東山篤規・立命館大教授と足立浩平・大阪大教授が「知覚賞」を受賞した。日本人の受賞は10年連続となる。

受賞テーマは、前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、実際より小さく見える「股のぞき効果」である。
実験心理学が専門の東山教授が主に研究を行い、足立教授が統計分析に協力して、2006年に専門誌に論文を発表した。

股のぞきをして景色を見ると、天地が逆さまになり、直立した姿勢で見た時より平らで奥行きが少ない印象を受ける。

計90人に股のぞきなどをしてもらい、離れた位置に置いた目印(三角形の板)の見かけの大きさや距離を当ててもらう実験を繰り返した。

その結果、股のぞきをすると、直立して見るより目印が小さく、遠くの目印が手前にあるように感じる錯視の効果が確認できた。

「逆さ眼鏡」をかけて股のぞきをすると、見える景色は直立した姿勢と同じになるが、その場合も、同じような錯視が起きていた。

錯視が起きる原因に、前かがみの姿勢が深く関係していることも示した。

姿勢などの体感が視覚に直接影響する証拠の一つという。
「人間は、歩き始めると、直立した状態でモノを見るので、直立した状態の体の位置が、周りの空間を見るときの基準となっているのではないか」としている。

 

他の受賞は下記の通り。
 
生殖賞 ポリエステル、綿、ウールのズボン着用がラットの性生活に与える効果の研究 
ズボンの材料

100% polyester
50/50% polyester/cotton
all cotton
all wool.
 

綿やウールの場合は比較的正常だが、ポリエステルの場合の性行動は “significantly lower”。 多分、材料の帯電のせいか?

人間の男性にも同様のテストを実施。
 

経済学賞 「営業およびマーケティングの視点から石のブランドパーソナリティを評価」

「ブランドパーソナリティ」は、製品のブランドに「健全」や「若さ」、「知性」など、人格的な属性を付与する考え方に対するマーケティング用語。

いろんな石の写真を学生に見せ、どう見えるかを聞いた。

答えの例。

石 G :ニューヨークタイプのビジネスマンで、黒いブリーフケースを持ち、・・・・
石 I  :ジプシーかヒッピーというものや、リベラルで魅力的な30歳代半ばの女性とするものなど。

 

物理学賞

偏光2件

@ 白馬がアブに刺され難い理由

アブは獲物を探すために皮膚からの偏光を使うため、白馬よりも黒馬や茶毛の馬に魅かれる。

A トンボが黒い墓石に引き付けられる理由

ハンガリーの墓地で、餌はどこにもいないのに、トンボが黒い磨かれた墓石の上で時間を過ごしている。雌は墓石のうえに卵を産みさえする。
昆虫は水辺の巣を探すのに水面に光る偏光を探す。

化学賞 自動車の排ガステストの際に、自動的に、電気機械的に排ガス量を減らし、自動車の排ガス 公害問題を解決した。

排ガス不正を摘発されたVolkswagen が受賞した。
 

医学賞

腕にかゆみを与える薬品を注射して、鏡を見て、かゆい方の腕を掻かせるテスト。

右腕がかゆい場合、鏡に映った右腕(実際にはかゆくない左腕)をかいた場合も、かゆみが直ることが分かった。
脳が右腕をかいていると錯覚するため。

心理学賞 千人の嘘つきに、何回嘘をついたかを聞き、その答えが本当かどうかを検証。

人間は幼児から成長するにつれ、次第に多くの嘘をつくようになり、思春期にピークになる。大人は通常1日2回嘘をつく。例外はあるが、齢をとると嘘は減る。
嘘つきは自分に対しても嘘をつき続ける。
 

平和賞 論文「あたかも意義深く聞こえるデタラメな言葉の受容と検知」

名言や、名言を一部変えて出鱈目な表現にしたものを学生に示し、どう反応するかを調べた。
 

生物学賞

野生動物を理解するための2つの実験

@人間以外の動物の世界観を理解するため、アナグマ、カワウソ、キツネ、鳥 と同じ野生の生活を体験
  ・アナグマとして昼間は寝て、夜中、食料のみみずを探して森を四つ這いで歩き回った。
  ・都市のキツネとして、ゴミをあさり、庭で寝た。

A 象の真似をしたかったが、危険なのでヤギの真似をした。
  特製の義肢をつけ、訓練した後、3日間 スイスアルプスでヤギと暮らし、草を食べ、群れに入り込もうとした。
  階級制度の群れのなかで友達をつくることが重要だと分かった。
 

文学賞 離島で、死んだハエ、まだ死んでいないハエを 収集する喜びを記した 3巻もの自伝。