2004/4/1 東レ
中期経営課題“プロジェクトNT-II”
先端材料の東レ−活力ある高収益企業グループを目指す−
http://www.toray.co.jp/ir/nt_2/html/nt2_a001.html
「21世紀の新しい東レへの転換」を図るための経営改革プログラム“プロジェクトNew TORAY 21(NT21)”がスタートして2年が経過しました。この間、東レグループ全社員の危機意識の共有とそれに基づく意識改革・ベクトル合わせが進み、グループ全体の進むべき方向が明確となりました。その結果、業績も上向き、全社員が一丸となってNT21の改革を確実に実行すれば必ず成果となって現れるとの自信が蘇ってきました。東レグループ全体が総力を結集して努力を重ねた成果として、当社の連結営業利益は2002年度330億円、2003年度見通し560億円と、NT21の当初3年間の収益改善目標を1年前倒しで達成できる見通しとなりました。
NT21における7つの改革プロジェクト、すなわち「営業改革」「トータルコスト競争力強化(TCプロジェクト)」「グローバル生産改革(GRプロジェクト)」「事業構造のリエンジニアリング(CSプロジェクト)」「財務体質強化(FKプロジェクト)」「研究改革」「賃金制度・年金制度改革」による抜本的体質強化は計画を上回る成果を上げ、その結果、赤字事業・赤字会社の黒字化・削減などの事業構造改革も進展しました。これらによって、NT21の長期の展望として掲げた高収益事業構造への転換に向けて、新たなステージに進む基盤ができたといえます。そこで、NT21は本年3月末で区切りをつけ、4月以降、NT21の成果を踏まえての第2ステージとして、活力ある高収益企業グループを目指す中期経営課題“プロジェクトNT−II(NT−II)”をスタートさせることとします。
NT-IIの基本思想
NT21では、抜本的体質強化を直近の重点施策と位置付け、2001年度の危機的状況から早期に脱却し、高収益企業として再生するための基盤を構築することを目指しました。すなわち、NT21は「危機意識の共有化をベースにした抜本的体質強化による収益の早期改善」を基本思想とした改革(“体質強化・守りの経営”)と位置付けることができます。
これに対してNT−IIは、NT21の成果を踏まえ、思い切った事業構造改革によって高収益事業構造への転換を図り、優良企業にふさわしい利益を安定的に出せる企業グループに飛躍することを目指します。つまり、NT−IIは、「恒常的な企業体質強化と更なる事業構造改革による高収益企業グループへの飛躍」を基本思想とした改革(“攻めの経営”)です。
この目標達成に向けて軸となるべき牽引力は、ひとつは品種別利益管理の徹底などによる既存事業全体の収益拡大であり、もうひとつは、当社が長年の歴史の中で築き上げてた、当社の誇るべき貴重な資産である右図の3つの事業群を徹底的に拡大・強化することです。
以上の既存事業全体の収益拡大と3事業群の拡大・強化によって利益重視の経営を徹底すると共に、これと併行して安全・防災・環境保全を最優先の経営課題とし、企業倫理、法令遵守の取り組みをはじめとしたCSR(Corporate
Social Responsibility;企業の社会的責任)を積極的に推進します。
NT-IIの主要課題
上記基本思想の下で、2004年度の連結営業利益700億円の達成、更に、連結営業利益1,000億円の早期達成に向けて、NT−IIの骨格となる主要課題を次のように設定しました。
NT-IIの主要課題 | ||
意識改革・ 企業体質強化 |
“守り”の 経営課題 |
1.
意識改革 −活性化、CSRの推進− ● 意識改革の深化 ● 人財の質的向上 ● CSRの重視等 2. 体質強化 −国際競争力の強化− ● トータルコスト削減 ● 生産力強化等 3. 経営形態の改革 ● 経営システムの改革等 |
事業構造改革 による 事業拡大・ 収益拡大 |
“守り”と “攻め”の 経営課題 |
4.
事業構造改革 ● 営業改革 ● 関係会社の整理・統合・再編、戦略的なアライアンス・M&Aの推進 ● 赤字事業・赤字会社の黒字化・削減 ● 品種別利益管理の徹底 ● “New Value Creator”の推進 ● “TOREX”ブランドの戦略的展開 |
“攻め”の 経営課題 |
5.
