中小零細企業、農業、貧困対策向けの融資を拡大した銀行が対象となる。10月の共産党大会を控え、習近平指導部が社会的弱者に配慮する姿勢を訴える狙いとみられる。
大手金融機関の標準の預金準備率は現在17%だが、中小零細などへの貸出残高(またはその増加額)が、全体の貸出残高(同)に占める比率が2017年に1.5%になった銀行は0.5%、10%に達した銀行は1.5%それぞれ準備率を下げる。2017年通年の実績で下げ幅を決める。
四大国有銀行など大手や中堅銀行はすべて、地方銀行は全体の9割が準備率下げの対象になると見られ、事実上の金融緩和ともいえる。
人民銀行は2016年3月に準備率を下げて以来、金利、準備率ともに据え置いている。
預金金利は1年定期のもの
中国は、シャドーバンキングの膨張に歯止めをかけ、金融部門の潜在的なリスクの芽を摘むため、2017年初からは短期金融市場の金利を高めに誘導し、引き締め気味に金融政策を運営している。
今回の措置が金融緩和と受け取られると、いったん収まった人民元安が再燃する恐れもあるため、人民銀行は「金融緩和ではない」とわざわざ強調した。
2017/10/9 武田薬品、Entrepreneurship Venture Programで2社目を設立
武田薬品は10月2日、Entrepreneurship Venture Programにより2社目のバイオテク企業、 ChromaJean を湘南研究所に設立したと発表した。
Entrepreneurship Venture Program は、武田薬品の研究アセット、技術を用い、武田薬品で働く研究者自らが起業することをサポートするプログラム。
武田薬品内におけるアントレプレナーシップを奨励し、ベンチャー企業の独立運営を支援するだけでなく、アントレプレナーシップの育成に貢献することで、日本の創薬エコシステム醸成にも寄与することを期待する。
ChromaJeanの設立に際しては、同社で培われた資産や技術が初期運転資金と共に提供され、さらに新会社は湘南研究所における実験機器やオフィススペースなど、必要な研究サービスを利用することができる。
このProgramでの第1号は SEEDSUPPLY で2017年5月15日に設立された。(発表は8月1日)
両社の概要は次の通り。
1) SEEDSUPPLY
事業:医農薬品の研究・開発ならびにそれらの受託およびコンサルティング業務
既存のハイスループットスクリーニング技術では対応できない創薬ターゲットを対象にした化合物探索や標的分子が不明な化合物の結合蛋白質探索に威力を発揮する。低分子化合物の新しい可能性を追求していきたいとしている。
サービス:
結合化合物探索:
武田薬品が保有する化合物ライブラリを用いて結合を指標にしたハイスループットスクリーニングを行う。
精製蛋白質だけでなく、膜画分、ミクロソーム画分等も用いることができるので、あらゆるターゲットに対応できる。
結合蛋白質探索:標的が未知な化合物に結合する蛋白質を当社が有する蛋白質ライブラリからスクリーニングを行う。
Drug discovery
既存のハイスループットスクリーニング技術では対応できない創薬ターゲットに特化し、独創的な新薬候補化合物の創製に挑戦する。
2) ChromaJean
最適な分離・精製条件をすばやく見出す独自のアルゴリズムと、効率化を可能にするクロマトグラフィー技術を組み合わせ、以下の事業展開を通して前臨床および早期開発ステージにある医薬品の研究開発に貢献する。
1. 受託試験サービスキラル化合物を含む種々の化合物に対して、迅速かつ非常に高い成功確率で分離・分析を達成できるようにChromaJeanが開発し、標準化した独自のクロマトグラフィー技術を提供2. 新規クロマトグラフィー技術の開発アカデミアや研究機器メーカーと協業し、ChromaJeanの技術を基にした新規技術の開発3. 国内外の創薬関連企業におけるクロマトグラフィー・プラットフォームの構築支援サービス今後構築するフランチャイズネットワークを通じた、ChromaJeanの技術を様々な研究活動において活用するためのクロマトグラフィー・プラットフォームの構築支援サービスの提供
クロマトグラフィー技術は、研究プロセスにおいて必要不可欠な技術であり、様々な研究部門で使用されているにも関わらず、作業者の経験と勘に依存しているために個人差が大きい。ChromaJeanは、武田薬品において培った専門性を活かし、分離条件探索から精製完了にいたるまでの各ステップの標準化・自動化に成功した。
