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2019/9/2    サウジアラムコ、東京への上場を再検討

Wall Street Journal(電子版)は8月29日、サウジアラビアの国営石油会社 Saudi Aramco が、2020年以降に実施する新規株式公開(IPO)で東京市場への上場を再検討していると報じた。

Aramco のIPOは世界の有力市場が誘致競争を繰り広げた。

当初、Aramco は2018年下期にも株式の5%を内外市場で公開する予定で、上場する市場(複数)については、New York、London、Tokyo、Hong Kong などが候補として挙がっていた。
その後、国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだとされ、日本は事実上、選択から外れたとみられていた。

しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられた。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

同紙によると、サウジはIPOを国内と国外での2段階で実施することを検討しており、年内にも国内で株式を公開する。2020年か21年に国外市場に上場する予定。

東京が再び候補となったのは、実施を見込んでいたロンドンはBrexitの混乱、香港市場は民衆デモが影響し、魅力が薄れたためである。

ニューヨーク市場は当初、有力上場先として検討対象となったが、米国での訴訟リスクが障壁となっている。

サウジの閣僚とAramco幹部で構成する同社の取締役会が8月の会合で、「Aramcoがいかなる法的措置からも保護される免責特権を与えられない限り」米国での上場は検討しないとの結論に達したとされる。関係筋は、Aramcoに免責特権が与えられることは「完全に不可能ではないが、当然実現し難い」と述べた。

以下の問題がある。

1) テロ支援制裁法

米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立した。

米同時テロに関与した外国政府への損害賠償請求を可能にする法案にオバマ大統領が拒否権を発動したことを受け、米上下院は2016年9月28日、上院は 97対1、下院は 348 対77 の賛成多数で再可決し、拒否権を覆して法案は成立した。

2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

2018年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。

サウジ政府が最大株主になるAramcoは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。

2018/4/6 サウジ政府を被告とする9.11同時多発テロ訴訟、裁判開始へ

2)  気候変動

ニューヨーク市は2018年1月10日、ExxonMobil、Chevron、BP、Shell、ConocoPhillips の5社を提訴すると発表した。
5社が気候変動の一因となっており、過去及び将来ニューヨーク市に財政的負担を強いるとし、港湾保護、上下水設備の改善、気候変動緩和、公共医療活動等に費やす数十億米ドルの補償を求める。

同市はすでに、海面上昇、強大な嵐、気温上昇対策のために200億米ドル以上を費やしている。

3) 石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案

米下院司法委員会は2019年2月7日、石油輸出国機構(OEC)加盟国を反トラスト法違反で提訴することを可能にする「石油生産輸出カルテル禁止(No Oil Producing and Exporting Cartels Act : NOPEC法案)」を全会一致で可決した。同様の法案が上院の財政委員会に提出された。

米国政府がOPEC加盟国をSherman Antitrust Actで訴訟できるというもの。

トランプ米政権の高官はこの時点で、米国の安全保障体制は手頃な価格で手に入るエネルギーに依存しているとした上で、米政府はカルテルを含め、市場をゆがめる慣行を支持しないと表明した。

トランプ氏は大統領就任前の2011年に出版された著書でNOPEC法案を支持する姿勢を示していたが、大統領就任後は支持を表明していない。

 

これに対し、サウジアラビアは、米国がこの法案を通せば、ドル以外の通貨で売却すると警告していることが分かった。サウジ政府はまた、米国のエネルギー政策を担当する高官にもこの警告を伝達したとされる。そうなると、現在のドル体制が崩れ、米国には大打撃となる。

1971年8月15日、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止した。

ニクソンはキッシンジャーをサウジに派遣し、以下の交渉を行わせた。
   ・米はサウジを防衛する。どんな兵器も売る。サウジ王家を未来永劫に保護する。   
   ・見返りに@サウジの石油販売を全てドル建てにする。
        Aサウジの貿易黒字で米国財務省証券を購入する。
  
サウジはこれを受け入れ、1974年に調印された。
その後、OPECの他のメンバーもドル建て取引を採用し、ドルが世界通貨となった。

これが「ペトロダラー」システムで、これまで金との兌換が必要なため、無制限なドル印刷は出来なかったのに対し、ほぼゼロコストでドルを無制限に印刷し、輸入決済に充てることが出来るようになった。

4) このほか、上場会社になると、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出るが、これに対する反発も根強い。

 

当初の候補であったNew York、London、Hong Kong が外れ、東京が候補として再浮上した。


2019/9/3 BP、米アラスカ州の全事業を売却

BPは8月27日、米アラスカ州の全事業を非公開企業のHilcorp Energy Companyに56億ドルで売却することで合意したと発表した。
60年にわたり事業を展開してきた同州から撤退する。

総額56億ドルのうち40億ドルは短期に支払われ、残り16億ドルは分割払いとなる。州や米国の当局の承認を得て、2020年に取引完了を目指す。

この取引は2019年から2020年にかけて100億ドル分を売却するというBPの計画の重要部分である。

売却対象には米国最大のプルドーベイ油田やアラスカ州のTrans Alaska Pipeline System (TAPS)のBP Pipelines (Alaska) Inc の権益が含まれる。

BPの2019年のアラスカでの原油生産量は日量74千バレルである。Prudhoe Bayでの権益は26%で、他にオペレーターではないがMilne Point とPoint Thomson、Liberty project に権益を持っている。
Trans-Alaska Pipeline の権益、その運営会社のAlyeska Pipeline Service Companyの株を所有する。

売却されるのは以下の通り。

  • Upstream oil and gas interests:
    • Prudhoe Bay, 26% (operator BP);
    • Milne Point, 50% (operator Hilcorp);
    • Point Thomson, 32% (operator ExxonMobil).
    • Liberty project, 50% (operator Hilcorp);
    • Non-operating interests in exploration leases in ANWR
  • Midstream pipeline interests:
    • Trans Alaska Pipeline System, 49%;
    • Alyeska Pipeline Service Company, 49%;
    • Point Thomson Export Pipeline, 32%;
    • Milne Point Pipeline, 50%.
  • Other:
    • Prince William Sound Oil Spill Response Corporation,

 

Hilcorp は2012年からアラスカで活動しており、現在、日量75千バレル以上を生産するアラスカで最大のプライベートの石油・ガス会社である。2014年にBPからAlaska North Slopeの4つの油田を買収している。

今回の売却を受け、テキサス州の資産家Jeffery Hildebrandが創業した石油会社Hilcorp は、アラスカ州の原油生産で Conoco-Phillipsに次ぐ2位となる。

同州の原油生産は1980年代後半の全盛期から減少している。

 

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1909年にペルシャ(イラン)で油田が発見され、Anglo Persian Oilが設立された。

1919年にイギリス政府が2/3の株式を取得、1935年に Anglo Iranian Oil に改称、1954年にThe British Petroleum Co Ltd. に改称した。

1969年にBPはアラスカのプルドー湾油田に大きなシェアを確保した。

BPはStandard Oil of Ohio(Sohio)と提携して開発することを決めた。
Sohioがアラスカ油田における権益を取得、BPはSohioの株式25%を取得した。

1987年にBPはSohioの株式100%を取得した。この時点で、イギリス政府がBP株(31.5%)を市場に放出し完全民営化した。

1999年にBPはAmocoと合併し、BP Amoco plc.となり、2000年にはARCOと合併し、社名をBP plc. に変更した。

1970年にAlyeska Pipeline Service Companyが設立され、プルドー湾からアラスカを縦断してバルディーズ港に至る1,287.2km(800miles)の石油パイプラインの建設が始まった。
1974年4月29日に着工、1977年7月20日には最初の石油がプルドー湾を出発し、7月28日にバルディーズに到着、8月1日にタンカーで積み出された。


