ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2017/9/16 DowDuPont、新組織の見直し完了
DowDuPont は9月12日、分離する3つの会社の事業
について、見直しを完了した。
両社は2015年12月、統合会社発足後の18カ月以内に農業関連、汎用化学品、高機能化学品の3社に分割・独立させる計画を明らかにしていた。
しかし、両社の株を持つ物言う株主(Activist)から、計画通りの分割案では株主価値を最大化できないとの異論が出た。
Dowの大株主のThird Point のDaniel Loebと、DuPontの大株主のTrian
FundのNelson Peltzが 汎用化学品と高機能化学品に収める事業について、両社の経営陣とは異なった主張をしていたという。
このため、両社は5月11日、統合後の3社分割策について包括的に見直す方針を明らかにした。
DuPontは発表で、両社の役員会は事業分割について総括的なレビューを行うことで合意したと述べた。DuPontは、分割が株主価値を最大化することを保証すると述べた。
2017/5/31 DowDupontの体制
DowDuPontは9月1日、The
Dow Chemical Company とE.I. du Pont de Nemours & Company
が合併が2017年8月31日に完了したと発表した。
統合会社
DowDuPont の株式は9月1日付でNew
York Stock Exchange に上場される。(会社略号"DWDP")
今回の見直しの結果は下記の通り。
2017年ベースの売上高で、DowのConsumer Solutions と
Infrastructure Solutions からそれぞれ20億ドル、DuPontのPerformance Materialsから40億ドルの合計80億ドルが、
Material ScienceからSpecialty Productsに移る。
|
DowDupont 現行案 |
Agriculture |
Material Science
社名:Dow |
Specialty Products |
本社 |
Wilmington, Delaware |
Midland,
Michigan |
Wilmington, Delaware |
Dow |
Agricultural Sciences |
〇 |
|
|
Performance Plastics |
|
〇 |
|
Perf.
Materials & Chem |
|
〇 |
|
Infrastrucrure Solutions |
|
〇 |
|
|
Building
Solutions |
|
→
|
◎ |
Water and
Process Solutions |
|
→
|
◎ |
Consumer
Solutions |
|
|
Consumer Care |
|
〇 |
|
Pharma and Food Solutions |
|
→
|
◎ |
Microbial Control |
|
→
|
◎ |
Automotive Systems |
|
〇 |
|
|
adhesives
and fluids platforms |
|
→
|
◎ |
Silicones |
|
〇 |
|
|
Several silicones-based
businesses |
|
→
|
◎ |
Electronic Materials |
|
|
〇 |
|
DuPont |
Agriculture |
〇 |
|
|
Performance Materials |
|
〇 |
|
|
Performance Polymers |
|
→
|
◎ |
Elec &
Communications |
|
|
〇 |
Nutrition & Health |
|
|
〇 |
Industrial Biosciences |
|
|
〇 |
Safety &
Protection |
|
|
〇 |
2017/9/18
米、中国系ファンドによる半導体メーカー買収阻止
トランプ米大統領は9月13日、中国系投資ファンドCanyon Bridge
Capital Partners による米半導体メーカー Lattice Semiconductor
の買収を阻止する命令を出した。
軍事・安全保障の技術流出につながる懸念があるというもので、両社に対し、30日以内に買収を「完全かつ永久的に破棄するための必要な措置」をとるよう命じた。
大統領は対米外国投資委員会(CFIUS)による勧告に基づいて、買収阻止を決めた。
ムニューシン財務長官は、「米国の安全保障を守るという政権公約にしたがって、大統領は買収を禁じる命令を出した」と述べた。
また国家安全保障リスクについて、知的財産が流出することや、中国政府が案件の後ろ盾となっていること、米政府への半導体サプライチェーンの保全が重要であること、米政府がLattice製品を使用していることなどに関連していると説明した。
これを受け、Lattice
Semiconductor は9月13日、命令に基づき、契約を解消したと発表した。
なお、Canyon Bridge
は英国のセミコンダクターメーカーの Imagination Technology Group の買収交渉を進めているとされる。
Imagination Technology は2013年に米国のチップのデザイナーのMIPSを買収し子会社としているため、Canyon
BridgeがImagination Technology を買収すると、CFIUS の審査を受けることとなる。
ーーー
Lattice
Semiconductor は1983年の設立で、スマートフォンやモバイル民生端末等の市場における超低消費電力プログラマブル
デバイス・ソリューションのリーディング・サプライヤー。
自社で生産ラインは保有せず、製造は富士通セミコンダクターなどで行っている。
2016年11月3日、Canyon Bridge Capital Partners はLattice
Semiconductor を買収する契約を締結したと発表した。
総額13億ドルの現金での買収で、直前の株価に30%のプレミアムを乗せた。
Canyon Bridge Capital Partnersは、Silicon
Valleyに本社を置き、北京にオフィスを持つ。
Reuters は中国の国営企業の資料から、Canyon
Bridgeの資金が中国国務院から出ていることを明らかにした。
Canyon Bridge と
Lattice は、対米外国投資委員会(CFIUS)による承認を求めて3度にわたり申請を行ったものの、承認を得られず、最後の手段として大統領に直接要請した。
中国は「産業のコメ」とされる半導体産業の育成にとりわけ力を入れており、主に海外企業の買収による技術取得を目指している。
ーーー
米国はオバマ前政権時代から中国への半導体技術の流出を阻止してきた。
半導体製造装置メーカーのドイツのAixtron は
2016年5月23日、中国の福建芯片投資基金 (Fujian Grand Chip Investment Fund) が ドイツ子会社の Grand
Chip Investment を通じて同社を買収することで合意したと発表した。
これに関し、オバマ米大統領は12月2日、Aixtron
のカリフォルニア州の子会社 Aixtron Inc
の買収を禁止すると発表した。軍事利用が可能な技術が対象に含まれ、米国の安全保障の脅威になると判断した。
Aixtronは発光ダイオード(LED)照明やレーザーなどに使う化合物半導体の製造技術を持つ。研究機能のある米子会社がこの技術に重要な役割を果たしているという。
また取引先には米防衛大手 Northrop
Grumman が含まれる。
窒化ガリウム(GaN)ベースの新しい半導体技術が問題になったのではとされる。
これを受け、Aixtron は12月3日、「大統領令は米国事業に限られ、GCIが
Aixtron 株を取得することは禁じていない」との声明を出し、米子会社を除いた買収に切り替える方針を示した。