さらに武田薬品が長年蓄積してきた独自のノウハウを組み合わせることにより、高速化、省コスト化および個人差の排除を実現するとともに、非常に成功確率の高い技術となっている。
2017/10/11 認知症の35%は予防可能
10月8日付日本経済新聞は、掲記のタイトルで、英 University College LondonのGill Livingston 教授とのインタビューを掲載している。
英医学誌 Lancet の認知症(Dementia)に関する国際委員会が7月20日付で同誌に論文“Dementia prevention, intervention, and care” を発表して話題となった。Livingston教授はこの研究を主導した。
概要は以下の通り。
2015年時点で世界に約4700万人と推定されており、2050年に約3倍の1億3100万人になると予測されている。
世界の経済的な負担は2015年時点で8,180億ドル。2050年には2兆ドルを超える見込み。研究で分かった認知症の最も大きな要因は、中年期(45〜65歳)の聴力低下で全体の9%を占めた。中年で耳が遠くなると、9〜17年後に認知症になる例が増える傾向がある。
次は中等教育(12〜14歳)の未修了が8%にのぼる。教育を受けることで、脳を活性化して認知機能を高めると同時に、食物に気を使ったり運動をしたりして健康に気を配るからだ 。このほか中年での肥満、高血圧、65歳以上の高齢期での喫煙、うつ、活動量の低下、社会的な孤立、糖尿病が十分証拠があるリスク要因だった。
これら9つの要因を改善すれば、認知症の3分の1を防ぐことができる。遺伝的な要因は7%にすぎなかった 。
米、英、スウェーデン、オランダなどでこのようなリスク要因を改善し、生活習慣を変えると、認知症が減るという報告がすでにある。その大部分は教育によるものだ 。
論文概要 http://www.thelancet.com/commissions/dementia2017
論文全文 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31363-6/fulltext
論文では認知症のリスク ファクターを次の通りとしている。
時期 要素 原因比率 %
予防不可 予防可能 生まれつき 遺伝 7% アポリポ蛋白E (ApoE) ε4 allele (下記) 若年期
(12〜14歳)中等教育未終了 8% 脳を活性化して認知機能を高める。
健康に気を配る。(食物や運動)中年期
(45〜65歳)聴力低下 9% 高血圧 2% 肥満 1% 高齢期
(65歳以上)喫煙 5% 鬱 (depression) 4% 活動量の低下 3% 社会的な孤立 2% 糖尿病 1% その他 58% 合計 65% 35% アポリポ蛋白E(ApoE)主として肝細胞で産生され、全身の他の臓器へのコレステロールや脂肪酸の運搬に関与している。
ApoE遺伝子にはε2、ε3、ε4の3つの対立遺伝子(allele )がある。
ApoE ε3は正常型(Wild Type)
ApoE ε4はアルツハイマー病の危険因子と見なされている。
ApoE ε2は受容体との結合力が低く、高脂血症の原因となる。
教授は、「日本の研究報告はなかったが、日本でも栄養バランスの改善や、高血圧や聴力低下の防止、持続的な運動によって、認知症になる人を減らせると思う」と述べ、「認知症の新薬開発は今のところ、うまくいっていないし、まだ時間がかかる。予防で認知症を減らす方が、医療コストの削減につながる」
としている。
なお、Dementiaの語源はラテン語の「demens」で、「mens」がmind(心、精神)の意味であることから、out of mind の意味となる。
General Electric は10月9日、物言う株主(activist)で知られるTrian Fund Management, L.P.の設立パートナーの一人で最高投資責任者(Chief Investment Officer)のEd Gardenが同日付で取締役に就任したと発表した。
Ed GardenはTrian Fund Managementを率いるNelson Peltz の右腕にして義理の息子であり、何年にもわたって多数の企業の取締役を歴任し、経験を積んでいる。
取締役就任に当たりEd Gardenは、「他の投資家と同様にGEの株価には失望している。しかし、GEは長期な投資対象としてかなり上昇余地があると信じている」との声明を出した。
