2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着
これまで異議を唱えていた共和党上院議員も賛成に回った。逆に民主党議員は、これは低中層クラスの犠牲のもとに金持ちと大企業を助けるものだと批判している。
下院は12月19日、上院も20日頃に採決し、クリスマス前の成立を目指す。トランプ米大統領は22日の議会閉会までに法案に署名して成立させる考え 。
個人所得税の最高税率も引き下げ、全体の減税規模は10年間で1.5兆ドルとなる。トランプ米大統領の大型選挙公約は、実現に大きく近づいた。
減税額は10年間で、企業税制で6538億ドル、個人税制で1兆1266億ドル、国際課税で -3244億ドル(海外留保利益への1度限り課税など)で、計1兆4560億ドル。
なお、本年度(2017/10〜2018/9)の米連邦予算は暫定で、当初期限の12月8日の前日の12月7日に12月22日までのつなぎ予算を可決しているが、それまでに本予算又は更なるつなぎ予算を決める必要があり、更に債務上限の引き上げも必要である。緊迫した状況が続く。
付記 下院は12月19日、法案を可決した。
共和党 民主党 合計 賛成 227 227 反対 12 191 203 棄権 2 2 合計 239 193 432 注. 欠員 3 上院も同日、可決した。共和党重鎮で闘病中のMcCain 上院議員が採決を欠席し、同党の票数は過半数ぎりぎりの51票だった。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 51 0 0 51 反対 0 46 2 48 棄権 1 0 0 1 合計 52 46 2 100 なお、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。
このため、下院で12月20日に修正法案を再採決する。
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米下院は11月16日、連邦法人税率を2018年に35%から20%に引き下げる税制改革法案を賛成多数で可決した。
米上院は12月2日早朝、難航の末、税制改革法案を可決した。
2017/12/4 米上院、税制改革法案を可決
共和党は税制改革法案のクリスマス前の成立を目指し、両院協議会で下院案と上院案の一本化の作業を進めた。
現在、上院共和党は52名で、賛成50の場合は、上院議長を兼ねるMike
Pence副大統領の賛成票で法案は可決できる。
このため、副大統領は予定した中東訪問を取りやめた。
米南部アラバマ州の連邦上院補選で12月12日、民主党候補のDoug Jones 元連邦検事が、圧勝を予想されていた共和党候補のRoy Moore元州最高裁長官を破り、当選を確実とした。
新議員の就任には投票の確認が必要で、おそらく年内は無理とされるが、就任すれは、共和党の上院の議席は51となる。2017/12/13 米アラバマ州上院補選、民主党候補が当選確実、上院議員51名に
12月2日の上院の投票では、財政赤字反対タカ派(deficit hawk)と呼ばれるテネシー州のCorker議員が共和党でただ一人反対したが、一本化法案の採決でも再び反対票を投じる可能性が高い。
上院共和党には、穏健派のSusan
Collins議員ら税制法案の賛否で揺れる議員が増えている。
Collins議員は高齢者向けの医療保険の給付削減に反対し、両院協議会に同案の見送りを要求した。
Marco Rubio上院議員とMike Lee
上院議員は低所得層に配慮し、子供の税額控除の拡大を求めた。
3人の反対で法案はつぶれるため、Collins議員の要求を受け入れる方向となったが、そのための財源が必要となる。
議論の結果、共和党の議会指導部は12月13日の協議会で、35%の連邦法人税率を2018年から(20%ではなく)21%に下げること、個人所得税の最高税率を37%に下げることなどで大筋合意した。
法人税率の引き下げ幅を1%分抑え
ることで、10年で1千億ドルの税収を確保する。
トランプ大統領はかつて「20%より高い税率は認めない」と主張していたが、13日には「35%から21%に下がれば極めて大きな変化だ」と議会の合意を受け入れる考えを強調した。
この場合も、 Rubio上院議員 らの求める子供の税額控除の拡大は受け入れられず、 Rubio上院議員 は法案に反対すると明言した。
悲観論が広がるなか、首脳陣は調整を続けた。
子供の税額控除還付額を当初案より拡大した結果、Rubio上院議員は賛成すると表明した。
Corker議員も財政赤字の増大に反対だが、法案に賛成すると述べた。
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上院案と下院案及び最終案の主なものは下記の通り。
下院 上院 Tax Cuts and Jobs Act 法人税率引き下げ 2018年以降 20% 2019年以降 20% 2018年以降 21% Obamacare 個人加入義務 維持 廃止
2027年までに13百万人が非加入に
非加入率 11%→16%2019年以降義務なし 個人所得税率 4 区分
最高は現状通り39.6%7 区分のまま
最高 38.5%に引き下げ7 区分のまま
最高 37%に引き下げ個人所得税率引き下げ 期限なし 2025年末まで 2025年末まで 遺産税(estate tax) 2024年廃止
それまでに控除が2倍に
(550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税)廃止せず、縮小
550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税廃止せず
22百万ドルまで無税child tax credit (1人当たり) 1000$→1600$
1000$→2000$ 1000$→2000$
納税無しレベルには1400$ 還付
(当初案の1100$から増)住宅ローン金利の控除限度 ローン100万ドル→50万ドル 不変(100万ドル) ローン100万ドル→75万ドル Pass-throgh企業
(Ownerに課税される)所得の20%が非課税
