平成15年6月30日  東京ガス/東京電力

「ダーウィンLNGプロジェクト」への正式参画について

 東京ガス株式会社および東京電力株式会社は、このたび、コノコフィリップス社(米国)が中心となって進めている豪州・東ティモール共同石油開発海域内「バユ・ウンダン・ガス田」を開発し、液化天然ガスを豪州ダーウィン市郊外にて生産・販売する「ダーウィンLNGプロジェクト」に正式に参画いたしました。

 これは、同ガス田の10.08%の開発権益を保有する米国企業「フィリップス・ペトロリアム・ティモール・シー社」を東京電力と東京ガスが2対1の割合で共同買収するもので、すでに両社は昨年3月に「株式売買契約」を締結しておりましたが、実際の株式取得は豪州政府と東ティモール政府のガス開発計画の正式承認後に実施することとなっておりました。(2002年3月12日発表済)
 こうした中、本年6月13日に、豪州・東ティモール両国政府がガス開発計画を正式に承認したことから、両社は6月27日に買収を完了するとともに、社名を「東京・ティモール・シー・リソーシズ社」へ変更いたしました。同時に、両社は同ガス田と豪州ダーウィン市郊外の間に敷設する海底ガスパイプライン事業ならびにダーウィン市郊外に建設する液化プラント事業にも新設子会社(東京ガス・ダーウィンLNG社、テプコ・ダーウィンLNG社)を通じて参画することといたしました。

 バユ・ウンダン・ガス田は、豪州ダーウィン市沖合500km、東ティモール南岸沖合250kmの位置にあり、約3.4兆立方フィート(約1,000億m3:LNG換算約8,000万トン)の天然ガスに加え、石油分(LPG・コンデンセート)についても約4億バレルの埋蔵量を有しています。本プロジェクトでは、石油分を洋上施設で2004年第1四半期から生産するとともに、LNGを2006年第1四半期から東京電力(200万トン/年:平年度ベース)と東京ガス(100万トン/年:平年度ベース)向けに出荷する計画です。

 両社は本プロジェクトへの参画により、燃料・原料の開発・生産に直接関与することとなり、両社がすでに開始している自社船によるLNG輸送事業とあわせ、ガスの生産から液化、販売、輸送、さらに電気事業ないしガス事業での消費までのLNGチェーンに一貫して参画することとなり、安定的かつ経済的な燃料・原料調達に資するものと考えております。

 両社はわが国のLNG導入のパイオニアとして、豪州・東ティモール両国政府および関係州政府、ならびにコノコフィリップス社、エニ社(伊)、サントス社(豪)、国際石油開発(日)とともに、LNGの新たな時代を拓く本プロジェクトの成功に向けて努力してまいります。

 
<参考>
【ダーウィンLNGプロジェクトにおける参画比率】

グループ(親会社)   比率 

コノコフィリップス(米)

56.72%

エニ社(伊)

12.04%

サントス社(豪)

10.64%

国際石油開発(日)

10.53%

東京電力(日)

6.72%

東京ガス(日)

3.36%

(注)
ダーウィンLNGプロジェクトはバユ・ウンダン・ガス田開発事業、パイプライン事業、液化プラント事業の3事業により構成されるが、各事業への参画比率は上記比率に準拠。
東京電力および東京ガスのバユ・ウンダン・ガス田開発事業の参画形態は、10.08%の開発権益を持つ「東京・ティモール・シー・リソーシズ社」に対する2対1の割合での共同所有形式。


【ダーウィンLNGプロジェクト参画会社】

(買収後の会社)
  社  名 東京・ティモール・シー・リソーシズ社(米法人)
  買収年月 2003年6月
  参画形態 豪州の100%子会社である東京・ティモール・シー・リソーシズ社(豪法人)を通じて、バユ・ウンダン・ガス田の10.08%の開発権益を所有する
             
(東京ガス)
  社  名 東京ガス・ダーウィンLNG社(豪法人)
  設立年月 2003年4月
  参画形態 パイプライン・運営権益の3.36%を所有するとともに、ダーウィン市郊外に建設する液化プラントを所有してLNGの生産・販売を行う「ダーウィンLNG社」の3.36%株式を所有する
       
(東京電力)
  社  名 テプコ・ダーウィンLNG社(豪法人)
  設立年月 2003年3月
  参画形態 パイプライン・運営権益の6.72%を所有するとともに、ダーウィン市郊外に建設する液化プラントを所有してLNGの生産・販売を行う「ダーウィンLNG社」の6.72%株式を所有する

【LNG売買基本合意の概要】
 当事者  :売主  ダーウィンLNG社
        買主  東京電力株式会社、東京ガス株式会社
 契約数量:東京電力 200万トン/年、 東京ガス 100万トン/年
        (平年度ベース)
 契約期間:2006年から17年間
 契約形態:FOB(買主である東京ガス、東京電力がLNG船を手配し輸送)

【バユ・ウンダン・ガス田概要】
 位  置:豪州・東ティモール共同石油開発海域内
      豪州ダーウィン市沖合500km、東ティモール南岸沖合250km
 埋蔵量:天然ガス  約3.4兆立方フィート
      石油分(LPG・コンデンセート)  約4億バレル


【コノコフィリップス社の概要】

2002年8月に独立系石油・ガス会社であったコノコ社とフィリップス社が合併してコノコフィリップス社誕生。(本社:米国テキサス州ヒューストン)
米系石油・ガス会社の中では第3位(従業員約57千名、総資産約800億米ドル)。
東京ガス・東京電力が購入しているアラスカLNGプロジェクトの70%権益保有者・売主。
フィリップス・ペトロリアム・ティモール・シー社(Phillips Petroleum Timor Sea Inc.)は、バユ・ウンダン・ガス田に10.08%の開発権益を有するコノコフィリップスグループ100%所有の会社だった。

日本経済新聞 2004/6/8

新日石 中国向け石油受託精製 中国石油と提携 まず日量2万バレル契約

 新日本石油は中国最大級の石油会社、中国石油(ペトロチャイナ)と石油精製で提携する。日本国内の製油所で中国側の原油を軽油や重油に加工して輸出、中国石油が販売する。石油製品の需要急伸で設備能力不足が深刻な中国側と、設備稼働率を高めたい日本側の利害が一致した。日中企業が石油精製で組むのは初めて。今後、能力不足に悩む中国の石油会社を軸に同様の国際精製提携が広がりそうだ。
 新日石は、中国石油グループで主に石油精製と国内販売を手掛ける中国連合石油(チャイナオイル)と7月上旬に提携契約を結ぶ。現在、精製手数料などを詰めている。
 提携は@チャイナオイルが主に中東で購入した原油を新日石の根岸製油所(横浜市)と水島製油所(岡山県倉敷市)にタンカーで輸送A両製油所でナフサ、灯油、軽油、重油に加工B完成品をチャイナオイルが手配したタンカーで大連などに全量輸送するーーという内容。
 新日石はまず来年3月まで9カ月間の契約を結び、同社の設備能力の2%に相当する日量2万バレルを受託精製する。両社でコストなどを検証したうえで契約を更新。精製量拡大も検討する。
 中国では発電所や自動車向けの燃料油需要が急増。2003年の石油製品消費量は日量550万バレル(液化石油ガスを含む)に達し、日本の540万バレルを上回った。今後も年率10%前後の拡大が見込まれる。
 中国石油グループは中国に約25の製油所を持ち、精製能力は世界最大の米エクソンモービルの4割弱にあたる日量220万バレル。設備増強により精製能力を同80万バレル増やす計画を打ち出しているが、それでもここ3−4年は供給が追いつかない見通しのため、新日石に提携を持ちかけた。日本での精製品は輸送費や手数料を含めると中国製より割高になる見通しだが、長期契約を結ぶことで石油製品を安定確保できる。
 一方、新日石の精製能力は日量121万7千バレルで、設備が2割程度過剰といわれる。現在は石油化学向け製品の販売が好調だが、設備稼働率を長期的に高水準に維持し、収益力を高めるため、受託生産に応じる。

中国石油
 国営石油会社の一部が独立して1999年発足。親会社の中国石油天然ガスは中国石油化工(シノペック)、中国海洋石油と並び、石油採掘から精製・販売まで手がける「三大中華メジャー」として知られる。売上高はシノペックに次ぎ2位、利益は最大。ニューヨークと香港の株式市場に上場、03年12月期の連結純利益は696億1400万元(約9050億円)。

