カナダ政府は1月10日、反ダンピング関税などの貿易制裁措置を不当に活用しているとして、米国をWTOに提訴したと明らかにした。
2017年12月20日付で行った。
トランプ米政権との対立激化は必至で、1月下旬に次回会合を控えるNAFTA再交渉にも影響を及ぼしそうだ。
カナダの申立書によると、米国が課す反ダンピング関税や政府補助金に対する相殺関税の多くはWTO協定が認める水準を超えており、関税の徴収や決定過程など米政府の手続きがWTOルールに違反していると指摘した。
いろいろな問題のなかで、米国は税率の不適切な計算を行ったり、関係者が自衛のために証拠を提出するのを制限したりするのを問題視している。
1996年に遡り、カナダのほか、中国など世界中の国からの製品についての米国の調査を問題にしており、32ページにわたる。
カナダは特にトランプ政権下でのやり方を問題としている。米商務部は昨年、80件以上の反ダンピング、反補助金調査を行ったが、これは2016年の46%増しである。
カナダのフリーランド外相は、提訴は同国産の針葉樹製材をめぐる通商問題に起因するものだと説明。「WTOへの提訴は、カナダで林業に携わる多数の中間所得層の雇用を守るための取り組みの一環だ。引き続き米国側に働きかけ、長期的な合意を締結できるよう促していく」と表明した。
両国の貿易摩擦は既に、ボンバルディアなどの航空機メーカー、材木メーカーや自動車業界に及んでいる。
米商務省は2017年12月20日、カナダのボンバルディア製小型ジェット機「Cシリーズ」に300%近い制裁関税を課す最終決定を下した。ITCが被害の存在を認めれば、関税が発効する。
ボーイングはボンバルディアがカナダ政府から違法な補助金の支給を受け、米国でCシリーズを不当に低い価格で販売していると訴えていた。
WTOの紛争解決手続きに基づき、まず米国とカナダが2国間で協議する。60日以内に問題が解決しなければ、裁判の一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は10日の声明で「事実無根だ。カナダにとっても悪影響を及ぼす」と強く反論した。
NAFTAの先行きも不透明で、再交渉の第6回会合は1月23日からモントリオールで開催されるが、カナダ政府関係者は1月10日、トランプ米大統領が以前から繰り返し警告しているNAFTA離脱を実行に移す可能性が高くなっていると発言した。
米通商代表部(USTR)は2017年11月17日、NAFTA再交渉での目標を見直したと発表した。
USTRのLighthizer
代表は声明で「これらの目標を達成できれば、NAFTAを近代化し、再びバランスが取れた協定にし、労働者、農家、牧畜業者、企業の利益に資するものとなる」と述べ、要求が通らない場合は脱退する可能性を示唆した。
2017/11/23
米国、NAFTA再交渉で新目標
ーーー
カナダが問題とするのは以下の点。
全文 https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/FE_Search/FE_S_S009-DP.aspx?language=E&CatalogueIdList=241392&CurrentCatalogueIdIndex=0&FullTextHash=&HasEnglishRecord=True&HasFrenchRecord=True&HasSpanishRecord=True
A. The Liquidation of Final Anti-Dumping and Countervailing Duties in
Excess of WTO-Consistent Rates and Failure to Refund Cash Deposits Collected
in Excess of WTO-Consistent Rates
米国はダンピング幅の計算でプラス分のみを合計し、マイナス分を無視している。
この結果、WTOのルールを超える反ダンピング税率、相殺関税率となる。またそれにより過剰徴収した税を返還しないこと。
例として Annex T
に各国の28のケースを列挙
B.
Retroactive Provisional
Anti-Dumping and Countervailing Duties Following Preliminary Affirmative
Critical Circumstances Determinations
例として Annex U
に各国の122のケースを列挙
C. The US Treatment of
Export Controls in Countervailing Duty Proceedings
輸出国のいろいろな輸出コントロールを反補助金の根拠とするが、全ての輸出コントロールを財政支援とみる。
例として Annex V
に各国の13のケースを列挙
D. The Improper
Calculation of Benefit in Countervailing Duty Proceedings involving the
Provision of Goods for Less than Adequate Remuneration
反補助金の決定に当たり、相手国の政府の支援で安くなったものを採用するが、逆に高いものは計算から除外している。
例として Annex
Wに各国の18のケースを列挙
E. The United States'
Effective Closure of the Evidentiary Record before the Preliminary
Determination
反ダンピング、反補助金調査で、調査対象企業が反論のため資料を出すのを制限している。
例として Annex
Xに各国の7のケースを列挙
F. The US
International Trade Commission Tie Vote Provision
米国のITC
は、米国企業が米国において重大な被害を受け、またはその恐れがあることを判断するが、委員は通常6人で、賛否同じの場合、法律で賛成の扱いとなる。
発表では、両子会社の製造拠点は常熟(旧三菱ケミカル電解液子会社の製造拠点)に集約しているとしている。
しかし、宇部興産の製造拠点は下記の通り、江蘇省張家港市にある。これを移転したのかどうか、不明。
また、宇部の製造拠点は当初はDow とのJVであったが、現在は宇部100%となっており、これをJVに含めなかった理由は不明。
また、2016年10月の両社の発表では、両社の電解液製造拠点を列挙しているが、何故か宇部の米国拠点は除かれている。
両社の電解液事業の状況は下記の通り。(合弁設立前)
三菱ケミカル
社名 |
三菱ケミカル |
MC Ionic Solutions US, Inc |
MC Ionic Solutions UK, Ltd. |
常熟菱鋰電池材料
(今回 JV化) |
場所 |
四日市 |
テネシー州メンフィス市
(Lucite の工場内) |
英国 ストックトンオンティーズ市
(Lucite
の工場内) |
江蘇省常熟市 |
株主 |
|
三菱ケミカル
100% |
三菱ケミカル 100% |
三菱ケミカル100% |
設立 |
|
2010年 |
2010年 |
2012年 |
能力 |
13,500t |
10,000トン |
10,000トン |
10,000トン |
宇部興産
社名 |
宇部興産 |
Advanced
Electrolyte Technologies LLC
|
AET Electrolyte Technologies (Zhangjiagang) |
場所 |
堺 |
ミシガン州トロイ市 |
江蘇省張家港市 |
株主 |
|
|
宇部興産 100%
当初Dow との50/50JV
その後 宇部70%→80.5%→100% |
Advanced Electrolyte
Technologies LLC |
設立 |
|
2011 |
2012 |
能力 |
10,000t |
5,000t |
5,000t |
宇部興産は電解液原料の高純度DMC製造のJVを持つ。
社名 |
中盐安徽红四方宇部新材料科技有限公司
(CNSG Anhui Hong Sifang & UBE New Material Technology Co., Ltd.) |
場所 |
安徽省合肥市(中塩紅四方の敷地内) |
株主 |
中塩安徽紅四方股份有限公司
50%
宇部興産 40%
その他 10% |
設立 |
2016年末 |
能力 |
年産1万t |
備考 |
2016/3 宇部は中塩紅四方に宇部のジメチルカーボネート(DMC)技術を供与するためのライセンス契約を締結
中塩紅四方からDMCの一部を引き取って高純度化し、江蘇省張家港市にあるUBEグループのリチウムイオン電池(LIB)用電解液工場(AET
Electrolyte Technologies(Zhangjiagang)Co.,
LTD)に供給すると共に、中国市場の電解液メーカーへ販売
|
2018/1/18 日・サウジ・ビジョン2030
