ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
2017/3/1 中国の2016年の石油化学製品の輸出入統計
主な製品の輸入実績は下記の通り。
樹脂については、PVCを除き、日本の存在感はない。
PVCの輸出は下記の通りで、2016年は輸出が輸入を大きく上回った。
2017/3/2 SaudiAramco、マレーシアのRAPID計画に参加
SaudiAramco は2月28日、マレーシアの国営石油会社 Petronasが同国南部ジョホール州で進める石油精製・石油化学プロジェクト(RAPID:Refinery
and Petrochemical Integrated Development )の建設に70億ドルを投資すると発表した。
両社は同日、マレーシア訪問中のサウジのKing
SalmanとマレーシアのNajib
Razak首相の見守るなか、Share
Purchase Agreement に調印した。
Aramco はRAPID計画の特定の事業・資産に50%参加する。
報道では70億ドルを投資するとしている。
Aramcoは製油所が必要とする原油の70%を供給する。天然ガス、電力、その他のユーティリティはPetronasが供給する。
RAPID計画の総支出は270億ドルと見積もられる。
Petronasによると、計画の60%は完成しており、製油所は2019年に生産を開始する予定。
2014年に両社のトップが会談し、協議をしてきたが、本年1月にAramcoが収益性の懸念から撤退するとの情報が流れた。
しかし、1カ月で逆転した。(Aramcoは今回、撤退の検討をしたことを否定した。)
サウジのエネルギー相は、これを東南アジアの他の投資に対するプラットホームにすると述べた。
付記
PETRONAS Chemicals Group (PCG)
は2017年9月29日、SABIC子会社のAramco Overseas Holdings Cooperatief UA との間で、RAPIDのPRPC Polymers の50%を売却する契約を締結した。
売却価額は約9億ドル。
PRPC:PETRONAS
Refinery and Petrochemical Corporation
2015年にRAPID計画を担当するPRPC
Glycols、PRPC Polymers、PRPC Elastomersの3社を設立した。(Petronasの部門から移した。)
しかし、2016年4月にエラストマー事業を取り止めた。
SABICはRAPID
refineryのフィードストックの70%を供給する。天然ガス、電力、その他用役はPETRONASが供給する。
ーーー
RAPIDは石油精製から石油化学までの一貫生産プロジェクトで、2011年に首相が建設を発表した。既存の同国の石油、ガス、石化設備と合わせ、マレーシアを地域の石油産業のハブにするという政府の方針に基づくもので、当初は2016年末までの商業運転を目指していた。
概要は以下の通りで、規模と範囲で、Petronasの既存のMelakaの製油所とKertihとGebengの石化コンプレックスを合わせたものよりも
大きいものとなる。
立地:マレーシア南部ジョホール州 Pengerang
事業内容
石油精製:日量30万バレル(輸入原油の精製)
石油化学計画に原料を供給するとともに、ガソリン、ディーゼルを含む石油精製品を製造する。
石油化学:ナフサクラッカー(エチレン、プロピレン、C4、C5 合計300万トン)
ケミカルズ、ポリマーズ
2012/11 INEOS Technologies Innovene
G技術 導入(LLDPE/HDPE 350千トン
)
2012/12 Lyondellbasell 技術 導入 (PP
2系列合計 600千トン)
LNGターミナル:LNGの受入・再ガス化(石化原料の多様化、マレーシアの将来のガス不足対策)
コジェネレーション
Petronasは2012年5月18日、伊藤忠商事およびタイのPTT Global
Chemicalとの間で、RAPID計画の一環として、一部石油化学事業の事業化調査に関する覚書を締結したと発表した。
一部事業案件について3社でFSを実施するもの。
2012/5/21
伊藤忠、マレーシアの石油精製・石化計画(RAPID)に参加
Petronasは2014年8月に主たるコントラクターを決めている。
FCCでは千代田が入るコンソーシアムが、クラッカーでは東洋エンジが選ばれている。
その後、原油価格が下落し、2016年初めにはPetronasは次の4年で支出を113億ドルカットすると発表し、配当もカットした。
今回のAramcoの投資はPetronasにとり救世主となる。
2017/3/3 トランプ政権の通商政策報告書
米通商代表部(USTR)は3月1日、トランプ政権の通商政策報告書(2017
Trade Policy Agenda and 2016 Annual Report of the President of the United
States on the Trade Agreements Program)を議会に提出した。
世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きが不利益になる場合は「従うことはない」と表明、国際協議よりも国内法を優先すると強調した。
各国には一段の市場開放を求め、制裁措置の発動につながる「通商法301条」の適用も検討する。
新方針は「米国第一主義」が極めて鮮明で、世界的な貿易摩擦を呼ぶ可能性がある。
内容は次の通り。
米国の貿易政策の目的は、全ての米国人にとって、より自由で、よりフェアなやり方で貿易を拡大することである。
貿易に関する行動原則は、経済成長増大、米国での職の創造、貿易相手との互恵の推進、製造ベースと防衛能力の強化、農業及びサービス産業の輸出拡大を目指すものである。
これらの目的は、多国間交渉よりも、2国間交渉で、そして目的が達成できない場合は交渉して貿易協定を改定することで、達成できると考える。
最後に、国際市場で米国の労働者、農民、牧畜業者、企業に不利益を与える不公平な貿易慣行に目をつぶるべきでない。
これらの基本原則に加え、目的を列挙している。
米国の労働者と企業が、国内市場と海外市場で、フェアに競合できること。
農業製品を含む米国からの輸出をブロックする不公平な貿易障害の打破
米国経済のすべての部門の利益を見守るバランスのとれた政策の維持
米国の知的財産の所有者が、それを利用し利益を得る完全でフェアな機会を持つこと
ダンピングや補助金による輸入品が国内産業を害することがないよう、米国の貿易法を厳密に施行
強制労働で作られた製品の輸入・販売を禁止する規定の適用
