維プリプレグ、LNG船断熱パネル、ハニカムペネル材

今後成長が期待される航空機・自動車などの輸送機器向けに複合材料加工事業の展開を加速する。

韓国カーボンの趙文秀代表は「自動車、航空機の軽量化に合わせ、炭素繊維複合素材を利用した素材・部品の開発で協力していく。30年間取引を続けてきた三井物産との戦略的パートナーシップがさらに強化された」と述べた。

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三井物産は2015年4月には、金沢工業大学の革新複合材料研究開発センター(「ICC」)と、炭素繊維複合材料による自動車部品等製造の新製法に関する実証研究を行うことで合意し、複合材料研究に関する協力協定書及び機械貸借契約を締結している。

ICCは2013年7月、金工大により設立され、異業種・異分野の技術融合による炭素繊維複合材料の可能性を開拓することを目的とする国内最大級の複合材料研究センター 、全国の産学官研究者を集結し、中間加工分野における国際競争力を向上させるべく、革新的技術の開発を目標としている。

三井物産はこれまで、経済産業省のコーディネートの下、ICC及び炭素繊維複合材料ユーザー企業との取り組みの検討を行ってきたが、実証用設備一式 (3億円)を購入し、ICCを中心とするユーザー企業を含む関連企業コンソーシアムに同設備を提供し、共同で炭素繊維複合材料による自動車部品を始めとした幅広い部材等製造の新製法開発及び実用化を目指 す。

(欧州では自動車メーカー主導で、材料供給から加工までの体制が確立され、炭素繊維複合材料が自動車の主要骨格部材等の部品として採用されている事例があ る。)

ICCでの取り組みの模式図

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三井物産は新中期経営計画で掲げた7つの攻め筋における事業展開に取り組んでいる。

ハイドロカーボンチェーン エネルギーの上流〜下流、関連事業の展開
資源(地下 + 地上)・素材 資源採掘から素材加工、循環型社会構築への取組
食糧と農業 食糧増産と食の安定供給に貢献するソリューション提供
インフラ 国造りへの貢献とインフラを起点とするビジネスの広がり
モビリティ 輸送機械等の製造・販売・金融・関連サービス
メディカル・ヘルスケア 病院を中核とした事業展開と医薬バリューチェーン
衣食住と高付加価値サービス 次世代機能(IT/金融/物流)活用による消費者連動型ビジネス

炭素繊維関連事業は、「資源・素材」・「モビリティ」の2つの攻め筋に跨 る。

三井物産では、グローバルに炭素繊維関連事業の拡大に取り組んでいく。

 



2016/3/10   世界初の「浮かぶLNG工場」完成

3月7日に韓国巨済市の大宇造船海洋の玉浦造船所で世界初のFLNG(Floating LNG) の命名式が行われ、“PFLNG Satu” (Petronas FLNG No.1) と命名された。
Petronasが2012年6月に、Technipと大宇のJVのTechnip Daewoo Consortiumに、9098億ウォン(約850億円)で発注した。

設計はTechnipで資材購入はPetronasが担当した。

4月にはPetronasに引き渡され、サラワクの180km沖合いのKanowitガス田でLNG製造にあたる。

当初の引渡し予定は2015年6月であったが、工事の遅れで2015年9月に延期され、更に延期された。

船体の長さは300m、幅は60mで、フレアタワーは海面から130m 。
最大で180人を収容でき、スクリーンゴルフ場や映画館、プールまで備えている。

LNGの年産能力は120万トンで、船体部分には177千m3のLNGを貯蔵できる。

Kanowitは小規模ガス田で、まずKanowitガス田開発から始めて、順次、近隣の小規模ガス田へと開発対象を移していくと見られる。

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Petronas はPFLNG 2 を建設中で、2018年に完成する予定。日揮が設計、購買を担当、三星重工業が建造する。

PFLNG 2 は マレーシアのSabahの沖合いの深海ブロックHのRotanガス田に係留し、年150万トンのLNGを生産する。

 


2016/3/10   高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分決定 

大津地方裁判所は3月9日、高浜原子力発電所3号機と4号機について、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。