(2025年期限切れ)法人代替ミニマムタックス 廃止 米企業の海外所得 「全世界所得課税方式」から「源泉地国課税」に切り替え 海外留保利益への1回限りの課税 流動資産で保有するものは12%の課税、固定資産で保有する部分については5%の課税 流動資産で保有するものは15.5%の課税、固定資産で保有する部分については8%の課税 Exercise tax
海外企業の米国子会社が米国で稼いだ資金を海外に持ち出す際、課税。20% 除外 除外
最終案では、焦点の連邦法人税率は2018年から35%から21%に引き下げる。
米企業の海外所得への課税も原則として廃止する。
個人所得税は現在39.6%の最高税率を37%に下げ、概算控除も2倍に増やす。
子育て世帯への税額控除を拡充した。
トランプ氏が大統領選で掲げた減税案は同4兆〜5兆ドル規模とされたが、議会は急激な財政悪化を不安視して減税規模を縮小した。
法人税の実効税率は次の通り。
これまで米国の実効税率はカリフォルニア州をベースにして各国と対比している。
同州では州税が利益の8.84%で、法人税計算ではこれは損金算入できる。現状は法人税率35%のため、35% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 40.75%となる。
税率が21%となれば、21% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 27.98%となるはずである。しかし、今回改正で、州税の損金算入は個人所得税計算では認められなくなった。
法人税でも同じであれば(要確認)、実効税率は、21% + 8.84% = 29.84% となる。
結果として、日本とドイツの実効税率を若干上回ることとなる。付記 日本の財務省に問い合わせたところ、州・地方税の損金算入取り止めに関して、個人所得者に対してのみ改正が行われたため、法人税実効税率は従来の方法でよいとのこと。
このほかにも、税率を下げる代わりに、損金算入や税額控除が減っており、同一利益ベースでの減税幅は縮小する。
物価はかつての予測を下回って停滞が続いており、会合参加者には警戒感が残っている。今回の利上げは投票メンバー9人のうち7人が賛成したが、シカゴ連銀のエバンズ総裁とミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金融引き締めに反対票を投じた。
今後の利上げシナリオは、2018年が年3回、2019年は年2〜3回との見通しを公表した。
イエレン議長は2018年2月で退任する。
付記 FRBは2018年3月21日、3カ月ぶりの利上げ決定、利上げ幅は0.25%。2019年の成長率見通しを2.4%へ引き上げ。
声明文では、米経済について「底堅いペースで拡大が続いている」と自信をのぞかせた。
雇用情勢も堅調で、声明文では「緩やかな政策調整によって、労働市場は力強さを維持するだろう」と指摘した。会合参加者は失業率が2018年10〜12月期には3.9%まで下がると予測。完全雇用とみる水準(4.6%)を大きく割り込んで、労働市場の逼迫感が強まるとの見通しを示した。
物価上昇率は目標の2%に達していないが、中期的には目標とする2%に近づくと見ている。
なお、FRBは商務省発表のPCE(個人消費支出)を判断の基準としている。(CPIは労働省発表)
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米国は、金融危機に対応するため、2008年11月〜2010年6月に量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )を実施し、1兆7250億ドルが供給された。
米国の景気回復ペースの鈍化を受けて、2010年11月〜2011年6月に実施されたQE2では6000億ドルが供給された。
更に、労働市場を刺激して景気を回復させるため、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきた。
2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。
2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響
その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。
(但し、満期を迎えても償還分を再投資して資産規模を維持している。この方針を変更すると影響は大きい。)
2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%〜0.25% から0.25%〜0.50% に引き上げた。
2015/12 0%→ 0.25% 2016/12 0.25%→ 0.50% 2017/3 0.50%→ 0.75% 2017/6 0.75%→ 1.00% 2017/12 1.00%→1.25% 2018/3 1.25%→1.50% 付記
EUは12月15日の首脳会議で、英が払う「清算金」などの離脱条件を協議してきた「第1段階」に「十分な進展」があったと判断。「第2段階」となる通商協議に入るための交渉指針を採択した。
通商協議を2018年1月から始めること、離脱後の激変を緩和する「移行期間」を設けることで合意 した。
しかし、EUと英国の自由貿易協定(FTA)など本格的な議論は2018年3月以降になる見通し で、離脱期限を2019年3月に控えて、交渉は「時間との闘い」を強いられる。
EUの基本条約「リスボン条約」の50条によれば、離脱の通知(2017年3月29日)から原則として2年の間で「離脱協定」を結ぶことが必要になる。EU側は欧州議会の承認などの時間も考慮すると、2018年10月までの合意が必要だとしている。
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英国政府は2017年3月29日、「EU離脱通知」を行った。
欧州理事会(EU首脳会議)のDonald Tusk(トゥスク)常任議長は2017年3月31日、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。
課題として、次の4つを挙げている。