日中、石油「補完」関係に
 中国 需給ひっ迫深刻化

 中国石油(ペトロチャイナ)が新日本石油と石油精製で提携する背景には、中国の石油需給ひっ迫がある。2008年の北京五輪や2010年上海万博に向け、モータリゼーションや社会基盤整備が急速に進む見通しで、ガソリン、重油など石油製品の供給が追いつかない懸念が高まっている。一方、日本の石油産業は精製能力がなお過剰で、今後中国石油会社からの精製受託に活路を求める企業も出てきそうだ。
 中国の原油需給は今後一段とひっ迫する恐れがある。高水準の経済成長を背景に消費量が増え続ける一方、生産・精製能力が追いつかない。中国は1993年に純輸入国に転じているが、今後も輸入量は拡大の一途をたどるとみられ、精製能力不足が石油製品価格の高騰を招く恐れもある。
 中国の2003年の原油年間消費量は前年比10%増の18億6700万バレル。一方輸入量も同31%増の6億7500万バレルに達し、消費量の37%を輸入で賄った計算になる。今年1−4月期の輸入量も前年同期比33%増の2億9700万バレルに達している。
 中国は日本と異なり、大慶(黒竜江省)など自国に大規模油田を持つ。昨年も12億5400万バレルを国内で生産したが、過去10年間の生産量の伸び率は2%未満にとどまる。同じ時期に7%近く伸びた消費量を大きく下回っている。
 原油消費の伸びをけん引しているのは自動車だ。中国の自動車販売台数は昨年、ドイツを抜き世界3位に急拡大。燃料のガソリンや軽油価格の上昇を抑えるには、ガソリン材料にもなるナフサを含め、供給量を増やす必要に迫られている。
 沿海都市部を中心に人々の生活水準が大きく向上、経済全般がエネルギー大量消費型に移行していることも、石油消費の増大につながっている。このため、中国政府は中東を中心とした産油国との関係強化を急いでいる。胡錦涛国家主席が2月にエジプト、アルジェリアを訪問するなど「石油外交」を活発化している。カザフスタンともこのほど石油パイプライン建設で合意した。一方で日中国交正常化以来続けてきた大慶からの対日輸出を停止するなど輸出を減らしている。
 原子力など原油以外のエネルギー資源にも目を向け始めているが、原油需給の改善は中期的に見込めないのが実情。日本エネルギー経済研究所の試算では、7%の経済成長を前提にすると、原油需要は2010年に昨年の1.5倍、2020年には2.4倍になる見通し。原油の戦略備蓄強化などを講じるが、需給ひっ迫が続くのは確実だ。

受託精製 国内勢メリット大きく
 新日本石油と中国石油の精製提携は、需要の頭打ちに苦しむ国内石油各社にとって、今後の事業戦略のモデルケースとなりそうだ。
 急速に一体化が進む日中経済では、電子部品や鉄鋼、樹脂などの素材分野で中国輸出が国内生産を下支えする構図が出来上がっている。素材や付加価値の高い高機能部品では、日本が「中国の工場」になりつつある。石油製品では中国側に輸入枠があり、日本の石油元売りが輸出を自由に増やせる環境にないが、輸出扱いにならない精製受託はむしろ中長期的に強固な関係を築ける。
 ただ、受託精製は韓国やシンガポールの大型製油所も手掛けており、中国の需要を安定的に取り込むにはコスト競争力の向上が欠かせない。
 今回の提携で、新日石には国内の石油製品需要が減少するなか、既存の生産設備を有効に活用しようとする明確な狙いがある。余剰能力に頭を悩ますのは他の元売り各社も同じ。受託精製や輸出などで中国の需要を取り込めれば、設備稼働率向上に加え、国内製品の需給引き締めによる市況改善も見込める。
 現在、日本国内の原油処理能力は需要よりも2割ほど多いと言われる。元売り各社は常に設備の稼働率を上げて生産効率を高めようとするため、供給量が多くなり、結果として製品単価の引き下げにつながっていた。
 製品単価が下がり、利益率が落ちる一方で、製油所を稼働させる際に必要な電力や熱源の費用、人件費などの固定費負担が元売り各社の経営に重くのしかかっていた。
 このため昨年、出光興産が兵庫製油所(兵庫県姫路市)などを閉鎖。コスモ石油が一部製油所の能力を削減する方針を明らかにLていた。
 現在、コスモ石油は国内で需要が減少している軽油を中心に中国向けの輸出を増やしているほか、出光は中国企業と提携して中国国内で給油所の展開を開始。ジャパンエナジーは中国に潤滑油の生産拠点を有するなどそれぞれ中国との関係を深めている。
 こうした関係を生かして、今後各社は受託精製などで中国との一層の関係強化や「日中一体化策」を模索するとみられる。


FujiSankei Business i. 2004/8/27

新日石が中国最大級の潤滑油メーカーへ 来月、2つ目の工場
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/art-20040826213543-MMJFYEYMHL.nwc

 新日本石油が中国・広州市にエンジンオイルを中心とする自動車用潤滑油の合弁生産会社を新設することが26日、明らかになった。中国での同社2つ目の潤滑油工場で、稼働を始める2006年には現地生産能力が年10万キロリットルに倍増。外資系としては中国最大級の潤滑油メーカーになる。

 新会社は中国国営石油会社の中国石油化工(シノペック)などとの共同出資で設立する。社名を「
中石化日石(広州)潤滑油」とし、資本金は約15億円。出資比率はシノペックが50%、新日石が40%、それに化学メーカーの明和産業(東京都千代田区)が10%とすることで、同日までに関係者が基本合意した。9月上旬に設立する。

 11月に広州市で工場建設に着手し、06年から年5万キロリットルの潤滑油を製造・販売する。総投資額は約30億円。中国の自動車保有台数が急速な勢いで伸びており、潤滑油需要も急増が見込まれているのに対応する。

 広州市では、ホンダ(東京都港区)が4ドアセダンの「アコード」やミニバンの「オデッセイ」を製造、トヨタ自動車(愛知県豊田市)も06年にも現地生産を始める計画にある。このため新日石は、広州市を含めた華南地区での供給体制の強化を検討。潤滑油需要への対応を計画していたシノペックと思惑が一致した。

 新日石は1995年に、シノペックグループと合弁で天津市に潤滑油の製造・販売会社「
天津日石潤滑油脂」を設立、トヨタの現地合弁などに潤滑油を供給している。需要拡大に伴い、年産2.5万キロリットルの生産能力を05年までに同5万キロリットルに増強する計画で、広州合弁とあわせた新日石の現地での潤滑油生産能力は同10万キロリットルに拡大する。

 中国では、新日石のほか
出光興産が上海市郊外に年産4万キロリットルの合弁工場を持っており、今年11月には天津市に全額出資で同2.5万キロリットルの工場を設ける予定。またジャパンエナジーも山西省陽泉市に同2万キロリットルの合弁工場を備えている。


「人民網日本語版」2004年8月30日

新日石、中国石油化工と潤滑油メーカー設立へ
http://j.peopledaily.com.cn/2004/08/30/jp20040830_42910.html

 日本の石油最大手、新日本石油が中国事業の拡大を速めている。新日石と中国石油化工公司が合弁会社「中石化日石(広州)潤滑油公司」を設立することが29日、明らかになった。新日石にとっては中国で設立する2社目の潤滑油メーカーとなる。

 新会社の資本金は約1500万ドルで、出資比率は中国石油化工が50%、新日石が40%、日本の明和産業が10%。9月に設立し、2006年から操業を開始する予定で、潤滑油の年間生産量5万リットルを目指す。

 新会社の設立が中国の潤滑油業界に影響をもたらすのは必至だ。筆頭株主となる中国石油化工は中国三大潤滑油会社の一つ、長城潤滑油公司の親会社でもある。新日石は1995年に中国石油化工系列の燕化集団と合弁会社「
天津日石潤滑油脂公司」を設立し、潤滑油年間2万5千トンを生産している。新会社の誕生により、中国石油化工の国内市場における地位は高まるとみられ、中国石油化工系列の長城潤滑油、中国石油系列の崑崙潤滑油、統一潤滑油からなる三大大手の勢力図に変化が出る可能性もある。

 同時に、自動車業界への影響も予想される。中国の日本系合弁自動車メーカーはこれまで、出光興産や天津日石潤滑油脂公司の潤滑油を採用してきた。中国資本系潤滑油メーカーである崑崙と統一もこれまで日系自動車メーカーへの市場拡大を狙ってきたが、新たな日系合弁会社の設立により、望みがほぼ立たれた形だ。


天津日石潤滑油脂有限公司

天津日石潤滑油脂有限公司は、新日本石油が出資し、中国での潤滑油、グリースの生産、販売拠点として設立いたしました。天津日石の使命は、自動車性能や工場の生産性の向上につながる潤滑油を安定供給すること。現地に常駐する日本人担当者のきめ細かなサービスと高品質で使いやすい製品のご提供をとおして、お客様の中国でのビジネスを強力にサポートいたします。

