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2017/12/16 米財務省、税制改革案を後押しする試算を発表 

米財務省は12月11日、上院財政委員会の税制改革案が実現した場合、向こう10年間で1兆8000億ドルの増収となり、減税による税収減を賄えるとの試算を発表した。

1 ページだけの簡単な発表。Treasury Releases Analysis of Revenue Estimates Associated with Administration Economic Policies

11月26日に議会予算局が税制改革案の影響についての報告を出し、これが共和党内部でも税制改革案に対する反対を産んだ。

議会予算局の分析では、税制改革案により、経済成長を考えない場合で、2018〜2027年累計で赤字が1兆4142億ドル増えるという。1.9%の経済成長を考慮しても、赤字は1兆ドル増える。

2017/12/4    米上院、税制改革法案を可決   

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財務省の Office of Tax Policy (OTP) はこれを基に分析している。

議会予算局は、このままでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとする。但し、成長により4080億ドルの税収増が生まれ、赤字は1兆ドルに減る。

この議会予算局の試算はGDPの伸びを2.2%にしている。(一般には「1.9%の経済成長を考慮して」となっている)

これに対し、OTPは2.9%と見る。より詳細には、2018年は2.5%、2019年は2.8%、それ以降は3.0%とする。

元の2.2%から0.7%ポイントだけ増えることとなるが、このうち半分は法人税率の引き下げによるもの、残り半分はPass-through企業(株主が課税されるもの)税制や個人所得税の改正、規制改革、インフラ開発、福祉の改定など政府が予算で提案する計画による。

GDPを見直すと、税収は10年間で議会予算局の計算の4080億ドルではなく、約1.8兆ドル増加する。(増益分は後半の5年に生まれる)

成長なしでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとするが、成長を考えると、10年間で3000億ドルの黒字となる。

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専門家や民主党が財務省の分析を批判している。

想定成長率は大半のエコノミスト予測を大幅に上回っているほか、まだ実現できていない修正事項も前提としている。

参考 過去のGDP

 

保守派の非営利組織「責任ある連邦予算委員会」は「(税制変更が経済に及ぼす影響を分析する)ダイナミック・スコアリングを馬鹿にしている」と批判している。

民主党のシューマー上院院内総務も「1ページのでたらめな計算にすぎない」とした上で「ホワイトハウスと共和党が藁をもつかむ思いで、確証のないことを証明し、法案への支持を取り付けようとしていることは明らかだ。この法案では、赤字が膨張し、赤字を相殺する追加の経済活動もほとんど全く生じないことは、ほぼすべての独立した分析で結論づけられている」と述べた。

 


2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着

米共和党指導部は12月15日、35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を最終決定した。

これまで異議を唱えていた共和党上院議員も賛成に回った。逆に民主党議員は、これは低中層クラスの犠牲のもとに金持ちと大企業を助けるものだと批判している。

下院は12月19日、上院も20日頃に採決し、クリスマス前の成立を目指す。トランプ米大統領は22日の議会閉会までに法案に署名して成立させる考え 。

個人所得税の最高税率も引き下げ、全体の減税規模は10年間で1.5兆ドルとなる。トランプ米大統領の大型選挙公約は、実現に大きく近づいた。

減税額は10年間で、企業税制で6538億ドル、個人税制で1兆1266億ドル、国際課税で -3244億ドル(海外留保利益への1度限り課税など)で、計1兆4560億ドル。

なお、本年度(2017/10〜2018/9)の米連邦予算は暫定で、当初期限の12月8日の前日の12月7日に12月22日までのつなぎ予算を可決しているが、それまでに本予算又は更なるつなぎ予算を決める必要があり、更に債務上限の引き上げも必要である。緊迫した状況が続く。

付記 下院は12月19日、法案を可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 227   227
反対 12 191 203
棄権   2 2
合計 239 193 432
                                   注. 欠員 3

上院も同日、可決した。共和党重鎮で闘病中のMcCain 上院議員が採決を欠席し、同党の票数は過半数ぎりぎりの51票だった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 0 0 51
反対 0 46 2 48
棄権 1 0 0 1
合計 52 46 2 100

なお、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。
このため、下院で12月20日に修正法案を再採決する。

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米下院は11月16日、連邦法人税率を2018年に35%から20%に引き下げる税制改革法案を賛成多数で可決した。

2017/11/13 米国の税制改革法案の審議 付記

米上院は12月2日早朝、難航の末、税制改革法案を可決した。

2017/12/4    米上院、税制改革法案を可決

共和党は税制改革法案のクリスマス前の成立を目指し、両院協議会で下院案と上院案の一本化の作業を進めた。

現在、上院共和党は52名で、賛成50の場合は、上院議長を兼ねるMike Pence副大統領の賛成票で法案は可決できる。
このため、副大統領は予定した中東訪問を取りやめた。

米南部アラバマ州の連邦上院補選で12月12日、民主党候補のDoug Jones 元連邦検事が、圧勝を予想されていた共和党候補のRoy Moore元州最高裁長官を破り、当選を確実とした。
新議員の就任には投票の確認が必要で、おそらく年内は無理とされるが、就任すれは、共和党の上院の議席は51となる。

2017/12/13 米アラバマ州上院補選、民主党候補が当選確実、上院議員51名に

12月2日の上院の投票では、財政赤字反対タカ派(deficit hawk)と呼ばれるテネシー州のCorker議員が共和党でただ一人反対したが、一本化法案の採決でも再び反対票を投じる可能性が高い。

上院共和党には、穏健派のSusan Collins議員ら税制法案の賛否で揺れる議員が増えている。
Collins議員は
高齢者向けの医療保険の給付削減に反対し、両院協議会に同案の見送りを要求した。
Marco Rubio上院議員とMike Lee 上院議員は低所得層に配慮し、子供の税額控除の拡大を求めた。

3人の反対で法案はつぶれるため、Collins議員の要求を受け入れる方向となったが、そのための財源が必要となる。

議論の結果、共和党の議会指導部は12月13日の協議会で、35%の連邦法人税率を2018年から(20%ではなく)21%に下げること、個人所得税の最高税率を37%に下げることなどで大筋合意した。
法人税率の引き下げ幅を1%分抑え ることで、10年で1千億ドルの税収を確保する。

トランプ大統領はかつて「20%より高い税率は認めない」と主張していたが、13日には「35%から21%に下がれば極めて大きな変化だ」と議会の合意を受け入れる考えを強調した。

この場合も、 Rubio上院議員 らの求める子供の税額控除の拡大は受け入れられず、 Rubio上院議員 は法案に反対すると明言した。

悲観論が広がるなか、首脳陣は調整を続けた。

子供の税額控除還付額を当初案より拡大した結果、Rubio上院議員は賛成すると表明した。
Corker議員も財政赤字の増大に反対だが、法案に賛成すると述べた。

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上院案と下院案及び最終案の主なものは下記の通り。

  下院 上院 Tax Cuts and Jobs Act
法人税率引き下げ 2018年以降 20% 2019年以降 20% 2018年以降 21%
Obamacare  個人加入義務 維持 廃止 
2027年までに13百万人が非加入に 
非加入率 11%→16%
2019年以降義務なし
個人所得税率 4 区分 
最高は現状通り39.6%
7 区分のまま 
最高 38.5%に引き下げ
7 区分のまま 
最高 37%に引き下げ
個人所得税率引き下げ 期限なし 2025年末まで 2025年末まで
遺産税(estate tax) 2024年廃止 
それまでに控除が2倍に
(550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税)
廃止せず、縮小
550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税
廃止せず
22百万ドルまで無税
child tax credit (1人当たり) 1000$→1600$
 