滋賀県内の高浜原発から約30〜70キロ圏内に居住する住民29人が、地震災害に伴う重大事故が原発で起きた場合、放射性物質で琵琶湖が汚染されて水が飲めなくなり、生命や健康を脅かされるとして、運転の停止を求める仮処分を申し立てていた。

裁判長は、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法、基準となる地震の揺れの策定についても危惧する点がある」、「津波対策や避難計画についても疑問が残り、住民の権利が損なわれるおそれが高いにもかかわらず、安全性について電力会社は十分な説明を尽くしたとは言えない」とした。

関西電力は、稼働中の3号機の原子炉を止める手続きに入る一方で、決定の取り消しを求める異議の申し立てと、仮処分の執行の停止を求める申し立てをすることにしている。

住民らは2011年8月にも高浜原発などの再稼働禁止を求める仮処分を申し立てたが、大津地裁が2014年11月、避難計画が未整備な点などを挙げて「原子力規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」と却下した。その後、規制委で再稼働に向けた審査が進み、2015年1月に再び仮処分を申し立てた。

3、4号機をめぐっては福井地裁が再稼働前の2015年4月、運転を禁じる仮処分を決定。同12月、別の裁判長がこれを取り消し、住民側が抗告している。

2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定     

高浜3、4号機はいずれもプルサーマルで、2015年2月12日に安全審査に合格、3号機は本年1月29日に再稼動した。4号機は2月26日に再稼動したが、直後にトラブルで停止している。

なお、高浜1、2号機は40年超であるが、原子力規制委員会は本年2月24日、事実上の審査合格とした。
今後は老朽化対策に特化した運転延長審査に焦点が移るが、7月7日の期限までに延長審査や、設備の詳細設計をまとめた工事計画の認可など、残りの手続きを終えなければ廃炉になる可能性が高い。

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判決全文

判決では、以下の記述が注目される。

 

原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実のみによって、十分な検討をしたとはいえない。

福島第一事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに真摯に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講じるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。

この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が、関電ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとすれば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。

地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、
常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、
新規制基準を策定すべきものと考える。

 

避難計画について

福島第一事故を経験した我が国民は、事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。
安全確保対策としてその不安に応えるためにも、地方公共団体個々によるよりは、国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、
この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、それ以上に、
過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではなかろうか。

大津地裁は2014年11月に再稼働禁止を求める仮処分申し立てを却下したが、この際の裁判長は今回と同じ裁判長である。却下理由として以下の通り述べている。

「原発事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず、これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ないことに照らしても、このような段階にあって、同委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく、上記特段の事情が存するとはいえない。」

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菅官房長官は3月10日、以下のように述べた。

「世界最高水準の規制基準に適合すると、原子力規制委員会が専門的見地から判断したものであり、政府としてはこの判断を尊重し、再稼働を進めていくことに変わりはない」

「避難計画の作成段階から国が関与し、総理大臣を議長とする原子力防災会議で了承する仕組みであり、国が前面に立って支援はしっかり行っている」


2016/3/11 ヤフー、課税取り消し訴訟で敗訴 

子会社の買収を巡る東京国税局の追徴課税を不服として、ヤフーが国に約178億円の課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は2月29日、ヤフーの上告を棄却した。課税を適法とした一、二審判決が確定した。

第1小法廷は、合併など企業の組織再編において、税負担を不当に減少させる租税回避に当たる要件について初めて判断し、通常は想定されない方法や、実態とかけ離れた形をつくり出すなど不自然なものかどうか、合理的な理由があるか―という基準を示した。

その上で、ヤフーが行った一連の組織再編は「明らかに不自然で、税制を乱用した」と指摘し、請求を棄却した東京高裁の判断は正当とした。

事態は以下の通り。

当初の状況

IDCソルージョンズ(IDCS)は2007年3月期以後利益を上げるようになったが、繰越損失の繰越期限切れが予想された。

2008年12月26日、ヤフーの代表取締役がIDCSの取締役副社長(“非常勤で無報酬”)に就任した。

合併による損失引継ぎの条件として、「合併法人と被合併法人との間に支配関係が生じる前から被合併法人の社長、副社長等の経営者クラスの役員となっている者が、合併後の合併法人でも、同じく特定役員として残ると見込まれること」(特定役員引継要件)がある。