ビジネスフォーラム
世耕経済産業大臣は、1月14ー15の両日、サウジアラビア及びアラブ首長国連邦を訪問した。
リヤドでは、サルマン国王及び関係閣僚と会談を行ったほか、「日・サウジ・ビジョン2030 ビジネスフォーラム」に出席した。
アブダビでは、ムハンマド皇太子をはじめ政府要人等と意見交換を行い、ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(WFES)に参加したほか、国際協力銀行(JBIC)とアブダビ国営石油会社(ADNOC)との融資契約の調印式に出席した。
国際協力銀行(JBIC)は2018年1月、アブダビ国営石油会社(ADNOC)に30億ドルを新たに融資することを決めた。
日本が保有し、3月に期限が切れるアブダビ沖の油田権益の更新は正念場を迎えており、それを後押しする狙い。三井住友銀行、みずほ銀行、英HSBCとの協調で、JBICは21億ドル程度を負担する。
日・サウジ・ビジョン2030
ビジネスフォーラムは、日本企業67社、サウジ企業130社の出席を得て開催され、二国間でのビジネスを促進するためにリヤドに専門家を常駐させる「日・サウジ・ビジョン・オフィス」の開所式典、3つのサウジアラビアにおける事業ライセンスの付与、6つの日サ企業間の協力文書の交換が行われた。
2017年3月13日、安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において、「日・サウジ・ビジョン2030」が合意された。
2016年9月にムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(当時)と安倍総理との間で策定に合意され、政府間対話枠組みである「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」での議論を経て、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめたもの。
骨子は次の通り。
(1)新しい日サ協力の羅針盤として、脱石油依存と雇用創出のためサウジが追求する「サウジ・ビジョン2030」と、GDP600兆円の達成に向けて日本が追求する「日本の成長戦略」のシナジーを目指す。
(2)シナジーを最大化させるため、「多様性」、「革新性」、「ソフトバリュー」の3本の柱からなる日本ならではの総合的な協力とする。
(3)日サの41省庁・機関が参加し、具体的連携の重点分野として9分野にまたがる広範な協力分野を設定する。
(4)規制の見直し、インセンティブ等のビジネス促進措置(Enabler)の強化でも連携する。
(5)31件の先行プロジェクトを選定し、実施する。
(6)横断的課題に取り組むサブグループを新設し、サウジアラビアの経済改革のモデルを示す特区の設立に向けた検討を進める。また、東京とリヤドに、ビジョンの実施を継続的にフォローする拠点として、「日・サウジ・ビジョンオフィス」を新設する。
サウジアラビアにおける3つの事業ライセンス
1) 三井住友銀行:金融その他のコンサルタント
2) SB エナジー:再生可能エネルギーのコンサルタント
3) タダノ(クレーンのメーカー):サウジの産業のための科学的、技術的サービス
6つの日サ企業間の協力文書
1) NEDOは、サウジアラビア海水淡水化公社(SWCC)と共同で、省エネルギー型の海水淡水化技術の実証事業を実施する。
日本国内で確立した技術「Mega-ton Water
System」を活用し、サウジアラビアのウムルジにおいて、従来型の逆浸透膜(RO膜)を用いた方法に比べ約2割の省エネルギー化と建設コストの低減が可能な海水淡水化システムの優位性を実証する。
NEDOは「Mega-ton Water
System」プロジェクトに研究支援機関として参画し、省エネルギー型の海水淡水化技術である「低圧多段高収率海水淡水化システム」を確立した。逆浸透膜法(RO膜法)による海水淡水化をさらに省エネルギー化するもの。新型RO膜法の使用や、膜ユニットの配置を多段とするなどにより、従来のRO膜において必要であった高圧ポンプの稼働等によるエネルギー消費を約2割削減する。
実証規模は1日あたり1万立方メートル(造水量)で、同技術を開発した日立製作所と東レに事業委託する。
2) サウジアラビアの電力会社 Saudi
Electricityと東京電力、日産自動車、東光高岳は、サウジアラビアにおいて電気自動車の実証事業を実施する合意書を締結した。
開始時期 |
2018/4 |
実証期間 |
1年間 |
目的 |
サウジの環境下(夏に40℃以上、砂塵発生)での電気自動車、急速充電器の性能、電気代やCO2削減量の検討 |
役割 |
サウジ電力 |
電気自動車、急速充電器の運用(社用車として) |
日産自動車 |
新型日産リーフ3台の貸与 |
東光高岳 |
急速充電器3台の提供 |
東京電力 |
収集データの分析 |
3) General Sport Authorityと富士フイルムとメディヴァ
(医療コンサルタント)がサウジ国内での女性の検診施設の立ち上げ協力で合意した。2月にリヤドでヘルスケアフォーラムを開く。
4) サウジのGeneral Commission of Audiovisual
Mediaと中東協力センター:アニメ制作を職業訓練に加える。
5) Saudi Stock Exchange と野村證券
6) Al-Yemani Group
と松谷化学工業(澱粉の総合メーカー)
なお、日・サウジ・ビジョン2030
ビジネスフォーラムでの挨拶のなかで、Energy,
Industry and Mineral Resources のKhalid
Al-Falih大臣はSaudi Aramco
と住友化学のPetro Rabigh計画の進展に喜びを示した。
2018/1/19 東芝、Westinghouse関連の株式と債権を売却
東芝は1月18日、元子会社のWestinghouse(WH)関連の株式と債権の売却が決まったと発表した。
同社は債権の売却に関し、機関投資家・ファンドなどを参加者とした入札プロセスを実施
、法律事務所の助言を得ながら検証した結果、今回の売却先2社からの共同提案が、東芝の企業価値向上及びWH再生手続全体の円滑な進捗に最も資するとの包括的な観点から、債権譲渡契約及び株式譲渡契約をそれぞれ締結した。
東芝はこれに併せ、WHの再生手続の主要な利害関係者であるWH、債権者委員会、
及び今回の売却先2社との間で、支援契約を締結した。
これにおいては、WHを含む申立対象会社の再建計画やBrookfieldによる買収への協力関係、配当順位を含む再建計画の主要条件、再建計画への投票・裁判所認可までのスケジュール等について当事者間で合意しており、再生手続の適切な完了、及び早期終結に資するものとなってい
る。
概要および影響は次の通り。
|
売却対象 |
売却先 |
売却額 |
東芝損益 |
株式 |
1) Toshiba Nuclear Energy
Holdings (US) Inc.
2) Toshiba Nuclear Energy
Holdings (UK) Limited
|
Brookfield Business Partners LP
(WHの新スポンサー:下記参照) |
1ドル(*1)
|
東芝として評価減しているため、影響なし |
債権 |
1)
親会社保証代位債権(*2)
5,788百万ドル
2)その他債権 2,284百万ドル
合計 11,576百万ドル |
Nucleus Acquisition LLC
(The Baupost Group LLC傘下のコンソーシアム) |
2,160百万ドル
(約2,441億円) |
東芝として評価減しており、簿価はゼロ
売却益 約2,400億円
税引後利益 約1,700億円ーーー
有税で引当てしている保証損失を損金算入
税金を2,400億円圧縮
合計 税引後利益 4,100億円 |
(*1) 出資持分への配当順位は、他のすべての債権への配当に劣後することとされていることから、株式は実質的な経済的価値を有さない。
(*2)
親会社保証の代位債権も、同様とみられる。
カナダの投資ファンドのBrookfield Asset Management Inc.は1月4日、傘下のBrookfield Business
Partnersが東芝の元子会社の米原発大手Westinghouse (WH) を46億ドルで買収すると発表した。欧州の事業も含む。
同社と複数のパートナーが自己資本10億ドルと長期借入金30億ドルで買収する。残り6億ドルは、資金不足となっているWHの年金基金や、環境関連やその他の債務の引き受け。
Brookfield は50%程度の株式を握る。
Brookfield group
はユーティリティ、不動産、エネルギー、インフラのような長期安定資産に投資する世界でも最大の投資家の一つである。
2018/1/9
カナダの投資ファンド、米Westinghouseを買収
ーーー
代位債権
東芝は1月12日、V.C.
