新ハンウル原発3

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2017/6/1  韓国、建設予定の原発の設計を中断、新大統領の脱原発方針の一環

韓国の全原発を保有・運営する韓国水力原子力 はこのたび、慶尚北道蔚珍郡に建設予定の新ハンウル原発 3、4号機の設計業務を一時中断した。

設計担当の韓国電力技術に対し、「原発の新規建設に関する政策が確定するまで工事設計を中断してもらいたい」と通告した。
当初計画では、3、4号機は今月着工され、3号機は2022年、4号機は2023年に完成する予定だった。

関係者は「建設計画を完全に中断したわけではなく、政府の政策方向によって最終決定する」と説明した。

しかし、業界では今回の措置が政府の検討を経て、最終的に建設中止につながる可能性が高いとみている。

ーーー

韓国の文在寅大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言している。

5月17日に、(後記の通り)老朽火力発電の一時停止を命じたが、原発についても、老朽のものを閉鎖、建設中のものは見直し、今後40年で原発に頼らないエネルギー政策に切り替えると述べた。

同氏は大統領選挙前の2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。

内容は次の通り。

原発の危険から国民の生命を守り、 安全で持続可能なエネルギー政策策定のために次期政府は積極的な 脱核・エネルギー転換政策を推進しなければならない。
ここに、文在寅候補は、次期政府において、 以下の政策課題を即座に推進することを約束する。

1.現在建設中の新古里4号機と新ハンウル 1・ 2号機の建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定する。

新古里4号機は間もなく稼働予定、新ハンウル 1号機は2018年4月、2号機は2019年2月に稼働予定。

(下記のとおり石炭火力を停止することもあり、電力不足の恐れがあるため、稼働せざるを得ないと思われる。)

2.現在建設中の新古里5・6号機と建設計画中の新ハンウル3・ 4号機を白紙に戻し、許可を取り消す。

新古里5号機は2021年、6号機は2022年、新ハンウル3号機 は2022年、4号機は2023年の稼働を予定していた。

3.江原道三陟と慶尚北道盈徳で推進中の原発建設計画を白紙に戻し、電源開発事業の実施計画を直ちに取りやめる。

韓国水力原子力は2015年に江原道三陟と慶尚北道盈徳の2カ所を新たに原子力発電所の建設候補地に決めた。 最大で4基ずつ、計8基を建設する計画。
韓国政府は、この8基を含め2030年までに19基を建設する計画であった。

4.ソウル行政裁判所の判決を尊重し、月城原発1号機の寿命延長裁判の控訴を取り下げ、1号機を即座に閉鎖する。

月城原発1号機は2012年11月20日に設計寿命の30年を迎えて運転停止したが、韓国の原子力安全委員会が2015年2月に安全性を審査し、2022年までの運転延長を許可した。

これに対し、近隣の住民ら2100人余りが運転延長は無効だとして安全委を相手に行政訴訟を起こした。

一審のソウル行政裁判所は本年2月7日、原告側の主張を認め延長を取り消す判決を言い渡した。延長審査の過程で原子力安全に関する法令が求める書類が不足していたことや、適切な決裁が行われなかったことなどを指摘、原子力安全委員のうち、委員の資格がないにもかかわらず審査に参加していた人物がいたことも問題視した。


なお、古里原発1号機は2007年に30年が経過したが、10年間の延長が認められ、2017年まで稼動する。

韓国水力原子力は2015年6月、稼働期間の再延長を申請せず、稼働から40年目の(現在の期限である)2017年6月で運転を終えると発表している。

2015/3/3 韓国、設計寿命30年超の原発の再稼働問題

付記  原子力安全委員会は6月9日、「古里1号機永久停止運営変更許可」を審議・議決した。6月18日0時に永久停止する。原発の永久停止は韓国で初めて。
 

5.パイロプロセッシング(乾式再処理技術)研究と第2原子力研究院の建設計画を再検討する。

6.大統領選挙後6か月以内に大統領直属で「(仮称) 脱核国民委員会」を構成し、脱原発ロードマップを議論する。

 

韓国の原発は下記の通り。稼働中25基(うち間もなく2基停止)

 

 

運転開始 原子炉形式 容量
 kW
大統領の政策協定
ハンウル
(
蔚珍)

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万  
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万  
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万  
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万  
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万 新ハンウル 1号機は2018年4月、2号機は2019年2月に
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万  
新ハンウル 1 (2018/4) KSNP (APR-1400) 140万

建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定

2 (2019/2) KSNP (APR-1400) 140万
3   KSNP (APR-1400) 140万 許可を取り消す。
4   KSNP (APR-1400) 140万
ハンピッ

(霊光)

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万  
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万  
3 1995/12 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
4 1996/3 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万  
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万  
月城 1 1983/4/22 CANDU  67.9万 運転延長取り消し判決の控訴を取り下げ、即時閉鎖
2 1997/7/1 CANDU 70万  
3 1998/7/1 CANDU 70万  
4 1999/10/1 CANDU 70万  
新月城 1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万  
2 2015/7 KSNP(OPR-1000) 100万  
3   KSNP(OPR-1000) 100万 (未認可)
4   KSNP(OPR-1000) 100万
古里 1 1978/4 加圧水型(PWR) 58.7万 (2017年6月停止が決定している。)
2 1983/7 加圧水型(PWR) 65万  
3 1985/9 加圧水型(PWR) 95  
4 1986/4 加圧水型(PWR) 95万  
新古里 1 2011/2 加圧水型(PWR) 100万  
2 2012/7 加圧水型(PWR) 100万  
3 2017/1 加圧水型(PWR) 140万  
4 間もなく 加圧水型(PWR) 140万

建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定

5   加圧水型(PWR) 140万 許可を取り消す。
6   加圧水型(PWR) 140万
三陟 4基       白紙に戻す。
盈徳 4基      
 

なお、稼働中は25基だが、これまでトラブルで多数が停止している。

2012/10/6   韓国で原発停止相次ぐ
 
 

ーーー

文在寅大統領は5月17日、原発に加え、老朽石炭火力10基の一時停止を命令した。

大気汚染悪化の原因である老朽石炭火力発電所10基を6月に一時停止し、来年にさらに10基停止すると公表した。

停止対象の10基は、江原道、全羅道、忠清南道、慶尚北道の各地にある操業から32年〜44年が経過している老朽火力発電所で、この10基が現在の大気汚染物質の20%を排出しているという。
韓国は中国からの黄砂やPM2.5の飛来も多いが、国内でも石炭火力が59基と多いため、ソウル市内などでも煤塵による健康被害問題が深刻化している。

