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2016/5/16 東芝、米国大手エンジニアリング会社との原発建設に関する協力関係を解消 

東芝は5月11日、米国大手エンジニアリング会社の CB&I と締結していた米国の原発建設計画(South Texas Project  3、4号機)におけるEPC契約および改良型沸騰水型原子炉(ABWR) 原子力発電所の海外建設協力等の一連の契約について、契約解除をすることを合意したと発表した。

これにより、CB&IはEPC契約者としてSouth Texas Project から撤退するとともに、South Texas Project およびABWR事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に対し保持している債権を放棄する。

付記 東芝自体も2018年5月31日に撤退を決議した。(文末の付記参照)

ーーー

東芝は2008年3月26日、米総合発電事業会社のNRG Energy が米テキサス州で推進する原発の建設計画 South Texas Project で、原子力発電プラント2基の主契約者に選定されたと発表した。

東芝はまた、NRGが設立した South Texas Projectの事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に3億ドル、12%分を出資することも併せて発表した。

NRG Energyはテキサス州 Houston 郊外で South Texas Projectを共同で推進しており、東芝が受注したのは、3号機と4号機。
具体的には、改良沸騰水型(ABWR)の原子炉2基や蒸気タービンなど主要機器の納入や建設、エンジニアリング業務を受注した。
事業費は8,000億円規模とみられ た。
2012年ごろに着工し、2015年から16年の運転開始を目指した。 

  Reactor type Capacity Commercial operation
South Texas-1 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1988/8/25
South Texas-2 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1989/6/19
South Texas-3 ABWR 1350 MW  
South Texas-4 ABWR 1350 MW  

 

東芝は2010年11月29日、米国大手エンジニアリング会社 The Shaw Group Inc.との間で、今後東芝が海外で受注するABWR型発電所の建設関連作業について協力する契約を締結した。

Shaw は東芝との協力関係に対して 2.5億ドルを投資する。
まず1億ドルを Nuclear Innovation North America 経由でSouth Texas Projectに融資する。

Shaw はSouth Texas Project で主に建設工事を担当する。
Shaw は子会社に原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster を持つ。

東芝とShaw Group はともにWestinghouse Electric の株式を保有し、Westinghouse の最新鋭原発 AP1000 の建設でも協力関係にある。

元々の Westinghouse Electric は 1995年に放送会社 CBC を買収、その後、防衛産業部門をNorthrop Grummanに、原子力以外の発電事業をSiemens になど、次々に売却し、1997年に CBC Corporation に改称した。

最後まで残っていた商業用原子力部門を1998年に英国核燃料会社(BNFL) に売却した。これが現在のWestinghouse Electric である。

CBCは1999年に Viacom, Inc. に吸収合併された。

2005年7月、英国核燃料会社はWestinghouse Electricの売却を計画、各社が関心を示したが、2006年10月16日に54億ドルで東芝が購入した。東芝は77%を保有し、Shaw Group が20%、IHIが3%を保有することとなった。

2007年8月に東芝は株式の10%をカザフスタンの国営ウラン採掘企業 Kazatompromに売却した。

South Texas Project については2012年ごろ の着工、2015年から16年の運転開始を目指した が、2011年3月の福島原発事故で状況が急変した。

福島原発事故を受け、米原子力規制委員会(NRC)は稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定、新規原発の認可も棚上げとなった。

このため、South Texas Project の主体のNRG Energyは、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定した。

米国では外資100%出資の原発建設には制限があるため、東芝はNRG Energy に代わるパートナーが必要だが、見つけられていない。

立地のテキサス州は天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因である。

参考 

  2012/7/31  原子力発電の正当化困難にーGE会長
  2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ
  2012/10/26 米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
  2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定

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東芝とShaw Group との関係も変化した。 

2012年7月に米国大手エンジニアリング会社のCB&I が Shaw Group を買収することで合意、2013年2月に買収した。

東芝は 2012年10月10日、Westinghouseの株式 20%を Shaw Groupから取得すると発表した。Shawが当初の株式取得時のオプションを行使するもの。

これにより持株比率は87%に高まるが、東芝は50%超を保持して残りを売却するとしている。

Shaw との関係では、受注済みの案件については予定通り工事完成に向けて取り組むことで合意した。
今後は案件ごとに最適なパートナーを選定する方針。

Westinghouse は2015年12月31日、Shaw Group子会社で原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster をCB&I から229百万ドルで買収した。

Shaw Group を買収したCB&I が原子力関係事業からの撤退を決めたもので、Westinghouse とStone & Webster は米国で建設中のボーグル発電所とV.Cサマー発電所向けにAP1000原子力発電所の設計、エンジニアリング、調達及びサポートを提供しており、買収により米国プロジェクト全体の一元管理・遂行が行える推進体制を構築する。

付記

東芝は7月26日、WestinghouseによるStone & Websterの買収を巡り、売却したCB&I が米国の裁判所に訴訟を提起したことを明らかにした。買収後に実施していた財務上必要な資産査定の手続きで、価値算定を巡って見解の相違があった模様。

2015年12月31日に買収を完了、買収完了後のプロセスとして、価格調整を行う手続を規定しており、Westinghouseは新会社の運転資本に関する算定結果を含む書面をCB&I に提出していた。

CB&Iが原子力関係事業からの撤退を決めたことから、CB&I からのSouth Texas Project への融資が見込めなくなったこともあり、 今回、CB&I と締結していたSouth Texas Project におけるEPC契約および改良型沸騰水型原子炉(ABWR) 原子力発電所の海外建設協力等の一連の契約について、契約解除をすることを合意したもの。

CB&Iとは火力事業を中心に引き続き重要なパートナーとして、今後も協力関係を維持していくとしている。

上記をまとめると次のとおりとなる。

                                                            ↓

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South Texas Projectの事業開発会社Nuclear Innovation North America は2016年2月9日、米国原子力規制委員会(NRC)から、South Texas Project 3・4号機建設の建設運転一括許可(COL)の承認を受けた。ABWRとしてCOLが承認されたのは今回が初めて 。

新型加圧水型原子炉「AP1000」では、Vogtle原子力発電所3・4号機向け、Virgil C. Summer 発電所2・3号機向けにCOLが発給されている。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

現在電力価格が低迷していることから、今後電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始の判断をすべく、協議するとしている。

しかし、原発の優位性はなくなっており、パートナーがすぐに出てくる可能性は少ない。

東芝はNuclear Innovation North America について、2013年度で310億円、2014年度で410億円の減損損失を計上している。

2016年3月決算では、Westinghouse のノレン代減損損失 2600億円を計上した。

2015/12/8 東芝の原子力事業 の付記参照

 

付記  (東芝はNRG Energy の計画に参加したが、元のNRG Energy が撤退し、事業の相手を探していた。)

東芝は2018年5月31日開催の取締役会において、South Texas Project 発電所 3号機、4号機の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)原子力プラントの建設工事プロジェクトから撤退することを決議した。

電力市場価格の回復が見込めない一方で、プロジェクト維持のためのコストが継続的に発生していること、また米国原子力規制委員会より建設運転一括許可を2016年2月に取得した後も、新規の資金提供者が現れていない事等から、完全に撤退することとし、融資契約における債権放棄を行うことを決議した。

Nuclear Innovation North Americaに対して、2018年5月31日時点で641百万ドル(約701億円)の債権および147百万ドル(約161億円)の出資持分を有しているが、ほぼ全額について2017年度決算までに貸倒引当金および減損損失を計上済み。


2016/5/17  Pfizer、自社医薬品の死刑での使用を拒否 

米製薬大手のPfizerはこのたび、自社製品が死刑執行に使われないよう、流通を規制すると発表した。

「当社の製品の死刑での使用についての見解」というタイトルで、要旨は次のとおり。

Pfizerの使命は健康と福祉の向上であり、当社の製品の死刑での使用に強く反対する。

死刑に使われる製品について、流通を制限する。

対象製品は、臭化パンクロニウム、塩化カリウム、プロポフォール、ミダゾラム、ヒドロモルフォン、臭化ロクロニウム、臭化ベクロニウムで、これら7 製品については、刑務所に死刑用に再販売しないという条件で、特定の業者にのみ販売する。

政府機関が購入する場合は、医療用に使用し、死刑には使わないということを確認する。また第三者に転売しないことの確認をする。

Pfizerはこれら7つの製品の流通を絶えずチェックし、ルールに従わないのを見つけた場合は対応する。
このシステムで、これらの薬に頼っている患者が薬を入手できることが重要である。