しかし、福建芯片投資基金は12月8日、Aixtron
の買収取り止めを発表した。米子会社を除いた買収も検討したが、戦略拠点の米子会社が除外され、独政府の認可の行方も不透明なことから買収を断念した。
2016/12/7 米政府、中国企業による独社の米子会社買収を禁止
ーーー
ホワイトハウスが米国の安全保障リスクを理由に海外の買い手による投資を拒否するのはここ 4半世紀余りで4度目となる。
最初は 1990年2 月にGeorge
Bush大統領が行ったもので、China National
Aero-Technology Import and Export Corp(中国宇宙航空技術輸出入公司)による航空機部品メーカーのMAMCO
Manufacturing, Inc.の買収である。
オバマ大統領は2012年9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国の三一重工系企業Ralls
Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。
2012/10/4 オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止
しかし、これについては、2015年11月4日、三一重工と米国政府の間で全面和解に至った。
外国投資委員会(CFIUS)はRallsが買収した他の風力発電事業が国の安全保障上で問題がないことを認め、将来の更なる投資を歓迎する。
2015/11/10 中国の三一重工、米国での風力発電買収阻止事件で米政府と和解、実質勝利
三度目が上記のAixtronの件で、今回のLatticeが4件目となる。
Latticeのほかにも、別の中国の半導体産業向けファンドであるSino
IC Capitalの子会社 Unic Capital Managementが2017年4月10日、米の半導体試験・検査装置メーカーの
Xcerra Corp を580百万ドルで買収する契約を締結、CFIUSの審査待ちとなっている。
2017/9/19 国際石油開発帝石、カスピ海ACG鉱区の権益期限延長
国際石油開発帝石は9月14日、アゼルバイジャン共和国カスピ海海域の最大の海底油田 Azeri-Chirag-Gunashli
(ACG)鉱区の権益期限を2049年12月31日まで25年間延長することについて、アゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)との間で合意したと発表した。
既存の契約は1994年9月から30年間で、2024年9月に期限が切れる。
ACG鉱区はアゼルバイジャンの首都バクーから東方約100キロメートルのカスピ海域に位置し、鉱区面積は約432.4
平方キロメートルで、水深は100〜400メートル。
生産量は原油日量約58.5万バレルである。
2006年にアゼルバイジャンのバクー市からグルジア共和国トビリシ市を経由し、地中海に面するトルコ共和国ジェイハン市を結ぶ総延長1,768kmの原油パイプライン
BTC Pipe Line
が完成し、6月4日にトルコ側の積み出し港から第一船の出荷が行われた。
輸送能力は日量120万バレル。
2006/6/7 BTCパイプライン完成
国際石油開発帝石はACG鉱区の開発を行うJVのAIOC
(the Azerbaijan International Operating Company)のメンバーであるが、AIOCを主導するBP
は2016年12月23日、開発を2050年まで続けることで、同国国営石油会社 SOCAR (the State Oil Company of
the Republic of Azerbaijan) と基本合意したと発表した。
2016/12/28 BP、アゼルバイジャンの油田開発を2050年まで継続
その後の交渉で2点が変更された。
1) 延長は2049年12月31日まで。
2
)SOCAR以外の権益保有者は保有権益の一部を下記の通り、SOCARに対して比例拠出する。
|
現状 |
延長後 |
参考
BTC
Pipe Line 運営会社 |
BP |
35.78%
|
30.37% |
30.10% |
Chevron
|
11.27%
|
9.57% |
8.90% |
SOCAR(アゼルバイジャン国営石油会社) |
11.65% |
25.00% |
ー |
国際石油開発帝石(INPEX) |
10.96% |
9.31% |
2.50% |
Statoil
|
8.56%
|
7.27% |
8.71% |
ExxonMobil
|
8.00% |
6.79% |
ー |
TPAO (トルコ) |
6.75%
|
5.73% |
6.53% |
伊藤忠商事 |
4.30% |
3.65% |
3.40% |
ONGC(インド) |
2.72% |
2.31% |
2.36% |
Azerbaijan (BTC)
|
ー |
ー |
25.00% |
Eni
|
ー |
ー |
5.00% |
TOTAL
|
ー |
ー |
5.00% |
CIECO
|
ー |
ー |
2.50% |
国際石油開発帝石では、権限比率は減少するが、権益期限延長により、本鉱区における将来生産量及び埋蔵量の増加が期待されるとしている。
2017/9/20 米地裁、聖域都市への補助金停止を差し止め
米国の聖域都市(Sanctuary city
)に対する補助金停止措置は違憲だとして、シカゴ市がトランプ政権を相手に起こした訴訟で、シカゴの連邦地裁のHarry Leinenweber
判事は9月15日、訴えを認め、差し止めを命じる仮処分を出した。
ーーー
「聖域都市」は不法移民を保護する法律で、1979年にロスアンゼルス市が、逮捕した外国人の移民的地位を警察が尋問することを禁止した
のが最初である。
その後、多くの都市が聖域都市になり、下記のような措置をとっている。
・ 警察が外国人の移民状況を知る目的で活動を開始することを禁止
・ 米国移民法令第8章1325条に基づき、不法入国した個人を警察当局が逮捕または記録することを禁止
・ 市の公務員及び警察官が入国者の身分を尋ねることを禁止 (警察官が何らかの事件で逮捕した際、パスポートを含む身分証明書の提示を求めることを禁止)
サンフランシスコ、ロスアンゼルス、デンバー、ワシントン
DC、マイアミ、シカゴ、デトロイト、ミネアポリス、ニューヨーク、ニューワーク、フィラデルフィア、シアトルなど400以上の市が聖域都市となっているとされる。
トランプ大統領は「トランプの公約」の「安全保障と憲法のルールを取り戻すための5つの行動」の1つに「聖域都市への全ての国家資金使用の禁止現状」を挙げていたが、1月25日に
大統領令を出した。
Executive
Order: Enhancing Public Safety in the Interior of the United States
これに対し、各市は反発、ニューヨーク市長は「この対策で移民は恐怖を抱えて暮らすことになり、犯罪通報や捜査協力をしなくなる
。ニューヨーク市警が不法移民取り締まりの仕事をすることはない」と明言、ロサンゼルス市長も「この対策で影響を受ける人を守るため、全力を尽くす」と強調した。
セッションズ米司法長官は3月27日の記者会見で、不法移民を容認している聖域都市と呼ばれる州や自治体が取り締まりに協力しなければ、連邦政府の補助金を打ち切ると警告した。
これに対しては、訴訟が相次いだ。
サンフランシスコの連邦地裁のWilliam Orrick 判事は4月25日、大統領令を一時差し止める仮処分命令を出した。「憲法は歳出権限を大統領ではなく、議会に与えており、憲法上、大統領令で歳出に条件を付けることは出来ない」とした。
2017/4/26 聖域都市への補助金停止の大統領令にも差し止めの仮処分命令
判事は政府の要請で再検討した。司法長官は大統領令の範囲を縮小するメモを出したが、判事は7月20日にさきの仮処分を取り消さないと発表した。
セッション司法長官は7月25日、新しいルールを発表した。
司法省は今後、Byrne Justice