Summer原発に関する親会社保証を早期弁済したと発表した。Vogtle
原発に関する親会社保証は2017年12月14日に早期弁済しており、親会社保証に係る支払い義務を完済したことになり、これはWHに対する代位債権となった。
弁済内容は次の通り。(百万ドル)
相手先 |
原発 |
保証金合計 |
支払済み |
先取特権 控除 |
残高一括払い |
|
Southern電力 |
Vogtle
|
3,680 |
455 |
|
3,225 |
2017/12/14 |
South
Carolina Electric & Gas、 Santee Cooper |
V.C. Summer
|
2,168 |
247.5 |
60 |
1,860.5 |
2018/1/12 債権譲渡先Citibankに支払い |
合計 |
5,848 |
702.5 |
60 |
5,085.5 |
|
代位債権は先取特権分を除いた5,788百万ドル。
2018/1/15 東芝、Westinghouseの米国原発建設プロジェクトに係る親会社保証を早期弁済
東芝は、2017年11月9日付の発表で、2018年3月末の株主資本が7500億円のマイナスと公表していた。
増資と今回の債権譲渡で、これが2600億円のプラスとなり、中国等の承認を得て東芝メモリの売却が確定すれば更に強固なものとなる。なお、東芝メモリ売却で、税負担が追加で軽減されるとのこと。
(単位:億円)
|
2017/11/9 発表 |
増資 |
保証弁済
債権譲渡 |
東芝メモリ
売却 |
18/3予 |
東芝メモリ売却の税額影響 |
売上高 |
49,700 |
|
|
|
|
営業損益 |
4,300 |
|
|
|
|
債権譲渡(税引後) |
|
|
|
1,700 |
|
株式売却(税引前) |
|
|
|
|
10,800 |
株式売却関連税金 |
|
-3,400 |
|
|
|
保証損失引当の
損金算入(税金圧縮) |
|
|
|
2,400 |
|
非継続事業純損益 |
− |
− |
|
|
|
純損益 |
2,300 |
-3,400 |
|
+4,100 |
+10,800 |
増資 |
|
|
6,000 |
|
|
株主資本 |
-4,100 |
-7,500 |
-1,500 |
2,600 |
13,400 |
2018/1/20 三井化学、大手工業デザイン会社の
アークをTOBで取得
三井化学は2017年11月30日より大手工業デザインの アークのTOBを実施していたが、1月17日付でこれが終了し、同社の議決権の74.69%を取得したと発表した。
1月24日付で連結子会社とする。
付記 2020年5月 完全子会社化
オリックス子会社のOPI-11の所有する67.06%のうちの57.06%と、みずほ銀行の9.16%、三菱東京UFJ銀行の8.47%の合計 74.69%
を合計 30,132百万円で取得した。3株主とは事前に合意していた。
OPI-11は残り10%の保有を続ける。残り15.31%はその他株主が保有する。
アークは、工業製品における新製品の開発支援企業グループで、デザインモデルと言われる開発初期段階の意匠検討用の模型製作から、その製品又は部品の金型など少量生産のサポート等、顧客の
製品開発支援を主なビジネスモデルとしている。
解析エンジニアリングなどの先進的な開発技術を保有しており、日本含め、世界5極(日本、北米、中国、ASEAN、欧州)で、製品及びサービスを提供している。
三井化学は、特に自動車材料を中心とした「モビリティ」事業において、多様な機能性樹脂製品群の開発・製造・販売を手掛けており、グローバルに高品質・高性能な素材を提供する一方、金属樹脂一体化技術や金型技術の活用等、既存の素材・材料の販売に留まらない、これまでの事業領域から一歩踏み出す動きを推進している。
また、オープンイノベーションや他企業との提携等を通じた設計・解析・評価・試作等のソリューション提供力の強化も加速させている。
アークの子会社化を通じ、両社技術の相互活用によるグローバル市場での持続的な成長を共に実現する。
アークは三井化学グループの多彩な製品群・材料技術の活用による素材の知見を活かした設計、試作や解析による、より高い付加価値を有する総合的な開発支援サービスの強化を図る。
三井化学はアークの強みを生かしたグループ製品・サービスの事業領域拡大と、「モビリティ」分野におけるソリューション提案・提供力の強化と、事業化を目指す。
ーーー
アークはM&Aを積極的に進めて事業を急拡大したが、業績悪化で行き詰まり、2010年12月末の有利子負債は750億円、連結自己資本比率は2.7%にまで低下していた。
アークは傘下に下記の会社を有していた。
安田製作所、昭和精機工業、岐阜精機工業、ソルプラス、相模原部品工業、クローバー電子工業、東邦システム、サトーセン、積水工機製作所、アーク岡山、C&Gシステムズ、3D
Autoprotech、ほか海外連結子会社55社及び関連会社16社
2011年に、アークとその子会社の安田製作所、昭和精機工業、岐阜精機工業、ソルプラス、相模原部品工業、クローバー電子工業、東邦システムの8社は、みずほ銀行及び三菱東京UFJ銀行との連名で企業再生支援機構に支援の申し込みを行った。
企業再生支援機構は同年3月31日、支援決定を行った。
事業再生計画は、世界4極(日本・アジア・欧州・北米)における工業製品の新製品開発を支援することを目的として、アークグループの競争優位性を最大限活かせるように、選択と集中の徹底を図ることを主要な内容としている。
事業計画の骨子:
@選択と集中の徹底
Aコア事業の強化
a 国内生産拠点集約と選別受注の強化
b 国内及びアジアにおける少量品一括受注の拡大
c 欧米グループ間シナジーの創出
B経営管理体制の強化
C組織運営及び人事政策の改革
金融支援の概要は次の通り。
2011年8月に支援機構に優先株を割り当てるとともに、支援機構とみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の持つ同社に対する債権を現物出資財産として、debt-to-equity
swapの方法で優先株を割り当てた。
企業再生支援機構 |
Debt-Equity
Swap |
10,231百万円 |
銀行からの債権買取分 |
第三者割当増資 |
9,000百万円 |
|
みずほ銀行 |
Debt-Equity
Swap |
5,357百万円 |
他に債権放棄 2,810百万円 |
三菱東京UFJ銀行 |
Debt-Equity
Swap |
4,954百万円 |
合計 |
|
29,542百万円 |
|
企業再生機構はアークの68.78%の株を保有し、親会社になった。
アークは事業再生計画に基づくコア事業の選択と集中、連結経営体制の整備により、事業再構築を終えた。
2014年6月にオリックスが子会社のOPI-11を通じてTOBを行い、支援機構の持ち株を買収して筆頭株主となった。
2018/1/20 米政府機関、閉鎖
米国は1月19日に「つなぎ予算」の期限を迎えた。下院は前日に2月16日までの四度目のつなぎ予算を通したが、上院は民主党の反対で採決に進むために必要な動議に60票の賛成を確保できず、結局時間切れで政府機関の閉鎖となった。
共和党院内総務のMitch McConnell
議員は翌早朝、下院が通した4週間ではなく、3週間のつなぎ予算を提案するとし、20日(土曜)午後に本会議を開くと述べた。
仮にこれが通っても、下院での再議決が必要となる。
下院議員には上院の議決の前に、週末ではあるが Washington DCを離れないよう指示が出ている。
付記
1月20日は進展なし。
共和党は与野党協議の行方にかかわらず、22日午前1時に2月8日までの新たなつなぎ予算の採決に向けた投票を実施すると明らかにした。
→ 22日(月)正午に延期。
米の2018年度(2017/10/1〜2018/9/30) 連邦予算は年度初めに決まらず、12月8日までの暫定予算でスタートした。
その後も、本予算の議論がまとまらず、
期限切れ前日の12月7日、上院と下院は12月22日までのつなぎ予算を賛成多数で可決した。
更に、両院は12月21日に2018年1月19日までのつなぎ予算を可決した。
2017/12/25 米減税法案 成立
今回も与党・共和党は1月19日までに予算措置を講じるのは難しいと判断した。トランプ大統領は、メキシコ国境の壁の建設を強く求めている。他方、民主党は予算成立に協力する条件として、幼少期に親と一緒に不法入国した若者(ドリーマー)に滞在許可を与える制度を続けるよう主張している。
セッションズ司法長官は2017年9月5日、幼少時に親と米国に不法入国した若者
(「ドリーマー」と呼ばれる)に滞在許可を与える制度(DACA)を撤廃すると発表した。
対象者の在留資格は2018年3月までは保護されるが、新たな申請は認めない。
対象者は全米で80万人に上るとされ、カリフォルニア大学などが「学生らの損失に直面している」などとして、撤回を求めて提訴していた。
幼少時に親と米国に不法入国した若者の強制送還を延期(defer) し、その間就労許可証を与えるもの。
2001年に、子供の時に親に連れられて米国に不法入国し滞在を続けた若者に対し、アメリカに永住できる道を与えようとする