Pfizer は昨年、同業の米 Hospira, Inc.を170億ドルで買収した。

Hospiraはジェネリック注射剤を製造し、医療施設で広範囲に利用されている。またバイオ後続品の販売や開発も手がける。

2015/2/11   Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収 

これらの医薬品はHospiraが生産しているもので、Hospira自身、自社製品の死刑での使用を禁止しているが、昨年、Arkansas で死刑に使われた薬品のラベルが明らかになり、Hospira製の塩化カリウムであることが分かった。

Hospiraを買収したPfizer として立場を明らかにしたもの。

ーーー

米国では、麻酔薬などの注射による死刑執行が一般的だが、死刑を廃止している欧州との関係などから製品の使用を拒む製薬会社が相次いでいる。

死刑に反対する人権組織によると、米国で死刑に使われる医薬品を製造する世界の25のメーカーが死刑用の使用を禁止した。ニューヨーク・タイムズによると、通常の流通ルートで執行のための薬物を購入することはできなくなる。

昨年は6つの州で28人が死刑となっており、本年はこれまでで5つの州で14人の死刑が執行された。

2014年1月に1人の死刑を執行したオハイオ州は、薬の入手のため、何度も執行を遅らせた。現在、執行日時が決まっている囚人が20人以上いるが、薬を入手できていない。

テキサスなどいくつかの州では、FDAの承認を受けていない複合薬を使っているという。テキサス州は医薬品の供給者を明らかにしておらず、死刑に反対する弁護士から訴えれている。

ユタ州は昨年、医薬品の入手が出来ない場合、銃殺することを認めた。オクラホマ州は窒素ガスでの執行を認めた。テネシー州は2014年に医薬品が見つからない場合、電気椅子の使用を認める法律を通した。バージニア州も同様の法律を検討している。

 


2016/5/18   化学メーカーの2016年3月期決算 

2016年3月期決算がほぼまとまった。

各社の決算状況は http://www.knak.jp/kessan/ 参照

各社とも非常に好調で、営業損益は前年と比べ、大幅に上回る。

但し、巨額の特別損失を計上している会社もあり、当期損益は各社異なる。

営業損益
 
     
経常損益
 
     
当期損益
 

   減損損益が大きい会社には、三菱化学 790億円 (うちPTA 636億円)、トクヤマ 1,247億円 、住友化学 247億円、三井化学 241億円(うち歯科材料 195億円)などがある。

2016/2/9   三菱化学、テレフタル酸で減損損失計上

2016/2/3    トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン事業で再度、減損損失を計上

東ソーの当期損益が前年比大幅ダウンになっているのは、前年に日本ポリウレタン工業との合併で、繰越欠損金等 を引き継ぎ、税金費用の減少240億円があったため。


2016/5/19    主要企業の2016年3月決算 − 三菱ケミカルホールディングス、 住友化学 

1. 三菱ケミカルホールディングス

各分野とも好調で、2014年下期に連結対象とした大陽日酸の業績がフルに寄与したこともあり、営業損益は大幅増益となり、過去最高だった2011年3月期を上回った。

但し、大陽日酸も高収益の田辺三菱製薬も三菱ケミカルの出資は50%超に過ぎないため、少数株主帰属利益が大きい。
(大陽日酸 50.56%、田辺三菱製薬 56.34%)   

当期は、減損損失の計上などで特別損益が大幅赤字となり、少数株主帰属利益を引いた当期損益は前期比でマイナスとなった。

                                                        単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 税引後 少数株主 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 34,988 1,105 -4 1,031 135 603 280 322 6.0 6.0
2015/3 36,563 1,657 38 1,631 26 965 356 609 6.0 7.0
2016/3 38,231 2,800 101 2,706 -724 1,056 592 464 7.0 8.0
前年比 1,668 1,143 63 1,076 -749 92 236 -144 1.0 1.0
2017/3予 36,000 2,110   1,980       800 8.0 8.0


営業損益は下記の通り。次年度は減益を見込む。

営業損益対比(億円)           
  2014/3 2015/3 2016/3 前年比 増減内訳   2017/3
予想
売買差 数量差 コスト
削減
ケミカルズ 7 92 573 188
293
65 42 18 188
171
535
ポリマーズ 23 268 433 166 195 -23 31 -50 380
エレクトロニクス -55 -27 -10 17 -26 7 45 -8 -20
デザインドマテリアルズ 475 561 757 196 115 70 36 -20 670
ヘルスケア 673 770 1,034 264 -7 301 41 -71 820
その他 57 65 73 8   14 5 -7 45
全社 -75 -71 -60 11     12 -1 -320
合計 1,105 1,657 2,800 1,143 342 411 188 202 2,110

ケミカルズ:石化市況堅調、受払差損縮小、定修規模差により増益
       2014年下期から大陽日酸が連結対象となったことが増益に貢献(+188億円)
          2014/5/19   三菱ケミカルホールディングス、大陽日酸株式の公開買い付け 

ポリマーズ:原料価格下落によりポリオレフィン、フェノール・ポリカ増益
        MMA関連はアジア需要低迷、市況悪化により減益
デザインドマテリアル:原料価格下落によりポリエステルフィルム及び高機能フィルム増益、電池材料増販により増益
ヘルスケア:導出に伴う技術料収入増に加え、重点品・ワクチンの増販により増益となった。

特別損益のうち、減損損失は790億円。 主なものは下記の通り。

テレフタル酸 インド MCC PTA 432
中国 寧波三菱化学 204
遺伝子組換え人血清アルブミン製剤 田辺三菱子会社 潟oイファ 33
電解液 英 MC Ionic Solutions 31
トナー 米 三菱化学イメージング 20
産業ガス シンガポール Leeden National Oxygen 14
特殊合成樹脂 Lucite International 11

2016/2/9 三菱化学、テレフタル酸で減損損失計上

なお、インド MCC PTA については2015年3月期にも104億円の減損損失を計上している。


田辺三菱製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 4,127 591 619 454 20.0 20.0
2015/3 4,151 671 677 395 20.0 22.0
2016/3 4,317 949 948 564 22.0 24.0
前年比 166 278 271 169 2.0 2.0
2017/3予 4,065 755 770 570 24.0 24.0

ノバルティスへの多発性硬化症治療薬、ヤンセンへの糖尿病治療剤等のロイヤルティー収入の増加のほか、バイオジェンへの自己免疫疾患治療剤のライセンス契約、アムジェンほかへの脂質異常症治療剤の特許・ノウハウ譲渡契約一時金などが大きく寄与した。
また血漿分画製剤の販売提携終了もあり売上原価率が低下した。

2014年下期から連結対象とした大陽日酸の業績は下記の通り。    

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 5,227 315 305 202 6.0 6.0
2015/3 5,594 353 343 208 6.0 7.0
2016/3 6,415 434 432 258 7.0 9.0
前年比 821 81 89 51 1.0 2.0
2017/3予 6,100 520 487 300 9.0 9.0

 


 
 

ーーー

2.住友化学 

石油化学部門で、千葉工場の石油化学事業再構築やPetroRabighの定期修繕等の影響により、出荷が減少し、売上高は前年比マイナスとなった。
PetroRabighの定期修繕の影響で持分法損益も前年比でマイナスとなった。

農薬、医薬品、石油化学が好調で、営業損益は過去最高となった。
特別損益は、千葉再構築などの事業構造改善費用が一段落したため赤字が減少し、当期利益は前年を上回った。

三菱ケミカルと同様、大日本住友製薬など高収益企業の少数株主帰属利益分が大きい。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 税引後 少数株主 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 22,438 1,008 120 1,111 -249 550 -180 370 6.0 3.0
2015/3 23,767 1,273 239 1,574 -407 711 -189 522 6.0 3.0
2016/3 21,018 1,644 202 1,712 -136 1,124 -309 815 8.0 6.0
前年比 -2,749 371 -37 138 271 413 -120 293 2.0 3.0
2017/3 20,300 1,400   1,500       800 7.0 7.0

 

 

営業損益対比(億円)           
  2014/3 2015/3     2015/3 2016/3 増減 2017/3予
基礎化学 -109 -4 エネルギー・
機能材料
8 -20 -28 60
石油化学 49 212 石油化学 208 288 80 170
情報電子化学 349 324 情報電子化学 324 247 -77 170
健康・農業関連 382 569 健康・農業関連 561 775 214 650
医薬品 471 290 医薬品 290 427 137 430
その他 84 157 その他 157 78 -79 70
全社 -218 -275 全社 -274 -150 124 -150
合計 1,008 1,273   1,273 1,644 370 1,400

  セグメント変更

  旧 基礎化学 旧 石油化学
エネルギー・機能材料 アルミナ製品、アルミニウム、機能性材料、
添加剤、染料等
合成ゴム
石油化学 無機薬品、合繊原料、有機薬品、
メタアクリル等
合成ゴム以外