Assistance Grant program(2005年に議会が承認した司法に関する補助金)を次の全ての条件を満たす市にのみ提供する。
・外国人を釈放する48時間前に国土安全保障省に通知する。
・逮捕・拘留されている外国人を調べるため、政府職員に刑務所訪問を認める。
・連邦法に従うとの協定書にサインする。
記録によると、司法省は2016年にByrne Justice Assistance Grant
programに基づき、州政府に10億ドル、430百万ドルを非営利組織に、136百万ドルを市や郡に渡している。
シカゴ市は本年、機器購入のため320万ドルを受け取る予定で、来年度分として150万ドルを申請している。
シカゴ市は新ルールについて訴訟を起こした。
今回の判決で、シカゴの連邦地裁のHarry Leinenweber
判事は米国全体での差し止めを命じる仮処分を出した。今後数カ月かかる裁判で最終決定が出るまでの間、補助金支払の停止を禁止した。
議会はByrne Justice Assistance Grant
programを承認する際に、司法省が条件を付けることを認めていないし、相談を受けていないとした。
なお、判事は司法省の3つの条件のうち、初めの2つは差し止めを認めたが、最後のものは、当然のことであるとして、差し止めを認めなかった。
ーーー
これとは別に、テキサス州は不法移民に寛容な措置を取らないよう定めた「聖域都市禁止法」を制定し、9月1日に施行予定だった。
トランプ大統領が「最も厳しい州法」として支持するもので、警官が職務質問などで移民らに滞在資格を尋ねることができる一方、不法移民の強制送還などに協力しない警官への罰則も盛り込んでい
る。
これに対し、メキシコ国境のエルセニーゾ市が「中南米系を狙った人種差別で違憲だ。不法移民が警察の捜査に協力しなくなる」と訴え、ヒューストンやダラスなど大都市も訴訟に参加
した。
San Antonioの連邦地裁のOrlando Garci
判事は8月30日、原告の主張を認め、9月1日の施行を差し止めた。一時的差し止めで、最終的には今後の裁判で判断する。
判事は法律のうちの3条項を問題とした。そのうちの1つは、「地方政府とその職員は、移民法の実行を制限するどんな政策も行ってはいけない」というもの。
原告側は、地方の職員に特定の見解を強制するのは憲法違反であると主張しており、判事はこの見方を支持している。「政府は特定の見解に反対であってもよいが、政府の見解と異なるというだけで、それを禁止することは出来ない。今回の法律は明らかに移民政策に関して異なる見解のものを罰しようとしている」と述べた。
テキサス州は控訴するとしている。
2017/9/21 韓国ロッテマート、中国から撤退へ
ロッテマートは9月14日、中国内の店舗処分のため、売却を主幹する会社にGoldman Sachs
を選定したことを明らかにした。
中国内の全112 店舗を売却することが目標で、交渉条件によっては一部だけ売却する可能性もある。
Goldman Sachs
は、海外の流通企業、投資家など10社ほどと交渉を行っており、この中にはタイ流通最大手のCPグループも含まれていると報じられている。
売却交渉中とされた中国最大流通企業の華聯グループとは接触しなかったとロッテ側は明らかにした。ロッテ関係者は「国有企業である華聯が中国政府の意向と反対にロッテマートを買収するのは不可能だろう」と話した。
付記
ロッテマートは10月13日、中国のTHAAD報復によるロッテ被害現況を発表した。
ロッテマートの今年1年間の売上高減少額は1兆2000億ウォン(約1200億円)にのぼると予想される。
現在、中国内のロッテマート99店舗のうち87.9%の87店舗を閉鎖している。うち、77店舗は中国当局の営業停止処分を受け、10店舗は臨時休業中。
中国ロッテマートの試練は2016年9月に始まった。
北朝鮮が核実験や弾頭ミサイル発射実験を相次いで実施したことを受け、米国と韓国は2016年に、北朝鮮のミサイルに対応するため、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配置を決めた。
韓国は7月に南東部の慶尚北道星州郡の空軍ホークミサイル基地に配備することで米国と合意したが、同地域の住民らは強く反対、当局は変更を余儀なくされた。
韓国国防省当局者は9月30日、新たな配備先にロッテグループが所有するロッテスカイヒル星州カントリークラブに決めた。高い標高(当初案の基地は標高383m、ゴルフ場は標高
680m)と軍用車のアクセスが良いことから、選ばれたという。
ロッテとのゴルフ場の土地の交換の合意の前日の2016年9月26日に、ソウル中央地裁は辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長の背任・横領の容疑での逮捕状請求を棄却した。
韓国内には、逮捕状請求却下とこれを結びつける意見もあった。
中国は韓国へのTHAADの配置に猛反対している。THAADの高性能なレーダーで、半径800km内の中国の遼東半島周辺と山東半島まで探知可能となる。
新華社通信は2017年2月19日、ロッテが敷地を提供した場合、「中国の顧客と市場を失うことになる」と警告した。
ロッテ商事は2月28日、国防省と土地交換契約を結んだ。ゴルフ場を提供する代わりに、等価の土地を同省から譲り受ける。
韓国はまず2基を配備した。
文在寅大統領はTHAAD配備の見直しを選挙公約に掲げていたが、北朝鮮がICBMの2度目の発射を強行したことを受けて、配備を急ぐ方針に転換、韓国は9月7日、4基を追加配備した。
2016年9月5日、杭州のG20首脳会議に合わせて、中国の習近平主席と韓国の朴槿恵大統領が会談したが、THAADについて、厳しいやりとりが交わされた。習主席は「この問題の処理を間違えば、地域の戦略的安定に助けにならず、紛争を激化させる可能性がある」と憂慮を表明した。
まず、中国で韓流イベントや団体観光のキャンセルが相次ぎ、商用数次ビザの発給制限が行われ、次に韓国製品のボイコットが始まった。
中国の関係各部門は11月29日以降、ロッテ系列の上海市や四川省成都市などのロッテグループ拠点150カ所に対し、消防や安全、衛生、税務調査に入った。上海の中国ロッテ本部は税務調査を受けているが、通常とは異なり市が直接調査に入ったという。
今年3月からは営業停止が始まった。現在の店舗全体の77%に相当する87店舗が閉鎖した状況で、残りの店舗も事実上、休店状態となっている。
売り上げは急減した。2017年4−6月期の中国ロッテマートの売上高は前年同期の10%にすぎない。
しかし、ロッテマートはその間、撤収しないという態度を見せ、ロッテは資金を投入してきた。辛東彬(重光昭夫)ロッテグループ会長は3月に「我々は中国で事業を続けることを強く望む」と話していた。
しかし、これ以上の損失は耐えられないと判断し、撤退を決めた。流通企業の関係者は「新政権になれば解決すると期待していた両国関係がさらに悪化する方向に進んだため決断したようだ」という見方を示した。
ーーー
被害はロッテマートだけでない。
現代自動車の中国合弁法人「北京現代」は現地工場5カ所のうち4カ所の稼働が1週間停止した。9月初めには滄州工場がまた部品納入の中断で停止した。合弁先の北京汽車が部品メーカーへの支払いを拒否したのが理由で、市場関係者は「北京汽車は国有企業。支払い拒否は当局の意向で、THAAD配備への報復だ」と語
った。
イーマートは中国から全面撤収した。
その他各社も売り上げが大幅に減少している。
ーーー
韓国大統領府は9月14日、「今は北の核・ミサイル挑発などで中国と協力を維持していくことが非常に重要な時期」とし、THAADに対する中国の経済報復措置をWTOに提訴することはせず、「戦略的な疎通と協力を強化して解決していきたい」と述べた。
中国は韓国がこの問題でWTOに提訴することを懸念していた。
中国外交部はTHAAD報復措置に対する国際社会の懸念について、「外国企業は中国で経営する場合、現地法と規定に従わなければならない」として韓国企業を対象にした各種制裁が法に則った措置だと主張した。