1000$→2000$ 1000$→2000$
納税無しレベルには1400$ 還付
(当初案の1100$から増)
住宅ローン金利の控除限度 ローン100万ドル→50万ドル 不変(100万ドル) ローン100万ドル→75万ドル
Pass-throgh企業
(Ownerに課税される)
    所得の20%が非課税
(2025年期限切れ)
法人代替ミニマムタックス     廃止
米企業の海外所得     「全世界所得課税方式」から「源泉地国課税」に切り替え
海外留保利益への1回限りの課税   流動資産で保有するものは12%の課税、固定資産で保有する部分については5%の課税 流動資産で保有するものは15.5%の課税、固定資産で保有する部分については8%の課税
Exercise tax
海外企業の米国子会社が米国で稼いだ資金を海外に持ち出す際、課税。
20% 除外 除外

 

 

最終案では、焦点の連邦法人税率は2018年から35%から21%に引き下げる。

米企業の海外所得への課税も原則として廃止する。

個人所得税は現在39.6%の最高税率を37%に下げ、概算控除も2倍に増やす。
子育て世帯への税額控除を拡充した。

減税規模は10年間で1.5兆ドルとなる見込み。

トランプ氏が大統領選で掲げた減税案は同4兆〜5兆ドル規模とされたが、議会は急激な財政悪化を不安視して減税規模を縮小した。

法人税の実効税率は次の通り。

これまで米国の実効税率はカリフォルニア州をベースにして各国と対比している。
同州では州税が利益の8.84%で、法人税計算ではこれは損金算入できる。

現状は法人税率35%のため、35% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 40.75%となる。
税率が21%となれば、21% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 27.98%となるはずである。

しかし、今回改正で、州税の損金算入は個人所得税計算では認められなくなった。
法人税でも同じであれば(要確認)、実効税率は、21% + 8.84% = 29.84% となる。
結果として、日本とドイツの実効税率を若干上回ることとなる。

付記 日本の財務省に問い合わせたところ、州・地方税の損金算入取り止めに関して、個人所得者に対してのみ改正が行われたため、法人税実効税率は従来の方法でよいとのこと。

このほかにも、税率を下げる代わりに、損金算入や税額控除が減っており、同一利益ベースでの減税幅は縮小する。

 


2017/12/19  米、6カ月ぶり利上げ 

米連邦準備理事会(FRB)は12月13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、1.25%−1.50%のレンジにすることを決定した。

物価はかつての予測を下回って停滞が続いており、会合参加者には警戒感が残っている。今回の利上げは投票メンバー9人のうち7人が賛成したが、シカゴ連銀のエバンズ総裁とミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金融引き締めに反対票を投じた。

今後の利上げシナリオは、2018年が年3回、2019年は年2〜3回との見通しを公表した。

イエレン議長は2018年2月で退任する。

付記 FRBは2018年3月21日、3カ月ぶりの利上げ決定、利上げ幅は0.25%。2019年の成長率見通しを2.4%へ引き上げ。


声明文では、米経済について「底堅いペースで拡大が続いている」と自信をのぞかせた。

雇用情勢も堅調で、声明文では「緩やかな政策調整によって、労働市場は力強さを維持するだろう」と指摘した。会合参加者は失業率が2018年10〜12月期には3.9%まで下がると予測。完全雇用とみる水準(4.6%)を大きく割り込んで、労働市場の逼迫感が強まるとの見通しを示した。


物価上昇率は目標の2%に達していないが、中期的には目標とする2%に近づくと見ている。

なお、FRBは商務省発表のPCE(個人消費支出)を判断の基準としている。(CPIは労働省発表)

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米国は、金融危機に対応するため、2008年11月〜2010年6月に量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )を実施し、1兆7250億ドルが供給された。

米国の景気回復ペースの鈍化を受けて、2010年11月〜2011年6月に実施されたQE2では6000億ドルが供給された。

更に、労働市場を刺激して景気を回復させるため、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきた。

2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。

2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響 

その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。
(但し、
満期を迎えても償還分を再投資して資産規模を維持している。この方針を変更すると影響は大きい。)

2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%〜0.25% から0.25%〜0.50% に引き上げた。

 
2015/12   0%→ 0.25%
2016/12   0.25%→ 0.50%
2017/3   0.50%→ 0.75%
2017/6   0.75%→ 1.00%
2017/12   1.00%1.25%
2018/3   1.25%→1.50%  付記

  
  

 


2017/12/20 英のEU離脱交渉、第2段階へ 

EUは12月15日の首脳会議で、英が払う「清算金」などの離脱条件を協議してきた「第1段階」に「十分な進展」があったと判断。「第2段階」となる通商協議に入るための交渉指針を採択した。

通商協議を2018年1月から始めること、離脱後の激変を緩和する「移行期間」を設けることで合意 した。

しかし、EUと英国の自由貿易協定(FTA)など本格的な議論は2018年3月以降になる見通し で、離脱期限を2019年3月に控えて、交渉は「時間との闘い」を強いられる。

EUの基本条約「リスボン条約」の50条によれば、離脱の通知(2017年3月29日)から原則として2年の間で「離脱協定」を結ぶことが必要になる。EU側は欧州議会の承認などの時間も考慮すると、2018年10月までの合意が必要だとしている。

ーーー

英国政府は2017年3月29日、「EU離脱通知」を行った。

欧州理事会(EU首脳会議)のDonald  Tusk(トゥスク)常任議長は2017年3月31日、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。

課題として、次の4つを挙げている。

1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全

2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。

3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。

4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。

2017/4/6 EUのBrexit 交渉ガイドライン

英国のEUからの離脱交渉が2017年6月19日、ブリュッセルで始まった

英国は、単一市場からの離脱による英経済への影響を最小限にするため、将来のEUとのFTAを優先的に議論することを求めていたが、交渉入りを急ぐため、下記の協議を最優先する方針で一致した。

(1)英国で暮らすEU市民の権利や地位の保護
(2)最大600億ユーロ(約7兆4000億円)とされる英国の未払い分担金など「清算金」支払い
(3)離脱後の英国とアイルランドの国境管理

3つの分野で十分な進展があったとEU側が認めた後、貿易協定など離脱後の関係に関する交渉に移る。

2017/6/21  BREXIT 交渉 開始

双方はその後、交渉を続けたが、まず「清算金」問題が難航した。

オーストリアのケルン首相は2017年2月、EU離脱に伴い英国は600億ユーロを支払う必要があるとの見解を示した。
これは、2020年まで決定済みの中期予算の拠出金や、英国が拠出に合意した事業費を足し合わせたものとされる。EU職員の年金負担や借入保証なども含む。

これに対し、ジョンソン英外相は、英国がEU離脱後に「巨額」の請求に応じるとEUが期待するのは妥当ではないと述べ、支払いの求めに英政府が抵抗することを示唆した。
EU離脱後もEUの予算を支払う必要はないとした。

9月にメイ首相が200億ユーロを負担する方針を示したと報じられた。

しかし、両者の主張の差が大き過ぎ、交渉は進展しないまま時間が過ぎた。

11月後半に、英政府は、EU側が将来協議に前進させることを確約するのを条件に、清算金を大幅に引き上げて具体的な額(最大450億ユーロともとされる)を提示する方針を固めたと報じられた。

