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目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2017/2/16 東芝の状況
東芝は2月14日に予定した第3四半期の決算発表を延期した。
WestinghouseによるS&W買収に関し、不適切な行為が判明し、継続調査が必要になったという。
S&W買収に関する「のれん代」を過少に見積もった疑いがあるとされる。
Westinghouse経営者による不適切なプレッシャーが存在した疑いもある。
本ブログは1月24日の記事で、Westinghouseが2016年8月12日以前の時点で、30億ドル強の損失を認識していた筈で、このことを12月までトップにあげていないこととなるとし、粉飾決算事件から再出発した筈の東芝の経営体制は一体、どうなっているのだろうかと述べている。
同日、原子力事業を統括してきた志賀会長の辞任、エネルギーカンパニー社長(Westinghouse会長)のダニー・ロデリック氏のカンパニー社長解職も発表した。
決算について公認会計士事務所のレビューが未完のため、参考として、同社の責任で第3四半期の実績と2017年3月度決算の概要を明らかにした。
第1〜第3四半期 実績
営業損益 -5,447億円 (原子力部門のれん償却
-7,125億円)
純利益 -4,999億円
2017年3月期 予想
営業損益 -4,100億円
純利益 -3,900億円
株主資本 -1,500億円
対策なしでは債務超過
金融機関からの融資に支障
東証2部に変更
対策として、これまで分社するメモリー新社の19.9%を売却するとしていたが、社長は社内放送で「もうマジョリティにこだわらない」と述べた。
売却先候補が2割では魅力に乏しいされていた。
しかし、この場合、公取委の審査などで3月末までに売却を決めることは出来ない。昨年の東芝メディカル売却で使った奇手は使えない。
東芝では、有利な条件で売却するため、時間をかけて交渉することとし、東証2部落ちを覚悟したと報じられた。
1年後に債務超過を解消できなければ上場廃止となる。
付記
東芝は6月23日、東芝株式を市場第一部から第二部へ指定替えする通知を受けたと発表した。あわせて上場廃止基準にかかる猶予期間銘柄(債務超過)となる。
市場第二部への指定替え期日は8月1日。上場廃止猶予期間は4月1日から2018年3月31日までになる。
また、2016年度(2016年4月〜2017年3月)有価証券報告書の提出期限を2017年8月10日に延長するよう財務省関東財務局に申請して認められたことを発表した。
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同社は原子力事業の問題点についても明らかにした。
Westinghouseの赤字の理由については、既報(2017/1/24
東芝の原子力事業の損失の実態)の通りである。
米国での2原発(計4基)の建設で工事が遅延、建設費が大幅アップした。
電力会社からの訴訟、WestinghouseとS&Wの訴訟の可能性などを一括解決し、プロジェクト完工に注力するためS&Wを買収した。
電力会社とは契約金額の増額(電力会社の負担上限の決定)、納期変更で合意した。
ところがS&W買収後のチェックで、コスト見積もりが大幅に増加した。
コスト見積もり増加額の内容
労務費(直間人件費) 37億ドル 作業効率低下、物量増加、直間接人員増加等
調達コスト(設備、下請け) 18億ドル 設備の購入価格上昇、下請け業者支払増加
予備費等 6億ドル 損害賠償費用、ワランティ費用等
合計 61億ドル
東芝では当初、S&W買収の「のれん」を87百万ドルとしていたが、今回、5,368百万ドル(6,253億円)を計上した。
そして、第3四半期にこの全額と、Westinghouse買収の「のれん」残額を償却する。
のれん償却額 S&W買収 6,253億円(5,368百万ドル)
Westinghouse買収
872億円 当初29.3億ドル(3,500億円)、2016年5月発表の償却
2,476億円の残り全額
合計 7,125億円
純損益への影響
-6,204億円 非支配株主持ち分、法人税影響、繰延税金資産取り崩しを除く
原子力事業の営業損益推移 (億円)
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09年度 |
10年度 |
11年度 |
12年度 |
13年度 |
14年度 |
15年度 |
16年度予 |
営業損益 |
416 |
535 |
452 |
147 |
-358 |
-4 |
-2,088 |
-6,995 |
うち「のれん」減損 |
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-2,476 |
-7,125 |
今後の原子力事業の方針は下記の通り。
国内事業
再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に、社会的責任を果たす。
海外事業
燃料・サービス:高収益かつ安定したビジネスとして継続
新設プラント:今後は建設リスクを負担せず、機器供給やエンジニアリングなどに特化
進行中の8基は、コスト削減策を講じ、リスクを低減
米国2原発 計4基
浙江省台州市三門県 三門原発 2基
山東省煙台市海陽市 海陽原発 2基
英国のNuGenのプロジェクトについては、土木建築リスクを負わない前提で検討をすすめ、従来通り出資希望者への持ち分売却を検討するとしている。
東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF
Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。
NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。