1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全
2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。
3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。
4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。
2017/4/6 EUのBrexit 交渉ガイドライン
英国のEUからの離脱交渉が2017年6月19日、ブリュッセルで始まった。
英国は、単一市場からの離脱による英経済への影響を最小限にするため、将来のEUとのFTAを優先的に議論することを求めていたが、交渉入りを急ぐため、下記の協議を最優先する方針で一致した。
(1)英国で暮らすEU市民の権利や地位の保護
(2)最大600億ユーロ(約7兆4000億円)とされる英国の未払い分担金など「清算金」支払い
(3)離脱後の英国とアイルランドの国境管理3つの分野で十分な進展があったとEU側が認めた後、貿易協定など離脱後の関係に関する交渉に移る。
2017/6/21 BREXIT 交渉 開始
双方はその後、交渉を続けたが、まず「清算金」問題が難航した。
オーストリアのケルン首相は2017年2月、EU離脱に伴い英国は600億ユーロを支払う必要があるとの見解を示した。
これは、2020年まで決定済みの中期予算の拠出金や、英国が拠出に合意した事業費を足し合わせたものとされる。EU職員の年金負担や借入保証なども含む。
これに対し、ジョンソン英外相は、英国がEU離脱後に「巨額」の請求に応じるとEUが期待するのは妥当ではないと述べ、支払いの求めに英政府が抵抗することを示唆した。
EU離脱後もEUの予算を支払う必要はないとした。
9月にメイ首相が200億ユーロを負担する方針を示したと報じられた。
しかし、両者の主張の差が大き過ぎ、交渉は進展しないまま時間が過ぎた。
11月後半に、英政府は、EU側が将来協議に前進させることを確約するのを条件に、清算金を大幅に引き上げて具体的な額(最大450億ユーロともとされる)を提示する方針を固めたと報じられた。
今回、「十分な進展」があったと判断したが、将来的に支払われる額は多くの予測不能な変数に左右されるため、具体額は協議されなかったという。英政府は500億ユーロ前後を支払う意向を示したとする英紙の報道について「憶測」だと一蹴している。400〜440億ユーロではないかとみられている。
英国に住むEU市民とEU域内の英国国民、双方の権利については、「保証する」とた。
英国に住むEU市民については保証されるが、EU側はその家族についても今まで同様に英国に移住する権利を求めていた。これに対し、英国側は移動の理由制限という離脱の大きな目的を損なうものとして反対していた。最終決着は明らかでない。
英国とアイルランドの国境管理も大きな問題である。
アイルランド島は、EUに残留するアイルランド共和国と英国の北アイルランドに分かれており、英国が唯一、EU加盟国と陸路で接しているところである。
また北アイルランドは、先住のアイルランド人と後に英国から移住した英国人が、長年にわたり争いを続けてきた。
アイルランドとの統合を悲願に争ってきた北アイルランドのアイルランド人にとっては、アイルランドと遮断されることは耐えられない。
EUの交渉ガイドラインでは、「北アイルランドとアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである」としている。
しかし、これを実行すれば、EUーアイルランドー北アイルランドー英本土が結びつき、人やモノが自由に移動できることとなり、EU離脱の意味が無くなる。
逆に北アイルランドと英本土の間を遮断すれば英国が分断される。
メイ首相は、「北アイルランドは英国と同じ条件でEUから離脱しなければならない。経済的にも政治的にも英国との規制の違いは受け入れられない。英国との一体が損なわれることは認められない」と述べていた。
今回、下記の通り合意した。
南北アイルランドの間では従来通り、国境管理(規制)を行わない。
北アイルランドと英国本体との間に新たな規制の障壁を設けない。北アイルランドの企業が英国本体の市場へのアクセスを保証する。
英国は南北アイルランドの協力と、南北アイルランド国境に鉄条網や検問所などハードボーダーを設けないと約束する。これは英国とEUとの将来の関係を通じて達成する。
実際には詳細を先送りしているが、今回の合意で、北アイルランドは英国本体と一体となってEUの統一市場と関税同盟から離脱できると解釈でき、英国側の懸念が消えた模様。
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第2段階では、移行期間をどれだけとするか、EUと英国の自由貿易協定(FTA)をどうするかが問題となる。
英国は離脱後も2年程度、域内無関税などを定めたEU単一市場や関税同盟への残留を求めており、その間にFTA交渉を進める絵を描く。
移行期間中は、EUの法律や制度、共通予算の負担に引き続き応じる考え。
一方、EU側は「期間を制限すべきだ」と、できるだけ短期間にすることを求めている。
FTAではEUとカナダのFTA(2016/10/30調印)が参考となるが、英国側は更に広いものを求める。
EUがG7と初めて結ぶFTAとなる「包括的経済貿易協定(CETA)」で、貿易品目の99%の関税が撤廃される。
英は離脱後も単一市場などの恩恵を享受したいと曖昧な姿勢で、EU側は「いいとこ取りは許さない」と反発 している。
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英国にとっては、政権が弱体であることが問題である。
英下院は12月13日、EUからの離脱条件の最終決定について、締結前に上下両院の承認を得ることを英政府に義務づける法案を賛成多数で可決した。与党保守党からも造反者が出た。
交渉の裁量を制限されるためメイ首相には打撃となり、政府は「失望した」とするコメントを出した。
米下院は12月19日、共和党指導部がまとめた大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を採決し、可決した。