先端材料事業の拡大 ● 先端材料事業への経営資源の傾斜配分等 6. ナンバーOne事業の拡大・強化 7. 海外事業の収益拡大 ● アセアン事業の収益力強化 ● 中・韓事業の拡大 ● 欧米事業の収益拡大 |
↓
グローバルな高収益企業グループへの飛躍
連結営業利益 1,000億円の早期達成
事業拡大・収益拡大に向けての課題
NT-IIの主要課題のうち、事業拡大・収益拡大に向けての主な課題は次の通りです。
品種別利益管理の徹底
先端材料事業の拡大
ナンバーOne事業の拡大・強化
海外事業の収益拡大
“New Value Creator”の推進
品種別利益管理の徹底
以下を目標とした品種別利益改善運動(HKプロジェクト)を推進し、赤字品種の徹底した黒字化・削減を進めると共に高採算品種の拡大を図ります。
品種別利益改善運動(HKプロジェクト)の推進 | ||||||
|
先端材料事業の拡大
有機合成化学、高分子化学、バイオケミストリーといった当社のコア技術をベースに開発した先端材料を、成長3領域(情報・通信、ライフサイエンス、環境・安全・アメニティー)を中心とした産業・用途に継続的に供給し収益向上を図ります。連結営業利益1,000億円達成のためには、先端材料事業の売上高を4,300億円程度、連結営業利益を550億円程度に引き上げることが必要であり、これを実現するため、先端材料事業への経営資源の傾斜配分を行います。設備投資については、当面、東レ単体で全体の60%程度、連結ベースで50%程度を先端材料事業に投入し、これらによって「先端材料の東レ」へ事業構造を転換していきます。
先端材料事業拡大プロジェクト
●経営資源の傾斜的配分(設備投資額:単体の60%、連結の50%)
●IT関連材料の早期拡大(フィルム・電子材料)
●複合材料事業の収益拡大
●環境関連事業の早期拡大
●新規先端材料の早期事業化
ナンバーOne事業の拡大・強化
当社グループには、ポリエステル・綿混織物、人工皮革スエード、ポリエステルフィルム、炭素繊維複合材料などの世界でトップシェアを持つ約30のナンバーOne事業があり、その売上高は約2,800億円と、連結売上高全体の1/4強を占めています。また、売上高営業利益率は13%と高収益を上げており、連結営業利益の約2/3を生み出しています。当社グループの強みを生かして展開しているこれらの事業を更に拡大・強化することによって、収益拡大を実現していきます。
ナンバーOne事業
事業名 | 04/3月期推定
世界シェア |
|
繊維 |
ポリエステル綿混織物 |
30% |
裏地用タフタ |
21% |
|
スエード調人工皮革 |
32% |
|
漁網用ナイロン長繊維 |
21% |
|
フッ素繊維 |
39% |
|
縫糸用ポリエステル短繊維 |
28% |
|
ポリエステル・レーヨン混織物 |
12% |
|
プラスチック |
PETフィルム |
19% |
コンデンサ用OPPフィルム |
14% |
|
パラ系アラミドフィルム |
90% |
|
PPSフィルム |
100% |
|
プロテクト用PE系フィルム |
43% |
|
ケミカル |
DMSO |
44% |
複材 |
炭素繊維複合材料 |
37% |
医薬・医療 |
敗血症治療用血液浄化器 |
100% |
電情材 |
フィルムキャリアテープ |
81% |
感光性樹脂凸版 |
37% |
|
液晶材 |
LCDスピンレスコーター(G5サイズ〜) |
75% |
TEK |
液晶パネルチップ実装装置 |
40% |
液晶パネル二次元コードマーキング装置 |
70% |
|
その他 |
11事業 |
+ |
合計(31事業) |
04/3月期業績 |
+ |
海外事業の収益拡大
世界18カ国・地域、83社に達する当社海外事業について、事業構造改革を推進し収益基盤を強化すると共に、新規事業展開により更なる事業拡大を図ります。海外統括会社を設立したインドネシア、タイ、マレーシアのアセアン3国や中国、更にはIT関連産業の成長が大きい韓国などアジアにおける事業拡大・収益拡大を推進します。また、欧米地域でも体質強化と事業構造改革によって収益拡大を実現していきます。
収益拡大のためのポイント | |
アセアン | インドネシア:「手の内にある改善」により収益体質を確立。新素材・新商品の開発・拡大と高付加価値品へのシフト。 |
タイ:産業用繊維・樹脂事業は、自動車用途を戦略領域と位置付け、経営資源を集中。 | |
マレーシア:樹脂・フィルム事業は、汎用品種の競争力強化と高付加価値品へシフトを図る。ポリエステル綿混織物事業は、HQとして高付加価値型へシフト。 | |