所在地:天津市漢沽区営城西街
出資会社:新日本石油株式会社
       明和産業株式会社
       燕化集団天津潤滑油脂有限公司
事業内容:潤滑油・グリース製造、販売
製造出荷能力:35千KL/年
公式ホームページ 
http://www.tjnisseki.com/

 


日本経済新聞 2004/9/17

三愛石油 キグナスを買収 180億円 給油所倍増、1400カ所

 石油販売大手の三愛石油は年内にも米メジヤー(国際石油資本)エクソンモービル系の元売り会社、キグナス石油を約180億円で買収する。エクソンモービル系などから全株式を取得し、キグナスが全国約680カ所で展開する給油所網を傘下に収める。販売網を一気に倍増し、ガソリンなどの仕入れコスト低下につなげる。メジャー系との関係を強化し、燃料の安定供給にも結び付ける。
 キグナス石油は、エクソンモービル系の石油精製・元売りの東燃ゼネラル石油と水産物商社のニチモウが各50%を出資する。ガソリン販売シェアは2.3%(2003年度)で国内8位。2003年12月期の売上高は3552億円、経常利益は10億円。
 三愛石油は株主2社から全株式を取得し、キグナスの直営給油所などの保有資産や、同社の特約給油所に燃料を供給する権利などを獲得する。
 現在、キグナスの石油製品は東燃ゼネラルから供給している。両社は買収後も従来通りの条件でガソリンなどの取引を続ける。三愛グループの給油所は約800カ所。買収により傘下の給油所数は約1480カ所となり、全農グループの約4500カ所、伊藤忠エネクスの約2100カ所に次ぎ石油流通業界3位になる。今後、元売りと販売会社の関係強化による業界再編が加速する可能性がある。

三愛石油 価格交渉力高める キグナス買収 仕入れ、広がる選択肢

 石油販売大手の三愛石油が元売りのキグナス石油を買収するのは、系列給油所を多く抱える「メガディーラー」として仕入れ先に対する価格交渉力を一挙に高める狙いがある。豊富な資金力を背景にした商社系など大手流通会社が、今回の再編を機に規模の拡大を急ぐ動きが活発になりそうだ。
 1996年の石油製品輸入自由化以降、販売数量の多い大手の石油流通会社は、複数の精製・元売り会社を相手に割安な輸入品と価格を競わせて仕入れコストを引き下げてきた。そして安い卸値を武器に傘下の給油所数を増やしている。
 全国の給油所数は今年3月末で5万67カ所と、4年前に比べ5105カ所も減少した。この間、三愛石油は24カ所増やして805カ所に、伊藤忠エネクスは121カ所多い2178カ所に増加。三菱商事石油は今年3月までの2年間で114カ所も増やした。
 販売会社にとって製品の仕入れ先の選択肢が多いほど価格交渉力は高まる。三愛石油はキグナス株の買収と併せ、東燃ゼネラルの川崎製油所から長期で製品を安定的に調達できる権利も取得した。エクソンモービル側にも設備稼働率を維持できるメリットがある。
 一方、競争で閉鎖に追い込まれているのは、1社の元売りとだけ契約する中小の販売会社が多い。かつて自社のシェアを維持するためにこうした業者を資金支援した元売りは競争激化でその余力がなくなっている。元売りは価格の主導権が及ぶ販売会社を徐々に失い、一段の合理化を迫られる。


日本経済新聞 2004/12/16

千代田化工 世界最大LNG設備 4000億円規模 カタールで共同受注

 千代田化工建設と仏エンジニアリング大手のテクニップは15日、カタール国営石油会社などから同国に世界最大の液化天然ガス(LNG)生産設備を建設するプロジェクトを共同受注した。2008年に稼働する
年産能力1560万トンの設備で、建設費は4千億円強。世界的なエネルギー需要拡大を背景に、産ガス国などが相次ぎ生産設備を増強する恩恵が、日本のプラント産業に波及してきた。
 
カタール国営石油会社が70%、エクソンモービルが30%を出資する合弁会社が、ペルシャ湾沿岸のラスラファンに年産780万トン2基のプラントを新設するプロジェクトを受注した。千代田化工が生産の基幹部分を握るため、同社の受注額は2500億円と全体の約6割を占め、日本のプラント会社として過去最大規模の案件となる。
 LNG設備は生産コスト削減を狙って大型化が進んでいる。現在、世界で稼働中のLNGプラントで最大の生産能力を持つのは、カタールの年470万トンの設備。建設中の施設ではロシア・サハリン2の960万トン、エジプトの500万トンのプロジェクトがある。
 千代田化工などが受注した案件はこれらを大きく上回り、日本の年間輸入量の4分の1に相当する規模となる。完成後に出荷するLNGの価格は従来より2割以上安くなる見通しで、全量を英国へ輸出する計画だ。


日本経済新聞 2005/3/16

出光・三菱商事 LPG事業統合
 来年4月国内首位、シェア20%

 出光興産と三菱商事は15日、液化石油ガス(LPG)事業を統合すると発表した。2006年4月に新会社を設立。出光が51%、三菱商事が49%を出資する。統合後の同分野における市場シェアは約20%に高まり、新日本石油ガスを抜いて首位となる。LPG業界は競争が激しく、両社は事業統合で経営の効率化と販売体制の強化を狙う。
 出光の完全子会社である出光ガスアンドライフと、三菱商事の子会社である三菱液化ガスを合併する。三菱液化には三菱商事以外に新日本石油など6社が出資しているが、三菱商事が統合前に完全子会社化。三菱商事本体のLPG輸入部門を三菱液化に集約した上で、出光ガスと合併する計画。
 新会社の社名や資本金は今後詰める。会長は三菱商事から、社長は出光から出す。社員は約350人で、三菱商事のLPG部門から30人が出向し、残りは出光ガスと三菱液化から移る。合併後の新会社の売上高は06年度で約4千億円、経常利益は08年度までに約100億円を目指す。
 統合によるコスト効果は約25億円。内訳はLPGの輸入量拡大で10億円、LPGの物流・販売拠点などの統廃合で15億円を見込む。15日に都内で開いた記者会見で、出光の天坊昭彦社長は「LPG輸入基地の立地が重なっていない。輸入・販売手法も似ており、両社の統合効果が大きいと判断した」と強調。三菱商事の増田幸央副社長は「今までLPG輸入船の共同利用などで協力し、関係が深かった」と述べた。
 出光ガスの03年度の売上高は1550億円で、市場シェアは2位。三菱液化ガスは同650億円で7位。三菱商事のLPG部門の売上高は同1800億円。


2005年3月29日 新日本石油

石油公団保有株式の取得について
http://info.eneos.co.jp/press/2004_2005/e71_pr_20050329_02.html

 当社グループは、石油公団が保有する日本ベトナム石油株式会社、日石マレーシア石油開発株式会社、日石サラワク石油開発株式会社およびNippon Oil Exploration (Dampier) Pty Ltdの株式を下記のとおり取得いたしましたのでお知らせいたします。

 上記の4社は、当社の上流部門を統括する子会社である新日本石油開発株式会社が民間の筆頭株主としてそれぞれの事業を主導しており、戦略的にも重要な資産であるため、当該株式を取得・保有する目的で新日本石油開発株式会社の子会社として新たに設立した新日石資源投資株式会社が、石油公団により実施された株式売却のための入札に参加し、今般取得に至ったものであります。

1. 取得対象株式

  取得株数 (公団持株比率) 取得後の当社
グループ持株比率
日本ベトナム石油(株)   198,000株 (43.94%)     97.07%
日石マレーシア石油開発(株)   101,080株 (38.58%)     78.73%
日石サラワク石油開発(株)   111,600株 (37.48%)     76.50%
Nippon Oil Exploration (Dampier)社 15,784,000株 (47.04%)     100.00%

(注:各社の概要については「株式を取得した会社の概要」参照)

2. 取得価格

日本ベトナム石油(株)

  14,125,320,000円

(71,340円/株)

日石マレーシア石油開発(株)

7,116,032,000円

 (70,400円/株)

日石サラワク石油開発(株)

9,100,087,200円

(81,542円/株)

Nippon Oil Exploration (Dampier)社

 2,230,000,000円

(141円/株)

合計   32,571,439,200円  

【株式を取得した会社の概要】

1. 日本ベトナム石油株式会社
 (1) 商号 日本ベトナム石油株式会社
 (2) 代表者 代表取締役社長 甲斐 勝
 (3) 所在地 東京都港区西新橋一丁目3番12号
 (4) 設立年月日 1992年8月21日
 (5) 事業内容 ベトナム15-2鉱区においてランドン油田生産中(オペレーター)
 (6) 資本金 22,530百万円
 (7) 株主構成 新日本石油開発(株) 53.13%
          新日石資源投資(株) 43.94%
          三菱商事(株) 2.93%