共和党 民主党 合計 賛成 227 227 反対 12 191 203 棄権 2 2 合計 239 193 432 注. 欠員 3
引き続き、上院で採決し、可決した。
上院共和党は52議席であるが、共和党重鎮で闘病中のMcCain 上院議員が採決を欠席し、同党の票数は過半数ぎりぎりの51票だった。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 51 0 0 51 反対 0 46 2 48 棄権 1 0 0 1 合計 52 46 2 100
しかし、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。
このため、下院で12月20日に修正法案を再採決する。
下院も再採決で可決するのは確実で、トランプ大統領は12月20日中にも法案に署名して大型減税が成立する。
付記 下院は12月20日午後、再可決した。
共和党 民主党 合計 賛成 224 224 反対 12 189 201 棄権 3 4 7 合計 239 193 432
年明けの2018年1月から法人税率や個人所得税の税率を引き下げる。
トランプ大統領は議会のメンバーと法律の通過を祝い、“We are making America great again !” と述べた。
出光創業家は12月20日、株式買い増しを発表した。創業家、出光美術館及び出光文化福祉財団の株式保有割合は、合計で28%を超えるとしている。
創業家は2016年8月に、日章興産と出光昭介氏、正和氏、正道氏の持ち株について共同保有の届出を行ったが、今回、出光昭介氏が代表社員及び業務執行社員を務める新設会社 宗像合同会社を共同保有に加えた。
創業家はこれまで合計で21.18%を保有し、出光文化福祉財団と出光美術館 を加えると、1/3以上の33.92%を保有していた。
しかし、会社側が2017年7月20日に第三者割当増資を行ったため、創業家持分は16.29%、出光文化福祉財団 と出光美術館を加えても26.09%に下がっていた。
創業家
株数 比率 発行済株数 160,000,000 54,272,000
33.92% 増資株数 48,000,000 増資後株数 208,000,000 54,272,000 26.09% 2017/7/3 出光興産、増資発表
今回、公募増資によって希釈化された創業家の株式保有割合を部分的に回復させるため以下の株式取得を行ったもの。
取得者 宗像合同会社 期間 11/7〜12/18 株数 3,968,300株 取得価額 5,576,842円 平均株価 @3,925
付記 12月27日に追加取得を発表した。「創業家、出光美術館及び出光文化福祉財団の株式保有割合は、合計で約28.5%となっております。」
株式の推移は次の通り。
当初 増資後 買い増し後 付記 12/27 日章興産 16.95% 13.04% 27,119,900 13.04% 出光昭介 1.21% 0.93% 1,928,000 0.93% 出光正和 1.51% 1.16% 2,416,000 1.16% 出光正道 1.51% 1.16% 2,416,000 1.16% 宗像合同会社 ー ー 3,968,300 1.91% 4,974,400 共同保有届け出 21.18% 16.29% 37,848,200 18.20% 38,854,300 18.68% 出光文化福祉財団 7.75% 5.96% 12,392,400 5.96% 出光美術館 5.00% 3.85% 8,000,000 3.85% 合計 33.92% 26.09% 58,240,600 28.00% 59,246,700 28.48% 発行済 160,000,000 208,000,000
これまでの経緯は次の通りで、創業家は出光興産と昭和シェルの合併に反対を続けている。
2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結 2016/6/29 出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」 2016/8/5 出光創業家、合併阻止へ強攻策 2016/9/22 出光販売店の具申書 2016/9/27 出光興産と昭和シェルの合併をめぐる出光販売店と創業家の動き 2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得を承認 2016/12/20 出光興産、シェルから昭和シェル株式取得 2017/7/3 出光興産、増資発表
創業家は増資の差し止めを求めたが、東京地裁は7月18日、差し止め請求を却下する決定をした。「新株発行の主要目的が不当とは認められない」として出光側の主張を認めた。
創業家の持ち株比率を相当程度減少させ、支配権をめぐる争いを有利にする目的があったことは認め、出光側のベトナム製油所建設などの費用というのも的確な証拠がないとしたが、昭和シェル株の取得の際の借入金返済については弁済期を数カ月後に控え、資金調達の必要性が高いと認めた。
創業家側は東京高裁に即時抗告した。
東京高裁は7月19日、「新株発行の目的が不当であると認められない」として、申し立てを退けた東京地裁決定を支持し、創業家側の即時抗告を棄却する決定をした。
但し、高裁は「増資後、直ちに株主総会が開かれ、合併が議題になることをうかがわせない」としており、総会をすぐに招集できない。合併には時間がかかる。
今回の買い増しによっても、単独では、総会で合併を否決するための1/3には達しないが、再び不透明感が増してきた。
付記
出光と昭和シェルは合併を一時棚上げする一方、5月9日に協働事業の強化・推進(名称:ブライターエナジーアライアンス)の趣意書を締結した。両社は12月22日に進捗状況を発表した。
具体的なシナジーが実現されている主な領域としては、半製品やボトム留分の有効活用・交錯転送の解消を可能にする 7 製油所統合最適生産計画システムの一部運用開始、原油タンカーの共同配船、資材の共同調達、燃料油出荷基地の相互利用等で本年度分のシナジー効果として80億円を達成する見通しとなった。
http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2017/171222.pdf
