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2023/3/1   
公取委、五輪談合で6社、7人を独禁法違反容疑で告発 

公取委は2月28日、東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、電通グループ、博報堂など6社と、各社の担当幹部と大会組織委員会元次長の計7人を独禁法違反容疑で検事総長に刑事告発した。

森元次長と電通など6社の幹部らは2018年2〜7月、組織委が競争入札や随意契約で競技会場ごとに発注するテスト大会や本大会の運営業務について、受注予定業者をあらかじめ決めるなどして競争を制限した疑いが持たれている。

テスト大会の計画立案業務を落札した企業はその後、随意契約の形で同じ競技の本大会の運営業務なども受注しており、公正取引委員会は東京地検特捜部と連携して、各社がより金額が大きい本大会の業務の受注を視野に談合を行っていた疑いがあるとみて実態解明を進めていた。

公取委は、談合の対象となる市場規模は437億円に上ることを明らかにした。

東京地検特捜部はこれを受け、同日、起訴した。

告発した法人は、電通、博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社の「セレスポ」と「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション(FCC)」の計6社。

業務を受注した9社・1共同事業体のうち、広告3位「ADK(アサツー ディ・ケイ)」も談合への関与を認定されたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づいて違反行為を最初に公取委に申告したため告発を免れた。残る広告大手「大広」と電通のグループ企業「電通ライブ」の2社は、談合に関与しなかったとして告発対象から外れた。

個人では、特捜部が今月8日に同容疑で逮捕した組織委大会運営局の元次長・森泰夫(56)、電通の元スポーツ局長補・逸見晃治(55)、セレスポ専務の鎌田義次(59)、FCC専務の藤野昌彦(63)の4容疑者と、在宅で捜査してきた博報堂DYメディアパートナーズの横溝健一郎元スポーツビジネス局長(55)、東急エージェンシーの安田光夫執行役員(60)、セイムトゥーの海野雅生社長(56)の3人の合計7名を告発した。 

公正取引委員会の奥村豪第二特別審査長は「本件は発注者である組織委員会側の容疑者と、広告代理店業界の売上高第1位の電通が主導していた。巨大な国家的プロジェクトである東京2020大会の運営業務などを対象とした入札談合で、社会的な影響が大きい。市場規模も大きく、国民生活に広範な影響を及ぼす悪質かつ重大な事案に該当すると判断した」と述べた。

同罪の法人に対する罰則は5億円以下の罰金。個人は5年以下の懲役か500万円以下の罰金となる。

公取委による刑事告発は、2020年12月の医薬品納入をめぐる入札談合事件以来、約2年2カ月ぶり。

公取委は2020年12月9日、医薬品卸大手4社「地域医療機能推進機構」が全国で運営する57の病院の医薬品入札で談合したとされる事件で、アルフレッサ、東邦薬品、スズケンの3社と、各社の幹部ら7人を、検事総長に告発したと発表した。メディセオも談合に関与していたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)で事前に違反を自主申告しており、告発されなかった。

3社は2021年6月独占禁止法違反の罪で、東京地裁からそれぞれ罰金2億5000万円の有罪判決を受け、公取委からアルフレッサに1億7500万円余り、東邦薬品に1億6100万円余り、スズケンに8600万円余りの課徴金納付命令を受けた。

 


2023/3/2 GX脱炭素電源法案を閣議決定

政府は2月29日、通称 グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法案(「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」)を閣議決定、第211回通常国会に提出した。

「GX実現に向けた基本方針」に基づき、安全確保を大前提とした原子力の活用と再生可能エネルギー最大限導入に向けた方策が柱で、原子力発電の価値を明確化するとともに、東日本大震災以降の停止期間を最大60年の運転期間から除外する。廃炉資金の外部拠出方式も新たに始める。

再エネでは北海道〜本州間の海底直流送電線を念頭に、着工段階で再エネ賦課金が受け取れるようにする。再エネ事業の規律強化も盛り込んだ。

2月10日に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

@エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。
AGXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

GX実現に向けた基本方針

GX実現に向けた基本方針の概要

GX実現に向けた基本方針参考資料

原子力については、下記の通り。

 原子力の活用

安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化する。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。

厳格な安全審査を前提に、40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う。

同法案をめぐっては、原発の60年超の運転を事実上認める改正案に原子力規制委員会の1人が反対を表明、規制委員会の中で意見が割れた状況を踏まえ、岸田首相が国会審議などでしっかり説明できる準備を進めた上で閣議決定を行うよう指示、当初予定より閣議決定が遅れていた。西村経済産業相は、首相の指示を踏まえ、法案内容を国民にしっかり理解してもらえるよう、「国会での議論をはじめ、様々な場で丁寧な説明を行っていく」と語った。


1.法律案の趣旨

2月10日に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づき、
(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進、

(2)安全確保を大前提とした原子力の活用に向けて、関連する下記の法律を改正する。

電気事業法、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)、
原子力基本法、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉規法)、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理法)

2.法律案の概要

(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進

再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(電気事業法・再エネ特措法)

送電線の整備計画を経産大臣が認定
再エネの利用の促進に資するものについては、工事に着手した段階から系統交付金を交付
認定を受けた整備計画に係る送電線の整備に向け、電力広域的運営推進機関から貸付け

既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進(再エネ特措法)

地域共生や円滑な廃棄を前提に、追加投資部分に、既設部分と区別した新たな買取価格を適用する制度を新設

地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(再エネ特措法)

