Japan Economic Newswire October 8, 2004           東邦発表

Japanese Companies Settle U.S. Suit Over Carbon Fiber Price Fixing

Toray Industries Inc. and Toho Tenax Co. have reached agreement with U.S. plaintiffs in a class action lawsuit over alleged price fixing of their carbon fiber products.


平成16年10月8日 東邦テナックス株式会社

米国における連邦集団訴訟の和解および業績予想修正に関するお知らせ
http://www.tohotenax.com/tenax/pdf/us_jp_041008.pdf

 当社および米国子会社トーホウ・カーボン・ファイバーズ社(以下、TCF社)は、カリフォルニア州連邦地裁に提訴された炭素繊維等の価格談合についての連邦集団訴訟において下記のとおり原告と和解することで合意いたしましたので、お知らせいたします。

訴訟の経緯
 1993年から1999年までの米国における炭素繊維販売に関する価格談合容疑でTCF社は1999年1月、米国司法省による立ち入り調査を受けました。これを機に当社およびTCF社を含む日米の炭素繊維等販売会社に対し、
損害賠償訴訟(民事訴訟)が提起され、1999年10月5日、連邦地裁はこれらを集団訴訟と認定する決定をいたしました。
 上記嫌疑に対し、当社およびTCF社は一貫して「価格談合の事実はない。」と主張してきましたが、本年7月、公判前の証拠開示手続が終了いたしました。その後9月下旬、当社およびTCF社は原告との和解交渉に入りました。
 なお、
米国司法省は2004年1月に価格談合容疑に対する捜査終結および立件見送りを宣言しております。

2. 和解の内容
 当社およびTCF社は連帯して原告に775万jを支払うことで合意いたしました

3. 和解に応じた理由
 当社およびTCF社は原告の主張する価格談合容疑を一切認めておりませんが、このまま本集団訴訟を継続する場合の費用負担、陪審裁判により敗訴判決を受けるリスクなどを考慮し、本和解に応じることとしました。

4. 今後の見通し
 本和解は、裁判所の承認を条件とします。
 また、当社および当社グループは従前より法令遵守に努めておりますが、2004年2月、新たにコンプライアンス委員会を設置いたしました。今後、社内啓蒙活動を通して不正行為の疑いを掛けられる様な行為の防止をさらに徹底してまいります。

5. TCF社の概要
商号 Toho Carbon Fibers,Inc.
本店所在地 カリフォルニア州メンロパーク
代表者氏名 会長青山年宏(東邦テナックス鰹務取締役)
株主 東邦テナックス鰍P00%子会社

6. 業績予想の修正 略


Lieff, Cabraser, Heimann & Bernstein, LLP

Carbon Fiber Price-Fixing Antitrust Litigation
http://www.lieffcabraser.com/carbon_fiber.htm

Lieff, Cabraser, Heimann & Bernstein, LLP, along with its co-counsel, filed a class action suit on August 6, 1999 on behalf of direct purchasers of carbon fiber. The case alleges that the eleven defendants fixed the price of carbon fiber sold throughout the United States from January, 1993 to the present.
The suit, entitled Highland Injection Molding, Inc. v. Amoco Polymers, Inc., et al., is pending in the United States District Court for the Central District of California. The suit alleges that the major United States manufacturers and distributors of carbon fiber, Amoco Polymers, Inc., Cytec Fiberite, Inc., Cytec Industries, Inc., Grafil, Inc., Hexcel Corp., Mitsubishi Rayon Company Ltd., Newport Adhesives and Composites, Inc.,
Toho Carbon Fibers, Inc., Toho Rayon Company, Ltd., Toray Composites (America), Inc., and Toray Industries, Inc. conspired to raise, fix, and maintain artificially high prices of carbon fiber in violation of the federal Sherman Antitrust Act.
The complaint requests an award of treble damages to be distributed to all class members for the increased prices that the members of the class have been forced to pay for carbon fiber. Lieff, Cabraser, along with their co-counsel, including the law firms of Kendrick, Bonas & Nutley, and Cohen, Milstein, Hausfeld & Toll, brought the class action on behalf of the named plaintiff and all United States direct carbon fiber purchasers.
Carbon fiber is a form of graphite. It is normally made from an acrylic fiber called polyacrylonitrile (or PAN) that is carbonized through exposure to extreme heat. Carbon fiber is primarily used to reinforce other materials, such as resins. Sheets of resin that are pre-impregnated with carbon fibers are called "pre-pegs." The resulting composites are very strong for their weight, making an ideal material for airplane and spacecraft parts, for certain industrial equipment, and for sporting equipment such as tennis rackets, fishing rods, and golf clubs. Carbon fibers can be woven into industrial fabrics, or wound into filaments.


読売オンライン 2002322

東邦テナックス司法妨害事件、元取締役ら2人関与か

 繊維メーカー大手「東邦テナックス」(本社・東京)が反トラスト法違反の捜査に絡む司法妨害(捜査妨害)の罪で米連邦大陪審に起訴された事件で、米捜査機関が、証拠隠しに竹田仁之介・非常勤顧問(70)(起訴済み)のほか、2人の同社取締役(当時)らが関与したとみていることが21日、明らかになった。
 米司法省などによると、米連邦捜査局(FBI)は1999年1月29日、証拠書類の提出令状を同社の米子会社「トーホー・カーボン・ファイバーズ(TCF)」(米カリフォルニア州)に送付した。令状をTCFの取締役は東邦テナックスにファクスで転送。同社取締役が2月に入って急きょ米国入りし、TCFの取締役は、日本にいた竹田顧問と連絡を取った上、東邦テナックスの取締役と協力して問題の書類を宅配便で東京の東邦テナックス本社に送ったという。書類には、同社など競合各社が炭素繊維の値付けをめぐって協議し、最低価格を取り決めていた事実などが記されていたとされる。


2005/1/31 三菱レイヨン

炭素繊維事業についてのお知らせ
http://www.mrc.co.jp/press/p05/050131.html

 三菱レイヨン株式会社(本社:東京都港区、社長:皇 芳之)は、炭素繊維の急速な需要増に応えるため米国Grafil社の生産能力を増強するとともに、戦略的な提携の第一歩としてSGLカーボングループへの生産委託を決定致しました。詳細は下記の通りです。

■米国
Grafil社の生産能力増強
 生産拠点 
Grafil Inc. (米国、カリフォルニア州)
 生産能力 
500t/年増強(現行生産能力1,500t/年を2,000t/年に増強)
 稼働予定 
2005Q4

SGLカーボングループへの生産委託
 委託工場 
SGL Technic Ltd. (英国スコットランド)
 委託量 
500t〜750t/年
 委託生産開始 
2006Q1
 品種 レギュラートウ

 三菱レイヨングループは
PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維の主力メーカーです。
 当社グループは、炭素繊維事業を
AN(アクリロニトリル)体系の基幹事業に位置付け、原料であるANモノマーからレギュラートウ・プリプレグ、更にゴルフシャフト等の加工品まで一貫生産を行い、強い成長ポテンシャルを有しております。1976年にプリプレグの生産を開始して以来、当社グループはスポーツ・レジャー用途や産業用途を中心に市場プレゼンスを拡大して参りました。2005年にはエアバス社次期航空機「A380」で使用する1次構造材の認定を取得する見通しです。
 炭素繊維は、
1960年代後半に開発されて以来、スポーツ・レジャー用途をはじめ、航空宇宙関連用途や様々な産業分野で市場を着実に広げて参りました。需要はそれにともない順調に拡大を続け、現在では需給インバランスが懸念される事態になっております。圧力容器、風力発電等の産業用途の成長や、自動車関連の新市場の立ち上がりを前に、メーカーとしては将来に亘る安定的な供給体制を整えることが急務となっております。
 このような状況下、当社グループは、米国で炭素繊維の生産能力を増強するとともに、欧州市場の拡大を見据え、
SGLカーボングループと提携し、欧州での焼成拠点を確保致しました。SGLカーボングループは炭素繊維複合材料の有力メーカーで、当社グループは事業面で補完関係を構築し市場で競争ポジションを強化することが可能です。
 尚、当社グループは市場ニーズに応えるために、国内で
2007Q3に焼成ライン(生産能力:約2,000t/年)を新たに稼働させる検討に入っております。

Grafil Inc..の概要
 代表者 臼井 湘一(社長)
 本社所在地 
5900 88th Street Sacrament, CA 95828, U.S.A.
 資本金 
1,207千ドル(20041231日現在)
 出資比率 
MITSUBISHI RAYON AMERICA INC. 100%
 事業内容 炭素繊維の製造販売

SGL カーボングループの概要
 代表者 
Robert J. Koehler CEO
 本社所在地 
Rhingaustrasse 182/65203 Wiesbaden, Germany
 事業内容 黒鉛材料、炭素繊維複合材料の製造販売
 資本金 
117百万ユーロ(20031231日現在)
 売上高 
1,046百万ユーロ(2003年度)

三菱レイヨングループの炭素繊維生産能力について (単位:t/年)

  2005
   
1
2006
   
Q1
米国 

1,500

2,000

日本 

3,200

3,200

欧州*)  

0

500
750

合計 

 4,700

5,700
5,950

   *)欧州は生産委託量


日本経済新聞 2005/4/13               東レ発表

炭素繊維を増産へ 東レ 250億円投資、三菱レイヨン 生産量1.7倍  航空機向け需要増

 東レと三菱レイヨンは相次いで炭素繊維を増産する。東レは250億円を投じて愛媛工場(愛媛県松前町)の生産設備を増強、産業用や航空機向けに供給する。三菱レイヨンも主力の大竹事業所(広島県大竹市)に新ラインを建設し、米国などと合わせて4年後に生産量を現在の1.7倍に増やす。炭素繊維は強度と耐久性を持つ高付加価値素材として需給がひっ迫しており、世界シェアで合わせて5割を握る両社が増産に踏み切る。

▼炭素繊維

 比重は鉄の5分の1、強度は10倍と軽くて強い。アクリル繊維を二度焼成して作るため腐食にも強い。1970年代からゴルフクラブのシャフト用などに使われ始め、最近ではロケットや人工衛星など航空・宇宙分野、自動車部品など用途が拡大している。東レ三菱レイヨン、帝人グループの東邦テナックスの3社で世界市場の7割を占める。