他国や、WTOのような国際機関が、米国が参加する貿易協定で、米国の権利や利益を弱めたり、義務を増やすような解釈を進めるのに抵抗する。
既存の貿易協定を、状況の変化を折り込んで改定する。
最優先事項として次の点を挙げている。
Defending Our National Sovereignty
Over Trade Policy 主権の防衛
1994年に議会はUruguay Round Agreements
Act を承認し、WTO参加に道を開いたが、議会は、米国がWTOの決定に必ずしも従う必要がないと明らかにしていると述べ、たとえWTO紛争解決パネルが米国敗訴を決めても、自動的に米国の法や慣行を変更するものではないとする。
トランプ政権は貿易に関し、米国の主権を守る。
Strictly Enforcing U.S. Trade Laws
トランプ政権は米国を害する不公平な貿易慣行を許さない。
通商法301条は、外国にもっとmarket-friendlyな政策をとらせるテコになりうる。
Using Leverage to Open Foreign
Markets
現在のWTOルールが不公平な貿易慣行を守っていると批判。
トランプ政権は、他の国が米国の生産者にフェアに互恵的に市場を開くよう、あらゆる手段を使う。
Negotiating New and Better Trade Deals
これまでの貿易協定に不満
トランプ政権は、自由でフェアな貿易を信じており、これを共有する国際パートナーとの貿易関係を強化したい。
これを進めるため、二国間交渉を中心とし、相手国にはより高いフェアネス基準を求める。
不公平な活動を行う貿易相手国にはすべての法的手段を使用する。
ーーー
新政策方針では、WTOの紛争解決手続きに「そのまま従うことはない」と明記し、国内法を優先するとした。
現在、米国が検討している「国境調整」はWTOのルールでは認められない。大統領選挙戦中にTrump
氏は「メキシコには35%、中国には45%の関税を課す」と主張したが、これも同様である。
2017/2/20 米国の国境税案
実際には関税引き上げは消費者物価のアップに直結するため、議会で議案が通る可能性は低いとされるが、この姿勢により、今後、多くの問題が発生する可能性がある。
2017/3/4 消費者物価指数の改定
総務省統計局は3月3日、2017年1月の消費者物価指数を発表した。
今回から通称 コアコアCPIを、従来の「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く」から「生鮮食品及びエネルギーを除く」に改定した。
新コアコアCPIは日銀が発表していた日銀コアコア(基調的なインフレ率を捕捉するための指標」と同じであるため、日銀は1月から発表をとりやめる。
変更について、統計局は次の通り説明している。
消費者物価指数では、物価動向のより適確な把握に資する観点から、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」指数の公表を開始します。
政策判断等の基礎となる消費者物価の指標は、家計の消費全体に占める割合が大きく、より総合に近いものが望ましいと考えられます。今回公表を開始する「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」が「総合」に占めるウエイトは約9割となっています。
また、物価の基調を適確に見るには、一時的な要因や外部要因を除くことが有用と考えられます。生鮮食品は天候要因で値動きが激しく、エネルギー関連品目(ガソリン、電気代等)は海外要因で変動する原油価格の影響を直接受けることから、これらを除く指数は物価動向のより適確な把握に有用です。
2017年1月の総合指数は前年同月比 0.4%の上昇、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比
0.1%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.2%の上昇となった。
コアCPIは2016年2月の前年比+0% 以来、1年1か月ぶりのプラスとなった。
各国の総合CPIの推移は下記の通り。各国とも原油価格の上昇を受け、急上昇しているが、日本の低さが目立つ。
2017/3/7 大塚製薬、米国バイオベンチャー買収
大塚製薬は3月3日、Otsuka America
Inc.が米国マサチューセッツ州ケンブリッジのNeurovance, Inc.を完全子会社化することについて合意したと発表した。
Neurovanceは2011年にEuthymics
Bioscienceから独立した企業で、成人と小児の注意欠陥・多動性障害(ADHD:attention
deficit hyperactivity disorder)治療薬として開発中の「Centanafadine」を保有する。
同薬は、神経伝達物質のノルエピネフリン、セロトニンおよびドパミンの再取込を抑制する「トリプル再取込阻害」という作用機序を持ち、米国における臨床第2相後期(P2b)試験では、成人ADHD患者を対象に実施した結果、ADHD評価スケールが有意に改善している。現在、臨床第3相試験を準備中。
同社は、Novartis Venture
Fund、Venture Investors、Tekla Capital Management、GBS Venture Partners、State
of Wisconsin Investment Board、Timothy J. Barberich などのベンチャーキャピタルから出資を受けている。
大塚製薬はNeurovanceの株主に対し、本買収の対価として本買収完了時に100百万米ドルを支払うとともに、Centanafadineの進捗に応じた開発マイルストンとして最大150百万米ドルを支払う。
さらに発売後は売上高に応じた販売マイルストンを支払う。
大塚製薬では、「Neurovanceから新たな中枢神経領域のポートフォリオを得ることで、この領域を一層強化できる。今後とも、未解決の医療ニーズを満たすため、中枢神経、がん、循環器・腎領域を最重点とした治療薬の研究開発を行っていく」としている。
ーーー
注意欠如・多動性障害(ADHD)は、不注意(散漫性、物忘れ)、過活動(そわそわする)、衝動性(落ち着きのなさ)を特徴とする発達障害。
不注意(inattention)
- 簡単に気をそらされる、細部をミスする、物事を忘れる
- ひとつの作業に集中し続けるのが難しい
- その作業が楽しくないと、数分後にはすぐに退屈になる
過活動(hyperactive)
- じっと座っていることができない
- 絶え間なく喋り続ける
- 黙ってじっとし続けられない
衝動性(impulsive)
- 結論なしに喋りつづける