石油化学:千葉工場の石油化学事業再構築やPetroRabighの定期修繕等の影響により 売上減となったが、
        (前期 9,323億円、当期 6,571億円、増減 -2,752億円)
       交易条件の改善や一時的なライセンス収入により、増益

情報電子化学:販売価格下落で減益
健康・農業関連:増収と円安で増益
医薬品:米国の増収と円安による増益が大きい。

特別損益の状況は下記の通りで、事業構造改善費用の減少が大きい。

2014/3 2015/3 2016/3
投資有価証券売却益 34 41 158
固定資産売却益   162  
減損損失 -218 -333 -247
事業構造改善費用 -106 -322 -48
投資有価証券評価損 -15    
その他 56 45  
合計 -249 -407 -136

このうち、 減損損失は以下の通り。

(2015/3  333億円)  
英国 EL材料、デバイス 126
新居浜 アルミナ 64
新居浜 医薬品(撤去) 52
韓国 サファイア基板 48
韓国 ダッチセンターパネル 16
   
(2016/3  247億円)  
シンガポール S-SBR 85
ポーランド ディーゼル・パティキュレート・フィルター 82
シンガポール メタアクリル 54


大日本住友製薬の業績は次の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 3,877 421 406 201 9.0 9.0
2015/3 3,714 233 233 154 9.0 9.0
2016/3 4,032 369 352 247 9.0 9.0
前年比 318 137 119 93 - -
2017/3予 4,100 400 400 250 9.0 9.0

日本では、後発医薬品の使用促進による大幅減収で減益
北米では、「ラツーダ」や抗てんかん剤「アプティオム」の売上が拡大、円安の影響もあり、大幅な増収増益
 


2016/5/20    主要企業の2016年3月決算 − 三井化学、東ソー、旭化成  

3.三井化学

ナフサ価格低下に伴う販売価格下落などで減収となったが、営業損益は増益となった。

しかし、減損損失により当期損益はほぼ前期並みとなった。

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 15,660 249 225 -331 -251 3.0 0.0
2015/3 15,501 420 444 -86 173 2.0 3.0
2016/3 13,439 709 632 -219 230 4.0 4.0
前年比 -2,062 289 188 -133 57 2.0 1.0
2017/3予 12,500 700 620   360 4.0 5.0

営業損益は下記の通り。

  15/3 16/3 増減 内訳 -   16/3 17/3予 増減
数量差 交易条件 固定費他
石化 216 393 177 30 132 15 基盤素材 10 40 30
ウレタン -35 -85 -50 -6 -50 6
基礎化学品 -79 -37 42 -6 30 18 モビリティ 449 390 -59
機能樹脂 187 262 75 6 76 -7
ヘルスケア 91 107 16 21 13 -18 ヘルスケア 116 150 34
フード&パッケージング 91 139 48 21 25 2 フード&パッケージング 203 200 -3
その他 9 -1 -10     -10 その他 -69 -80 -11
全社 -60 -69 -9     -9
合計 420 709 289 66 226 -3 合計 709 700 -9

石化:堅調な国内需要、交易条件(為替の影響を含む)で増益
基礎化学品:これまで進めてきた事業再構築の効果で赤字減少
ウレタン:市況悪化の影響で赤字増
機能樹脂:円安効果と需要拡大への適格な対応で増益
ヘルスケア:固定費増はあったが、増販効果で増益
フード:販売拡大、交易条件改善

来期よりセグメント変更

特別損益は下記の通り。(億円)

    2015/3 2016/3 増減
特別利益 資産売却益 23 51 28
事業譲渡益 - 37 37
合計 23 88 65
特別損失 固定資産処分・売却損 45 56 11
減損損失 53 241 188
その他 11 10 -1
合計 109 307 198
特別損益 -86 -219 -133

減損損失には、2013年にドイツのHeraeus Holdingsから有利子負債を含め約543億円で買収した歯科材料事業 Heraeus Dental のノレンの減損195億円を含む。

北米地域での低迷や、急速なデジタル技工市場のトレンド変化のため、当初の利益計画から遅れが出たため。

2013/4/10  三井化学、歯科材料事業を543億円で買収 

ーーー

4.東ソー

ナフサ価格等の下落に伴う売価の下落で売上高は減収となったが、販売数量増加や原燃料安等を背景とした交易条件の改善等により営業損益は増益となった。

税引前損益では前期を上回ったが、前期には、日本ポリウレタン工業との合併で、同社から引き継ぐ繰越欠損金等の一時差異に係る繰延税金資産の計上等による税金費用の減少240億円があったため、当期損益ではほぼその分が減益となった。
 

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 税引前 税金 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 7,723 416 495 -20 475 175 296 3.0 3.0
2015/3 8,097 514 602 -12 590 -240
197
623 5.0 5.0
2016/3 7,537 694 658 -39 619 200 397 7.0 7.0
前年比 -559 180 56 -27 29 -243 -226 2.0 2.0
2017/3予 7,200 720 720       470 7.5 7.5

 

営業損益は下記の通り。

 

  14/3 15/3 16/3 増減

内訳

- 17/3予想
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 148 69 116 47 14 7 26 150
クロルアルカリ 39 83 180 97 44 27 26 190
機能商品 192 300 327 27 21 38 -31 319
エンジニアリング 13 33 46 12 12 0 0 37
その他 24 28 26 -3 -3 0 1 24
合計 416 514 694 180 87 72 22 720

 

ーーー

5. 旭化成

ケミカル事業で石油化学製品の市況が下落したことなどから、売上高は前期比マイナスとなったが、住宅事業やクリティカルケア事業が好調に推移したことなどから、営業利益は前期比増益となり、3期連続で過去最高を更新した。

しかし、営業外損益で15/3は為替差益が52億円、持分法投資利益が17億円であったのに対し、16/3は為替差損が37億円、持分法投資損失が9億円と逆転し、経常損益はマイナスとなった。

特別損益の赤字が大きく、当期損益は前年比で減益となった。

問題の杭工事に関しては、現時点では影響額を合理的に見積もることは困難として、施工データの流用等の調査等に要した費用 15億円のみを計上している。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 18,978 1,433 1,429 210 1,013 7.0 10.0
2015/3 19,864 1,579 1,665 -81 1,057 9.0 10.0
2016/3 19,409 1,652 1,614 -150 918 10.0 10.0
前年比 -455 73 -52 -69 -139 1.0 0.0
2017/3予 19,100 1,450 1,430   920 10.0 10.0

 

営業損益は下記の通り。

 

  14/3 15/3 16/3 増減

内訳

-   16/3 17/3予
数量差 売値差 コスト差
ケミカル 389 542 553 11 -26 -934 971 マテリアル 792 700
繊維 86 105 137 32 13 -10 29
エレクトロニクス 142 143 69 -74 49 -1 -121
住宅 630 592 654 62 19 40 3 住宅 710 650
建材 55 41 58 18 -10 1 26
医薬・医療 303 267 243 -24 -11 -13   ヘルスケア 362 285
クリティカルケア -35 41 119 78 148 -9 -61
その他 17 9 6 -4 9   -13 その他 38 40
全社 -153 -161 -187 -25     -25 全社 -250 -225
合計 1,432 1,579 1,652 73 191 -926 808 合計 1,652 1,450

旭化成は米国Zoll Medical と、AED(自動体外式除細動器)の日本における独占的販売に関する契約を締結し、クリティカルケア(救命救急医療)分野へ事業展開している。


特別損益は下記の通り。

    2015/3 2016/3 増減  
特別利益 有価証券売却益 28 83 55 政策保有株式の見直しの一環
固定資産売却益 4 9 5  
合計 31 92 61  
特別損失 投資有価証券評価損 11 4 -7  
減損損失 13 35 22  
固定資産処分損 47 52 5  
事業構造改善費 40 36 -4  
訴訟和解金 12 12  
杭工事関連損失 15 15

施工データの流用等の調査等に要した費用のみ。
これ以外は現時点では影響額を合理的に見積もることは困難

共同販売契約終了損 53 53 久光製薬との過活動膀胱治療剤の共同販売契約終了
統合関連費用 15 15 組織再編
特別退職金 20 20 Polypore International 買収後、一部幹部が退任
その他 1 -1  
合計 112 242 131  
特別損益 -81 -150 -69  

 


2016/5/21 主要企業の2016年3月決算 ー 信越化学 

6. 信越化学

営業損益は2010年3月期から連続増益となった。
しかし、過去最高の2008年3月期の2,871億円には及ばない。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2014/3 11,658 1,738 1,806 1,136 50 50
2015/3 12,555 1,853 1,980 1,286 50 50
2016/3 12,798 2,085 2,200 1,488 55 55
前年比 243 232 220 202 5 5
2017/3予