 東レは炭素繊維の原糸を一貫生産する2ラインと、炭素繊維にエポキシ樹脂を浸しシート状に加工する「プリプレグ」と呼ぶ素材の生産設備を増設し、2007年1月から稼働する。この結果、愛媛工場の炭素繊維の年間生産能力は4700トンから47%増の6900トンに、プリプレグの生産能力は500万平方メートルから1080平方メートルに倍増する。
 同社の炭素繊維のシェアは34%と世界首位。大型建築物、電子機器、高圧タンクなど向けに出荷しているほか、08年就航予定の米ボーイング社製新型旅客機B787の機体の一部に供給することも決まっている。世界的に需要が拡大しているため設備を増強し、2010年の世界シェアを40%に引き上げる計画だ。

 一方、三菱レイヨンはアクリル繊維などを生産する大竹事業所に新ラインを建設。08−09年に稼働し年間2千トンのぺースで炭素繊維を量産する。
 05年末からは先行して米国工場(カリフォルニア州)の生産能力を年1500トンから2千トンに増強。英国でも06年初めから年間500トンのぺ−スで新たに炭素繊維を量産。既に稼働し仏エアバスに炭素繊維を供給している豊橋工場(愛知県豊橋市)と合わせて炭素繊維の生産能力を年7700トンに引き上げる。
 炭素繊維は航空機のほか自動車、風力発電用風車などの需要が拡大している。


2005年4月12日 東レ

炭素繊維“トレカ”の戦略的事業拡大について
250億円を投じ愛媛で生産増強 2010年に売上高1,100億円超へ
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr050412.html

 東レ(株)はこのたび、PAN系炭素繊維“トレカ”の日本における生産設備増強を決定しました。当社愛媛工場(愛媛県伊予郡松前町)に、炭素繊維原糸(プリカーサ)の重合・製糸、および焼成までの一貫生産ライン2系列(計2,200トン/年)と、樹脂を含むプリプレグ(1) 生産設備1系列(580万m2/年)を増設します。総投資額は250億円で、2007年1月からの稼働開始予定です。今回の立地決定は愛媛県からの強い要請もいただき実現したもので、本増設に際しましては同県および松前町(まさきちょう)よりご協力をいただいております。

 今回の生産設備増強は、2008年に就航を予定している米国ボーイング社の新型旅客機B787への炭素繊維“トレカ”複合材料の供給をはじめとし、一般産業用途も含めた炭素繊維の本格的な需要拡大に対応するべく実施するものです。当社はB787向けに“トレカ”プリプレグを供給する唯一の認定サプライヤーとして、2006年から米国拠点でプリプレグの本格供給を開始します。同機の受注が当初の予想を上回るペースで好調に推移していることに加え、B777の増産に対応するため、炭素繊維およびプリプレグの追加供給体制の整備を決定しました。これにより、日米2拠点による“デュアルソース”供給体制を確立し、ボーイング社およびB787の主要構造体サプライヤーである日本の重工メーカーへの供給体制を盤石なものとしていきます。

 航空機分野では、航空機需要の回復と併行して今後の新機種開発プログラムにおける機体の“コンポジット化”が急速に進行しており、歴史的な需要拡大局面を迎えています。一般産業分野でも、圧力容器や風車のブレード、自動車部材などの各種大型用途で相次いで試験評価から量産段階に移行している他、中国をはじめとしたアジアでも土木・建築需要などが急増しており、現下の需給バランスは逼迫の度を増しています。2004年のPAN系炭素繊維の世界需要は約22,000トンと推定されていますが、このような素材革新の進展を背景として、今後年率10%以上の高成長が見込まれ、2007年には同30,000トンを上回るものと予測されています。

 東レは炭素繊維 “トレカ” 複合材料を当社グループの先端材料の中核商品として位置づけ、戦略的な事業拡大を推進しています。今回の生産設備増強は、フランス、米国に次ぐ第3期増設にあたります。これにより、2007年時点におけるグループ
炭素繊維生産能力は13,100トン/年に(2) 、プリプレグは同2,220万m2/年(3) にそれぞれ拡大します。当社は炭素繊維の世界ナンバーOneメーカーとして、引き続き日米欧の世界3極、将来的には中国における現地生産化も視野に入れたグローバル供給体制の強化を推進してまいります。炭素繊維・中間基材・コンポジットにわたる総合技術開発力の強化と垂直統合型事業の拡充により、炭素繊維“トレカ”複合材料事業を2010年には世界販売シェア約40%(4)、売上高1,100億円超に拡大してまいります。

(1) プリプレグ(Prepreg):炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸したシート。  
(2) 2006年初に稼働開始予定の米国CFA社増設分1,800トン/年を含む。(現在:9,100トン/年)
(3) 2006年初に稼働開始予定の米国TCA社増設分620万m2/年を含む。(現在:1,020万m2/年)
(4) 2004年現在の当社世界販売シェアは約34%。(当社推定)


2005年4月22日 東レ

炭素繊維 自動車車体への本格実用化加速
−新工法で成形時間を10分以下に−
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr050422.html

 東レ(株)は、このたび、世界ナンバーOne事業である炭素繊維を用いた複合材料(CFRP1 )について、自動車車体などを大量生産可能な高速成形技術の確立に世界で初めて成功しました。炭素繊維と組み合わせる樹脂の加工特性を飛躍的に向上させることで成形時間を10分以下(従来の約15分の1)と大幅に短縮でき、CFRP適用自動車の量産化に大きく前進しました。CFRPは金属材料で最高強度を有する高張力鋼に比べても軽量かつ強度に優れるため、安全性と軽量性の両立を求められている次世代自動車材料の本命として注目されていますが、量産技術の確立と低コスト化が事業化への最大の課題と言われてきました。この両方の課題解決に極めて有効である “CFRP成形時間の短縮”に目途がついたことから、今後、CFRPの自動車車体への本格実用化を一気に加速します。
 本技術は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの受託で2003年度から日産自動車株式会社と共同で推進している国家プロジェクト「自動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発」の一環で開発したものです。

 CFRPは、同強度のスチールに対して重さ約半分(軽金属のアルミと比較しても3分の1)、しかも5倍の引張り強度を有していることから、自動車の衝突安全性向上と、軽量化(燃費改善)に最も高い効果を発揮できる先端材料として期待されています。その優れた材料特性が評価され、米ボーイング社の新型旅客機B787ではCFRPが機体重量の半分以上に採用されるなど、世界の航空機分野での需要拡大を受け、先日も増産決定を発表しました。しかしながら、自動車分野については、性能向上のみに特化したレーシングカーの車体で高い安全性と、軽量性が実証されているものの、生産性やコストが妨げとなって一般の乗用車への本格的な普及には至っていませんでした。

 今回開発した新工法「超ハイサイクル一体成形法」は、従来のCFRP金型成形法を全面的に見直し、炭素繊維に組み合わせる樹脂の加工特性を飛躍的に向上させたのが特徴です。従来の樹脂と同等の耐熱性、熱的特性、耐環境・耐久性を維持しつつ、成形時における樹脂の流動性と硬化速度を大幅に改善した新規樹脂「ハイサイクル成形樹脂」を開発した他、炭素繊維シートの新たな立体賦形技術と連動させることで、材料のセットから完成品の取り出しまでの全加工時間(従来2時間強)を、一気に10分以下まで大幅に短縮するものです。新工法は、コストダウン効果も大きく、自動車の車体(プラットフォームと呼ばれ、複数の車種で共通であるため量産性が特に求められる部材)の実用化は勿論、航空機など他用途への拡大展開も可能です。

 現在推進中の国家プロジェクトでは、スチール対比50%軽量、衝突安全性で1.5倍のエネルギー吸収量を有するCFRP製自動車車体の試作と実証を目標としています。当社は引き続き、同プロジェクトの最終年度にあたる2008年度までに、「金属など他素材との接合技術」と「安全設計技術」、および「リサイクル技術」の各開発テーマについて技術確立を図り、2兆円規模といわれる大きな自動車車体材料市場においてCFRPの本格展開を目指します。

(1) CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic、「炭素繊維強化プラスチック」の略。


日本経済新聞 2005/5/14

「耐炎繊維」の生産能力3倍 
東邦テナックス

 東邦テナックスは7月から航空機のブレーキ板や電池用の電極などに使う難燃性の新素材「
耐炎繊維」を増産する。米テネシー州の工場に設備を新設、世界全体の生産能力を3倍強に引き上げる。国内メーカーで耐炎繊維を手がけるのは同社だけ。競合社が多い炭素繊維に比べ安定した収益を得られるため、増産と同時に新たな用途開拓を急ぐ。
 耐炎繊維は炭素繊維の原料でもあるアクリロニトリルなどをセ氏250−300度に熱して作る。炭素繊維に比べて強度は劣るが、燃えにくく腐食や摩耗にも強い。
 揖斐川工場(岐阜県神戸町)で年間600トンを生産しているが新たに14億円を投じて米テネシー工場に生産設備を設置。世界全体の生産能力を従来比3.3倍の同200トンに増やす。
 現在、同繊維の用途は耐火服などに限られている。今後は電力蓄電用の新型ナトリウム硫黄(NAS)電池の電極や、航空機のブレーキ板(金属製)の代替用途などを開拓。2006年3月期に約30億円の売り上げを見込む。
 炭素繊維は東レや三菱レイヨンとの受注競争が激しいが、耐炎繊維は英米2社が製造している程度。価格も1キログラムあたり約2千円と安定しており、年率10%程度の成長が見込めるため増産する。


化学工業日報 2005/6/8

新日鉄グループ、炭素繊維会社への出資65%に−新日石と合意

 新日本製鉄と新日本石油は、ピッチ系炭素繊維の折半出資メーカーである日本グラファイトファイバー(NGF、東京都港区)について、出資比率を7月1日付で新日鉄グループが65%に高めることで合意した。新日鉄の全額出資子会社である日鉄コンポジット(NCK、東京都中央区)がNGFの株式を取得し、連結子会社にする。NCKはNGF製のピッチ系炭素繊維を主体にした複合材事業を展開しており、素材部門から一貫経営することで炭素繊維事業全体の業容拡大と収益強化が図れると判断した。

 NGFの資本金は現在2億5000万円だが、1億円に減資して新日鉄の出資比率を65%にした上で、NCKが新日鉄が保有する全株式を取得する。子会社化に伴い、NGFはオフィスをNCK本社内に移転する。