違反事業者に対して支援を一時留保
違反が解消されない場合は支援額の返還命令

(2)安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)

安全を最優先、原子力利用の価値の明確化(安定供給、GXへの貢献等)
国・事業者の責務の明確化(廃炉・最終処分等のバックエンドのプロセル加速化、自主的安全性向上・防災対策等)

高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法

運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的な評価を行う。
その結果に基づき、劣化に関する技術評価、長期施設管理計画作成、原子力規制委員会の認可を受ける。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し → 承認  (委員1名が反対)

原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)

原子炉等規制法の「原子力発電の運転期間は原則40年、最長60年」を削除、電気事業法に下記を追加。

運転期間は40年とし、安定供給確保、GXへの貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善について経産大臣の認可を受けた場合に限り、運転期間の延長を認める。
延長期間は20年を基礎とし、予見し難い事由による停止期間(安全規制に係る制度・運用の変更、仮処分等)による停止期間を考慮した期間に限定。
原子力規制委員会による安全性確認(
原子炉等規制法)が大前提。

注)
原子力規制委員会の管轄の
原子炉等規制法では、「30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的な評価を行い」認可するとだけ記載。
METI所管の電気事業法で、60年超は「予見し難い事由による停止期間」のみ、原子力規制委員会による安全性確認(
原子炉等規制法)を大前提に延長を認めるとした。

円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理法)

使用済燃料再処理機構による全国の廃炉の総合的調整、R&Dや共同調達等の共同実施l,廃炉に必要な資金管理等
原子力事業者に対し、使用済燃料再処理機構への廃炉拠出金の拠出の義務付け


2023/3/3 英・EU、北アイルランド物流規則巡り合意 

スナク英首相とEUのフォンデアライエン欧州委員長は2月27日、英国のEU離脱(Brexit)を巡る争点となってきた英領北アイルランドの物流規則を巡り合意したと発表した。

スナク首相は記者会見で、英国とEU間の「国境という感覚」を排除することで合意したと述べた。離脱協定を一部見直し、北アイルランドでの物流・関税規則を緩和する。

 

ブレグジットに伴い締結された「北アイルランド議定書」は、北アイルランド紛争の再発を避けるため、アイルランドと北アイルランドに厳格な国境管理を設けず、EU単一市場を保護することを目的とし、2021年の発効以来、北アイルランドと英本土間の貿易に支障をきたしていた。

同じ英国内であるにもかかわらず、北アイルランドに入る品物には通関検査が必要となり、英本土との間に経済上の国境が生まれていた。

英は2021年1月にEUを離脱、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関しては、2019年に英とEU間で交わされた「北アイルランド議定書」が発効した。この議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう、税関など国境管理措置を設けないと定められているが、これにより、北アイルランドと残りの英との間にEU法にのっとった税関が必要になっていた。

現在、議定書にのっとって検査や規制が行われており、北アイルランドへ物品を輸入している企業は、追加コストや手続きの煩雑さといった問題に直面している。特に規制の厳しい食品や園芸といった分野で苦労が多いという。

一方で北アイルランドからアイルランドへの輸出では、EU市場への摩擦のないアクセスが維持されているため、食品を含む輸出業者は恩恵を受けている。

英政府は2021年7月21日、北アイルランドで起きている物流などの混乱をおさめるため、英領北アイルランドでの通商ルールについてEUに再交渉を求めると発表したが、EUは再交渉に応じなかった。

2021/7/24    英、EU離脱ルール再交渉を要求、EUは拒否

英政府は2022年6月13日、2019年に欧州連合(EU)と交わしたEU離脱後の通商協定の「北アイルランド議定書」を破棄する計画を発表した。国益を守るために「ほかに道がない」としている。今回の「北アイルランド議定書法案」は今後、英議会で審議・採決される。 (現時点では採決されていない。)

この案では、英本土から北アイルランドに入る貨物の扱いについて、次のように改定する。

北アイルランドにそのまま留まる貨物はグリーンレーンを使い、チェック無し、書類も簡単。

北アイルランドを通ってアイルランドや他のEU諸国に運ばれるものはレッドレーンを使い、北アイルランド港湾でチェックを受ける。

物品検査に関する「不必要な」事務処理をなくし、北アイルランドの企業が英の他の地域の企業と同様の税制優遇措置を受けられるようにする。

また、あらゆる貿易紛争を欧州司法裁判所(ECJ)ではなく、「独立した仲裁」によって解決する。

2022/6/20 英政府、北アイルランド議定書の一部を破棄する法案を発表


今回、英本土から北アイルランドへの品物の輸送に関しては、最終目的地別に品物を分類し、北アイルランドにとどまる商品の通関上の手続きをほぼ廃止する。密輸を防ぐための最低限の検査だけを残す。

北アイルランドを経由してEU加盟国のアイルランドに向かう商品は、英EU間の通常の通関手続きや商品検査を行う。

実質的には、上記の英国政府案と余り変わらないように見える。

合意が受け入れられれば、新しい変更点は今後数年間で段階的に導入されることになる。議会採決は全ての政党が検討する時間を持った後に行われる。

 

英・EUの合意を受け、英政府は、北アイルランドの物流規則の一方的な変更を目指したアイルランド議定書変更に向けた法案を前進させないと明らかにした。さらに、EUは英国に対する全ての法的措置を撤回するとした。