 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 



2019/9/4   東芝メモリ、台湾の電子部品大手からSSD事業買収

東芝メモリホールディングスは8月30日、台湾電子部品大手の光宝科技(Lite-On)から、記憶装置ソリッドステートドライブ(SSD)の事業を買収すると発表した。買収額は1億6500万ドルで、2020年前半までの買収完了をめざす。

SSDは、半導体メモリをディスクドライブのように扱える補助記憶装置の一種で、メモリにRAMを用いたものと、フラッシュメモリを用いたものに分類される。

東芝メモリの主力製品のNAND型フラッシュメモリーを組み込んだSSDは、データセンター建設による需要増加が見込まれており、買収で既存事業を強化する。

NAND型フラッシュメモリーは最近、市況が悪化しているが、NAND型フラッシュメモリーを組み込んだSSDはメモリー単体で売るよりも採算がよく、東芝メモリも注力分野の一つに位置づけている。

2019/8/15 東芝メモリの4〜6月期、952億円の赤字

Lite-Onは発光ダイオードや半導体部品を主力製品としており、SSD事業の売却を決定した。

 

2018年3QのSSDの世界市場で首位は韓国サムスン電子でシェア33%、2位はWestern Digital(SanDisk / HGST) で12%、3位はIntelで11%、東芝メモリは4位で9%、Lite-onは7位で5%となっている。
(ソース:https://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/1168/315/html/photo001_o.jpg.html

 

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Western Digital は東芝メモリとのJVの相手

1999/10に東芝とSanDiskがNAND型フラッシュメモリ事業に関する提携で基本合意 → JV設立
2016/5 Western Digital によるSanDisk 買収 (現東芝メモリとのJVを継承)

2011/3 日立は100%子会社である Hitachi Global Storage Technologies (現 HGST)をWestern Digitalへ売却すると発表


2019/9/4 英下院、離脱延期法案の審議へ、首相は総選挙を提案 

英議会下院は9月3日、EUからの「合意なき離脱」を防ぐために離脱延期を政府に義務付ける法案の審議に入る動議を、野党などの賛成多数で可決した。

これを受け、ジョンソン首相は国民の信を問う解散総選挙の前倒しを提案した。

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ジョンソン首相は 8月28日、「合意なき離脱」の阻止を狙う英議会内の勢力を封じ込めるため、おきて破りの奇手に出た。

英国議会は7月26日から夏季休会で、次に議会が召集されるのは9月3日である。首相官邸は8月28日、ジョンソン首相がエリザベス女王に9月9日の週から約1カ月間の議会の一時閉会を要請したと発表した。閉会手続きには女王の許可が必要だが、女王はこれを許可し、次の再開日は10月14日となる。

10月14日に議会を再開しても10月17日にはEU首脳会議があり、議会は、議決や議論を行うための時間的余裕がないことになる。

2019/8/30 英ジョンソン政権、異例の議会封じ 

これに対し、労働党など野党は2日、合意なき離脱を阻止する法案をまとめた。
「10月19日までにEUと合意した離脱協定案を英議会で承認できない場合に、首相はEUに2020年1月31日までの離脱延期を求める」ことを柱に据えた。

ジョンソン首相は9月2日の声明で、10月末のEU離脱を阻もうとする「あらゆる動きを容認しない」と語った。そのうえで「ここ数週の間に、EUと離脱条件で合意できる可能性は高まっている」と強調。離脱延期を狙う野党の動きを「自ら英国の立場を弱め、さらなるEUとの交渉を不可能にする」と批判した。

EU側は一貫して、バックストップ条項が含まれる協定は再交渉しないと力説している。

ジョンソン相は8月21日、ベルリンでメルケル独首相と会談した。メルケル首相は、「バックストップ条項」について、30日以内に代替案を策定できるだろうとの見方を示したが、実現可能な計画を提案するのはイギリス次第だと釘を刺した。

これに対しジョンソン首相は、30日という「苛烈な締め切り」は「大歓迎」だと返答。計画策定の責任はイギリスにあることを受け入れた上で、新たな協定締結には「十分な余地がある」と前向きな姿勢を示した。

しかし、現時点で代替案の検討が進んでいる兆しはない。

英下院は3日、野党・労働党などが提出した離脱延期法案(10月19日までに新たな離脱案が通らなければ、離脱日を10月末から2020年1月末に延ばす)を審議入りする動議を賛成328票、反対301票の賛成多数で可決した。 議会進行主導権を政府から議会に移すもの。

英下院の総議席650のうち、投票するのは639で、与党(保守党と民主統一党)は320議席となり、僅か1票差での過半数であったが、9月3日、保守党の Phillip Lee 議員が自由民主党に鞍替えし、保守党は過半数を失った。

今回の動議には与党・保守党の21人が賛成に回った。

この法案は4日にも下院で採決する。ジョンソン首相は動議の成立後、同法案が下院を通過すれば国民の信を問う解散総選挙の前倒しを提案すると述べた。10月14日に選挙日を設定したと報じられた。

英国では議会任期固定法の規定で、解散には下院の3分の2の賛成が必要になる。

最大野党の労働党のコービン党首は2日の演説で「EU離脱問題の解決には総選挙が必要だ」と述べた が、2つの法案がどのように審議されるかなどは不明である。

ーーー

英下院の総議席650のうち、投票するのは639だが、与党(保守党と民主統一党)は320議席となり、僅か1票差での過半数であ った。

9月3日、保守党の Phillip Lee 議員が自由民主党に鞍替えし、保守党は過半数を失った。

議長と副議長(保守1、労働党2)は投票しない。北アイルランドのSinn Fein党(7人)は 女王に忠誠を誓うのを拒否し、議会をボイコット、歳費も受け取らない。

  2019/9/3 投票なし 議決権
保守党 310 1 309
民主統一党 10   10
(与党) (320) (1) (319)
労働党 247 2 245
スコットランド国民党 35   35
自由民主党 14   14
独立党 11   11
独立グループ 5   5
シンフェイン党 7 7 0
ブライドカムリ 4   4
緑の党 1   1
社会民主労働党 0   0
アルスター統一党  0   0
Change UK 5   5
無所属 0    0
議長 1 1 0
合計 650 11 639

 

 


2019/9/5   韓国、韓英FTAをBrexit前に批准へ

韓国産業通商資源部は9月2日、英国のEU離脱期限となる10月末より前に、英国と結んだ2国間FTAの国会での批准同意手続きを終える方針 を明らかにした。

ーーー

韓国とEUは2010年10月6日、自由貿易協定(FTA)の締結で正式署名、2011年7月1日に発効した。

2016年6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。
英国のEUからの離脱交渉は2017年6月19日、ブリュッセルで始まった。

韓国は、英国がEU離脱の交渉を始める前に、早くもEU離脱後の英国との2国間FTA交渉を開始した。両国は、2017年2月に1回目の貿易作業班会議を開き、両国の新しい通商協定を英国のEU離脱と同時に発効させることを目指して協議を始めた。

英国がEUから離脱すれば、英国に輸出される韓国製品に対して適用されていた韓国とEUとのFTAに基づく特恵関税が適用されなくなることから、韓国とEUとのFTAを承継する形で、韓国と英国のFTAを早期に締結すべきと指摘する声が上がっていた。

ーーー

韓国と英国は本年6月にFTA交渉の原則的妥結を宣言し、8月22日にFTA協定文に正式署名した。韓英FTAはBrexit後も従来の韓・EUのFTAと同水準の特恵貿易関係を維持するため、韓国企業は英国のEU離脱による不確実性がなくなり、英国との貿易・投資活動をこれまで通り行える。