今回、「十分な進展」があったと判断したが、将来的に支払われる額は多くの予測不能な変数に左右されるため、具体額は協議されなかったという。英政府は500億ユーロ前後を支払う意向を示したとする英紙の報道について「憶測」だと一蹴している。400〜440億ユーロではないかとみられている。

英国に住むEU市民とEU域内の英国国民、双方の権利については、「保証する」とた。

英国に住むEU市民については保証されるが、EU側はその家族についても今まで同様に英国に移住する権利を求めていた。これに対し、英国側は移動の理由制限という離脱の大きな目的を損なうものとして反対していた。最終決着は明らかでない。

英国とアイルランドの国境管理も大きな問題である。

アイルランド島は、EUに残留するアイルランド共和国と英国の北アイルランドに分かれており、英国が唯一、EU加盟国と陸路で接しているところである。
また北アイルランドは、先住のアイルランド人と後に英国から移住した英国人が、長年にわたり争いを続けてきた。
アイルランドとの統合を悲願に争ってきた北アイルランドのアイルランド人にとっては、アイルランドと遮断されることは耐えられない。

EUの交渉ガイドラインでは、「北アイルランドとアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである」としている。

しかし、これを実行すれば、EUーアイルランドー北アイルランドー英本土が結びつき、人やモノが自由に移動できることとなり、EU離脱の意味が無くなる。
逆に北アイルランドと英本土の間を遮断すれば英国が分断される。
メイ首相は、「北アイルランドは英国と同じ条件でEUから離脱しなければならない。経済的にも政治的にも英国との規制の違いは受け入れられない。英国との一体が損なわれることは認められない」と述べていた。

今回、下記の通り合意した。

南北アイルランドの間では従来通り、国境管理(規制)を行わない。

北アイルランドと英国本体との間に新たな規制の障壁を設けない。北アイルランドの企業が英国本体の市場へのアクセスを保証する。

英国は南北アイルランドの協力と、南北アイルランド国境に鉄条網や検問所などハードボーダーを設けないと約束する。これは英国とEUとの将来の関係を通じて達成する。

実際には詳細を先送りしているが、今回の合意で、北アイルランドは英国本体と一体となってEUの統一市場と関税同盟から離脱できると解釈でき、英国側の懸念が消えた模様。

ーーー

第2段階では、移行期間をどれだけとするか、EUと英国の自由貿易協定(FTA)をどうするかが問題となる。

英国は離脱後も2年程度、域内無関税などを定めたEU単一市場や関税同盟への残留を求めており、その間にFTA交渉を進める絵を描く。
移行期間中は、EUの法律や制度、共通予算の負担に引き続き応じる考え。

一方、EU側は「期間を制限すべきだ」と、できるだけ短期間にすることを求めている。

FTAではEUとカナダのFTA(2016/10/30調印)が参考となるが、英国側は更に広いものを求める。

EUがG7と初めて結ぶFTAとなる「包括的経済貿易協定(CETA)」で、貿易品目の99%の関税が撤廃される。

英は離脱後も単一市場などの恩恵を享受したいと曖昧な姿勢で、EU側は「いいとこ取りは許さない」と反発 している。

ーーー

英国にとっては、政権が弱体であることが問題である。

英下院は12月13日、EUからの離脱条件の最終決定について、締結前に上下両院の承認を得ることを英政府に義務づける法案を賛成多数で可決した。与党保守党からも造反者が出た。

交渉の裁量を制限されるためメイ首相には打撃となり、政府は「失望した」とするコメントを出した。

 


2017/12/20 米減税法案、成立へ 

米下院は12月19日、共和党指導部がまとめた大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を採決し、可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 227   227
反対 12 191 203
棄権   2 2
合計 239 193 432
                                   注. 欠員 3

引き続き、上院で採決し、可決した。

上院共和党は52議席であるが、共和党重鎮で闘病中のMcCain 上院議員が採決を欠席し、同党の票数は過半数ぎりぎりの51票だった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 0 0 51
反対 0 46 2 48
棄権 1 0 0 1
合計 52 46 2 100

しかし、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。

このため、下院で12月20日に修正法案を再採決する。

下院も再採決で可決するのは確実で、トランプ大統領は12月20日中にも法案に署名して大型減税が成立する。

付記 下院は12月20日午後、再可決した。
 
  共和党 民主党 合計
賛成 224   224
反対 12 189 201
棄権 3 4 7
合計 239 193 432

年明けの2018年1月から法人税率や個人所得税の税率を引き下げる。

トランプ大統領は議会のメンバーと法律の通過を祝い、“We are making America great again !” と述べた。

 


2017/12/21 出光創業家、株式買い増し 

出光創業家は12月20日、株式買い増しを発表した。創業家、出光美術館及び出光文化福祉財団の株式保有割合は、合計で28%を超えるとしている。

創業家は2016年8月に、日章興産と出光昭介氏、正和氏、正道氏の持ち株について共同保有の届出を行ったが、今回、出光昭介氏が代表社員及び業務執行社員を務める新設会社 宗像合同会社を共同保有に加えた。

創業家はこれまで合計で21.18%を保有し、出光文化福祉財団と出光美術館 を加えると、1/3以上の33.92%を保有していた。

しかし、会社側が2017年7月20日に第三者割当増資を行ったため、創業家持分は16.29%、出光文化福祉財団 と出光美術館を加えても26.09%に下がっていた。

   

創業家

株数 比率
発行済株数 160,000,000

54,272,000

33.92%
増資株数 48,000,000    
増資後株数 208,000,000 54,272,000 26.09%

2017/7/3  出光興産、増資発表 

今回、公募増資によって希釈化された創業家の株式保有割合を部分的に回復させるため以下の株式取得を行ったもの。

取得者 宗像合同会社
期間 11/7〜12/18
株数 3,968,300株
取得価額 5,576,842円  
平均株価  @3,925
   

付記 12月27日に追加取得を発表した。「創業家、出光美術館及び出光文化福祉財団の株式保有割合は、合計で約28.5%となっております。」

 

株式の推移は次の通り。

  当初 増資後 買い増し後 付記 12/27
日章興産  16.95% 13.04% 27,119,900 13.04%    
出光昭介  1.21% 0.93% 1,928,000 0.93%    
出光正和  1.51% 1.16% 2,416,000 1.16%    
出光正道 1.51% 1.16% 2,416,000 1.16%    
宗像合同会社 3,968,300 1.91% 4,974,400  
共同保有届け出 21.18% 16.29% 37,848,200 18.20% 38,854,300 18.68%
出光文化福祉財団 7.75% 5.96% 12,392,400 5.96%    
出光美術館 5.00% 3.85% 8,000,000 3.85%    
合計 33.92% 26.09% 58,240,600 28.00% 59,246,700 28.48%
発行済 160,000,000   208,000,000      

これまでの経緯は次の通りで、創業家は出光興産と昭和シェルの合併に反対を続けている。

2015/8/3   出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意
2015/11/16   出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結
2016/6/29   出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」
2016/8/5   出光創業家、合併阻止へ強攻策
2016/9/22   出光販売店の具申書
2016/9/27   出光興産と昭和シェルの合併をめぐる出光販売店と創業家の動き
2016/12/20   公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得を承認
2016/12/20   出光興産、シェルから昭和シェル株式取得
2017/7/3   出光興産、増資発表

創業家は増資の差し止めを求めたが、東京地裁は7月18日、差し止め請求を却下する決定をした。「新株発行の主要目的が不当とは認められない」として出光側の主張を認めた。