2. 日石マレーシア石油開発株式会社
 (1) 商号 日石マレーシア石油開発株式会社
 (2) 代表者 代表取締役社長 甲斐 勝
 (3) 所在地 東京都港区西新橋一丁目3番12号
 (4) 設立年月日 1987年10月14日
 (5) 事業内容 マレーシアSK-10鉱区においてヘランガス田生産中(オペレーター)
 (6) 資本金 13,100百万円
 (7) 株主構成 新日本石油開発(株) 40.15%
          新日石資源投資(株) 38.58%
          帝国石油(株) 15.00%
          三菱商事(株) 6.27%


3. 日石サラワク石油開発株式会社
 (1) 商号 日石サラワク石油開発株式会社
 (2) 代表者 代表取締役社長 甲斐 勝
 (3) 所在地 東京都港区西新橋一丁目3番12号
 (4) 設立年月日 1991年8月6日
 (5) 事業内容 マレーシアSK-8鉱区においてジンタンおよびセライガス田生産中
 (6) 資本金 14,889百万円
 (7) 株主構成 新日本石油開発(株) 39.02%
          新日石資源投資(株) 37.48%
          帝国石油(株) 15.00%
          三菱商事(株) 8.50%

4. Nippon Oil Exploration (Dampier) Pty Ltd
 (1) 商号 Nippon Oil Exploration (Dampier) Pty Ltd
 (2) 代表者 代表取締役社長 甲斐 勝
 (3) 所在地 東京都港区西新橋一丁目3番12号
 (4) 設立年月日 1997年 4月24日
 (5) 事業内容 オーストラリアWA-26-L/WA-27-L鉱区におけるムティニア/エクセター油田の生産
          およびWA-191-P鉱区における探鉱
 (6) 資本金 33,552千豪ドル
 (7) 株主構成 新日本石油開発(株) 52.96%
          新日石資源投資(株) 47.04%

5. 新日石資源投資株式会社(参考)
 (1) 商号 新日石資源投資株式会社
 (2) 代表者 代表取締役社長 甲斐 勝
 (3) 所在地 東京都港区西新橋一丁目3番12号
 (4) 設立年月日 2004年11月20日
 (5) 事業内容 石油公団保有株式の取得・保有
 (6) 資本金 10百万円
 (7) 株主構成 新日本石油開発(株) 100%


日本経済新聞 2005/4/5

シェブロン ユノカルを買収 米石油大手、1兆9000億円で

 米石油2位のシェブロン・テキサコは4日、同9位のユノカルを総額約180億ドル(約1兆9400億円)で買収することで合意したと発表した。イタリアの炭化水素公社(ENI)や中国海洋石油(CNOOC)に競り勝った。買収でシェブロンの原油・天然ガスの可採埋蔵量は約15%増える見通し。原油高で手元資金が豊富になった石油メジャーが企業買収の意欲を強めている。
 買収は株式交換と現金支払いの組み合わせで実施、6カ月以内の完了を見込む。ユノカルは東南アジアに有力油田、ガス田を持つ。需要が急増している中国、インド向けに輸出拡大を狙うシェブロンには魅力的な買収対象だった。
 シェブロンなどは新しい油田、ガス田の開発に取り組んでいるが、失敗のリスクが伴い、実際の生産までには時間もかかる。このため、すでに有望鉱区を持つ企業を傘下に収め、可採埋蔵量を増やす戦略も並行して進める。

石油業界再編 第二幕へ
 需要増で油田確保 豊富な資金力生かす

 石油業界で再び合併・買収(M&A)の機運が高まっている。米シェブロン・テキサコによる総額約180億ドルでのユノカル買収は、1990年代後半以来の大型再編劇となる。新興国でエネルギー需要が急増する中、同業他社買収で供給源をきっちり押さえる構えだ。
 90年代後半のM&Aでは石油メジャー同士が合併して米エクソンモービルなどの「スーパーメジャー」を生み出した。当時、原油価格は低迷し、製油能力も余剰だった。このため、M&Aで規模を拡大し、コスト競争カを磨く道を選んだ。
 今回、シェブロンが買収するユノカルは、すでに収益性の低い石油精製などを分離し、油田・ガス田の開発・生産などに事業を絞り込んでいた。このため、国内外の石油会社にとっては格好の買収対象となり、中国企業まで関心を示した。
 メジヤーにとっては、世界的に原油の需給逼迫感が強まる中、資源を押さえることが株価対策にもなる。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルはずさんな資源管理で可採埋蔵量の下方修正を繰り返し、経営陣の刷新に追い込まれた。シェブロンでも2004年の可採埋蔵量は110億2500万バレル(天然ガスは原油換算)で、前の年に比べ6%減っていた。
 原油高で手元資金が豊富になり、買収には格好のチャンスが訪れた。次の買収候補には、米国内では中堅以下のオキシデンタル石油、アナダルコ石油、デボン・エナジーなどの名が挙がっている。ある石油アナリストは「埋蔵量に問題のあるシェルやコノコフィリップスも買収に乗り出す」と指摘する。
 エクソンの04年の純利益は253億ドルと未曽有の水準に膨れあがった。メジヤーにとっては資金面で問題はない。ただ、企業買収は、地道に未開拓の鉱区を探査する場合に比べ、可採埋蔵量を増やすコストが割高との指摘もある。どこまでM&Aが盛り上がるかは、石油メジヤーの長期的な採算(原油価格)展望にもかかっている。


日本経済新聞 2005/4/15

三菱商事 石油代替燃料を量産
 シェルと組みカタールで 事業費6300億円

 三菱商事はペルシャ湾の資源国カタールで石油代替となる次世代燃料の生産事業に参加する。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと組み、天然ガスを原料とする環境負荷の小さい液体燃料を2009年にも世界最大規模で量産開始する。総事業費60億ドル(6300億円)のうち最大600億円を負担、一部を日本に輸入する計画。歴史的な原油高と環境規制強化で石油代替燃料の需要が高まるとみて、メジャー(国際石油資本)と共に新エネルギー事業を推進する。 三菱商事は来日したカタールのアティーヤ・エネルギー産業相と新燃料プロジェクトヘの参加で基本合意した。総事業費の5−10%を負担する方向で詰めている。

▼GTL
 ガス・ツー・リキッド(気体から液体へ)の略。天然ガスを一酸化炭素と水素に転換し、触媒で分子構造を組み替え、軽油などを生産する技術・製品。主にディーゼルエンジン車に使う。硫黄分などがほぼゼロで、環境への負荷が軽い。都市ガスに使う天然ガスは液化して海上輸送する必要があるが、GTLは液体のまま運べ、給油所が利用できる。

 新燃料は「GTL(ガス・ツー・リキッド)」と呼ばれる。原油を精製した石油製品と比べて、燃焼効率に優れ燃費が良く、環境に負荷となる硫黄分をほとんど含まない。半面、製造工程が複雑なため割高だ。
 しかし原油価格が1バレル50ドルを超え中期的に高値が続くとの見方が多く、三菱商事は原料の安いカタールでGTLを量産すればコスト競争力を確保できると判断した。日本企業がGTL商業生産に参加するのは初。
 プロジェクトはカタールの大規模なノースフィールド・ガス田産出のガスを原料に、同国北部に液化プラントを建設。軽油のほか石化原料ナフサ(粗製ガソリン)を生産する。規模は日量14万バレルと、日本の原油使用量の約3%に相当し、現在のGTL世界総生産量にも匹敵する。主に欧米に輸出、三菱商事は一部を日本向けに販売する。
 シェルは現在、マレーシアでGTL試験プラントを稼働中。世界での実用化をにらみ、トヨタ自動車とGTL燃料専用の自動車エンジンの開発にも着手している。
 一方、三菱商事は日本でシェルグループの昭和シェル石油と組み、マレーシアで生産されたGTL軽油を使ったディーゼル車の走行試験を実施した実績がある。カタールのプラント稼動で日米欧向けGTL供給体制を整え、シャルグループと共同で本格実用化に取り組む。