NuGen は、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。
Westinghouse Electric のAP 1000 を3基建設する予定。東芝は
原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。
2013/12/27
英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加
日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。世耕弘成経済産業相が同日、来日したGreg
Clark
ビジネス・エネルギー・産業戦略相と会談し、覚書を結んだ。
覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa
で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
また、原子力の研究開発や、福島第1原子力発電所の廃炉や除染などでも協力を深めることを確認した。
2016/12/27
日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象
この協力覚書は実質的には日立と東芝の計画を支援するものである。
報道では、東芝はNuGenの持株を韓国電力公社(Kepco)に売却するための検討に入ったとされる。
韓国電力関係者はこれについて「東芝が実際に売却の提案をしてくれば提示した条件次第で判断する問題」と述べた。
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2017/2/17 DuPont とChemours、PFOA被害訴訟で和解
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DuPontとChemoursは2月13日、West
Virginia州のDuPontのWashington 工場から河川に流出した化学物質
PFOA(Perfluorooctanoic
acid:C7F15COOH)により健康被害を受けたとする3550件の訴訟で、合計 6億7070万ドルの支払いで和解したと発表した。和解金はDuPontとChemoursが等分に負担する。
同訴訟は、ウェストバージニア州のデュポンのWashington工場から流出した化学物質ペルフルオロオクタン酸(PFOA)が混じった飲料水が原因で、ウェストバージニア州とオハイオ州の住民が
癌などの健康被害を受けたとするもの。PFOAはフッ素樹脂「テフロン」の製造過程で使われた。DuPontは10年以上前にPFOAの生産を停止している。
原告側は、DuPontは1950年代からWashington工場から空中およびオハイオ川にPFOAを流出してきたが、1980年以降、ラットに癌を発生させることを知りながら、隠し、流出を続けたと非難した。
工場の近くの井戸水を飲む住民は血液中に平均の7.6倍のPFOAがみつかったとする。2012年に科学パネルはPFOAと肝臓癌など6つの病気に関係する可能性("probable
link" )があると結論づけた。
裁判の途中で和解が発表され、陪審員は帰宅を命じられた。
原告のうち、200人ほどの癌患者は最低100万ドル、コレステロール患者は数万ドルを受け取るとみられている。
両社とも不法行為(wrongdoing)を否定している。
ChemoursはもともとDuPontの化学品事業で、2015年に分離・独立した。DuPontとは
独立時にPFOAの訴訟関連費用の負担について合意していた。
DuPontは2013年7月23日、Performance
Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。
Performance Chemicals 事業は、酸化チタンを中心に、フッ素化学品、フッ素樹脂などを扱っている。
スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討するとしたが、その後、2015年央にスピンオフすることを決めた。
名称は
The Chemours Companyで、New Yorkで上場する。
2015年7月1日に、株主にDuPont株式 5株当たり新会社株式
1株を渡した。
2015/6/12 DuPont、Performance
Chemicals 事業を分離
今後も支払いが発生する可能性があるため、これについても決めている。
今後5年に発生する債務については、最初の25百万ドルまではChemoursが、次の
25百万ドルまではDuPontが、それを超える分はChemoursが負担する。
5年以降については、DuPontは責任を持たない。
ーーー
PFOAは、パーフルオロオクタン酸およびその塩類(アンモニウム塩、アルカリ金属塩;C7F15COOX、XはNH4、Na、Kなど)を含む化合物の総称。また炭素が8個含まれていることからC8と呼ばれることもあ
る。
PFOAは、半導体・情報通信・自動車・航空産業・化学工業・調理用器具コーティングなど、幅広い用途で使用される一部のフッ素樹脂・ゴム製品の製造に必要な助剤として使用されてい
た。
2000年に米国においてPFOAのヒトへの蓄積性が注目され、メーカー各社と米国政府が研究を行った。
PFOAは安定な物質だが、その反面、環境残存性もある。生体に摂取された場合、生体からの排出が遅いことから、蓄積する可能性を有している。
動物実験における、通常ではあり得ない高濃度かつ長期間投与では、影響を引き起こすことが米国を中心とした研究で報告された。
2006年1月末に、EPAは「PFOA自主削減プログラム」を発表し、世界の主要フッ素化学メーカー8社に対しプログラムへの参加を呼びかけ
、各社はこれに応じた。
DuPont、3M、旭硝子、Solvay、Arkema、Clariant、Ciba Specialty
Chemical、ダイキン工業の8社