北アイルランドの親英派の最大政党、民主統一党のドナルドソン党首は英・EU間の合意について「特筆すべき進展」と評価しつつも、党としての決定は急がないとし「経済の特定の分野において、EUの法律が北アイルランドでも適用されるという事実を覆すことはできない」と述べた。

 


2023/3/6 テスラ、メキシコに新工場

米電気自動車(EV)大手テスラは3月1日に開いた投資家向けの説明会で、メキシコに新たな工場を建設する方針を発表した。

メキシコのロペスオブラドール大統領が前日の2月28日、テスラがメキシコ北部のMonterreyに新工場を建設すると発表した が、これを確認した。

米南部テキサス州と国境を接しており、テスラが進出するとされる場所は国境まで車で3〜4時間の距離にある。

テスラの新EV工場はカリフォルニア州Fremont、テキサス州Austin、中国・上海、ドイツ・ベルリン に続く、海外3箇所目、世界で5箇所目の自動車生産工場となる。(ほかに、電池工場のNevada Gigafactory でEVトラック「Semi」を生産している。)

EVの生産コスト半減に向けて開発中の次世代プラットホーム(車台)に対応し、米国などへの輸出拠点とする。

主要部品ごとに塗装や内装を施してから完成車に組み立てる新たなプラットホームを採用する。車載電池や駆動装置など主要部品の生産自動化も推し進め、EV1台当たりの製造コストを従来の半分以下に抑えることを目指すという。

投資額や生産開始時期は明らかにしていない。メキシコ政府高官によると投資額は50億ドルを超える見通し。

同社は2030年までに年間2千万台のEVを生産する目標を掲げており、Elon Musc CEOは「全ての工場で生産を拡大していく」と強調した。グローバル生産責任者に就任したTom Zhu氏は、テスラの全世界の年間生産能力が200万台になったと明らかにした。

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Tesla の既存工場は下記の通り。

1) Fremont, California

 Model S、Model 3、Model X、Model Y 生産

 GMが利用していた工場を2010年に取得し、規模を拡大して2012年からModel Sの生産を開始した。

2) Gigafactory Texas (Austin, TX)   2022年4月7日開所式

 Model Y 生産、将来 Cybertruck を生産予定

3) Gigafactory Shanghai

 Model 3、Model Y 生産

2018/7/14   Teslaが上海にEV工場建設へ

2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始

4) Gigafactory Berlin - Brandenburg  2022/3/22 開所式

  Model Y 生産  将来は電池なども生産

 

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Gigafactory Nevada   電池工場  EVトラック「Semi」も生産

2017/1/11    Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資  単独投資

 

Gigafactory New York 太陽光発電

パナソニックとテスラは2016年12月に同工場での共同生産を発表し、2017年夏からバッファロー工場での太陽電池セルとモジュールの生産を 開始した。テスラは2016年8月にSolarCityを買収し太陽光発電事業に参入しており、米国ネバダ州の「ギガファクトリー」における電気自動車用電池の生産と同様、太陽電池でも両社による共同展開を狙いとしていた。

しかし、パナソニックは2020年2月26日、Teslaと共同で運営していた米国バッファロー工場での太陽電池セルおよびモジュールの生産を2020年5月までに停止し、2020年9月に撤退すると発表した。

 


2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式 

ホンダとLG Energy Solution のEV用リチウムイオンバッテリーの生産合弁会社であるL-H Battery Company, Inc.は2月28日、米国オハイオ州Jeffersonville の工場建設予定地で鍬入れ式を行い、工場の建設に着工した。

新工場は年間生産能力40GWhで、2024年末までの建設完了を目指す。その後、2025年中に北米で生産・販売されるEV用にポーチ型バッテリーセルとモジュールの量産を開始し、全量を北米にあるHondaの四輪車生産工場へ供給する。約2,200人の雇用を創出する 。

 

本田技研工業と韓国のLG Energy Solution は2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcura(プレミアム・ブランド)のEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意したと発表した。
韓国のバッテリー・メーカーが日本の完成車メーカーと合弁するのは今回が初めて。

新たな合弁会社は2022年中に設立される予定で、出資比率はLGが51%、ホンダが49%とされる。

両社は総額約44億USドルを投資し、米国に生産工場を建設する。今後、建設地の確定を経て、2023年初頭に着工し、2025年中の量産開始を予定している。

両社は、急速に成長する北米の電動化市場において、タイムリーで安定的にバッテリーを現地調達することが重要との共通認識に基づき、今回の合意に至った。韓国バッテリーメーカーが日本の完成車メーカーと合弁会社を設立する最初の事例となる。

2022/9/2 ホンダとLG Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意

両社は2023年1月13日、EV用リチウムイオンバッテリー生産の合弁会社を正式に設立したと発表した。

社名:L-H Battery Company, Inc.
所在地:オハイオ州Jeffersonville
資本金:2億1千万USドル(出資比率:LGES 51%、Honda 49%)

年間生産能力:40GWh

2024年末までの建設完了を目指す。その後、2025年中に北米で生産販売されるEV用にリチウムイオンバッテリーの量産を開始し、全量をHondaの北米工場へ供給する予定。
 

LG Chemは2023年2月17日、ノースカロライナ州に本社を置く鉱山会社Piedmont Lithiumとの間で計20万トン規模のリチウム精鉱“SC6” (含有量6%のリチウムを含むリシア輝石) 購買契約を締結した発表した。