三菱商事 脱石油時代にらむ  資源投資を多様化

 三菱商事がカタールで新燃料のGTL(ガス・ツー・リキッド)生産に参加するのは資源投資戦略の転換だ。従来はリスクの高いペルシャ湾内での投資に慎重な姿勢を取ってきたが、原油高に伴う代替燃料への関心の高まりが背中を押した。総合商社は脱石油時代をにらみ資源投資の多様化を加速しそうだ。
 天然ガスは未開発鉱区が多く、商社は新ガス田開発や液化天然ガス(LNG)プロジェクトヘの参加を急いでいる。各社は潤沢な手元資金を生かし、GTLを含めた天然ガス事業にどれだけ絡めるかが資源事業の安定を左右するとみている。
 なかでもカタールの注目度は高い。人口わずか80万人だが、天然ガス埋蔵量は世界3位。LNG輸出量はインドネシアなどに次ぐ4位で、数年内に首位となる見通し。GTLでも英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルのほか米エクソンモービルなど欧米メジャーがそろって生産を予定している。
 同国では三井物産や丸紅、伊藤忠商事がLNG生産に参加済み。三菱商事はLNG取扱量で最大手にかかわらず投資に慎重だったが、今後ペルシャ湾投資を拡大する可能性がある。
 GTLは技術的に確立され、「燃料電池車より本格実用は近い」(大手自動車メーカー)との見方がある。ただ石油より格段に燃えやすい分、当面は軽油や灯油と混ぜて利用する。単独で使うには専用のエンジン装置が必要になるなど、普及には課題も少なくない。


日本経済新聞 2005/8/28

石油精製設備 10年ぶり大型投資
 重質油利用 5社計2000億円 石化製品海外で拡販

 新日本石油、出光興産など石油元売り5社が国内でほぼ10年ぶりとなる大規模な精製設備の増強に相次いで乗り出す。投資額は5社合計で2千億円強。石油化学製品の生産に適した軽質原油に比べて割安な重質原油から石化製品、ガソリンなどを量産する分解装置を増設する。原油高騰が続くなか中国勢などとのコスト競争力を高め、成長が続く海外市場での拡販を急ぐ。
 新日石は重油を軽質化して石化製品などを作る流動接触分解装置(FCC)を新設する。2008年度をめどに、日量数万バレルの処理能力を持つ同装置を神奈川県か北海道の製油所に設置する計画。投資額は1千億円程度とみられる。従来装置に比べてプロピレンなど石化製品が4倍以上生産できる見通し。
 ジャパンエナジーも最大500億円を投じ、プロピレンを3割以上増産できる装置を開発、08年度中に新設する。太陽石油は200億ー300億円を投じ、07年度をめどに同社としては初のFCCを新設する方針。重質油を使って石化製品やガソリンを低コストで生産する。
 コスモ石油は07年度末までに400億円を投じて製油所にある既存の分解装置を増強する。重質油を使い07年度末までに約60億円のコスト削減につなげる。出光興産は数億円を投じ、千葉製油所(千葉県市原市)の既存装置の処理能力を約1割増の日量4万5千バレルに拡大した。今後も他の製油所で分解装置を増強する。
 日本が輸入する代表的な軽質油であるサウジアラビア産のアラビアンエキストラライトは7月積みが1バレル56.1ドルとなった。重質油のアラビアンヘビーは49.7ドル。8、9月の価格差はさらに拡大傾向にある。FCCを導入する各社にとっては格差が広がるほどコスト削減効果が大きくなる。
 石油元売り各社は大半を国内向けに販売しているが、国内の石油需要は頭打ち。今後の成長を維持するには海外市場への販売が不可欠となっている。各社は今回の大型投資で、価格競争力を高め、米国や中国向け輸出を増やす。
 国内で精製装置を大規模に増強するのは石油製品の輸入自由化を控えた1995年以来。当時は、海外からの安いガソリン流入に対抗するため、各社が能力増強に動いた。


石油元売り5社の設備投資計画の詳細

  投資額 装置の種類と設置方法 製油所
稼働時期
新日本石油 約1000億円 高性能FCCの新設 室蘭(北海道室蘭市)か
根岸(横浜市)
08年度まで
ジヤパンエナジー 300-500億円 高性能FCCの新設 未定
08年度中
コスモ石油 400億円 既存FCCの増強 未定
07年度まで
出光興産 10億円未満 既存FCCの増強 千葉(市原市)
05年上期
太陽石油 200-300億円 FCCの新設 四国(愛媛県今治市)
07年度まで

 

重質原油
▽…油田から取れる原油のうち、粘性が高く重量が重いものを指す。粘性が低く軽いのが軽質原油。
重質原油は重油やアスファルトなどの生産に適しており、代表的な油種にサウジアラビア産のアラビアンヘビーやイラン産のイラニアンヘビーがある。
軽質原油は石油化学原料のナフサやガソリンの生産に向き、アラビアンライトや北海原油がある。
▽…発電所や工場用の燃料を重油から軽油や天然ガスに切り替える動きが世界的に進み、重質原油の需要は減る傾向にある。ただ、重油は流動接触分解装置(FCC)を使い、金属や樹脂などでできた網の目状の触媒に通すことで軽質化できる。

 


日本経済新聞 2005/9/15

商社、原油を一斉増産
 三菱商事など、日量10万バレル規模に

 総合商社が一斉に原油の生産・供給を拡大する。三菱商事が米メキシコ湾で相次ぎ生産を始めるほか、三井物産は中東オマーンで増産、伊藤忠商事もカスピ海で生産が軌道に乗った。1社当たりの生産量は日本の輸入量の2%強に相当する日量10万バレル前後と、新日本石油に迫る勢い。原油高を背景に、従来の権益投資から油田操業まで踏み込んだ事業を加速する。

 三菱商事はこのほどテキサス州沖の「
マスタング・アイランド726」(鉱区名)で原油生産を始めた。生産量は日量2千バレル程度。同社にとってメキシコ湾で6番目の油田で、さらに3カ所でも年内に生産を始め、同湾での生産量を同8千バレルから来年度は2万バレル程度に増やす。同社の世界での原油生産は9万5千-10万バレル(天然ガスの原油換算含む)に達する。
 三菱商事は同鉱区を共同開発する米石油会社の権益30%分を取得して100%油田とし初めて油田生産で操業管理を手掛けるオペレーターとなった。日本企業の石油開発は権益投資が大半で、開発専業最大手の国際石油開発でもオペレーター油田は数カ所。商社では双日がメキシコ湾で昨年から始めた程度。
 三井物産は米社と生産するオマーンの「ブロック9」(鉱区名)の能力増強工事で「持ち分生産量」を日量3千バレル上乗せし、同1万5千バレルに引き上げた。伊藤忠が参加する国際企業連合も5月、
カスピ海と地中海を結ぶパイプラインヘの送油を開始。カスピ海での原油生産もピークは日量110万バレルに増える見通しで持ち分生産量も現在の3万3千バレルの3倍近くになる。

商社の原油生産量(天然ガス換算分含む)
 〔持ち分生産量の単位はバレル/日、米SEC基準ベースとは異なる〕
企業名
(持ち分生産量)
主な油田・天然ガス田、
今後の増産計画
三菱商事(8万5000) ・ガボン、アンゴラ、オーストラリアなど
・メキシコ湾増産で06年度に9万5000-10万バレル
三井物産(11万5000) ・カタール、タイ、オーストラリアなど
・オマーン増産で生産能力増強、3000バレル積み増し
伊藤忠商事(3万3000) ・アゼルバイジャン(カスピ海)、英領北海など
・カスピ海原油のフル生産で08年度に9万1000バレルに

 


2005/9/15 三菱商事

米国メキシコ湾における原油生産開始並びにオペレーターシップ取得について
http://www.mitsubishicorp.com/jp/pdf/pr/mcpr050915hy.pdf

 三菱商事は、1998年より米国メキシコ湾において原油・ガスの探鉱・開発・生産事業を推進していますが、今般同地域の新たな油田にて原油生産を開始するとともに、当社として始めてオペレーターとして操業そのものを全面的に行うこととなりました。
 今般原油生産を開始したのは米国メキシコ湾沖合いに位置する
マスタング・アイランド(Mustang Island) 726鉱区で、当社の同地域での原油・ガス生産事業としては6鉱区目の生産鉱区となります。また、現在、他に3鉱区でも開発作業を進めており、いずれも年内に生産開始予定で、来年度には9鉱区合計で原油換算日量約20,000バレルの生産を計画しております。
 同鉱区では、米国メキシコ湾での開発オペレーションに定評のあるターポン・オペレーティング・デベロップメント社(米テキサス州)と共同で鉱区権益を取得し開発を行ってまいりましたが、当社は原油生産開始にあわせてターポン社の保有する同鉱区の権益30%を取得し、同鉱区は当社が100%保有することとなりました。今後、関係当局への登録などを経た後、当社子会社が同鉱区でのオペレーターとして操業を開始します。また、当該地域においては当社100%にて周辺鉱区も取得する予定で、今後探鉱活動を実施し、開発可能性を調査します。
 米国メキシコ湾は、市場に近くパイプライン等インフラ・投資環境も整っており、今後とも有望な案件を開拓し積極的に取り組むコア・エリアの一つと考えております。石油・ガスの探鉱・開発・生産事業は、三菱商事の重点戦略分野の一つでありますが、今回オペレーターを取得することで、石油・ガス田の開発のノウハウをさらに高め、一層の事業拡大を図る方針です。