創業家の持ち株比率を相当程度減少させ、支配権をめぐる争いを有利にする目的があったことは認め、出光側のベトナム製油所建設などの費用というのも的確な証拠がないとしたが、昭和シェル株の取得の際の借入金返済については弁済期を数カ月後に控え、資金調達の必要性が高いと認めた。

創業家側は東京高裁に即時抗告した。

東京高裁は7月19日、「新株発行の目的が不当であると認められない」として、申し立てを退けた東京地裁決定を支持し、創業家側の即時抗告を棄却する決定をした。

但し、高裁は「増資後、直ちに株主総会が開かれ、合併が議題になることをうかがわせない」としており、総会をすぐに招集できない。合併には時間がかかる。

今回の買い増しによっても、単独では、総会で合併を否決するための1/3には達しないが、再び不透明感が増してきた。

 

付記

出光と昭和シェルは合併を一時棚上げする一方、5月9日に協働事業の強化・推進(名称:ブライターエナジーアライアンス)の趣意書を締結した。

両社は12月22日に進捗状況を発表した。

具体的なシナジーが実現されている主な領域としては、半製品やボトム留分の有効活用・交錯転送の解消を可能にする 7 製油所統合最適生産計画システムの一部運用開始、原油タンカーの共同配船、資材の共同調達、燃料油出荷基地の相互利用等で本年度分のシナジー効果として80億円を達成する見通しとなった。

http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2017/171222.pdf

 

 


2017/12/22  韓国の第8次電力需給基本計画、原発減で再生可能エネルギーやLNGを増

韓国の産業通商資源部は12月14日、「第8次 (2017−2031年)電力需給基本計画案」を策定した。文大統領の脱原発政策を受け、2015年に設定した「第7 次長期電力需給基本計画」を改定する。
今後、
国会報告と公聴会、電力政策審議会を経て確定する。

産業通商資源部は2015 年7月、「第7 次長期電力需給基本計画」を明らかにした。

電力需要は平均年率2.1%で増加し、発電所の廃止を考慮すると、2029 年までに3,456千kWの新規電源を開発する必要があるとしている。最大電力は年率2.2%で増加する。
発電部門のCO2排出量を削減するため、新規電源の86.8%は原発で、2029 年までに原子炉2 基(150 万kW×2 基)を新たに稼働させる。

文在寅政権の脱原発方針に対応し、 原発の新設は着工済みの5基にとどめ、運転期間を40年に限定し、11原発を停止する。現在24基(2250万キロワット)の原発を2030年に18基(2040万キロワット)に減ら し、再生可能エネルギーやLNG発電を拡大する。

第8次電力需給基本計画の概要は次の通り。

 最大電力需要:2030年で100.5GWとした。(第7次比 12.7GW 減)

成長率の鈍化とともにエネルギー管理システム(EMS)普及拡大などで効率を上げれば需要を減らすことができるとした。

なお、「第4次産業革命」の技術利用や、エネルギー効率を高める新規制導入などで、更に14.2GW減らすをことを求めている。

 設備予備率:22%を維持。発電所の建設が遅れる確率などを勘案し、そのまま維持。

 需給:最大需要に予備率を加算し、必要量は122.6GW、既計画能力は118.3GWで、4.3GWの追加が必要。

 発電源:原発と石炭火力から再生可能エネルギーとLNGを中心に改編。

 これにより、温室効果ガスを26%、粒子状物質量は62%減らす。

 2030年時点の構成:

石炭火力 36.1% 36.8GW → 39.9GW
原発 23.9% 24基(22.5GW) → 18基(20.4GW)  新設は着工済み5基、運転40年で11基停止
再生可能エネルギー 20% 11.3GW → 58.5GW 主として太陽光と風力発電。
LNG 18.8% 37.4GW → 47.5GW

注) 再生可能エネルギーは常時発電は不可能なため、能力と電力構成での発電量は異なる。

再生可能エネルギーについては、産業通商資源部は12月20日、韓国の電力全体に占める再生可能エネルギーの割合を2016年の7%から2030年には20%に引き上げることを目標に「再生可能エネルギー3020履行計画」を発表した。来年初めの再生可能エネルギー政策審議会で確定する。

出力が計48.7GWとなる再生可能エネルギーの発電設備を新たに備えることにした。発電能力1.4GWの原発なら35基に相当するもので、総額110兆ウォン(約11兆円)を要すると見積もられた。
再生可能エネルギーによる電力生産が天候に左右されやすいことを踏まえた。

新規設備のうち63%が太陽光発電、34%が風力発電となる。

このうち、28.8GWを電力会社の事業により達成する。まず2018〜2022年に5GW規模の事業を進め、残りの23.8GWについては、発電量のうち一定量を再生可能エネルギー電力で供給することを義務付けるRPS制度を活用し、比率を段階的に引き上げる。

残りの19.9GWは、自家用設備(2.4GW)と協同組合など小規模事業(7.5GW)、農家の太陽光発電(10GW)で賄う。自家用の太陽光発電の余剰電力は韓国電力公社が買い取る。

原発計画は下記の通り。

古里1号は2017年6月19日に停止し、稼働中は24基、このうち今後40年が経過するものは停止する。

文在寅大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言しており、2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。

建設中の新古里4号機新ハンウル 1・ 2号機の建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定する。
建設中の新古里5・6号機と建設計画中の新ハンウル3・4号機を白紙に戻し、許可を取り消す。

しかし、大統領は10月22日、建設途中の新古里原発5、6号機の工事再開を表明した。建設を暫定的に中止していた3基と合わせ、5基が新設される。

それ以外の、新ハンウル原発3、4号、天地1、2号機(盈徳郡)、建設予定地未定の原発2基の計6基の新規原発計画は白紙に戻した。

2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明 

  運転開始 原子炉形式 容量
 kW
稼働中 停止済 建設続行 今後停止
ハンウル
(
蔚珍)

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万    
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万    
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万      
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万      
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万      
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万      
新ハンウル 1 (2018/4) KSNP (APR-1400) 140万      
2 (2019/2) KSNP (APR-1400) 140万      
ハンピッ
(霊光)

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万    
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万    
3 1995/12 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万      
4 1996/3 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万      
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万      
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万      
月城 1 1983/4/22 CANDU  67.9万    
2 1997/7/1 CANDU 70万      
3 1998/7/1 CANDU 70万      
4 1999/10/1 CANDU 70万      
新月城 1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万      
2 2015/7 KSNP(OPR-1000) 100万      
古里 1 1978/4 加圧水型(PWR) 58.7万   x    
2 1983/7 加圧水型(PWR) 65万    
3 1985/9 加圧水型(PWR) 95    
4 1986/4 加圧水型(PWR) 95万    
新古里 1 2011/2 加圧水型(PWR) 100万      
2 2012/7 加圧水型(PWR) 100万      
3 2017/1 加圧水型(PWR) 140万      
4 間もなく 加圧水型(PWR) 140万      
5   加圧水型(PWR) 140万      
6   加圧水型(PWR) 140万      
          24 1 5 8+3

 

 

 


2017/12/23 外れ馬券訴訟 

国税当局が競馬の外れ馬券代を経費と認めず追徴課税したのは違法だとして、北海道の男性が国に約1億9000万円の課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は12月15日、国側の上告を棄却した。外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。