なお、ヤフーによるIDCS買収時にはIDCSの他の役員はすべて退任している。

そのわずか2か月後 の2009年2月、IDCSが会社分割により営業部門を切り出し、100%子会社のIDCフロンティア(IDCF)を新設した。

IDCSが有していた繰越欠損金の一部はIDCF株式譲渡益によって消滅したが、IDCFにおいて「のれん」(5年間にわたって損金算入可能な資産調整勘定)が計上された。(これにより、繰越損失の繰越期限が延長される)

2009年2月、ソフトバンクがIDCS株式100%をヤフーに約450億円で譲渡した。

その後、2009年3月29日にIDCSがIDCF株式100%をヤフーに譲渡、翌日の3月30日にヤフーがIDCSを吸収合併した。

IDCFの資産調整勘定(5年間の損金算入)を先ずヤフーに移してしまってから、その後にIDCSを合併した。

ヤフーはIDCSの欠損金約540億円を自社の利益と相殺して税務処理しようとしたが、税務当局が認めず約178億円を追徴課税した。

ーーー

本件は@ヤフー事件、AIDCF(IDCフロンティア)事件の2つに分かれる。

 @ヤフーとIDCSの合併においてIDCSの青色欠損金の引継ぎが認められるか。

直前に IDCS取締役副社長に就任させた行為を含めてヤフーの一連の行為が、IDCSの未処理繰越欠損金額をヤフーの欠損金額とみなして損金算入することを目的とした異常ないし変則的なものであるのかどうか。

 AIDCFの会社分割は適格分割かどうか、資産調整勘定が認められるか。

「のれん」(資産調整勘定)を計上し、その損金算入を目的とした異常ないし変則的なものかどうか。

東京地裁は、ヤフー社長のIDCS取締役副社長就任を以下の理由で税法上否認し、その結果、IDCSの繰越欠損金のヤフーへの承継も否認した。

IDCSの取締役副社長に就任してからIDCS買収までの期間が約2か月程度しかなく極めて短いこと
IDCS取締役副社長としてIDCSのデータセンター事業に固有の経営に関与していたと評価することはできないこと
IDCSの経営を担ってきた役員はいずれもヤフーとの合併後に役員に就任しなかったこと

IDCFの分割についても、租税回避行為と認め、国税局による「のれん」の損金否認を認めた。
ここでは、営業部門のみIDCFをさきにヤフーに譲渡する事業上の必要性等が認められなかった。

 


2016/3/12  第7回化学遺産に写真家の「上野彦馬」など5件認定

日本化学会は平成21年度から化学関連の学術あるいは化学技術遺産の中で特に歴史的に高い価値を有する貴重な史料を認定する『化学遺産認定制度』を開始し、これまでの6回で33件をそれぞれ認定・顕彰している。

このほど5件を第7回化学遺産に認定した。これで化学遺産認定は38件となった。

3月26日に日本化学会第96春季年会に合わせ、第10回化学遺産市民公開講座を開催し、内容を紹介する。

実施日   3月26日(土) 9:30-12: 30
会 場   同志社大学京田辺キャンパス 恵道館2階203教室(京都府京田辺市多々羅都谷1-3)

新たに化学遺産に認定されたのは次の5件。

◇「日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料」 

上野彦馬は、幕末期から明治時代にかけて活躍した日本初の写真家として知られる。
長崎でオランダ語を学び、化学をポンペに師事するなど積極的に知識の蓄積を図る過程で湿板写真の研究に没頭する。
1862年には『舎密局必携』を発表、化学の教科書として明治6,7年頃まで使用された。

銀板写真から湿板写真、乾板写真へと写真技術が進展する中で、常に最先端の技術を習得し日本の写真化学・撮影術の基礎を築いた。

◇「明治期日本の化学の先駆者・化学会初代会長 久原躬弦関係資料」 

1877年に東京大学理学部化学科を最初に卒業生した3人のうちの1人。
化学会(現在の日本化学会)初代会長となる。
東京大学教授・第一高等中学校校長などを経て京都帝国大学教授となり、総長にも就任。日本の理論有機化学の草分けとなり、国際学会で活躍した。