Piedmont LithiumはカナダQuebecの鉱山から出るリチウム精鉱を今年3四半期から年間5万トンずつ4年間、LG化学に供給する。 これはリチウム約3万トンを抽出できる量で、高性能電気自動車約50万台相当の規模である。

韓国電池素材メーカーの中で北米産リチウムを確保したのはLG化学が初めてで、北米産リチウム精鉱を使えば、米政府のインフレ削減法(IRA)による税制優遇基準(新車購入税控除、電池製造の先進製造業生産控除を満たす。

2023/2/20     LG Chem、北米産リチウム精鉱購買契約を締結

 

LG の拠点

2023/2/24 Ford、トルコでの電池JVの相手をSKからLGに変更



2023/3/8     原子力規制委、北陸電力志賀原発の敷地断層「活断層でない」と判断、再稼働には多くの問題

北陸電力の志賀原発2号機の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会は3月3日、敷地内の断層は活断層ではないとする北陸電力の主張を妥当と判断した。

2016年に規制委の有識者調査団によって「活動性を否定できない」とされた判断を転換した。

 

原発の耐震設計指針では、12万〜13万年前以降に動いた断層を活断層と定義し、その上には原発を建てないことになっている。

規制委は陸地にある6本と、海岸や海辺にある4本の計10本を調べた。敷地内には原子炉から約200メートルの位置に「福浦断層」という、議論の余地のない活断層も見つかっている。

2016年の調査では、1号機の原子炉直下を通る「S-1断層」は、有識者調査団が「12万〜13万年前以降の活動が否定できない」と結論づけた。また、同1・2号機タービン建屋直下のS-2、S-6 断層も地層に変形を生じた可能性を否定できないとしている。

当時、結論を導くため評価に用いられたのは、「上載(じょうさい)地層法」という手法であった。

地面は、各時代に堆積した粘土や砂が層状に積もって地層を形成している。この手法では、断層のある場所を掘削して断面を観察し、断層の上に堆積している約12万〜13万年前以降に堆積した地層にずれや変形があれば、活断層と判断する。

しかし、志賀原発では、建設工事の時に上部の地層がほとんどはぎ取られていた。そこでS-1断層も1号機の南東側の端に試掘溝を掘って断面を確認したが、ここでは活動性は確認されなかった。

そこで、有識者調査団は1号機の建設前に原子炉建屋すぐ西側の位置で掘られた試掘溝の断面を描いた1枚のスケッチを基に「活動を否定できない」とした。さらに、S-1 だけでなく、その近くを通って2号機の冷却用配管の直下に続く「S-2、S-6 断層」も「活動した可能性がある」と結論付けられた。

1号機建設前に国と専門家は同様のスケッチを見ているが、「波による浸食」という北陸電力の主張を認め、建設を許可した。スケッチで描かれた地層は建設工事によって削り取られている。

 

@のところで安山岩が大きな食い違いを見せている。その上のB砂礫U層は12〜13万年前に形成されたことが分かっており、Aの礫がずれていることからも、12〜13万年以降にずれが生じたことが分かるという。

この有識者調査団の報告書は、より正確・確実に評価するにはデータを拡充する必要があるとも指摘していた。この時、指摘した手法の一つが「鉱物脈法」である。

ボーリング調査で断層が通る岩石を採取し、顕微鏡で観察する。岩石の中にある鉱物脈が、断層によって切断されたり、ずれたりしていなければ、鉱物脈が生成されるより前にできた断層ということになる。

北陸電力は、評価対象となった10の断層についてボーリング調査を実施し、約600万年前にできた鉱物脈が断層によって動いていないとするデータを2020年7月に初めて提示した。規制委は、2021年と22年の2度にわたって現地調査をした。

規制委の石渡委員は3月3日の審査会合で「有識者調査団の報告書にはデータが決定的に不足しているとコメントがついていた。その時点では鉱物脈法のデータが全く出ていなかったが、その後に膨大なデータが出され、将来活動する断層ではないと判断できる証拠が得られた。敷地の地質・地質構造についておおむね妥当な検討がなされていると評価する」と述べた。

この結果、16年の有識者調査団の判断は覆された。

一方、今回の規制委の判断について東京学芸大の藤本教授は「上載地層法は広い範囲を見るのに対し、鉱物脈法は薄片という非常にピンポイントな情報を集める。鉱物脈法はあくまで他の手法は使えない場合のみ使うもので、二つを並列に扱うのはどうか」と疑問点を指摘した。加えて「敷地内の断層が活断層ではないとされても、(周辺にもある)断層に関する審査は続くので、慎重に進めてほしい」と述べた。

 

敷地内断層の議論は決着したが、敷地の東側を南北に走る「福浦断層」は原発から約1.3キロしか離れておらず、基準地震動を策定するのに必要な地質構造の審査が続いている。規制委が確認した現地の状況と、北陸電が提出した資料で違っている点があり、北陸電に説明を求めている。

敷地外の断層で起きる可能性のある地震についての議論が続くほか、建屋の耐震・対津波性能の評価、設備面での事故対策の審査などが残っている。再稼働できるかどうかの見通しは立っていない。


2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 

韓国の朴振外相は3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化

朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した。「これが最後の機会だと思う」と強調した。小渕恵三首相と金大中大統領による1998年の日韓共同宣言を「発展的に継承する」と言及した。

日本側には「日本政府の包括的な謝罪、日本企業の自発的な寄与で呼応することを期待する」と求めた。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)による共同事業を念頭に「両国の経済界の自発的な寄与を検討中と聞いている。日本政府も反対しないという立場と理解している」と明らかにした。