石炭火力の稼働低下によって、煤塵の排出量を現状より30%削減することを目標とする。

大統領は、「われわれは、もはや安全とクリーンなエネルギーを目指すことで他国に遅れをとっていられない。石炭火力と原発を減少させ、再生可能エネルギーと天然ガスの発電を増やしていく」と化石燃料と原発からの脱却を宣言した。


ただ、現在、韓国の発電の40%は石炭火力で最も多く、次いで原発の30%となっている。天然ガス発電は25%だが、再エネは2%でしかない。

想定通りの天然ガス・再エネ切り替えには、エネルギー安定供給のリスクがある、との指摘もある。


 

2017/6/2 トランプ大統領のサウジ訪問で巨額の商談 

米国のトランプ大統領は5月20、21両日、就任後初の外遊先であるサウジアラビアを訪問した。
トランプ大統領は48時間でサウジ、湾岸諸国、アラブ諸国の首脳と3回会議を行ったほか、エジプト、カタール、パキスタン、バーレーンなどの首脳と個別に会談した。

トランプ米大統領はサウジアラビアで巨額の武器輸出契約を受注した。訪問直前にはアラブ首長国連邦(UAE)への武器輸出でも合意している。

サウジと5月20日に結んだ武器売却契約は、当初分だけで1090億ドル。

イランに対抗する最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」のほか、国境警備用の武器などが柱。UAEにもミサイル防衛用のパトリオット(PAC3)を約20億ドルで売却する。

米国製武器の一部はサウジで現地生産され、技術移転も図られる。脱石油依存を掲げ新産業導入を目指すサウジの経済発展への効果が期待される。

サウジアラビアはトランプ大統領のリヤド訪問中に米国企業との巨額の商談をまとめた。契約総額は3000億ドルから4000億ドル近くと推定される。
サウジは総額3800億ドル超の対米インフラ投資にも合意した。

Saudi Aramco は米企業各社との間で、総額約500億ドル相当の契約に調印した。サウジの「Vision 2030」 の実現のため、米国との協力を深めるもの。

2016/12/7  ソフトバンク孫社長、米に500億ドル投資



2017/6/3 米スリーマイル島原発、2019年に閉鎖 

米電力大手Exelon Corporation は5月29日、ペンシルベニア州のThree Mile Island Generating Station について、 州政府の支援が受けられなければ2019年に閉鎖すると発表した。

1979年3月に2号機が炉心溶融事故を起こし運転を停止した後も、1号機は稼働していたが、「シェール革命」でガス火力発電が安価になり、採算が悪化していた。

付記

Exelon Corporation は2019年5月8日、9月一杯で閉鎖すると発表した。

採算のとれないスリーマイル島原発の操業を継続するため、ペンシルベニア州議会に助成金の交付を求めてきたが、燃料購入期限内の実現は不可能と判断した。

付記

スリーマイル島原発は2019年9月20日、営業運転を終了した。

1974年に運転を開始した1号機は、米原子力規制委員会(NRC)から2034年までの運転認可を得ているが、採算割れが続いている。同社は運転継続を可能にするため、州政府に補助金など再生可能エネルギー並みの支援を要請したが、不調に終わっている。

発表でCEOは、New York 州やIllinois 州のように、Pennsylvania州も クリーンで安定したエネルギーを維持し、また雇用を維持する対策を取るべきだとする。原発が止まれば、大気汚染が増え、電力供給が不安定になり、消費者のエネルギーコストが増加し、雇用が減り、州経済を弱化させるとしている。

Pennsylvania州は2004年に、電力供給業者に対し、一定比率の代替エネルギーを義務付け、この比率を順次引き上げるという法律(Alternative Energy Portfolio Standards Act of 2004)を制定したが、太陽光、風力、水力などは対象になるが、原子力はこれに含まれていない。

New York州は2016年8月、採算が悪化した州内の原子力発電所を数十億ドルの補助金で支援するよう、画期的なクリーンエネルギー基準を制定した。固定資産税を財源に、州内に4カ所ある原子力発電所のうち3カ所の運営に2029年まで補助金を出す。

Illinois 州議会は2015年2月、低炭素電源利用基準設立法案を提案した。
電力会社に対し販売電力量のうち70%を原子力、太陽光、風力、水力、潮力、波力、クリーン石炭といった低炭素電源から調達することを義務付け、それら発電事業者から購入する「低炭素電源クレジット」のコストを需要家からサーチャージとして回収する 。

 

Three Mile Island原発の概要は次の通り。

  形式 出力 運転開始 事故発生(*) 運転認可
1号機 加圧水型(PWR) 837MW 1974年6月19日 ーーー 2034年まで
2号機 加圧水型(PWR) 959 MW 1978年12月30日  1979年3月28日 ーーー

* 炉心溶融(メルトダウン)で、燃料の45%、62トンが溶融し、うち20トンが原子炉圧力容器の底に溜まった。

 


        1982/5  筆者撮影

 

 


2017/6/5   中国、人民元の中心レート設定方法を変更

中国人民銀行(中央銀行)は5月26日、人民元の対米ドル取引の基準値の決定に新たな手法を導入すると発表した。

市場心理の揺らぎや「群集効果」による相場の過度な変動を抑えるのが目的という。

現在は、前日の午後4時30分時点の終値と通貨バスケットの変動をベースに基準値を決めている。

中国人民銀行(中央銀行)は2015年8月11日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートの「基準値」の算出方法を変更すると発表した。

これまでは基準値は銀行から毎朝報告される為替レートをもとに人民銀行が決めていたが、市場の実勢レートとの差が大きかった。

8月11日からは、基準値を市場の前日終値などを参考に決め、市場の実勢を反映しやすくする。

これに伴い人民銀行は8月11日の基準値を前日から約2%切り下げた。

2015/8/11 中国、人民元/米ドル取引の基準値の算出方法を変更、人民元2%切り下げ   

今回、新たに反循環的要因(counter-cyclical factor)を勘案する。counter-cyclical factorとは変動抑制を意味し、前日の相場が大きく変動した場合でも、基準値の変動を緩やかに抑える仕組みとされる。