一方、Trian Fund ManagementのNelson Peltzから取締役の席を求められていたProcter & Gambleは、委任状争奪戦の結果、とりあえず拒否した。
ーーー
GEは6月12日、GE Healthcareの社長John Flannery (55歳)が8月1日付でGEのCEOになり、2018年1月1日付で会長兼CEOになると発表した。Jeff Bornstein CFOが副会長になる。
GEは10月6日、副会長に昇格したばかりのJeff Bornsteinが2017年12月末で退社すると発表した。更に、Immelt 会長を支えてきた勤続39年のJohn Rice副会長と勤続27年のBeth Comstock副会長も退任する。
Flannery CEO とライバル関係にある人物は事実上GE本体からいなくなる。
Jeff Immelt 会長兼CEO (61歳)は2017年12月31日の引退まで会長にとどまる。
Immelt 会長兼CEOはGEの大改革を成し遂げたが、株価が上がらないのが問題とされた。
物言う株主(activist)として著名なNelson Peltz 氏率いるTrian Fund Management は、2015年にGE株を取得し、圧力を強めていた。
2017/6/16 GEのJeff Immelt 会長、退任
参考 Trian Fund Management はDuPontの前CEOのEllen Kullman 氏を退任に追い込んでいる。
2015/10/6 DuPont のCEO Ellen Kullman、急に退任
Trian Fund Managementは2015年10月、保有するGE株式数が 9850万株と、全体の1%、時価額で25億ドルに達し、GEの大株主上位10 社に入ったことを明らかにした。
この時点ではGEの取締役会への参加は要求していないが、一段の経費削減と金融資産の売却拡大、さらにはM&Aへの慎重対応を求めた。
GEの Immelt 会長兼 CEOはここ数年にわたり、GEの事業改革を進めてきた。
2015年6月、金融事業の大幅縮小を打ち出し、2017年末ごろまでに2500億ドルの資産を売却する方針を決めた。
GE Capitalは世界有数の金融機関で、その保有資産は 5000億ドル、GE全体の売上の3〜4割を占め、利益ベースでは半分近くを稼いでいる。
2015年8月、医療事業者向けの金融事業を貸出債権を含めて85億ドルで米金融機関のCapital One売却すると発表、また GE Capital Bank のインターネット銀行事業と預金約160億ドルをGoldman Sachs Bankに売却することで合意した。
2015年10月に、消費者ローンやリースなど金融部門の一部を米銀行大手Wells Fargoに売却すると発表した。譲渡する資産の規模は約320億ドル。
2015年12月、日本における法人向けのリースおよび融資事業を三井住友ファイナンス&リースに売却することで合意した。対象となる最終正味投資額は約46億米ドルで売却価格は約48億米ドル。
一方、2015年11月に仏重電大手 Alstomのエネルギー部門の買収手続きを完了した。買収額は97億ユーロで、再生可能エネルギー部門、送配電部門の各子会社の発行済み株式の50%、原子力発電向けのタービン事業子会社では80%をそれぞれ取得した。(AlstomはGEの鉄道信号システム事業を譲り受け、鉄道ビジネスの専業企業になる。)
取引は Partnership structure を採用、GE Oil & Gas と
Baker Hughes は新設のPartnership に関連資産を拠出する。
新設の上場企業を通して、GE はPartnership の権益の 62.5%を、Baker Hughesの既存株主は権益の 37.5% を受け取る。
Baker Hughesの既存株主は更に、GEがP artnership に拠出する74億ドルを使って、1株当たり17.50ドルの特別配当を受け取る。2016/11/8 GE、Baker Hughes と石油・ガス事業統合
8月1日付でGEのCEOになったJohn Flanneryは、株価下落の中で早急に結果を出すよう圧力を受けている。
事業ポートフォリオの変更も検討、2018年末までに経費を20億ドル削減する計画を持ち、その一環として、社用ジェット機や社用車も減らしている。