 NCKはNGF製のピッチ系炭素繊維を使った部材や、同炭素繊維を中心にさまざまな素材を組み合わせた複合材を展開しており、売上高は32億円。


2005年11月10日 三菱レイヨン

炭素繊維の生産能力増強のお知らせ

http://www.mrc.co.jp/press/p05/051110.html

 三菱レイヨン株式会社(本社:東京都港区、社長:皇 芳之)は、炭素繊維の需要増に応えるため、豊橋事業所内で2,200トン/年の焼成ラインを建設することを決定しました。2007年第2四半期の稼働を目指し、投資額は約70億円の予定です。

生産拠点 : 豊橋事業所 (愛知県豊橋市) 
生産能力 : 2,200トン/年
稼動予定 : 2007年第2四半期
投資額 : 約70億円

 三菱レイヨングループは、原料であるANモノマーから、レギュラートウ、プリプレグ、更にゴルフシャフト等の加工品まで一貫生産を行っているPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維の主力メーカーです。
 炭素繊維は、スポーツ・レジャー用途をはじめ、航空宇宙関連用途や様々な産業分野で市場を着実に広げてきました。需要はそれにともない順調に拡大を続け、2009年には30,000トンを超える市場になると予想されます。圧力容器、風力発電等の産業用途の成長や、自動車関連の新市場の立ち上がりを前に、メーカーとしては将来に亘る安定的な供給体制を整えることが急務となっています。
 このような状況下、当社グループは需要の伸びに応えるために、豊橋事業所で生産能力2,200トン/年の焼成ラインを2007年第2四半期に新たに稼働させることを決定いたしました。この能力増強は、本年4月の中期経営計画において、炭素繊維の生産設備能力を2007年から2008年にかけて日本で増強すると発表したことを、具体化したものです。
 豊橋事業所における炭素繊維の生産能力は、現行の3,200トン/年から5,400トン/年に増強されます。また、2005年末には米国Grafil社の生産能力増強が完了し、SGLグループへの生産委託も2006年第2四半期に当初予定通り開始される予定です。これにより、2007年第2四半期には、グループ全体で7,900〜8,150トン/年の生産能力となります。


【三菱レイヨングループの炭素繊維生産能力】 (単位:t/年)

  2005年10月現在 2007年第2四半期

日本

3,200

5,400

米国

1,500

2,000

欧州*)

0

500〜750

合計

4,700

7,900〜8,150

*)欧州は生産委託量


2005年12月12日 東レ

PAN系炭素繊維“トレカ”複合材料の欧州における生産増強について
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr051212.html

 東レ(株)はこのたび、炭素繊維複合材料の中長期的な需要拡大に対応するべく、PAN系炭素繊維 “トレカ”の欧州における生産設備増強を決定しました。フランスの炭素繊維生産販売子会社であるソフィカール社(、本社:フランス・アビドス)に、年産800トンの炭素繊維焼成設備を1系列増設し、2007年8月からの稼働開始を目指します。総投資額は、当社・愛媛工場(愛媛県松前町)におけるプリカーサー(炭素繊維原糸)製造設備の増能力改造費用を含めて約80億円となります。本増設により、ソフィカール社の炭素繊維生産能力は3,400トン/年に(現:2,600トン/年)、2007年8月時点の当社グループ生産能力は13,900トン/年に拡大します。

 今回の生産設備増強は、主に欧州で需要が急増する航空機の二次構造材、および一般産業用途向けの“細物炭素繊維”(単糸を3,000本、または 6,000本束ねた細い炭素繊維)の供給体制を強化するべく実施するものです。当社は細物炭素繊維について、早くから航空機用途の 二次構造材(主翼の動翼部分;フラップ、スポイラー等)として認定を取得し供給してきましたが、昨今の航空機ビルトレートの回復を受けて需要は堅調に拡大しています。一方で、新たに産業用途やスポーツ用途で、細物炭素繊維を用いたクロス(織物)が、細物ならではのドレープ性や優れた成形加工性を活かして、デザイン性や高度な設計対応が要求される自動車部材、自転車フレーム、さらには産業用ロボット等の新規用途で採用が広がっています。その結果、細物炭素繊維の需給バランスはますます逼迫しています。

  2005年現在、PAN系炭素繊維の世界需要は約25,000トン/年と推定されています。今後も年率10%以上の高成長が見込まれており、2008年には34,000トン規模になるものと予測されています。東レは炭素繊維市場の本格拡大にいち早く対応するべく、まず航空機の一次構造材から産業用途まで幅広く使用される“太物炭素繊維”(12,000、及び24,000フィラメント)を中心として、2004年10月に稼働を開始したソフィカール社の新設備を皮切りに、2006年初め稼働の米国CFA社、翌2007年初め稼働の愛媛工場と、相次ぎ大型生産設備の増設を決定し、安定供給体制の構築を鋭意推進してきました。今回、細物炭素繊維についても生産体制の増強を図ることで、炭素繊維複合材料事業の戦略的拡大を一層推進します。

 東レは現在、中期経営課題 “プロジェクトNT-II”(NT-II)における課題・改革の一環として、「先端材料事業」と「世界ナンバーOne事業」の拡大・強化を推進しています。今回の炭素繊維・複合材料事業における拡大策は、これら“攻め”の経営方針に基づくものです。

<補足>
ソフィカール社概要
1.英文名  Societe des Fibres de Carbone S.A. (SOFICAR)
2.事業概要  PAN系炭素繊維の製造・販売
3.設立  1984年12月
4.資本金  24.8百万ユーロ(3,472百万円)
5.出資  東レ 70%、ARKEMA社 30% 
         *
Atofina's Chemical Intermediates Plastics divison will now be called Arkema  
6.所在地  フランス共和国ピレネー県アビドス市
7.社長  Michel Brisson (東レ(株)常任理事)
8.生産能力  2,600トン/年(本増設後:3,400トン/年)

東レグループ・PAN系炭素繊維生産能力(年産トン)

  現 在 2006年1月 2007年1月 2008年1月

日本(愛媛工場)

 4,700 トン

 4,700 トン

 6,900 トン

 6,900 トン

フランス(SOFICAR)

2,600 トン

2,600 トン

2,600 トン

3,400 トン

アメリカ(CFA)

1,800 トン

3,600 トン

3,600 トン

3,600 トン

グループ計

 9,100 トン

 10,900トン

 13,100 トン

 13,900 トン


2006年1月24日 クレハ

米国の炭素繊維断熱材製造会社の買収について
http://www.kureha.co.jp/topics/pdf/060124.pdf

 株式会社クレハ(社長:田中宏)の米国法人クレハ・アメリカ(Kureha America Inc. 本社:ニューヨーク)は、本年1月末、炭素繊維断熱材製造会社のTTSM, Inc.社(本社:米国ピッツバーグ郊外)の株式を100%取得し、クレハ・アメリカの完全子会社にすることに致しましたので、お知らせします。
 当社の炭素繊維(商品名:クレカFR)は、ピッチ系炭素繊維のフェルト基材を炭化収率の高いレジンで成型、焼成し製造された成型断熱材で、断熱性と耐久性に優れ、金属、セラミックス製品の熱処理やシリコンウエハーの単結晶インゴットの製造などには不可欠なプロセス内消耗品で、日本、アジア、欧米で着実に販売量が増加しています。
 当社はいわき工場(福島県いわき市)で生産増強を図ってきましたが、一昨年には、中国において、上海呉羽化学有限公司を設立し、同様に炭素繊維成型断熱材の製造販売を行っており、それぞれフル生産の状況にあります。
 TTSM社の断熱材は、炭素繊維を含んだスラリーを成型焼成した成型断熱材で、機械加工が容易で複雑形状加工と寸法精度に優れていることから、当社にとって新しい商品群となり、日本、中国に加えた米国においても製造拠点を設けることで、顧客対応の最適化を図ることが可能になります。
 今回のTTSM社の買収により、TTSM社の売上高は数年後4億円を見込んでおります。

[TTSM社の概要]
設立 1997年
本社
10 Acee Drive Highlands Industrial Park, Natrona HeightsPA州 米国
社長 近藤正治(現在)
従業員数 11名
売上規模 約2億円
株主 近藤正治(現在100%) 買収後Kureha America Inc. 100%

[参考情報]
上海呉羽化学有限公司の概要
設立 2003年4月30日
本社 中国 上海市嘉定区高台路979
董事長 萩野 弘二
従業員数 66名
売上規模 約6億円
株主構成 潟Nレハ85% 三菱商事鰍P5%


2006/04/12 東邦テナックス

炭素繊維“テナックス”生産能力増強について

 当社は本日開催の取締役会において、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維 “テナックス”の生産設備増強を決定いたしました。2008年4月稼動を目標に炭素繊維焼成設備を増設し、併せてプリカーサー(炭素繊維の原料となる前駆体)製造設備の増設も決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。


1. 増設の目的
 PAN系炭素繊維の需要は年率10〜15%で伸張し、2008年には3万トンを超えるものと予測されます。成長の主な要因は、航空機用途における新機種プロジェクトの本格化および既存機種のコンポジット(炭素繊維複合材料)化の進展ならびに一般産業用途における風力発電、圧力容器、自動車関連、IT機器向け需要の拡大によるものです。
 このような事業環境のなか、当社グループは既に本年9月稼働予定でドイツ新ライン(年産1,500トン)建設に着手しておりますが、更に供給力を強化し、成長著しい一般産業分野のユーザーの需要に応えるため大型ラインを建設するものです。大型ライン稼働後は、既存ラインにおける航空機認定炭素繊維の生産を拡大し、航空機向け需要増にも対応して参ります。また、大型ラインの炭素繊維生産に伴い原料となるプリカーサー製造設備も並行して増設を実施いたします。

2. 新中期経営計画における増設の位置付け
 当社は、本年度を初年度とする新中期経営計画“STEP FORWARD2008”を推進しておりますが、本増設投資はその一環であり、炭素繊維事業への積極的な資源投入により一段のスケールアップと収益力強化を目指すとともに、責任ある供給体制を構築し、お客様から信頼される炭素繊維のリーディングカンパニーとしての地位を維持強化して参ります。

3. 増設の概要
(1)設置場所      東邦テナックス三島事業所(静岡県駿東郡長泉町)
(2)設備内容      炭素繊維およびプリカーサー製造設備ならびに附帯設備
(3)炭素繊維生産能力  年産2,700トン(標準銘柄換算) ※プリカーサー生産能力については公表しておりません。
(4)総投資額      107億円

4.スケジュール
 2006年4月 工事着工
 2008年4月 営業運転開始

5. 業績に与える影響
 平成18年3月期決算に与える影響はありません。平成19年3月期業績見通しは4月28日開示予定の平成18年3月期決算発表にて公表いたします。