新聞では、「韓国がWTOに提訴するには明確な証拠がなければならないが、中国政府はTHAAD報復措置を公式に発表したことはない」との意見や、「民間で自発的にするボイコットは防止できないし、WTOがこれを制裁することもできない」との意見が掲載されている。
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
東芝は9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital
が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。
売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。
2017年8月時点での2018年3月期予想では、東芝メモリ売却益を除き、株主資本を4100億円の赤字とみていた。(億円)
|
16/3 |
17/3 |
増減 |
|
6/23発表
見通し |
増減 |
|
17/1Q |
18/3予 |
売却益 |
売上高 |
51,548 |
48,708 |
-2,840 |
|
48,708 |
0 |
|
11,436 |
49,700 |
|
営業損益 |
-4,830 |
2,708 |
7,538 |
|
2,708 |
0 |
|
967 |
4,300 |
|
(うち東芝メモリ) |
(1,100) |
(1,866) |
(766) |
|
|
|
|
(903) |
(3,712) |
|
(東芝メモリ以外) |
(-5,930) |
(842) |
(6,772) |
|
|
|
|
(64) |
(588) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
非継続事業純損益 |
-1,298 |
-12,801 |
-14,099 |
|
-13,065 |
264 |
|
− |
− |
|
純損益 |
-4,600 |
-9,657 |
-5,057 |
|
-9,952 |
295 |
|
503 |
2,300 |
+7,400 |
株主資本 |
3,289 |
-5,529 |
-8,818 |
|
-5,816 |
287 |
|
-5,043 |
-4,100 |
3,300 |
最終契約を結べば、日米韓連合と並行して協議を進めてきたWestern
Degital 陣営、鴻海精密工業の2陣営との交渉は打ち切る。
売却先の日米韓連合は、Bain Capitalが買収目的で設立した
Pangeaの普通株式、転換型優先株式、社債型優先株式を取得する。同社は株式譲渡の実行までに、金融機関から借入を実行する。
参加するのは、Bain Capital とSK Hynixのほか、AppleやDellなどの米企業、半導体関連部品を手掛けるHOYAなど。
東芝も、安定的な事業の移管実現を目的に、3,505億円の再出資を行う。
議決権については、Bainが49.9%に対し、東芝が40.1%、HOYAが10%と、日本側が過半を占めるという。(9月21日の主要取引行への説明)
9月初め頃の 陣営の出資案は下記の通りであった。(億円)
|
普通株・優先株 |
融資 |
合計 |
産業革新機構 |
|
*2 |
|
|
日本政策投資銀行 |
|
*2 |
|
|
Bain Capital |
47% |
5,700 |
|
|
SK Hynix *1 |
|
|
|
東芝 |
47% |
2,000 |
|
|
Apple |
|
4,000 |
|
|
Kingston Technology |
|
1,000 |
|
|
日本企業 |
6% |
300 |
|
|
銀行団 |
|
|
7,000 |
|
計 |
100% |
13,000 |
7,000 |
20,000 |
*1 SK Hynixは将来、優先株を普通株に転換。議決権は最大18%。
*2 革新機構、政策投資銀行は、東芝とWestern Digitalの紛争解決後にBain、SKから株式を取得。
その後、Bain Capital
は、Apple、Dell、Seagate Technology、Kingston Technology
が出資することを明らかにしたが、それぞれの出資額は明らかにしなかった。
また、その時点では SK Hynix の社名は出していない。
今回、東芝は出資額を2000億円から3505億円に増やした。
既報のとおり、当初から参加を予定していた産業革新機構と日本政策投資銀行は、Western Digital
との紛争解決後に参加するが、それまでの間、参加の前提が崩れるような経営判断を防ぐ目的で、東芝メモリの普通株式の一部に係る議決権行使について、東芝は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権(議決権行使に関する具体的な方法を第三者が当該保有者に対して指図する権限)を与える。
東芝は次の点を勘案して選定したとしている。
@東芝メモリの評価額、
A今後のメモリ事業の安定的な成長への影響 (顧客やサプライヤとの関係、国内雇用確保の観点含む)、
B各国の競争法当局の承認が得られる蓋然性、
Cその他各国当局の承認が得られる蓋然性、
D2018年3月末までの株式売却の実行の確度、
E海外企業(SK Hynix)による将来の保有議決権が一部
限定されるとの条件も提示されたこと
日米韓連合は、Western Digital
陣営に対抗するため、購入金額2兆円に加え、今後の研究開発費4000億円を約束、さらに、Western Digital
との訴訟に伴う費用を500億円まで補償する意向を示したと報じられた。
また、Western Digital との係争状態にあるが、Western
Digitalとの合弁会社への出資持分についての差止請求が認められた場合であっても、本株式譲渡が履行されることを前提としている。
(具体的にどうなるのか、株式譲渡契約の条項が発表されていないため、不明。)
更に、Appleが東芝に対し、Western Digital
が将来東芝メモリの主導権を取った場合、製品の取引を打ち切る可能性があると伝えてきたとの報道もある。
なお、四日市工場での生産設備の共同投資及び設計・開発での今後の協業継続については、Western
Digital と真摯に協議していく意向としている。
付記
東芝の発表について、SKハイニックスは「まだ道のりは遠い」と語った。
同社幹部は、「今後東芝側と本格的な交渉を行い、詳細な条件を最大限我々に有利な方向に持っていく。日本メディアが報道するように、投資資金全額をBainへの融資とはしない。SKハイニックスにとって得にならなければ、むしろSKの理事会(取締役会)で反対することも考えられる」と語った。
付記
Western Digital
は9月26日、東芝が東芝メモリを「日米韓連合」に売却することに対し、国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所に暫定差し止めを求めると発表した。
付記
韓国 SK Hynix
は9月27日の取締役会で、東芝メモリの買収に参画することを決議したと発表した。日米韓連合で投じる約2兆円のうち、SKが3950億円を拠出する。
このうち1290億円は転換社債の形で投資し、今後、議決権ベースで15%の東芝メモリ株を取得する権利を得る。残る2660億円はBainが創設するファンドに出資する。
Apple、Dell、Seagate、Kingston
などは社債型優先株の形で投資する。
ーーー
今後は、Western Digital
との紛争と各国の独禁法審査(特に中国)が問題で、2018年3月末までに売却が完了するかどうか、分からない。
なお、Western Digital
は9月20日、東芝が進める半導体メモリー工場の単独投資を差し止めるよう国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に申し立てたと発表した。