◇「野副鐵男の化学遺産 / 非ベンゼン系芳香族化合物資料と化学者サイン帳」 

野副鐵男は、台北帝国大学でタイワンヒノキの精油からヒノキチオールと名付けた物質を単離し、1948年帰国後これが不飽和七員環構造を含み、芳香族を示すことを明らかにした。その後、非ベンゼン系芳香族化学という新しい分野を創始し確立した。

野副博士はその発見と構造研究により文化勲章を受章した。

◇「日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料」

第二次大戦中、海軍は連合国から捕獲した電波兵器の同軸ケーブルの蝋状のポリエチレンをテストした結果、化学薬品に対して非常に安定していると同時に電気的特性が抜群で、なかでも高周波絶縁性が特に優れていることが分かった。そこで海軍は、電気通信試験所、阪大の谷久也・呉祐吉両研究所、京大の児玉信次郎研究室に緊急研究開発を委託した。電気通信試験所はこれの研究員が野口研究所に移ったため、野口研究所に任せた。
栂野棟彦 「昭和を彩った日本の石油化学工業」)

戦時中のポリスチレンの研究については 2011/4/16  塩野香料とポリスチレン

1943年から海軍の委託を受けて野口研究所―日本窒素肥料、京都大学―住友化学工業、大阪大学―三井化学工業の3グループで研究され、1945年1月に日本窒素肥料水俣工場で小規模に工業化された。しかし、同年5月に空爆を受けて設備が完全に破壊された。

戦後、京都大学で研究が再開され、連続中間試験が行われた。その設計図、研究ノート、研究報告書が化学遺産に認定された。

◇「日本の近代的陶磁器産業の発展に貢献したG・ワグネル関係資料」 

ドイツ出身のGottfried Wagenerは1881年に東京大学理学部化学科教授となり、渋沢栄一と共同で日本の近代的陶磁器産業の礎となる吾妻焼の窯を築いた。
吾妻焼は「旭焼」と名が改められた。旭焼は、日本画の持つ筆の運びと多彩な色彩における濃淡表現をそのまま損なうことなく、絵付けされた陶器として知られる。

http://www.shibusawa.or.jp/museum/newsletter/338.html

 


過去の化学遺産

2010/3/18
 
  化学遺産認定
第1号  杏雨書屋蔵 宇田川榕菴化学関係資料
第2号  上中啓三 アドレナリン実験ノート
第3号  具留多味酸(グルタミン酸) 試料
第4号  ルブラン法炭酸ソーダ製造装置塩酸吸収塔
第5号  ビスコース法レーヨン工業の発祥を示す資料
第6号  カザレー式アンモニア合成装置および関連資料
2011/3/17 
   
化学遺産、第二回認定
第7号   日本最初の化学講義録 朋百舎密書(ポンペせいみしょ)
第8号   「化学新書」など日本学士院蔵 川本幸民化学関係資料
第9号   「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」
第10号  日本の板硝子(ガラス)工業の発祥を示す資料
2012/3/17 
    化学遺産、第三回認定
第11号  眞島利行ウルシオール研究関連資料
第12号  田丸節郎資料(写真および書簡類)
第13号  鈴木梅太郎ビタミンB1発見関係資料
第14号  日本の合成染料工業発祥に関するベンゼン精製装置
第15号  日本初期の塩化ビニル樹脂成形加工品
第16号  日本のビニロン工業の発祥を示す資料
第17号  日本のセメント産業の発祥を示す資料
2013/3/21 
    化学遺産、第四回認定
第18号  小川正孝のニッポニウム発見:明治日本の化学の曙
第19号  女性化学者のさきがけ、黒田チカの天然色素研究関連資料
第20号  フィッシャー・トロプシュ法による人造石油に関わる資料
第21号  国産技術によるアンモニア合成(東工試法)の開発とその企業化に関する資料
第22号  日本における塩素酸カリウム電解工業の発祥を示す資料
2014/3/20  
 第5回化学遺産認定
第23号 日本の近代化学の礎を築いた櫻井錠二に関する資料
第24号 エフェドリンの発見および女子教育に貢献のあった長井長義関連資料
第25号 旧第五高等学校化学実験場および旧第四高等学校物理化学教室
第26号 化学技術者の先駆け 宇都宮三郎資料
第27号 日本のプラスチック産業の発展を支えたIsoma射出成形機及び金型
第28号 日本初のアルミニウム生産の工業化に関わる資料
2015/3/19  
   第6回化学遺産 
第29号  早稲田大学蔵 宇田川榕菴化学関係資料 
第30号  工業用高圧油脂分解器(オートクレーブ)
第31号 日本の工業用アルコール産業の発祥を示す資料
第32号 日本の塗料工業の発祥を示す資料
第33号 日本のナイロン工業の発祥を示す資料