未定

営業損益推移 (単位:億円)

  14/3 15/3 16/3 増減
塩ビ・化成品 602 503 447 -56
シリコーン 318 334 415 81
機能性化学品 128 153 182 29
半導体シリコン 245 356 469 113
電子・機能材料 410 462 515 52
その他 37 48 56 8
全社 -0 -3 1 4
合計 1,738 1,853 2,085 232

塩ビについてはShintech が減益となった。(後述)
シリコーン、半導体シリコン、電子・機能材料は好調。

Shintech の業績は下記の通りで、2012年に急回復し、2013年も増益となったが、2014年、2015年と減益となっている。
最近は円安の影響が大きいが、円ベースでも減益である。

決算を公表している米国の企業の業績は下記の通り。

北米需要は業界全体で前年比3%低減し、Westlakeによると平均売価は前年比18.9%下落した。
そのなかでShintech は世界中の顧客に積極販売を行ったが、過去最高益となった2013年の水準には達しなかった。

元 Georgia Gulf のAxiall Corp.は、ノレン減損 847.8百万ドルを計上したが、これを除いたベースではShintech の損益推移に類似している。

なお、Westlakeは本年に入り、Axiallの買収を提案したが、拒否された。

2016/2/4 Westlake Chemical、Axiall に14億ドルでの買収を提案、拒否される 
 

その中でWestlakeは増益に転じているが、これには次の要因がある。

1)Westlake Chemical は2014年6月28日、投資会社のAdvent International からドイツを拠点とする塩ビメーカーVinnolit Holdings GmbH とその子会社を490百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。同年7月31日に 取引が完了した。 

ドイツと英国に6つの工場を持ち、能力は苛性ソーダが475千トン(100%)、VCMが665千トン、PVCが780千トンとなっている。2013年の売上高は917百万ユーロであった。

2014/6/3   Westlake Chemical、欧州の塩ビメーカー Vinnolit を買収

2015年はこれがフルに寄与した。

2) Calvert Cityのエチレン原料転換が完成、エチレン増産、Geismarのクロルアルカリ増産

  2012/10/10  
Westlake Chemical、エチレン原料をプロパンからエタンに変更

Shintech も2013年に電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定、2014年4月にはエチレンを生産する工場の建設許可をルイジアナ州の環境庁に申請した。

同社の能力は次のとおりとなる。(万トン)

立地 PVC VCM カ性ソーダ エチレン
Texas州 Freeport  145   −   −  
Louisiana州 Addis   58   −   −  
Plaquemine   60   160  106  
今回増設 32 30 20 50
合計  295  190   126 50
増設完成時期 2015/下 2016/上
& 2017/上
  2018/上

これらが完成すれば、Shintechの損益基盤はさらに強化される。


2016/5/23   Bayer、Monsantoに買収提案

Monsanto は5月18日、Bayer から買収提案を受けたと発表した。Bayer も5月19日、Monsanto と買収へ向けた交渉をしていると発表した。
買収額は400億ドルを上回る可能性がある。

Bayer は発表文で、最近、幹部がMonsanto幹部に会い、買収することで交渉したことを認めた。買収で生命科学の技術革新を促し、世界をリードする農業関連事業を創造できると強調している。一方、Monsantoは取締役会がBayerの提案内容を吟味していると述べた。

なお、下記の通り、BASFはDowに対抗してDuPont の買収を検討していたが、今回、Monsantoの買収に動く可能性がある。

付記

Bayerは5月23日、Monsantoへの提案の内容を公表した。

1株当たり122米ドル、総額620億ドルで買収
これは5月9日の終値に37%のプレミアムとなる。

3年後のシナジーを年間約15億ドルと見込む。

Monsanto は5月24日、下記の発表を行った。

取締役会は満場一致で、Bayer の提案は不完全で適切なものではないと看做した。しかし株主の最大利益が得られるかどうかをみるため、引き続き交渉を行う。

ーーー

農薬・種子業界では、昨年12月にDow Chemical と DuPont が経営統合で合意した。両社の農薬・種子事業を統合するとMonsantoを上回り、業界トップに躍り出る公算となった。

Dow Chemical と DuPontは2015年12月11日、対等で経営統合すると発表した。 それぞれの取締役会が満場一致で賛成した。

統合会社の社名はDowDupont で、統合後に無税スピンオフで Agriculture、Material Science、Specialty Products の3つの会社に分離し、それぞれ上場する。

2015/12/14   Dow と DuPont、経営統合を発表

しかし、この合意の前に BASFが数週間にわたりDowに対抗してDuPont の買収を検討していることが判明した。
正式なオファーはしていないが、DuPontに打診を行っている。

BASF は除草剤、殺虫剤、その他農薬ではSyngenta とBayer に次ぐ世界第三位で、DuPontを買収すれば、Bayer に並ぶ。

DuPontは1999年に種子会社のPioneer Hi-Bredを買収した。
BASFは種子事業を持っておらず、もしDuPontを買収できれば、農業科学分野でのギャップを埋めることが出来るとともに、Monsantoに次ぐ世界第二位のメーカーとなる。

2016/3/7 BASF、DuPontの全部又は一部の買収を検討 

 

Monsanto は2015年にスイスの農薬・種子メーカー Syngentaの株式を1株449スイスフラン、総額450億米ドルで買収する提案を行ったが、Syngentaは5月8日、取締役会はいろいろな観点から十分に検討したうえで満場一致で拒否することを決めたと発表した。

Monsantoの提案額はSyngenta の価値を過小評価しており、また、多くの国で行われる独禁法等によるチェックのリスクを過小評価しているとした。

8月18日にMonsantoは新しい提案をしたが、Syntentaは拒否した。

2015/5/12  Syngenta、Monsantoによる買収提案を拒否

その Syngentaは本年2月3日、中国の化学メーカー、中国化工集団(ChemChina)が同社を430億ドル余りで買収する提案をしたと発表した。

Syngentaの取締役会は満場一致で受け入れを支持した。TOBは数週間のうちに開始され、年末に買収が完了する見込み。

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収 

ーーー

農薬関係のトップメーカーの2015年の売上高は下記の通り。
  (百万米ドル、1ユーロ=1.12米ドル換算、1米ドル=110円換算)
多くの企業が2015年は減収となっている。

    2014 2015
Dow Agricultural Sciences 7,290 6,381
DuPont Agriculture 11,296 9,798
DowDupont Agriculture 18,586 16,179
 
Syngenta :中国化工集団(ChemChina)が買収 15,134 13,411
 
Bayer CropScience 10,633 11,611
 
Monsanto Agricultural Productivity 5,115 4,758
Seeds & Genomics 10,740 10,243
全社 15,855 15,001
 
Bayer + Monsanto 26,488 26,612
       
BASF Agricultural Solutions 6,110 6,518
       
住友化学 健康・農業関連 3,140 3,264
       
FMC Agriculturral Solutions 2,174 2,253
Cheminova合併フルベース 3,400 2,615

FMCは2015年4月21日、デンマークのAuriga Industries A/Sの完全子会社で農薬会社のCheminova A/Sの負債の継承も含めて総額約18億ドルの買収を完了したと発表した。
2014年9月8日に合併合意文書への調印を発表したが、今回すべての必要条件と規制認可を満たした。
2015年売上高には合併後のものだけを含む。


2016/5/24 住友化学、飼料添加物メチオニンの生産能力増強 

住友化学は5月19日、旺盛な需要に対応するため、愛媛工場に、飼料添加物メチオニンの製造設備1系列を増強すると発表した。

増強規模は年産約10 万トンで、増設後の能力は既存設備15万トンとあわせ年産約25 万トンになる。2018年半ば完成を予定。

メチオニンは、動物の体内で合成することができない必須アミノ酸の一種で、鶏肉や鶏卵の生産性向上を目的に、飼料添加物として広く使用されている。

メチオニン市場は、現在全世界で約110 万トンといわれ、6%程度の成長をしており、今後も同程度での成長が期待されている。

付記 

住友化学は2016年11月30日、伊藤忠商事との間で愛媛工場の新系列で生産するメチオニンに関し、販売提携に向けて相互に検討することで基本合意したと発表した。
新系列のメチオニン(年産10万トン)のサプライチェーン支援を中心とした新設の販売支援会社への伊藤忠による一部出資に加えて、新系列で生産されるメチオニンの一部を伊藤忠経由で販売していくもの。

伊藤忠は、アジアにおけるメチオニンの最大需要家の一つであるCharoen Pokphand グループと業務・資本提携し強固な関係を築いているほか、世界的な販売ネットワークを有し、メチオニン販売を行う上での強みを有している。