6. 増設後の生産体制
東邦グループの炭素繊維生産能力
RT=レギュラートウ、LT=ラージトウ (単位:d/年)

  2005年末 2006年末 2008年末

日本

RT   3,700

RT   3,700

RT   6,400

ドイツ

RT   1,900

RT   3,400

RT   3,400

米国

LT   2,600

RT    700
LT
   1,300

RT    700
LT
  1,300

合計

8,200
内訳    
RT  5,600
LT   ,600

9,100
内訳    
RT   ,800
LT   1,300

11,800
内訳    
RT  10,500
LT   1,300

(注)RT(レギュラートウ)とLT(ラージトウ)の違い
 RTとLTはその特長により、使用分野における棲み分けが進んでいます。

  RT LT
フィラメント数 〜24K(24,000本) 40K(40,000本)〜
主な使用分野 航空宇宙
スポーツレジャー
産業資材
産業資材
(主にコンパウンド)
特長 RTはLTに比べ機械的性能が高く、取扱い性が良い


【参考資料】
PAN 系炭素繊維需要予測(単位:トン/年)

  2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

航空機

4,620

5,630

6,550

7,050

7,850

8,530

一般産業

11,300

13,310

14,970

17,910

21,050

23,470

スポーツ

4,900

5,110

5,260

5,430

5,610

5,720

合 計

20,820

24,050

26,780

30,390

34,510

37,720

 


2006年4月25日 東レ

米国ボーイング社B787向けに炭素繊維複合材料の長期供給に関する包括的正式契約を締結
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr060425.html

 東レ(株)はこのたび、米国ボーイング社(Boeing Co.本社;米国イリノイ州シカゴ)の次世代中型旅客機B787(2008年就航予定)向け炭素繊維複合材料について、同社との間で、2021年までの16年間(5年間のオプションを含む)に亘る長期供給に関する包括的正式契約を締結しました。

 当社は2004年5月に、B787の主翼と尾翼を対象として、炭素繊維UD(一方向)プリプレグ1)の長期供給基本契約を同社と締結しました。今回はそれに加え、胴体向けに炭素繊維クロス(織物)プリプレグの追加受注を獲得するとともに、供給条件の詳細を含めた包括的な正式契約を両社間で締結しました。当社の炭素繊維“トレカ”2) と“トレカ”プリプレグの品質優位性をはじめ、長期にわたる安定した素材供給実績、およびボーイング社と培ってきた信頼関係が評価されたものです。

  B787(愛称:“ドリームライナー”)は、乗客が目的地までノンストップで移動できる「ポイント トゥ ポイント(Point to Point)」のコンセプトに基づき、経済性(Economy)と効率(Efficiency)を追求した次世代中型旅客機です。省エネルギー運航の実現のために、機体の構造材料には「軽くて強く、高耐久性を有する」炭素繊維複合材料が大幅に使用されます。構造材重量の約50%に炭素繊維複合材料が使われ、一機あたりの炭素繊維使用量は一次構造材、二次構造材を合わせて約30トンに達する見込みです。

  B787は、炭素繊維を大量に構造材に用いたことによって、燃費効率の向上による運航コストの大幅削減に加え、機内環境についても居住空間の拡張、窓面積の大幅拡大、キャビン内の湿度を高くできるなど、乗客の快適性を向上させることができることから、世界の航空会社から好評を博し、その受注は非常に好調に拡大しています。現時点における確定受注は400機近くに達しており、オプションを含めれば既に600機以上になります。当社は本契約期間内のプリプレグ受注額を、B787が月産10機生産されるという前提で、総額60億ドル(約7,000億円)に達すると見通しており、今後さらに、これを上回る追加受注も期待されます。

  当社は今回の長期供給に関する包括的正式契約の締結に先行して、米国の炭素繊維生産拠点であるトーレ・カーボンファイバーズ・アメリカ社(CFA)で炭素繊維原糸(プリカーサ)の生産設備新設と焼成設備の増設、また、トーレ・コンポジット・アメリカ社(TCA)ではプリプレグの生産能力を倍増し、米国でプリカーサからプリプレグまでの一貫生産体制を構築・増強しました。さらに愛媛工場(愛媛県松前町)でも、2007年初めの稼働開始を目指して、B787向けに炭素繊維とプリプレグの新工場建設を進めています。

  東レの高強度炭素繊維“トレカ”は、1970年代半ばに初めてボーイング社の二次構造材用として採用され、1992年からは高靭性樹脂を組み合わせた“トレカ”プリプレグが、B777の尾翼やフロアビームなど重要な一次構造材として独占的に採用されてきました。今回のB787では、さらに主翼や胴体など、ほぼ全ての構造材が炭素繊維複合材料に代替されることとなり、従来の航空機に対して炭素繊維複合材料の採用が飛躍的に拡大します。東レは今回の正式契約調印により、ボーイング社との強固なパートナーシップを改めて確認し、今後一層、両社の連携を強化していく所存です。

  東レは、2004年4月からスタートした中期経営課題 “プロジェクトNT−II”における課題・改革の一環として、「先端材料事業の拡大」、「世界ナンバーOne事業の拡大・強化」、および「海外事業の戦略的拡大」を推進しており、炭素繊維複合材料事業は、その中核となる戦略的拡大事業と位置づけています。東レは今回のボーイング社との契約締結を機に、先端テクノロジーが要請される航空・宇宙分野の有力なユーザーである同社とのパートナーシップを引き続き強固にしていく一方、日米欧3極の生産拠点によるグローバルオペレーション体制に基づき、炭素繊維の世界のリーディング・カンパニーとして、一層の事業拡大に取り組んでまいります。

1) UDプリプレグ: Uni-Directional Prepreg。炭素繊維を一方向に配列し、エポキシ樹脂を組み合わせてシートにしたもの。
2) “トレカ”は東レ株式会社の登録商標です。

<参考>
PAN系炭素繊維 “トレカ”生産能力 (年産 トン)

  2006年1月 2007年1月 2007年8月

日本(愛媛工場)

4,700 トン

6,900 トン

6,900 トン

フランス(ソフィカール社)

2,600 トン

2,600 トン

3,400 トン

アメリカ(CFA社)

3,600 トン

3,600 トン

3,600 トン

グループ計

10,900 トン

13,100 トン

13,900 トン

“トレカ”プリプレグ生産能力 (年産 千m2)

  2006年1月 2007年1月

日本(愛媛工場)

5,000 千m2

10,800 千m2

アメリカ(TCA社)

11,400 千m2

11,400 千m2

グループ計

16,400 千m2

22,200 千m2

 


2006年6月16日 東レ

炭素繊維複合材料の革新的量産技術を開発
プラスチック、金属に匹敵する量産性を実現 複雑形状にも対応可能に

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:榊原 定征、以下「東レ」)はこの度、炭素繊維複合材料(CFRP1))を用いて、複雑形状の工業製品を大量に生産できる新規量産技術の開発に世界で初めて成功しました。CFRPの材料設計から生産方法までを抜本的に見直すことで、プラスチックや金属など他の工業材料に匹敵する設計自由度と量産性を実現しました。本開発技術により、ノートパソコンや携帯電話などの筐体をはじめ、自動車部品、医療用機器、ロボット部材などの大量生産品向けに、CFRPを幅広く展開することが可能になります。
 なお、本開発技術は、その革新性から平成17年度高分子学会賞を受賞致しました。

(本開発技術の詳細な説明)
 本開発技術は、CFRPの材料設計と材料加工(成形・組立)技術の両面において技術革新を図り、新規量産技術を融合して実現したものです。

1. 材料設計技術の革新
 従来のCFRPは、一体ものとして設計/成形/生産されてきたため、複雑形状の成形品を大量に生産することはできませんでした。本開発技術では、成形品を形状や機能毎の部品単位で分割設計し、強度・剛性が要求される主要部分にCFRPを適用し、これに異なる形状・機能の部品を一体化させる全く新しい設計コンセプトを開発しました。今回、ノートパソコンの筐体向けに本開発技術を適用し、天板や底面など平らな部分には 素材自体の強度特性が活かせるCFRPを用い、外枠など複雑形状部分を射出成形でそれぞれ個別に製造することで、マグネシウム合金を上回る軽量・薄型設計のCFRP製筐体の大量生産に成功しました。

2. 材料加工(成形・組立)技術の革新
(1) 成形技術の革新として、一方向プリプレグ2)を積層した後、短時間で所定の形状にプレスできる超高速プレス成形技術を開発しました。金属プレスなど、板材の大量生産で実績のあるプレス成形法をCFRP向けに応用し、
従来比10倍以上の速さで固まる新開発の超高速硬化エポキシ樹脂を組み合わせて技術確立したものです。本開発技術により、材料の配置から脱型までの成形時間を3分以内に大幅短縮することに成功しました。また、超高速硬化エポキシ樹脂を組み合わせた専用プリプレグは厚み1mm以下で、最適な積層構成を設計追求することで製品の薄型軽量化と高剛性の両立が可能になります。
(2) 組立技術の革新として、CFRPとプラスチックなど異素材を熱溶着で接合する“CFRPハイブリッド技術”の開発に成功し、製品組立の時間短縮と効率化を実現しました。
射出成形機にCFRPを配置し、熱可塑性樹脂をインサート成形する新規接合技術により、ノートパソコン筐体を1分以内で組み立てることに成功しました。

 CFRPは“軽くて強い”特性が評価され、スポーツ用途をはじめ、航空宇宙、一般産業の各用途において本格的な需要拡大期を迎えています。しかし本格的な普及には、より複雑な製品設計への対応や大量生産技術の確立が課題となっていました。今回、CFRPの新規量産技術の確立により、従来課題を解決するとともに量産効果による製造コストのさらなる低減も期待されます。東レは本技術の確立を受けて、電気・電子機器や機械部品、事務機器、高機能家電などの各分野でCFRPの本格普及を加速して参ります。

1) CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic、「炭素繊維強化プラスチック」の略
2) 一方向プリプレグ:炭素繊維を一方向に配列し、エポキシ樹脂を含浸したシート状の中間基材