中国 : | TSDは500万m/月から750万m/月に増設。 TFNLはポリエステル長繊維の特品化を進めつつ、ナイロン長繊維事業を立ち上げ、収益改善を図る |
韓国 | TSIは04年にポリプロピレンスパンボンドを増設、電材事業を本格化。 STEMCOは04年にTAB加工設備を増強。05年には、新工場を立ち上げる。 |
収益拡大のためのポイント | |
欧州 : | SOFICARは増設による増販。 Alcantara、TTEL、TPEuは収益改善を継続推進。 |
米国 | TPAは包装・工業材料の付加価値品の拡販。 CFA、TCAは航空機用途を中心に増設・増販へ。 |
*為替レート:04/3実績 116円/ドル、05/3見通し 105円/ドル
“New Value Creator”の推進
NT21において、単に「もの」の生産・販売を行う「20世紀型メーカー」の事業形態を改め、「もの」に幅広い知恵やノウハウを織り込み、お客様の問題解決を果たす新素材・新商品を開発し、新商流を開拓することによって新たに価値を創造する「21世紀型New Value Creator」の推進を図りました。NT−IIでは、これをより一層強力に推進し、研究・技術・生産・販売が一体となった新素材・新商品の開発、新商流の開拓を更に加速することによって、収益力の向上につなげていきます。
“TOREX”ブランドの戦略的展開
世界的な過剰生産状況に打ち勝ち、事業拡大・収益拡大を図るためには、上記の課題に加えて、ブランド戦略の確立が重要です。そのため、“TOREX”を当社の高品質・高品位、先端材料を象徴する総合ブランドとして設定し、グローバルなブランド戦略を展開していきます。当社の総合的な経営資源に裏打ちされたプレステージブランドとして“TOREX”を強力に訴求し、展開していくことで、高収益企業としての発展を目指します。
NT-IIで推進するプロジェクト
東レグループが横断的に取り組むべき課題で、特に重要なものについてはプロジェクト体制を組んで進めます。NT21で推進した7つの改革プロジェクトは、基本的には2003年度をもって終結させますが、営業改革・TCプロジェクト・FKプロジェクト及び各プロジェクトの一部のテーマについては、NT−IIの個別プロジェクト(下表)の中で引き続き推進していきます。
経営課題 | プロジェクト | 取り組むべき主要テーマ |
意識改革・ 企業体質強化 : |
1.
活性化 (ACTプロジェクト) |
コミュニケーション・情報共有化の強化、若手優秀人材の抜擢、 女性が活躍できる企業文化の確立等 |
2.
2004年度: トータルコスト競争力 (TCプロジェクト) |
TC-3の確実な実行 (削減目標:150億円) |
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2005年度以降: 自助努力改善 (JDプロジェクト) |
徹底的な効率化による収益改善、業務効率化による 経費削減 |
|
3.
財務体質強化 (FK-IIプロジェクト) |
先端材料事業への投資拡大と財務体質強化の両立、 D/Eレシオ1.0以下の早期達成 |
|
4.
営業改革 (営業改革プロジェクト) : |
営業の意識改革、“New
Value Creator”の推進 在庫半減(ZHプロジェクト)、ワンストップ・トータル・ サービス機能拡大等 |
|
事業構造改革 による 事業拡大・ 収益拡大 |
5.
品種別利益改善 (HKプロジェクト) |
粗利赤品種の撲滅、3年間で粗利率5%以上の改善、 売上高営業費比率の維持・低減 |
6.
先端材料事業拡大 (SZプロジェクト) |
新規先端材料の早期事業化、研究開発機能の強化、 既存先端材料の拡大、知的財産力の強化 |
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7.
ナンバー1、オンリー1、 ファースト1事業拡大 (ナンバー1プロジェクト) |
ナンバーOne事業への経営資源の傾斜投入、 社員の意識高揚(自信、プライドの喚起)等 |
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8.
海外事業の収益拡大 (KPプロジェクト) |
アセアン事業の収益力強化、中国・韓国事業の拡大 欧米事業の収益拡大 |
はじめに
このNT−IIによる改革は、NT21の改革を継承しつつ進化させるものであり、引き続き東レグループの全社員が一丸となって取り組まなければなりません。そして、このNT−IIを成し遂げることによって、東レグループは21世紀に輝きをもって飛翔するグローバルな高収益企業グループとして発展できるものと確信します。