- 他の人を遮って喋る
- 自分の話す順番を待つことが出来ない
現在、米国では精神刺激薬が主に処方されているが、中枢興奮作用および精神依存性や薬剤耐性が課題で、ときには乱用などが問題視されている。
刺激薬と同等の有効性を持ちながら、非刺激薬と同じ忍容性で乱用の懸念が少ない薬剤が求められており、トリプル再取込阻害というユニークな作用機序を持つ「Centanafadine」の上市が期待されている。
NeurovanceによるADHDの説明は次の通りで、それぞれが神経伝達物質のNorepinephrine (NE)、Dopamine
(DA) 、Serotonin (5-HT) の不足が関係している。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
(SSRI) を例にとると下記の通り。(Wikipedia)
シナプス前ニューロンから放出された神経伝達物質
セロトニンはセロトニン受容体に作用するが、シナプス間隙に貯まったセロトニンは、セロトニントランスポーターにより再取り込みされる。
うつ状態にある人はシナプスにおけるセロトニンの濃度が低下し、セロトニン受容体にセロトニンが作用しにくい状態となっているという仮説がある。
セロトニン再取り込み阻害薬はセロトニントランスポーターに選択的に作用し、セロトニン再取り込みを阻害
し、結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持する。
Neurovanceの新薬 Centanafadine はNorepinephrine (NE)とDopamine
(DA) 、Serotonin (5-HT) のトリプルの再取込阻害というユニークな作用機序を持つ。
このうち、Serotonin
の再取込阻害機能は少し劣る。
2017/3/8 Dow、Bayer との種子特許の裁判で敗訴
連邦控訴裁判所は3月1日、Dow AgrosciencesがBayer
CropScience に455百万ドルの賠償金を支払うよう命じた国際仲裁裁判所の裁定を支持した。
国際仲裁裁判所は2015年10月、Dow
AgrosciencesがBayer CropScience
との、除草剤glufosinateに耐性のある種子の遺伝子パテントのライセンス契約に違反しているとみなし、455.5百万ドルの支払いを命じた。
合わせて、30日以内に支払わない場合、年利8%の金利の支払いを命じた。
特許が無効であるとするDowの主張も却下した。
Dowはこれを受け、Eastern District of Virginiaの地裁に訴えたが、地裁は2016年1月、国際仲裁裁判所の裁定を支持した。
Bayer特許を無効とするDowの訴えは却下した。
但し、年利8% の利率は違法であるとし、米法28 U.S.C. §
1961(a)に基づき、1年満期の国債の週平均利率を採用するとした。
Dowは控訴したが、今回の判決となった。
控訴裁は、このような案件で仲裁裁定所の裁定を覆すには、特別の理由が必要で、 "very limited" であると述べた。
Dowは最高裁への上訴も考えるとしているが、逆転は非常に難しいとみられている。
ーーー
本件の経緯は次の通り。
除草剤glufosinateに耐性のある種子の遺伝子パテントは Plant Genetic
Systems NVが取得した。(U.S. Patent Numbers 5,561,236; 5,646,024; 5,648,477; and RE
44,962)
Plant Genetic Systems
NVはこの特許の独占使用権をHoechstに与えた。
1992年6月に、Hoechst はLubrizol Genetics
との間でこの特許を含む特定技術のクロスライセンス契約(1992年契約)を締結した。
ーーー
Plant Genetic Systemsは1996年にHoechst
Schering AgrEvoに買収され、Hoechst Schering AgrEvoは2000年にRohne
Poulentのアグロ部門と合併してAventisとなった。
(Rohne Poulentの他の部門はRhodiaとなった)
2002年にAventisのCropScience部門がBayerに買収され、Bayer CropScienceとなった。
その間に、DowはLubrizol Genetics を買収した。
これにより、1992年契約の当事者は、特許所有者がPlant Genetic
System→(Hoechst) → Bayer CropScience、ライセンシーがLubrizol Genetics →Dow となった。
Bayer はLibertyLink
ブランドで菜種、とうもろこし、棉、大豆など各製品を販売しており、Dow はEnlist ブランドで棉と大豆の種子を販売している。
ーーー
2007年〜2008年にDowはMS Technology
との間で遺伝子に関するいくつかの契約を締結した。
2012年11月にBayer CropScienceは、Dowが1992年契約に違反してMS
Technology との間で契約を結んだとして、1992年契約を終了させるとともに、特許違反を理由にDowを訴えた。
最終的に、1992年契約の規定に従って国際仲裁裁判所に持ち込まれた。
2015年10月の裁定は次の通り。
DowのMS Tech へのライセンスは1992年契約に違反。
DowはEnlistブランドの棉、大豆の種子販売などで特許を侵害
Dowは損害賠償総額455,459千ドルを支払う。(フランス法での契約違反の機会損失賠償として374,731千ドル、米法での特許侵害賠償として67,837千ドル、残り弁護士費用など)
支払遅延について8%の金利を支払う。
2017/3/9 昭和電工、定時株主総会で決算報告できず
昭和電工は3月6日、定時株主総会の開催通知を発表した。
3月30日の開催だが、議題は、@定款一部変更の件、A取締役選任の件、B監査役選任の件となっており、決算報告や配当決議は含まれていない。
また、同日の取締役会で、2016年12月31日を基準日とする配当を行わないことを決議した。
同社の子会社の昭光通商の決算が確定しないため、昭和電工の決算も確定せず、昭和電工の事業報告や決算書類が定時株主総会招集通知にあわせて提供できない状態にあるため
としている。
決算確定後、別途開催する臨時株主総会で決算報告を行う。
また、確定決算に基づき、配当実施の判断や基準日の設定等を行い、臨時総会で剰余金の配当の決議を行う。
付記
昭和電工は4月17日、昭光通商が報告書の概要と今後の対応方針を開示したと発表した。有価証券報告書は期限の5月1日までに提出する。