東芝は8月3日、四日市工場にて建設中の第6製造棟に関し、第1期分として予定している次世代の96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリ用クリーンルームへの生産設備導入を東芝メモリ単独で実施すると発表した。
2017/8/8
東芝、東芝メモリの増設を単独実施
同社は5月に東芝の半導体事業売却の差し止めも求めている。
2017/5/15
東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て
2017/9/23 米連邦準備理事会、資産縮小開始を決定
米連邦準備理事会(FRB)は9月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結し、大幅に膨らんだ保有資産の縮小を始めると決めた。
今回は利上げは見送り、フェデラルファンド(FF)
金利の誘導目標は年1.00〜1.25%を据え置いた。但し、12月に利上げする可能性が強い。
金融市場には利上げと保有証券圧縮の二重の引き締め圧力がかかることになる。
FRBは6月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で
FF金利誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、1.00%〜1.25%のレンジにすることを決定、年内にあと1回の利上げを見込んだが、同時に、4兆4600億ドルまで膨らんだ保有証券縮小計画について詳細を示した。
2008年から2014年10月までの量的緩和で、米国債や住宅ローン担保証券を大量に買い入れ、保有する資産量が9千億ドルから4兆4600億ドルまで膨らんだ。
2014年の量的緩和終了後も、満期を迎えた債券や証券への再投資を行い、資産量を維持し続けてきた。
今後は、保有債券を市場で売却するのではなく、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小する。
また、当面はゆっくりと縮小していくこととし、当初の縮小額は100億ドル(米国債が60億ドル、住宅ローン担保証券が40億ドル)とする。
2017/6/15 米、3カ月ぶり利上げ
今回の決定で、FRBは10月から償還の時期が来た国債などを再び買い入れる額を少しずつ減らし、年内の3か月は1か月当たり100億ドル(米国債が60億ドル、住宅ローン担保証券が40億ドル)を上限に資産規模を縮小する。
その後は3か月ごとに買い入れ額を減らし、1年後には1か月当たり500億ドル(米国債が300億ドル、住宅ローン担保証券が200億ドル)を上限に資産規模を縮小していく。資産縮小は年6000億ドルとなる。
来年以降の政策見通しでは、会合参加者の中心シナリオが2018年は3回、2019年が2回の追加利上げとなった。
利上げが打ち止めとなる「政策金利の天井」を2.75%と見込み、2019年から2020年にかけて利上げを停止する可能性も示唆した。
ーーー
欧州中央銀行も量的緩和の縮小を検討しており、ドラギ総裁は10月の理事会で具体策の大枠を決定する考えを表明している。
それに対し、日銀は9月21日の金融政策決定会合で、短期金利をマイナス
0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持を決めた。緩和策を粘り強く続けて物価目標の達成をめざす。
2017/9/26 米国でシェールガス利用の大規模石化が相次ぎ完成
米国でシェールガス利用の大規模石化が相次ぎ完成した。
Chevron Phillips Chemicalは9月19日、テキサス州のPE
50万トン2基がスタートアップしたと発表した。
DowDuPont は9月21日、テキサス州のエチレン150万トンとEnhanced PE 40万トンがスタートし、第4四半期にフル稼働すると発表した。
今後も、巨大な新設備が次々に完成する。
日本の石化業界は好調だが、米国からこれらの低コストの製品のアジア向け大量輸出が始まると、製品価格が大幅に下落し、状況が一変するとみられている。
2017/5/30 日本の石油化学に迫るXデー
1) Chevron Phillips Chemical
Chevron Phillips Chemical
は2011年12月24日、テキサス州のメキシコ湾岸で大規模エタンクラッカーと誘導品設備を建設する計画のFSが完了したと発表した。
テキサス州BaytownのCedar
Bayou工場に年産150万トンのエタンクラッカーを建設する。
更に自社技術を使用して2基の年産50万トンのポリエチレンプラントを建設する。
同社は2012年4月30日、PEの立地がSweeny
facility工場になったと発表した。
能力は50万トン2基で、同社のLoop Slurry
Technologyを使用する。Sweenyのエチレン能力は1,860千トンだが、同社は2013年6月に、1炉増強して90千トン増やす。
2011/12/29 Chevron
Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画
Chevron Phillips Chemical は9月19 日、テキサス州 Sweeny のOld
Ocean工場で年産50万トンのPEプラント2基が完成し、スタートアップしたと発表した。
メタロセンLLDPEフィルムからフィルム、容器まで幅広い用途に使われる。
2) DowDuPont
Dow Chemical は2014年6月30日、テキサス州
Freeport のDow Texas
Operations
で年産150万トンのエチレンプラントの建設を開始した。
Andrew N. Liveris会長兼CEO
は、このプラントは、付加価値の高いマーケット指向の事業での成長を可能とするため低コストで有利なシェールガスを利用するというDowの戦略の基本であると述べた。
同社では既に下記の誘導品の投資を発表している。
・次世代メタロセンEPDM(NORDEL™
)年産20万トン
・High
Melt Index Specialty Elastomers 年産32万トン
・ 高機能性Enhanced PE樹脂(ELITE™)年産40万トン
・新しいスペシャルティLDPE 年産35万トン
同社は既にFreeportのDow
Texas Operations
でプロパン脱水素による新しいプロピレンプラント(年産75万トン)を建設中。(→
2015/12 商業生産開始)
2014/7/2 Dow
Chemicl、新エチレン設備の建設着工
Dow Chemical は2017年5月11日、次の5年間の増設計画を発表した。5年間で約40億ドルを投資し、2020年以降、順次完成する。
・ 上記のエチレン設備の増強 年産200万トンと、世界最大にする。
・
Gulf Coast にDowのSolution Process technologyで年産60万トンのPE
・
Polyurethanes franchiseの強化
・
各国のPEをでボトルネッキングし、約35万トンの能力増(大部分が北米)
・ Dow 100%子会社のUnivation技術での触媒生産能力の増強
・ 欧州でワールドスケールの年産45万トンのポリオレフィン新設
・ シェールガス利用の更なる投資
・ その他
今回、DowDuponは、テキサス州 Freeport
でワールドスケールのエチレンとEnhanced PEが生産を開始し、第4四半期にフル稼働すると発表した。
Dowは2017年6月6日に、40万トンのEnhanced
PEプラントが完成したと発表している。
エチレン設備の現在能力は150万トンだが、上記の通り、200万トンまで増強され、世界最大となる。
誘導品の残り3件(次世代メタロセンEPDM、High
Melt Index Specialty Elastomers、 新しいスペシャルティLDPE)も今後完成する。
3) このほかにも誘導品計画は多数ある。(単位:千トン)
|
|
エチレン |
その他 |
ExxonMobil
Chemical |
Baytown, TX |
1,500 |
|
Mont
Belvieu, TX |
|
PE 650 x 2 |