「PFOA自主削減プログラム」の内容は次の通り。
(1) PFOA、もしくは分解してPFOAを発生する前駆体物質、およびC8より炭素数の多い類縁物質の、工場から環境中への排出量、製品中含有量の両方について、2010年に2000年比
95%削減すること。
(2) PFOA、もしくは分解してPFOAを発生する前駆体物質、およびC8より炭素数の多い類縁物質を2015年に全廃することに対する努力を行うことを約束すること。
2017/2/18
米医療保険再編、2件頓挫
米医療保険3位のAetnaによる同4位のHumanaの買収と、2位のAnthemによる5位のCigna
の買収が、撤回を求める司法省による訴えを裁判所が認めたことで頓挫した。
このうち、前者は合併契約の破棄で合意したが、後者については控訴を求めるAnthemと契約破棄を求めるCignaの争いが起こっている。
付記
米控訴裁は4月28日、連邦地裁のAnthemによるCignaの買収計画を差し止める2月8日の判断を支持した。
Anthemは合併で数十億ドルの医療費の節約になるとの主張に対し、医療費節約の根拠を説明していないとした。
これに対し、Anthemは最高裁に上告するとともに、この判決があるまでの間、Cignaが契約を終了させることの禁止を求めて訴えた。最高裁はこれを受け付けないとみられている。
デラウェア州衡平法裁判所は5月11日、Anthemのこの要請を却下した。
Cignaは5月12日、Anthemが最高裁への上告をしなかったことから、契約は終了したと発表した。
合併契約上、Anthemは合併の承認を得るための努力をすることとなっているが、この義務を怠ったために承認を得られなかったとして、契約に基づく18.5億ドルの解約金の即時支払いと、加えて、130億ドルを超える損害補償の支払いを要求した。
これに対し、Anthemは契約終了通知をCignaに送付したと発表、加えて、Cignaは契約上の義務を怠ったため、解約金を求める権利はないとしている。
今後もこの争いが続く。
米連邦最高裁判所は2015年6月25日、オバマ米大統領が推進するObamaCare
(医療保険制度改革法)の一部の政府補助金支給の是非について争われた裁判で、6対3で支給は合法とする判断を下した。
ObamaCareは医療保険に未加入だった低所得者に安価な保険を提供するため、民間の医療保険購入者に政府が補助金を支給する仕組み。
2015/6/27 米最高裁、ObamaCare補助金支給は合法と判断
これを受け、事業基盤強化へ向けた医療保険会社の再編が加速した。
米医療保険1位のUnitedHealth Group も2015年6月に
Aetna の買収を打診した。買収額は400億ドルを超えるとみられていたが、成立しなかった。
米医療保険3位のAetnaは2015年7月3日、同4位のHumanaを370億ドルで買収すると発表した。
米医療保険2位のAnthemは2015年6月から同5位のCigna
に買収提案を行い、数度にわたって買収額を引き上げた結果、7月24日に負債を含め542億ドルで買収すると発表した。
これに対し、米司法省は2016年7月21日、AnthemによるCigna
の買収と、AetnaによるHumanaの買収が、それぞれ反トラストに違反するとして、撤回を求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。
買収により米国の大手医療保険会社5社が3社に減るが、価格競争が制限され、給付が減り、新しいウエルネス制度の供与のインセンティブが減り、治療の質が低下することで、老人、患者、医師、ヘルスケア団体に不利益を与えるとした。
司法省は、国民が手頃な価格で高品質のヘルスケアを享受するには医療保険会社の競合が必須であるとし、これらの買収による合併はCigna
とHumana を除外することで、米国の健康保険に対する強大なパワーをたった3社に与えることになるとする。
11の州とDC がAnthemによるCigna
買収に対する司法省の訴訟に加わり、8つの州とDCがAetnaによるHumana買収に対する訴訟に加わった。
2016/7/27
米司法省、2件の医療保険会社の買収の撤回求め、提訴
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米連邦地裁は2017年1月23日、3位Aetnaによる4位Humanaの
買収計画を差し止める判断を下した。
裁判長は、競争を減らすため、独禁法に違反するとした。
この結果、AnthemによるCigna
に買収も同様の結果となるとみられ、4社の株価は下落した。
Aetnaと Humanaは当初、控訴を検討するとしたが、2月14日に合併計画の破棄で合意した。
合併契約では、反トラスト法上の理由で取引が成立しなければ、Aetnaは違約金 10億ドルをHumanaに支払うとなっており、Aetnaは違約金
10億ドルを支払う。
Aetnaはまた、合併を進めるため、 Medicare
Advantageの一部をMolina Healthcare に売却するとしていたが、これも取り止め、Molina に違約金
75百万ドルを支払う。
Humana は、本年末にObamacare
個人保険から撤退すると発表した。同社は2016年に赤字となっており、医療コストが高過ぎるとし、プログラムの変更が必要としている。
Trump大統領は、Aetna のCEOが「Obamacare は
Death Spiral だ」と言ったという報道を引用し、twitterで、“Aetna
CEO: Obamacare in 'Death Spiral' #Repeal And Replace"
(Obamacareを廃止し、取り換えよう)と述べた。
ーーー
米連邦地裁は2017年2月8日、AnthemによるCignaの買収計画を差し止める判断を下した。
両社の合併が競争を減らし、その害が合併で謳っている効率向上のメリットを上回るとした。