2006/6/26 化学工業日報

クレハ、ピッチ系炭素繊維の生産を拡大

 クレハはピッチ系炭素繊維の生産体制を大幅に拡充する。今年12月の稼働をめどに、いわき工場(福島県)に原糸生産新ラインを導入し、生産能力を5割増の年1100トン体制に引き上げるほか、国内、米国、中国の各加工工場もそれぞれ2008年まで増強に着手する。総投資額は25億円。同社は2005年にいわき工場で原糸の生産能力を年600トンから750トンに引き上げたばかり。高耐熱、摺動性、耐摩耗性などの特性から高温炉断熱材や自動車関連、アスベスト代替分野を中心に需要が拡大するなか、供給能力拡大でトップメーカーの地位を固める。

 原糸の増強はすでに装置の発注を終え、7月初旬に着工する。いわき工場内の既存建屋に1系列を導入し、3ライン・年1100トンに生産能力を引き上げる。基幹工程の紡糸設備以外は4ライン体制を視野に入れた設計となっており、需要動向を見極めながら、早ければ2012年にも1500トンに能力を拡張する計画。

 クレハの炭素繊維「クレカ」は光学的に無秩序で偏向を示さない石油系等方性ピッチを原料とする。熱の伝導率が低く耐熱性が高いうえ、熱寸法安定性に優れるなどの特徴を持つ。


2006/8/10 昭和電工

カーボン・ナノファイバー「VGCF(R)」の生産能力を増強

昭和電工株式会社(社長:高橋 恭平)は、リチウムイオン電池の添加材等に使用されるカーボン・ナノファイバー「VGCF(R)(気相法炭素繊維)」の生産能力の増強を行うことを決定しましたのでお知らせいたします。

当社独自の製品である「VGCF」は、高成長が続くリチウムイオン電池向けに需要が急拡大しており、年産能力40トンでのフル生産を継続しています。しかし、お客様からの増量要請に十分お応えできない状況が続いていることから、今般、能力を増強することを決定いたしました。本年下期に着工し、2007年より年産100トン体制に移行する予定です。

「VGCF」は直径約150ナノメートル (*1)、長さが約10マイクロメートル (*2) の微細繊維で、チューブ構造をしています。リチウムイオン電池の電極部へ導電助剤として「VGCFR」を少量添加することにより、

@ 充・放電の繰り返しによる電気保持容量の低下を抑制し、電池が長持ちします。
(サイクル寿命特性の向上)

A 電極の導電性が向上するため電池電流量が増加し、大電流放電を必要とする電気製品への使用が可能となります。(導電特性の向上)

リチウムイオン電池は、高性能化が進むノートパソコン、携帯電話、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のモバイル機器に広く使用される他、最近では大電流を必要とする電動工具のコードレス化にともなう需要が急増しています。

新プラントにおいては、樹脂や金属、セラミックスへの添加用途向けに開発した直径約100ナノメートルの新グレード「VGCF−S」の生産も予定しています。「VGCF−S」を添加した複合材は、高い導電性・熱伝導性・電磁気遮蔽性等を持つため、静電気を嫌う電子部材キャリアケース等へ使用が見込まれております。

 本年からスタートした連結中期経営計画「プロジェクト・パッション」では、カーボン・ナノファイバー事業を、成長事業として位置づけております。量産化技術の向上やコストの引き下げにより競争力の強化を図り、2010年には売上高を100億円まで引き上げる予定です。

(*1) 1ナノメートル(nm):10億分の1メートル
(*2) 1マイクロメートル(μm):100万分の1メートル


日本経済新聞 2007/2/9

炭素繊維3割増産 東レ、石川県に新工場 日米仏で550億円投資

 東レは代表的な先端素材である炭素繊維の生産能力を2008年末までに約3割増やす。愛媛県と米国、フランスにある既存工場で一斉に設備を増強、石川県に新工場を建設する。総投資額は550億円。軽量で強度が高い炭素繊維は鋼材の代替として航空機の機体や自動車部品などに需要が拡大している。大型投資に踏み切り、世界シェア首位の座を確実にする。
 炭素繊維の生産能力を現在の年1万3100トンから1万7900トンに引き上げる。08年12月までに、米国アラバマ州とフランスの工場の生産能力を現行(建設中も含む)に比べ1.5倍に拡大。国内では08年1月に愛媛工場(愛媛県松前町)に付加価値の高い製品だけを製造する400トン規模の設備を新設する。
 炭素繊維は樹脂と混ぜた複合材料としても出荷する。日米で年580万平方メートルの生産設備を建設。国内では衣料用繊維などを生産する石川工場(石川県能美市)の敷地内に複合材料を生産する工場棟を新設する。

日本勢の寡占続く

 炭素繊維は東レと帝人子会社の東邦テナックス、三菱レイヨンの3社が世界シェアの約7割を占め、各社の収益のけん引役になっている。一段の収益拡大に向け大幅増産に踏み切る東レに加え、東邦テナックスも2008年4月に大型生産設備を稼働させる予定。高度な生産技術が要求される炭素繊維は参入障壁が高く、国内勢のリー下は当面続くとの見方が多い。
 東レが増産に踏み切るのは、独占供給契約を結ぶボーイングの「B787」向け需要に備えるのが最大の理由。炭素繊維は重量が鉄の4分の1だが強度は10倍。炭素繊維の活用で軽量化でき燃費改善につながる。
 航空機向けだけでなく圧力容器やOA機器部品などの一般産業用途にも拡大。自動車向けでも駆動部品などに採用されており、炭素繊維は本格的な普及期を迎えた。
 東レの予測では炭素繊維の需要は年率約15%で伸び、10年には06年比約1.7倍の4万5500トンに拡大する。
 東レの07年3月期の炭素繊維関連部門の営業利益は前期に比べ1.5倍の180億円に膨らむ見通し。営業利益率(25%)は繊維など6部門で断トツだ。
 東邦テナックスも今期の利益見通しを上方修正した。親会社の帝人は東邦テナックスに対する出資比率を今期だけで13ポイント上積みし70%近くまで高め炭素繊維への経営関与を強めている。
 高収益の背景には強固な寡占状態の業界構造がある。大手3社がシェア争いせず得意分野に注力。品質のカギを握る原糸の製造技術は各社各様で、容易に導入できず参入障壁が高いことも業界の安定に寄与している。



2007年2月9日 東レ

炭素繊維 日米仏3拠点で4,000トン増設
国内では石川県にプリプレグ生産の新拠点

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:榊原 定征、以下「東レ」)はこのたび、航空機用途をはじめとするPAN系炭素繊維の本格的な需要拡大に対応するべく、日米仏3拠点で同時に炭素繊維“トレカ”複合材料の生産設備増強を決定しました。総額550億円を投じて、2009年初めまでにグループ全拠点で設備増設を実施する他、国内では愛媛工場(愛媛県松前町)に次ぐ二番目のプリプレグ(炭素繊維樹脂含浸シート)生産拠点として、新たに石川工場(石川県能美市)でプリプレグ生産設備を新設します。
 当社は2004年から炭素繊維関連の集中設備投資に取り組んでおり、既に2007年8月までに年13,900トン体制への増設(2003年末7,300トンから13,900トンの増設)を決定、推進しています。今回の決定により、炭素繊維のグループ生産能力は4,000トン増の年17,900トンに、プリプレグは1,160万u増の年3,380万uにそれぞれ拡大します。なお、2004年以降の累計投資額は総額約1,100億円に達します。
 今回の増設計画では、米国子会社のトーレ・カーボン・ファイバーズ・アメリカ社(CFA社、米国アラバマ州ディケーター市)とフランス子会社のソフィカール社(フランス・アビドス市)にそれぞれ年産1,800トンの大型生産設備を増設し、国内では愛媛工場に年産400トンの高性能炭素繊維の生産設備を増設します。なおCFA社には、今回の増産に対応してプリカーサ(原糸)の生産設備も増設します。一方、プリプレグについては、米国子会社のトーレ・コンポジット・アメリカ社(TCA社、米国ワシントン州タコマ市)に年産580万uの生産設備を増設する他、石川工場に同能力の生産設備を新設します。

<炭素繊維生産能力> (トン/年)
  現有能力 2007年8月 2008年1月 2008年12月 今回の増分
愛媛工場 6,900トン 6,900トン 7,300トン 7,300トン + 400トン
米国CFA 3,600トン 3,600トン 3,600トン 5,400トン + 1,800トン
仏ソフィカール 2,600トン 3,400トン 3,400トン 5,200トン + 1,800トン
グループ計 13,100トン 13,900トン 14,300トン 17,900トン + 4,000トン
 
 
<プリプレグ生産能力> (u/年)
  現有能力 2008年7月 2009年1月 今回の増分
愛媛工場 1,080万u 1,080万u 1,080万u -
米国TCA 1,140万u 1,720万u 1,720万u + 580万u
石川工場 580万u + 580万u
グループ計 2,220万u 2,800万u 3,380万u + 1,160万u
 
(表中の青字は、今回の決定に伴う増設実施後の生産能力と稼働開始時期を示します)
 

 これにより、米国ボーイング社が2008年の就航を目指す新型旅客機B787向けの材料供給体制を拡充する他、高付加価値品分野の強化、さらにスポーツ、一般産業の各用途における新規需要の立ち上がりと、逼迫する需給バランスに対応した安定供給体制を構築します。今回、 プリカーサからプリプレグにわたり生産体制を拡充することで、日米仏の世界三極による “トレカ”グローバルオペレーションの最適化を図ります。
 現在、PAN系炭素繊維の世界需要は約27,000トン(2006年)と推定され、今後も年率15%前後の高成長が見込まれています。ボーイングB787を中心とする航空機需要の本格拡大に加えて、CNGタンクなど石油代替エネルギー関連用途の需要拡大、将来的には自動車分野における本格普及も見据えて、2010年の世界需要は45,500トンに達するものと予測しています。
 東レは中期経営課題“プロジェクトInnovation TORAY 2010”(“IT-2010”)に基づく高収益企業への飛躍を目指す中、炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業と位置づけて積極的な増産投資に取り組んでいます。当社は2010年までに炭素繊維のグループ生産能力を年24,000トンに拡大する一方、炭素繊維・中間基材・コンポジットにわたる垂直統合型の事業展開を推進・強化していきます。東レは世界最大の炭素繊維複合材料メーカーとして、業界のデファクトスタンダードである“トレカ”の技術・品質優位性を強みに、2010年に世界販売シェア40%(2006年現在34%)、連結売上高目標1,600億円を目指して炭素繊維複合材料事業の拡大に取り組んで参ります。