外れ馬券については、最高裁は2015年3月に、特定のケースについて経費として認めている。今回は、それには直接当て嵌まらないケースについて争われていた。

ーーー

2015年3月判決のケースは次の通り。

インターネットを通じて馬券を大量購入し、1億円以上の利益を得た大阪市の元会社員の男性が所得税法違反(単純無申告)の罪に問われた事件である。

男性はソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っていた。

男性は2007〜2009年に28億7千万円分の馬券を購入し、総額30億1千万円の払戻金を得たが、全く申告しなかった。

検察側は、国税当局の見解に基づき、払戻金は「一時所得」に当たり、経費といえるのは当たり馬券代だけだと主張したが、一審大阪地裁、二審大阪高裁はいずれも「営利目的の継続的な購入で、資産運用の一種だ」と判断し、外れ馬券も経費算入できるとした。

脱税額は、
検察が主張した約5億7千万円ではなく、差引損益に対応する5千万円余りしか認めず、男性には懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡していた。
(当時の税率は1800万円超の所得に40%。なお、2015年以降は4000万円超の所得に45%)

検察側は上告した。

最高裁第3小法廷は、裁判官5人全員一致で、外れ馬券代を「経費」と認める初判断を示した。

ソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っている。個々のレースに着目せず網羅的に馬券を大量購入し、利益を上げ続けており、一連の行為は経済活動といえると指摘 し、この事例での払戻金は「雑所得」(経費をより多く算入できる)に当たると判断し、検察の上告を棄却した。

差引損益に対応する5千万円余りだけを脱税と認めて執行猶予付きの有罪とした一、二審判決が確定した。

元会社員は民事訴訟でも8億1千万円の課税処分取り消しを請求し、大阪地裁は2014年10月に「外れ馬券は経費」として、請求をほぼ認めている。

ーーー

今回のケースでは、北海道の40歳代の公務員男性が2005〜2010年に計72億7千万円の馬券を買い、計78億4千万円の払戻金を得た。
男性はレースごとに競走馬のコース適性や枠順、騎手などから着順を予想し、配当金額と予想の確度の組み合わせによって、自ら定めた購入パターンを当てはめていた。

払戻金は「雑所得」にあたるとして、外れ馬券代も経費として申告したが、税務当局は国税庁通達に基づき、「一時所得」にあたり、当たり馬券の購入費しか経費算入できないと判断し、追徴課税した。
男性はこれを不服とし、国に所得税約1億9400万円の取り消しを求めて提訴した。

東京地裁は2015年5月、男性の請求を棄却した。「競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、営利目的行為に当たらない」と判断した。
最高裁判決との違いについて「馬券の購入履歴などが保存されていないため、最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に購入していたとまでは認められない」とした。

男性は控訴した。弁護士は、レースごとの購入資料がないという理由で雑所得と認めないのは納税者にあまりに酷で、最高裁判決の趣旨をないがしろにする不当な判決だと述べた。

東京高裁は2016年4月の控訴審判決で、「外れ馬券を含む馬券代を経費とするのが相当」と認め、一審判決を取り消した。

男性は自動購入ソフトを使っていなかったが、「独自のノウハウで馬券を有効に選び、恒常的に多額の利益を上げていた」と指摘 し、最高裁が経費と認めた買い方と「本質的な違いがない」とした。


今回、最高裁第2小法廷は国側の上告を棄却し、外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。

 


2017/12/23 ソウル中央地裁、ロッテ創業者に実刑判決、収監は見送り

韓国 ロッテグループの企業内の不正事件で、横領や背任などの罪に問われた同グループ会長の辛東彬(重光昭夫)被告(62)ら創業者一族に対する判決公判が22日、ソウル中央地裁であった。

検察側の求刑と判決は次の通り。

  求刑 判決
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) 懲役10年と罰金1000億ウォン 懲役1年8カ月、執行猶予2年
辛格浩(重光武雄)創業者(95) 懲役10年、罰金3000億ウォン 懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り
辛東主(重光宏之)(63) 懲役5年、罰金125億ウォン 無罪

判事は、2015年ごろまで経営の実権を握った創業者が、会社の資金を横領し、内縁の妻やその娘らに実態に見合わない多額の報酬を払ったほか、系列映画館の売店運営権を親族の会社に渡し、グループに損失を与えたとし、横領と背任の主犯と認定した。高齢と認知症などの症状があるため、判決後も身柄は拘束されない。

辛東彬・現会長については、経済的利益を受けていないとする一方、犯行を黙認した責任を指摘した。「たとえ父の言うことを拒否できないと言っても、犯行の実現過程での役割は無視できない」と指摘した。

多額報酬に絡み横領の罪に問われた長男の辛東主被告は無罪だった。

辛東彬会長は事件を受け、2016年10月に経営刷新案を発表し、続投を表明した。今回、実刑を免れたことにより「最悪の事態は避けられ『ニューロッテ』への転換が加速する」との見方が出ている。

付記 検察側と被告側はそれぞれ控訴した。

ーーー

ソウル中央地検は2016年9月26日、背任・横領の容疑で、辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長の逮捕状を請求した。

検察側は、辛東彬会長がロッテグループのオーナー一族を系列企業の形式的な役員に就かせ、給与として総額500億ウォンを支払ったのは明らかに横領だと主張、また会長一族が個人的に保有する会社に集中して発注を行ったり、系列会社間の株式取引を指示したりして、総額1250億ウォンの損失を出した疑いもあるとした。

これに対し、会長側は「給与500億ウォンは辛東彬会長が受け取ったものではなく、集中発注は辛格浩総括会長が指示したものであり、辛東彬会長とは無関係だ」と反論。系列会社間の株式取引も経営上の判断によるもので、損失が出たか否かを現時点では判断できないと主張した。

しかし、ソウル中央地裁は9月29日、逮捕状請求を棄却した。「捜査の進行内容と経過、主要犯罪容疑に対する争いの余地などを考慮すると、拘束の必要性、相当性を認め難い」と判断した。

ソウル中央地検は2016年10月19日、創業者の重光武雄(辛格浩)、長男の重光宏之(辛東主)、次男の昭夫(辛東彬)の各氏を脱税や背任などの罪で一括して在宅起訴 した。

2016/10/3 ロッテ会長の逮捕状請求棄却と高高度防衛ミサイル(THAAD)配置

今回、地裁は一部の罪についてのみ有罪とした。


2017/12/25 米減税法案 成立 

トランプ大統領は12月22日、大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法案が成立した。

また、議会は来年1月19日までのつなぎ予算を可決し、当面、安心して年を越せることとなった。

多額の財政赤字を産む大幅な減税案が通るとは思えなかった。与党共和党は52議席しかなく(しかも補選の結果、来年初めには51議席に減る)、財政赤字に反対する議員も多いため、数人が反対すればつぶれる。オバマケア廃止も数人の反対でつぶれた。

つなぎ予算が12月22日に切れ、政府機関閉鎖の可能性もあるなかで、共和党の上下院首脳が多くの修正を折り込み、反対議員を説得して、ようやく可決した。

トランプ大統領にとっては、最大の目玉が達成できたことになる。

ーーー

米共和党指導部は12月15日、35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を最終決定した。

2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着

米下院は12月19日、共和党指導部がまとめた大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を採決し、可決した。

引き続き、上院で採決し、可決した。

しかし、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。

このため、下院での修正法案の再採決が必要となり、下院は12月20日午後、再可決した。

2017/12/20 米減税法案、成立へ

レーガン政権だった1986年以来、約30年ぶりとなる税制の抜本改革が実現する。

大統領は議会のメンバーと法律の通過を祝い、「米国史上、最大の減税だ。記録破りなことをなし遂げた」と誇り、法人税率の大幅引き下げで「企業と雇用の流出に歯止めをかける」とも主張した。
スピーチの最後に、
"We are making America great again !" と述べた。