DREAM
法案が提唱された。自らの意思で不法滞在を選択したわけではない若者で、犯罪歴がなく、大学に進学もしくは軍隊に入隊したものには、アメリカで生き延びる機会を与えようという趣旨であった。
2017/9/6
新たな不法移民問題
このため、共和党は2月16日までのつなぎ予算で時間を稼いで野党・民主党と交渉を続けるシナリオを描いた。
ホワイトハウスは、民主党が新たなつなぎ予算に賛成するならドリーマー救済措置に関する協議を行うと約束したが、民主党はドリーマー救済をつなぎ予算の条件とした。
共和党が多数を占める米下院は18日夜、1カ月のつなぎ予算を賛成多数で可決した。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
賛成 |
224 |
6 |
230 |
反対 |
11 |
186 |
197 |
棄権 |
3 |
1 |
4 |
合計 |
238 |
193 |
431 |
問題は上院で、予算案を通すには(フィリバスターを阻止するための)60票が必要であるが、共和党の議席数は現在51で、民主党の一部議員の賛成が欠かせない。
2017/12/13 米アラバマ州上院補選、民主党候補が当選確実、共和党上院議員51名に
民主党のChuck Schum上院院内総務はWhite
Houseで大統領と幅広い問題について長時間の密室での協議を行った。議員は「ある程度の進展があったが、不一致の点が多い。協議は続く」と述べた。
上院は1月19日の午後10時に採決に進むために必要な動議をかけることを決めた。民主党に圧力をかけるため、ぎりぎりまで延ばした。
投票の30分前にトランプ大統領はTwitterで呟いた。「メキシコとの国境のセキュリティにとって、良くない風向きだ。民主党は減税という偉大な成功にケチをつけるため、政府機関の閉鎖を望んでいる」
しかし、投票の結果、フィリバスターを阻止するための60票の賛成を得ることは出来ず、動議の見送りを決議した。
民主党から5人(秋の中間選挙で苦戦が伝えられている)が賛成したが、共和党の4議員が反対した。脳腫瘍で療養中の共和党John
McCain上院議員は欠席した。
共和党院内総務のMitch McConnell 議員は最後の投票を終えず、議会を開会したまま、民主党と対応の検討を続けた。
その後、時間切れになり、McConnell 議員は本来は当然、賛成だが、ルール(詳細不明、報道では“for
procedural reasons”)に従い、反対票を投じた。
|
共和党 |
民主党 |
無所属 |
合計 |
賛成 |
45 |
5 |
|
50 |
反対 |
5 |
42 |
2 |
49 |
棄権 |
1 |
|
|
1 |
合計 |
51 |
47 |
2 |
100 |
ーーー
前回、政府閉鎖が起きたのは、2013年のオバマ政権。
米与野党は9月30日夜になっても暫定予算案で合意できず、10月1日、政府は1996年以来、17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖を開始した。
軍や治安、健康、福祉部門などを除く政府機関の業務が停止
最大100万人の政府職員が同日中にレイオフ。
国防総省は文民職員の約半数に当たる約40万人をレイオフするほか、NASAやEPAは職員の9割以上が対象となる。
全米各地の国立公園や動物園、「自由の女神」などが閉鎖されるほか、退役軍人向けの相談業務や税の監査、米国立衛生研究所の新規患者受け入れなどが休止
一方、国境警備や海外の軍事活動、空港での航空管制業務や社会保障給付は通常通り継続
2013/10/1
米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖
米議会の上・下院は10月16日深夜、米政府の債務上限を来年2月7日まで引き上げ、政府の一部閉鎖も解消する法案を可決した。
2013/10/17 速報 米国、政府デフォルトを直前に回避
これ以前の政府機関閉鎖はクリントン政権時代の1995〜1996年の21日間だった。
2018/1/22
伊藤忠、シェルからイラク油田の権益取得
Royal Dutch Shell は1月15日、イラクの西クルナ油田(West Qurna
Phase 1)の権益を伊藤忠に売却することで合意したと発表した。金額は明らかにしていない。
イラク石油省はこの売却を承認した。
報道ではShellが売却した持分を20%としている。但し、下記の通り、Shellの持分は15%の筈で、報道が誤りなのか、他に理由があるのか、不明である。
Shellはまた、イラクのMajnoon油田の権益も6月末にイラク国営のBasra
Oil Companyに売却する。但し、Shellはイラクの天然ガスの権益は保有し続ける。
Majnoon油田はWest Qurna油田の東にある(下の地図)。
2010年1月にイラクの石油第二次入札で、ShellとPetronasが20年間の契約を締結した。
国営石油会社Missan Oil
が開発に加わり、Shell がオペレーターとなっている。持分はShellが45%、Petronasが30%、イラクのMissan
Oil Company が25%となっている。
Shellは別途、英国領北海の Penguins
油・ガス田の再開発の投資を決定したことを発表した。浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)も建設する。
この油・ガス田はこれまで、4つの採掘基地をBrent Charlie platformに接続していたが、Brent Charlie
platformの停止で、FPSOが必要となったもの。
伊藤忠が取得するWest Qurna Phase 1 油田はイラク南部にあり、同国の油田で最大規模を誇る。
この油田は、イラク政府が2009年に国際入札を実施した第一次油田開放の一つで、ExxonMobilとShellが獲得した。
2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展
West Qurna 1
は1973年に発見された。推定埋蔵量は87億バレル。現在の生産量は日量405千バレル程度。
同油田の権益比率は、当初はExxonMobilが60%、Shellが15%、イランのOil
Exploration Companyが25%であった。
しかし、ExxonMobil は2013年11月に、そのうちの25%分をPetroChinaに、10%分をPertaminaに売却し、現在の持分は25%となっている。
ーーー
なお、2009年12月にロシアのLukoil と ノルウェーのStatoilはWest Qurna Phase II
の権利を取得した。
持分はLukoilが56.25%、Statoilが18.75%、イラク国営石油が25%であった。
Lukoil は1997年にサダム
フセインとの間でこの油田開発で37億ドルの契約にサインしたが、フセインは2002年にこれをキャンセルした。
モスクワはフセイン失脚後にこれの復活を求め、イラクの129億ドルの債務を帳消しにしている。
その後、2012年3月にStatoilが持分をLukoilに売却したため、現在はLukoilの持分は75%となっている。
2018/1/23 日本ペイント筆頭株主のWuthelam Group、取締役の過半を求める株主提案
日本ペイントホールディングスの筆頭株主であるシンガポール塗料大手Wuthelam
Groupは1月19日、日本ペイントHDの取締役候補として6人を推薦する株主提案を出したと発表した。
取締役の上限は10人で、3月の定時株主総会で可決されれば過半数を占める。
現在はWuthelamのGoh
Hup Jin社長が取締役となっているが、元ジャスダック証券取引所社長の筒井高志氏や安川情報システムの諸星俊男社長など5人を社外取締役の候補とした。
Wuthelam
Groupは現在、日本ペイントHDの株式の38.99%を有する筆頭株主。「現経営陣といたずらに対立するつもりはないが、6人が選ばれれば株主価値を最大化できる」としている。
付記
日本ペイントホールディングスはこの株主提案を受け入れ、ウットラムが推薦した6人全員を含む10人を会社提案の取締役候補として3月末の定時株主総会にはかる。
WuthelamのGoh
Hup Jin社長が日本ペイントホールディングスの会長になる。
3月28日、定時株主総会を開き、ウットラムが推薦した6人を含む10人の取締役が選任された。
ーーー
両社の関連は下記の通り。
Wuthelam
Groupはシンガポール国籍のGoh Cheng Liangが設立した企業グループで、現在は息子のGoh
Hup Jin の一族が所有している。
Goh Cheng
Liangは1955年にシンガポールで開業し、日本ペイントのディストリビューターとなった。
1962年に日本ペイントとWuthelamグループは、Nippon
Paint
Southeast
Asia
グループ(NIPSEAグループ)を設立。
その後、アジア各国で自動車や建築用塗料などを中心に、日本ペイントが技術、Wuthelamがマーケティングを担当して合弁事業を展開してきた。