 2014/7/26 伊藤忠、タイのチャロン・ポカパングループと資本・業務提携  

日揮は12月1日、住友化学のメチオニン増設工事を受注したと発表した。納期は2018年半ば。

付記

住友化学は2018年10月4日、愛媛工場において、飼料添加物メチオニン製造設備1系列の建設工事を完了し、竣工式を行った。 試運転を経て、まもなく商業生産を開始する。

メチオニン市場は、足元年率6%程度で成長しており、引き続き同程度での伸びが期待されている。 今回新設した1系列の生産規模は年産約10万トンで、増強後の生産能力は既存設備と合わせて 年産約25万トンになる。

 

付記  

住友化学は2019年10月1日、飼料添加物メチオニン事業において、1966年に愛媛工場で生産を開始して以降、順次増強してきたプラントの内、生産効率の低い旧式のプラントについては本年9月末をもって停止し、コスト優位性のある他のプラントも必要に応じた生産体制の見直しにより、競争力を強化すると発表した。

同社は年産10万トンの新系列を2018年10月に完工した。既存設備は合計で15万トン。

今回、操業開始から50年以上が経過し、維持・補修費が年々増加するなど生産効率の低いプラントについては本年9月末をもって停止したほか、他の生産プラントも必要に応じた生産体制の見直しを行うことで、競争力のさらなる強化に取り組むこととした。

付記  当初のプラントはアクリロニトリル副生青酸が原料で、第一、第二プラント合計2万トン

ーーー

メチオニンは大手4社で90%以上を占める。
 
    能力 増設計画
Evonik (旧 Degussa) Wesseling、Antwerp、Mobile 430  
シンガポール 150

(2019)  150

合計 580

                150

藍星集団・Adisseo フランス(4)、スペイン(1) 220  
南京 140  
合計 360  
Novus International
(三井物産、日本曹達
米国 320

(2020)      120

住友化学 愛媛 150 (2018)      100
大連住化金港化工 20  
合計 170            100

他に数万トンの能力があり、全体能力は150万トン弱となる。

   
Evonikは50年以上の生産の歴史を持ち、ドイツのWesseling、ベルギーのAntwerp、米国のMobile にプラントを持っている。

Evonik は2014年11月、メチオニンのシンガポール新工場(150千トン)の操業を開始した。
同社は2015年にシンガポールでの増設の検討を開始した。

   
中国の藍星集団は2006年1月にCVC Capital Partners から動物用栄養製品メーカーのAdisseoを買収した。 

AdisseoはCVCがAventis (現在はSanofi Aventis)の動物栄養製品部門を2002年に購入して設立した会社で、メチオニン、ビタミン、飼料用酵素を製造販売している。

藍星集団とフランスの子会社Adisseo Groupは2009年8月、メチオニン工場を南京市に建設する契約を締結した。第一期の能力は7万トンで、2012年下半期の稼動を目指した。
その後、第二期が完成し、現在の南京の能力は14万トンとなっている。

2009/8/27 藍星集団、南京でメチオニン工場建設

   
三井物産と日本曹達は1991年6月、Monsantoから米国のメチオニン系飼料添加物製品(MHAとALIMET)事業を買収し、三井物産 65%、日本曹達  35%出資でNovus International を設立した。

Monsanto は1950年代初めに研究を開始し、MHAの生産を始めた。1979年にALIMETを発売した。

Novusはその後、Monsantoから分離したSolutiaから飼料保存剤事業を買収、現在では多種類のanimal nutrition and health を世界90カ国以上に販売している。

日本曹達は1967年から二本木工場でDL-メチオニンを製造していたが、2006年に事業構造改善策の一環としてメチオニン生産を停止した。
日本化薬は日本曹達にOEM生産を委託して販売していたが、同時に撤退した。

 

三井物産は2016年5月に実施するNovus の増資を全額引き受け、出資比率を80%にする。

三井物産は、特に北米におけるメチオニン製造能力の拡大を成長戦略の要と位置づけ、今回の増資を通じてNovus社の経営基盤を強化しメチオニン事業とその他の飼料添加物事業を成長させるとしている。

2020年をめどに工場を新設し、生産能力を約44万トンに引き上げる。

   
住友化学は愛媛のメチオニン工場の能力を順次引き上げ、現在は15万トンとなっている。今回10万トンの増設を決定した。

住友化学は2009年12月10日、中国大連にメチオニン(2万トン/年)と農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(4千トン/年)を製造販売する合弁会社を設立したと発表した。

社名 大連住化金港化工 Dalian Sumika Jingang Chemicals
場所 遼寧省大連経済技術開発区 
株主 住友化学 80%
大連金港集団 20%  (大連凱飛化学の株主)
設立 2009/10
能力 メチオニン 2万トン (長期的には大規模生産設備への増強も視野)
高機能農業用ハウスフィルム 4000トン
     2016/4にフィルム 10,000トンにアップ

2009/12/15 住友化学、飼料添加物メチオニンを増強、中国で生産

 

 


2016/5/25 主要企業の2016年3月決算 ー 東レ、帝人、積水化学、トクヤマ 


7. 東レ

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2014/3 18,378 1,053 1,106 -129 596 - 5.0
2015/3 20,107 1,235 1,286 -141 710 5.0 6.0
2016/3 21,044 1,545 1,502 -124 901 6.0 7.0
前年比 937 310 216 17 191 1.0 1.0
2017/3予 22,300 1,700 1,700   1,050 7.0 7.0

営業損益:

 

  14/3 15/3 16/3 増減 増減理由 17/3予想
繊維 529 556 689 133 数量差        305
販売価格(石化関連)   -379
販売価格(その他)          46
石化関連原燃料価格        676
営業費                                -116
その他費用差                    -222
差引                                      310

 
710
プラスチック・ケミカル 180 239 294 55 340
情報・通信機器 246 245 262 17 310
炭素繊維複合材料 169 262 361 99 380
環境・エンジニアリング 64 80 96 16 120
ライフサイエンスその他 56 41 31 -10 50
その他 20 19 20 1 20
全社 -212 -207 -207 0 -230
合計 1,053 1,235 1,545 310   1,700

 

特別損益は下記の通り。

    2015/3 2016/3 増減
特別利益 資産売却益 17 56 39
その他 2 4 2
合計 18 60 41
特別損失 固定資産処分 62 61 -1
減損損失 79 91 11
その他 19 32 13
合計 159 183 24
特別損益 -141 -124 17

 

ーーー

8. 帝人

シンガポールのポリカーボネート工場の停止など、過去の構造改善、減損処理が効果を生み、大幅増益となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2014/3 7,844 181 199 -54 84 2.0 2.0
2015/3 7,862 391 424 -493 -81 2.0 2.0
2016/3 7,907 671 603 -147 311 3.0 4.0
前年比 46 280 179 346 392 1.0 2.0
2017/3予 7,750 580 580   360 5.0 5.0

営業損益:

  14/3 15/3 16/3 増減 増減理由 17/3予
高機能繊維・複合材料 57 144 185 41 販売数量差     15
スプレッド差     240
構造改革・コストダウン 55
先行費用ほか         -30
差引                             280
185
電子材料・化成品 -72 34 223 189 135
ヘルスケア 245 248 288 40 300
製品 52 42 53 11 60
その他 17 40 65 25 65
全社 -119 -117 -143 -26 -165
合計 181 391 671 280   580

電子材料・化成品のうち、PCについては、主原料価格の低下、構造改革効果の発現により利益大幅改善
  シンガポール工場停止(2015年12月)により販売構成改善・固定費圧縮を推進
 

特別損益は下記の通り。減損損失と構造改善費用が大幅に減少した。

    2015/3 2016/3 増減
特別利益 減損損失戻入益 1 33 32
その他 9 12 4
合計 10 45 36
特別損失 減損損失 304 76 -228
構造改善費用 168 55 -113
その他 31 63 32
合計 503 193 -310
特別損益 -493 -147 346

減損損失の内訳は下記の通り。

  2015/3 2016/3
電子材料・化成品 シンガポール 96 栃木県 48
岐阜県 60    
ヘルスケア 米国 ノレン等 51 米国 ノレン等 13
その他 原料重合、動力、その他 97   15
合計   304   76

ーーー

9. 積水化学

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2014/3 11,109 825 833 -109 412 11.0 12.0
2015/3 11,127 858 880 -37 530 13.0 14.0
2016/3 10,963 898 812 -33 567 14.0 16.0
前年比 -164 41 -68 5 37 1.0 2.0
2017/3予 10,970 940 880   590 16.0 16.0

営業損益

 