2017/12/22 韓国の第8次電力需給基本計画、原発減で再生可能エネルギーやLNGを増
韓国の産業通商資源部は12月14日、「第8次
(2017−2031年)電力需給基本計画案」を策定した。文大統領の脱原発政策を受け、2015年に設定した「第7
次長期電力需給基本計画」を改定する。
今後、国会報告と公聴会、電力政策審議会を経て確定する。
産業通商資源部は2015 年7月、「第7 次長期電力需給基本計画」を明らかにした。
電力需要は平均年率2.1%で増加し、発電所の廃止を考慮すると、2029 年までに3,456千kWの新規電源を開発する必要があるとしている。最大電力は年率2.2%で増加する。
発電部門のCO2排出量を削減するため、新規電源の86.8%は原発で、2029 年までに原子炉2 基(150 万kW×2 基)を新たに稼働させる。
文在寅政権の脱原発方針に対応し、 原発の新設は着工済みの5基にとどめ、運転期間を40年に限定し、11原発を停止する。現在24基(2250万キロワット)の原発を2030年に18基(2040万キロワット)に減ら し、再生可能エネルギーやLNG発電を拡大する。
第8次電力需給基本計画の概要は次の通り。
最大電力需要:2030年で100.5GWとした。(第7次比 12.7GW 減)
成長率の鈍化とともにエネルギー管理システム(EMS)普及拡大などで効率を上げれば需要を減らすことができるとした。
なお、「第4次産業革命」の技術利用や、エネルギー効率を高める新規制導入などで、更に14.2GW減らすをことを求めている。
設備予備率:22%を維持。発電所の建設が遅れる確率などを勘案し、そのまま維持。
需給:最大需要に予備率を加算し、必要量は122.6GW、既計画能力は118.3GWで、4.3GWの追加が必要。
発電源:原発と石炭火力から再生可能エネルギーとLNGを中心に改編。
これにより、温室効果ガスを26%、粒子状物質量は62%減らす。
2030年時点の構成:
石炭火力 36.1% 36.8GW → 39.9GW 原発 23.9% 24基(22.5GW) → 18基(20.4GW) 新設は着工済み5基、運転40年で11基停止 再生可能エネルギー 20% 11.3GW → 58.5GW 主として太陽光と風力発電。 LNG 18.8% 37.4GW → 47.5GW 注) 再生可能エネルギーは常時発電は不可能なため、能力と電力構成での発電量は異なる。
再生可能エネルギーについては、産業通商資源部は12月20日、韓国の電力全体に占める再生可能エネルギーの割合を2016年の7%から2030年には20%に引き上げることを目標に「再生可能エネルギー3020履行計画」を発表した。来年初めの再生可能エネルギー政策審議会で確定する。
出力が計48.7GWとなる再生可能エネルギーの発電設備を新たに備えることにした。発電能力1.4GWの原発なら35基に相当するもので、総額110兆ウォン(約11兆円)を要すると見積もられた。
再生可能エネルギーによる電力生産が天候に左右されやすいことを踏まえた。
新規設備のうち63%が太陽光発電、34%が風力発電となる。このうち、28.8GWを電力会社の事業により達成する。まず2018〜2022年に5GW規模の事業を進め、残りの23.8GWについては、発電量のうち一定量を再生可能エネルギー電力で供給することを義務付けるRPS制度を活用し、比率を段階的に引き上げる。
残りの19.9GWは、自家用設備(2.4GW)と協同組合など小規模事業(7.5GW)、農家の太陽光発電(10GW)で賄う。自家用の太陽光発電の余剰電力は韓国電力公社が買い取る。
原発計画は下記の通り。
古里1号は2017年6月19日に停止し、稼働中は24基、このうち今後40年が経過するものは停止する。
文在寅大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言しており、2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。
建設中の新古里4号機と新ハンウル 1・
2号機 の建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定する。
建設中の新古里5・6号機と建設計画中の新ハンウル3・4号機を白紙に戻し、許可を取り消す。
しかし、大統領は10月22日、建設途中の新古里原発5、6号機の工事再開を表明した。建設を暫定的に中止していた3基と合わせ、5基が新設される。
それ以外の、新ハンウル原発3、4号、天地1、2号機(盈徳郡)、建設予定地未定の原発2基の計6基の新規原発計画は白紙に戻した。
2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明
運転開始 | 原子炉形式 | 容量 kW |
稼働中 | 停止済 | 建設続行 | 今後停止 | ||
ハンウル (蔚珍) |
1 |
1988/9/10 | 加圧軽水炉 (PWR) | 95万 | 〇 | x | ||
2 | 1989/9/30 | 加圧軽水炉 (PWR) | 95万 | 〇 | x | |||
3 | 1998/8/11 | 加圧軽水炉 (PWR) | 100万 | 〇 | ||||
4 | 1999/12/31 | 加圧軽水炉 (PWR) | 100万 | 〇 | ||||
5 | 2004/7/29 | 加圧軽水炉 (PWR) | 100万 | 〇 | ||||
6 | 2005/4/22 | 加圧軽水炉 (PWR) | 100万 | 〇 | ||||
新ハンウル | 1 | (2018/4) | KSNP (APR-1400) | 140万 | ◎ | |||
2 | (2019/2) | KSNP (APR-1400) | 140万 | ◎ | ||||
ハンピッ (霊光) |
1 |
1986/8/25 | 加圧軽水炉(PWR) | 95万 | 〇 | x | ||
2 | 1987/6/10 | 加圧軽水炉(PWR) | 95万 | 〇 | x | |||
3 | 1995/12 | 加圧軽水炉(SYSTEM80) | 100万 | 〇 | ||||
4 | 1996/3 | 加圧軽水炉(SYSTEM80) | 100万 | 〇 | ||||