これに対し、Anthemは2月9日、控訴すると発表した。合併で年間20億ドル以上の医療費が減るとし、判決に不満を表明した。
一方、Cignaは慎重に対応オプションを検討するとしたが、2月14日、合併の承認を得ることが出来ないと考えるとし、合併契約を終了する権利を行使すると発表した。
Cignaはデラウェア州衡平法裁判所に提訴し、合併契約の終了を法的に認めることを求めた。そしてAnthemに対し、契約に基づき18.5億ドルの違約金と、加えて、130億ドルを超える損害補償を求めた。
これには、買収が実行できないことで、株主が得られないプレミアムが含まれる。
これに対し、Anthemは
、合併契約は4月30日まで有効であり、CIGNAは撤退できないとした。CIGNAの提訴は無効だとして「Anthemは合併計画に基づく権利を行使していく」との声明を出した。
デラウェア州衡平法裁判所は2月15日、Cignaが直ちに合併契約を終了することを一時的に禁止した。4月10日の週に裁判所によるヒアリングが行われる。
2017/2/20 米国の国境税案米共和党のPaul Ryan下院議長は2月16日の記者会見で、日本製品が輸出時の税制で米国製品より優利な扱いを受けていると指摘し、米法人税制に輸出課税を免除し
、輸入課税は強化する国境税(the
border adjustment tax または
destination-based tax)の導入を求めた。
日本や欧州は消費税のような付加価値税で課税を国境調整しているが、米国には付加価値税がなく、不公平だと主張した。
たまたま手元にあったソニー製
ICレコーダーを取って「日本製品は輸出時に課税を免除され、米国に入ると課税されない」と指摘。米国製品には日本で消費税がかかるが、日本製品には米国で付加価値税がかからないことから、米国製品が貿易で不利益を被っていると強調した。
(米国には国としての付加価値税はない。なお、輸入品でも
ほとんどの州で州法でSales Taxは課される。)
Ryan下院議長は下院共和の税制改革案を立案した一人で、現在35%の連邦法人税率を20%に引き下げ、輸出は免税して輸入品には20%をそのまま課税する「国境調整」の導入を求めている。
これに対し、Trump大統領は、法人税は一律15%とし、国境税調整は
無し。その代り海外に工場を建て、そこで生産した製品をアメリカに持ち込もうとする企業には35%の関税をかけるとしていた。
共和党案は下記の通り。
輸出品については、法人税を免除。
輸入品は法人税の計算上、コストと認めない。このため、輸入品のコスト分が利益となり、20%が課税される。
輸入のケースの例は下記の通り。
製品輸入でコストが700、これに国内コスト100を加え、総コストが800、これを1,000で売り、200の利益が出たとする。
全て国産品なら、税務上のコストは800で、課税所得は200となり、税金は40で、税引後損益は160となる。
しかし、輸入品の場合、総コストは同じでも、国内コストの100のみが税務上のコストとなるため、課税所得は900となり、税金は180で、税引後は20と激減する。
この場合、本来の160の税引後損益を得るためには、175(17.5%)の値上げが必要となる。
この法人税改革が実現すると、日本をはじめ、中国、メキシコなど貿易相手国からの対米輸出品は大きく値上がりする。日本の自動車の対米輸出が半減するとの民間試算もある。
ーーー
しかし、この案は実現しないだろうとみられている。
自動車だけでなく、衣料品や日用品、家電や玩具など多くの製品が輸入品であり、これらがすべて値上がりとなり、消費者に大打撃となる。
関係業界の反対も強く、共和党の内部でも多くの議員が反対している。
大統領は2月17日、ボーイングの工場を視察し、787旅客機を「夢を実現した」と絶賛したが、海外製部品の割合は7割近くに達する。(日本は35%を担当)
また、WTOのルールで、国境調整は認められない。
WTOルールでは補助金(直接又は間接に自国の領域からの産品の輸出を増加させ
、又は自国の領域への産品の輸入を減少させるもの)を禁止している。
但し、国内消費に向けられる同種の産品に課される内国税を免除
することは認められる。
(日本の消費税は国内での消費に課税されるものであり、輸出品が免税となるのは認められる。原料の消費税も還付される。)
米国には日本の消費税に相当する付加価値税はなく、法人税だけである。
このため、法人税の計算で、輸出を免税にしたり、輸入品のコストのみに損金算入を認めないのは補助金となり、ルール違反となる。
米国は過去に輸出の免税でWTOから違反の認定を受けている。
米国には、1972年に施行された米国の「内国国際販売会社」(Domestic International
Sales Corporation:DISC)税制があった。
DISC は米国生産された製品の輸出によって所得を得る内国法人で
、実質的に法人税の1/4が免税となった。
この制度はWTOのメンバー国からの激しい批判によって、1984 年末をもって廃止された
。
しかし、米国はこれに代えて、Foreign Sales
Corporations(FSC)制度をつくった。
米国企業を親会社として適格諸国におかれた外国法人で、その「外国貿易所得」は
米国における取引および事業と有効に関連したものとはみなされず、米国所得税を免除される。
この場合、これを使って輸出する米国企業は、実行税率で最大40
パーセントの米国課税を免除される。
この制度も違反と認定された。
Trump大統領の場合、WTO脱退も言い出しかねないが、企業や消費者への影響が大きいため、賛同は得られないだろう。
2017/2/21 日立、英原発事業で米電力大手と協力
日立製作所は2月16日、英国の原発プロジェクトを計画している子会社のHorizon
Nuclear Power Limitedが、米国の発電事業者で北米最大規模の原子力発電所を運営するExelon Generation
Companyとの間で原発運営に関して協力することで合意したと発表した。
今回の合意に基づき、Exelon