2004年10月29日 双日

メキシコ湾ガス田鉱区権益を取得
http://www.sojitz.com/pdf/2004/026.pdf

 双日株式会社とアラビア石油株式会社(本社:東京都品川区、取締役社長:坂本吉弘、資本金:130 億円)は、双日の全額出資子会社であるNI ENERGY VENTURE, INC.(米国デラウェア州法人。本社:米国テキサス州ヒューストン市、取締役社長:寺西清一、資本金:25 百万米ドル)が、アラビア石油の全額出資子会社のAEDC (USA) INC.(米国デラウェア州法人。本社:米国テキサス州ヒューストン市、取締役社長:横山佳生、資本金:12 百万米ドル)から同社が米国メキシコ湾において保有している天然ガスに関わる権益(生産中の3 鉱区を含む7 鉱区。下記参照。)の譲渡を受けることに合意いたしました。

取得鉱区 : メキシコ湾ルイジアナ州沖合いガス田(MC 487、VR 70、VR 86、VR52、VR76、VR96、VR111)計7 鉱区の100%権益
取得確認埋蔵量 : 約15bcfe(約425 百万立方メートル)

 双日は、エネルギー上流分野における石油・ガス田の生産・開発事業を重点分野の一つとして掲げ、生産が既に開始されている「生産鉱区」、および石油・ガスの存在(埋蔵量)が既に確認されているものの生産には至っていない「開発鉱区」にターゲットを絞り、米国(メキシコ湾)、英国(北海)を始め、南米・アフリカ、中東、アジア等にリスク、ポートフォリオの分散を図りながら上流権益投資を展開しています。
 今般取得する上述7 鉱区を加えると、双日は米国メキシコ湾に合計29 鉱区の石油・ガス田権益を保有することとなり、2005 年4 月時点での生産日量は最大で約48mmcfe(約136 万立方メートル)となります。同地域は双日のエネルギー上流事業におけるコア地域の一つとして位置付けており、今後も引き続き優良鉱区権益の発掘、取得を行っていきます。


日本経済新聞 2005/9/27

LNG生産 世界最大級の計画参加 三井物産、カタールで


 三井物産は中東・カタールで単一生産設備としては世界最大級の能力を持つ液化天然ガス(LNG)生産事業に参加する。カタール国営石油会社と米コノコ・フィリップスが計画中のLNG事業の権益1.5%を取得することで基本合意した。カタールは近く世界最大のLNG生産国となる見通し。三井物産は巨大事業への参画を通じて同国との関係を強化する。
 三井物産が権益を取得するのは「カタールガス3」プロジェクト。ペルシャ湾の大型天然ガス田から産出するガスを、カタール北部ラスラファンに建設するプラントで液化する。生産能力は年間780万トンで、生産開始は2009年。
 三井物産は天然ガスを掘削する際に産出するコンデンセート(超軽質油)年間1千万トンを13年間引き取り、日本を中心とするアジア諸国へ持ち込む。日量べースでは日本の原油輸入量の0.6%程度に相当する。LNGはコノコが米国市場に輸出する計画だが、三井物産も一部引き取る方向で交渉を続ける。
 総事業費は55億ドル(約6050億円)。三井物産の投融資保証の総額は権益の取得比率に応じた90億円程度になるもよう。国際協力銀行も日本のエネルギー調達の強化につながるとしてプロジェクトヘの融資を前向きに検討する。
 カタールは単一鉱区として世界最大の天然ガス田を保有、世界的なエネルギー需給の逼迫を背景に強気のLNG増産計画を進めて2010年代に総生産量7700万トンを計画、インドネシアやマレーシアを上回る世界最大のLNG生産国に浮上する。米コノコや米エクソンモービルなど欧米メジャーが大型投資を準備している。

 

 


2005/10/3 日本経済新聞夕刊

リビアの油田開発 日本5社が落札 帝国石油など計6鉱区


 リビア政府が2日に首都トリポリで実施した油田鉱区の公開入札で新日本石油開発、石油資源開発、帝国石油、国際石油開発、三菱商事の5社が企業連合などの形で計6鉱区の開発権益を落札した。同国での日本の権益獲得は初めて。
 リビアは世界9位の原油可採埋蔵量を持つうえ、良質な未開発油田が多い。原油の高値基調が続く中、日本のエネルギー資源開発の弾みとなる。
 入札対象は内陸部、沖合などの計26鉱区で、世界の主要石油会社約60社が参加した。各鉱区ごとに自社の取り分と契約時にリビア側に支払う金額を提示し、リビア側から見て最も良い条件を出した企業が落札した。
 日本勢は帝石・三菱商事連合が2鉱区を得たほか、新日石・三菱商事連合、石油資源開発・新日石・三菱商事の3社連合、国際石油開発と仏トタルの企業連合、石油資源開発(単独)がそれぞれ1鉱区ずつ獲得した。
 国別の落札数で見ると日本が最多。日本勢は国際社会への復帰を進めるリビアに出遅れ感もあったことから「まず落札することが第一段階。それにより次のビジネスの可能性が出てくる」(新日本石油開発の大森輝夫社長)との判断が背景にある。
 今年1月の第1回入札では全15鉱区のうち米石油会社が11鉱区を占め、日本や欧州勢などは落札できなかった。今回は対照的に日欧が巻き返した。インドネシア国営石油会社のプルタミナやインド、ロシアなどの企業も落札した。
 ライス米国務長官が月内にリビア訪問を予定するなど外交関係の正常化が大詰め段階にある米国の企業ではエクソンモービルが落札した程度にとどまった。
 リビアは2003年までの国際制裁などで石油開発が滞り、1970年に日量300万バレルを超えていた原油生産量は現在は推定同150万バレルに半減している。政府は2015年に同300万バレルへの回復を目指して外国企業を誘致している。来年には3回目の入札を計画している。

日本経済新聞 2005/10/4

リビア油田開発 日本5社が落札 収益とリスク背中合わせ 世界で競争激化、条件厳しく

 日本企業が世界の原油獲得競争に積極参入している。リビアで現地時間の2日に実施された石油鉱区の入札で、新日本石油開発、石油資源開発、帝国石油、国際石油開発、三菱商事の5社は国別では最も多い6鉱区の権益を確保した。原油高もあって、油田発見が期待できる新鉱区の価値は高まっている。一方で争奪戦は激しくなっており、高値つかみのリスクとも背中合わせだ。
 今回のリビアの鉱区入札は世界60社を超える企業が参加し、かつてないほど過熱した。入札の争点は生産開始後のリビア政府との原油の分与率。1月の入札で開発会社の取り分は最低でも10%以上だったが、日本企業が落札した6鉱区のうち5鉱区は10%を割り込んだ。競争が激化し、開発会社はより厳しい条件でないと落札できなくなっている。
 世界の石油消費量は年3%を超える伸びを示すが、北海油田など既存油田は枯渇に向かっており、確認埋蔵量は増えていない。このため政治的な要因で開発が滞っていたリビアのほか、イラクやスーダンなどの開発権益に注目が集まっている。
 日本企業はリビア以外でも権益獲得への動きを強めている。イラクでは正式な政府が成立する来年以降、海外企業への油田開放が見込まれており、アラビア石油と石油資源開発が石油省への技術供与契約を結んだ。油田開発の効率化技術を提供し、人材育成でも協力、鉱区取得に向けた地道な人脈づくりを続けている。
 帝石は日本企業がほとんど進出していなかった南米エクアドルで1月に2鉱区の権益を取得した。同社は潜在的な原油開発の可能性から、「リビアを含む北アフリカと中南米に特化する」(松野尚武副社長)という
 。最も拡大策を進めているのが新日石グループ。鉱区の探鉱や開発済み油田の買収に3年間で2千億円を投じる計画を打ち出し、イラクやイランなどにも積極的に入っていきたいとしている。
 原油高で油田開発の収益性は大幅に上昇。国内勢で最も多くの自主開発原油を持つ国際石油開発は2004年度の営業利益率が50%を超えた。ただ、各社とも3−5年の探鉱期間に数十億円の投資を見込んでいるが、高い原油価格がどこまで続くか見通せず、投資が十分回収できるだけの原油が見つかるかも分からない。鉱区取得に大量の資金を投じながら、ほとんど利益に結びつかなかった旧石油公団の記憶も頭をよぎる。