大統領は、直ちに法案に署名して成立させるものと見られていたが、ホワイトハウスは、署名が12月21日以降にずれ込むと指摘した。

問題は、この税制改正により、年1500億ドル規模で財政赤字が増えることである。

米国には1990年に導入されたPAYGO(Pay-as-you-go)原則がある。

財政悪化を抑えるため、新法や法改正で新たに財政赤字が発生する場合、同額をほかの歳出予算から強制削減する仕組みである。

前年の1月から12月の1年間に成立した全法案が対象となる。

このままでは、2018年から減税による財政赤字増加分を人件費や社会保障などを削減する必要がある。

これを避けるためには、2001年のBush減税の時と同様に、PAYGO原則を適用除外とする法律が必要である。

今回、税制改正法案の審議がずれ込み、PAYGO原則を適用除外とする法律が間に合わなかった。

さらに、現在の米連邦予算は暫定予算で、12月22日までのつなぎ予算である。それまでに本予算を通すか、更なるつなぎ予算を議決しないと政府機関の閉鎖となる。
このため、議会は予算問題を優先した。

PAYGO原則を適用除外とする法律が間に合わない場合に備え、署名を1月3日まで延ばす案が有力となった。
この場合、強制削減の実施は2019年からとなるため、それまでに
PAYGO原則を適用除外とする法律を可決させればよいこととなる。
その場合も、新税制は2018年1月1日に遡り適用できる。

 

しかし、これは杞憂に終わった。

下院は12月21日、2018年1月19日までのつなぎ予算を可決したが、この法案にPAYGO原則を適用除外とする項目が挿入された

  共和党 民主党 合計
賛成 217 14 231
反対 16 172 188
棄権 6 7 13
合計 239 193 432

上院も同日可決した。PAYGO原則を適用除外とする項目を外すことを求める 声が出たが、91対8の投票で含めることとなった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 48 17 1 66
反対 2 29 1 32
棄権 2     2
合計 52 46 2 100

この結果、とりあえず2018年1月19日までは政府機関の閉鎖の心配はなくなった。

同時にPAYGO原則が適用除外となり、大統領が減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法律としても、財政赤字増加分相当の予算減を求められることもなくなった。

ーーー

今後は、つなぎ予算以降の本予算の決定と、債務上限の引き上げが問題となる。

債務上限についても、政府は12月8日まで新たな借り入れができるようになったが、その後は、上限を上げない限り、借り入れができない。

米議会予算局は11月30日、連邦債務上限が引き上げられなければ、財務省の資金は来年3月末もしくは4月初旬までに底を尽くとの試算を示し ている。

 


2017/12/26  大日本住友製薬ほか、新規結核ワクチンの共同開発のクリエイトワクチンを解散

大日本住友製薬は12月21日、日本ビーシージー製造および官民ファンドの産業革新機構(INCJ)との共同出資の クリエイトワクチンの解散を決定したと発表した。

医薬基盤・健康・栄養研究所 およびNPO法人Aerasと、組換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンの共同開発を実施してきた。

しかし、開発が進まず、本共同開発を終結した。

ーーー

下記3社は2013年711月8日、ヒト パラインフルエンザ(Human parainfluenza viruses )2 型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンの共同開発を実施することについて基本的に合意したと発表した。
2013 年12月26日に共同開発契約を締結した。

独立行政法人医薬基盤研究所 「次世代ワクチンの研究開発」を重点領域の一つとして位置付け、次世代ワクチンおよびその免疫反応増強剤(アジュバント)の開発ならびにそれらの投与法の研究開発を行っている。
NPO 法人 AERAS 本部:米国メリーランド州
世界中のパートナーと協力して結核ワクチンを開発する非営利団体
アカデミア、製薬企業、バイオベンチャーとのグローバルな提携を通じて、6 つの結核ワクチン候補品の開発に関与、前臨床、臨床開発、免疫学およびワクチン製造における専門知識・技術を提供している。
クリエイトワクチン
(右2社のJV)
その後、INCJが参加
大日本住友製薬 ワクチン事業への参入を計画
日本BCG製造 BCG ワクチンの、製造、販売、輸出を通じて、結核ワクチン事業に関する豊富な経験を有す。
産業革新機構 官民ファンド

既存のワクチンにおいては、乳幼児に対しては極めて高い効果が認められるが、成人の肺結核に対する効果は乏しく、新規結核ワクチンの開発が望まれている。

既存の結核予防ワクチン(BCG)は、牛に感染する牛型結核菌を時間をかけて弱めたもの。

青年や成人にBCG を打っても、肺結核の感染を予防する効果は認められていない。

本剤は、基盤研の有するヒトパラインフルエンザ 2 型ウイルスベクター技術を臨床応用した粘膜ワクチンであり、開発に成功すれば本技術を用いた世界初の結核ワクチンとなる。

官民ファンドの産業革新機構は2014年5月22日、「当該新規結核ワクチンは、既存のワクチンにおいて感染予防効果の乏しい成人の肺結核に対する効果が期待され、また、医薬基盤・健康・栄養研究所の独創的なシーズとAerasの結核ワクチン開発における卓越したノウハウの結集というオープンイノベーションの創出意義がある」とし、クリエイトワクチンに2億8305万円の投資を行った。

同日、大日本住友製薬が2億8,135万円、日本ビーシージー製造が2億8,060万円(3社合計で総額8億4,500万円)の共同出資を実施、出資後の株式保有比率は大日本住友 33.4%、INCJと日本ビーシージーがそれぞれ33.3%となった。

2013/11/13     独立行政法人医薬基盤研究所と大日本住友製薬ほか、新規結核ワクチンの共同開発に向け基本合意

ーーー

産業革新機構は12月21日、出資したクリエイトワクチンが解散し、産業競争力強化法に定める特定事業活動を行わなくなったため、支援決定を撤回したと発表した。

出資した2億8305万円は戻らない。

産業革新機構では、新規結核ワクチンの共同開発は終結したものの、今回のプロジェクトを通して、民間事業者からの資金供給の実現や、アカデミア、製薬会社、海外NPOによる共同開発を実施するなど、創薬分野における投資にとっての有用な経験を得ることが出来たとしている。

ーーー

産業革新機構は同日、他の1件についても解散したため、支援決定を撤回したと発表した。

出資先は INCJ検索で、産業技術総合研究所と産総研技術移転ベンチャーによって研究開発された音声検索技術の事業化を検討する目的で、2012年2月に INCJ全額出資(6000万円)で設立した。

対象となる音声検索技術は、インターネット上の動画サイト、音楽サイトなどマルチメディアコンテンツに含まれる音声をテキスト化せずに検索することが可能。

同技術は、動画サイトへの広告配信事業に活用できる可能性があり、ライブ映像配信サイトを経営する事業会社と協力し新たな音声検索エンジンのプロトタイプ開発を目指した。

約1年間の事業化検証を経て、事業パートナーとなる候補20社強と協議を行ったが課題が多く、本格的な協業に移行することが出来なかった。

その後も単発的に事業提携候補先が出てきたものの、グーグルやアマゾンなどが圧倒的に先行していることもあり、解散することになった。


2017/12/26 韓国公取委、2年前のたサムスン物産と第一毛織合併での株式売却命令を遡及修正

韓国公取委は12月21日、2年前のサムスン物産と第一毛織の合併過程では処分不要としていたサムスンSDIが所有するサムスン物産の株式約400万株を全て処分するよう求める是正命令を下すと発表した。