その後の経緯:
1962 |
日本ペイントとWuthelamグループは、Nippon
Paint
Southeast
Asia
グループ(NIPSEAグループ)を設立。
日本ペイントはシンガポール、タイ、韓国、中国などのJVでは40%、その他ではそれ以下の出資比率 |
2006/5 |
基本合意
合弁会社における日本ペイントの持株比率を51%以上とするよう協議する。
Wuthelamが日本ペイントの株式を最大10%まで取得(当時の持株は5%弱) |
2008/12 |
Wuthelamが日本ペイントへの出資を14.51%に引き上げたことが判明、基本合意での「最大10%」を超えたため、この合意を一旦白紙に戻し、改めて協議することに。
その後、日本ペイントはこれを認めた。 |
2013/1
2013/3 |
Wuthelamが日本ペイント持株を14.51%から約45%まで高める提案
提案取り下げ
2013/1/23 シンガポール塗料大手、日本ペイントに買収提案 (各地のJVの両社出資比率
記載) |
2014/2 |
日本ペイント、Wuthelamを引受先とする約1000億円の第三者割当増資 14.5%→30.3%
Wuthelam は、第三者割当後の2年間に限り、市場での購入で出資比率を39.0%まで増やす。
見返りに日本ペイントによる各地JVの出資比率引き上げ(51%へ)
2014/2/6 日本ペイント、Wuthelam
Groupとの戦略的提携の基本合意 |
2014/12 |
手続きが完了
Wuthelamの持株は38.99%となる。
日本ペイントのアジア各社への出資比率は51%となる。 |
2017年11月に日本ペイントは米Axalta Coating
Systemsに買収を提案したが、交渉を打ち切った。
2017/11/28 日本ペイント、米塗料大手に買収提案
ーーー
上記の経緯を見ると、日本ペイントは当初シンガポールでの同社のディストリビューターであったWuthelam
と組み、日本ペイントが技術、Wuthelamがマーケティングを担当してアジア各国で合弁事業を展開してきた。
その間、Wuthelam
は日本ペイントの持ち株を当初の5%弱から順次増やして14.51%とし、更にこれを45%まで高める提案をしている。
これは日本ペイントが拒否したが、2014年に第三者割当を行ってWuthelam
の持ち株を30.3%まで高め、更に39%までの買い増しを認めている。
見返りに得たものは、アジア各国でのJVの出資比率を51%にすることであった。
Wuthelamは日本ペイントHDの議決権の20%以上保有で支配株主となり、1/3 以上保有で株主総会の特別決議を単独で阻止できる。
その場合、JVを含めた日本ペイントグループ全体がWuthelamの傘下に入ることとなり、日本ペイントが見返りに両社のJVの出資比率を51%にしてもあまり意味はない。
常識的に考えると、株式の39%を握るWuthelam
が取締役会の過半を押さえようというのはおかしくはない。1割程度の他の株主から賛同を得れば株主提案が成立する。
日本ペイントとして、この点をどう考えていたのであろうか。両社の間で、日本ペイントHDの経営に関する何らかの取り決めがあったのであろうか。日本ペイントHDは、「対応は今後検討する」とコメントしており、何らかの取り決めがあったようには見えない。
2018/1/23 米国、政府機関閉鎖解除へ
米議会上下院は1月22日午後、2月8日までのつなぎ予算をそれぞれ可決した。つなぎ予算はトランプ大統領の署名を経て成立し、20日から始まった政府機関の一部閉鎖は解除される。
民主党はこれまで、未成年の時に不法入国する形で米国に連れてこられた移民(Dreamer)の保護が確約されない限りは、つなぎ予算延長の採決には応じない構えを示していた。
これら移民は、現行の救済制度「DACA」が3月に期限切れを迎えることで、強制送還される可能性がある。
与党共和党と野党民主党の幹部は22日、つなぎ予算の延長と引き換えに、民主党が求めたDACA制度の存続を検討することで一致した。民主党側は、数十万人の移民の処遇をめぐる懸念に対応するという言質を取り付けたとしている。
まず上院が、野党の議事妨害(フィリバスター)を阻止するための動議を、可決に必要な60人以上の81人の賛成を得て可決した。
これにより、過半数で可決できるが、同数の賛成で可決した。
|
共和党 |
民主党 |
無所属 |
合計 |
賛成 |
48 |
32 |
1 |
81 |
反対 |
2 |
15 |
1 |
18 |
棄権 |
1 |
|
|
1 |
合計 |
51 |
47 |
2 |
100 |
次いで下院が可決した。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
賛成 |
221 |
45 |
266 |
反対 |
6 |
144 |
150 |
棄権 |
10 |
4 |
14 |
合計 |
237 |
193 |
430 |
ただ、今回は共和・民主両党が政府機関閉鎖への非難を避けるため妥協したに過ぎない。
移民政策を巡る与野党の溝は埋まっておらず、また、トランプ大統領が固執するメキシコ国境の壁建設の問題もあり、次の期限である2月8日までに
簡単に本予算が成立するとは思えない。
予算失効と政府機関の一部閉鎖のリスクは引き続きくすぶり続けることになる。
2018/1/24
米の自動車部品カルテル裁判で東海興業に無罪
米司法省は2016年6月15日、自動車用ゴム部品の車体シールを製造する東海興業と、スチールチューブを製造するマルヤス工業、および東海興業社員1名とマルヤス工業社員4名を、価格カルテルに加わったとして起訴した。
多くの日本の自動車部品メーカーがカルテルで摘発されているが、ほとんどが起訴前に司法取引に応じ、有罪を認める代わりに処罰を軽減されている。
しかし、両社は司法取引に応じず、起訴されていた。
日経報道によると、東海興業に関し、オハイオ州南部地区連邦地裁の陪審は2017年11月29日、起訴内容を全面的に否認する同社側の主張を認めて無罪評決を出し、確定した。無罪は極めて珍しいとされる。
2013年に他社の証言をもとに捜査が始まったが、社内調査で事実無根と判明したため、裁判で争うことを決めた。司法省は他社の社内資料にあった「既得権」などの言葉から受注調整の証拠としたという。
付記 この裁判は、東海興業、米子会社 Green Tokai 及び
東海興業社員1名を被告とするもので、全員が無罪となった。
裁判の概要:http://www.appliedantitrust.com/03_criminal/case_studies/auto_parts_tokai/tokai_kogyo_sdohio_trial_brief_def_opp10_23_2017.pdf
マルヤスは米国の100%子会社の Curtis-Maruyasu America とともに起訴された。
同社は2016年8月には裁判所に対し、司法省の起訴を却下するよう要請した。この製品は日本で製造販売しており、販売先は日本企業であるとし
、米国に裁判の管轄権はないと主張、カルテル容疑も否認した。
(米国の100%子会社の Curtis-Maruyasu America の関係は不明。)
オハイオ州連邦地裁は裁判管轄権を認めたが、同社は2017年2月に巡回裁判所に対し、これの取り消しを求めている。
同社に関しての現状は不明だが、有罪との報道はない。
付記
司法省は2018年5月31日、マルヤスについて、起訴されていた多数の案件のうち、1件だけ有罪を認め、罰金12百万ドルの支払いに同意したと発表した。司法省は当初、日本の主要自動車メーカーのほぼ全社に対する約10年間の取引についてカルテルの疑いをかけていたが、ほとんどを撤回した。
司法省は同時に米国子会社Curtis-Maruyasu America
Inc.と役員4名を起訴していたが、子会社と役員3名については起訴を取り消した。
マルヤス工業の代理人は「嫌疑の大半が取り消され、罰金額は当初警戒していた額より1桁少なくなった」と説明する。
上記の東海興業と同様、司法取引に応じず、裁判に持ち込んだのが効果を生んだ。(当然、無罪を確信していたため)
ーーー
米国では自動車部品カルテルが順次摘発されており、現在までに日本企業が39社(仏Valeoの子会社のヴァレオジャパンを含む)と外国企業5社、合計44社が摘発されている。日立オートモティブは2回のため、実質43社。
このうち、東海興業とマルヤス以外は全社が司法取引に応じ、合計で罰金
2,888.1百万ドルを支払っている。
個人についても、合計65名(うち外国人1名)が摘発され、このうち31名(うち外国人1名)が司法取引に応じ、禁固刑と罰金刑を受けている。
残り34名は恐らく、司法取引に応じず、かつ日本に滞在のままで、米国での裁判に応じず、時効中断になっていると思われる。
上記の詳細は 2015/9/7 日本ガイシ、自動車用触媒担体のカルテルで米司法省と司法取引 に付記
2018/1/25 仏サノフィ、血友病治療薬の米バイオ企業
Bioverativ
を買収
Sanofiは1月22日、血友病治療薬を手掛ける米
Bioverativ Inc.