アジア諸国のうち英国とFTAを結んだ国は韓国が唯一で、英国が10月末に「合意なき離脱」となった場合、競合国に対する比較優位が期待される。

(英国はこれまでチリ、アイスランド、ノルウェー、スイス、カリブ海諸国、東南部アフリカ市場共同体、イスラエルなど38カ国と13件のFTAを締結しており、アジアでは韓国のみ。)

韓英FTAは出来るだけ韓・EU FTAを引き写したもので、いくつかのテクニカルな修正を加えている。

関税:韓・EU FTAと同じで、工業品は全て、農産品は98%がゼロタリフとなる。双方の輸出品の99%が免税で、自動車と部品は関税なし。

Rule of Origin:3年間に限り、EU27か国の生産品を含む英国製品は英国産として優遇される。(3年の移行期間中にサプライチェーンの修正を行う)

農産品のSafeguard:韓・EU FTAよりもSafeguard発動の数量を減らした。

今回は韓・EU FTA をコピーしたもののため、2年以内に改正協議を始める。


2019/9/5 英下院、EU離脱延期法案を可決、解散案は否決 

既報の通り、英下院は3日、議会進行主導権を政府から議会に移す動議を賛成328票、反対301票の賛成多数で可決し、野党・労働党などが提出した離脱延期法案の審議入りを可能にした。

事前の警告通り、与党保守党はこれに賛成した議員21名を党籍停止した。これにより与党は民主統一党の10名を加えても298名となり、639名(議長らとシンフェイン党の計11名を除く)の47%に減った。


下院は9月4日夜、「合意なき離脱」を阻止する離脱延期法案を賛成327票、反対299票で可決した。

党籍停止者のほか保守党の1名が賛成した。反対には与党のほかは独立党3名、労働党1名であった。

10月19日までに新たな離脱案が通らなければ、離脱日を10月末から2020年1月末に延ばす案で、「何が何でも10月末に離脱する」と主張してきたジョンソン首相にとって大きな打撃となる。

法案は上院に送られる。通常は下院で通った議案は上院でも可決されるが、強硬派が審議を妨害する可能性がある。


続いて、ジョンソン首相がEU離脱の是非を問うための解散総選挙を提案したが、賛成 298、反対 56、棄権285となり、必要な2/3以上の賛成を得られなかった。

賛成は与党の294名、労働党の1名、独立党の1名で、反対は野党の56名。野党の大半は「まず合意なき離脱を阻止する法案が上院で承認されるべきだ」として棄権した。


付記

英議会上院は9月6日、法案を承認した。法案は上下院双方の賛成を得たため、エリザベス女王の裁可を経て、週明け9日にも成立する。

首相は週明けの9日に、4日に議会で一度賛成を得られなかった解散総選挙を議会下院へ再提案する。選挙日は延期をEUに申請するか判断する期日の前の10月15日を想定している。

前回、野党は「まず合意なき離脱を阻止する法案が上院で承認されるべきだ」として棄権したが、上院で承認されたため、条件を満たした。しかし、野党はEU首脳会議(10/17-18) 以前の総選挙阻止で一致したとされる。

       

付記

ジョンソン英首相の弟で閣外相(ビジネス・エネルギー・産業戦略省と教育省の閣外担当相)のJoe Johnson下院議員は9月5日、閣僚 を辞任するとともに、次の選挙には出馬しないと述べた。

「過去数週間、家族に忠誠を誓うのか、それとも国益を選ぶかで身が引き裂かれるほど悩んだ」と述べた。2016年の国民投票では兄とは異なり、EU残留に票を投じた。

英国のAmber Rudd 雇用・年金相は9月7日、ジョンソン政権の閣僚を辞任し、保守党も離党すると表明した。反対派の議員やEUに攻撃的なジョンソン首相の姿勢に反発した。


付記

エリザベス女王は9月9日、EUからの離脱延期を求める野党法案を裁可し、同法は成立した。

 


2019/9/6 東アフリカのLNG計画 

8月31日付の日本経済新聞によると、モザンビークでは2つのプロジェクトが建設中だが、来日したマレイアーネ経済・財務相は、計画中の3つ目のプロジェクトについて「2020年1〜3月にも投資決定をする」と明言した。隣国タンザニアでも開発計画がある。

モザンビークで進む3つのプロジェクトがすべて完成すれば生産能力は年約3150万トンと、18年時点で世界3位の輸出国マレーシア(約2400万トン)を抜く。

モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まった。

モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われている。

全体図

 

1)  モザンビークLNG

三井物産は2008年2月、米国大手独立系石油・ガス開発会社 Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意した。

  現在  
Anadarko (オペレーター) 26.5% ONGCに10% 譲渡
Mitsui E&P 20%  
モザンビーク国営石油会社
ENH Rovuma Área
15%  
ONGC Videsh
  Oil and Natural Gas Corp (インド)
10% Anadarkoより
 (+6%) (Beas Rovuma)
Beas Rovuma Energy Mozambique
(ONGC and state-run Oil India )
10% Videocon より
(ONGC60%、Oil India 40%)
Oil India(インド) ↑   (4%) (Beas Rovuma)
BPRL Ventures Mozambique(インド)Bharat PetroResources Limited (BPRL) 10%  
PTTEP Mozambique Area 1
PTT Exploration & Production (タイ)
8.5%  

注)Occidental Petroleumは2019年8月8日、Anadarkoの買収が完了したと発表した。債務込みで550億ドルとなる。

2019/5/2 Occidental Petroleum、Chevronに対抗し、Anadarkoに再度の買収提案 付記

この鉱区の最大の権益を持ち、オペレーターを務めるAnadarko Petroleumは2012年12月、隣接するArea 4のオペレーターのEni との間で共同開発の覚書を締結したと発表した。両グループは天然ガスの開発は連系はしつつも個別に行なうが、LNG生産設備建設は共同で行うとした。

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発

当初、2018年にも生産を開始する予定であったLNGプラントはその後も着工されていなかった。

このたび、Anadarkoは着工を決定した。

千代田化工建設は2019年6月6日、イタリアSaipem S.p.A.及び 米国McDermott International Inc.と共同で、モザンビーク共和国におけるLNG計画(Anadarkoが主導するエリア1 の共同事業者が計画)EPC(設計・調達・建設工事) 業務を受注したと発表した。

三井物産も6月19日に最終投資決断を行ったと発表した。天然ガスの生産・液化からLNGの輸送までを行う上中流一体型事業で、LNG事業も上記の権益比率で行う。

2024年より年間1,200万トンのLNGを生産する。

2019/6/7 モザンビークLNG 計画スタート

 

2) Coral FLNG(アフリカ地域初の洋上LNGプラント建設プロジェクト)

日揮は2017年6月2日、Technip FMC、サムスン重工業と共同で、Coral FLNG SAがモザンビーク共和国において計画している洋上LNGプラント(FLNG)建設プロジェクトを受注 したと発表した。

Area 4 のCoral ガス田でLNGを生産する。

概要は次の通り。

 Coral FLNG SA 

ENI 50%
CNPC 20%
ENH FLNG 10%
GALP ENERGIA ROVUMA 10%
Korea Gas 10%

 設置場所 モザンビーク共和国沖コーラルガス田(タンザニア国境沿いの沖約50km 水深2,000m)

 FLNGプラント 年産約340万トン

 契約内容 設計、機材調達、建設工事、据付および試運転役務のランプサム契約
      サムスン重工業は、FLNG船体のEPCおよびトップサイドのファブリケーションを担当