 


2016/3/14   Rio Tinto、豪州の石炭事業を再編

Rio Tintoは3月1日、豪州NSW州Hunter ValleyのBengalla 炭鉱の権利の40%を豪州のNew Hope Corporation に616.7百万米ドルで売却完了したと発表した。

Rio Tinto は三菱商事の子会社 Mitsubishi DevelopmentとのJVのCoal & Allied(Rio 80%、Mitsubishi 20%) で豪州で石炭事業を行っていた。
Bengalla事業は、Coal & Alliedが40%、豪州のWesfarmersが40%、台湾電力が10%、三井物産が10%の出資をしていた。

Rio Tintoは2015年9月にNew Hope との契約を締結したが、それには2つの付帯条件がついている。

 1) Coal & Allied を改組し、Rio Tinto 100% とすること

 2) 他の株主のWesfarmers、台湾電力、三井物産がJVの先買権を放棄すること。

先ず、1)については、Mitsubishi Development はCoal & Allied の持分20%をRio Tintoに譲ってRio Tinto 100%とし、代わりにHunter Valley炭鉱の持分32.4%を受け取った。
(従来Coal & Allied を通して間接的にHunter Valleyの20%を所有していたが、直接32.4%を出資する。)

2)については三社とも先買権を放棄した。New Hopeの買値が高過ぎ、対抗できない。

これにより、条件が満たされ、売却が完了した。

付記

Wesfarmers は2018年8月7日、Bengalla 炭鉱の権利の40%をJV相手のNew Hope Corporation に860 百万ドルで売却すると発表した。

  当初 2016/3 今回  
Coal & Allied 40% 0%

Rio Tinto 80%/Mitsubishi 20% → Rio 100%

Wesfarmers 40% 40% 0%  
台湾電力 10% 10% 10%  
三井物産 10% 10% 10%  
New Hope 40% 80%  
合計 100% 100% 100%  

 

Rio Tintoは2013年1月から売却を進めており、これで売却額は47億ドルとなった。

豪州の炭鉱関連では、2013年10月にクイーンズランド州Clermont 炭鉱の権益 50.1% を、住友商事とGlencoreの50/50JVのGS Coal  に1,015百万米ドルで売却した。

本年1月には、Rio Tinto はCoal & AlliedのMount Pleasant鉱山をMACH Energy Australia に224 百万米ドル プラス ロイヤリティで売却する契約を締結している。

Rio Tinto がCoal & Allied の100%株主となった結果、Bengalla炭鉱の権利40%の売却収入は全額 Rio Tintoに入る。

Rio Tinto と Coal & Alliedの関連事業は下記の通りとなる。(青字は昨年来の変更)

  Coal & Allied
(Rio Tinto 100%)
Mitsubishi
Development
Others
Coal & Allied   0% (←20%)  
Bengalla 0% (←40%)   Wesfarmers 40%
台湾電力 10%
三井物産 10%
New Hope 40%
Hunter Valley 67.6%(←100%) 32.4%
 (←間接20%)
 
Mount Thorley 80%   POSCO Australia 20%
Warkworth Rio 55.57%
(子会社 26.82%)
---------   28.75%)
28.9% 新日鉄住金        9.53%
三菱マテリアル 6%
Mount Pleasant 0% (←100%)   MACH Energy Australia 100%
Clermont Rio
   0% (←50.1%)
31.4% GS Coal  50.1% (←0%)
  〈住商 50% / Glencore 50%〉
電源開発      15.0%
石炭資源開発 3.5%
Kestrel

 

Rio 80%   三井物産 20%
 
Hail Creek Rio  82%
(子会社
 Queensland Coal)
  新日鉄住金 8%
丸紅    6.67%
住友商事  3.33%

 


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