は百年以上にわたり積み重ねてきた高い優位性を持つエンジニアリングや保守、運営ならびに訓練の各分野における経験やノウハウを活かして、Horizon
初のプロジェクトとなる北ウエールズのAnglesey島のWylfa
Newydd
におけるABWR (改良型沸騰水型原子炉)の原発を運営するための技術や能力を高めていくとともに、Horizonが原発運営モデルを確立できるよう支援する。
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日立製作所は原発事業でGEと提携している。
日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEからHorizon
全株式を買収する契約を締結した。
買収額は6億7000万ポンド(約850億円)。
合わせて、建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock
International、Rolls
Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin
と協力覚書を締結した。
Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa
Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn
の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ
2〜3基)を建設する。
第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。
日立とGEのJVのGE Hitachi Nuclear
Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR:Economic
Simplified Boiling Water Reactor)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。
2012/11/1
日立製作所、英の原発会社買収
Horizonと日立は、Horizon初のプロジェクトとなるWylfa
Newydd 原発建設において、2018年までに全ての許認可を英国政府から取得し、2019年に着工、2020年代前半の初号機運転開始をめざしている。
2基にかかる総事業費を現時点で約190億ポンド(約2.6兆円)と想定。日立が総事業費の1割程度、英国政府が25%以上を出す案が出ている。
日本原子力発電(日本原電)は2016年7月7日、日立製作所及びHorizon との間で、Wylfa
Newydd
の新規原発建設プロジェクトに関し、許認可段階における協力協定を締結した。
日本原電が培ってきた経験やノウハウを活かして、Wylfa
Newydd 原発の建設費評価やEPC (設計・調達・建設)
契約締結に向けた作業、サイトライセンス、建設前安全性影響評価報告書を含む許認可取得、試運転の計画、運転開始後の各種メンテナンス計画の策定などを進める。
2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力
今回のExelonとの提携で、建設完了後の原発の運営に関し協力を得る。東芝が海外の原発事業の見直しに動くなか、日立は日本原電および海外パートナーとの協力体制を固め、事業を軌道に乗せたい考え
。
なお、日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。世耕弘成経済産業相が同日、来日したGreg
Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相と会談し、覚書を結んだ。
覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa
で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
また、原子力の研究開発や、福島第1原子力発電所の廃炉や除染などでも協力を深めることを確認した。
2016/12/27
日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象
この協力覚書は実質的には日立と東芝の計画を支援するものである。
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Exelon Generation
は、32,500メガワットの発電容量を有する米国内で最大かつ最も効率的でクリーンなエネルギーを発電する会社の一つ。イリノイ州やメリーランド州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州において13の原子力発電所で計22基、19,400メガワットの発電容量を有しており、米国において最大規模の原子力発電所を運営している。
そのうち8箇所の原子力発電施設がBWR (沸騰水型原子炉)を採用している。
また、米国16の州において風力発電、太陽光発電、landfill-gas 発電(廃棄物埋め立て処分場から発生するガスによる発電)、水力発電、天然ガスや石油施設を運営し、13,100メガワット以上の発電容量を有しており、業界屈指の安全記録を保持してい
る。
2017/2/22 番外編 本の紹介
河野太郎衆院議員のブログ 「ごまめの歯ぎしり」(2017.02.06)は「おすすめの一冊」
「イギリスは明日もしたたか」 林景一著
この安っぽい新書のようなタイトルはなんとかならんのかと思いますが、Brexitに関する入門書としておすすめです。
すでにこの問題に詳しい方にとっては付け足される情報はないかもしれませんが、Brexitに関して勉強を始めてみようという方の一冊目としておすすめの一冊です。
著者の林景一さんは外務省で条約局長、アイルランド大使、英国大使を歴任され、Brexitに関しては政府内でおそらく最も詳しい一人でしょう。