5 | 2002/5/21 | KSNP(OPR-1000) | 100万 | 〇 | ||||
6 | 2002/12/24 | KSNP(OPR-1000) | 100万 | 〇 | ||||
月城 | 1 | 1983/4/22 | CANDU | 67.9万 | 〇 | x | ||
2 | 1997/7/1 | CANDU | 70万 | 〇 | ||||
3 | 1998/7/1 | CANDU | 70万 | 〇 | ||||
4 | 1999/10/1 | CANDU | 70万 | 〇 | ||||
新月城 | 1 | 2012/7/31 | KSNP(OPR-1000) | 100万 | 〇 | |||
2 | 2015/7 | KSNP(OPR-1000) | 100万 | 〇 | ||||
古里 | 1 | 1978/4 | 加圧水型(PWR) | 58.7万 | x | |||
2 | 1983/7 | 加圧水型(PWR) | 65万 | 〇 | x | |||
3 | 1985/9 | 加圧水型(PWR) | 95万 | 〇 | x | |||
4 | 1986/4 | 加圧水型(PWR) | 95万 | 〇 | x | |||
新古里 | 1 | 2011/2 | 加圧水型(PWR) | 100万 | 〇 | |||
2 | 2012/7 | 加圧水型(PWR) | 100万 | 〇 | ||||
3 | 2017/1 | 加圧水型(PWR) | 140万 | 〇 | ||||
4 | 間もなく | 加圧水型(PWR) | 140万 | ◎ | ||||
5 | 加圧水型(PWR) | 140万 | ◎ | |||||
6 | 加圧水型(PWR) | 140万 | ◎ | |||||
24 | 1 | 5 | 8+3 |
2017/12/23 外れ馬券訴訟
国税当局が競馬の外れ馬券代を経費と認めず追徴課税したのは違法だとして、北海道の男性が国に約1億9000万円の課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は12月15日、国側の上告を棄却した。外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。
外れ馬券については、最高裁は2015年3月に、特定のケースについて経費として認めている。今回は、それには直接当て嵌まらないケースについて争われていた。
ーーー
2015年3月判決のケースは次の通り。
男性はソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っていた。
男性は2007〜2009年に28億7千万円分の馬券を購入し、総額30億1千万円の払戻金を得たが、全く申告しなかった。
検察側は、国税当局の見解に基づき、払戻金は「一時所得」に当たり、経費といえるのは当たり馬券代だけだと主張したが、一審大阪地裁、二審大阪高裁はいずれも「営利目的の継続的な購入で、資産運用の一種だ」と判断し、外れ馬券も経費算入できるとした。
脱税額は、検察が主張した約5億7千万円ではなく、差引損益に対応する5千万円余りしか認めず、男性には懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡していた。
(当時の税率は1800万円超の所得に40%。なお、2015年以降は4000万円超の所得に45%)
検察側は上告した。
最高裁第3小法廷は、裁判官5人全員一致で、外れ馬券代を「経費」と認める初判断を示した。
ソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っている。個々のレースに着目せず網羅的に馬券を大量購入し、利益を上げ続けており、一連の行為は経済活動といえると指摘 し、この事例での払戻金は「雑所得」(経費をより多く算入できる)に当たると判断し、検察の上告を棄却した。
差引損益に対応する5千万円余りだけを脱税と認めて執行猶予付きの有罪とした一、二審判決が確定した。
元会社員は民事訴訟でも8億1千万円の課税処分取り消しを請求し、大阪地裁は2014年10月に「外れ馬券は経費」として、請求をほぼ認めている。
ーーー
今回のケースでは、北海道の40歳代の公務員男性が2005〜2010年に計72億7千万円の馬券を買い、計78億4千万円の払戻金を得た。
男性はレースごとに競走馬のコース適性や枠順、騎手などから着順を予想し、配当金額と予想の確度の組み合わせによって、自ら定めた購入パターンを当てはめていた。
払戻金は「雑所得」にあたるとして、外れ馬券代も経費として申告したが、税務当局は国税庁通達に基づき、「一時所得」にあたり、当たり馬券の購入費しか経費算入できないと判断し、追徴課税した。
男性はこれを不服とし、国に所得税約1億9400万円の取り消しを求めて提訴した。
東京地裁は2015年5月、男性の請求を棄却した。「競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、営利目的行為に当たらない」と判断した。
最高裁判決との違いについて「馬券の購入履歴などが保存されていないため、最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に購入していたとまでは認められない」とした。
男性は控訴した。弁護士は、レースごとの購入資料がないという理由で雑所得と認めないのは納税者にあまりに酷で、最高裁判決の趣旨をないがしろにする不当な判決だと述べた。
東京高裁は2016年4月の控訴審判決で、「外れ馬券を含む馬券代を経費とするのが相当」と認め、一審判決を取り消した。
今回、最高裁第2小法廷は国側の上告を棄却し、外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。
2017/12/23 ソウル中央地裁、ロッテ創業者に実刑判決、収監は見送り
韓国 ロッテグループの企業内の不正事件で、横領や背任などの罪に問われた同グループ会長の辛東彬(重光昭夫)被告(62)ら創業者一族に対する判決公判が22日、ソウル中央地裁であった。
検察側の求刑と判決は次の通り。
求刑 | 判決 | |