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新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業とを相手取った3件が韓国最高裁で判決が確定している。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で日本製鉄の上告を棄却(原告の請求認容、当社敗訴)した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり 1億ウオン(約1000万円)の賠償を命じたソウル高裁判決が確定した。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPOSCO-NIPPON STEEL RHF JV の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業の上告を棄却し、同社に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の商標権2件と、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち 発電技術特許などの特許権6件の差し押さえを決定した。

韓国大法院は2022年8月にも三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令を確定させる予定であったが、(恐らく韓国政府の介入で)最終判断をしないまま、現在に至っている。

 

日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。

第一条 日本が韓国に対して無償3億ドル(生産物、役務を10年にわたり供給)、有償2億ドル(長期低利の貸付)を供与する

第二条
 1 両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む) の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が,1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。 (中略)

 3 2の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業は、日本政府の見解をもとに、支払いに応じていない。

それに対し、大法院判決は「請求権協定は植民地支配の不法性を前提としていないから不法性を前提とする損害賠償請求権は協定の対象外であり、成立する」という論理を展開している。

日本は、植民地支配の不法性を否定、大韓帝国は1910年8月の韓国併合条約によって大日本帝国に合法的に併合され、植民地となったとしてきた。

日本の外交上の立場と韓国司法の判断が相反し、関係悪化の要因となっていた。

なお、中国については状況が異なる。

三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と中国人元労働者側の2016年6月の和解合意に基づき、「歴史・人権・平和」基金を通じて、2022年10月までに元労働者側の1290世帯に1億2900万元(約25億円)の「謝罪金」が支払われた。

サンフランシスコ平和条約では、連合国の日本への戦後補償請求権は放棄されることとなった。放棄された「請求権」の主体は個人も含む。しかし、当時、中華民国、中華人民共和国いずれを中国とするのか国際的に定まっていなかったため、中国(中華民国と中華人民共和国)は同会議に招請されず、上記放棄条項を批准していない。

中国については、1972年9月の日中共同声明で、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としているが、個人の請求権の扱いについては触れていない。

中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判では、日本の最高裁が2007年4月、裁判上の個人の請求権は日中共同声明により失われたとしながらも、「個人の実体的な請求権までは消滅していない」と判断、「被害者らの苦痛は極めて大きく、西松建設を含む関係者に被害救済の努力が期待される」として日本政府や企業による被害の回復に向けた自主的解決の期待を表明した。その後、2010年4月に西松建設は被害者らと正式に和解、謝罪し、記念碑を建立、和解金を支払っている。

2022/11/30 三菱マテリアル、中国人元労働者側に「謝罪金」計25億円支払い

 

韓国の文在寅前政権は日本との交渉に動かず、現金化に向けた司法手続きが進んだ。日本側は現金化されれば国交正常化の前提が崩れ、関係修復が困難になると警鐘を鳴らしてきた。

尹錫悦現政権は2022年5月の発足後、日本との外交対立を避けながら補償を進める解決策づくりに取り組んだ。同年11月に岸田文雄首相と正式な首脳会談を3年ぶりに開き、早期解決で一致した。

韓国外務省は2023年1月、公開討論会で今回の案を有力案として示し、原告の説得を続けている。韓国政府は原告の納得を広げるため、一連の交渉の過程で日本に「誠意ある呼応」を求めた。過去の植民地支配や侵略に対する「反省とおわび」の表明や、日本企業による自発的な寄付を求めて交渉してきた。

林芳正外相は3月6日、韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策について、「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」と述べた。

「日韓共同宣言を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と強調した。日本政府は資金を出さないものの、過去の政権が表明した「反省とおわび」を継承する。

日本企業による自発的な寄付活動については「政府は特段の立場を取らない」と語り、容認する姿勢を示した。聯合ニュースによると、被告の日本企業が加盟する経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会(全経連)は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

 

今回の韓国政府案で問題がすべて解決するかどうかは疑問である。

最大野党の「共に民主党」の代表は発表について、「外交史上最大の恥辱だ」と述べた。

被害者の支援団体と原告代理人は、「韓国の行政部が日本の加害企業の司法的な責任を免責するもの」と批判した。勝訴が確定した3件の訴訟の原告のうち、存命中の3人はいずれも解決策に反対しているという。 解決策に同意しない被害者は、被告の日本企業の韓国内資産を売却する現金化を引き続き進める方針を明らかにした。 

日韓両政府が2015年に結んだ慰安婦合意では、日本が基金を設立して、「最終的かつ不可逆的な解決」で一致をみたが、元慰安婦の支援団体が反対したままで、前政権が合意の欠陥を訴え基金を解散した。 

自民党の一部議員は、韓国側の解決策について、政府は反対の立場を取るべきだと主張している。敗訴した日本企業の賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりするのを受容すれば、日本政府は朝鮮半島の人々を強制労働させたという話に乗ることになるとしている。徴用はごく一部で、それ以外は応募して働いていたとしている。

 

日本政府は2019年7月、安全保障上の懸念が拭えないとして半導体材料3品目で輸出管理を強化。翌月には、貿易管理手続きを簡素化する「ホワイト国」から韓国を除外した。