3) Rovuma LNG

2018年7月にロブマLNGプロジェクトの第1期開発計画がモザンビーク政府に提出された。

本プロジェクトは、モザンビーク沖合のエリア4鉱区に位置するMambaガス井の天然ガスの生産・液化・販売を行うもので、年産760万トンの液化プラント2基(計 1520万トン)を生産する。

最終投資決定は2019年に行い、2024年の生産開始を予定するとしていたが、今回、経済・財務相は、投資決定は「出資企業間の調整が残っており、現実的にみて2020〜21年になる。早くて20年1〜3月だろう」としている。

Mozambique Rovuma Venture(ExxonMobil 40%, Eni 40%, CNPC 20%)が運営を行い、他のガス田権益者の3社が10%ずつ出資する。

エリア4鉱区にはCoralガス田とMambaガス田があるが、前者で洋上処理するのがCoral FLNGで、後者を陸上で液化するのが本件である。

当初の予定通り、モザンビークLNGと同じ場所で、今回は別々に事業を行う。

付記 

ExxonMobilは日揮、TechnipFMC、Fluor Corp. の企業連合にLNG建設プロジェクトのEPCを発注した。10月8日に明らかにした。
最終投資決定は2020年に行われる。

Area 4 の権益は次のようになる。

  Area 4 ガス田 Coral FLNG Rovuma LNG
Eni Mozambique Rovuma Venture 70%→25% 50% 70%
ExxonMobil 0%→25%
CNPC 0%→20% 20%
ENH (Mozambican government) 10% 10% 10%
Galp (ポルトガル) 10% 10% 10%
Kogas (韓国) 10% 10% 10%
合計 100% 100% 100%

Mozambique Rovuma Ventureの出資比率は、ExxonMobil (40%), Eni (40%), and CNPC (20%)

 

4) タンザニアLNG

タンザニア政府は同国のLNG計画が2022年にも建設開始することを期待している。

ノルウェーのEquinor(旧称 Statoil )が中心で計画しているもので、Shell、ExxonMobil、Ophir Energy(ロンドンに本拠を置く石油およびガスの探査および生産会社)及びPavilion Energy(シンガポールのTemasekのLNG子会社)がTanzania Petroleum Development Corporationと組んで、Lindi地区にLNGプラントの建設を計画している。

LNG能力は年産1000万トン。

 


2019/9/7 島野製作所、アップルとの訴訟で敗訴 

米Appleに部品を供給していた電子部品メーカーの島野製作所が、Appleに独占禁止法違反があったなどとして損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は9月4日、島野側の請求を棄却する判決を言い渡した。


付記 島野製作所は9月17日、請求を棄却した東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。

ーーー

島野製作所は、電源アダプターに使われる「pogo pin」というるコネクタ部分の接触端子の専業メーカーで、2005年からAppleのノートパソコン(Magsafe、Magsafe 2)に接続する電源アダプタ側の端子向けに、単独サプライヤーとして供給してきた。

島野は2012年にApple から増産要求を受け設備投資を実施したが、直後に取引を急減させられた。

島野は取引回復を求めたが、納入価格を半額以下にするよう要求され、さらに納入済みの在庫部品についての値下げ分として約159万ドルのリベート支払を求められた。

島野はいずれの要求にも従ったが、2014年8月にAppleを相手に独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。

@ 独禁法違反等  リベート支払等に関する損害賠償請求(約100億円)

A 特許権侵害   一部のアップル製品についての販売差止及び損害賠償請求(約10億5千万円)

両社の契約には、「係争をアメリカの裁判所で解決する」との規定がある。

東京地裁は2016年2月15日、「係争をアメリカの裁判所で解決することを定めていた両社の合意は、合意が成立する法的条件を満たしておらず無効」と判断、国内で審理することを決めた。

2016/2/20 島野製作所の対アップル訴訟で国際裁判管轄の企業間合意に無効判断 

このうち特許権侵害について、東京地裁は3月17日、島野製作所の請求を棄却する判決を言い渡した。

島野は控訴したが、知的財産高裁は2016年10月26日、特許権の侵害がないとした一審・東京地裁判決を支持、島野製作所の控訴を棄却した。

詳細は 2016/11/3  島野製作所、アップルの特許裁判で敗訴


特許権侵害については、島野の完敗である。 

ーーー

今回、残る独禁法違反についての判決があった。

島野側は2014年8月、Appleが発注を突然停止し、再開の条件として代金減額やリベート支払いを要求したと主張。債務不履行や独禁法違反(優越的地位の乱用)に当たるとして、東京地裁に提訴した。

裁判長は判決で、両社は基本契約で米カリフォルニア州法を準拠法と規定していたと指摘した。(2016年の東京地裁判決では、この合意は無効としたが。)

債務不履行については、州法に基づけばAppleが発注予測として示した数量を注文する義務はないと判断した。
独禁法違反については、原告側が州法に基づく主張や立証をしていないとして「不法行為の成立は認められない」と判断した。

 

島野製作所は「現時点でコメントは控えたい」としている。

 


2019/9/9 EV用電池のCATL、豪州のリチウム資源企業Pilbara Mineralsに出資 

豪州のリチウム資源企業Pilbara Mineralsは9月5日、36.5百万ドルの私募発行が完了したことと、中国・寧徳時代新能源科技(Contemporary Amperex Technology :CATL)に対して55百万豪ドル(持株比率8.5%) の株式発行を行ったことを発表した。鉱山開発や設備の拡張などを急ぐ。

現在の株主は次の通り。

Ganfeng Lithium(需要家:8.2%)、Mineral Resources (鉱山サービス:6.8%)、POSCO(需要家:4.4%)、Vanguard Group(3.5%)、長城汽車(需要家:3.0%)

Pilbara Mineralsは西豪州の Pilbara地区で同社100%で Pilgangoora リチウム・タンタルProject を行っており、世界最大のリチウム原料メーカーの一つ。

Stage 2 ではわずか2億7000万ドルの投資で、現在200万トンの生産を500万トンへ増加する。これにより、リシア輝石6%コンセントレートを年30万トンから80〜85万トンに増やし、タンタルのコンセントレートを年321千ポンドから800千ポンドに増やす。

製品は、Ganfeng Lithium(贛鋒鋰業)、General Lithium江蘇容匯通用鋰業)、長城汽車、 POSCOなどが購入する。

 

Pilbara Minerals は このたび、POSCOとの間で、韓国に年産4万トンのリチウムハイドレートのJVを設立する契約を締結した。Pilbaraは21%を出資する。

POSCOは2018年2月、Pilbara Mineralsから年間3万トンのリチウムを生産できる分量の毎年最大24万トンのリチウム コンセントレートの供給を受ける長期契約を締結した。

同社は同年、アルゼンチンのリチウム塩湖の権益を確保した。

2018/8/31   韓国 POSCO、アルゼンチンのリチウム湖の採掘権を取得
 

 

CATL はEV用電池の世界最大手で、Toyota、BMW、Volkswagen、Hondaなどと良好な関係を持つ。

福建省に本拠を置き、三元系電池(NMC:LiNixMnyCozO2) 電池(N 50%、M 30%、C 20%)を生産している。

同社は2018年7月、独の中部チューリンゲン州に初の海外工場を建設すると発表した。独フォルクスワーゲンや独ダイムラー、仏 PSAなどの欧州メーカーに供給するためで、EV用のリチウムイオン電池の生産を2021年に開始する予定で準備を進めている。

この時点での投資額は2億4千万ユーロであったが、今般、最大18億ユーロまで7倍強に引き上げた。2026年までに100GWh規模の工場を建設する。

 