現在の中国の為替市場は非合理的な期待で動く公算があり、これによって「非現実的な」需給が生じ、オーバーシュートのリスクが高まる。「反循環的要因」は「群衆行動」を和らげ、投資家が経済のファンダメンタルズにより注目するよう促すことに寄与し得るとしている。

これに対し、当局の裁量に基づく相場管理が再び強まる可能性があり、市場関係者からは「人民元の国際化に逆行する動き」との批判が出ている。

付記

中国人民銀行は2018年に入り、2017年から実施してきた人民元の高値誘導を緩和したことがわかった。元取引の基準となるレート「基準値」の算出法を修正し、元安に振れるのを抑制する特殊な操作を停止する。基準値の算出を事実上、以前の方法に戻す。
好調な輸出を背景に元急落や資金流出への懸念が薄らぎ、管理色が強いとの批判があった措置を見直す。
 

ーーー

これを受け、端午節の4連休明けの5月31日の人民元相場は対米ドルで大幅に上昇した。市場では当局が一段の元安や資本流出を食い止める方針との受け止めが広がっていた。

翌6月1日の基準値は前日終値近くに設定され、終値もほぼこれに近いものとなった。

2016年11月中旬以降、人民元は弾力化直前の2010年6月18日の終値より元安となっていたが、今回、元高に戻った。

当局による新手法導入の発表により、とりあえず、元安の動きを止めたことになる。

 
  基準値 終値 '10/6/18
5/26 6.8698 6.8610 -0.51%
5/31 6.8633 6.8210 0.08%
6/1 6.8090 6.8061 0.30%
6/2 6.8070 6.8162 0.15%
     

人民元の推移:

 


2017/6/6 Saudi Aramco、サウジでワールドクラス造船所設立のJV契約締結

Saudi Aramco は5月31日、UAEのエンジニアリング会社Lamprell plc、Aramcoの石油を輸送するサウジ国営のNational Shipping Company of Saudi Arabia (“Bahri” ) 及び韓国の現代重工業 の3社と、サウジの東岸のRas Al-Khair に建設中の海事複合施設「サルマン国王・グローバル・マリタイム・コンプレックス」で、ワールドクラスの造船所を建設・運営するJV設立の株主契約に調印した。

造船所は生産能力と規模で地域最大で、海上原油・ガスのリグ、海上油田支援船、巨大タンカー(VLCC)を含む船舶を製造、保守管理、修理、オーバーホールし、Aramcoとそのサプライチェーンパートナーを支援する。

2022年のフル稼働を目指す。

コンプレックス(King Salman International Complex for Maritime Industries and Services)の立地と完成予想図:

造船所は4つに分かれている。

Zone A とD はLamprellが担当し、リグの建設と、リグと船舶の保守管理、修理、オーバーホールを行う。

Zone B と C は現代重工業が担当し、船舶の建設と、海上油田支援船の保守管理、修理、オーバーホールを行う。

Aramcoの親会社のSaudi Arabian Oil Companyは、最低20のリグ(年2基 x 10年)と支援船を購入する。
Bahri は10年間にわたり、必要とする船舶のすくなくとも75%、即ち多数の巨大タンカーを含む最低52隻の船舶を購入する。

各社の投資額(百万ドル)と出資比率は次の通り。

Saudi Aramco 350.7 50.1%
Bahri 139.3 19.9%
Lamprell 140.0  20.0%
現代 70.0 10.0%
合計 700.0 100%

総建設費用は52億ドルと見込まれており、このうち35億ドルはサウジ政府が支出する。

7億ドルは4社が出資し、残り10億ドルはSaudi Industrial Development Fund が融資する。

ーーー

サウジ政府は石油に依存する経済からの脱却を目指した成長戦略「ビジョン2030」を推進しており、本件はその一環で、サウジで船舶産業を現地化し、雇用を創生することにも役立つ。

現代重工業は昨年12月1日にプロジェクトへの参加を発表した。世界的な造船不況が続くなか、初めて海外案件に乗り出し、船舶の建造技術や造船所の運営ノウハウの支援に活路を探る。

ーーー

なお、米国の油田サービス・機器供給メーカー McDermott International は2017年3月、機器の現地生産の基地をつくるため、Ras Al Khair の土地の長期リース契約の覚書を結んだ。


2017/6/7 高浜原発3号機再稼働 

関西電力は6月6日、高浜原発3号機(福井県高浜町)を再稼働させた。2016年3月の大津地裁の仮処分決定で、運転中の原発として初めて司法判断で停止。本年3月に大阪高裁が決定を取り消し、法的に運転可能となった。

営業運転開始は7月上旬の見込み。

4号機は5月17日に既に再稼働しており、今月中旬に営業運転に入る予定。

付記

稼働中の高浜原発3、4号機を巡り、北朝鮮からミサイルで攻撃されると広域で被害が出るとして、運転差し止めを求めた大阪府高槻市の住民による仮処分申請で、大阪地裁は2018年3月30日、申し立てを却下する決定をした。


関西電力高浜原発3、4号機の稼動の動きは下記の通り。

      No.3 No.4
規制委員会 2015/2/12 安全審査合格  

 

停止

 

 

停止

福井地裁 2015/4/14 運転差し止めを求めた仮処分申請で、再稼働を認めない決定
 
2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定
福井地裁 2015/5/18 関電申し立ての仮処分の執行停止要請を却下
福井県知事 2015/12/22 再稼働に同意
福井地裁 2015/12/24 仮処分の決定を取り消し、再稼働を認める判断
関西電力 2016/1/29 3号機再稼動

稼動

2016/2/26 4号機再稼動  
         2/29  4号機、直後にトラブルで停止   

 


停止

大津地裁 2016/3/9 運転の停止を命じる仮処分の決定 3号機停止 停止
2016/6/17 関電の仮処分の決定の効力停止申立てを却下
 2016/6/17    大津地裁、高浜原発の運転停止の仮処分の執行停止の申し立てを却下 
大津地裁 2016/7/12 関西電力の異議の申し立てを却下
関西電力 2016/7/14 大津地裁の仮処分決定の取り消しを求め、大阪高裁に保全抗告を申し立て
大阪高裁 2017/3/28 仮処分の決定を取り消し
 
2017/3/28 大阪高裁、高浜原発3・4号機の再稼働認める判断
関西電力 2017/5/17   4号機再稼働 (6/16 営業運転)  
関西電力 2017/6/6  3号機再稼働  