  14/3 15/3 16/3 増減 増減理由 17/3予
住宅 411 413 364 -49 数量・構成 13
売値          -58
原材料     120
為替        32
固定費     -66
合計          41
380
環境・ライフライン 65 13 36 23 100
高機能プラスチックス 361 460 534 74 540
その他 -8 -20 -31 -11 -70
全社 -3 -8 -5 4 -10
合計 825 858 898 41   940

ーーー

10. トクヤマ

営業損益は増益となったが、マレーシアの多結晶シリコン事業で2年連続で多額の減損損失を計上し、当期損益は大幅な赤字を継続した。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2014/3 2,873 203 150 -20 102 3.0 3.0
2015/3 3,021 195 129 -779 -653
2016/3 3,071 231 177 -1,042 -1,006
前年比 50 35 48 -263 -352
2017/3予 3,020 320 270   170

営業損益:

 

  14/3 15/3 16/3 増減 17/3予
化成品 22 51 89 38 100
特殊品 60 41 -12 -53 70
セメント 66 44 58 14 80
ライフアメニティー 48 52 66 14 50
その他 41 60 57 -4 45
全社 -36 -53 -28 25 -25
合計 201 195 231 35 320

 

特別損益

    15/3 16/3
特別利益 固定資産売却益   141
投資有価証券売却益 104 62
その他 2 12
合計 106 215
特別損失 減損損失 761 1,247
(うちマレーシア多結晶シリコン) (749) (1,239)
購入契約損失 109  
その他 15 10
合計 885 1,257
特別損益 -779 -1,042

2014/11/3 トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン計画で特別損失計上 

2016/2/3  トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン事業で再度、減損損失を計上 


2016/5/26  油田サービスの仏テクニップ、米FMCと合併 大手の一角に浮上 
 

フランスの油田サービス会社 Technipは、米同業 FMC Technologies, Inc. と株式交換方式で合併すると発表した。

新会社の社名は TechnipFMC で発表前の株式時価ベースで130億ドルとなる。
Technip株主は1株につき新会社の株を2株与えられ、FMCの株主は1株を与えられる。

原油安を背景に石油会社の支出が急減する中、合併により難局を乗り切る狙いがある。

2015年の売上高は合計で200億ドル、EBITDAは24億ドルとなる。合併により2019年に税引前で少なくとも年間4億ドルのコストエナジーを期待している。

新会社はロンドンを本拠地としながらも、ロンドン、パリ、ヒューストンの3都市にそれぞれに本部を置く複雑な構造となる。ロンドンを本拠地とすることについて、税率の低い国に本社を移すtax inversion が目的ではなく、「両社にとり中立的な場所を選んだ結果」としている。

フランス政府はTechnip 株5.2%を保有しており、同社がフランス国内に強いプレゼンスを維持するよう、長期的に株主としてとどまる見通しという。

ーーー

原油安を受け、今後の石油開発のピッチが鈍化する可能性が強く、油田サービス会社も合併により重複部門を整理する動きが出ている。

1)Halliburton / Baker Hughes

米資源装置・サービス大手のHalliburton Co は2014年11月17日、同業のBaker Hughes Inc を現金と株式で買収すると発表した。買収総額は346億ドルに上る。

売り上げ規模は単純合計でSchlumbergerを上回り業界トップの専業企業となる見通しだが、独禁法上で問題となる可能性がある。
Halliburton はこれを避けるため、75億ドル相当の事業の売却を行うとしていた。

2015/9/1 油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron International を買収

しかし、米司法省の反トラスト局は2016年4月6日、米油田サービス会社2位のHalliburton による 同業3位のBaker Hughes 買収は競争を脅かす恐れがあるとして、Halliburtonを提訴した。米司法省は1年半近くにわたって競争上の問題がないかを審査してきたが、買収は石油探査で使用する23種類の製品・サービスにおいて直接的な競争を失う恐れがあると主張した。
Halliburtonが対策として提案している事業売却案は不十分であると看做した。

Halliburton とBaker Hughes は5月1日、合併を取り止めると発表した。米国や欧州の監督当局からの強い反対に直面していた。
両社は、規制上の承認を得る問題から合意破棄が最善策との結論につながったと述べた。

Halliburton がBaker Hughes に契約解除金35億ドルを支払う。

2016/4/11 米司法省、油田サービス会社2位のHalliburton による 同業3位のBaker Hughes 買収を認めず 

2)Schlumberger / Cameron International

油田サービス業界で2位のHalliburton と3位のBaker Hughes の合併が頓挫した一方で、1位のSchlumberger は掘削機材メーカーのCameron International の買収に成功している。

Schlumberger は2015年8月26日、掘削機材メーカーのCameron International を約127億4000万ドルで買収すると発表した。

Cameron株主は1株につき現金14.44ドルとSchlumbergerの0.716株を受け取り、統合後の会社の約10%を握ることとなる。

こちらについては独禁法上で問題とされず、Schlumbergerは本年4月1日にCameron買収を完了したと発表した。

2015/9/1 油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron International を買収

ーーー

各社の売上高は下記の通り。Technip を除き、2015年は減収となっている。

Technip は報告がユーロ建てのため、ドルに換算

 


2016/5/27  医薬品メーカーの2016年3月期決算 

1.売上高

 

2.営業損益

 

3.税引前損益(IFRS方式) / 経常損益(日本方式)

 

4.株主帰属損益

 

特記事項

1)武田薬品

株主帰属損益は2015/3が -1,458億円、2016/3が802億円となっているが、特別整理と、特別整理前のコア損益は下記の通り。

  2015/3 2016/3
コアP/L 1,767 2,022
     
無形資産償却 -827 -794
無形資産減損 -417 -73
企業買収影響 339 -17
有価証券売却 43 70
遊休不動産売却 208 -18
事業構造再編費用 -224 -188
訴訟関連 -76 -45
アクトス関連訴訟 -1,779 -25
試験研究費税額控除 -427  
税制改正影響 -81 -82
ベネズエラ連結除外   -67
政府補助金等 13 19
(調整合計) (-3,228) (-1,220)
     
財務ベース -1,458 802

2)アステラス製薬

主力の前立腺がん治療薬「イクスタンジ:XTANDI」が伸び、増収増益となった。

そのXTANDIは米国のバイオ医薬品会社のMedivation が開発したもので、アステラス製薬が全世界での開発・商業化に関する契約を締結し ている。

Paris, April 28, 2016 Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies’ shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation’s two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

Paris, April 28, 2016 Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies’ shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation’s two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

製薬大手の仏 Sanofiは4月28日、Medivation Inc. に対し現金での1株52.50ドル、総額93億ドルでの買収提案を行ったと発表したが、Medivationは4月29日、提案はMedivationの価値を低く見ており、同社と株主の利益に反するとしてこれを拒否したと発表した。

Sanofi はこれに対し、引き続き買収の実現を目指すとしており、さらに、AstraZeneca、Pfizer、Novartis AG などが買収の検討を始めたと報じられている。

2016/5/6   米国の製薬会社 Medivation、仏Sanofi の買収提案を拒否

アステラスでは、「ライセンス契約は強固な内容で、今の権利は損なわれない」とするが、条件の再交渉など難しい立場に追い込まれる可能性がある。
また、中央社会保険医療協議会の専門部会で高額の薬の価格見直しが始まったのも懸念材料。

3)第一三共

2015年3月期には非継続事業からの当期利益 2754億円を含む。

ランバクシーがサン・ファーマに吸収合併されたことによる税効果考慮後の子会社合併差益2,787億円(繰延税金負債として815億円計上)
株式交換で取得するサンファーマ株の時価と簿価の差額。

  税引前 税引後
子会社合併差益 3,602億円 2,787億円
合併関連諸費用 50億円 34億円
ランバクシーグループの事業利益 18億円 - 0.5億円
(非継続事業からの当期利益)   2,754億円

2014/4/10 第一三共、ランバクシーを実質売却



2016/5/27   リーマン級危機?