イギリスの政治的な背景から、離脱派、残留派それぞれの思いや議論をさまざまな視点から描き出しています。
どちらに肩入れするわけでもなく、バランス良く、描かれていますし、イギリスがこれからEUを離脱するまでに解決しなければならない問題はこんなにあるんだということを分かりやすく紹介しています。
メディアではほとんど取り上げられないけれど離脱するときまでに解決しておかなければならないこんな問題、あんな問題が例として挙げられていて、それを読むと、2年間でそんな交渉が終わるのかなと他人事ながら心配になります。
やはりBrexitに至るには、英国の歴史の積み上げがあったし、ヨーロッパの歴史の積み上げがあったんだなということを感じ、歴史を読み返さなくてはと思うようになります。
脚注も面白かったりするのですが、残念なのは参考文献が載っていないこと。
入門書としてこの本を読んだ読者が次に何を読んだらいいのかというおすすめがありません。
入門書を書くならば、次の一歩をぜひ載せていただきたいと思います。
この原稿を書きながら、改めて松岡正剛さんの千夜千冊というのはすごいものだと感心するやらあきれるやら。
読んでみて、河野議員のいう通りと思いました。お勧めします。
2017/2/23 キグナス石油とコスモ、資本業務提携
契約締結
キグナス石油とコスモエネルギーホールディングスは2月21日、資本業務提携契約を締結したと発表した。
資本関係に基づく広範な業務提携及び石油製品の売買を新たに行うことが両社グループの競争力強化を実現するものと考えた。
コスモはキグナスの普通株式20%を2017年度第1四半期中に取得する。
両社は3年後を目途に石油製品の売買取引を行う。
キグナスと東燃ゼネラルとの契約は2019年に切れる。
東燃ゼネラルとJXホールディングスが経営統合するのを機に、製品の供給元を2020年からコスモに切り替える。
これにより、両社グループをあわせた国内での燃料油販売シェアは14%となり、国内石油業界の第三極として永続的な成長と企業価値の最大化を目指す。
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給油所 |
2015
燃料油販売 |
コスモ |
3,054 |
21,350千kl |
キグナス |
493 |
4,040千kl |
合計 |
3,547 |
25,390千kl |
日本合計 |
|
183,077千kl |
ーーー
石油元売業界では、首位のJXHDと4位の東燃ゼネラルが4月に経営統合する。
2016/9/2 JXホールディングスと東燃ゼネラル石油、経営統合の最終合意
2位の出光興産と5位の昭和シェル石油は、統合に向けて出光はシェルから昭和シェル株式を買収したが、統合については創業家が反対し、難航している。
創業家側の代理人の浜田卓二郎弁護士は2017年2月9日、辞任した。創業家との間で見解の食い違いが生じたもよう。
2016/12/20
出光興産、シェルから昭和シェル株式取得
コスモだけが再編から取り残されていた。
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キグナス石油の歴史は次の通り。
1922年に日本漁網船具(現在のニチモウ)がヴァキュームオイルと潤滑油販売契約を締結、その後、「キグナス」ブランドを制定した。
1958年に日本漁網船具と東亜燃料の共同出資で日網石油精製を設立。
1960年にゼネラル石油川崎工場内で日網石油精製が操業開始。日本漁網船具が製品を一手販売開始。
その後、
1989年にキグナス石油精製に改称
1999年に東燃とキグナス石油精製の業務統合
2001年に東燃ゼネラル石油がキグナス石油精製を吸収合併
1972年 日本漁網船具(ニチモウ)と東亜燃料の折半出資で日本漁網船具の石油部門を分離独立、キグナス石油発足
2004年 石油販売大手の三愛石油がキグナス石油を180億円で買収。
三愛石油はキグナス株の買収と併せ、東燃ゼネラルの川崎製油所から長期で製品を安定的に調達できる権利も取得した。
系列給油所を多く抱える「メガディーラー」として仕入れ先に対する価格交渉力を一挙に高める狙いとみられた。
三愛石油
は1952年に石油製品の販売を目的とし、東燃ゼネラルの代理店として発足。航空機への給油事業も開始した。
現在の事業は下記の通り。
石油事業 今後、キグナスの80%を出資、引き続き主導する。
化学品事業 防腐防カビ剤やオートケミカル商品
航空燃料取扱事業
LPガス事業
天然ガス事業
太陽光発電の普及業務
2017/2/24 インドネシア、銅の輸出継続で混乱
既報の通り、インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1月12日、「ニッケルやボーキサイトの未加工鉱石について一定の条件を満たした場合に5年間の輸出を認める」と突然発表した。
2017/2/10 インドネシアのニッケル、ボーキサイトの輸出承認、フィリッピンは多数のニッケル鉱山に閉鎖命令
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インドネシア政府は2014年1月12日、国内での加工推進を目的とする未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。
インドネシアで採掘された鉱石を国内で加工・精錬することを義務付ける「鉱物・石炭鉱業法」(2009年制定)に基づくもので、加工製品の輸出増加を通じて、鉱物資源からの収益を長期的に拡大する狙いがある。
ただし、当局の間でも、未加工の鉱石の輸出禁止により、短期的には外貨収入が落ち込み、経常赤字が拡大し、通貨ルピーを圧迫する、大量の失業が発生するとの懸念があり、長時間の協議の末、加工・精錬を実施または計画している企業に2017年まで精鉱あるいは加工鉱石を輸出することを認めるという鉱物省の提案が採用された。2017年からは全ての企業が金属製品あるいは鉱石の精製品のみ輸出可能となる。