 

現時点での日本の原発の状況は下記の通り。

    運転開始 万KW  
稼働
 (9)
九州電力 川内@ 1984.7 89.0 2015/9/10 営業運転
2017/4/5  1本の核燃料棒から放射性物質漏れ
九州電力 川内A 1985.11 89.0 2015/11/17  営業運転
四国電力 伊方B 1994.12 89.0 2016/9/7 営業運転

   付記 2017/12/15 広島高裁
          2018/10/27  再稼働

関西電力 高浜C 1985.6 87.0 2017/5/17 再稼働 6/16 営業運転
関西電力 高浜B 1985.1 87.0 2017/6/6  再稼働
関西電力 大飯B 1991.12 118.0 2018/3/14再稼働 2018/7/4 名古屋高裁金沢支部
運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却
関西電力 大飯C 1993.2 118.0 2018/5/9 再稼働
九州電力 玄海B 1994.3 118.0 2018/3/23再稼働   3/30蒸気漏れで停止 4/18 再稼働
九州電力 玄海C 1997.7 118.0 2018/6/16再稼働
 
許可済 関西電力 高浜@ 1974.11 82.6 40年超 2016/6/20    運転延長認可
再稼働は、必要な工事が終わる2019年10月以降。
関西電力 高浜A 1975.11 82.6
関西電力 美浜B 1976.3 82.6 2016/11/16    運転延長認可
2020年1月の工事完了を目指す。
九州電力 玄海B)↑     2017/1/18 「審査書」を正式決定
再稼働延期 付記を参照
(九州電力 玄海C ) ↑    
関西電力 大飯B)↑     2017/5/24  審査書を正式決定
付記 2018/1 再稼働予定であったが延期(下記)
(関西電力 大飯C)↑    
付記
東京電力 刈羽E 1996/11/7 135.6 2017/12/27 「審査書」を正式決定
 初の沸騰水型(福島第一と同じ)
東京電力 刈羽F 1997/7/2 135.6
原電 東海A 1978/11/28 110.0 40年超 2018/9/26 「審査書」を了承 要運転延長審査合格
2018/11/7  運転延長
認可
東北電力 女川A 1995/7/28 82.5 2019/11/27「審査書案」、2020/2/26 合格
中国電力 島根A     2021/6/23「審査書案」了承 9/15正式とりまとめ

2016/6/22   関電高浜1、2号機の20年延長、規制委が認可

付記 玄海BCについて住民らが再稼働の差し止めを求めた仮処分申し立てで、佐賀地裁は2017年6月13日、申し立てを退ける決定をした。
     4月には佐賀県知事が同意を表明、県議会や立地する玄海町も再稼働を認めている。

     佐賀地裁は2018年3月20日、再稼働差し止めを求めた住民らの仮処分申し立てを却下した。

付記 2017/11/30 九州電力は玄海原発3号機は2018年1月、4号機は同3月を計画していたが 、3号機は2018年3月、4号機は同5月にそれぞれ延期すると発表した。
   神戸製鋼所のデータ改ざん問題に関連して自社調査に時間がかかるため。

 関西電力も、3号機は2018年1月、4号機は同3月稼働を計画していたが、神戸製鋼所の製品データ改ざん問題に関連して自社調査に時間がかかるため、
 数カ月遅らせる検討に入った。

付記 玄海3号は2018/3/23に再稼働 したが、3月31日に蒸気漏れがあり、停止した。

付記 東北電力 女川A  2020年2月26日 合格

  審査中 未申請 廃炉
北海道電力 泊@AB    
東北電力 東通@、
女川A2020/2/26 合格
女川B 2018/10/25女川@
東京電力 (柏崎刈羽EF)↑
  付記 合格へ
柏崎刈羽@〜D、
福島第二@〜C
福島第一@〜E
中部電力 浜岡BC 浜岡D  
北陸電力 志賀A 志賀@  
関西電力  
(大飯@A)→
美浜@A
大飯@A
付記  大飯 2017/12/22 廃炉決定
中国電力 島根A

2021/9/15合格

島根B 島根@
四国電力     伊方@
(伊方A) 伊方A 2018/5廃炉
付記 2018/3/27 廃炉決定
九州電力     玄海@
玄海A
 2019/2/13 決定
原電 敦賀A   敦賀@
電源開発 大間    

 

付記 

東電は6月16日、柏崎刈羽EFについて審査の申請書を修正し、提出した。

中国電力は2018年8月10日、島根原子力発電所3号機の新規稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。
建設中の原発の申請はJパワー大間原発に続き2例目。建物や設備はほぼ完成している。審査の進捗によっては、東日本大震災後に新規稼働する初の原発となる可能性がある。

原子力規制委員会は2018年11月7日、稼働から40年を迎える日本原子力発電東海第2原子力発電所(茨城県東海村)の運転期間の延長を認可した。
最長20年間延長できる。認可は福島第1原発と同じ沸騰水型の原発では初めて。再稼働には地元の同意が必要で、慎重な自治体もあり、再稼働の時期は見通せない。

原発の運転期間延長が認められるのは、高浜原発1、2号機、美浜原発3号機に次いで3原発4基目。


2017/6/8  住友金属鉱山、カナダの金開発の権益取得 

住友金属鉱山は6月6日、カナダの産金会社 IAMGOLD Corporation (旧称 International African Mining Gold Corporation) が92.5%の権益を保有するCote金開発プロジェクトの同社持分の30%(プロジェクト全体の27.75%)を取得することで合意し、投資契約に調印した。 取得対価は総額195百万米ドル。
  現状比率 取得後
IAMGOLD 92.5% 64.75%
住友金属鉱山 --- 27.75%
Treelawn Investment 7.5% 7.5%

Cote金開発プロジェクトは、カナダのオンタリオ州 Timmins市の南南西約120kmに位置する露天掘りの大規模開発プロジェクトで 、現在、2019年の建設開始、2021 年の生産開始に向けてFSを実施している。

取得する権益には周辺鉱区も含まれる。この地域は世界有数の産金地帯で、Abitibi gold belt と呼ばれている。

立地
初期起業費 1,047百万米ドル
マインライフ 約17年
総生産量 金 168トン

 

IAMGOLDは中堅の産金会社で、カナダ、南米、アフリカに5つの金鉱山を有し、その他にも複数の探鉱・開発プロジェクトを進める

 