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) | 懲役10年と罰金1000億ウォン | 懲役1年8カ月、執行猶予2年 |
辛格浩(重光武雄)創業者(95) | 懲役10年、罰金3000億ウォン | 懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り |
辛東主(重光宏之)(63) | 懲役5年、罰金125億ウォン | 無罪 |
判事は、2015年ごろまで経営の実権を握った創業者が、会社の資金を横領し、内縁の妻やその娘らに実態に見合わない多額の報酬を払ったほか、系列映画館の売店運営権を親族の会社に渡し、グループに損失を与えたとし、横領と背任の主犯と認定した。高齢と認知症などの症状があるため、判決後も身柄は拘束されない。
辛東彬・現会長については、経済的利益を受けていないとする一方、犯行を黙認した責任を指摘した。「たとえ父の言うことを拒否できないと言っても、犯行の実現過程での役割は無視できない」と指摘した。
多額報酬に絡み横領の罪に問われた長男の辛東主被告は無罪だった。
辛東彬会長は事件を受け、2016年10月に経営刷新案を発表し、続投を表明した。今回、実刑を免れたことにより「最悪の事態は避けられ『ニューロッテ』への転換が加速する」との見方が出ている。
付記 検察側と被告側はそれぞれ控訴した。
ーーー
ソウル中央地検は2016年9月26日、背任・横領の容疑で、辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長の逮捕状を請求した。
検察側は、辛東彬会長がロッテグループのオーナー一族を系列企業の形式的な役員に就かせ、給与として総額500億ウォンを支払ったのは明らかに横領だと主張、また会長一族が個人的に保有する会社に集中して発注を行ったり、系列会社間の株式取引を指示したりして、総額1250億ウォンの損失を出した疑いもあるとした。
これに対し、会長側は「給与500億ウォンは辛東彬会長が受け取ったものではなく、集中発注は辛格浩総括会長が指示したものであり、辛東彬会長とは無関係だ」と反論。系列会社間の株式取引も経営上の判断によるもので、損失が出たか否かを現時点では判断できないと主張した。
しかし、ソウル中央地裁は9月29日、逮捕状請求を棄却した。「捜査の進行内容と経過、主要犯罪容疑に対する争いの余地などを考慮すると、拘束の必要性、相当性を認め難い」と判断した。
ソウル中央地検は2016年10月19日、創業者の重光武雄(辛格浩)、長男の重光宏之(辛東主)、次男の昭夫(辛東彬)の各氏を脱税や背任などの罪で一括して在宅起訴 した。
2016/10/3 ロッテ会長の逮捕状請求棄却と高高度防衛ミサイル(THAAD)配置
今回、地裁は一部の罪についてのみ有罪とした。
トランプ大統領は12月22日、大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法案が成立した。
また、議会は来年1月19日までのつなぎ予算を可決し、当面、安心して年を越せることとなった。
多額の財政赤字を産む大幅な減税案が通るとは思えなかった。与党共和党は52議席しかなく(しかも補選の結果、来年初めには51議席に減る)、財政赤字に反対する議員も多いため、数人が反対すればつぶれる。オバマケア廃止も数人の反対でつぶれた。
つなぎ予算が12月22日に切れ、政府機関閉鎖の可能性もあるなかで、共和党の上下院首脳が多くの修正を折り込み、反対議員を説得して、ようやく可決した。
トランプ大統領にとっては、最大の目玉が達成できたことになる。
ーーー
米共和党指導部は12月15日、35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を最終決定した。
2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着
米下院は12月19日、共和党指導部がまとめた大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を採決し、可決した。
しかし、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。
このため、下院での修正法案の再採決が必要となり、下院は12月20日午後、再可決した。
2017/12/20 米減税法案、成立へ
レーガン政権だった1986年以来、約30年ぶりとなる税制の抜本改革が実現する。
大統領は議会のメンバーと法律の通過を祝い、「米国史上、最大の減税だ。記録破りなことをなし遂げた」と誇り、法人税率の大幅引き下げで「企業と雇用の流出に歯止めをかける」とも主張した。
スピーチの最後に、"We are
making America great again !" と述べた。
大統領は、直ちに法案に署名して成立させるものと見られていたが、ホワイトハウスは、署名が12月21日以降にずれ込むと指摘した。
問題は、この税制改正により、年1500億ドル規模で財政赤字が増えることである。
米国には1990年に導入されたPAYGO(Pay-as-you-go)原則がある。
財政悪化を抑えるため、新法や法改正で新たに財政赤字が発生する場合、同額をほかの歳出予算から強制削減する仕組みである。
前年の1月から12月の1年間に成立した全法案が対象となる。
このままでは、2018年から減税による財政赤字増加分を人件費や社会保障などを削減する必要がある。
これを避けるためには、2001年のBush減税の時と同様に、PAYGO原則を適用除外とする法律が必要である。
今回、税制改正法案の審議がずれ込み、PAYGO原則を適用除外とする法律が間に合わなかった。
さらに、現在の米連邦予算は暫定予算で、12月22日までのつなぎ予算である。それまでに本予算を通すか、更なるつなぎ予算を議決しないと政府機関の閉鎖となる。
このため、議会は予算問題を優先した。
この場合、強制削減の実施は2019年からとなるため、それまでにPAYGO原則を適用除外とする法律を可決させればよいこととなる。
その場合も、新税制は2018年1月1日に遡り適用できる。
しかし、これは杞憂に終わった。
下院は12月21日、2018年1月19日までのつなぎ予算を可決したが、この法案にPAYGO原則を適用除外とする項目が挿入された。