1) |
加工・精錬を実施または計画している企業は2017年まで、銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石を輸出できる。 |
2) |
ニッケル鉱石とボーキサイトについては、国内に十分な数の製錬所があるため、輸出禁止措置 |
3) |
石炭とスズの輸出は規制対象外 |
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このうち、ニッケルとボーキサイトは輸出禁止となったが、これが一定条件の下で輸出が認められることとなった。
問題となっているのは、1)の金属類で、これまで輸出が認められていたが、今回、期限切れで新しい規則ができた。
・ 従来は Contract of Work
(COW) により輸出が認められていたが、特別の操業ライセンス(IUPK) で2022年1月までの輸出が認められる。
・条件として、5年内に精錬所を完成すること、輸出税を支払うこと。
・外国のIUPK保持者は生産開始の10年以内に持ち分の51%をインドネシア資本に渡すこと。
・輸出ライセンスは1年ごとの更新で、6カ月ごとに精錬所の建設状況がチェックされる。
米国の鉱業大手Freeport-McMoran
はこれに異議をとなえ、2月中旬までに、濃縮銅の輸出許可を継続して得られないならば、Papuan州の鉱山での生産削減と地元労働者を削減するとした。
2月20日には同社CEOは、インドネシア政府に対して「4カ月以内に交渉に応じて問題を解決しない限り、国際調停裁判所への提訴に踏み切る」と話した。
同社では2015年10月付の政府からのレターで、新規則の発表後に直ちに、COWで認められていたと同じ権利での契約更新を認めるとなっていると主張、長期の操業許可の承認を得次第、新しい精錬所の建設にも着手するが、輸出税は免除されるべきだし、新ライセンスでの義務は協議すべきだとしている。
Freeport Indonesia社は、国内製錬所(PT
Smelting)で濃縮生産量の40%を精錬しており、政府が輸出継続の許可を出さない場合、生産量の削減が必要で、コスト構造を大幅に見直し、労働者の削減、坑内掘り開発事業と新規製錬所への投資を中止せざるを得ない。
政府は、その場合、短期的には、国家の収益は減少するが、長期的には、全ての鉱山の IUPKへの転換に繋がり、下流分野には好ましい状況になるとしている。
2017/2/25 新インフルエンザ開発のUMNファーマ、岐阜工場売却、債務超過に
アステラス製薬は1月10日、UMNファーマと2010年9月21日付で締結した細胞培養インフルエンザワクチンプログラムASP7374(UMN-0502)及びASP7373(UMN-0501)の日本での共同開発及び独占的販売に関する共同事業契約について、解約権を行使した
と発表した。
このワクチンはFDAが米国で承認しており、しかも孵化鶏卵不活化ワクチンよりも良い効果が出ている。しかし、医薬品医療機器総合機構より、リスク・ベネフィットの観点に鑑み、本剤の臨床的意義は極めて乏しく、審査の継続はできないとの見解が示されたため、アステラス製薬では、製造販売承認取得が困難と判断、申請取り下げ意思の決定に至った。
UMNファーマは生産面ではIHIと提携し、2010年6月に原薬の製造新会社
UNIGENを共同で設立したが、IHIはアステラスの撤退で事業の継続が難しいと判断し、撤退を含め検討する。
UMNファーマでは、国内における本剤の臨床試験成績や、Protein
Sciences Corporationでの試験結果や米国での使用状況から、本剤の臨床的意義は高いと認識しており、再度の製造販売承認申請の検討を行うとしていた。
2017/1/13 アステラス製薬、UMNファーマとの細胞培養インフルエンザワクチンの共同事業契約を解約
しかし、本事業での膨大な債務が問題となった。
UNIGEN岐阜工場建設に係るシンジケートローンA:
5,185百万円、IHIの債務保証残高は4,470百万円
UNIGENの運転資金に充当することを目的とするシンジケートローンB: 6,000百万円、IHIが6,000百万円の債務保証をSMBCに差し入れ
UMNは、トランシェA及びトランシェB全体に係る連帯保証人となっている。
トランシェA及びトランシェBでは、2016年12月末日までに、UMN-0502の厚生労働省による国内製造販売承認を取得することとなっており、これに抵触する。
IHIでは、
インフルエンザHAワクチンの製造販売承認申請取り下げを受けて,当該保証債務の履行可能性及び回収可能性を評価した結果,損失の発生の可能性が高まったものと判断し,1月23日、保証債務額の全額である110億円を特別損失として計上することとした。
これを受け、UMNとIHIは今後の対応を協議し、UNIGENを1月31日付でアピ株式会社に対して譲渡した(対価は公表せず)。インフルエンザワクチン原薬製造事業および製造設備をアピへ円滑に引き継ぐことで,UNIGENはアピの支援のもと事業を継続する。
アピの事業は下記の通り。
・ハチミツ・ローヤルゼリー等蜂産品、健康食品、医薬品の製造販売
・養蜂指導と養蜂器具の販売
・健康食品に関する研究
UNIGENの岐阜工場に隣接する製剤化工場を整備・運営している。
アピでは、これまでパートナーとして取り組んできた細胞培養法の技術的優位性と今後のバイオ医薬品事業の将来性に大きく期待をしており、UNIGEN事業を受け継ぎ、同社従業員の雇用を確保したうえで、地元産業の活性化に向けて、事業継承をすることを決定した。
なお、これまでの契約体系では、UMNはシンジケートローン全体を連帯保証しており、アステラスやIHIからも求償権を出される恐れがあったが、株式の譲渡の前提としてアステラス製薬、IHI、UMNファーマにより、UNIGENの金融債務が保証弁済された。
アピでは、求償権発生リスクもなく、債務がほぼ解消されたうえで岐阜工場等の資産を引継ぐことが出来、今後の積極的な取り組みによって事業採算が見いだせると判断した。