 

2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) となった。

ヘッジファンドのElliot Managementなどが反対したが、7月18日の臨時株主総会で承認した。

新しいSamsung C&T はSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となる。

李一族 → Samsung C&T → 三星生命 → 三星電子

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 

合併前に2つの循環出資があった。

サムスン物産→サムスン電子→サムスンSDI→サムスン物産
サムスン生命→サムスン電子→サムスンSDI→第一毛織→サムスン生命

循環出資はA社→B社→A社という具合に系列会社で株式の持ち合いを行うことで、グループのオーナーが少ない持ち株でグループ全体を支配することができるため、政府は新規の循環出資を禁止している。

サムスン物産と第一毛織の合併に際し、サムスンSDIが保有する旧サムスン物産株404万株と旧第一毛織株500万株とが問題になった。サムスンSDIによる支配力が強まるためである。

公取委は当時、サムスンSDIが保有していた旧サムスン物産株は既存の循環出資、旧第一毛織株は新規の循環出資とみなし、後者のみ売却を命じた。

これについて今回、前者についても売却を命じたもの。

公取委は今回の措置について、「誤った決定を是正したものだ」と強調している。
2年前に公取委の実務担当者はサムスンSDIが保有株式を全て売却すべきだとの意見を具申したものの、幹部がサムスン側の働きかけを受け、半数のみ売却を命じる誤った決定が下されたとしている。

 

これについて財界は、「政権交代で以前の決定が覆るとすれば、政府を信頼することはできない」と反発している。

 


2017/12/27  千代田化工、キャメロンLNGプロジェクトの契約変更

千代田化工は12月20日、同社と米国 CB&IとのJVのCCJVが建設中のCameron LNGプロジェクトに関し、 顧客Cameron LNG社との間で行われていた契約条件交渉が合意に至 ったと発表した。

当初の問題と、本年8月にテキサス州を襲った Hurricane Harveyの影響を含め、全て解決した。


本件合意の主要なポイントは以下の通り。
 
・ 過去の未解決事項についての合意が確定し、全てのLNGトレイン(系列)の生産開始を2019年とすること
・ 早期完成インセンティブボーナス条項の設定
・ 今回合意したプロジェクトスケジュールに基づく、遅延賠償金起算日の見直し

 

事態は次の通り。

Cameron LNGプロジェクトは、米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGが、ルイジアナ州HackberryのLNG輸入基地の輸出基地への転用工事を2013年後半より開始し、総工費60億ドルで1系列年間400万トン能力の液化設備3系列(合計能力 1,200万トン)を建設するもの。

千代田化工とCB&IとのJVのCCJVは、天然ガス液化設備と輸出設備の設計・調達・建設業務を担当する。

CB&Iのルイジアナ州Baton Rouge の製造、設計、建設拠点で数百人規模の雇用創出が見込まれる。

千代田化工は世界のLNGプラントの生産量のうち、40%超の建設実績を持つコントラクターとして、革新的なプラント設計手法やグローバルなプロジェクト遂行体制を駆使して、北米LNG案件の取り込みを加速させていく方針。
 

三井物産と三菱商事は2013年5月17日、Sempra Energyとの間で、Cameron LNGに関する天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。 

三菱商事は日本郵船とのJVで参加、他にGDF Suezも参加する。
年間400万トンx 3基の設備の1基ずつを三井、三菱、GDFSが委託することとなる。

三菱商事、三井物産及びGDF Suez社が、Cameron LNG社とそれぞれ20年間にわたって年産400万トンの天然ガスを、日本を中心にアジア市場へ向けて液化・輸出する。
 


 
2012/4/20 三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

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計画は順調に進み、3系列共に2018年末までにスタートする予定であったが、Sempra Energy は2016年10月末にCCJVから計画が遅延することを伝えられた。

CB&Iのルイジアナ州Baton Rouge の製造、設計、建設拠点での大雨と洪水が原因で、この時点では、第1系列が2018年央、第2系列が2018年後半、第3系列が2019年央と見込まれた。

2016年8月12日から1週間以上、米国南部のルイジアナ州のBaton Rouge周辺の地域が豪雨に見舞われ、記録的な洪水が発生した。

高い海水温と記録的な高湿度にあおられた熱帯性低気圧のかたまりが、ゆっくり移動した。

この大雨と洪水で、CB&Iの工場での建設工事に支障が出たとみられる。

なお、これに加え、2017年8月にHurricane Harveyがテキサス州に上陸した。
上陸時の勢力は「カテゴリー4」と、同州に上陸したハリケーンとしては1961年以来の強さとなった。沿岸部では浸水が発生した。

Lake Charles 近郊のCameron LNG の現地でも被害が出たと思われる。

計画遅延が明らかになった2016年11月初めに、Sempra Energy は次のように述べていた。

遅延は残念だ。契約では、CCJVがスケデュールについて責任を持つ。契約には損害の弁償の項目もあり、Cameronの需要家への影響を緩和する。

今回、この遅延問題が解決したもので、3系列とも生産開始を2019年とした。当初計画からの遅れについての損害賠償で合意したとみられる。(不可抗力条項がなかったのだろうか?)

同時に新しい完成目標から早まった場合のボーナス等も決めた。

 


2017/12/28 韓国ロッテ、インドネシアのABSメーカー2社を買収 

Lotte Advanced Materials は12月21日、インドネシアのABSメーカー2社、PT Arbe StyrindoPT ABS Industri Indonesia の全株式を買収する契約を締結した。東南アジアでABSの需要が増大することを見込んだ。
買収金額は明らかにしていない

2社のABSの能力(コンパウンドを含む)は合計4万トン程度だが、赤字のため10月以降は停止している。

Lotte Advanced Materials では来年にかけて工場を整備し、能力を年産73千トンに増やす計画で、2019年から正常操業を行う。

両プラントはジャワ島西部のBantenにある。

BantenではロッテグループのLotte Chemical Titanが40億ドルを投じて石化コンビナートを建設中(下記)。

Lotte Advanced Materialsでは2022年までにインドネシアに年産30万トンのABSプラントを建設することを計画している。

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韓国ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長は2011年2月、30〜50億ドルを投じ、インドネシアに石油化学工場を建設すると表明した。

同氏はジャカルタでユドヨノ大統領と会見した後、「本年にBanten地区の Merakでの石油化学計画のFSを開始する。投資額は30〜50億ドルと予想している」と述べた。来年にも建設を開始し、4〜5年で完成させたいとしている。

2011年4月、インドネシアのBOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)メーカーのPT Titan Kimia Nusantaraは40億ドルを投じてエチレンプラントを建設する計画を明らかにした。

社長によると、韓国の湖南石油化学がファイナンスを行う。建設費の70%は湖南石油化学が出し、残りは韓国輸出入銀行が融資する。

エチレンプラントはMerakにあるBOPPプラントの近くに建設する予定。

2011/4/27 韓国ロッテグループの湖南石油化学、インドネシアでエチレンプラント建設へ 

PT Titan Kimia Nusantaraは2010年にロッテグループの湖南石油化学がマレーシアのTitan Chemicals を買収し、これに伴い、Titanのインドネシア子会社を手中にしたもので、2013年にPT Lotte Chemical Titan Tbk.に改称している