2019/7/3  政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表

これに対し、韓国は徴用工問題を巡る報復措置だと強く反発し、撤回を求めている。

岸田首相は3月6日午前の参院予算委員会で、韓国に対する半導体素材などの輸出規制について「労働者(元徴用工)問題とは別の議論だ。日韓当局間の政策対話が困難な状況になっている。韓国側に適切な対応を求めていく」と述べた。


 

2023/3/10    旭化成、リチウムイオン電池のセパレーター生産の米子会社Polyporeで減損損失 1,850 億円を計上

旭化成は3月8日、2023 年3月期通期の連結業績予想を修正すると発表した。

リチウムイオン電池のセパレーター生産の米子会社Polyporeで減損損失 1,850 億円を計上、株主帰属当期純損益をこれまでの700億円の利益から、1050億円の損失に修正した。

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旭化成は2015年2月23日、米国のバッテリーセパレータメーカーのPolypore International, Inc.を約22億ドルで買収すると発表した。8月26日に買収を完了した。

Polyporeは車載用途を中心に強みを持ち、グローバルな供給体制と高度な製品開発力を有する企業である。

Polypore買収により、下記の効果が期待できるとした。

1) 車載用途を中心に強みをもつPolypore社との共同研究開発、相互技術提供等を通じて、多様な分野で用いられるより革新的な製品開発を実現する

旭化成 リチウムイオン二次電池用湿式セパレータ「ハイポア™」 スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン用
Polypore リチウムイオン二次電池用乾式セパレータ「Celgard™」 電気自動車用
鉛蓄電池用のセパレータ「Daramic™」 自動車や産業向け用途等で広く普及

2) 車載用途を含め、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用セパレータ事業で、より幅広い製品・技術の提供が可能になる。

3) 中長期にわたって安定的な収益貢献が期待できる鉛蓄電池用セパレータ市場への参入を果たす。

4) Polyporeのグローバルな製品供給体制及び販売網等の活用によって、「ハイポア」のグローバル展開の一層の加速を図る。

買収により、セパレーター世界首位の旭化成は現状で35%のシェアを約50%に引き上げ、2位の東レを引き離す。

2015/2/26 旭化成、米電池素材会社Polypore International を買収   

旭化成は、同社の買収後、環境対応車等の車載用途の需要が高まると想定されていたリチウムイオン電池用乾式セパレータ「セルガード」、幅広い用途で安定的な需要が見込める鉛蓄電池用セパレータ「ダラミック」と、電子機器等の民生用途で成長していたリチウムイオン電池用湿式セパレータ「ハイポア」事業と共に、一体のバッテリーセパレータ事業として運営してきた。

セパレータはLIBの正極・負極間に位置する多孔質膜で、正極・負極間でリチウムイオンを透過させる機能を有するとともに、正極と負極の接触を遮断し、ショートを防止する部材である。

PPを主原料として製造工程で溶剤を使用しない乾式法と、PEを主原料として製造工程で可塑剤・溶剤を使用する湿式法の2つの製法がある。

グループの能力は、2021年度に湿式膜が約10億m2/年、乾式膜が約5.5億m2/年、合計約15.5億m2/年となった。

しかし、Polypore 買収後、車載市場の状況が大きく変わった。

車載LIB市場は湿式+塗工が主流となった。ハイポアは需要が拡大、逆にCelgardは需要が低迷した。

なお、鉛蓄電池用の湿式セパレータ「Daramic™」は原料コスト高で収益が伸び悩んだ。

これに伴い、日向工場の能力を拡大し、2023年度上期に2工場の生産能力を13.5億m2/年とし、電気自動車(EV)など向けの需要拡大に対応する。

 

ハイポア事業とPolypore事業をそれぞれ独立運営するよう転換することとした。

なお、米国ではインフレ抑制法」で自動車用電池の生産が増えるが、北米地域に存在するセパレータの量産工場はPolyporeのCelgardのみであり、旭化成にとって大きな事業機会のある市場となる。

して、Polyporeの減損テストを実施した結果、買収時の広義の「のれん」(買収関連無形固定資産を含む)相当の1850億円を減損損失に計上した。

 

付記  ディールラボによると、2021年のセパレータのシェアは下図の通り。(日本メーカーの製法は他ソースから)


2023/3/13   米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始


米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。

申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

今回、米政府は補助金支給の条件を明らかにした。

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米議会下院は2022年2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

国内の半導体生産支援に約520億ドルを充てる。半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発のための施設・装置の建設・拡充などを財政支援する。

上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決 

しかし、上下両院の法案の調整に手間取った。

バイデン米大統領は2022年7月25日、経済安全保障の観点から半導体の国内生産を補助金で後押しする超党派の法案について、「議会は一刻も早く通過させなければならない」と述べた。大統領は半導体供給に関するオンライン会合を開き、「米国は半導体で世界をリードする必要がある」と強調、巨額補助金をつぎ込んで国産半導体の育成を加速させる中国に対抗する構えを見せた。

台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ州の120億ドルの設備、Intel のオハイオ州の200億ドルの設備など、これの対象となる新設備は補助金を前提に既に着工されている。

2022/7/27    バイデン大統領、半導体法案の早期成立訴え 
米上院は2022年7月27日、国内半導体産業向けの527億ドルの補助金を含む「The CHIPS and Science Act of 2022」(CHIPSプラス法)を64対33の賛成多数で可決した。

国内半導体メーカーやその声を受けたバイデン政権からの強い後押しがあり、通商条項などを削除したかたちで上院可決に至った

下院は翌28日、これを可決した。バイデン大統領は8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPSプラス法」案に署名し、同法が成立した。