昭光通商の連結子会社ビー・インターナショナルの仕入及び売上において大きな割合を占めている炭化ケイ素、人工ダイヤモンド及び人工ダイヤモンド加工品等について、仕入先と販売先の代表取締役が同一人物で、調べると書類におかしな点があった。
詳細な調査の結果、いわゆる資金循環取引であると認められた。
ーーーー
昭和電工は2月13日、翌日に予定していた決算発表を延期すると発表した。3月1日には再延期を発表した。
昭和電工の子会社である昭光通商の子会社と特定の顧客との取引での売上計上に疑義が出て、精査が必要になったもの。
2016年の取引高は約60億円であるが、対象物品は当該子会社を介することなくエンドユーザーへ直送され、当該子会社は帳簿上の仕入および販売取引を行うことによって、実質的には当該子会社が、その販売先である当該特定の顧客に対して与信(商社金融)を行う取引
である。
当初の発表では、売上計上について精査が必要となったとし、その時点ではこの取引を売買ではなく、金融取引(与信行為)と認識することを前提とした会計処理を検討して
いた。
しかし、その後の調査で、この取引で代金決済は行われていたものの、取引の対象となる物品の実在性への疑義(架空取引の可能性の疑い)が高まった。
この結果、この取引の詳細と、これに類似する取引がないかどうかについても調査を行う必要が生じた。
現在、昭光通商の特別調査委員会が調査中である。
付記
昭和電工は3月27日、関東財務局へ有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請書を提出したと発表した。
それによると、当該顧客からの協力が得られなかったものの、これまでに入手した資料および情報に基づけば、対象物品が実在しない取引である可能性が高いものと考えられる。
他方、当該会社の役職員が、対象物品が実在しない取引であったと認識していたとは認められないとの報告を受けている。
原因究明にはさらに時間がかかる。
昭和電工としては、同社の決算に重要な影響を与えないと見込んでいるが、昭光通商の決算確定を待ち、決算発表を行う。
なお、同社は2月14日に、同日時点での業績予想を発表した。
売上高 |
6712億円 |
営業利益 |
418億円 |
当期純利益 |
110億円 |
2017/3/10 第8回 化学遺産認定
日本化学会はこのたび、化学遺産に新たに5件を認定した。これで化学遺産認定は43件となった。
3月18日(土)に「第11回化学遺産市民公開講座」を開催し、内容を紹介する。
- 実施日 3月18日 (土)
13時30 分 〜 17時
- 会場 慶應義塾大学・日吉キャンパス 第4校舎(B棟) 1階
J11
新たに化学遺産に認定されたのは次の5件。詳細は
http://www.chemistry.or.jp/know/heritage/08.html
☆ 認定化学遺産 第039号『日本の油脂化学生みの親―辻本満丸関連資料』
本邦産植物油・海産動物油などの高度利用を目指して性状・成分を明らかにする研究を行い、二百数十編に及ぶ論文発表と特許を取得し、我が国の油脂化学並びに工業の発展に主導的な役割を果たした。
特に、鮫肝油中に存在する高度不飽和炭化水素「スクアレン(C30H50)」の発見(1916年)は国際的にも高い評価を受け、1920年には「油脂の研究」に対して恩賜賞が授与された。
また、辻本等の特許をベースに、いわし油等を原料とする国産初の硬化油製造技術が1914年に開発された。
更に、イシナギ等の魚肝油中に大量のビタミンAが含まれていることを発見した。
☆ 認定化学遺産 第040号『日本の酸素工業の発祥と発展を示す資料』
日本の酸素製造は、エア・リキード社(仏)が1907年に大阪鉄工所(現日立造船)内にクロード‐H型空気液化装置で、また日本酸素(現大陽日酸)が1911年に東京でリンデ‐H型空気液化装置で始めた。
(1)大陽日酸(株)の日本酸素記念館(山梨県北杜市)に、創業時の工場建屋や日本理化工業(→日本酸素→現大陽日酸)製作の国産初の液体酸素製造装置とともに、創業時の装置が保存展示されている。
(2)日本エア・リキード社も、創業時と同じ型式・規模の装置(六角木製箱に酸素精留塔および熱交換器を内蔵、膨張機使用)を、テイサン記念館(兵庫県播磨町)に長く展示し、現在解体保管中である。
☆ 認定化学遺産 第041号 『日本における殺虫剤産業の発祥を示す資料』
大日本除虫菊(「金鳥」)の創業者 上山英一郎(1862〜1943)は、1885年に除虫菊の種子を米国より入手し、和歌山で栽培を開始した。
これが日本における殺虫剤産業の発祥である。上山は自らの手で『除虫菊栽培書』を発刊し栽培の普及に努めた。
上山は除虫菊粉に椨粉(たぶこ)などの糊を加えて棒状に成型し、1890年に世界初の棒状蚊取り線香を商品化した。
その後、燃焼が約6時間持続可能な渦巻型が試作された。1895年に誕生したこの渦巻型は、現在でも殺虫剤の主流である蚊取り線香の原型として受け継がれている。
除虫菊に含まれる天然有効成分・ピレトリン類の化学構造を基にその後多くの合成ピレスロイドが発明され、様々な新しい殺虫剤の開発に繋がった。
参考 2006/8/21 夏休み特集 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史
付記 同社はテレビCMで、化学遺産認定に触れている。
☆ 認定化学遺産 第042号『近代化粧品工業の発祥を示す資料』
明治前期には石鹸、化粧水の工業生産が始まり、明治中期には性能の良い歯磨きや無鉛白粉(おしろい)の生産が始まった。明治後期には大ヒット化粧品や現在も販売されているロングライフ商品(化粧水オイデルミン、美髪剤フローリン、洗顔料クラブ洗粉等)が生まれるようになり、近代化粧品工業は大きく開花した。
日本で最初の石鹸製造を行った堤石鹸関係資料(日誌(1873年)等、商標、木型)及びそこからの技術が派生して生まれた花王関係資料(分析証明書(1890年)、調合帳(1903-13年))、ライオン関係資料(製造日記(1894年))、化粧品容器及び処方等が保存されている資生堂関係資料(福原衛生歯磨石鹸(1888年)、化粧水、美髪剤)、明治後期の大ヒット化粧品のうち製造年代が明確に分かるライオン歯磨(1899年)、クラブ洗粉(1906年)は近代化粧品工業の発祥、発展を示す貴重な資料である。
☆ 認定化学遺産 第043号『天然ガスかん水を原料とするヨウ素製造設備および製品木製容器』
相生工業(株)(現在の(株)合同資源)の創業者三増春次郎は、大河内正敏博士の助言を受けて房総半島で得られる天然ガスかん水からのヨウ素生産を考えた。
製造技術の開発を三増から依頼された京都帝国大学佐々木申二教授は、この地方のかん水に高濃度に含まれる炭酸水素イオンを活用した銅法の開発に成功した。