Trian Fund Management は、コスト削減を上積みするなどの経営改善策を要求していた。
今回、取締役派遣を巡り、Trian Fund Management とGEは水面下で協議を進めていたもよう。
Flannery
CEOは、低迷する株価を踏まえると、一部の機関投資家らの支持を得るTrian Fund Management
と対立するのは現状では得策ではないと判断した模様。
Trian Fund 圧力をテコにして、大胆なコスト削減を行うとみられる。
ーーー
これに対し、Procter & Gambleは別の姿勢を取った。
Trian Fund Management のNelson Peltz は、P&Gの株価が低迷するのは経営陣の怠慢と主張し、P&Gの取締役就任を求め、投資家に賛同を求めていた。
発行済み株式の4割を保有する退職年金基金などの機関投資家がPeltz
の取締役就任への賛同を表明していたほか、株主アドバイザー大手3 社もPeltzを支援、票数が拮抗するとみられていた。
委任状争奪をめぐるキャンペーンに、Trian Fund
ManagementとP&Gが費やした金額は総額6,000万ドルとも推定されている。
この結果について、Trian Fund Management 側は投票結果は非常に接戦で、結果を納得できないとし、独立した調査を求めている。
P&G側は今回の結果は暫定的なもので、独立調査の詳細は米証券取引委員会(SEC)に提出する報告資料内で開示するとしている。
付記 P&Gは10月16日、SECへの報告で、株主投票の投票数を明らかにした。
Nelson
Peltz への投票数は会社側提案の11人の候補より少なく、会社側が僅差で勝ったことが分かった。
2017/10/13 東証、東芝の特設注意市場銘柄の指定解除
東証は10月11日、東芝の特設注意市場銘柄の指定を12日付で解除すると発表した。同時に監理銘柄の指定を解除する。
「特設注意市場銘柄」:
有価証券報告書に虚偽の記載を行ったり、監査報告書で不適切な会計処理であることが指摘されていたり、上場廃止基準に抵触するのをギリギリのところで免れたりした企業のことで、コーポレートガバナンスの改善が急務であると取引所が判断し、それを促す意味でも通常の銘柄と区別する。
指定を受けた企業は、それから1年後に内部管理体制確認書を取引所に提出する。この内容を審査し、着実な改善がうかがえると判断されれば、「特設注意市場銘柄」の指定が解除され、通常の取引銘柄に戻される。しかし、依然として改善がなされておらず、今後もその見込みがないと取引所がみなした場合や、指定から1年6カ月以内に改善の兆候が見られなかった場合は、「上場廃止」の処分が下される。
「管理銘柄」:
上場銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがある場合に、投資家にその事実を周知するため、指定される。
東証は2015年9月15日、有価証券報告書に虚偽記載を行い、内部管理体制などについて改善の必要性が高いと判断し、東芝を特設注意市場銘柄に指定した。
同時に、上場契約違約金 9,120万円の支払いを命じた。
当該指定から1年6か月を経過した日(2017年3月15日)以後に同社から再提出される内部管理体制確認書の内容等を確認し、内部管理体制等について改善がなされなかったと認められた場合は、同 社株式は上場廃止となる。
日本取引所グループの清田CEOは6月16日の定例記者会見で東芝の特設注意市場銘柄の指定解除の審査について「有価証券報告書が出ないうちに一方的に結論を出すのは難しい」との見方を明らかにした。
なお、東芝株式は8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。
2017/8/2 東芝、東証2部降格
東芝は8月10日、PwC あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「おおむね妥当だ」とする「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。
この結果を受け、東証は東証は特注銘柄から外すかの検討を行ってきた。
2017/8/14 東芝、有価証券報告書を提出、決算発表
今回、東証は下記により、指定を解除した。
特設注意市場銘柄指定から1年6か月を経過した後の2017年3月15日に同社から再提出された内部管理体制確認書の内容等を審査した。