UMNも連帯保証債務や、アステラスとIHIからの求償のおそれもなくなった。
UMNは2016年12月決算で下記の減損損失を計上した。
連結決算 |
単独決算 |
固定資産評価損 87.49億円
UNIGEN 83.7億円
秋田工場 3.8億円
棚卸資産 17.17億円
関連業務委託費 0.65億円
合計 105.32億円 |
UNIGEN 貸付金 56.48億円
株式
17.50億円
固定資産減損 4.68億円
秋田工場 3.8億円他
合計 78.65億円 |
これにより、連結決算では当期純利益は141.42億円の赤字となり、株主資本は109億円の債務超過となった。
UMNは今後、大規模生産事業モデルから、CMC開発・工業化検討段階に特化した事業モデルへの転換による再出発を図る。
2017/2/27 原発燃料事業の統合、延期
2016年9月末に、日立製作所、東芝、三菱重工業の3社が核燃料の製造事業統合の調整を進めていると一斉に報じられた。
原発の再稼働が進まないために各社とも事業の採算が厳しく、工場の統廃合などでコストを削減するねらい。
既に廃棄したのが福島第一の6基、廃炉決定が原電敦賀、関電美浜@A、中国電力島根@、九電玄海@、四国電力伊方@の6基で合計12基に達する。
原子力規制委員会に再稼働の申請をしていない原発が福島第二の4基を含め、17基もある。
当初あった54基のうち、12基は廃棄、17基が再稼働申請さえしていない。
再稼働申請したのは、25基のみ。
2017年2月22日に関電大飯BCが、事実上合格したとする「審査書案」
了承を得て、6原発12基が実質上合格となったが、現在稼働しているのは九州電力の川内原発1、2号機と、四国電力伊方原発3号機
の3基のみ。他は稼働には時間がかかる。
このうち、高浜BCは裁判所から差し止め命令を受けている。今回事実上合格となった大飯BCも、基準値振動問題で異議を唱えた原子力規制委員会の島崎元委員を名古屋高裁が4月にも証人喚問する予定で、稼働できるかどうか不明である。
背景には経済産業省の意向があったとみられ、核燃料事業の次は原子炉事業の再編が焦点となるとみられた。
しかし3社は、原発向け核燃料事業の統合計画について、目標としていた今春の統合を断念し、延期する方針を固めた。
燃料製造拠点の統廃合を巡る調整が難航していることに加え、公正取引委員会の審査も長期化が必至なためで、今秋以降にずれ込む公算が大きい。
3社はそれぞれ製造拠点を抱えており、どの拠点をなくすかという具体的な計画の協議に入ると、雇用の削減と絡んでくるため、難航しているという。
原発への供給者がほぼ1社になるため、簡単に公取委が了承するとは思えないが、3社の協議が難航し、審査請求ができていないとされる。
GE、Westinghouse、Arevaも加わっているため、米国やフランスの政府の関与も予想される。
ーーー
統合を目指していたのは、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、原子燃料工業、三菱原子力燃料の3社で、それぞれの陣営が1/3ずつ出資する持株会社の下に3社を入れる案などを検討しているとみられる。
3社の概要は下記の通り。
1)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
GE、日立、東芝の3社は、1967年に包括的な沸騰水型原発プラント(BWR)の技術ライセンス契約締結以来、日本および海外でBWRプラントの建設、運転プラントの予防保全サービス分野において協力関係を構築してきた。原子燃料分野においては、1967年に燃料製造合弁会社としてグローバル・ニュークリア・フュエル
・ジャパンを設立し、原子燃料を国内の電力会社などに納入している。
その後、3社は2000年1月1日に、原子燃料の営業、設計、開発、製造部門を統合して、日米に拠点を持つ国際燃料合弁会社
Global Nuclear Fuel を設立した。
GEが51%、日本の2社が各24.5%を出資する。
日本における事業拠点はグローバル・ニュークリア・フュエル
・ジャパンとし、3社がそれぞれ行ってきた軽水炉用原子燃料の営業、設計、開発業務を移管し、原子燃料の製造から販売までを一貫して行う専門会社とした。
米国における拠点として、GEの軽水炉用原子燃料部門(営業、設計、開発、販売部門、ノースカロライナ州ウィルミントンの燃料製造工場)を分離し、Global
Nuclear Fuel Americasとした。
なお、日立と東芝は、これとは別に、1972年に両社の原発向け核燃料の研究開発部門を統合し、50/50JVの日本核燃料開発を設立している。
2) 原子燃料工業
古河電工と住友電工はそれぞれ、原子燃料事業を手掛けていたが、1972年に統合し、原子燃料工業を設立し、総合原子燃料専業メーカーとしてスタートした。
我が国唯一の沸騰水型(BWR)〈東海工場〉及び加圧水型(PWR)〈熊取工場〉の両タイプ用燃料のメーカーとして、ほとんど全ての原子力発電所へ供給している。
2009年にWestinghouseが52%出資し、筆頭株主となった。
(WestinghouseはBWRとPWRの両方を持つ)
東芝は2006年10月にWestinghouseを買収している。このため、東芝としては、1)のグローバル・ニュークリア・フュエル
・ジャパンと、2)の原子燃料工業の両方に参加したこととなる。
3) 三菱原子力燃料
ウラン鉱の選鉱試験をしていた三菱金属(現在の三菱マテリアル)と原子燃料の研究開発をしていた三菱原子力工業(その後三菱重工が吸収)が1971年に三菱原子燃料を設立した。
2009年にフランスのArevaが30%、三菱商事が5%出資したが、2016年には三菱重工が95%、Arevaが5%となった。
加圧水型原子炉(PWR)用ウラン燃料の開発・設計、製造、販売、輸送を行うほか、Areva製の沸騰水型原子炉(BWR)用ウラン燃料の販売、輸送を行っている。
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