1934年に相生工業はこの製法を工業化した。1960年代に開発され現在も使われている新製法(ブローアウト法、イオン交換樹脂法)に切り替わるまでの約40年間にわたって、銅法は日本のヨウ素生産の主力技術となり、ヨウ素輸出にも貢献した。
過去の化学遺産
2010/3/18
化学遺産認定 |
第1号 杏雨書屋蔵 宇田川榕菴化学関係資料 |
第2号 上中啓三 アドレナリン実験ノート |
第3号 具留多味酸(グルタミン酸) 試料 |
第4号 ルブラン法炭酸ソーダ製造装置塩酸吸収塔 |
第5号 ビスコース法レーヨン工業の発祥を示す資料 |
第6号 カザレー式アンモニア合成装置および関連資料 |
2011/3/17
化学遺産、第二回認定 |
第7号
日本最初の化学講義録 朋百舎密書(ポンペせいみしょ) |
第8号 「化学新書」など日本学士院蔵 川本幸民化学関係資料 |
第9号 「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」 |
第10号 日本の板硝子(ガラス)工業の発祥を示す資料 |
2012/3/17
化学遺産、第三回認定 |
第11号
眞島利行ウルシオール研究関連資料 |
第12号
田丸節郎資料(写真および書簡類) |
第13号
鈴木梅太郎ビタミンB1発見関係資料 |
第14号
日本の合成染料工業発祥に関するベンゼン精製装置 |
第15号
日本初期の塩化ビニル樹脂成形加工品 |
第16号
日本のビニロン工業の発祥を示す資料 |
第17号
日本のセメント産業の発祥を示す資料 |
2013/3/21
化学遺産、第四回認定 |
第18号
小川正孝のニッポニウム発見:明治日本の化学の曙 |
第19号
女性化学者のさきがけ、黒田チカの天然色素研究関連資料 |
第20号
フィッシャー・トロプシュ法による人造石油に関わる資料 |
第21号
国産技術によるアンモニア合成(東工試法)の開発とその企業化に関する資料 |
第22号
日本における塩素酸カリウム電解工業の発祥を示す資料 |
2014/3/20
第5回化学遺産認定 |
第23号 日本の近代化学の礎を築いた櫻井錠二に関する資料 |
第24号 エフェドリンの発見および女子教育に貢献のあった長井長義関連資料 |
第25号 旧第五高等学校化学実験場および旧第四高等学校物理化学教室 |
第26号 化学技術者の先駆け 宇都宮三郎資料 |
第27号 日本のプラスチック産業の発展を支えたIsoma射出成形機及び金型 |
第28号 日本初のアルミニウム生産の工業化に関わる資料 |
2015/3/19
第6回化学遺産 |
第29号 早稲田大学蔵 宇田川榕菴化学関係資料 |
第30号
工業用高圧油脂分解器(オートクレーブ) |
第31号
日本の工業用アルコール産業の発祥を示す資料 |
第32号
日本の塗料工業の発祥を示す資料 |
第33号
日本のナイロン工業の発祥を示す資料 |
2016/3/12
第7回化学遺産 |
第34号 日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料 |
第35号
明治期日本の化学の先駆者・化学会初代会長 久原躬弦関係資料 |
第36号
野副鐵男の化学遺産 /
非ベンゼン系芳香族化合物資料と化学者サイン帳 |
第37号
日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料 |
第38号
日本の近代的陶磁器産業の発展に貢献したG・ワグネル関係資料 |
2017/3/11 EU、自動車用エアコンカルテルで制裁金
欧州委員会は3月8日、日・独・仏の自動車用エアコン、エンジン冷却装置のメーカー6社が異なる自動車メーカー向けに4つのカルテルを結んでいたとして総額155,575千ユーロの制裁金を課した。
6社は罪を認め、「示談制度
(settlement procedure)」による制裁金10%の減額を受けた。
各社とも調査に協力し、制裁金の減額を受けている。
デンソーは3つのカルテルの存在を報告し、制裁金(287百万ユーロ)の100%免除を受けた。
パナソニックも1つのカルテルの存在を報告し、制裁金(20万ユーロ)の100%免除を受けた。
自動車
メーカー |
エアコン
メーカー |
Leniency |
示談 |
罰金(千ユーロ) |
Behr |
デンソー |
Valeo |
サンデン |
パナソニック |
カルソニック |
VW-group, Daimler and BMW |
Behr(独) |
30% |
10% |
62,135 |
|
|
|
|
|
デンソー |
100% |
10% |
|
0 |
|
|
|
|
Valeo(仏) |
40% |
10% |
|
|
18,236 |
|
|
|
VW-group
and PAG |
デンソー |
100% |
10% |
|
0 |
|
|
|
|
サンデン |
25% |
10% |
|
|
|
63,220 |
|
|
Valeo |
45% |
10% |
|
|
8,376 |
|
|
|
Nissan/Renault |
デンソー |
40% |
10% |
|
322
|
|
|
|
|
パナソニック |
100% |
10% |
|
|
|
|
0 |
|
Suzuki |
カルソニック |
30% |
10% |
|
|
|
|
|
1,747 |
デンソー |
100% |
10% |
|
0 |
|
|
|
|
サンデン |
15% |
10% |
|
|
|
1,385 |
|
|
Valeo |
50% |
10% |
|
|
154 |
|
|
|
合計 |
|
|
|
62,135 |
322 |
26,766 |
64,605 |
0 |
1,747 |
自動車部品メーカーは日本や米国その他で多数のカルテルが摘発されている。
欧州では既にベアリングやオルタネーター・スターターのカルテルが摘発され、制裁金を課せられている。
2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金
2016/2/1
EU、自動車部品カルテルで日本メーカーに制裁金
2017/3/13 Westinghouseの破産法申請が現実味
東芝の子会社 Westinghouse の米連邦破産法11条(Chapter 11)
の申請が現実味を帯びてきた。
東芝社内や取引銀行の間でも破産法の申請が不可避との見方が広がっており、麻生財務・金融相は3月10日の閣議後会見で「破産法11条の適用申請が3月31日までに決まらないと、東芝も決算を出しにくい」と述べた。
世耕経済産業相は同日の閣議後の記者会見で、近く予定する訪米時に、エネルギー長官との会談で相手側から問題提起とか問い合わせがあればしっかり議論していく必要がある」と語った。