今回のPilbara Mineralsへの出資で、EV用電池の中核素材であるリチウムの安定調達につなげ、EV市場の世界的な拡大に備える。

CATL はPilbara の増設分のリシア輝石を購入し、増設計画を支援する。

 


2019/9/10   米司法省、カリフォルニア州との環境自主基準巡り ホンダなど4社を調査 

Ford Motors、Honda、BMW、Volkswagen の4社が2019年7月に米カリフォルニア州と合意した排出ガス削減の自主基準について独禁法に違反していないかどうか、米司法省が各社の調査に入ったことが6日、明らかになった。

司法省はこの合意が反トラスト法に違反したかどうかを判断する予備調査として、4社に書簡を送付した。

ーーー

米国では、2011年1月に、2016 Model Year の Light-duty vehicleのCO2排出量を250g/mile、CAFE燃費を35.5 mpg(15.1km/L)とする規制が発効した。

オバマ政権は2012年8月28日、54.5 mpg の燃費規制を正式に発表した。

Combined Cars & Trucks 燃費 mpg

2011/1規制

2012 2013 2014 2015 2016  
30.1 31.1 32.2 33.8 35.5
 

2012/8規制

2020 2021 2022 2023 2024 2025
40.0 41.7 46.8 49.4 52.0 54.5

 

なお、Clean Air ActによりEPAは米国の燃費の基準を決めるが、カリフォルニア州はEPAにより適用除外(waiver)が認められており、連邦政府の燃費規制よりも厳しい基準をを決める権限を与えられている。

また、カリフォルニア州など約10州は、販売台数の一定比率を電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など排出ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)にしなければならないとする「ゼロエミッション車(ZEV)規制」を採用している。


米 EPAと米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は2018年8月2日、オバマ前政権下で定められた2021年以降の基準値を撤回し、新しい基準値を策定すると提案した。

2021〜2026年型車の基準値を2020型車の目標値である37 mpgに据え置く。また、州が独自に定める燃費基準やゼロ・エミッション車(ZEV)規制の廃止も盛り込まれた。2021年モデル(20年発売)の車両から適用する。

2018/8/8 トランプ政権、車燃費基準を撤回

カリフォルニア州等は、連邦政府が州政府の独自燃費基準設定を禁止するようであれば、裁判闘争も辞さない構え。


カリフォルニア州とメーカー4社は2019年7月、2026年まで毎年3.7%ずつ燃費改善を目指す独自の規制で合意した。2026年までに1ガロン当たり平均51マイル以上という州規制を導入する。クレジットの追加による電気自動車(EV)への置き換え支援、排ガス低下技術を導入した企業へのインセンティブ提供、電力生産における上流工程での温室効果ガス排出の要件緩和などを含む。

同州が導入する厳しい独自基準と、連邦政府が提案する緩和ルールの中間に当たる基準で、全米50州での採用をめざしている。

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの排ガス削減効果の計算を見直し、カリフォルニアの規制より達成しやすくなるよう設計した。

カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、全米50州での達成を条件に4社の基準を承認した。全米で基準がそろえば、一部の州で厳格な規制を課すのと同等以上の削減効果が得られると判断した。

Fiat Chrysler Automobilesは、4社の合意内容を前向きに検討中だと明らかにした。GMは燃費基準で米国全体の合意が形成されることを引き続き希望していると述べた。

ホワイトハウスは今回の合意について「どこか1つの州ではなく、連邦政府が基準を定めるべきだ。われわれは全ての国民に利する連邦の基準の取りまとめを進めている」とコメントした。

 

米環境保護局(EPA)と米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が、カリフォルニア州に認めている独自の自動車燃費基準設定の権限を取り消し、州政府による独自の基準設定を阻止する案をホワイトハウスに提出する見通しであることが分かった。関係筋が9月5日に明らかにした。

EPAとNHTSAは、カリフォルニアや他の州政府への対応に関するルールをまず定めた上で、年次の燃費基準の設定を完了する。

ーーー

米司法省は、メーカー4社が独自に燃費基準を申し合わせたことがカルテル行為などに当たるかどうか調べているという。

司法省はこの合意が反トラスト法に違反したかどうかを判断する予備調査として、4社に書簡を送付した。

ホンダは「カリフォルニア州と自動車メーカーとの排出量を巡る合意に関する司法省の調査に協力する」とコメントした。


 

2019/9/10 ダム水面の太陽光パネルが数十枚燃える

   

9月9日午後1時ごろ、市原市で「ソーラーパネルが燃えている」と119番通報があった。

県警市原署や市原市消防局によると、山倉ダムの水面に浮かべられた太陽光パネルが風に流され、折り重なるようにして、少なくとも約50枚が燃えているという。

写真・図版

同消防局では、ソーラーパネルが流され重なるなどの状況から台風の影響とみており原因を調べる。

水上型の太陽光発電設備「山倉水上メガソーラー発電所」で、太陽光パネル約5万1千枚を浮かべる日本最大の水上設置型太陽光発電所である。

山倉水上メガソーラー発電所は、東京センチュリーが81%、京セラが19%出資する京セラTCLソーラー合同会社が運営する。

千葉県水道局が管理する工業用水専用の山倉ダムの水面約18万m2に京セラ製太陽電池モジュール50,904枚を設置し、年間予想発電量は約1,617万kWh(一般家庭約4,970世帯分の年間電力消費量に相当 )。発電した電力は、全量を東京電力エナジーパートナーへ売電する。

2018年3月20日に森田健作・千葉県知事の出席のもと、竣工式を執り行った。


2019/9/11   英でEU離脱延期法が成立、二度目の解散動議も否決

エリザベス女王は9月9日、EUからの離脱延期を求める野党法案を裁可し、同法は成立した。
これにより、10月19日までにEUとの離脱協定案を議会が承認できない場合、政府はEUへの延期申請を義務付けられることになった。

首相はかねて、離脱を延期するなら「死んだほうがまし」としており、この法律に従うかどうかが注目されている。

延期法は首相がEUに送る書簡の文言まで厳密に定めているが、その書簡を書くことや署名を拒否することはあり得る。

EUに延期を申し入れる書簡を送る際に、首相が「私は延期を希望しない」との書簡を添付する案も報じられている。英の延期を認めるには、英以外のEU27カ国の同意が必要だが、EU側に「首相が望んでいない延期に応じる必要はない」と拒否してもらう策である。

奇策としては与党側から内閣不信任案を提出するというのもある。過半数で可決されると解散総選挙となる。


付記

ジョンソン英首相とユンケル欧州委員長は9月16日、ルクセンブルクで会談した。ジョンソン首相は期限の10月31日までにEUを離脱すると改めて言及し、期限の延期は考えていないとも伝えた。

 

英議会下院は9月10日未明、ジョンソン首相が提出した解散総選挙の2回目の動議を退けた。

英議会では同一会期中での同じ内容の提案は議長が認めないが、今回は、1回目の総選挙の動議のあとに上院が離脱延期法を承認し、女王の裁可を経て成立したという状況の変化があったため、 認めた。

英国では議会任期固定法の規定で解散には下院650人の3分の2 (434)の賛成が必要だが、今回は賛成は293にとどまった。 野党議員の大半が「離脱延期が確定したら総選挙に応じる」として棄権した。

前回の9月4日の解散動議は、賛成 298、反対 56、棄権285であった。

  2019/8/2 9/3 9/4 現状

10/10 解散動議

賛成 反対 棄権 不投票
保守党 311 310 289 288 279   6 3
民主統一党 10 10 10 10 10      
(与党) (321) (320) (299) (298) (289)   (6) (3)
労働党 247 247 247 247  