<工場、関係会社の概要>
愛媛工場
設 立:1938(昭和13)年4月
所 在 地:愛媛県伊予郡松前町大字筒井1515
生産品目:ポリエステル短繊維、アクリル短繊維、PPS繊維、PBT樹脂、LCP樹脂、
       PAN系炭素繊維およびプリプレグ、成形品、逆浸透膜エレメント、動物用インターフェロン

石川工場
設 立:1975(昭和50)年6月
所 在 地:石川県能美市北市町リ1
生産品目:ナイロン長繊維、ポリエステル長繊維

トーレ・カーボンファイバーズ・アメリカ社(Toray Carbon Fibers America, Inc. (CFA))
設 立:1997(平成9)年5月
所 在 地:米国アラバマ州ディケーター市
資 本 金:115百万米ドル(東レ 100%)
事業概要:PAN系炭素繊維の製造・販売

トーレ・コンポジット・アメリカ社(Toray Composites (America), Inc. (TCA))
設 立:1992(平成4)年5月
所 在 地:米国ワシントン州タコマ市
資 本 金:44百万米ドル(東レ 100%)
事業概要:PAN系炭素繊維プリプレグの製造・販売

ソフィカール社(Societe des Fibres de Carbone S.A.(SOFICAR))
設 立:1982(昭和57)年12月
所 在 地:フランス共和国ピレネー県アビドス市
資 本 金:34.8百万ユーロ(東レ 70%、ARKEMA社 30%)
事業概要:PAN系炭素繊維の製造・販売


平成19年5月28日 帝人/東邦テナックス

帝人株式会社による東邦テナックス株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

 帝人株式会社(以下、「帝人」)と東邦テナックス株式会社(以下、「東邦テナックス」)は、平成19年5月28日開催のそれぞれの取締役会において、平成19年9月1日を期して、下記のとおり、帝人を完全親会社、東邦テナックスを完全子会社とする株式交換(以下、「本株式交換」)を行う事を決議しましたので、お知らせいたします。
 本株式交換の結果、効力発生日である平成19年9月1日をもって帝人は東邦テナックスの完全親会社となり、完全子会社となる東邦テナックスの株式は平成19年8月28日に上場廃止(最終売買日は平成19年8月27日)となる予定です。

1.株式交換による完全子会社化の目的
(1)本株式交換の目的
 平成12年2月に帝人が東邦レーヨン株式会社(現東邦テナックス)の普通株式の過半数を取得して以降、帝人グループは炭素繊維事業をコアビジネスとして位置付け積極的に経営資源を投入し、利益ある成長を目指すことを基本方針としてきました。その後第三者割当増資の引き受け等により帝人の持株比率は現在68.41%となっています。
 帝人による東邦テナックスの完全子会社化は、帝人グループにおける炭素繊維事業のコアビジネスとしての位置付けを更に強固なものとし、引き続き高い成長率が予想される炭素繊維への需要増大に的確に対応する他、帝人グループの技術、知見を活用し帝人グループ事業との共同展開を一層促進し、東邦テナックスの事業拡大を通じて帝人グループ全体の企業価値を向上させることを目的としています。

(2)株式交換比率の公正性を担保するための措置
 株式交換比率の公正性を確保するため、両社は本株式交換の実施を決定するにあたり、別個独立に第三者機関に株式交換比率に係る算定を求め、その算定結果を参考として両社で交渉・協議を行い、その結果合意された株式交換比率により本株式交換を行うこととしました。

(3)利益相反を回避する措置
 東邦テナックスの社外監査役である余頃文昭は、帝人の監査役付のほか帝人の子会社14社の監査役を兼任しており、帝人において本株式交換に関与しうる立場にあるため、東邦テナックスの取締役会における審議に参加しませんでした。
 尚、東邦テナックスの取締役5名のうち宇都宮吉邦は帝人の「帝人グループ専務執行役員」、三嶋孝司は同じく「帝人グループ執行役員」でありますが、東邦テナックスの経営業務を執行することがその職務であり、帝人または帝人の子会社(東邦テナックスを除く)の業務執行を行っておらず、帝人において本株式交換に関与しうる立場にございません。

2.株式交換の要旨
(1)株式交換の日程
   株式交換決議取締役会 (両社) 平成 19年 5月28日
   株式交換契約締結 (両社)    平成 19年 5月28日
   株式交換承認株主総会(東邦テナックス) 平成 19年 6月28日
   最終売買日 (東邦テナックス) 平成 19年 8月27日 (予定)
   上場廃止日 (東邦テナックス) 平成 19年 8月28日 (予定)
   株式交換効力発生日 平成 19年 9月1日 (予定)
   株券交付日(帝人) 平成 19年 10月下旬 (予定)
(注)本株式交換は、帝人については、会社法第796条第3項の規定に基づき簡易株式交換の手続きにより株主総会の承認を得ずに行う予定です。

(2)株式交換比率

会社名 帝人(完全親会社) 東邦テナックス(完全子会社)
株式交換比率   1   1.15
(注)1.株式の割当比率
     : 東邦テナックスの普通株式1株に対して、帝人の普通株式1.15株を交付します。ただし、帝人が保有する東邦テナックス株式106,692,634株については、株式交換による株式の交付はしません。
   2.株式交換により発行する新株式数等
  普通株式 56,662,919株 (予定)
帝人は、本株式交換に際して、東邦テナックスの株主(実質株主を含み、帝人を除く 以下同様)に対して、その所有する東邦テナックスの普通株式に代わり、効力発生日の前日の最終の東邦テナックスの株主名簿(実質株主名簿を含む)に記載又は記録された東邦テナックスの株主が所有する東邦テナックスの普通株式の株式数の合計に1.15を乗じた数の帝人の普通株式を交付します。また、本株式交換により東邦テナックスの株主に交付しなければならない帝人の普通株式の数に1株に満たない端数が生じた場合には、会社法第234条の規定にしたがい、当該株主に対しては金銭の交付が行われる事になります。
なお、上記の新株式数等については、東邦テナックスによる自己株式の消却等の理由により今後修正される可能性があります。

(3)株式交換比率の算定根拠等
@ 算定の基礎及び経緯
 本株式交換の株式交換比率については、その算定にあたって公正性を期すため、両社が独立に第三者機関の助言を求めることとし、帝人は野村證券株式会社(以下、「野村證券」)を、東邦テナックスは大和証券エスエムビーシー株式会社(以下、「大和証券SMBC」)を、それぞれ第三者機関として選定致しました。
 野村證券は、帝人及び東邦テナックスについて、市場株価平均法及びディスカウンテッド・キャッシュフロー法(以下、「DCF法」)の各評価手法を採用して算定を行い、株式交換比率に関する分析を帝人に提出しました。各評価方法による東邦テナックス株式1株に対する帝人株式の割当株数の算定結果は、下表のとおりとなります。

  株式交換比率の評価レンジ
市場株価平均法 1.03〜1.06
DCF法 0.91〜1.24

 なお、市場株価平均法では、直近1週間(平成19年5月18日〜24日)の終値の平均株価及び平成19年3月期決算発表日の翌営業日から公表日直前(帝人では、平成19年5月8日〜平成19年5月24日、東邦テナックスでは、平成19年5月1日〜平成19年5月24日)までの終値の平均株価から算定を行いました。また、帝人及び東邦テナックスのDCF法における利益計画につきましては、大幅な増減益は見込んでおりません。
 大和証券SMBCは、帝人及び東邦テナックスについて、市場株価平均法及びDCF法の各評価手法を採用して算定を行い、株式交換比率に関する分析を東邦テナックスに提出しました。各評価方法による東邦テナックス株式1株に対する帝人株式の割当株数の算定結果は、下表のとおりとなります。

  株式交換比率の評価レンジ
市場株価平均法 1.06〜1.09
DCF法 0.67〜1.41

 なお、市場株価平均法では、直近1ヵ月間(平成19年4月25日〜5月24日)の出来高加重平均株価、直近3ヶ月間(平成19年2月26日〜5月24日)の出来高加重平均株価及び直近6ヶ月間(平成18年11月27日〜平成19年5月24日)の出来高加重平均株価から算定を行いました。また、帝人及び東邦テナックスのDCF法における利益計画につきましては、大幅な増減益は見込んでおりません。
 帝人では、野村證券による株式交換比率の分析結果を参考に、東邦テナックスでは、大和証券SMBCによる株式交換比率の分析結果を参考に、両社で協議を重ねた結果、最終的に上記株式交換比率が妥当であるとの判断に至り合意致しました。この株式交換比率は、野村證券が帝人に対して提供した分析、並びに大和証券SMBCが東邦テナックスに対して提供した分析の範囲内で決定されたものです。
 なお、東邦テナックスの取締役会は、大和証券SMBCより平成19年5月28日付にて、合意された株式交換比率が東邦テナックスにとり財務的見地から公正である旨の意見書を取得しております。

A 算定機関との関係
 野村證券及び大和証券SMBCはともに、帝人及び東邦テナックスの関連当事者には該当しません。


(4)株式交換完全子会社の新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
 東邦テナックスは、新株予約権及び新株予約権付社債を発行しておらず、該当事項はありません。

3.株式交換当事会社の概要(平成19年3月31日現在)

(1)商号 帝人株式会社 東邦テナックス株式会社
(2)事業内容 子会社等の株式若しくは持分を保有することにより
当該子会社等の事業活動を支配、管理すること
炭素繊維事業等
(3)設立年月日 大正7年6月17日 昭和25年7月1日
(4)本店所在地 大阪市中央区南本町一丁目6番7号 東京都文京区本郷二丁目38番16号
(5)代表者の役職・氏名 代表取締役社長
長島 徹
代表取締役社長
宇都宮 吉邦
(6)資本金 70,787百万円 17,992百万円
(7)発行済株式数 928,298,872株 155,964,738株
(8)純資産 407,736百万円(連結) 16,338百万円(連結)
(9)総資産 999,917百万円(連結) 56,984百万円(連結)
(10)決算期 3月31日 3月31日
(11)従業員数 19,053名(連結) 1,328名(連結)
(12)主要取引先 帝人ファーマ 帝人化成 他 双日 エヌアイ帝人商事椛シ
(13)大株主及び持株比率 1. 日本マスタートラスト信託銀行梶i信託口) 7.74%
2. 日本生命保険相互会社 4.74%
3. 日本トラスティー・サービス信託銀行梶i信託口) 3.85%
4. 且O菱東京UFJ銀行 3.71%
5. ステートストリートバンクアンドトラストカンパニー 505103(常任代理人鰍ンずほコーポレート銀行兜町証券決済業務室) 2.18%
1. 帝人 68.41%
2. 日本トラスティー・サービス信託銀行 3.02%
3. 鰍ンずほコーポレート銀行 1.78%
4. バンク オブ ニューヨーク ジーシーエム クライアント アカウンツ イーアイエスジー 1.29%
5. 日本証券金融 1.11%
(14)主要取引銀行 且O菱東京UFJ銀行
鰍ンずほコーポレート銀行
鰍ンずほコーポレート銀行
みずほ信託銀行
(15)当事会社間の関係等 資本関係 平成19年3月31日現在、帝人は、東邦テナックスの発行済株式総数の68.41%を保有しており、連結対象子会社としています。
人的関係 帝人は、東邦テナックスに対し取締役2名、社外監査役1名及び社員3名を派遣しております。
取引関係 帝人は、東邦テナックスに資金を貸し付けています。
関連当事者への該当状況 帝人は、東邦テナックスを連結対象会社としています。