2014/6/20
ExxonMobil もエチレンとポリエチレン工場の建設開始 |
Formosa Plastics |
Point Comfort, TX |
1,000 |
LDPE、MEG |
Louisiana |
(1,200) |
構想段階 |
Sasol |
Lake Charles, LA |
1,500 |
LDPE 420 |
2013/4/3 Sasol、ルイジアナでエチレンとLDPEプラント建設、シェールガス利用計画拡大 |
Lotte Chemical
Lotte 90%/ Axiall (→Westlake)10% |
Lake Charles, LA |
1,000 |
(引取は50/50)
Lotte Chemical EG 700
Westlake PVC用 |
2015/6/22
韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学 |
Shintech |
Plaquemine, LA |
500 |
PVC用 |
米国計 |
|
8,500 |
(Dow
とChevron Phillips の各150万トンを加え) |
参考 日本全能力 |
(定修なし) |
6,824 |
|
|
Sadara Chemical |
Jubail, Saudi Arabia |
1,500 |
全プラント建設完了 |
2011/7/26
DowとSaudi
Aramco、石油化学JV設立を最終決定
|
PetroRabigh 2期 |
Rabigh, Saudi Arabia |
300 |
|
2012/5/28 住友化学、サウジ・アラムコとの「ラービグ第2期計画」実施へ |
2017/9/27 米国の入国禁止措置、複雑な情勢に
トランプ大統領が出したイスラム圏諸国からの入国禁止令については、これを問題とする裁判所の判決が続出しており、休会明けの10月10日に最高裁が口頭弁論をする予定であった。
しかし、大統領が9月24日に新しい大統領令を出したことから、最高裁が審議を取り止める事態となった。
(経緯)
Trump大統領は1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。
サンフランシスコの連邦控訴裁判所は2月9日、7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、3人の判事の全員一致で、即時停止を命じた連邦地裁の仮処分を支持する判断を示した。
このため、3月6日、大統領令の問題個所を修正し、新たな大統領令を出した。
2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令
米連邦最高裁判所は6月26日、10月以降
(のち、10月10日に決定)に同大統領令の合憲性を巡る審理の最終判断を行うとし、それまでの間、イスラム圏6カ国からの入国を制限する米大統領令を巡り、一部を執行することを認める判断を下した。
2017/6/28
Trump 大統領の米入国制限令、最高裁が一部容認
ハワイ州連邦地裁は7月13日、トランプ政権が「近い親族」に祖父母やおじ・おば、甥、姪、いとこ、義理の兄弟姉妹を含めなかったことは、条件付きで施行を認めた最高裁の決定に反するとして、全米で親族の定義を広げて運用するよう命じた。また、難民については、難民の再定住を支援する団体から支援を保証されていれば入国を認めるべきとの判断を示した。
政府による控訴による裁判で、サンフランシスコの
Ninth U.S. Circuit Court of Appealsは9月7日、ハワイ地裁の判断を支持した。
これについて最高裁大法廷は9月12日、難民入国制限を巡る件では、控訴裁判断の差し止めを求めた司法省の主張を認めたが、「近い親族」の範囲については認めなかった。
2017/9/11 トランプの入国制限令、また敗北
最高裁による大統領令の合憲性の審議を前にし、トランプ大統領は9月24日、テロリストや公共の安全への脅威となる者の新しい入国禁止令を発表した。
3月の大統領令が9月24日に期限切れで失効する。
大統領令は差し止められていたが、6月26日の最高裁判断で6月29日に施行された。難民受け入れ停止は120日間で、計算が合わない。
なぜ、9月24日に期限切れとなるのか、どなたかご存知なら教えてください。
今回は入国禁止令の対象国に中東・アフリカのイスラム圏諸国(今回、スーダンを除外)に北朝鮮とベネズエラ、チャドの3カ国を加えた計8カ国
とした。
これまでは、イスラム教徒の多い国々を対象にした入国制限が信教の自由などを保障した米憲法に違反しているとの主張が反対理由であったが、テロリストの入国を防ぐための「国家安全保障上の措置」とし、非イスラム国の北朝鮮とベネズエラを加えることで、この批判を避けたともみられる。
この発表を受け、最高裁は9月25日、10月10日に予定していたイスラム圏6カ国からの米国への入国を制限する大統領令の妥当性を争う裁判の口頭弁論を中止すると発表した。
発表にはないが、新しい大統領令を下級審で先ず審議させることにしたとみられる。
最高裁は、口頭弁論の中止を伝えるとともに、ハワイ州とトランプ政権の双方に対し、新たな入国制限令により、これまでの争いが意味をなくしたかどうかについて、10月5日までに書面を用意するよう求めた。
信教の自由の制限色を弱めた新しい大統領令の発表と、最高裁による入国禁止の大統領令の合憲性の判断取り止めで、新しい局面を迎える。
ーーー
9月24日に発表された新しい入国禁止令は下記の通り。
Presidential Proclamation Enhancing Vetting Capabilities and Processes for
Detecting Attempted Entry Into the United States by Terrorists or Other
Public-Safety Threats
中東・アフリカのイスラム圏諸国(今回、スーダンを除外)からの入国禁止令の対象国に北朝鮮とベネズエラ、チャドの3カ国を加えた
計8カ国が対象となる。
当初リストに入っていたイラクは、対IS共闘、ビザ申請者の情報提供などを理由に3月6日の改定で除外した。
スーダンについては今回、公共の安全と情報交換での米国政府との協力関係をみて、リストから除外したとしている。
テロリストの入国を防ぐための「国家安全保障上の措置」で、トランプ大統領が「ならず者国家」と非難する北朝鮮やベネズエラに対しては、制裁の意味合いもあるとみられる。
北朝鮮について「渡航者に関し一切の情報提供がない」ことを理由に、北朝鮮国籍を持つ人物の渡航を全面的に禁止するとしている。
(北朝鮮からの渡航は少なく、実際の影響はほとんどないとみられる。)
一方、ベネズエラは、政府がその国民が危険人物かどうかを通知するのに非協力であるとして、入出国審査機関の職員とその家族を渡航制限の対象とした。
トランプ大統領は9月19日の国連総会一般討論演説で、北朝鮮やベネズエラ、イランなど「テロリストを支援し、国際社会を脅かすならず者国家」と強く非難していた。
(北朝鮮やイランを念頭に)いくつかの「ならず者国家」はテロリストを支援し、最も破壊力のある兵器で他国を脅している。
(反米左翼マドゥロ政権が独裁化を進める)ベネズエラの状況は受け入れ難い。
大統領はツイッターに、今回の大統領令の副題(テロリストや公共の安全への脅威となる者の入国を見破るための検査能力を高める)を引用し、「米国の安全の追求が最優先課題だ。適切な審査をできない人物は入国させるわけにはいかない」と訴えた。
( Enhancing vetting
capabilities and processes for detecting attempted entry into the United
States by terrorists or ---)
Making America Safe is
my number one priority. We will not admit those into our country we cannot
safely vet.