日本政府は、Westinghouseの損失が東芝に更なる打撃を与え、福島第1原発の廃炉作業に支障が出るのを懸念している。
関係者によると、Westinghouseは法律事務所
Weil, Gotshal & Manges
LLPの複数の破産専門弁護士と契約したとされる。また、Westinghouseは、事業再生を手掛ける経営コンサルタント会社 AlixPartners のLisa Donahue弁護士と契約したことを明らかにしている。
"Chapter 11" は日本の民事再生法に相当する。
米国破産法では、7条で「Liquidation:破産」、11条で「Reorganization:民事再生」を扱っている。(セブンーイレブン)
付記
Westinghouse
は3月29日、ニューヨーク州連邦破産裁判所に米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続申し立てた。再生手続に則っての事業再編を念頭におきながら、当面現行事業をこれまでどおり継続する。
この間の事業継続のために、800百万ドルのDIPファイナンスを確保し、東芝はそのうち200百万ドルを上限として債務保証を提供する。
建設中の米国原子力発電所2サイトの顧客である各電力会社との間で、本手続申立後の当面の米国原子力発電所建設プロジェクトの作業継続につき合意を目指して協議している。
再生手続の開始により、東芝の実質的な支配から外れるため、2016年度通期決算より連結対象から外れる。
IHIが、2017年2月16日付で
保有する株式全て(出資比率3%) を東芝に譲渡することができる権利を行使したため、2017年5月17日に東芝が取得する。
10%出資しているカザフスタン共和国の国営企業カザトムプロムについても、プットオプションを有しているが、この権利を行使可能になるのは2017年10月1日以降となっている。
ーーー
東芝は3月期決算をまだ発表できないでいるが、同社の責任で発表した実績では 原子力部門のれん償却として 7,125億円を計上している。
2017/2/16 東芝の状況
しかし、Westinghouseの損失はこれに止まらない。
Westinghouseは米国でVogtle
Project と V.C. Summer Project の2つの原発を受注しているが、2015年に原発建設を担当する
S&Wを、建設の遅れについては責任を一切免責するという条件で
CB&I から無償で買収した
S&W取得のタイミングに合わせ、
電力会社との間の訴訟で和解し、価格とスケジュールを見直すことにも合意した。
2017/1/24
東芝の原子力事業の損失の実態
このスケジュールから遅れ、コストが上がった場合は、Westinghouseの負担となる。
2016年5月時点での建設進捗率は20〜30%にとどまっていたが、2017年3月時点でも「進捗率は30%程度」で、1年近く工事が足踏みしている。
既に約束したスケジュールから遅れることが明らかになっており、固定価格契約がある以上、工期が遅れれば再び損失が出る。
更に、期限内に原発を完工できない場合、電力会社が原発稼働で得られるはずの収入を得られなかったとして損害の賠償を求める可能性が高い。
また、米国では2021年初までに稼働した原発は一定の税金が控除されるが、完工が間に合わないと電力会社が恩恵を受けられなくなり、損害賠償を請求される恐れもある。
(AP1000型の場合、1基当たり最大で11億ドルの税金が控除されるという。)
このため、東芝社内では「リスクを切り離すには破産法しか選択肢はない」との声が強まっている。破産法申請を通じ際限なく損失が膨らむ「負のスパイラル」を脱したい考えである。
東芝では、海外原発リスクを抑えるため、Westinghouseを連結対象から切り離して非子会社にする方針
で、法的整理で債務や取引関係を見直せば、売却先が名乗り出る可能性がある。
付記 東芝は3月14日、決算発表の延期を発表するとともに、「今後の東芝の姿について」との発表を行い、Westinghouseの非連結化の検討を行うとした。
海外原子力事業のリスク遮断
マジョリティ売却等による非連結化を含め再編検討を加速
東芝グループにおけるウェスチングハウス社の位置付けを見直し
戦略的選択肢を積極的に検討
ーーー
電力会社との契約変更については、元米原子力規制委員会の幹部は、「新鋭原発の建設はコスト超過がつきもので、電力会社と受注企業がリスクを分担するのが通例だ」と指摘する。
破産法に詳しい弁護士も「今のWestinghouseを巡る状況なら、適用が認められ、契約を白紙に戻せるだろう」と話す。
しかし、Chapter 11 申請には問題は多い。
1) 東芝はWestinghouseに対して 7934億円の債務保証(うち原発関連は7100億円強)の債務保証をしており、東芝が代わりに求償を受ける。
2) 州の反対
VC
Summer原発のあるサウスカロライナ州では、原発建設費用を原則的に電気料金に転嫁できる総括原価方式を採用しており、2009年以降9回にわたる値上げで、料金の上昇幅は平均18%にのぼるとされる。
州内の不満を背景に電力会社とWestinghouseは2015年に、電力側が一定の費用を負担する半面、それ以降に発生する追加コストはWestinghouse
が負担し、東芝が保証することで合意した。
州では「現行契約の変更に応じる理由はない」と容認しない考えで、同州電力協同組合も「我々は既に応分の負担をしている。Westinghouseが破綻しても東芝が建設を完遂すべきだ」としている。
州下院議員も「州民は巻き込まれるべきでない。Westinghouseと電力会社の責任だ」と言い切った。
Vogtleのあるジョージア州の州政府公共事業委員会も、破産法申請の検討について「ひどい選択肢だ」と強くけん制する。
3) 米国政府との関係
米政府はVotgle原発に83億ドルの債務保証をしており、米国での国民負担に発展しかねないだけに,、申請は「東芝やWestinghouseが単独で判断できないことが多い」(東芝幹部)。
交渉は難航も予想され、外交問題に発展する恐れもある。
世耕経済産業相の発言はこれに関するもの。
まとめると、次のような関係にある。
ーーー
これとは別に3月9日付の毎日新聞は「東芝、LNGでもリスク 最大1兆円損失、販売先探し難航」の記事を掲載している。
東芝はFreeport
LNGとの間で年間220万トンのLNGの購入契約を結んでおり、これはTake
or Pay の契約であり、市況が下がっても契約価格での引取り、または固定費の支払いが必要である。
計画 |
立地 |
生産開始 |
日本企業 |
契約数量 |
Freeport LNG |
テキサス州 |
2018 |
大阪ガス
中部電力 |
220万トン