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決 

バイデン政権はCHIPSプラス法を活用して、2030年までに次の事項を達成する。

  • 先端ロジック半導体の工場を中心とした新たな大規模クラスターを少なくとも2つ形成する。
  • 複数の先端パッケージング施設を開設し、同技術の世界のリーダーとなる。
  • 経済的に競争力あるかたちで、先端のメモリー半導体を製造する。
  • 自動車や医療機器、防衛装備品に搭載されるレガシー半導体の製造能力を増強する。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
                      うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

ーーー

今回、米政府は半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始するにあたり、そのための条件を明らかにした。

申請者は次の6点を説明する。
 (1)経済や国家安全保障への影響 (最重要)
 (2)商業的な実行可能性
 (3)財政面での強靭性
 (4)技術的な実現可能性と即応性
 core underlying technology and manufacturing processes の詳細を含む( 技術が米企業に漏れる懸念)
 (5)労働力の開発
 (6)幅広い影響(米国半導体産業への将来的な影響など)

全ての受益者に課される条件:

 1. 自社株買いへの資金利用が禁止

「補助金は、米国の国家安全保障に対する投資であり、企業が自社の利益を増やすためのものではない」

 2. 懸念国(中国)での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないことを商務省と合意する必要(安全保障上のガードレールと呼ばれる条項)

「CHIPS法の補助金を受領する企業は、受け取ってから10年の間、懸念される外国において、自社の半導体生産能力を拡充することが制限されるという契約を締結しなければならない」

1億5,000万ドルを超える直接の資金援助の受益者に課される条件:

 1. 施設の従業員や建設労働者に対して安価で質の高い児童ケアを提供する計画の提出

 2. 政府と合意した収益見込みを超えたキャッシュフローの一部を政府に償還(“Upside Sharing” of a portion of “excess profits” with the U.S. government)

事業が大成功であった場合、申請書に記載した額を超える部分(最大は補助金の額の75%)を政府に償還

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特に問題なのは、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件である。

2021/11/26 サムスン電子、米テキサス州に半導体工場新設  

2022/1/31  インテル、米に世界最大級の半導体工場新設

サムスン電子はNAND型フラッシュメモリーの40%、SKハイニックスはDRAMの40%とNAND型フラッシュメモリーの20%を中国で生産している。サムスン電子とSKハイニックスはこれまでに中国に合計で68兆ウォン(約7兆800億円)を投資した。 (サムスンが33兆ウォン、SKが35兆ウォン)

現在、サムスンは西安で128層NAND型フラッシュメモリー、SKハイニックスは無錫と大連でそれぞれ10ナノメートル台後半のDRAMと96・144層のNAND型フラッシュメモリーを生産している が、「先端製造プロセスへの転換が不可能になれば、サムスン電子とSKハイニックスが中国で生産する半導体は来年から20%程度減る」とされる。

特にSKハイニックスはインテルから買収したNAND型フラッシュメモリーの大連工場が問題となる。インテルに昨年、買収代金の第1期分として70億ドルを支払い、2025年に残る20億ドルを支払うことになっているが、工場をアップグレードできない場合、相当な被害を受けることになる。

2020/10/22  SK Hynix、IntelのNAND事業買収

韓国では、1986年の日米半導体協定を通して米政府が日本の半導体産業を押さえ込んだ経緯を踏まえ、米政府の手段を選ばぬ自国中心の産業保護策に警戒感を抱いている。レモンド長官が「最先端の半導体企業にとって米国が研究開発と量産において存在感を持つ唯一の国になることを望んでいる」と述べたことも簡単に聞き流せない発言でもあるとしている。

Intel が米政府による対中制裁方針を事前に察知して大連工場を売却したのではないかという「Intel 陰謀論」も出ている。

 

付記

米商務省は3月21日、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件の詳細を発表した。 (この時点では仮案)

     懸念国=中国、ロシア、イラン、北朝鮮

  • 最新鋭設備の禁止:10万ドル以上で、生産能力を5%以上増やすもの。違反すれば資金援助全額取り消し。
  • 最新鋭でない旧式設備であっても、新設または10%以上の増設の禁止

  https://www.commerce.gov/news/press-releases/2023/03/commerce-department-outlines-proposed-national-security-guardrails

付記

 

韓国の受け止め:(朝鮮日報)

中国への大規模投資は難しいが、韓米政府の緊密な協議を通じ、規定の細部はかなり緩和されたと受け止められている。

米政府による半導体補助金を受け取る企業は中国国内の工場で生産能力を今後10年間に5%以内で拡張することが可能。
また、先端製造プロセスの半導体ではなく旧式プロセスの場合、既存工場の生産能力拡張を10年間で10%まで認める。
旧式プロセスは28ナノメートル以上のシステム半導体、128層未満のNAND型フラッシュメモリー、18ナノメートルを超えるDRAMを意味する。さらに、生産量の85%以上が中国の内需市場で消費される場合には、10%以上の設備投資、工場新設も可能になる。

当初の懸念とは異なり、規制はかなり緩和された。ただ、米政府の補助金を受け取る企業は中国企業との技術共同研究などが制限される。

先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、ひとまず10年間は中国工場を安定して稼働できることになった。

韓国政府はこれまで「米国が過度に韓国半導体メーカーの中国国内での設備投資を制限すれば、中国半導体メーカーの利益になる」と主張してきた。スマートフォン、パソコン、テレビなどの家電類を生産する中国で韓国メーカーの半導体競争力が損ねられると、その部分が中国の半導体メーカーに取って代わられ、結局は米国を脅かすことになるとの考え方だ。