その結果、以下の改善策が講じられていることが認められた。i) 事業実態に反した非合理的な経営目標を要求する等の経営トップによる暴走や歪んだ経営方針が無批判に踏襲されていくことを牽制・抑止するため、取締役の選任・解任プロセスを改善。
指名委員会を社外取締役のみで構成し執行サイドからの独立性を確保、経営トップに対する信任調査の導入等
経営陣への有効な牽制と執行サイドへの実効的な監督を行うことを目的として、取締役会・監査委員会等の社内機関がその職責を十分に発揮するためのガバナンス態勢を刷新。
取締役会・監査委員会の構成の見直し及び情報収集態勢の強化、社外取締役のみで構成される「取締役評議会」の設置と重要な意思決定プロセスにおけるチェック機能の発揮等
社内の各部署とその役職員が本来の任務を確実に遂行できる社内風土を定着させることを目的として、全社的なコンプライアンス意識の向上・定着を図るため、全役職員に対し経営トップから継続的にメッセージを発信。また事業・役職に応じた実効的な研修、法令違反等への厳格な処分等を実施
ii) 重要な経営判断を行う際には十分なリスクの分析・評価を必ず行うこととするため、リスク分析・評価を専門とする組織(外部専門家の知見も活用)を設置し、同組織の分析・評価を踏まえて取締役会等で審議することとするなど、意思決定プロセスを見直し
iii) 事業の推進とは独立して適正な会計報告を行うため、CFOの選任・解任に係る拒否権を指名委員会に付与し、また、各カンパニー(各事業部門)の財務部門をCFOの直轄とするなど、財務部門の独立性を強化。開示体制を強化するため、適時開示に係る情報連携体制等を見直し
iv) 子会社の管理を強化するため、リスクに応じて子会社を管理する方針を明確化した上で、子会社のリスク情報の収集態勢の強化、子会社に対する実効的なモニタリング等を実施これらから、同社の内部管理体制等については、相応の改善がなされたと認められた。
ーーー
なお、8月初めの時点では、上場継続には3条件全ての達成が条件であった。
@債務超過の解消
A有価証券報告書での適正意見
B特定注意市場銘柄指定解除 東証が今秋をメドに判断
このうち、AとBが達成されたこととなる。
しかし、2018年3月末までに東芝メモリの売却が完了しなければ債務超過の解消は出来ない。
東芝は9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。
しかし、国際仲裁裁判所の審理と独占禁止法の審査の問題があり、2018年3月末までの東芝メモリの売却完了のハードルは高い。
2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結
2017/10/14 帝人、DuPontとのポリエステルフィルム合弁会社の持分を売却
帝人は10月10日、DuPontと共同で、米国、欧州及び中国のフィルム事業の合弁会社4社の所有持分全てをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。
DuPontは本事業から完全撤退、帝人は、2016年にDuPontから持分を買い取った日本とインドネシアの事業の更なる高機能化に資源を集中的に投入する。
ーーー
帝人はポリエステルフィルム分野では、世界6カ国で米国デュポンと合弁事業を行っていた。
帝人は1957年に英国ICIのPETフィルム製造技術を導入。
DuPontは1998年にICIからポリエステル事業を買収。
両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。
日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立され、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売した。
インドネシアは帝人子会社、中国はDuPont
のJVで、それぞれを両社のJVに移した。
国 | 社名 | 出資比率 % | 備考 | ||
帝人 | DuPont | その他 | |||
日本 | 帝人デュポンフィルム | 50.1 | 49.9 | ||
米国 | DuPont Teijin Films U.S. | 49.9 | 49.9 | (*1) 0.2 | *1 帝人デュポンフィルム |
英国 | DuPont Teijin Films U.K. | 50.0 | 50.0 | ||