住友金属鉱山は長期ビジョンで権益シェア分の金の生産量を年間30トンまで増やすことを目指しているが、これを機に、IAMGOLDと金事業でのパートナーシップ構築を目指す。

ーーー

同社(と住友商事)はチリ共和国 Sierra Gorda銅鉱山開発プロジェクトで2年連続で減損損失を計上している。

2017/2/11 住友金属鉱山と住友商事、チリ銅鉱山開発で2年連続で減損損失計上

住友金属鉱山は今回の発表時に、「FSから参加しているので我々の管理能力でリスクはコントロールできる」とシエラゴルダ銅鉱山との違いを述べた。

 


2017/6/9  AIIB 第二回年次総会 韓国・済州島で開催

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の第2回年次総会は6月16日から18日まで、韓国の済州島で開催される。

中国以外の国で開かれる初の総会で、「持続可能なインフラ」をテーマに開かれ、加盟77カ国・地域の財務相や中央銀行総裁ら約2000人が出席する。

付記 6月16日、アルゼンチン、トンガ、マダガスカルが参加し、80か国となった。(域内46カ国、域外34か国)

韓国は技術売り込みの絶好のチャンスとみて、国を挙げて取り組む。

総会に合わせ、インフラ展示館が開かれ、下記のような韓国が強みを持つインフラ技術が一挙に紹介される。

韓国土地住宅公社 韓国型スマートシティ
韓国道路公社 スマートハイウェイ
韓国鉄道施設公団 高速鉄道システム
韓国水資源公社 水と水道施設の管理システム
済州道庁 カーボンフリー・グリーンエネルギー
KT(通信大手) 5Gと知能型ネットワーク

インフラ展示館には韓国企業に加え、インド、トルコ、南アフリカ、スペイン、ポーランドなどが参加する。

企業館には現代建設やSK建設などの大企業のほか、都和エンジニアリング(コンサルティング)、空間情報(航空地籍情報)、EMコリア(トンネル掘削機)、ジオライン(電気自動車用の移動型充電・決済システム)、DSPOne(スマートグリッドシステム)などインフラ関連の中小企業が出展する。

また、韓国輸出入銀行と韓国貿易保険公社、韓国産業銀行などの政府系機関は海外プロジェクトへの金融支援関連のコンサルティングを行い、関税庁と電子貿易基盤事業者のKTNet は電子通関と電子貿易システムを紹介する。


第三回総会はインドで開催される。

ーーー

この総会に、韓国の7人組ガールズグループAOAらが祝賀公演を行うことが伝わり、アジア諸国などから参加の問い合わせが殺到しているという。反響を踏まえて申し込みを9日まで延長した。

AOAは総会初日の6月16日、副首相主催の歓迎夕食会に出席し、加盟する77カ国・地域の代表を前に公演を行う。2日目の17日には、歌手のLYn が知事主催の夕食会でステージに立つ。

 


2017/6/10 Lion Copolymer、米政府が第二次大戦中に建設したSBRプラントを再取得  

Lion Copolymerはこのたび、East West CopolymerのBaton Rouge, LouisianaのSBRプラントを再取得した。

East West Copolymer は2017年4月7日、Chapter 11 を申請した。

Lion Copolymerは2014年2月にEast West Copolymer に売却したプラントを再度購入することを決め、5月9日に裁判所の承認を得て、5月26日に取得した。

Lionが工場の戦略的オプションを評価する間、工場はしばらく停止する。

付記

Lion Copolymerは2017年8月15日、このプラントと土地をExxonMobil に560万ドルで売却した。ExxonMobilのBaton Rouge Refinery はこのプラントに隣接している。

ExxonMobilでは、生産を続ける考えはないとし、利用の具体的計画は無いとしている。

 

この工場は、 第二次大戦中に米政府が建設し、1943年に生産を開始したプラントで、Lion Copolymer が2005年にDSM Copolymerから取得してSBR事業に進出した。
(Lion Copolymer は2006年にChemturaからEPDM事業も買収している)

Lion Copolymer は2010年にNSBR事業にも進出しているが、2014年2月に、Economic conditions により、SBRプラントを停止し、その後、プラントを同社の元CEOが設立したEast West Copolymer LLC に売却した。

Lion Copolymer はその後、2014年12月1日、テキサス州 Port NechesでSBRを生産しているAshland Elastomers, LLCの買収を完了したと発表した。
この事業は、Ashland Inc. が2011年に買収したInternational Specialty Products の事業で、非コア事業売却の戦略の一環として売却するもの。

Lion Copolymerは一旦売却したSBR事業に再参入した。

2006/11/14 合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC

2014/12/16 Lion Copolymer、再びSBR事業を取得 

工場の歴史:

第二次世界大戦を控え、米国政府は天然ゴムの供給が絶えるのを恐れ、合成ゴム製造計画を進めた。

Franklin D. Roosevelt 大統領の指示で、1940年にゴムの保管、速度制限によるタイヤ用ゴムの節約、スクラップゴムの回収を目的にRubber Reserve Company が設立された。

その後、東南アジアからの天然ゴムの供給が途絶え、合成ゴムの生産が求められた。

1942年にRubber Reserve Company とタイヤメーカー(Firestone、Goodrich、Goodyear、United States Rubber Company=後のUniroyal)は統一処方を決めた。

統一処方GR-S (Government Rubber-Styrene)
ブタジエン 75%
SM 25%
触媒 potassium persulfate  
改質剤 dodecyl mercaptan  

1942年4月に4社が生産を始め、1945年には生産量は92万トン(うちGR-Sが85%) に達した。GR-Sのうち 70%は4社が生産している。

http://www.acs.org/content/acs/en/education/whatischemistry/landmarks/syntheticrubber.html

この動きのなかで、1943年に中小のゴム・タイヤ企業7社が集まってCopolymer Corporation が設立され、Baton RougeのRubber Reserve Company のプラントでSBRの生産を始めた。

その後の動き:

1943 Copolymer Corporation 設立 Rubber Reserve Company のプラントでSBRの生産開始
1955 米国政府  Rubber Reserve Companyの民間への払い下げ決定
Copolymer Corporation Baton Rouge工場を買い取り
Copolymer Rubber and Chemical Corporation と改称
1983 Armstrong Rubber Company Copolymer Rubber and Chemical を買収
1989 DSM Copolymer Rubber and Chemical を買収、DSM Copolymer と改称
2005 Lion Chemical Capital DSM Copolymer のSBR事業を買収、Lion Copolymer, LLC設立
2014 East West Copolymer LLC
Lion 元CEOが設立)
Lion CopolymerのSBRプラントを買収
2017/4 East West Copolymer LLC Chapter 11 申請
2017/6 Lion Copolymer East West CopolymerのSBRプラントを買収、再取得
(2017/5 破産裁判所が承認)
 戦略オプションの検討中は工場停止

 



2017/6/12 東芝、米国原発建設プロジェクトの親会社保証問題で前進 

東芝は6月10日、Westinghouseが建設中の「AP1000」原発、Vogtle 3、4号機建設計画に関する親会社保証について、Southern電力に対し、3,680百万米ドル(4129億円)を2017年10月から2021年1月までの間に分割して支払うことで合意書を締結した。

2008年にWestinghouseが2基のAP1000原子炉建設プロジェクトを受注した際、親会社保証契約を締結したが、今回、保証上限の金額とその支払いスケジュールについて合意したもの。

本合意に伴い、東芝の保証責任は今回合意した金額を上限として固定され、親会社保証にかかる追加での費用負担を遮断したこととなる。
下記の点で合意した。
今後、プロジェクトコストの増加等の如何なる事情を問わず、保証上限額以外の建設プロジェクト関連費用を東芝に請求しない。

実際の工事費用が当該金額よりも低く抑えられた場合に、東芝はその差額の一部の返金を受ける。

米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続について協調する。

Southern電力がWestinghouseの再生手続 において債権者として回収しえた額は保証上限金額に充当される。

東芝の2017年5月15日付の2016年度通期業績見通し(純損失9500億円)では、親会社保証引当金(6700億円)及び貸倒引当金合計9800億円を折り込んでおり、 今回の合意で追加負担はない。

別途、Westinghouseと電力会社はサービス契約を改定した。Westinghouseは原子炉「AP1000」などの技術提供・支援に回り、原発建設はSouthern電力が引き継ぐ。当面は工事を続行するが、そのまま完成を目指すか断念するかは今夏中にも決定する。

東芝は現在、VC Summer 2、3号機の建設プロジェクトに関し、South Carolina Electric & Gas 等と保証上限金額及び分割支払いスケジュールについて交渉を行っている。

これについての合意によっては、追加負担が生じる可能性もある。

また、それぞれの電力会社は総括原価方式により追加コストを電気料金に転嫁しており、消費者が東芝を訴える恐れもある。
Southern電力は米政府の債務保証で銀行から融資を受けており、これが影響する恐れもある。

 


2017/3/13   Westinghouseの破産法申請が現実味

 



2017/6/12 日立の英国の原発事業の戦略 

日立製作所は6月8日、投資家向けイベントで、英国で進めている原発の新設計画について、「リスクを最小化するベストな体制を敷いている」と説明した。東芝のWestinghouse との違いを強調した。

ーーー

日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEから英国で原発の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2〜3基)を建設する。
第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(
ABWR)技術を用いる。

日立は事業遂行のため、日立ニュークリア・エナジー・ヨーロッパを設立した。

2012/11/1   日立製作所、英の原発会社買収

Horizonと日立は、Horizon初のプロジェクトとなるWylfa Newydd 原発建設において、2018年までに全ての許認可を英国政府から取得し、2019年に着工、2020年代前半の初号機運転開始をめざしている。

2基にかかる総事業費を現時点で約190億ポンド(約2.6兆円)と想定。日立が総事業費の1割程度、英国政府が25%以上を出す案が出ている。

日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。

日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa Newydd で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。

2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

日立は本事業のため、多くの企業と提携している。

建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock InternationalRolls Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin と協力覚書を締結した。

日本原子力発電(日本原電)は2016年7月7日、日立製作所及びHorizon との間で、Wylfa Newydd の新規原発建設プロジェクトに関し、許認可段階における協力協定を締結した。

日本原電が培ってきた経験やノウハウを活かして、Wylfa Newydd 原発の建設費評価やEPC (設計・調達・建設)  契約締結に向けた作業、サイトライセンス、建設前安全性影響評価報告書を含む許認可取得、試運転の計画、運転開始後の各種メンテナンス計画の策定などを進める。

2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力   

 日立GEニュークリア・エナジーは先行エンジニアリング(FEED) 契約のもと、3年間にわたって本プロジェクトを支援してきたが、請負契約を締結し、 ABWR技術を提供する。

Horizon Nuclear Powerは2016年5月、日立ニュークリア・エナジー・ヨーロッパとベクテル日揮の3社が設立したコンソーシアム「Menter Newydd」(ウェールズ語で「新しいベンチャー」を意味)をEPC契約締結までのエンジニアリング業務を遂行するサプライヤーに指名した。

Horizon Nuclear Power は2017年2月、米国の発電事業者で北米最大規模の原子力発電所を運営するExelon Generation との間で原発運営に関して協力することで合意したと発表した。

2017/2/21 日立、英原発事業で米電力大手と協力

 

今回明らかにされた日立の戦略は次の通り。

  日立 東芝(Westinghouse)
出資比率 パートナーを募り、連結子会社から外せない場合は計画を中止する。
出資パートナー候補との本格交渉はこれから。
 
Westinghouseは実質東芝100% (他株主は簿価で東芝に譲渡するオプションを持つ)
親会社保証
6700億円を引き当てしているが、これを超える可能性、訴訟リスクを抱える。
採用技術 稼働実績が豊富な日立GEニュークリア・エナジー のABWR技術

GE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。

 
次世代型PWR(加圧水型軽水炉)「AP1000」

米国では初めてで、他に中国で建設中
(米国では原発建設は30年以上なし)

大容量なのにコンパクトにしたため、配管の設計が難しく、かつ、長期間建設実績がないため、何度もやり直しが必要となり、建設期間が延び、コストが急増した。 (配管を変更すると場合により安全計算をやり直す必要もある)