を約116億ドルで買収すると発表した。
Bioverativの価値を1株当たり105ドルと評価するもので、1月19日の終値に64%上乗せした水準となる。
BioverativはBiogenの血友病事業であったが、Biogenは2016年にこれを独立した新たな企業として分離・上場することを発表した。
2017年2月1日に血友病などの希少血液疾患の革新的治療薬の発見・開発・商業化に特化したグローバル・バイオテクノロジー企業として発足した。
Bioverativは、Fc領域融合技術を使用して開発された唯一の血友病治療薬
ELOCTATE®とALPROLIX®を販売している。
長時間作用型血友病A治療薬ELOCTATE®(日本での製品名:イロクテイト®)
[遺伝子組換え血液凝固第VIII因子Fc領域融合タンパク質製剤]、および長時間作用型血友病B治療薬ALPROLIX®(同:オルプロリクス®)[遺伝子組換え血液凝固第IX因子Fc
領域融合タンパク質製剤]は、約20年ぶりの新しい作用機序の血友病治療薬として発売された。
Bioverativ
は両剤を米国、日本、カナダ、オーストラリアで販売しており、今後は販売地域を拡大していく。EUやその他の国々では、Swedish
Orphan Biovitrum AB (Sobi)が開発、販売に関する提携契約に基づき販売している。
ELOCTATE®は、米国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルなどの国々で承認されており、Bioverativ
はそれらの地域での販売権を有している。
EU、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウエーなどの国々でも承認されており、SobiによってELOCTA®として販売されています。
ALPROLIX®は、米国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルなどの国々で血友病Bの治療薬として承認されており、Bioverativ
は、それらの地域での販売権を有している。
EU、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウエーなどの国々でも承認されており、Sobiによって販売されている。
Bioverativ
は2016年に売上高 847 百万ドル、ロイヤリティ収入41 百万ドルを計上している。
2018/1/27 カナダ、TPP 11 署名へ
米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加11カ国は1月23日、前日に続いて首席交渉官会合を東京都内で開き、11カ国による新たな協定(TPP
11)の正式合意にあたる署名式を3月8日にチリで開催することで合意した。
2017年11月の大筋合意で継続協議となった課題が決着した。議長国の日本は早期署名に慎重だったカナダを説得し、11カ国での合意にこぎつけた。
カナダのトルドー首相は1月23日、ダボス会議で「11カ国でのTPP交渉が決着したと喜んで発表したい」とし、「カナダの労働者にも役立つ正しい協定で、貿易の前進につながるものだ」などと
述べた。
これを受けてか、トランプ米大統領は1月25日、ダボス会議出席のため訪問中のスイスで受けた米テレビインタビューで、TPPへの復帰を検討すると表明した。「以前結んだものより、十分に良いものになればTPPをやる」と述べ、再交渉を条件とする考えを示した。
TPP 11は署名国の国内手続きが順調に進めば2019年に発効する。GDPで世界全体の13%、域内人口は同6.7%を占める経済圏となる。日本は開会中の通常国会で協定案承認を目指す。
付記
米国を除く TPP
参加11カ国は3月8日午後、チリのサンティアゴで新協定「TPP
11」に署名した。これを受け、各国は国内手続きに入る。採択した閣僚声明では「迅速に発効させるために国内手続きを完了する決意」と強調した。
正式名称は CPTPP:
Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific
Partnership。世界のGDPの13%、貿易額の15%を占める。米国を含む12カ国で16年に署名したオリジナル版TPPのうち、関税撤廃の約束はすべて維持。ルール分野では22項目の効力を凍結する。
TPP 11 交渉は、2017年11月のベトナムでの閣僚会合で、米国を含む12カ国で合意した内容のうち、米国が強く求めた医薬品開発データの保護期間(原則8年)や、金融規制を巡る企業と政府の紛争解決制度など20 項目を米国が復帰するまで実施を先送りする「凍結」扱いとし、4項目を継続協議とすることで大筋合意
した。電子商取引や労働者保護など先進的な貿易ルールの多くは維持した。
このうち、@マレーシアの国営石油会社とAブルネイの国内石炭産業の優遇を見直す手続きは「凍結」で決着した。
残るBベトナムの「労働紛争解決ルール」(民間の労働組合設立が前提となる)については、ベトナムは適用までの猶予期間を要求した。これについてはメキシコが反発、茂木経済再生担当相がベトナムとメキシコを訪問して調整し、ベトナムと各国がルールの適用を一定期間猶予する内容のサイドレター(補足文書)を交わすことで決着した。
問題はCカナダであった。
カナダは昨年の大筋合意時から「文化例外」規定の拡充にこだわり、協定内容の修正を求めてきた。
文化例外とは、自国文化を保護・育成するため、書籍や映像、音楽などの文化産業を自由貿易の原則から除外するというもの
。
フランス語圏で、カナダからの独立機運が強いケベック州は文化的な独自性の維持への関心が強く、カナダの歴代政権も同州への考慮などから、過去の通商協定で文化例外の規定を盛り込むよう求めてきた。ハリウッド映画に代表される米国の巨大な文化産業からカナダやケベック州の文化を守るため、例外規定は決定的に重要だと考えられてきた
。
カナダが求める例外規定が実現すれば、カナダは自国産業への補助や外国からの投資規制ができる。ケベック州では今秋に州議会選が予定されており、トルドー首相の政権運営で同州の重みは増しているとされる。
カナダは現在、米国とNAFTAの再交渉中で、カナダは、TPP 11 で合意したすべての内容について米国が同様の譲歩を求めてくること
を懸念しており、TPP 11の協議で安易な合意には踏み切れない。
しかし、この問題は前記の3点がルール適用の凍結や猶予の問題であるのに対し、米国を含めた12か国で合意した内容の修正を求めるものであり、日本をはじめ多くの国が「受け入れ困難」の立場を示した。日本は10カ国での署名に切り替えることも検討したが、米国とカナダが入らなければTPPの求心力がなくなる。
日本はメキシコの協力を取り付け、メキシコはカナダに対し、NAFTA再交渉ではTPP以上に譲歩しないと伝え、米国の通商圧力への共闘姿勢を明確にして説得した。
最終的に日本は、ベトナムと同様にサイドレターで対応する代替案を提示し、
カナダも歩み寄った。
この結果、全体で22項目を米国が復帰するまで実施を先送りする「凍結」とし、2項目を各国との間でルールの適用を一定期間猶予する内容のサイドレター(補足文書)を交わすことで決着した。
2018/1/29 米ITC、Bombardie旅客機に制裁関税発動せず
米国際貿易委員会(ITC)は1月26日、カナダのBombardieの旅客機に制裁関税を発動しない方針を決めた。
委員4人の全会一致で、Bombardieの受注が米国企業や労働者に打撃を与えていないと確認した。
米商務省が先月決定したほぼ300%の関税は発動されないことになる。
事前の予想では、Boeing の訴えが認められるとの見方が広がっていた。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローは「事実や証拠の重要性があらためて浮き彫りとなった。トランプ大統領がいくら保護主義を主張しても、通商政策に関するITCの訴訟手続きは支障なく機能した」と述べた。
