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サムスン経済研究所 CEO Information 2006.02.24

2006年の中国の10大トレンド

 

2006年の中国の10大トレンド
 1. 持続可能な安定成長の模索
 2. 金融市場の構造改革と開放の本格化
 3. 人民元の小幅な切り上げ
 4. 独自のR&D能力の向上(自主創新)
 5. 多国籍企業の中国事業の戦略の変化
 6. M&Aの急増
 7. 第3世代移動通信事業者の選定
 8. 米中関係のかっ藤の持続の可能性
 9. 二極化による疎外階層の不満の表出
10. インターネットの普及に伴う社会の変化

[ サマリー]
 中国経済は、ソフトランディングを予想した多くの研究機関の予測とは裏腹に、2005年にも9.9%の高成長と1000億ドル以上の貿易黒字を記録した。しかし、中国は、高成長の裏に
過剰な投資に伴う産業間の不均衡、企業の不健全化などの後遺症に直面している。また、貧富の格差の拡大による二極化の問題も深刻化している。さらに、先進国の対中貿易の赤字が急増し、通商摩擦が激化しているのが現状である。
 このような問題に直面した中国政府は、2006年から稼動する第11次5ヵ年計画の目標を、
量より経済成長の質の向上とし、「持続可能な安定成長」を模索している。特に、既存のように輸出と投資に依存した成長パターンから脱し、内需とサービス産業がリードする成長パターンへと転換を図っている。中国は、米国からの人民元の大幅な切り上げ圧力に直面するとみられる。しかし、「人民元は3〜5%台の小幅な切り上げ」にとどまるとみられる。これは、人権問題やエネルギーの確保などとともに、「米中関係の葛藤の持続性」を高める主因になると思われる。
 2006年は、中国のWTO加盟後、猶予されてきた金融市場の開放に踏み切る年になると予想される。「金融市場の開放の本格化」によって金融産業の改革が促進され、金融市場が拡大するプラスの効果がある一方、外国の金融機関の参入によって競争が激化するとみられる。また、中国政府が技術の確保に向けて、戦略を「
独自のR&D能力の向上(自主創新)」に転換させたことを受け、中国のハイテク技術分野のキャッチアップが加速化し、自国技術の優先主義が台頭するとみられる。
 機会の側面からの2006年の最大の関心事は、「第3世代移動通信事業者の選定」である。技術標準や事業者の選定が完了し、通信と関連市場が大きく拡大し、通信機器やサービスなどの分野において、中国での事業拡大の好機が提供されるとみられる。また、「中国のM&A市場の拡大」は、有数の国営企業のM&Aによって中国への進出を拡大できるため、新たな機会になるとみられる。巨大市場としての中国の重要性が浮上し、現地化の戦略を強化する「多国籍企業の中国事業戦略の変化」もあらわれている。
 「二極化による疎外階層の不満の噴出」が背景となった農民と都市貧民の集団デモは、すぐにはなくならないとみられる。所得の二極化は、短期間で解決できる問題ではないからである。しかし、デモが組織化されたものではないだけに、深刻な政治・社会の危機にはつながらないとみられる。一方、ディスカッションの拡散、ブログブームなど「インターネットの普及に伴う社会変化」によって、インターネットの社会的な影響力は一層増大するとみられる。