報道では中国では配管を無理やりにスパゲッティのように入り組ませて建設したという。安全上、問題がないのか、疑問。
 

建設リスク 最強のパートナーが一体感を持って取り組む

ベクテルと日揮と組み、工事遅延などで損失が発生する場合は個社の過失を問わず、事前に決めた割合で全社が責任を負う 。

東芝がリスク負担。

Shaw Group 子会社のStone & Webster を起用したが、CB&IがShaw Group を買収し、原発事業からの撤退を決めた。

建設遅れ・コストアップで電力会社とWestinghouse/Stone & Webster で訴訟問題となり、WestinghouseがStone & Webster を買収し、電力会社には追加コストを求償しないことで解決した。CB&Iを免責したことで、巨額赤字を負担することとなった。
 

 

付記

日立は7月19日、Horizon Nuclear Power が、原子力に関する世界的な訓練サービス事業者であるスペインのTecnatom S.A との間で、2020年代前半の運転開始をめざして、英国アングルシー島のウィルヴァ・ニューウィッドで開発を進めているABWR(改良型沸騰水型原子炉)の新規原子力発電所に従事する作業員の育成に関して提携することで合意したと発表した。

今後、Tecnatomは、原子力分野で英国最大の教育訓練会社の一つであるGEN II Engineering and Technology Training Ltd.とGE Hitachi Nuclear Energy, Ltd.から成るチームを構築し、作業員の育成に関する取り組みを進めていく。



2017/6/13 Sinopec
燕山製油所 移転せず

Sinopecは6月8日、政府から Yanshan oil refinery(燕山煉油廠)の移転の命令を受けていないことを明らかにした。

経済紙の 財新網が6月7日に、 雄安新区(Xiongan New Area)の水資源の確保のため、Sinopecが燕山煉油廠唐山市曹妃甸区に移転すると報じていた。

燕山煉油廠の能力は年産10百万トンで、燕山石化のエチレン能力は年産80万トン。

財新網は、曹妃甸区は東海岸の有数の港であり、海外からの輸入原油を使用できるため、移転により製造コストは15%は下がるとしていた。

これについてSinopecでは、燕山煉油廠の水の使用量は過去10年で60%減少しており、2016年の使用量は原油1トン当たり0.46トンであるとしている。

 

中国政府は4月1日、河北省に副都心「雄安新区」(Xiongan New Area)を設置すると発表した。

北京市、天津市、河北省の一体化を目指すプロジェクトの具現化で、首都としての北京市への権益の一極集中や社会インフラへの圧迫を緩和する狙いもある。

「雄安新区」は北京と天津と保定に囲まれた河北省の雄県、容城、安新の3県とその周辺地域で構成される。深圳経済特区、上海浦東新区に続く全国的な意味合いを持つ新区という位置付けで、初期の開発面積は約100平方キロメートル、将来的には2000平方メートルが開発される。

 「北京の非首都機能を分散させる上での集中受け入れ地であり、首都を中核とした世界レベルの都市クラスターの配置、北京・天津・河北の空間構造の調整において重要な役割を果たすことになる」とされる。

2017/4/12 中国、河北省に新副都心「雄安新区」



2017/6/14  上海協力機構にインドとパキスタンが加盟

中国、ロシア、中央アジア4カ国でつくる上海協力機構(SCO)は6月8日、9日にカザフスタンの首都アスタナで首脳会議を開き、習近平国家主席やプーチン大統領など、加盟6か国の首脳とオブザーバーの国々の首脳や代表らが出席した。

会議では、インドとパキスタンの正式な加盟を決めた。これによって加盟国の人口は合わせて30億を超え、世界のGDPに占める割合は、およそ20%に上る。

首脳会議では、両国の加盟により、域内の人口が世界の4割に達することを強調した。また、テロとの闘いで加盟国の連携強化をうたった宣言を採択し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の問題についても協議していく方針を確認した。

また、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」について、「首脳らは歓迎し、5月の一帯一路会議の結果を称賛し、これまでの成果を支持する」と高く評価した。

インドとパキスタンの正式加盟を主導したロシアのプーチン大統領は、ウクライナ情勢をめぐって欧米と対立する中、両国を取り込むことで影響力を強め、欧米に対抗する狙いがあるものと見られる。
プーチン大統領は「政治や経済分野などで、より強力で影響力のある組織になる」と述べ、テロ対策や経済協力を進めることに意欲を示した。

しかし、インドとパキスタンはカシミール地方の領有権をめぐって対立しているほか、5月14日から2日間、北京で開催された「一帯一路フォーラム」をインドがボイコットしたことで中国とインドの関係もギクシャクしており、拡大と結束を両立できるのかが課題となる。

インドは、パキスタンと領有権を争うカシミール地方を通る「中パ経済回廊」が「一帯一路」に含まれていることに反発、「主権と領土保全における核心的な懸念を無視した事業計画を受け入れる国は1つもない」との声明を発表した。

オブザーバー国のベラルーシのルカシェンコ大統領は、「両国には意見の違いもあるが、SCOに加盟したからには問題を解決する責任が両国にある」と呼びかけた。

ーーー

上海協力機構は1996年4月に初めて集った上海ファイブを前身とする協力機構で、加盟国が抱える国際テロや民族分離運動、宗教過激主義問題への共同対処の外、経済や文化等幅広い分野での協力強化を図る。

2000年の会議にウズベキスタンがオブザーバーとして参加し、翌年に6カ国によって発展発足した。

その後、参加を希望する国が続出している。

正規加盟国 中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン(以上 上海ファイブ)
ウズベキスタン(2001年)
インド、パキスタン(2017年)
オブザーバー モンゴル、イラン、(インド↑)、(パキスタン↑)(以上 2005年)
アフガニスタン(2012年)
ベラルーシ(2015年)
対話パートナー スリランカ、(ベラルーシ↑)(以上 2009年)
トルコ(2012年)
アルメニア、アゼルバイジャン、カンボジャ、ネパール(2015年)
参加申請国 バングラデシュ、モルディブ、イスラエル、エジプト、シリア
客員 トルクメニスタン、独立国家共同体(CIS)、東南アジア諸国連合(ASEAN)

 

 

 


2017/6/15  課税逃れ防止の多国間協定に60カ国が署名 
 

日本、中国、インド、英、仏、独など約60カ国は6月7日、グローバル企業による課税逃れを防ぐための新たな多国間協定に パリのOECD本部で署名した。

協定は、「BEPS防止のための租税条約関連措置の実施に係る多国間協定(Multilateral Convention to Implement Tax Treaty Related Measures to Prevent BEPS)」と呼ばれるもので、BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting (税源浸食と利益移転)で、多国籍企業による租税回避のこと。