韓国政府が京畿道竜仁市に世界最大規模の半導体クラスター構築に乗り出したことも、米政府の態度変化に影響を与えたと分析されている。半導体業界関係者は「米政府がサムスンを過度に締めつければ、200兆ウォンを超える対米投資を再検討することもありうるというメッセージを送った。竜仁半導体クラスター構築計画が米中両国を圧迫するカードになった」と指摘した。


2023/3/14 韓国LGグループ創業家のお家騒動

韓国LGグループ具光謨会長の義理の母と妹2人が2月28日、ソウルの裁判所にLGグループの具本茂前会長の2018年5月の逝去に伴う相続の取り消しを求める訴えを行った。

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LGグループの具本茂前会長は2018年5月20日に死去した。73歳だった。具会長は3代目で、LGを20年余りでテクノロジーおよび化学分野の世界的企業に育て上げた。

グループの持ち株会社・LGは6月29日、臨時株主総会で具光謨・LG電子常務を取締役に選任し、総会後の取締役会で代表取締役会長に選出した。

具光謨氏は具本茂会長の弟の具本綾氏の長男で、事故で息子を亡くした具本茂氏が2004年に養子に迎えた。 初代以降、長男がグループの会長を引き継ぐことになっており、後継者として養子に迎えた。
グループの中核会社・LG電子で常務として、B2B(企業間取引)事業本部の Information Display事業部長を務めていた。

2018/7/7 韓国のLG、具光謨氏が4代目の会長就任 


今回、訴訟を行ったのは具本茂前会長の妻の金英植と長女と次女の3人。

具本茂前会長はLG Groupの株の11.28%を所有していた。

逝去に伴い、具光謨現会長はこのうちの8.76%を相続し、保有の 6.24株と合わせ15%とし、最大株主となった。現在の持株は15.95%である。

長女が2.01%(3300億ウオン相当)、次女が0.51%(830億ウオン相当)を相続した。妻の金英植は株は相続していない。

LGによると、数回の交渉の結果、妻と2人の娘は上記のLG株式のほか不動産や美術品など合計5000億ウォン相当の遺産を相続した。(1ウオンは約0.1円)

遺産総額は2兆ウオンとされ、現会長はそのうち1兆5000億ウオン、他3人が合計5000億ウオンを相続したとみられる。

現会長は、相続税7200億ウオンを6年分割で支払っており、最終分を本年末に支払う。(全体の相続税は9215億ウォン)

2020年10月に死去したサムスン電子の李健熙前会長の相続税は12兆ウォンである。

ーーー

今回、3人は遺産を法律に基づき遺産の再配分を求める訴訟を起こした。訴訟の理由については明らかでない。

韓国では下記による相続が可能である。

1. 指定分割 遺言書による分割
2. 協議分割 相続人全員で協議
3. 調停分割 家庭裁判所の調停
4. 審判分割 裁判官による決定

韓国の相続法では相続者は下記のとおりとなっている。

第一順位 配偶者と直系卑属   配偶者は常に他の相続人より1.5倍 
第二順位 配偶者と直系尊属  直系卑属のいない場合
  直系卑属、直系尊属がいない場合は全額を配偶者が相続 する。
第三順位 兄弟姉妹 配偶者も直系卑属、尊属もなしの場合  
第四順位 四親等内親族    

韓国紙は、原告が「養子は相続権無し」としていると報じているが、これは誤りで、養子も相続権を持つ。

相続法に基づけば、相続人は配偶者と子供3人(養子1、実子2)のため、配偶者が3/9、子供3人は各2/9 となる。

今回、3人は相続法の規定どおりの遺産相続を要求したとみられる。

これによると、グループ株式(11.28%)も配偶者に3.76%分、娘2人にも各2.51%分が相続され 、養子の現会長の相続は2.51%分にとどまることになる。

亡くなった具本茂前会長は、長子相続の原則維持のために養子を迎え入れたのであり、当然、LGの株式を養子に譲る遺言書を残したと思われる。

しかし、この場合、配偶者と娘2人は遺留分の請求ができる。

配偶者と直系卑属の遺留分は相続財産の1/2であり、これにより、配偶者は全体の1/6、娘2人は各1/9ずつ権利を持つ。

グループ株式(11.28%)も配偶者に1.88%分、娘2人にも各1.25%分が相続される。相続税の支払いのため売却されることも考えられる。


LGグループではグループの会長は具一族の長子が相続することとしており、後継者はグループ企業の株式の最大株主である必要がある。

このため、グループとして3人と5ヶ月にわたって交渉を重ね、上記の案(協議分割)で合意を得たと思われる。

 

LGでは、「相続が完了して4年も経った今、なぜこんなことを言い出したのか理解できない。LGグループの伝統と経営権をゆるがす試みは我慢できない」と述べた。

法的に認められた協議分割に合意し、相続財産分割協議書に署名し、既に4年も経ち、3年の除斥期間も過ぎているため、裁判所が取り上げることはないと思われる。

但し、協議の過程で錯誤・強要・詐欺のような契約無効、取り消しの理由があったとすれば、除斥期間が過ぎても合意無効・取り消しを主張することができるとなっており、除斥期間が過ぎた後も相続回復請求訴訟を認めた前例があるという。

 


 

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