220万トン |
2019 |
東芝 |
220万トン |
LNG価格は天然ガス価格に加工費を加えて設定されており、2017年1月の市況で試算すると、テキサス州からの運賃を加えたCIF価格は100万BTU当たり9.80ドルとなり、日本の輸入平均価格7.28ドルと比べ、35%もの割高となり、現状では日本への持ち込みは大赤字となる。
2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令
Trump大統領は3月6日、中東・アフリカ7カ国の国民を一時入国禁止にした米大統領令の一部を修正した新たな大統領令
に署名した。
Executive Order on March
06, 2017
Executive
Order Protecting The Nation From Foreign Terrorist Entry Into The United
States
これに対し、ハワイ州が3月8日に憲法違反として提訴、ワシントン州が9日に提訴した。このほか、ニューヨーク、マサチューセッツ、メリーランド、ミネソタ、オレゴン各州が無効化を求めて法的手段を取る方針を示した。
ウィスコンシン州の連邦地裁は3月10日、シリア北部アレッポに残る妻子の難民申請手続き中の同州在住のシリア難民男性が提起した訴えで、執行を停止する仮処分を下した。
付記 ハワイ州地裁は3月15日、新たな大統領令について全米で執行を一時的に差し止める決定を出した。
メリーランド州地裁は16日、一時差し止めの仮処分を命じた。
付記 米司法省は3月17日、リッチモンド連邦高裁に仮処分の取り消しを求めて上訴の手続きを取った。
(ハワイの場合は、上訴すると、旧大統領令の差し止めを認めたサンフランシスコ連邦高裁が再び担当することになるため、避けた。)
付記 バージニア州の連邦地裁は3月24日、新たな大統領令が特定の宗教には言及していないことを指摘、差し止め請求を却下した。
付記 リッチモンド連邦高裁は事案の重大性を考慮し、判事3人による通常の合議とは異なり、十数人の大法廷で5月8日から審理する。
付記 リッチモンド連邦高裁は5月25日、10対3で地方裁判所の決定を支持した。
「この大統領令がイスラム教徒に対する入国禁止ではなく、国家の安全保障のためだとするトランプ政権の主張には、依然として疑問が残っている」と指摘し、「大統領は外国人の入国を禁止する広範囲の権限は与えられているが、それは絶対のものではない。地方裁判所の決定を支持する」とした。
これに対し司法長官は最高裁で争う姿勢を示した。
司法省は6月1日、最高裁に上告した。
付記 サンフランシスコの連邦控訴裁判所は6月12日、差し止めを命じたハワイ州連邦地裁の仮処分を支持する決定を出した。
ーーー
Trump大統領は1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。
Executive Order on January 27, 2017
Executive
Order: Protecting the Nation from Foreign Terrorist Entry into the United States
・移民国籍法 217(a)(12)
と連邦法1187(a)(12)で規定した国(イラン、イラク、シリア、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの7か国)へのビザ発給を90日間停止
・シリア難民受け入れを無期限停止、他国の難民受け入れも120日間停止
・全体の難民受け入れを年5万人に半減
ワシントン州が大統領令の緊急停止を求めて連邦地裁に提訴したのに対し、シアトルの連邦地裁のJames L. Robart
判事は2月3日、「大統領令が雇用や教育、企業活動などに取り返しのつかない損害を生じさせている」として、一時差し止めを命じる仮処分の決定を出した。
サンフランシスコの連邦控訴裁判所は2月9日、7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、3人の判事の全員一致で、即時停止を命じた連邦地裁の仮処分を支持する判断を示した。
2017/2/5 米連邦地裁、移民の入国一時禁止の大統領令の即時差し止め仮処分
これに対する大統領のツイッターは、“See you in court. The
security of our nation is at stake
!” (最高裁で会おう。我が国の安全は危機に瀕している!)であったが、最高裁で覆るのは確実ではない。
Scalia
判事が亡くなり、現在の8人の判事はリベラル派が4人、保守派が3人、保守寄りの中間派が1人。
大統領は1月31日、保守的な信条で知られる Neil
Gorsuch 連邦控訴裁判事を指名すると発表したが、上院で3/5の賛成による承認が必要で、見通しは立っていない。
このため、前回の大統領令の問題個所を修正し、新たな大統領令を出した。
前回との違いは下記の通り。
|
|
前回 |
今回 |
理由 |
入国禁止 |
対象国 |
イラン、シリア、リビア、イエメン、スーダン、ソマリア、イラク |
イラクを除外 |
イラクは対ISで共闘
イラク政府はビザ申請者の情報提供など協力 |
禁止日時 |
発表時から90日 |
3月16日から90日 |
前回は空港で大混乱
今回は10日の猶予 |
対象 |
全員 |
下記は除外
・ビザ、グリーンカード保有
・外交官
・対象国以外の二重国籍保有 |
|
難民受入 |
停止期間 |
シリアからの移民は無期限停止
他の国からは120日間停止 |
一律120日停止 |
|
停止対象外 |
その国の少数派異教徒(minoriry
religions) |
(規定除外) |
|
(規定なし) |
受け入れが決まっている難民 |
|
受入数 |
5万人(従来は11万人) |
5万人 |
|
2017/3/14 三菱重工の米国サンオノフレ原子力発電所に係る仲裁の裁定
三菱重工は3月14日、米国サンオノフレ原子力発電所に係る国際商業会議所の仲裁の裁定を受領したと発表した。
ーーー
カリフォルニア州でサンオノフレ原子力発電所(San Onofre Nuclear
Generating Station)を運営するSouthern California Edisonと100%子会社のEdison Material
Supply LLCは2013年10月17日、三菱重工が設計・製作した同発電所の蒸気発生器の欠陥について、三菱重工を相手に国際商業会議所に仲裁を申し立てた。
San Onofre原発には、2号機と3号機があり、2号機は1983年、3号機は1984年にスタートした。