最近の日本企業の海外原油権益を巡る主な動き

▽リビア   ・新日本石油開発、帝国石油など5社が6鉱区の権益を取得
▽エジプト   ・アラビア石油が2鉱区で開発を開始へ
・帝国石油が2鉱区の権益を取得
▽アルジェリア   ・帝国石油が1鉱区で生産を開始
▽スーダン   ・NGO系企業が1鉱区の権益を取得
▽イラン   ・国際石油開発がアザデガン油田の開発準備
▽イラク   ・アラビア石油と石油資源開発が政府との技術協力契約を締結
▽エクアドル   ・帝国石油が2鉱区の権益を取得

日本経済新聞 2005/12/14

中東油田の権益視野に 三菱重、シェルに採掘技術 CO2使い延命も可能

 三菱重工業は13日、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルグループと油田採掘分野で提携したと発表した。三菱重工の技術を活用し、発電所や工場の排出ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)を分離・回収して油田に注入、原油の採掘効率を上げる。中東に点在する老朽化油田を延命できるため、シェルが関心を寄せていた。三菱重工は独自技術をテコに、プラント建設にとどまらず油田開発投資による権益確保など新たな事業展開も視野に入れる。
 三菱重工が関西電力と共同開発したCO2回収技術を活用する。特殊な吸収液「KS−1」を使い、発電所や工場設備から出る排ガスの中からCO2を抜き取る。このCO2を近隣の油田に運んで油層に高圧で注入。岩盤などに付着した原油と混ぜ合わせると、原油の粘度が下がり、採掘しやすくなるという。
 採掘できる原油は通常、実際の埋蔵量の3−4割にとどまっているが、CO2の注入で原油採掘率は5割前後まで高まるとみられる。三菱重工によると1トンのCO2で4−5バレルの増産効果がある。シェルが三菱重工のCO2分離・回収技術を評価し、今回の提携を打診してきた。近く中東で事業化調査を開始し、カタールやサウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国の老朽化した油田へ適用していくとみられる。
 三菱重工は1991年、CO2回収技術を使い国内で日量2トンの実証プラントを稼働させた。海外ではマレーシアで肥料用の尿素製造用に使われている。インドの尿素増産用の日量450トンの回収プラントは2007年にも2基が稼働。油田採掘の効率向上に活用できるとして、産油国での普及を狙っていた。
 原油高が続くなか、油田ごとの採掘率が向上すれば収益にも寄与しやすくなる。CO2を油田に注入する技術は「石油増進回収法(EOR)」と呼ばれ、国際石油資本(メジャー)が北米などで天然のCO2を使い約80件の実績をあげている。
 CO2回収プラントと組み合わせれば手つかずだった中東でも普及する可能性が高く、油田の延命につながりそうだ。

KS-1
 二酸化炭素(CO2)を選択的に取り出す役割を持つアミン系の溶液。三菱重工業と関西電力が共同開発した。冷やされた排ガス中からCO2だけを吸着し、温度を上げると再び分離する。三菱重工によると、他社の溶液に比べて回収効率が高く、劣化も少なくてコスト削減につながるという。

エネルギー開発 機器メーカーにも広がる 

 三菱重工業は原油増産のカギとなる技術で優位性を確保することで、将来は油田開発への投資も目指す方針を明らかにした。液化天然ガス(LNG)プラント建設に強みを持つエンジニアリン大手の日揮はメキシコで.ガス田開発への投資に踏み切っており、総合商社や石油会社が中心だったエネルギー権益確保の動きが機器メーカーにも広がってきた。
 日揮は2003年12月に帝国石油によるメキシコガス田開発に投資して権益を確保したほか、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアでは発電・海水淡水化プラント事業への投資に踏み切った。06年度からの5年間で400億円の投資に踏み切る計画だ。
 日揮がプラント建設と分離する形で事業投資の拡大を狙っているのに対し、三菱重工は生産技術で優位性を確保し、機器納入と合わせて投資にも踏み切ろうとする戦略。石油の新たな生産手法や新エネルギーの導入を加速しようとする動きが広がっているだけに、三菱重工が参入する余地も広がっているといえる。
 ただ、日揮が投資に乗り出したのは国際石油資本(メジャー)が絡まないメキシコのガス田や、メジャーとの関係が薄い発電・海水淡水化事業。これに対し、三菱重工の老朽化油田延命プロジェクトは、メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルを突破口にしたプラントの実績づくりを優先している。投資戦略の成否は、メジャーと協調しながら、自社主導で投資と機器納入を合わせたプロジェクトを実現できるかどうかにかかっている。


日本経済新聞 2006/1/5

ウクライナ ガス交渉決着 ロシア、値上げ幅抑制 中央アジア産合わせ供給
 欧州に配慮、双方妥協

 紛糾していたロシアとウクライナの天然ガス輸出交渉が4日、妥結した。ウクライナで両国企業が参加するガス販売合弁会社を設立、ロシアは中央アジア産と合わせてウクライナに千立方メートル当たり95ドルでガスを供給する。ロシアによる供給停止で欧州各国に影響が拡大、国際的な批判が高まったため、双方が土壇場で歩み寄った。
 ロシア国営天然カス会社ガスプロムのミレル社長とウクライナ国営ガス会社ナフトカスのイフチェンコ社長が4日、欧州連合(EU)がガス供給問題を協議する緊急会議の直前に合意を発表した。
 両社の説明によると、ロシアは同国産ガスをこれまで要求してきた現行価格の約5倍に相当する千立方メートル当たり230ドルに値上げするが、トルクメニスタン産など中央アジアから調達する割安なガスと混ぜ合わせてウクライナに95ドルで必要分を輸出する。契約期間は5年。両国企業とオーストリアのライファイセン銀行が合弁で「ロスクレネルゴ社」を設立し、同社を通じてウクライナでガスを販売することでも合意した。
 合意内容は両国がともに妥協した形。鉄鋼、化学などウクライナの主要産業はガス価格が100ドルを超えると赤字に転落するとされ、95ドルは受け入れられるぎりぎりの線。ロシアは表向きロシア産ガスを230ドルに値上げしたとしてメンツを保つ一方、ウクライナにトルクメニスタン産などの供給を保証した。
 ロシア側はこれまでの交渉でロシアと欧州を結ぶウクライナ領土内のパイプラインの共同管理権を要求してきた。ロシアの影響力が拡大することを恐れるウクライナはこれを拒否してきたが、欧州企業も参加する国内のガス販売会社の設立で妥協した。ロシア側は同社をパイプライン管理権取得に向けた布石にする狙いだ。
 双方が歩み寄ったのはロシアのガス供給停止の影響が欧州広域に及び、欧米から批判が高まったためだ。米国は「エネルギーを政治的な圧力に使っている」とロシアを非難、欧州各国からも抗議が相次いだ。欧州への統合を目指すウクライナもロシアに「ガスを不正に抜き取っている」と非難され、紛争が長引けば信用低下につながると判断した。
 今回のガス紛争ではエネルギーを外交上の武器にするロシアの姿勢が鮮明となった。天然ガスで世界最大の埋蔵量を誇るロシアはウクライナのパイプラインを除き、中央アジアから欧州までのガス供給網を支配した。ウクライナヘの供給停止により、ガスをロシアに依存する欧州の間では懸念が強まっている。

ロシア 対欧ガス供給包括管理狙う
 ロシアが今回、ガス供給で親欧米国となったウクライナに圧力をかけることで狙ったのは、ロシア産ガスの欧州向け輸出の8割が経由するウクライナのパイプラインを支配することだった。中央アジア産も含め欧州向けのガス供給網を包括的に掌握、エネルギーを民主化や安保問題など対立点の多い欧米との外交でテコに使う戦略が浮き上がってきた。
 ロシアは2004年にベラルーシヘのガス供給を一時停止、自国と欧州の間に位置する同国パイプラインの管理権を手中に収めている。ウクライナの場合、最後まで抵抗したが、ガスプロムの子会社が同国でのガス販売に参加することで折り合いをつけた。ロシアは徐々に影響力を増すことで、パイプラインを手に入れる腹づもりだ。
 もう一つ注目されるのはトルクメニスタンなど中央アジアのガス産地との関係だ。これまでウクライナはトルクメニスタンと個別にガス輸入契約を結び、ロシアのパイプラインを通じて調達してきた。合意内容から詳細は明らかではないが、中央アジア産もロシアが一括購入して自国産と合わせて各国に輸出する体制を構築する可能性がある。
 欧州のロシアへのガス依存度は高まっている。今回は欧米の批判を受けロシアが矛を収めた格好だが、エネルギーをテコに大国復活を目指すロシアと欧米の摩擦はくすぶりそうだ。