またダン・ピアソン元ITC委員長は「1人の委員もBoeing の主張に耳を貸そうとしなかった。『米国第一主義』はホワイトハウスや商務省では通用するだろうが、ITCのような独立機関では通用しない」と語った。
Bombardieは声明で、「技術革新、競争、法の支配の勝利」で、米航空会社や旅行客の勝利と指摘した。
一方、Boeing は「不正な政府助成によりBoeing が何十億ドルもの損害をこうむった」ことが認められず失望した、とのコメントを発表した。
米商務省は2017年12月20日、カナダのBombardie製の100〜150席の小型ジェット機「Cシリーズ」に300%近い制裁関税を課す最終決定を下した。
ダンピング税率については、Bombardieが商務省が要求した資料を提出しなかったため、通商規定の「不利な知り得た事実に基づく認定」(Adverse
Facts Available=AFA)に基づき、79.82%とした。
補助金相殺税率については、カナダ、ケベック及びBombardieの一部生産が行われている英国の各政府の出している情報とBombardieが出している情報をもとに、212.39%と計算した。
以上により、合わせて292.21%となる。
ITCが米国産業への損害を認めれば商務省が2018年2月に正式に関税を発動する予定だった。
Boeing はBombardieがカナダ政府から違法な補助金の支給を受け、米国でCシリーズを不当に低い価格で販売していると訴えていた。Boeing によると、Bombardieが米デルタ航空から受注したCシリーズ75機の価格は1機当たり2000万ドルと、推定コストの3300万ドルやカナダでの販売価格を下回った。
相殺関税と反ダンピング関税から成る制裁関税が適用された場合、米国で販売されるCシリーズの価格は3倍以上に急騰することになる。
Bombardieは商務省の決定は「現実離れ」していると批判
、欧州航空機大手エアバスと共同でCシリーズを米アラバマ州で組み立てる計画があるため、国内製品の扱いになると説明した。
Bombardieは昨年10月、Cシリーズ事業の過半を欧州航空機大手エアバスに譲り渡す契約を結んだ。同時に将来的にエアバスの米工場で生産する計画を発表し、米経済への貢献をアピールしていた。
カナダのフリーランド外相は声明で「保護主義からカナダの企業や労働者を守る断固たる決意」を表明。今回の決定に抗議するための措置や選択肢を検討するとした。カナダ政府は対抗措置としてBoeing
から新たな戦闘機を購入する計画も取りやめた。
カナダはWTOに介入を求めるか、北米自由貿易協定(NAFTA)による仲裁制度を利用する可能性を検討しており、この問題を巡るカナダと米国の貿易紛争が激化する可能性があった。
2018/1/30 NY連銀の「基調的な物価指標」
2017年12月のCPIとPCE(個人消費支出統計)が発表された。
付記
発表は2023年9月分で終了
“Prices-only”
はCPIを構成する価格指標、1111111
“Full data set” はこれに企業景況感や労働・金融指標などを加え算出
食品とエネルギーを除いたコアCPIは1.8%、コアPCEは1.5%で、目標の2%に達しない。FRBはPCE(個人消費支出統計)を重視している。
これに対し、雇用統計は景気の回復を示している。
2017年12月の米雇用統計(非農業部門、季節調整済み、速報値)は +14.8万人で、失業率は完全雇用水準を下回る4.1%であった。
イエレンFRB議長(2月3日退任)は2017年9月20日の記者会見で、予想外のインフレ鈍化を「謎」と呼んだ。
1月27日付 日経夕刊のウォール街ラウンドアップによれば、一部の市場関係者はニューヨーク連銀が公表する「基調的な物価指標(UIG)」に注目する。
NY連銀は、UIGは過去に「インフレの転換点を示す正確なシグナルになってきた」としている。
基調的な物価指標(UIG)はNY連銀が発表するUnderlying
Inflation Gaugeのことで、「幅広い価格、実際の経済活動、金融データに含まれる情報からインフレの動きを捉えるもの」である。
https://www.newyorkfed.org/research/policy/underlying-inflation-gauge
2種類の指標を発表している。
“Prices-only” はCPIを構成する価格指標を編集しなおしたもの。
“Full data set” はこれに企業景況感や労働・金融指標などを加え算出する。
Real Variables |
製造業、非製造業の動き(受注、生産、雇用、・・・) |
Labor |
雇用に関する長期間のデータ |
Money |
Money Supplyなど |
Financials |
|
https://www.newyorkfed.org/medialibrary/media/research/policy/underlying_inflation_gauge_uig/uig_data-appendix-to-variables_data.pdf?la=en
“Full data set” UIG
は2017年12月は2.98%と、2006年8月以来の高さにある。
2016年末から急上昇しており、加熱ではないかとさえ思える。
今後はトランプ減税で国内の投資が増加し、逆に移民政策で労働人口が減ると、どうなるか、心配である。
この状況で物価のみが上がらないのは、ニューヨーク大学のNouriel
Roubini教授が論文(The Mystery of the
Missing Inflation )で述べているように、先進国のSupply
Shockによって、既にインフレの新しい正常状態に達しているのかも分からない。
国際決済銀行はこの立場をとっている。「インフレ目標を2%から0%に下げるべきだ」と主張している。永続的な供給ショックを前提にすれば0%が正常なインフレ率であるとする。
それなのに2%を目標とし続ければ、過度な金融緩和でリスク資産の価格を押し上げ、バブルを起こしてしまう。
中央銀行は、次の金融危機を避けるため、早く金融正常化政策をとるべきであるとする。
2017/10/3 The
Mystery of the Missing Inflation (物価上昇が消えた謎)
米国の場合、物価は目標の2%に達していないが、早くも2014年1月から債権買い入れ額を減らし始め、2014年10月末で買い入れを停止した。
2015年12月にはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を
0%〜0.25% から0.25%〜0.50% に引き上げることを決めた。
利上げは約10年ぶりで、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識を示した。
2017年12月には5回目の利上げで、1.25%−1.50%のレンジにすることを決定した。
これに対し、日本銀行はCPI 2% を目指し、先進国で唯一、金融緩和を続けている。
国際決済銀行の立場が正しいなら、いつまでたっても2%は達成できず、金融緩和の悪影響が懸念される。
2018/1/31 サウジのアルワリード王子釈放
サウジアラビア政府は2017年11月4日、11人の王族を含む約50人を汚職などの疑いで逮捕した。その後、逮捕者は増えた。
2017/11/8
サウジ、汚職撲滅を掲げ、王子ら多数を逮捕
これまでに一部は容疑を認め、巨額の資産の没収に応じ、釈放されてきた。
サウジアラビアの司法長官は1月30日、王子や閣僚、大物実業家を対象にした大規模な汚職取り締まりの一環で、これまでに4000億リヤル(約11兆6000億円)を回収したと発表した。
容疑者381人に対する事情聴取を終え、無実が証明された人々のほか、汚職容疑を認めた上で、政府との間で解決金の支払いに合意した者を釈放することを決めたと表明した。また、依然として容疑者56人が拘束下で取り調べを受けていると明らかにした。
過去3か月間近く拘束されていたアルワリード・ビン・タラール(Al-Waleed
bin Talal)王子が1月27日、当局との「調停」合意後に釈放された。