5月26日の伊勢志摩サミットの「世界経済」をテーマにしたセッションで、安倍晋三首相は現状の認識について「参考データ」と題する説明資料を提示した。

エネルギー・食料・素材など商品価格が「リーマン・ショック前後での下落幅である55%と同じ」で、新興国の投資伸び率も「リーマン・ショックより低い水準まで低下」と明記、リーマン級の経済危機再燃を警戒する内容となっている。

安倍首相は、「リーマンショック直前に北海道洞爺湖サミットが行われたが、危機の発生を防ぐことができなかった。その轍は踏みたくない。世界経済はまさに分岐点にあり、政策的対応を誤ると危機に陥るリスクがあることは認識する必要がある」と述べ、世界経済を回復軌道に戻すため、G7の政策協調を呼びかけた。

討議では世界経済の持続的な成長に向けて、機動的に財政戦略を実施し、構造改革を果断に進める重要性で一致したが、一部の首脳から、「危機という表現は強すぎるのではないか」という指摘が出された。

商品価格は IMF Primary Commodity Prices のデータのうち、All Commodity Price Index (2005 = 100) を採用している。
  http://www.imf.org/external/np/res/commod/index.aspx (Monthly Data)

リーマンショック時には、直前の2008/7 の219.90に対し、2009/2は98.16で、7ヶ月で55.4%の下落となった。
これに対し、最近では、2014/6の185.16が2016/1 には 83.05 となり、19ヶ月で55.1%の下落となっている。
下落率は同じだが、今回は時間をかけたもの。

別の資料では、2015年の新興国・途上国の投資伸び率が2008年のリーマン・ショック後の3.8%を下回り、実質2.5%となったことを指摘している。
   
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2016/01/pdf/text.pdf

しかし、この間、輸入は-8.5%から+0.5%にアップ、GDPも+1.7%から+3.4%にアップしている。

また、全世界では様子は異なる。前回は投資伸び率は大きなマイナスだが、今回はプラスである。他の比率も同様。

 

最近の物価の値下がりは、実際には原油価格の下落の影響が大き く、同じIMF統計でNon-Fuel Price Indexは下記の通りとなっている。
最近の物価下落は2014年春からの22ヶ月間の緩やかなもので、下落率も低く、リーマンショック時とは異なる。

これらからみると、いいとこ取りの感がある。

ーーー

首相は消費増税延期の条件について、5月18日の党首討論で、「リーマン・ショックや大震災級の影響のある出来事が起こらない限り予定通り行っていく。適時適切に判断していきたい」と表明している。

今回の説明は、現状がリーマンショック時と同じ状況として消費増税を延期しようとしているのではないかと見られている。

 

付記

本日の池田信夫ブログは次のように述べている。

今回の奇妙な「危機説」が、世界最悪の政府債務を抱える日本が増税を延期するための国内向けの理由づけだとすれば、世界のエコノミストの失笑を買うだけだ。

付記

サミット首脳宣言では、リーマン級危機の表現はない。経済関係の要旨は下記の通り。

G7伊勢志摩首脳宣言(骨子)
   
前文
  世界的な成長は、低成長のリスクが残る中、依然として緩やかであり、かつ、潜在成長力を下回っている。
   
G7伊勢志摩経済イニシアティブ
  強固で、持続可能な、かつ、均衡ある成長に貢献するため、世界経済、移民及び難民、貿易、インフラ、保健、女性、サイバー、腐敗対策、気候、エネルギーの分野でのコミットメントを発展。
   
世界経済
  <世界経済の状況>
  世界経済の回復は継続しているが、成長は引き続き緩やかでばらつきがある。また、前回の会合以降、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている。我々は、新たな危機に陥ることを回避するため、経済の強靭性を強化してきているところ、この目的のため適時に全ての政策対応を行うことにより現在の経済状況に対応するための努力を強化することにコミット。
  <政策的対応>
  各国の状況に配慮しつつ、強固で、持続可能な、かつ、均衡ある成長経路を迅速に達成するため、我々の経済政策による対応を協力して強化すること及びより強力な、かつ、均衡ある政策の組合せを用いることにコミット。
 
債務を持続可能な道筋に乗せていくための取組を継続しつつ、世界的な需要を強化し、供給側の制約に対処するため、全ての政策手段−金融、財政及び構造政策−を個別にまた総合的に用いることにコミット。

3本の矢のアプローチ、すなわち相互補完的な財政、金融及び構造政策の重要な役割を再確認。

財政戦略を機動的に実施し、及び構造政策を果断に進めることに関し、G7が協力して取組を強化することの重要性について合意。

過剰な生産能力は、世界的な影響を有する構造的な課題。

為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対し悪影響を与えに対し悪影響を与え得る。



 



2016/5/28 EU、AB InBev によるSABMiller 買収を承認

EUは5月24日、AB InBev によるSABMiller買収を承認すると発表した。
既に対策として発表されていたSAB Miller の欧州のビール事業の実質的に全ての売却を条件とする。

付記

米国も7月20日、承認した。

付記

AB InBev は2016年7月26日、SAB Miller の買収価格を、これまでの44ポンドから45ポンドに引き上げた。英国のEU離脱選択を受けたポンド安(12%安)に対応するもので最終提案であるとしている。

2015年11月時点の評価では700億ポンド(当時のレートで1,060億ドル)であったが、今回改定で790億ポンドとなるが、 米ドル換算では1,040億ドルで、まだ前回より低い。
このため、一部株主の間で反対する動きが出た。

7月29日、最後の関門であった中国商務部が買収を承認した。
SAB Miller はこの日、AB InBev が提示した案を支持すると発表した。

ーーー

ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)と同2位の英のSAB Millerの取締役会は2015年10月13日、AB InBevによるSAB Miller買収に原則的に合意した。

2015/10/14   ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ   

AB InBev は2015年11月11日、英のSAB Miller を697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。

これに伴い、SAB Millerは保有するMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却する。
Molson Coorsは米国のビール市場でシェアを25%に伸ばし、AB InBev の45%に次ぐ2位に躍進する。

MillerCoorsの売却は、AB InBevがSAB Miller の買収で米当局から承認を得る上で不可欠である。

ーーー

AB InBev は欧州でもCorona やStella Artois (ピルスナータイプのビール)を持つため、欧州で独禁法で問題になるのを恐れた。

このため、AB InBev は2015年12月17日、SABMiller の欧州のブランド、Grolsch ビールとPeroni ビールを売りに出すことを明らかにし、3ヶ月以内の成約を求めた

アサヒビールは2016年2月10日、AB InBev に対し、AB InBevによるSABMillerの買収実行を条件として、SABMillerのイタリア、オランダ、英国事業その他関連資産を取得するための法的拘束力のある最終提案を行ったと発表した。

SABMillerのイタリア、オランダ、英国の事業を構成する会社の全株式と、3ブランドの知的財産権その他関連資産。
ただし、「Peroni」と「Grolsch」は米国・プエルトリコにおけるブランドに係る知的財産権を除く。

買収対象会社 ブランド  
Birra Peroni S.r.l.(伊) 「Peroni」 150年以上の歴史
Royal Grolsch NV(蘭) 「Grolsch」 400年の歴史
Meantime Brewing (英) 「Meantime」 英国のクラフトビールのパイオニア的ブランド
Miller Brands (UK) (英)    

2016/2/16 アサヒビール、英SABMillerの欧州事業の一部を買収 

AB InBev は4月19日、アサヒからの約29億ドルでの買収提案を受け入れた。

今回、EUはアサヒをこれら事業の購入者として承認した。

付記 10月11日 買収手続きを完了

更にAB InBev は4月29日、SABMillerの中東欧事業を売却する意向と発表した。

SABMillerのハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキア、ポーランドの全ての資産を売却する。売却額は50億ドル程度と推定される。
ブランドでは、ポーランドのTyskieとLech、ハンガリーのDreher、ルーマニアのUrsusなど。

これら中東欧の事業は1社または2社に売却される。

付記 東欧5カ国のビール事業は入札手続きを行う計画で、アサヒはこれに応札する方針とされる。(10/10現在)

EUの調査結果は下記の通りで、上記のアサヒへの売却と中東欧事業の売却で解決するとしている。

イタリア、オランダ、英国、ルーマニア、ハンガリーでは合併で重要な競争相手がなくなる。

チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアでは、MillerCoors を通じて、 AB InBevとMolson Coors にリンクが出来、競争がなくなる。

European Economic Area の四大ビールメーカーのうちの2社の合併は価格協定が容易になる。

ーーー

AB InBev によるSABMillerはこれまで、インド、韓国、チリ、コロンビア、メキシコ、アフリカ諸国などで承認を得ている。

米国では上記の通り、MillerCoorsの持株を合弁相手のMolson Coors Brewing への売却で対策をとっている。

中国では、香港の華潤ビール(China Resources Beer)とのJVの華潤雪花ビール(China Resources Snow Breweriesを華潤ビールに売却した。

2016/3/5 SABMiller、華潤雪花ビールを売却 


2016/5/30   武田薬品、カナダのValeant Pharmaceuticalsに買収を提案、拒否される 


武田薬品工業がカナダの製薬大手、Valeant Pharmaceuticalsに買収を提案し、拒否されていたことがわかった。

Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していた。

同社は米国での医薬品値上げで監督当局や政治家から監視の対象となり、数カ月にわたって混乱に見舞われている。

3月15日の米国の株式市場で、Valeantの株価が51%下落した。
業績見通しを下方修正したことや、2015年第4四半期決算が予想を下回ったこと、4月の期限までに年次報告書を提出しなかった場合はデフォルトに陥る恐れがあると明らかにしたことなどが理由。