ーーー
付記
ハワイ州連邦地裁は10月17日、翌
18日から発効する予定だった最新の入国制限令を暫定的に差し止める命令を出した。差し止めを命じたのはソマリアやシリアなどイスラム圏からの入国制限のみで、北朝鮮とベネズエラからの入国は制限を認めた。
判事は新たな入国制限令も「明らかに国籍による差別にあたる」と指摘した。
メリーランド州連保地裁は10月18日、宗教に基づく差別の疑いがあるとして、執行を一時差し止める仮処分命令を出した。
政権は上訴する方針。
付記
ハワイ州連邦地裁の判決に対する控訴審で、サンフランシスコの控訴裁判所は11月13日、大統領令の一部を認めた。
Iran、Syria、Libya、Yemen、Somalia、Chad
の国民で、米国にコネクションのないものの入国禁止を認めるもの。
コネクションとは、家族関係や、大学や定住委員会のような米国組織との正式で書類のととのった関係を意味し、家族とは祖父母、孫、義理の兄弟姉妹、叔父叔母、甥、いとこを含む。
米連邦最高裁判所が6月26日に、入国制限の大統領令の一部の執行を認めたのと同じ趣旨。
2017/6/28
Trump 大統領の米入国制限令、最高裁が一部容認
付記 米最高裁は2018年1月19日、この9月24日に発表された新しい入国禁止令の合憲性を審理するとの決定を出した。4月実施の見通し。
ーーー
前回と今回の対比は次の通りで、今回は国ごとに扱いが異なる。
|
1/27 |
3/6 |
9/24 |
今回の入国禁止対象 |
イラン |
〇 |
〇 |
〇 |
下記以外全て
学生ビザ(F
and M) 、交流訪問者ビザ(J) |
シリア |
〇 |
〇 |
〇 |
全て |
リビア |
〇 |
〇 |
〇 |
商用ビザ(B-1)、
観光ビザ(B-2)、商用/観光ビザ(B-1/B-2) |
イエメン |
〇 |
〇 |
〇 |
商用ビザ(B-1)、
観光ビザ(B-2)、商用/観光ビザ(B-1/B-2) |
ソマリア |
〇 |
〇 |
〇 |
全て |
スーダン |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
イラク |
〇 |
ー |
ー |
ー |
チャド |
ー |
ー |
〇 |
商用ビザ(B-1)、観光ビザ(B-2)、商用/観光ビザ(B-1/B-2) |
北朝鮮 |
ー |
ー |
〇 |
全て |
ベネズエラ |
ー |
ー |
〇 |
入出国審査機関の職員とその家族の
商用ビザ(B-1)、観光ビザ(B-2)、商用/観光ビザ(B-1/B-2) |
|
7か国 |
6か国 |
8カ国 |
難民受入停止については今回は触れていない。
新しい入国禁止は10月18日に発効する。但しこれまで禁止対象となっていた国の国民については9月24日から適用される。
2017/9/28
住友化学、核酸医薬品の潟{ナックへの出資拡大
住友化学は9月25日、核酸医薬品の潟{ナックが第三者割当増資で発行する株式を住友化学が引き受け、このたび出資を完了したと発表した。日本経済新聞は出資額を40億円と報じている。
住友化学は2013年11月22日、ボナックとの間でボナックが保有する核酸医薬原薬の製造・販売に関する知的財産権の独占的実施権の許諾契約を締結し、大阪工場で核酸医薬原薬の受託製造を開始しており、2016年7月4日にボナックの第三者割当増資に応じ、約1%を出資している。
2013/11/28
住友化学、核酸医薬原薬の受託製造開始
今回の出資で、ボナックに対する住友化学の出資比率は19.55%に拡大し、ボナックの親会社の林化成に次ぐ株主となる。
今回の資本提携の強化を契機に、ボナックが持つ核酸医薬のユニークなプラットフォームと、住友化学グループの医薬品開発、原薬製造、医療診断および安全性分析等の技術をより強固に融合させ、核酸医薬品の早期実用化に向けた開発を加速させる。
なお、富士フイルムは2017年7月26日、ボナックによる第三者割当増資を引き受け、5億円を出資する契約を締結したと発表した。資本提携にあわせて、核酸医薬品の探索を目的とした共同研究契約を締結した。
ーーー
ボナックはタルク、カオリン、炭酸カルシウム、マイカ等の輸入やあらゆる無機粉末を扱う鉱物粉末の専門メーカー の林化成が2010年2月に設立した。
社名のボナック(BONAC)は核酸化学の架け橋(Bridge
Of Nucleic
Acids Chemistry)を表す。
核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。
核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。
ボナックは、日本および欧米の主要国で特許を取得した独自構造のボナック核酸を用いて、原料開発から創薬探索まで一貫して手掛けている。
ボナック核酸は、従来の核酸が二本鎖構造であるのに対して、一本鎖構造であるのが大きな特徴で、その構造により体内での高い安定性と安全性を有する。
|
-
二本鎖核酸であり、各鎖が49塩基以下で構成される
-
アニーリング工程が必要(一本鎖DNAを再び二本鎖とする)
- 分解されやすく、安定化のための工夫が必要
- 免疫応答を惹起することがある
|
|
-
一本鎖核酸であり、鎖長は50塩基以上から構成される
-
セルフアニーリングにより、ユニークな二次構造をとり、アニーリング工程が不要
-
核酸分子のみならず、独自のアミノ酸アミダイト(核酸原料)とのハイブリッド分子(PnkRNA)も案出
- 従来法に比べ、高い安定性を保有
カーブになっているリンカー部分の核酸がすぐ酵素に分解されてしまう問題があるが、核酸の代わりに「プロリン」というアミノ酸を使用。
- 免疫応答を惹起しない
-
二本鎖では二回必要となる核酸合成のプロセスが、一回で済む。
|
核酸医薬品は、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug
Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。
従来の二本鎖短鎖RNAには、壊れやすいという短所があるため、体内の必要な場所へ薬を届ける方法が大きな課題となっていた。
ボナックは、これらの課題解決に有力な独自の核酸医薬のプラットフォームを確立している。
同社は、現在は
核酸医薬品開発について国内外の製薬メーカーと共同開発やライセンス交渉を進めている。
2017/9/29 ドイツのデジタル地図大手HERE
Technologies、中国のネットサービス大手テンセントなど3社からの出資受け入れを断念
ドイツのデジタル地図大手HERE
Technologiesは9月26日、中国のネットサービス大手 騰訊控股(Tencent
Holdings)、中国のデジタル地図大手 北京四維図新科技(NavInfo Co.)、およびシンガポールの国営投資ファンド GIC
の3社からの出資受け入れを取り止めると発表した。米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の承認を得られないのが理由。
但し、出資受け入れと同時に発表されていた戦略的パートナーシップ構築は行う。
HEREとNavInfoの折半出資による合弁会社は稼働した。これによりHERE
は中国で位置情報サービスを開始する。
両社は中国で、及びグローバルに自動車やその他のいろいろな分野で協力する。
HEREとTencentは戦略的協力関係を深める。Tencentは自社の製品にHEREの
地図サービスや位置情報ツールを使用する。
ーーー
HERE は2016年12月27日、中国向け位置情報サービスの開発に向け、TencentおよびNavInfoと戦略的パートナーシップを構築すると発表した。
戦略的提携のもと、HEREとNavInfoは折半出資による合弁会社を中国に設立し、中国を含む世界のさまざまな産業を対象にした地図サービスの展開を図る。
合弁会社を通じてHEREは中国向けサービスを拡大し、NavInfoの広範なデータを活用する。
HEREとNavInfoは、自動運転車向けの高度な位置情報サービスの構築と配備でも協力する。
TencentはHEREの地図サービスや位置情報ツールを、傘下の中国および世界向けインターネットサービスで採用する。
戦略的提携とは別に、TencentとNavInfoおよび
シンガポールのGICがHERE株式の合計10%を取得することでも合意した。
HEREは、米
GoogleとオランダのTomTomと並ぶ世界3大デジタル地図情報サービス会社の1社で、現在、約200カ国でを展開している。
欧米で販売されているカーナビ搭載自動車の8割が、ヒアのデジタル地図を利用している。
元々はフィンランドの携帯電話メーカーであるノキアの地図事業部門で、ドイツの自動車メーカーBMW、VolkswagenのAudi、Daimlerのコンソーシアムが、2015年にフィンランドNokiaから約25億ユーロで買収した
。
Amsterdamに本拠を置き、Chicago、Berlin、Mumbaiに開発拠点を持つ。