ルクセンブルグ | DuPont Teijin Films Luxembourg | 50.0 | 50.0 | ||
インドネシア | P.T. Indonesia Teijin DuPont Films | 50.1 | 49.9 | 元は帝人100%のP.T.Indonesia Teijin Films | |
中国 |
DuPont Hongji
Films Foshan (佛山杜邦鴻基薄膜) |
中国JV 51 | (*2) 49 |
*2
佛山塑料集団(Foshan
Plastics Group) DuPont 持株をDuPont Teijin Films China に移管 |
|
(49.0) | (51.0) |
帝人は2016年8月19日、日本とインドネシアのDuPontとのJVについて、DuPontの持分を買収し、帝人100%とすると発表した。
中国経済の減速に伴う需要低迷、中国メーカー台頭による市場構造の変化により、事業環境は厳しさを増し、事業構造の変換が急務になっており、事業運営柔軟性と意思決定の迅速性を向上するため、国内合弁とインドネシア合弁について、DuPont持分を取得することで合意した。
2016/8/23 帝人、日本とインドネシアのDupont とのJVを100%子会社化
この結果、現状は下記の通りであるが、帝人としては、日本とインドネシアのJVの完全子会社化以降は、日本とインドネシアにおいてPENフィルムを含むポリエステルフィルムの更なる高機能化に資源を集中的に投入する方針としており、米国、欧州及び中国のDuPontとのJV 4社については資源投入対象としての重要性が低くなっている。
DuPontは2016年に日本とインドネシアの持分を帝人に渡したが、その以前の2011年に、高成長分野に舵を切っていることから、この事業の売却のうわさが出ていた。
2011/10/18 DuPont、帝人とのポリエステルフィルムJVを売却か?
今回、Dowとの統合により、本事業の意味はなくなっていた。
国 | 社名 |
出資比率 % |
備考 | 今後 | |||
帝人 | DuPont | その他 | |||||
日本 | 帝人デュポンフィルム | 100 | 従 来 |
50.1/49.9→60/40 | 更なる高機能化に資源を集中的に投入 | ||
インドネシア | P.T. Indonesia Teijin DuPont Films | 100 | 50.1/49.9 | ||||
米国 | DuPont Teijin Films U.S. | 49.9 | 49.9 | (*1) 0.2 | *1 帝人デュポンフィルム | 帝人、DuPontとも 持分をIndoramaに売却 |
|
英国 | DuPont Teijin Films U.K. | 50.0 | 50.0 | ||||
ルクセンブルグ | DuPont Teijin Films Luxembourg | 50.0 | 50.0 | ||||
中国 |
DuPont Hongji
Films Foshan 佛山杜邦鴻基薄膜 |
JV(*2) 51.0 |
(*3) 49.0 |
*2 DuPont
Teijin Films China *3 佛山塑料集団(Foshan Plastics Group) |
|||
(49.0) | (51.0) | ||||||
韓国 | Teijin DuPont Films Korea | (*1) 100 |
(販売会社) *1 帝人デュポンフィルム |
ーーー
Indorama Group は1974年にMohan
Lal Lohia (ML
Lohia)によりインドで設立され、インド、インドネシア、タイなどでPTA、PET、ポリエステルなどの事業を拡大した。
ML Lohia は事業を3人の息子に分割した。長男OP
Lohiaはインド、次男
SP Lohia はインドネシア、三男
Aloke Lohia (APL)
はタイを受け継いだ。同じような事業を行っているが、それぞれが独立して事業を行っている。
今回の売却先は、三男 Aloke LohiaがGroup CEO and Vice Chairmanを務めるIndorama Ventures Public Company Limitedの子会社である。
同社の詳細は 2016/1/12 タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収
最新分は http://blog.knak.jp