OECDの試算によると、少なくとも世界の法人税総額の4〜10%に当たる年1000億〜2400億ドルが毎年課税漏れとなっている。

BEPSは、多国籍企業が、現行ルールの下で、税制上の所得を実際の経済活動の場所と異なる国に配分することが可能であることから生じる。
これにより、所得がいずれの国でも課税されず、多国籍企業が支払う法人税が大幅に軽減されるという結果が生じうる。

2012年6月のメキシコでのG20サミットで「税源浸食と利益移転を防ぐ必要性」について再確認した。

直後に、スターバックス、グーグル、アマゾン、アップル等の租税回避が政治問題化し、協議が続き、「BEPS行動計画」を作成した。

2013年9月のG20サミットで「BEPS行動計画」が全面的に支持された。

http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/documents/20140922DSGTamaki-ppt-beps.pdf

この条約は、BEPSプロジェクトにおいて策定されたBEPSを防止するための措置のうち,租税条約に関連する措置を,この条約の締約国間の既存の租税条約に導入することを目的と する。

現在は2国間の租税条約で課税漏れを防いでいるが、条約を締結した2国のどちらかに、第三国の企業がペーパーカンパニーをつくって、軽減税率などの条約特典を不正に得るケースもあり、3つ以上の国を舞台にした税逃れには対応しにくい。

また、巧妙化する課税逃れを防ぐには、2国間の租税条約に新たなルールを設けるための条約改正が必要で、条約締結している国ごとに改正手続を進めなければならない。
2国間の租税条約は世界で約3千あるとされ、「一つ一つ改正した場合、10年単位の時間がかかる」とされる。

今回の多国間協定では、こうした課題に対応するもので、協定参加国が課税に関する統一のルールを決めるため、各国の税制の違いに着目した課税逃れを防ぎやすくなる。
2国間条約の改正作業も統一ルールに合わせた1度の改正で済み、複数の国に同じ効力を持たせることが可能になる。

OECD事務総長は次のように述べた。

「この多国間協定への署名は、租税条約の歴史における重要な転換点である。我々は、BEPSプロジェクトで合意された、世界全体で1100以上に上る租税条約の抜本的な改革を早急に実施し、租税条約の改正方法を大幅に変えようとしている。この新協定は、署名諸国を二国間条約の再交渉という負担から解放するだけでなく、企業には確実性と予測可能性の向上、市民の利益にとっては国際租税制度の機能改善に繋がるものである。さらに本日の署名式は、国際社会が団結すれば、実効的に対処できない課題はないということを明らかにしている。」

米国は多国間協定を嫌うTrump大統領の方針に沿い、これに不参加で、2カ国の租税条約で対応する。

ーーー

本条約の各締約国は、本条約に規定する租税条約に関連するBEPS防止措置の規定のいずれを既存の租税条約について適用するかを所定の要件の下で選択することができる。
 
本条約に規定する租税条約に関連するBEPS防止措置の規定は、原則として、各租税条約の全ての締約国がその規定を適用することを選択した場合にのみその租税条約について適用される。

本条約のうち日本が適用を選択しようと考えている項目は下記の通り。

課税上存在しない団体を通じて取得される所得に対する条約適用に関する規定(第3条)

双方居住者に該当する団体の居住地国の決定に関する規定(第4条)

租税条約の目的に関する前文の文言に関する規定(第6条)

取引の主たる目的に基づく条約の特典の否認に関する規定(第7条)

主に不動産から価値が構成される株式等の譲渡収益に対する課税に関する規定(第9条)

第三国内にある恒久的施設に帰属する利得に対する特典の制限に関する規定(第10条)

コミッショネア契約を通じた恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第12条)

特定活動の除外を利用した恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第13条)

相互協議手続の改善に関する規定(第16条)

移転価格課税への対応的調整に関する規定(第17条)

義務的かつ拘束力を有する仲裁に関する規定(第6部)

適用を選択しようと考えていない項目は下記の通り。

二重課税除去のための所得免除方式の適用の制限に関する規定(第5条)

特典を受けることができる者を適格者等に制限する規定(第7条)

配当を移転する取引に対する軽減税率の適用の制限に関する規定(第8条)

自国の居住者に対する課税権の制限に関する規定(第11条)

契約の分割による恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第14条)


2017/6/15  米、3カ月ぶり利上げ 

米連邦準備理事会(FRB)は14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、1.00%−1.25%のレンジにすることを決定した。

利上げはイエレン議長ら投票メンバー9人のうち8人が賛成したが、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。

年内さらに1回を見込み、3月と今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。

「前年比ベースでのインフレ率は短期的に2%をやや下回る水準にとどまると予想されるが、中期的には委員会の目標である2%程度で安定すると見込んでいる」としている。

さらに4兆5000億ドルの保有証券縮小計画について詳細を示した。保有債券を市場で売却するのではなく、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小する。

金融当局はバランスシートを月間ベースでゆっくりと縮小していく。当初の縮小額は100億ドル(米国債が60億ドル、住宅ローン担保証券が40億ドル)とする。

「経済情勢が予測通り推移すれば、年内にバランスシートの正常化に着手する予定だ」と表明した。最終的な保有資産の規模には触れなかった。

金融市場には利上げと保有証券圧縮の二重の引き締め圧力がかかることになる。

ーーー

米国は、金融危機に対応するため、2008年11月〜2010年6月に量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )を実施し、1兆7250億ドルが供給された。

米国の景気回復ペースの鈍化を受けて、2010年11月〜2011年6月に実施されたQE2では6000億ドルが供給された。

更に、労働市場を刺激して景気を回復させるため、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきた。

2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。

2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響 

その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。

2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%〜0.25% から0.25%〜0.50% に引き上げた。

2015/12/17  米国、利上げ

2016年12月14日には、FF金利の誘導目標を0.25%引き上げ、0.50〜0.75%とした。

2016/12/16 米FRB、1年ぶり利上げ 

2017年3月15日、0.75〜1.00%に引き上げた。

今回は本年2回目の引き上げで、1.00%−1.25%とした。8年半ぶりに1%以上となる。

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日本は依然としてマイナス金利であり、格差が広がる。

付記

日銀は6月16日の金融政策決定会合で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで短期金利をマイナス 0.1%、長期金利をゼロ%程度とする操作目標の維持を賛成多数で決定した。

 


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