23

222 2
スコットランド国民党 35 35 35 35     35  
自由民主党 13 14 14 17 1

14

1 1
保守党党籍停止     21 32 3

6

31  
独立党 11 11 11
The Independent Group for Change 5 5 5 3
Change UK 5 5 5 5
シンフェイン党 7 7 7 7     7  
ブライドカムリ 4 4 4 4   3   1
緑の党 1 1 1 1     1  
議長 1 1 1 1       1
合計 650 650 650 650 293 46 303 8

議会は9月9日、合意なき離脱となった場合の詳細な対応策について政府に公表を義務付ける動議を 311対302 の賛成多数で可決した。
この動議はまた、長期の議会休会を決定するに至ったやりとりや文書の公表も求めている。

付記 

英政府は9月11日、Brexitの影響について8月2日付でまとめた文書 Operation Yellowhammer を公表した。(yellowhammer は鳥の名前で、財務省には文書にランダムに鳥の名をつける慣行がある。)

合意なしで離脱すれば、英ドーバーでの物流の遅滞、抗議活動の広がり、旅行の混乱が生じ、さらには食料や医薬品、燃料が不足する恐れもあるとする。
北アイルランドに触れた箇所は黒塗りされている。

報道では、アイルランド国境にとって合意なき離脱に伴う取り決めのない状態は持続不可能とか、英領北アイルランドの農産食品に打撃が及び、ヤミ市場が栄え、犯罪組織や反体制派が新たな価格差に乗じようとする可能性が高いなどとしている。

なお、長期の議会休会を決定するに至ったやりとりや文書は公表されていない。

ーーー

同日、John Bercow下院議長が10月31日に辞任すると表明した。政権への抗議を示すものと見られている。

ジョンソン英首相の弟で閣外相(ビジネス・エネルギー・産業戦略省と教育省の閣外担当相)のJoe Johnson下院議員は9月5日、閣僚を辞任するとともに、次の選挙には出馬しないと述べた。 「過去数週間、家族に忠誠を誓うのか、それとも国益を選ぶかで身が引き裂かれるほど悩んだ」と述べた。2016年の国民投票では兄とは異なり、EU残留に票を投じた。

Amber Rudd 雇用・年金相は9月7日、ジョンソン政権の閣僚を辞任し、保守党も離党すると表明した。反対派の議員やEUに攻撃的なジョンソン首相の姿勢に反発した。

 

 


2019/9/12  WTO上級委、 日本製バルブの関税で韓国への是正勧告支持 

世界貿易機関(WTO)の上級委員会は9月10日、韓国による日本製空気圧バルブに対する反ダンピング関税を巡り2018年4月に是正を勧告した紛争処理小委員会(パネル)の判断をおおむね支持すると発表した。

上級委の判断が最終判断となる。

世耕弘成経済産業相は、上級委が「日本の核となる主張」を認めたとの談話を発表。韓国に対し「日本企業に対する不当な措置」を停止するよう求め、韓国が勧告を履行しない場合には、日本にはWTO協定の手続きに従い対抗措置を発動する権利があると述べた 。

ーーー

韓国は2014年2月21日から日本製空気圧伝送用バルブに対するアンチダンピング課税調査を開始した。

これは、圧縮空気を利用して空圧シリンダーなどを伸縮・旋回等させるために、圧縮空気の流れ具合を制御するバルブで、半導体、自動車製造工場などの組立装置や搬送装置などに用いられる。

韓国は2015年1月20日に日本製空気圧伝送用バルブのダンピングによって韓国の国内産業が実質的な損害を受けている旨の最終決定を行い、2015年8月19日から課税を開始した。

11.66〜22.77%のアンチダンピング税が賦課される。期間は5年間。
日本から韓国への輸出額は、年間約91億円(2017年)

これに対し日本政府は、損害や因果関係の認定、調査手続の瑕疵により、アンチダンピング協定に違反する可能性があると考え、2016年3月15日にWTO協定に基づく協議要請を行い、同年4月28日に韓国との協議を実施した。

2017年に紛争処理小委員会(口頭弁論)が開催され、2018年4月12日、WTOはパネル報告書を公表した。本件はアンチダンピング協定に違反すると認定し、韓国に対して措置をアンチダンピング協定に適合させるよう勧告した。

@ 韓国による本件措置の決定は、ダンピング輸出による韓国国内産業への損害・因果関係の認定に瑕疵があり、アンチダンピング協定に整合しない。

A 本件措置は、手続面でも、秘密情報の取り扱いに不備があり、アンチダンピング協定に整合しない。

B 但し、日本側が主張した調査手続きの不備などについては、日本の主張は認められないか、パネルの付託事項の範囲外であるとして、判断しなかった。

韓国政府は上訴、日本も、かかる一部の論点についてWTO上級委員会の判断を仰ぐべく、上訴の申し立てを行った。

ーーー

今回上級委は、日本製バルブは主に精度の高さが重視される半導体製造工程や自動車のエンジン製造工程で使用されているため、一般的に精度の高さが要求されない自動車の塗装工程などに使用されている韓国製バルブとは直接的に競合しないとの日本側の主張を受け入れ、韓国に対し反ダンピング関税措置をWTOの規定に適合させるよう勧告した。

調査手続きの不備の問題についても、上級審はパネルの判断回避は誤りと認定した。

@ ダンピングによる損害を認定する前提として、日本製品の輸入が韓国産バルブの価格低下圧力をもたらしたのか、適切な説明がなく、アンチダンピング協定第3.1条及び第3.2条(ダンピング輸入による価格効果の立証)に違反する。

(ア)日本製バルブは韓国産より高価・高機能であり、そもそも両者の価格が比較可能かどうか、適切な説明がない。
(イ)韓国産より高価な日本製品の輸入が、元々安い韓国製品の価格にさらに低下圧力をもたらすことの説明が不十分。

A 本件措置は、秘密情報の取扱いに不備があり、アンチダンピング協定第6.5条及び第6.5.1条に整合しない。

B 韓国が業界全体を調査せず、アンチダンピング調査を申請した2社のみのデータを「国内産業」と認定した点は、アンチダンピング協定第3.1条及び第4.1条に整合しない。

経産省は本件の意義を次のように述べている。

本件は、韓国の恣意的なアンチダンピング措置の是正を勧告したのみならず、新興国等に多く見られる保護主義的な貿易救済措置の濫用がWTO協定上容認されないことを明確にした点で意義があります。また、パネルによる一部論点の判断回避は誤りであったと明言した点も、信頼性の高い紛争解決制度の維持・改善を主張する我が国の立場に即したものです。


これに対し、
韓国政府は9月11日、「実質的な争点の大部分で協定違反と立証されなかった」との見解を表明した。そのうえで「既存の韓国の勝訴との判定は維持された」と強調している。

二審の上級委員会の判断では9つの実質的な争点のうち6つで一審での勝訴が維持されたと説明している。
日本製バルブによる韓国内の価格への影響立証に関しては韓国が協定違反と判断されたとしている。

輸入関税引き上げの是正を求められた点には触れておらず、今後の対応についても明らかにしていない。

 

付記

これについて、9月12日付の朝鮮日報は次の通り、分析している。

WTOの判定をめぐり、両国がいずれも勝利したと主張したのは、WTO判定の特殊性のせいだ。
WTO判定は有罪か無罪かを判断したり、両国のどちらが「正しい」と簡潔に判断したりはしない。
争点別に各国の主張を細分化し、どちらの主張が妥当なのかを検討する。