3社による株式取得については、2017年1月にドイツの承認を得ている。
しかし、対米外国投資委員会(CFIUS)はこれを認めなかったとされる。CFIUSのレビューは非公開で、内容については確認もコメントもしない。Hereは、関係者は承認を得るのは無理との判断をしたと述べた。
米国はオバマ前政権時代から中国への半導体技術の流出を阻止してきた。
トランプ米大統領は9月13日、中国系投資ファンドCanyon Bridge Capital Partners による米半導体メーカー
Lattice Semiconductor の買収を阻止する命令を出した。
ホワイトハウスが米国の安全保障リスクを理由に海外の買い手による投資を拒否するのはここ 4半世紀余りで4度目となる
2017/9/18 米、中国系ファンドによる半導体メーカー買収阻止
しかし、CFIUSが少数株主の出資を認めないのは初めて。
2016年に中国の清華紫光
(Tsinghua Unisplendour) がWestern
Digital に15%の出資をきめたが、CFIUSの審査対象であることが分かり、取引を中止した例はある。
なお、HEREは9月19日、日本のパイオニアとの相互出資を発表した。戦略的協力関係を強化する。
HEREはパイオニアの増資に応じ、増資後の株式の3%を出資する。パイオニアは同金額(1730万ユーロ)でHEREの1%弱を取得する。
2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結
東芝は9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。
売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する Pangeaで、譲渡価額は2兆円。
但し、譲渡金額は下記の調整を行う。
譲渡契約に定める算定方式による想定の純負債額、運転資本額、累積設備投資額を前提にした金額で、実績との差額は調整する。
現時点では、Western Digital との3つのJV(Flash
Partners、Flash Alliance及びFlash
Forward)の権益は東芝メモリに移していない。株式譲渡時に移管が済んでいない場合は、その価値を控除する。
東芝は東芝メモリの設立時に3つのJVの権益を東芝メモリに移したが、Western
Digital はその差し止めを求める申し立てを国際仲裁裁判所に行った。
これを受け、東芝は5月31日付で、WD側に「合弁会社の権益」を東芝メモリから東芝本体に移すことを書簡で通知した。
2017/5/15
東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て
譲受会社の咳angeaは、株式譲渡の実行までに、下記の通り、総額1兆4,000億円からなる
直接または間接の資金調達を実施する。
加えて、咳angeaは、株式譲渡の実行までに、金融機関から6,000億円の借入を実行する
。
付記
東芝は10月24日、臨時株主総会を開催し、半導体メモリー事業の売却、綱川智社長ら取締役10人の選任、2017年3月期決算を承認した。
ーーー
付記
2018年6月1日に譲渡が完了した。
中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。
譲渡価格は
約2兆3億円となっている。東芝は譲渡完了に先立つ2018年3月29日に、株式譲渡契約に基づき、東芝メモリから資本剰余金を原資とする特別配当約1,180億円を受けている。
Western Digital
との製造合弁会社3社(Flash Partners有限会社、Flash Alliance有限会社及びFlash
Forward合同会社)の持分については、2018年1月に東芝メモリに譲渡済み。
東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億
円分(総数の約40.8%)取得し、その結果、約40.2%の議決権を取得した。
出資・融資内訳(億円)
|
出資・融資 |
出資 |
融資 |
|
議決権 |
転換社債 |
議決権なし |
東芝 |
3,505 |
40.2% |
1,096 |
|
2,409 |
|
議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権 |
HOYA |
270 |
9.9% |
270 |
|
0 |
|
|
(日本側計) |
(3,775) |
(50.1%) |
|
|
|
|
今後も過半を維持 |
Bain |
2,120 |
49.9% |
1,361 |
|
759 |
|
|
SK Hynix |
3,950 |
|
15% |
1,290 |
2,660 |
|
10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限) 10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要 |
(Bain/SK) |
(6,070) |
|
|
|
|
|
|
Apple |
4,155 |
|
|
4,155 |
|
|
Seagate |
Kingston
Technology |
Dell
Technologies Capital |
合計 |
14,000 |
2,727 |
1,290 |
9,983 |
|
|
金融機関借入 |
6,000 |
|
6,000 |
|
再計 |
20,000 |
14,000 |
6,000 |
|
株式譲渡後はBain
Capitalと東芝メモリ経営陣を中心に事業運営を行う。
東芝とHOYAの日系企業による出資比率は過半を超えるが、今後も過半を維持する予定。
NAND型フラッシュメモリーで競合するSK
Hynixの参加については、下記の条件を付けた。
SK Hynixは、1290億円は今後議決権がある株式に転換できる転換社債形式で、残りはBain
Capitalが組成する会社に融資する形とする。
融資の一部(1290億円)については、株式(15%分)に転換する権利が付与されているが、今後10年間は
15%超の議決権を保有することはできず、当該転換権の行使には各国競争法当局の承認が必要となる。
東芝メモリとの間には、少なくとも10年間、ファイヤーウォールが設置され、SK Hynixによる東芝メモリの機密情報へのアクセスは制限される。
Western Digital との紛争の解決後は産業革新機構及び日本政策投資銀行が出資するが、それまでの間、参加の前提が崩れるような経営判断を防ぐ目的で、東芝メモリの普通株式の一部に係る議決権行使について、東芝は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権(議決権行使に関する具体的な方法を第三者が当該保有者に対して指図する権限)を与える。
なお、Western
Digitalが国際仲裁裁判所に3つのJVの株式等の売却差し止めを求めて仲裁の申し立てを行っている。仮にこれが認められたとしても、本株式譲渡が差し止められない限り、株式譲渡は履行される。
Western
Digitalが売却差し止めを求めているのは、3つのJVについてであり、上記の通り、現在は東芝が権益を保持したままである。
このため、JVの権益を有していない東芝メモリの株式譲渡は仲裁の対象外である。
この場合は、NAND型フラッシュメモリの事業は譲渡対象外となり、その価値が控除され、東芝メモリの価値は著しく下がることとなる。
SK Hynixにとっては参加の意味はなくなる。
Western
Digital
は9月26日、東芝が東芝メモリを「日米韓連合」に売却することに対し、国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所に暫定差し止めを求めると発表した。
これが認められた場合は、株式譲渡は履行できない。
ーーー
今後の問題は次の通り。
・国際仲裁裁判所の審理 売却完了後に敗訴となれば、莫大な賠償を求められる。
・独占禁止法の審査 2018年3月末までに審査が完了するかどうか。特に中国が問題。
・東証による特設注意市場銘柄の指定の解除
・事業パートナーであるWestern Digital
との今後の関係
Western Digital
は9月初めの新提案で、四日市工場における協業体制で Western Digital 側の関与を強めることを求めた。
現在は四日市工場の能力の6割弱を東芝、4割弱をWestern
Digitalが保有している 。
また第6製造棟は当面東芝が単独で行うとしている。
9月6日に東芝は新規拠点を岩手県北上市の北上工業団地エリアに決めた。
Western Digital は、四日市工場が唯一の生産拠点であり、これの増設から締め出されると競争力を失うこととなり、SunDisc
を買収した意味を失う。
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