Valeant は再建対策の一つとしてコアでない資産の売却も検討しており、問い合わせもあるという。

Wall Street Journal (5月26日付)によると、1、2ヶ月前に武田薬品と投資会社TPGから共同での買収提案があった。金額の提示はなかったとされ、Veleantはこれを拒否、その後の話し合いはないという。
武田薬品は、この件に関して「コメントできない」としている。

Valeantは4月25日にライバルのアイルランドの製薬大手 Perrigo Co. のCEOのJoseph Papaを会長・CEOとして迎えることを決めた。
武田の提案はこれ以前とされる。

4月29日に2015年の年次報告書を提出し、デフォルトをひとまず免れた。
これによると、株主帰属純損益は、2014年の+881百万ドルに対し、2015年は-292百万ドルとなっている。

その後、資産家のWarren Buffett が5月初めに、Valeant のビジネスモデルには非常に大きな欠陥があると述べたこともあり、株価は2015年8月の高値から85%余り下落している。

ーーー

Wall Street Journal では、武田薬品の狙いは旅行者下痢症やIBS(過敏性腸症候群)のような胃疾患薬を扱う Salix Pharmaceuticalsではないかという。
ValeantはSalix のIBS薬の Xifaxanに期待しており、本年の売上高を10億ドルとみている。

Valeant は昨年、110億ドルでSalix を買収したが、武田薬品も争奪戦に参加していたとされる。

   2015/3/18   Salix Pharmaceuticals の買収合戦

TPGは傘下にAlder BioPharmaceuticals などの医薬品会社を持ち、アイルランドのEndo International PLC にも出資している。

TPGは2015年5月に、所有するPar Pharmaceutical  をEndo International に売却した。

  2015/5/20 アイルランドの製薬大手 Endo、米の Par Pharmaceutical を買収 

ーーー

ValeantはAllerganの買収も狙ったが、失敗している。

各社の買収合戦の状況は下記の通り。

2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収
   
2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦
   
2015/8/26 Valeant Pharmaceuticals、女性用バイアグラの Sprout Pharmaceuticalsを買収
   
ーーー  
   
2015/11/19 ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手Perrigo のTOBに失敗
   
ーーー  
   
2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦
   
2015/11/26  Pfizer、アイルランドのAllerganを買収
   
2015/7/29 後発薬最大手のTeva、 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
   
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

付記 

米著名投資家のCarl Icahn は5月31日、米製薬大手 Allerganの株式について「大量のポジション」を取得したと自身のホームページに掲載した文書で公表した。取得数や保有率は明らかにしていない。


2016/5/31 ギリシャ追加支援決定 

ユーロ圏諸国の財務相らとIMFは5月25日未明、ギリシャ支援協議で合意に達した。
 

ギリシャは2015年8月、最大860億ユーロの支援でEUと合意、2015年10月までに計260億ユーロを融資することとなり、まず8月の国債償還用に130億ドルが融資され、11月には100億ユーロをギリシャの銀行救済基金へ移し、ギリシャ大手銀行への資金注入を正式承認した。 合計214億ユーロの融資を実行している。

しかし、その後はギリシャ政府の財政再建努力を見極めるため、融資を中断しており、支援継続にはギリシャが更なる改革を行うことが条件となっていた。

ギリシャは7月に多額の債務返済を控え、支援が滞れば財政危機が再燃する恐れもあった。

ギリシャ国会は5月9日未明、EUによる金融支援継続の前提となる財政改革法案を与党の賛成多数で可決した。
債権団の要求に沿って、一部の年金支給額を減らし、複数の年金基金を合併し、社会保障費を増額し、中高所得者層の税率を上げた。

更にギリシャ政府は、2015年7月20日に13%から23%に引き上げたばかりの付加価値税の税率を24%に引き上げるほか、燃料やタバコ、アルコール類の増税などを柱とする新たな財政改革案を議会に提出し、議会は5月22日、賛成153、反対145で可決した。

ギリシャ国民の不満は募っており、デモが頻発している。

これを受け、ユーロ圏諸国の財務相らとIMFは5月25日未明、ギリシャ支援協議で合意に達した。
ギリシャは金融支援第2弾を受けるために必要なことを成し遂げたと発表し、支援策の第1次評価を数カ月遅れで完了した。

ユーロ圏財務相会合議長(オランダ財務相)は「ギリシャが昨年夏に約束した一連の改革を承認することで完全に意見が一致した」と述べた。

ユーロ圏19カ国が正式に追加支援策を承認すれば、ギリシャ向けに総額103億ユーロの融資が数回に分けて実施される。最初の融資75億ユーロは早ければ6月にも実行される。

付記 

欧州安定メカニズム(ESM)は6月21日、ギリシャが改革審査を通過したことを受けて、75億ユーロの融資を実施した。

このうち56億ユーロは欧州中央銀行(ECB)やIMF への支払いに、18億ユーロは延滞していた政府の支払いに充てられる。

融資の金利は0.8%、期間は平均32年間。

残る28億ユーロはギリシャの改革を見極めながら秋に実行する。

付記

ESMは10月25日、28億ユーロの追加融資を承認した。

 

会合では債務軽減策も議論し、現行の第三次金融支援プログラムが終了する2018年時点で、返済期間の延長など抜本的債務軽減策を判断することで合意した。

IMF のラガルド専務理事は2015年7月8日の講演で、EUに対し、「ギリシャのケースでは、財政持続のために債務の再編が必要だ」と述べ、借金の減免や返済期限の延期を促している。

IMFは本年5月23日、ギリシャ財政の再建には債務負担軽減が不可欠だとする報告書を発表した。
ギリシャ財政が危機的状況を脱するには「無条件での債務軽減策」が重要だと指摘、EUなどがギリシャ向け融資の満期、返済猶予期間を延長し、少なくとも2040年まで金利を年1.5%以下に固定する必要があると分析した。

これに対し、2017年に総選挙があるドイツは、ギリシャへの更なる譲歩を避けたいとの思惑でこれに反対し、対立した。

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2015年1月の選挙で反緊縮を訴え、緊縮推進・EUとの合意支持の政権連立与党を破った急進左派連合(チプラス党首)は同じ反緊縮の独立ギリシャ人党と連立政府を樹立した。

しかし、チプラス首相はEUの金融支援と引き換えに、公約に反して緊縮策を受け入れた。

 合意された財政改革内容

黒字目標   2015〜18年に各1%、2%、3%、3.5%の黒字化
歳入 付加価値税 増税(1323%)、離島優遇税撤廃
法人税 2016年から増税(2628%)
歳出 雇用/年金 早期退職制度縮小/年金受給開始年齢引き上げ(67歳)
年金削減(GDPの1%分)
防衛費 2015年 1億ユーロ、16年 2億ユーロ削減
預金保護   破綻時預金保護上限設定(10万ユーロ)
民営化基金   国有財産(500億ユーロ)の民営化などによる売却

このため、与党内で造反の動きが続出し、2015年8月14日の財政改革法案(EU側からの金融支援の条件)では与党から多数の反対が出た。
野党は、「ギリシャ共産党」と「黄金の夜明け」(合計 32人)を除くと、緊縮派のため全員が賛成し、法案は成立した。

ユーロ圏財務相会合は同日、ギリシャに対し3年間で最大860億ユーロの新たな金融支援を行うことで正式に合意した。

ドイツなど関係国の議会での承認手続きを経て、「欧州安定メカニズム(ESM)」から、まずは10月までに計260億ユーロを融資する予定。
8月20日に欧州中央銀行が保有する約32億ユーロのギリシャ国債の償還期限を迎えることから、先行して130億ユーロを同日までに融資、残りの130億ユーロのうち、100億ユーロは銀行の資本増強にあてる計画。

チプラス首相は8月20日夜にテレビを通じて演説し、辞任して、総選挙を行うと表明した。改めて信任を問うもの。 

9月20日に投票、開票が行われ、チプラス首相は信任された。

2015/9/24 ギリシャ総選挙でチプラス首相信任 

ギリシャ議会は11月19日、債権団の要求に応じ、住宅ローン滞納者の保護基準引き下げなどを柱とする財政構造改革法案を可決した。
ユーロ圏はESMの管理下にある100億ユーロをギリシャの銀行救済基金へ移し、11月23日にギリシャ大手銀行への資金注入を正式承認した。


国有財産の売却の一環として、
ギリシャは2016年4月8日、アテネ近郊にある同国最大のピレウス港の売買契約を中国海運大手の中国遠洋運輸集団(China COSCO Holding)との間で締結した。

2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却 

 



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