同日の判定も韓国は「WTOが13点の争点のうち10点について、韓国の立場を支持した」として、韓国の勝利と受け止めた。日本は「重要な一つの争点で勝訴し、実質的な勝利だ」との立場だ。

日本が勝利したと主張するのは、「日本製バルブがダンピングで国産バルブの価格を下落させたとする韓国側の分析に問題がある」とする日本側の主張が認められたからだ。WTOは一審で韓国を支持したが、今回は「韓国の分析方式は不適切だ」として、日本を支持した。

実際にこうした主張が認められ、関税が見直された例があるため、日本は重要な争点だと主張した。

しかし、専門家は関税を引き下げるかどうかはまだ推移を見守るべきだと主張する。韓国が論理を補強し、WTOを説得すれば、関税を見直さなくてもよいからだ。

 

付記  

世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関(DSB)は9月30日の会合で、日本から輸入されたバルブに韓国が課した反ダンピング関税はWTO協定違反と認めた上級委員会の判断を採択し、日本の勝訴が確定した。

日本は韓国に措置の是正を求める方針だが、韓国が応じるか不透明。

韓国は上記の通り、実質的な争点の大部分で協定違反と立証されなかったとの見解を示しており、勝訴したと主張している。9月30日のDSBの会合で日本は「建設的な対話をする用意がある」との声明を出した一方、韓国は「措置を撤廃すべきだとする日本の提案は受け入れられない」とした。


両国の合意があれば原則、最大15カ月間の猶予が与えられる。この間に是正されなかった場合は、日本は韓国製品に追加関税を課すなどの対抗措置の承認をWTOに要請できる。

本件について韓国の中央日報は以下の通り報じた。

最終報告書が採択されたことを受け、韓国は2004年日本の海苔輸入クォーター制と2006年韓国製DRAM相殺関税賦課、2013年福島周辺水産物禁輸措置など、日本と4回のWTO紛争ですべて勝訴することになった。

政府は今回の紛争解決機構の会議に参加して「上訴機構の判断を歓迎し、紛争解決機構の最終判定採択を支持する」とし「協定不合致だと判定された事案に対しては適切な方法で履行する計画」と明らかにした。

安徳根ソウル大教授は「WTOが韓国側に指摘したのは追加関税の根拠となる説明が不足しているということで、韓国側は正当な根拠を示すことができれば関税を継続できる」という。

ーーー

別途、韓国産業通商資源省は9月11日、日本の韓国に対する半導体材料の輸出管理厳格化措置は不当として、同日に世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。

日本の輸出管理厳格化は「最高裁の強制徴用判決と関連した政治的動機で、わが国を狙った差別的な措置だ」と提訴理由を説明した。

 

 


2019/9/12  英議会閉鎖は違法、スコットランド裁判所 

スコットランドの高等裁判所(Court of Session)は9月11日、議会を長期間にわたり閉鎖したジョンソン首相の措置を違法とする判断を示した。提訴した野党議員らの「非民主的だ」という主張を大筋で認めた。

政府は直ちに上訴する方針を表明。舞台を最高裁に移し、17日にも審理入りする見通し。

ーーー

英国議会は7月26日から夏季休会で、9月3日に再開した。これに先立ち、ジョンソン首相は 8月28日、エリザベス女王に9月9日の週から約1カ月間の議会の一時閉会を要請した。閉会手続きには女王の許可が必要だが、女王はこれを許可した。

10月14日に議会を再開しても10月17日にはEU首脳会議があり、議会は、議決や議論を行うための時間的余裕がないことになる。

2019/8/30 英ジョンソン政権、異例の議会封じ 

これに反対して、各地で訴訟が行われた。

ロンドンの裁判所は、首相が女王に議会の一時閉会を要請したのは"political"なものであり、裁判所が介入するものではないとし、却下した。裁判所が判断する法的基準はないとしている。

 

スコットランドの裁判所は、議会の閉会で首相は法を犯しておらず、首相の行動を判断するのは裁判所ではなく、議員と有権者であるとして却下した。

今回はその控訴審で、スコットランドの高等裁判所の3人の判事は違法とする判断を示した。

3人の判事は一致して、首相は「議会を妨害する不適切な目的」で動き、女王をミスリードして議会を閉会させたとした。

「このため本裁判所は、首相の女王への助言とそれに基づく議会の閉会は違法であり、無効であると宣言する。」

今回の議会閉会は合法的な権力の使用ではなく、議会を妨害する戦術であるとして、一審の判決に同意しないと述べた。

3人の判事の一人は、これは公権力の一般に受け入れられた基準に明らかに合致しないひどいケースであるとした。閉会の目的は、議会の妨害無しに合意なき離脱政策を進めるためのものだと述べた。

他の判事は、政府は閉会のはっきりした理由を示していないとした。政府と首相は議会を制約したいとしていると推測されると述べた。

結論として、首相の女王への閉会の助言は、目的が議会の審議を妨害するためであれば違法であるというもの。議会による政府の審議は英国の憲法の柱であり、民主主義の原則、、法の支配から得られるものであるとしている。

 


2019/9/13  日通、日本発厦門経由欧州向けSEA & RAIL複合輸送サービスを開始

日通は9月1日、中国と欧州を結ぶ鉄道輸送を利用した日本発欧州向けの複合一貫輸送サービス Nex Ocean-Solution China Land Bridgeを販売開始した。

日本の主要港(東京/横浜/名古屋/大阪/神戸/門司)から中国・厦門までの海上輸送と、厦門からポーランドのMałaszewicze(マワシェビチェ)、ドイツのHamburgとDuisburgまでの鉄道輸送を組み合わせたもので、日本の主要港から欧州の各鉄道ターミナルまでのリードタイムは23〜25日となる。欧州までの海上輸送の場合は約40日のため、大幅に短縮され、輸送コストは約40%削減される。

厦門発の列車は毎週水曜と土曜初の2便が定期運航されている。

 

同社では2015年11月から中国欧州間クロスボーダー鉄道輸送サービスを、航空輸送と海上輸送の中間に位置する「第3の輸送モード」として新商品の開発に取り組んでいる。

2018年5月から中国欧州鉄道を利用した2つの日本欧州間複合一貫輸送サービスを実施している。

一つは、海上輸送と鉄道輸送を組み合わせた日本欧州間の複合一貫輸送サービスEurasia Train Direct (Sea & Rail)で、もう一つは、海上輸送とと航空輸送と鉄道輸送を組み合わせたEurasia Train Direct (Air & Rail)である。

 

Eurasia Train Direct (Sea & Rail)は、日本の主要港(東京/横浜/名古屋/大阪/神戸)から中国・大連までの海上輸送と、大連からドイツDuisburgまでの鉄道輸送を組み合わせたもので、日本の主要港から欧州の各鉄道ターミナルまでのリードタイムは23〜25日となる。欧州までの海上輸送の場合は約40日のため、大幅に短縮され、輸送コストは約40%削減される。

Eurasia Train Direct (Air & Rail)は、日本の主要空港(成田/羽田/中部/関空)から中国・重慶までの航空輸送と、重慶からドイツDuisburgまでの鉄道輸送を組み合わせたもの。

貨物量に応じてコンテナ貸切(FCL)サービス、混載輸送(LCL)サービスの利用が可能で、成田空港からDuisburg鉄道ターミナルまでのリードタイムは最短でFCLでは22日、LCLでは24日。

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主席は2013年9月7日、訪問先のカザフスタンの大学での講演会で、「シルクロード経済ベルト」と呼ぶ中央アジア諸国などとの経済協力の構想を明らかにした。