同王子は昨年11月の一斉検挙で拘束された大物実業家や閣僚の中で最も著名な人物で、「アラブのWarren
Buffett」と呼ばれ、投資会社Kingdom
Holding Company の所有者である。
アルワリード・ビン・タラール王子は初代国王アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード(Saud)の息子のタラール王子(Talal
)の息子。
父親のタラール王子は1960年代初めに財務大臣を務めたが、政治改革を主張し、Red
Princeと呼ばれた。王位継承権を放棄して亡命した。
王子は、株式および土地への投資によって富を築いた。資産はおよそ200億米ドルで、世界で8番目、アラブ世界では一番の資産家である。『タイム』誌によって「アラブのWarren
Buffett」と名づけられた。
王子が95%を保有するKingdom
Holdingは、Citigroup、Apple、21st Century Fox、Twitterといった企業の大株主でもある。1991年に不良債権を多く抱え業績不振に陥っていたCiti Bankの株式10%を5億9000万ドルで取得し、救済した。その後、Citi
の経営は持ち直し株価は上昇、王子は高いリターンを得て、次の国際投資へとつなげた。
政治とは一定の距離を置く一方、ムハンマド(Mohammad
bin Salman)皇太子が進める経済改革には好意的な発言を続けていた。
2015年12月、イスラム教徒入国禁止発言をした共和党のTrump大統領候補のアカウントに「おまえは共和党だけでなく全米の恥だ。おまえの勝利はありえないから大統領選から撤退しろ」罵るメッセージをおくり、Trumpから「まぬけ王子」と罵り返されるなど応酬を繰り広げて注目された。
アルワリード王子は他の容疑者と同様、釈放条件となっていた同国政府との金銭的合意に達した後に釈放された。
サウジアラビア政府筋はAFPに「司法長官が今朝、アルワリード王子との調停を承認し」、釈放に向けた条件が整ったと述べた。合意の詳細は公表されていない。
同政府筋は、アルワリード王子には汚職の罪があるとする一方、同王子は現在も Kingdom
Holding Company の所有者かとの質問に対し、「確かにそうだ」と答えている。
Wall Street Journal は昨年12月に、サウジ司法当局が王子に対し釈放の条件として60億ドルを納付するよう要求したと伝えた。
欧米の複数のメディアは当局が拘束者らに対して、巨額の財産を放棄すれば釈放を認めるとの条件を提示していると伝え、一連の拘束を主導するムハンマド皇太子がみずからの権力基盤固めに加えて、経済改革に必要な資金の確保も同時に狙っているとの見方も出ていた。
王子が納付に合意した場合、資金を捻出するため保有する株の一部を売却する可能性もあり、注目が集まった。
王子は「支払えば罪を認めたことになる」として、支払う意思がないと述べたとも伝えられた。
釈放直前、ロイターの取材に応じたアルワリード王子は、60億ドルの「解決金」を要求されたとの報道を「全て誤りだ」と述べ、今後の裁判や一部財産の没収の可能性も否定した。
拘束された理由について「多数の国内外の事業に関わっていたため、状況を説明していた。(汚職などはなく)全て適切だった」と述べた。その他の人々も多くが拘束を解かれたという。
初代サウード国王の息子アブドラ国王の息子で、王室の警備を担う有力軍事組織、国家警備隊の長を2010年から務めていたミテブ王子(Mutaib
bin Abdullah)は2017年11月28日に釈放された。10億ドル余りと考えられる額を支払って決着する合意が成立したという。国家警備相は解任された。
拘束されている王族・元閣僚らのうち、少なくとも他の3人とも決着で合意したという。
本年1月26日には、メディア王と呼ばれるワリード・イブラヒム(Waleed
al-Ibrahim)王子が釈放された。英紙 Financial Timesの同日の報道によれば、当局は同王子に対し、衛星テレビ局アルアラビアを傘下に持つMiddle
East Broadcasting Centerの株式を引き渡すよう命じていた。
ーーー
王子たちの汚職は目に余るものがあり、付加価値税導入や課税に対し、国民から反発を呼ぶ恐れがあった。
Mohammad bin Salman
皇太子主導で設定された2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」では、目標達成手段の一つとして汚職抑制を挙げており、今回の動きはこれに沿ったものとも見える。
「ビジョン2030」:
石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。
公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。
目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。
罰金を国庫に入れることで、国民の負担の軽減にもなる。
さらに、解放の条件として、皇太子への忠誠を求めたという。
サウジは初代サウード国王の後を第二世代が順番に継いできた。
第7代のSalman国王はこの慣行を変更し、2015年4月に第二世代(異母弟)のMuqrin皇太子を解任したが、2017年6月21日に第三世代のムハンマド・ビン・ナエフ皇太子(57)を解任し、自身の子であるムハンマド・ビン・サルマン国防相兼副皇太子(31)を皇太子に昇格させる異例の人事勅令を出した。
2017/6/29
サウジ、副皇太子が皇太子に昇格、副首相に就任、国防相などのポストは継続
今回の逮捕者のなかには、皇太子の対抗勢力になり得るアリワード王子、ミテブ王子のほかにも皇太子と同じ第三世代の王子が数人含まれている。
2017年11月5日、マンスール・ビン・ムクリン王子(Mansour
bin Muqrin)ら8人のサウジ高官が乗ったヘリがイエメン国境近くで墜落し、王子は死亡した。王子は2015年4月に皇太子を解任されたムクリン王子の息子で皇太子と同じ第三世代。国外逃亡を図った際に墜落したと噂される。
サウジ王家の関係は下記の通り。(名前の右の数字は生年) 青字は今回逮捕された王子。赤字は今回死亡。
第一世代 |
第二世代
(* Sudairi Seven) |
第三世代 |
国王 |
皇太子 |
Abdullah 国王指名 |
Salman 国王指名 |
Abdulaziz Ibn Saud |
|
@1932/9-1953/11 |
|
|
Saud
|
1902 |
|
|
A1953/11-1964/11 |
|
|
Faisal
|
1906 |
|
|
B1964/11-1975/3 |
|
|
Nasser |
1911 |
|
|
|
|
|
|
Turki bin Nasser |
1948 |
|
|
|
Khalid
|
1913 |
|
|
C1975/3-1982/6 |
|
|
Fahd * |
1921 |
|
|
D1982/6-2005/8 |
|
|
Abdullah |
1924 |
|
|
E2005/8-2015/1 |
|
|
|
Mutaib bin Abdullah |
1952 |
|
|
|
Talal |
1931 |
|
|
|
|
|
|
Alwaleed bin Talal |
1955 |
|
|
|
Nayef
* |
1934 |
|
|
|
2011/10 -
2012/6 死亡 |
|
|
Muhammad bin Nayef
|
1959 |
|
|
A2015/4 -
2017/6 解任 |
Salman * |
1935 |
|
|
F2015/1- |
2012/6 - 2015/1 国王に |
|
|
Mohammad bin Salman |
1985 |
|
|
B2017/6- |
Muqrin |
1945 |
|
|
|
|
@2015/1 -
2015/4 解任 |
|
Mansour bin-Muqrin |
1974 |
|
|
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