(16)最近3年間の業績 (単位:百万円) 略

4.株式交換後の状況
(1) 商号 帝人株式会社
(2) 事業内容 子会社等の株式若しくは持分を保有することにより当該子会社等の事業活動を支配、管理すること
(3) 本店所在地 大阪市中央区南本町一丁目6番7号
(4) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 長島 徹
(5) 資本金 70,787百万円
(6) 純資産 現時点では確定していません。
(7) 総資産 現時点では確定していません。
(8) 決算期 3月31日
(9) 会計処理の概要 共通支配下取引等のうち、少数株主との取引に該当する見込みです。なお、本株式交換により発生するのれん代に関しては、現時点では未確定ですが、約300億円の見込みです。
(10) 株式交換による業績への影響の見通し
 東邦テナックスは帝人の連結子会社となっておりますので、本株式交換による帝人の業績への影響は、連結・単体ともに軽微となる見込みです。


日本経済新聞 2007/8/3

三菱レイヨン 炭素繊維3割増産 120億円投資 風力発電など向け

 三菱レイヨンは2日、代表的な高機能繊維である炭素繊維の生産能力を2009年に増強すると発表した。大竹事業所(広島県大竹市)に約120億円を投じ、原料となる特殊なアクリル繊維を焼成して炭素繊維にする生産ラインを新設する。同社の生産能力は現行と比べて33%増え、年間1万850トンになる。
 新しい生産ラインの能力は年産2700トンで、09年10月にも稼働させる。同社は5月に豊橋事業所(愛知県豊橋市)で生産設備を増強したばかりだが、圧力容器や風力発電用風車の羽根などの産業用途で炭素繊維の需要が拡大すると判断した。炭素繊維の世界市場は06年に2万8千トン程度だったが、同社は10年には4万5千トンを超えると予想している。
 三菱レイヨンは炭素繊維の世界シェアで3位。米国と英国にも生産拠点があり、国内は豊橋と大竹の2ヶ所にする。大竹事業所は原料のアクリル繊維も製造しており、同じ生産拠点で繊維の製造、焼成などを一貫して手掛けられるようにして効率化する。


日本経済新聞 2007/10/9         

東レ、炭素繊維で車部品 10年に新工場 投資額300億円 世界初の量産
 鉄鋼と素材間競争

 東レは高強度・軽量材料の炭素繊維を使った自動車部品事業に世界で初めて本格参入する。2010年にも約300億円を投じて開発機能を備えた専用工場を名古屋市に建設、トヨタ自動車などに売り込む。炭素繊維は現在の自動車の主力素材である鉄に比べ重さは4分の1で強度は10倍。日米欧で強まる自動車の燃費規制に対応するために車体の軽量化は欠かせない手段になっている。地球環境問題が自動車の素材転換を促す動きが加速しそうだ。
 自動車は総重量を100kg減らせば燃費性能が2−3%向上するとされ、世界の自動車メーカーは車体の軽量化を競っている。航空機ではボーイングが新型機「787」に炭素繊維を初めて本格採用。機体の5割に東レの炭素繊維を使って燃費を従来機より2割程度向上させた。炭素繊維で3割強のシェアを握り世界最大手の東レは自動車でも同様のニーズを見込む。
 新工場は樹脂や化学品の拠点である名古屋事業場に建設する。自動車向け研究拠点「オートモーティブセンター」を来年6月に開設。09年に部品に特化した開発拠点を設置し、成型機などを備えた工場を完成させる。
 加工しやすいよう炭素繊維に熱可塑性樹脂を混ぜたうえで射出成型機を使ってドアパネル、屋根、ボンネットなどを生産する。最も軽量化の効果が大きい車台(プラットホーム)の量産技術は日産自動車などと開発済み。これらが炭素繊維になると、1500kgの車両重量が200kg前後軽くなり、事故時の衝撃にも強くなる。トヨタのほか日産や海外の自動車メーカーにも採用を呼び掛ける。
 炭素繊維の普及への最大の課題は素材べースで鉄の数十倍以上とされるコスト。東レは開発と生産を一体化した新工場の
利点を生かし、素材の特性や部品の要求水準に合った低コストの成型加工技術を顧客企業と共同で開発、生産性を大幅に引き上げる。当面は高級車など一部車種への採用にとどまるとみられるが、本格的な量産加工工場の建設・稼働によりコスト競争力をさらに高める。
 東レは愛媛工場(愛媛県松前町)と滋賀事業場(大津市)で炭素繊維の糸や樹脂を組み合わせた複合材料などを生産し、06年度の売上高は700億円弱。15年度には自動車・航空機分野向けの売上高を樹脂などを含めて5千億円にする計画。
 世界で年間6千万台強が生産・販売され、日本だけで部品を含めた出荷額が50兆円程度に達する自動車産業は素材メーカーにとって巨大市場。樹脂、アルミニウムの採用が進む一方、鉄鋼でも強度を高めて使用量を減らし軽量化につなげる技術開発を加速する。東レによる炭素繊維での参入で自動車を巡る素材間競争が熱を帯びそうだ。

▼炭素繊維
 アクリル繊維を高温で熱処理してつくる産業用素材。軽く強度に優れる点から「夢の素材」とされてきたが、コスト高が課題だ。2006年の世界市場は約2万8千トン、出荷額は2千億円前後とみられる。東レ、帝人子会社の東邦テナックス、三菱レイヨンの国内3社が世界シェアの7割を握る。従来は釣りざお、ゴルフクラブのシャフトなどのスポーツ分野が代表的な用途だった。今後は航空機や自動車など産業分野の需要拡大が期待されている。


2007/10/10 日本経済新聞

東レ 「高付加価値」シフト 炭素繊維で車部品 発表

 東レは9日、炭素繊維を使った自動車部品を供給する中核工場を名古屋事業場(名古屋市)に整備すると発表、高付加価値事業へのシフトを一段と加速する姿勢を鮮明にした。合繊原料など化学品を生産していた跡地に新工場を建設し、炭素繊維強化プラスチックの成型品などの供給拠点にする。新工場の自動車向けの売上高は2015年度に1千億円になる見通し。
 工場の整備予定地の名古屋事業場はナイロンの製造拠点として1951年に開設した。すでにナイロン繊維の原料生産は近郊にある東海工場(愛知県東海市)に移管しており、ナイロン短繊維の生産も縮小する方針だ。
 炭素繊維複合材料部門は東レの全部門の中で最も営業利益率が高く、低収益の繊維部門などを補完している。炭素繊維もアクリル繊維が原料だが、樹脂を組み合わせた複合材は高強度で軽量な先端材料の代表格で付加価値は高い。名古屋事業所の再編で東レは事業構造の転換を加速させる。

2007年10月9日 東レ    

名古屋に「オートモーティブセンター」を設置
− 自動車向け技術開発を強化・拡充 名古屋事業場の機能転換に向けた第一弾 −

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:榊原 定征、以下「東レ」)はこのたび、先端材料の拡大による高収益企業への転換を加速するべく、名古屋事業場(愛知県名古屋市)を「自動車・航空機」分野向けの中核工場として機能転換を図る基本構想を策定し、その第一段階として、自動車向けの技術開発拠点「オートモーティブセンター(AMC)」の設置を正式に決定しました。投資額は約25億円で、2008年6月の開所を予定しています。

 当社は昨年10月より、経営の”イノベーション(革新と創造)”による高収益企業への転換を目指して、中期経営課題”プロジェクト Innovation TORAY 2010(IT-2010)”をスタートし、その基本戦略の一つとして「重点4領域への先端材料の拡大」を推進しています。今回の構想は、重点領域の一つである「自動車・航空機」分野に向けた全社対応を強化し、お客様に対して組織横断的にソリューションを提供するために実施するものです。

 「オートモーティブセンター」は、2006年1月に設置した「自動車材料戦略推進室」で推進している自動車メーカー、部品メーカーに対する組織横断的な対応を更に進化させ、自動車分野向けの先端材料の開発力を抜本的に強化するために設置するものです。自動車の環境・エネルギー対応がますます重要となる中、自動車メーカー、部品メーカー各社はハイブリッド自動車、クリーンディーゼル、バイオ素材・燃料などの技術開発を重点的に推進しています。また、安全性、快適性の向上、情報・エレクトロニクス化の進展にともない、従来にない新しい機能に対するニーズが生まれてきており、技術革新が急速に進んでいます。このような事業環境の中、自動車産業のニーズに的確に対応していくためには、東レグループの豊富な先端材料・技術資源を融合し、お客様と一体となった開発を更に推進する必要があると判断し、「オートモーティブセンター」の設置を決定しました。

 東レは「オートモーティブセンター」を活用して、短期的には既存技術の横展開、日系自動車メーカーのグローバル生産に対応しながら事業拡大を図り、中長期的には自動車産業の変革に沿った先端材料・技術開発を進め、新規需要の取り込み・創出を推進します。これらの取り組みにより、自動車向け事業売上高を、2006年度実績:1,240億円から2015年度:3,500億円に拡大していきます。

 なお当社は今後、名古屋事業場を「自動車・航空機」分野向けの中核工場とする機能転換を推進していきます。自動車・航空機産業の成長著しい中京地区に両分野向けの開発機能と生産機能を集約することで、重要顧客と近接する名古屋事業場の立地の利点を最大限活かし、自動車・航空機向け先端材料の開発を強化・拡充します。「オートモーティブセンター」に続き、愛媛工場(愛媛県松前町)と滋賀事業場(滋賀県大津市)のコンポジット(炭素繊維複合材料成形品)技術開発機能を移転して「アドバンストコンポジットセンター(仮称)」を新設し、既存の「樹脂応用開発センター」と合わせて自動車・航空機向けの総合技術開発拠点「A&Aセンター」(Automotive & Aircraft Center)」を整備します。同時に生産機能についても見直しを図り、自動車・航空機向けの樹脂、コンポジット、高機能ケミカル製品の各生産体制を順次構築していきます。なお、名古屋事業場の構造改革は2010年までに完了する計画で、総投資額は約200億円を見込んでいます。