共和党 民主党 合計 賛成 217 14 231 反対 16 172 188 棄権 6 7 13 合計 239 193 432
上院も同日可決した。PAYGO原則を適用除外とする項目を外すことを求める 声が出たが、91対8の投票で含めることとなった。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 48 17 1 66 反対 2 29 1 32 棄権 2 2 合計 52 46 2 100
この結果、とりあえず2018年1月19日までは政府機関の閉鎖の心配はなくなった。
同時にPAYGO原則が適用除外となり、大統領が減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法律としても、財政赤字増加分相当の予算減を求められることもなくなった。
ーーー
今後は、つなぎ予算以降の本予算の決定と、債務上限の引き上げが問題となる。
債務上限についても、政府は12月8日まで新たな借り入れができるようになったが、その後は、上限を上げない限り、借り入れができない。
米議会予算局は11月30日、連邦債務上限が引き上げられなければ、財務省の資金は来年3月末もしくは4月初旬までに底を尽くとの試算を示し ている。
2017/12/26 大日本住友製薬ほか、新規結核ワクチンの共同開発のクリエイトワクチンを解散
大日本住友製薬は12月21日、日本ビーシージー製造および官民ファンドの産業革新機構(INCJ)との共同出資の クリエイトワクチンの解散を決定したと発表した。
医薬基盤・健康・栄養研究所 およびNPO法人Aerasと、組換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンの共同開発を実施してきた。
しかし、開発が進まず、本共同開発を終結した。
ーーー
下記3社は2013年711月8日、ヒト パラインフルエンザ(Human
parainfluenza viruses )2
型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンの共同開発を実施することについて基本的に合意したと発表した。
2013 年12月26日に共同開発契約を締結した。
独立行政法人医薬基盤研究所 | 「次世代ワクチンの研究開発」を重点領域の一つとして位置付け、次世代ワクチンおよびその免疫反応増強剤(アジュバント)の開発ならびにそれらの投与法の研究開発を行っている。 | |
NPO 法人 AERAS |
本部:米国メリーランド州 世界中のパートナーと協力して結核ワクチンを開発する非営利団体 アカデミア、製薬企業、バイオベンチャーとのグローバルな提携を通じて、6 つの結核ワクチン候補品の開発に関与、前臨床、臨床開発、免疫学およびワクチン製造における専門知識・技術を提供している。 |
|
クリエイトワクチン (右2社のJV) その後、INCJが参加 |
大日本住友製薬 | ワクチン事業への参入を計画 |
日本BCG製造 | BCG ワクチンの、製造、販売、輸出を通じて、結核ワクチン事業に関する豊富な経験を有す。 | |
産業革新機構 | 官民ファンド |
既存のワクチンにおいては、乳幼児に対しては極めて高い効果が認められるが、成人の肺結核に対する効果は乏しく、新規結核ワクチンの開発が望まれている。
既存の結核予防ワクチン(BCG)は、牛に感染する牛型結核菌を時間をかけて弱めたもの。
青年や成人にBCG を打っても、肺結核の感染を予防する効果は認められていない。
本剤は、基盤研の有するヒトパラインフルエンザ 2 型ウイルスベクター技術を臨床応用した粘膜ワクチンであり、開発に成功すれば本技術を用いた世界初の結核ワクチンとなる。
官民ファンドの産業革新機構は2014年5月22日、「当該新規結核ワクチンは、既存のワクチンにおいて感染予防効果の乏しい成人の肺結核に対する効果が期待され、また、医薬基盤・健康・栄養研究所の独創的なシーズとAerasの結核ワクチン開発における卓越したノウハウの結集というオープンイノベーションの創出意義がある」とし、クリエイトワクチンに2億8305万円の投資を行った。
同日、大日本住友製薬が2億8,135万円、日本ビーシージー製造が2億8,060万円(3社合計で総額8億4,500万円)の共同出資を実施、出資後の株式保有比率は大日本住友 33.4%、INCJと日本ビーシージーがそれぞれ33.3%となった。
2013/11/13 独立行政法人医薬基盤研究所と大日本住友製薬ほか、新規結核ワクチンの共同開発に向け基本合意
ーーー
産業革新機構は12月21日、出資したクリエイトワクチンが解散し、産業競争力強化法に定める特定事業活動を行わなくなったため、支援決定を撤回したと発表した。
出資した2億8305万円は戻らない。
産業革新機構では、新規結核ワクチンの共同開発は終結したものの、今回のプロジェクトを通して、民間事業者からの資金供給の実現や、アカデミア、製薬会社、海外NPOによる共同開発を実施するなど、創薬分野における投資にとっての有用な経験を得ることが出来たとしている。
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産業革新機構は同日、他の1件についても解散したため、支援決定を撤回したと発表した。
出資先は INCJ検索で、産業技術総合研究所と産総研技術移転ベンチャーによって研究開発された音声検索技術の事業化を検討する目的で、2012年2月に INCJ全額出資(6000万円)で設立した。
対象となる音声検索技術は、インターネット上の動画サイト、音楽サイトなどマルチメディアコンテンツに含まれる音声をテキスト化せずに検索することが可能。
同技術は、動画サイトへの広告配信事業に活用できる可能性があり、ライブ映像配信サイトを経営する事業会社と協力し新たな音声検索エンジンのプロトタイプ開発を目指した。
約1年間の事業化検証を経て、事業パートナーとなる候補20社強と協議を行ったが課題が多く、本格的な協業に移行することが出来なかった。
その後も単発的に事業提携候補先が出てきたものの、グーグルやアマゾンなどが圧倒的に先行していることもあり、解散することになった。