「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る物流の大動脈の整備や、人民元と各国通貨の直接交換取引の拡大を挙げた。
中国と中央アジアのほか、ロシアやインド、パキスタンなども含めた広範な地域を想定しているとみられる。

2013/9/18  中国の習近平主席、「シルクロード経済ベルト」を提唱 

2008年1月に北京とドイツのハンブルグを結ぶ路線が生まれた。

中国鉄道とTrans-Mongolian鉄道、Trans-Siberian 鉄道を使い、中国から蒙古、ロシア、ベラルーシ、ポーランド経由でドイツまでの10,000kmを15日で走る。
(Trans-Mongolian Line は中国の山東省済寧からUlaanbaatar を経由し、Ulan-Ude で Trans-Siberian 鉄道に接続する)

もう一つは重慶とドイツ西部の工業都市 Duisburg を結ぶ貨物鉄道「渝新欧鉄道(Yuxinou Railway)」である。

重慶から北上して西安から今回の義新欧鉄道と同じルートで Duisburgに到るもので、11,179km。
‘Modern Silk Road’ と呼ばれるこのルートは2012年8月に開通した。

中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「義新欧鉄道("Yixinou Railway")」の第1号列車が2014年12月9日、スペインのマドリードに到着した。

義新欧の義は出発点の義烏、新は経由する新疆ウイグル、欧は欧州。

2014/12/13 中国と欧州を結ぶ国際貨物列車の第三路線が開通

 


2019/9/13 欧州中銀、3年半ぶり利下げ、量的緩和再開 

欧州中央銀行(ECB)は9月12日の定例理事会で、利下げや量的緩和の再開を含む包括的な追加金融緩和策の導入を決めた。

ドラギ総裁は記者会見で、米中摩擦、英国のEU離脱に懸念を示し、「ユーロ圏経済の低迷はより長期化する恐れがある」と警戒感をあらわにした。 物価上昇率も目標の2%を大きく下回り、低インフレから抜け出せなくなるとの危機感が広がっている。

1) 「中銀預入金利」

政策金利のうち市中銀行から預け入れられた余剰資金に適用する「中銀預入金利」を現在のマイナス0.4%から過去最低のマイナス0.5%に引き下げる。
ECBは同金利に2014年6月からマイナス金利を導入しているが、さらにマイナス金利の幅を拡大させる。

利下げは2016年3月以来3年半ぶり。米中貿易摩擦の激化などを背景に世界的な景気減速懸念が強まる中、7月末に約10年半ぶりの利下げを実施した米連邦準備制度理事会(FRB)に追随する。

FRBは7月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.25〜2.50%から年2.00〜2.25%に引き下げた。

2019/8/1 FRB、10年半ぶり利下げ、資産縮小も終了
 

2) 量的緩和

昨年末で終了していた量的緩和については、11月から月200億ユーロの資産購入規模で再開する。

欧州中央銀行(ECB)は2018年12月13日、量的緩和策を2018年12月末で終了することを決めた。ユーロ圏の景気が回復を続け、物価上昇も進んでいるためで、既に利上げ局面に入っている米国に続き金融政策の正常化へかじを切った。

量的緩和で購入した資産は計2兆6000億ユーロ。2019年から新規購入はやめるが、満期を迎える保有債券の償還金は再投資に振り向ける。再投資は「長期間続ける」としている。

2018/9/22 欧州中銀、債券買い入れを年末で終了

今回、資産購入を再開する。

 


2019/9/14 米司法省、インドのHindalcoによるアルミ圧延メーカーAleris買収阻止のため訴訟 

米司法省は9月4日、インドのHindalco Industriesの米子会社NovlisによるAlerus買収を阻止するため提訴した。自動車用のアルミシートの値上げを懸念したもの。

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Hindalco Industries は2018年7月、米国の完全子会社のNovelisが米国を拠点とするアルミニウム圧延品メーカーAlerisを25.8億ドルで買収すると発表した。

Hindalco はインドの三大財閥の一角、Aditya Birla Groupの傘下のアルミ製造会社。

Hindalcoは2007年、世界最大手だった米Novelisを60億ドルで買収し、業容を一気に拡大した。

グループ生産能力(年370万トン)の9割を占めるNovelisの売り上げ構成はアルミ缶が61%、自動車が20%、特殊製品が19%。

Alerisは米国を中心に世界に13カ所の生産拠点を持ち、生産能力は年100万トン。自動車向けで米国と欧州、航空機向けはドイツと中国に拠点を持ち、世界の航空機大手と取引する。

Aleris の買収で全体の生産能力は年470万トンと現在より約3割高まり、2位以下を大きく引き離す。

Aleris買収でHindalcoの構成は、自動車が22%に高まり、ビルやトラック向け(8%)、航空機向け(4%)が加わる。

米アルミ大手Alcoa Inc.は2016年に、ボーキサイトやアルミナ、アルミニウムを生産する上流部門と高機能アルミニウム加工製品を製造する下流部門に分社化した。
前者はAlcoaの社名を継承、後者は社名をArconicとした。

Aleris は、Appollo Managementの子会社のOaktree Capital ManagementとSankaty Advisorsが運営する投資ファンドが出資する。

Alerisは、過去数年間に自動車などの事業に約900百万ドルを投資している。中国江蘇省鎮江の工場は、電気自動車 (EV) の需要拡大が見込まれる中国の自動車市場において、アルミシートサプライヤーとしての立場を強化している。また、米ケンタッキー州Lewisport工場では自動車向け投資拡大に着手した。ベルギーDuffelにある自動車工場の技術や製造に関する専門知識を活用する。

航空分野ではAlerisの顧客には米ボーイング、欧州エアバス、カナダのボンバルディアなど大手航空機メーカーが並ぶ。「MRJ」を開発中の三菱重工業とも取引がある。

HindalcoはAlerisの買収で自動車向けを強化し、航空分野への参入も果たす。北米を中心に欧州や中国でも生産拠点を拡充し、自動車、航空分野の需要を取り込む。


Hindalco は今後9〜15カ月での買収完了を目指すとした。

買収後のHindalcoの連結売上高は210億ドル、従業員は4万人。生産能力は年470万トンと現在より約3割増える。


実はAlerisは2016年8月に中国のアルミ成形最大手の中国忠旺控股(China Zhongwang Holdings Ltd.)からの23.3億ドルの買収提案を受け入れた。

しかし、これに米国の連邦議員が反対を表明し、抗議が広がった。最終的に対米外国投資委員会がこれを認めず、両社は2017年11月に買収を取り止めた。

その後、Aleris を保有する投資ファンドは販売先を探していた。

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今回の司法省による反対の理由は以下の通り。

目的は、北米市場での自動車用圧延薄板市場での競争を維持すること。

自動車メーカーはより軽く、より燃料効率のよい大型車の需要を満たすため、ますますアルミのボディシートを必要としているが、買収により北米の4社しかないメーカーの2社が統合する。

競合するサプライヤーの減少は最終的に自動車の需要家を傷つける。

Aleris は “aggressive competitor” であるが、この買収で Novelis は国内の能力の60%を握ることとなる。


Novelis は、計画通り1月21日までの取引成立を目指すことに変わりないとしている。

同社は、司法省はアルミは鉄鋼と競合しており、市場はもっと大きいことを認識していないと述べた。自動車車体シート用では鉄鋼は90%のシェアを占めると主張している。

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本件については、欧州委員会も2019年3月、競争が減り、価格が上がることに懸念を示した。

これに対し、Noverisは本年8月、欧州委員会の懸念に対応した譲歩案を提出した。

内容は明らかにされていないが、欧州委員会はこれについての需要家等の反応をみて、10月7日に結論を出す。


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