「オートモーティブセンター」(AMC)概要

1. 機能:
 「オートモーティブセンター」はお客様との共同開発の場として、以下の4つの機能を有します。

(1) お客様に対して、東レグループの保有する材料・部材・技術の融合による技術ソリューションを提供します。
(2) 部品・システムレベルの高度な分析・評価・加工技術について社内外に高度なサービスを提供します。
(3) 複数の技術開発部署にまたがる大型開発テーマについて、プロジェクトマネージメントを行い、総合力での開発を推進します。
(4) 材料・技術融合が必要な開発テーマに対し、専任者および兼務者からなるプロジェクト体制をとり、関連部署と連携したお客様との共同での技術開発を実行します。

2. 重点テーマ:
 環境・エネルギー問題に大きく貢献する下記テーマを中心に技術開発を推進します。特に世界ナンバーワン素材である炭素繊維複合材料の自動車分野での拡大を推進し、車体軽量化に貢献するために、当社の自動車向け主力素材のひとつである樹脂との技術融合を図り、リサイクル性に優れる熱可塑コンポジットによる外板、外装、準構造体等を中心に技術開発を推進する予定です。

(1) 車体軽量化技術
(2) 次世代自動車用部材開発(ハイブリッド自動車、燃料電池車等)
(3) 非石油系素材適用化技術
(4) カーエレクトロニクス対応

3. 主要設備:
 開所当初は軽量化対応技術の確立に必要な設備を導入し、テーマに応じて随時設備の拡充を図ります。なお、設備は将来整備する「A&Aセンター」各部署の保有機器を相互に補完しながら開発を推進します。代表的な設備は下記のとおりです。

(1) 物性・性能評価 歩行者保護試験装置、塗装システム、耐環境試験装置、耐久試験装置等
(2) 分析 非破壊内部検査機器、DSC、IR等
(3) 加工 大型射出成形機、フィルム加飾成形設備、各種接合機器等
(4) 設計 CAD、CAEソフト

 


2007年10月11日 東邦テナックス

炭素繊維「テナックス®」の生産増強について

帝人グループで炭素繊維事業を展開している東邦テナックス株式会社(本社:東京都文京区、社長:宇都宮 吉邦)は、100%子会社であるToho Tenax Europe GmbH(ドイツ国ブッパタール、以下「TTE社」)において、2009年8月稼働を目標に炭素繊維製造ラインを増設することを決定しました。

 炭素繊維は航空・宇宙、一般産業およびスポーツ・レジャーのそれぞれの分野で幅広く使用される高強度、高弾性の特性を持つ高機能繊維で、帝人グループのコア素材の1つです。
 また、その需要は、民間航空機用途および産業用途の拡大により、2005年から2010年まで年率15%前後の高い成長を維持すると見込まれ、2010年の総需要は4万トンを超えるものと予測されます。

 このたびの増設により帝人グループの炭素繊維の生産能力は、現在建設中のラインも含め、年産13,500トンとなる予定です。

 詳細は下記のとおりです。


1.経 緯

(1) 2006年10月、TTE社において新ライン(年産1,500トン)を立ち上げ、同社の生産能力を年産3,400トンとしました。
(2) 現在は、東邦テナックス三島事業所において、2008年4月立ち上げ予定で年産2,700トンのラインを増設中です。
(3) しかし、炭素繊維の需要はグローバルにさらに拡大する見通しであり、特に欧州市場の需要拡大に対応するため、このたび新たな増設を決定しました。この増設により、産業用途の需要増に対応するとともに、民間航空機用途の需要増にも対応していきます。

2.増設の概要

(1)設置場所 : オーバーブルフ工場(Oberbruch)
(2)設備内容 : 炭素繊維製造設備および附帯設備
(3)生産能力 : 年産1,700トン
(4)投 資 額 : 51百万ユーロ
(5)着工時期 : 2007年10月
(6)稼働時期 : 2009年8月予定


3.増設後の生産体制
 <帝人グループの炭素繊維生産能力>                  (単位:トン/年)

  現 在 2008年
三島事業所増設後
2009年
ドイツ増設後
日 本 3,700 6,400 6,400
ドイツ 3,400 3,400 5,100
米 国 2,000 2,000 2,000
合 計 9,100 11,800 13,500



日本経済新聞 2007/11/14

新日鉄マテ・新日石 炭素繊維生産2.6倍に 半導体装置用など強化

新日本製鉄子会社の新日鉄マテリアルズと新日本石油は13日、共同で炭素繊維を増産すると発表した。両社が出資する日本グラファイトファイバーが、2009年6月に年間の生産量を現行の2.6倍の180トンに引き上げる。投資額は約30億円。半導体や液晶パネル製造装置向けを強化し、自動車用途の開拓で先行する東レなどと異なった戦略を鮮明にする。
 日本グラファイトには新日鉄マテが全額出資子会社を通じて66.6%、残りを新日石が出資する。増産するのは、石炭を蒸し焼きにして鉄鋼原料用コークスを造る際に発生するタール・ピッチを原料とする「ピッチ系炭素繊維」。製造過程の温度によって自在に硬さを調整できる。東レなどがアクリル繊維から造る「PAN系」と比べ、製造装置など産業機械での使用に向くという。
 新日鉄の広畑製鉄所内にある日本グラファイトの広畑工場(兵庫県姫路市)でラインを増設する。製鉄所で発生するタールを原料に使う。


2008年1月28日 クレハ

炭素繊維事業の拡大について

 株式会社クレハ(本社:東京都中央区、社長:岩ア隆夫)は、産業界の様々な分野でピッチ系炭素繊維(商品名「クレカ」)の需要が拡大していることに対応し、いわき事業所(福島県いわき市)および上海呉羽化学有限公司(中国・上海市)の二つの生産拠点において、同時に生産設備を増強することといたしました。

〔生産設備の増強計画について〕
【いわき事業所】
 炭素繊維原糸は段階的に1,100 トン→1,800 トン(年産)へ増設、加工品の能力は倍増へ

炭素繊維原糸の生産能力(年産、以下同じ)を現行の1,100 トンから1,450 トンへ増設(2009年春稼働開始)します。引き続き第2次増設として、1,800 トンへの増設を計画しています(2012年春稼動予定)。
加工品の生産能力は、断熱材「クレカFR」、原糸を短繊維化した「クレカチョップ」について、いずれも倍増とします(2012 年春迄に段階的に増設)。
※ 2006 年12 月に炭素繊維原糸を750 トンから1,100 トンに増設しましたが、2007年で既にフル稼働となっており、2008年もフル稼働が継続する見込みです。

【上海呉羽化学有限公司】
 成型断熱材の生産能力は3 倍へ

上海市嘉定工業区南区の工業団地において2004 年に稼働開始しましたが、2006年秋の上海市および嘉定区政府からの移転要請に対し、嘉定工業区北区の工業団地へ移転することで合意しました。
移転にあわせ、「クレカFR」の生産能力を倍増します(2009年春稼働開始)。引き続き第2次増設として、「クレカFR」を現行比 3倍への増設を計画しています(2012年春稼動予定)。
  なお、現所在地の嘉定工業区南区の生産設備は、段階的に嘉定工業区北区の新工場へ移設します(2009年秋迄に移設予定)。


 両生産拠点での設備増強(移転費用含む)に関わる総投資額は、約60億円を予定しています。

〔生産設備増強の背景について〕
 当社の炭素繊維は、石油ピッチを原料とし、耐熱性、強度、加工性、導電性、耐薬品性、摺動性(※)などの特長を活かした用途開発を進めてまいりました。現在では、産業界において不可欠の素材として、年々需要が高まってきています。
 当社は、紡糸した“原糸”を加工した製品として、断熱材「クレカFR」、「クレカフェルト」、短繊維化した「クレカチョップ」、「クレカミルド」、撚り糸「クレカヤーン」、織物の「クレカクロス」、紙状の「クレカペーパー」などを供給し、世界最大のピッチ系炭素繊維メーカーとしての生産・販売体制を強化してまいりました。現在、グローバルで売上約60億円の事業規模となっています。
(※ 摺動性〜接触する素材間での摩擦磨耗の性能。ここでは滑りやすく磨耗しにくい特性)

このうち主力の「クレカFR」、「クレカフェルト」を製造工程で断熱材として使用する分野としては、
・ 大型投資が続く300 ミリ半導体ウエハーや今後の450 ミリ大口径ウエハー
・ 環境関連で普及が進む太陽光発電システム用のシリコン基板
・ 排ガス規制に対応したディーゼル車用排ガスフィルター(DPF)
・ 好調な工作機械用超硬金属や販売台数が伸びるハイブリッド車用モーター磁性材料
・ 増設が続く特殊炭素材料、C/C コンポジットやカーボンファイバー
・ 液晶プラズマディスプレイ用石英ガラス、ステッパー用レンズ、LED 基板
などがあり、環境ビジネス、半導体、自動車関連、新素材の生産分野で、いずれも代替が難しく、かつ必要不可欠な製品として使用されています。当社は、これらの炭素繊維成型断熱材分野において、世界の50%以上のシェアを持っています。
 また、「クレカチョップ」、「クレカミルド」は、プラスチック等との複合材として自動車の軸受け、クラッチフェーシング、ブレーキライニング、パワーステアリングなどのシール材部品(一部はアスベスト代替用途)や、電気・電子部品、導電材料、機械部品に使用されています。

〔本事業の今後の見通しについて〕
 本事業は、これまでの需要創生期から本格的な需要拡大期に移行しており、特に環境関連産業でのニーズが高まっています。2012年度にはグローバルで売上約120 億円の事業規模とする計画です。
 生産拠点は、上記の2ヶ所に加え米国ペンシルバニア州にKREHA ADVANCEDMATERIALS INC.があり、日本、中国、欧州、米国にある販売拠点との緊密なネットワークによる生産販売の最適化を進めながら、本事業の拡大をはかってまいります。
なお、本設備増強による2008 年3 月期業績予想への影響はありません。