 

  インドネシア マレーシア
BOPPメーカー) HDPE/LLDPEメーカー) (エチレンコンプレックス)
1987 PT Indofatra Plastik Industri 設立    
1988 PT Fatrapolindo Nusa Industri と改称    
1989     台湾のT.T. ChaoTitan Chemicals を設立
1991   P.T. PENI設立  
2001 マレーシアのTitan が買収、
PT Titan Kimia Nusantara Tbkに改称
   
2003   Indika GroupP.T. PENIを買収  
2006   Titan ChemicalsP.T. PENIを買収、
PT. TITAN Petrokimia Nusantara と改称
PT Titan Kimia の子会社に)
 
2010 右により、湖南石油化学が
     
PT Titan KimiaPT. & Titan Petrokimiaのオーナーに
湖南石油化学、Titan Chemicalsを買収
 Lotte Chemical Titan
2013 改称
PT Lotte Chemical Titan Tbk.
改称
PT Lotte Chemical Titan Nusanta
 

 



2017/12/29 韓国LGディスプレイ、中国に有機ELパネル工場建設 

韓国LGディスプレーは12月26日、中国広州市に有機ELパネルの工場を建設する計画について、韓国政府の承認が得られたことを明らかにした。

投資計画を発表してから5ヵ月後が経過している。

LGディスプレーは7月25日、中国の広東省広州市に新型ディスプレーである有機ELパネルの合弁工場を建設すると発表した。中国初の大型有機ELパネルの工場となる。

LGは同日、中国と韓国で9兆6千億ウォン(約9600億円)を投資し、有機ELを増産する計画を発表した。
このうち1兆8千億ウォン(約1800億円)を資本金とし、中国企業と合弁会社をつくることを盛り込んだ。合弁相手は未定だが、LGが7割の株式を握る。(総投資2兆6千億ウォン)

新工場の稼働時期や設備投資の総額は合弁相手が確定した際に公表する。

増産計画では、ソウル郊外の京畿道・坡州にある大型パネルの生産棟に2兆8千億ウォン、スマートフォン用の中小型パネルの生産棟に5兆ウォンを投資することも決めた。

テレビ用有機ELパネル製造技術は、韓国政府から研究開発費の支援を受けて開発した国の重要技術であり、国のコア技術の工場を海外に建設するためには、「産業技術流出防止法」に基づいて産業通商資源部長の承認を得なければならない。

通常は、企業が政府に海外工場設立承認を要請すれば政府は45日以内に審査を終えなければならない。技術審査期間を合わせても最大90日を超えた事例はなかった。
今回は、新政権の国内雇用増大政策と技術流出懸念、高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐる中国政府との関係など多様な変数が作用したため、時間がかかった。

産業通商資源部は同日、産業技術保護委員会を開き、LGディスプレイのテレビ用有機EL製造技術の輸出案件を承認したと発表した。

政府はLGディスプレイに対し、
@生産装備・材料の国産化比率を一定水準以上で維持することA技術が流出しないようセキュリティ対策を立てることB次世代技術は韓国国内に投資することの3つを条件として掲げ、LGは下記の通り、いずれも問題ないため、この条件に同意した。

今回の投資は韓国国内で量産した第8.5世代(2200×2500ミリ)有機EL と同じ設備を中国に建設することだが、すでに主要装備と材料の大部分を国産化し量産している。

技術流出防止のために韓国政府と合同対策班を設けて6カ月ごとに現地のセキュリティ状況を点検することにしたが、履行は難しいことではない。

韓国坡州に建設した最先端第10.5世代ラインを今後最新有機EL技術研究開発と生産基地とする計画のため「今後の国内投資」の約束も障害はない。

LGは今後、合弁先企業の選定など事業化を急ぐが、2019年4〜6月としている量産開始時期は遅れる可能性がある。

工場が完工すれば第8.5世代規格の有機ELパネルを月6万枚生産できるラインが本格稼動する。
LGにとって、現在月5万5000枚の大型有機ELパネル供給能力が2倍以上拡大することになる。

LGディスプレー関係者は「中国との格差がほとんどなくなった液晶パネルよりは韓国が技術優位にある有機ELにテレビ市場がシフトすれば技術リーダーシップを当分維持できる」と話した。「特に韓中自由貿易協定の無関税品目から有機ELパネルが除外され、今後対中輸出時にパネル15%、セット30%の関税がかかる懸念があった。今回の承認でこうした負担を減らせることになった」としている。

現在モバイル用中小型有機ELパネルは世界市場の97%以上をサムスンディスプレーが独占しているが、テレビ用大型パネルはLGディスプレーが世界で唯一生産している。

  


2017/12/30    サムスン副会長の控訴審、検察側12年求刑

韓国・朴槿恵前政権で起こった国政介入事件で朴前大統領とその長年の知人の崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を言い渡されたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審が12月27日、結審し、検察は懲役12年を求刑した。

付記

韓国のソウル高裁は2018年2月5日、李在鎔被告に懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡した。懲役5年の実刑としたソウル地裁の判決を変更した。李被告は5日にも釈放される見通し。

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韓国の前大統領、朴槿恵被告側への贈賄罪などに問われた国政介入事件で、ソウル中央地裁は2017年8月25日、李在鎔・サムスン電子副会長に懲役5年(求刑12年)の判決を言い渡した。

李在鎔副会長の主要容疑は次の5つ。
△賄賂供与
△賄賂供与の目的で会社の公金を横領
△賄賂供与の目的でドイツに送金した、財産の海外逃避
△賄賂を隠蔽するために犯した犯罪収益隠匿
△国会での証言・鑑定に関する法律違反

公判では、李被告が闘病中の父李健熙・サムスン電子会長から経営権を継承するため、朴被告に便宜供与を求めて賄賂を渡したかが問われた。

サムスンは2015年8月に崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した。
2015年10月と2016年1月には崔被告のめいのチャン・シホ氏が設立した韓国冬季スポーツ英才センターにも16億2800万ウォンを後援した。
崔被告が設立に深くかかわった文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」に204億ウォンを拠出した。
支援を約束したものまで含めると総額430億ウォン(約41億3600万円)に上る。

特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 

裁判では、贈賄や横領など問われた罪のすべてを有罪とした。

副会長は控訴した。

2017/8/28   サムスン電子副会長に実刑判決、ソウル地裁


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控訴審で、特別検察官は「この事件は経営権の継承を対価に大統領とその側近に賄賂を送った政経癒着事件の典型」と指摘した。また「グループ会社の合併を成功させて得ることになった李被告のサムスングループにおける支配力と経済的利益は、賄賂の対価にほかならない」とし、「今回の犯罪は国内最大の超一流企業サムスンにとって消すことができない汚点になるだろう」と主張した。 

李被告側の弁護人は最終弁論で「被告人は国政介入事件の被害者であり、本体や主犯でない」とし、「特別検察官チームの誤った認識がこの事件の実体を深刻に歪曲している」と批判した。 

李被告も「財産、(株式の)持ち分、地位に対する欲のようなものは毛頭なかった。サムスンを熱心に経営し、世界の超一流企業のリーダーとして認められるのが夢だった」とし、「大統領が助けてくれれば成功すると考えるほど愚かでなかった」と無罪を主張した。

検察はサムスングループ元未来戦略室室長、元未来戦略室次長、サムスン電子元社長にはそれぞれ懲役10年、サムスン電子元専務には懲役7年を求刑した。

判決公判は2018年2月5日午後に行われる。


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