三菱重工業は2号機、3号機の取替用蒸気発生器を各2基納入したが、2012年1月31日、3号機の蒸気発生器の1次側から2次側への配管から微量の冷却水が漏れて緊急停止、微量の放射性物質が漏れた可能性もある。
定期点検中の2号機でも配管摩耗が見つかり、Nuclear Regulatory Commission(NRC)はすべての稼働を禁じた。
漏えいの直接的原因は、U字管部における伝熱管同士の接触による摩耗と判断された。この摩耗現象は これまで発生していない。
三菱重工ではこの蒸気発生器はSouthern California
Edisonの承認を得て製作されたとしている。
Southern California Edisonは2013年6月7日、蒸気発生器の配管破損で前年から停止中の米カリフォルニア州南部のSan
Onofre原発 全2基を廃炉にすると発表した。
2012年10月、2基のうち1基を7割の出力で稼働する計画をNRCに出したが、市民団体や一部議員が反対、NRCも公聴会を重ねるなどして判断に時間がかかり、「再稼働できるかどうか、できたとしてもいつになるか不安定な状態がこれ以上続くのは、利用者や投資家にとってよくないとの結論に至った」とコメントを出した。
2013/10/22 米国原発会社、三菱重工業の蒸気発生器の欠陥で仲裁申立て
Southern California Edison側は2013年7月に三菱重工に対し紛争通知を提出したが、解決に至らなかったため、仲裁を申立てた。仲裁結果は拘束力を持つ。
Southern California
Edison側の請求額は2015年10月に75.7億ドルと確定したが、2016年7月に66.67億ドルに変更された。
これに対し、三菱重工では、取替用蒸気発生器の一部に不適合が存在したことを認めつつも、本契約に定められた保証義務は果たしたことから、責任上限(約137百万ドル)は有効であると主張した。
国際商業会議所の今回の仲裁裁定の内容は下記の通り。
・
三菱重工の主張を認め、責任上限(約137百万ドル)に既払い費用や金利等を調整し、125百万ドルの支払いを三菱重工に命じる。
・
Southern California Edison
側の主張する三菱重工の詐欺及び重過失の請求については棄却
・
Southern
California Edison 側に三菱重工の仲裁費用
58.1百万ドルの支払いを命じる。
仲裁決定は拘束力を持つため、これで本件は決着する。
三菱重工では、既に引当済みの金額を加味すると、今回の仲裁裁定に関する業績への影響は軽微としている。
2017/3/15
Shell、カナダのオイルサンド権益売却
Shellは3月9日、カナダのオイルサンドの権益を現地のエネルギー大手Canadian Natural Resources
Limitedに売却すると発表した。売却額は72億5千万米ドルとなり、2018年末までに予定する総額300億ドルの資産売却計画では最大となる。
Sellは昨年の英BGグループ買収で、同社の強みが生かせる深海鉱区や液化天然ガス(LNG)に経営資源を絞る方針を示した。投資効率の悪い資産の売却を進める。
Shell はCanadian Natural
Resources に次の資産を売却する。
・Athabasca Oil Sands Project (AOSP)
の権益の持分 60%全部
・Peace River Complex in-situ assetsやAlberta州の未開発のオイルサンドのリースの権益の100%持分
売却金額は85億米ドルで、うち現金が54億ドル、Canadian Natural Resources の株式で31億ドル。
同時に、ShellとCanadian Natural
Resources は、AOSPに20%の持分を有するMarathon Oil Canada をMarathon Oilから買収する。
50/50の買収で、買収額はそれぞれ12.5億米ドル。
これにより、Shellの手取りは72.5億ドルとなる。
現状と取引完了後の姿は次の通り。
Athabasca Oil Sands Project (AOSP)
には、オイルサンドの採掘事業と、採掘したオイルサンドを精製する事業、および二酸化炭素回収貯留(CCS)事業がある。
更にオイルサンド精製とCCSに隣接して、Canadian Natural
Resourcesへの売却対象外のShell 自身の製油所および石油化学プラントがある。
このため、オイルサンド精製とCCSはShellが引き続き操業を担当する。
|
今後のOperator |
Shell Albian
Sands mining and extraction operations
(Muskeg River and Jackpine mines)
能力255,000 barrels per day |
Canadian
Natural |
Scotford upgrader
能力255,000 barrels per day |
ShellのScotford
refinery and chemicals plantsに隣接 |
Shell |
Quest carbon capture and storage(CCS)project |
ShellとCanadian Natural Resourcesは、知的財産供与契約(285百万ドル)とShellのScotford
refinery への原料供与契約を締結した。
加えて、Shell はCanadian Natural
Resourcesとの間で、Marathon Canadaの50%持ち分と、Marathon Canadaの持つScotford upgrader 及びQuest CCS project の20%持ち分を交換する権利を持つ。
これが成立すれば、Shell はAOSPの採掘事業からは完全撤退し、AOSPのScotford upgrader
及びQuest CCS project の20%を所有する。
|
現在の所有者 |
取引後 |
交換後 |
Shell Albian
Sands mining
and extraction operations |
Shell 60%
Marathon Canada 20%
(Marathon)
Chevron 20% |
Canadian Natural
60%
Marathon Canada 20%
(Shell 10%
and
Canadian Natural 10%)
Chevron 20% |
Canadian Natural 80%
Chevron 20% |
Scotford upgrader |
Canadian Natural 60%
Shell 20%
Chevron 20% |
Quest carbon capture
and storage(CCS)project |