毎日新聞 2006/1/3

対ウクライナ 露、ガス供給停止


 ロシア政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」は1日午前10時、ウクライナ向けガスパイプラインを閉鎖、同国へのガス供給(1日当たり1億2000万立方メートル)を停止した。ガス価格を巡る両国交渉の決裂を受けた対抗措置。ウクライナ経由でロシア産ガスを輸入する欧州でも供給量が低下、影響が広がった。
 欧州連合(EU)は4日、緊急会合を開き、対応を協議する。米国務省は「ロシアがエネルギー供給を政治圧力に使用している」と批判した。
 ロシアはウクライナに天然ガスを1000立方メートル当たり50ドル(約6000円)の低価格で輸出していたが、昨年末、約5倍の230ドルヘの引き上げを要求。ウクライナが値上げに抵抗していた。
 プーチン露大統領は昨年12月31日、ウクライナが今年4月から「市場価格」で購入することを条件に3月まで05年の価格を維持する妥協案を提示したが、親欧米派のユーシェンコ・ウクライナ大統領が拒否した。

ガス停止 露離れに「懲罰」 欧州懸念 8割ウクライナ経由  価格、5倍つり上げ
 ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムが1日、ウクライナヘのガス供給を停止した問題で、エネルギー支配をてこに政治的な影響力を行使するロシアの姿勢に対し、国際社会の懸念が広がった。ロシアは1日から主要8カ国(G8)議長国になり、今夏開催予定のG8首脳会議(サミット)でエネルギー安全保障問題を議題にする方針だけに、今回の供給停止が物議を醸すのは必至だ。旧ソ連諸国のロシア離れが進む中、エネルギー価格の大幅値上げという「懲罰」を強行するロシアの行動に欧米諸国は不信感を強めている。
 ウクライナは04年末、大統領選挙の不正疑惑に対する抗議運動をきっかけに「オレンジ革命」が起こり、やり直し選挙で親欧米派のユーシェンコ大統領が誕生した。民主改革を掲げるユーシェンコ政権は北大西洋条約機構(NATO)、欧州運台(EU)への加盟を目指し、ロシア勢力圏からの離脱を鮮明にした。
 ロシアは天然ガス価格を旧ソ連圏の親露派筆頭ベラルーシには06年分49ドルに設定したが、EUに加盟したバルト3国は120ドル。ガスプロムが5年間の供給契約を結んでいたウクライナには昨年6月、50ドルから160ドルへの値上げを要求した後、昨年末、西欧向けの250ドル前後とほぼ同じ230ドルにつり上げた。
 イラリオノフ前露大統領経済顧問は先月27日の辞任後、「オレンジ革命」への反発により「ウクライナヘの補助金(低価格のガス供給)の見直しを露大統領府は思い立った」と述べ、プーチン政権にはガス価格を政治圧力の手段とする考えがあることを明らかにした。
 ロシアの天然ガスはウクライナの需要の30%、西欧諸国の需要の25%をまかなっている。ハンガリー、ポーランド、オーストリアを含む欧州向けのロシア産ガスの約80%がウクライナ経由だ。
 石油、天然ガス輸出が政府収入の4割強を占めるロシアにとり基幹パイプラインの掌握は国益の要だ。エネルギー産業の国家統制を強めているプーチン政権はウクライナ経由のパイプラインがロシア離れの著しいユーシェンコ政権下にあることを座視できなかった。
 ウクライナでは今年3月の最高会議(国会)選挙を見据え、親露派のヤヌコビッチ元首相が率いる政党・地域党が支持拡大を図っている。ガス供給停止にはウクライナの親露派へのてこ入れの意味合いもあるが、親ロ派基盤の同国東部工業地域には経済的打撃を与えるだけに「もろ刃の剣」になりかねない。
 プーチン政権の強硬姿勢には、バルト海沖経由でウクライナを回避できる「北欧州ガス・パイライン」(10年開通予定)の建設がロシア・ドイツ間で昨年12月から始まったことも影響している。


化学工業日報 2006/1/16

三菱ガス化学、中国で天然ガス開発に参画

 三菱ガス化学は、中国・四川省で天然ガス開発に参入する。カナダの独立系エネルギー企業、アイバンホーエナジーが子会社を通じて保有する四川盆地・梓潼鉱区の探鉱開発権益の10%を400万米ドルで取得することで同社と合意した。今年中に中国側からの承認取得を目指す考えで、その後3年程度をかけて経済性などを評価し、探鉱作業に入るかを決める。

 四川盆地は、推定埋蔵量260兆立方フィートといわれる中国最大の天然ガス生産地域。梓潼鉱区はアイバンホーと中国石油天然气集団公司(CNPC)との間で2002年に開発契約が交わされ、2005年12月に第1の探査フェーズが終了。商業生産が見込めるガスの発見はなかったものの、引き続き別の探査井を対象とした探鉱活動を続けることになっている。

 三菱ガス化学は、CNPCおよび子会社ペトロチャイナからの承認を得る条件で、アイバンホーの持つ探鉱開発権益の10%を400万米ドルで取得する。アイバンホーはこの資金を追加の探査資金に充てる。三菱ガス化学は、ガス発見前に権益1%ごとに40万米ドルを追加出資するか、探査終了および最初の試掘開始時に800万米ドルを支払うという、いずれかの条件で権益を20%まで高めるオプションも有している。


日本経済新聞 2006/1/17

日揮・大ガス 石油代替燃料 低コストの製造技術 初期投資1割削減 メジャーに対抗

 日揮と大阪ガスは次世代エネルギーとして有望なGTL(ガス・ツー・リキッド)の製造技術を共同開発した。大阪ガスのガス改質技術を利用して、日揮が試験プラントを建設した。従来に比べて初期投資額を1割以上削減し、稼働時の二酸化炭素(CO2)排出量も半減できる。歴史的な原油高を背景に、オイルメジャー(国際石油資本)が新エネルギー開発でリードしてきたが、国産技術で巻き返しを狙う。

 GTLは硫黄酸化物(SOx)を出さず、灯油や軽油として需要が伸びている。日揮と大阪ガスは天然ガスを一酸化炭素と水素で構成される合成ガスに転換する最重要工程を見直した。バーナーによる高温加熱が不要で、プラント規模を従来の半分に削減できた。
 大阪ガスが燃料電池向けに開発した脱硫触媒と、都市ガス製造に使われる改質触媒を改良して利用した。日揮が大阪市内に実験用プラントを建設し、日量65バレルのGTLを製造するのに必要な毎時2千立方メートルの合成ガスの量産に成功した。
 独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構の委託開発の案件で、開発費30億円。2007年度以降の実用化を目指している。現在、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルがカタールで計画中のGTL製造設備の生産能力は日量14万バレル。事業費は60億ドル(約7千億円)規模とみられる。従来方法のためバーナーなどの大きさに制限があり、コスト削減に必要なプラントの大型化には限界があった。
 日揮と大ガスの新技術を使えば、同規模の生産量をプラント1基で賄える。ガスを反応させる容器サイズは10分の1以下
になり、プラント全体の面積も減らせる。
 中東でシェルや米エクソンモービルなどが独自技術によりGTLを開発している。プラント建設や機材の供給は日本企業が強いが、開発主体のメジャーが製造の基幹技術を握っている。新技術により、日本勢の影響力が高まる可能性がある。
 ナフサ、灯油、軽油の世界需要は日量2100万バレルにのぼり、現在計画中のGTLプラントがすべて完成してもカバーできるのは全体の7%程度にとどまる。排ガス規制強化や原油高により、今後3分の1程度がGTLに置き換わる可能性があるため、中東、東南アジア、アフリカで建設構想が相次ぎ浮上している。

GTL
 天然ガスを一酸化炭素と水素に転換し、分子構造を組み替えて製造した軽油や灯油などの合成油、またはその製造技術のこと。石油製品に比べ硫黄酸化物(SOx)などの有害物質の発生が少ない。従来の暖房器具やディーゼルエンジンで利用できる。1993年にマレーシアにできた世界初の商業プラントは日揮が建設。製造コスト削減が普及へのかぎを握る。


日本経済新聞 2006/2/24

丸紅、油田に1300億円投資 メキシコ湾鉱区、権益を取得
 生産量日量8万バレル超に


 丸紅は油田・ガス田への大型投資に踏み切る。総額1300億円を投じ、米石油開発会社がメキシコ湾に持つ6鉱区の生産・開発権益を取得、出資比率に応じた持ち分生産量(天然ガス換算分含む)を現状の6割増の日量8万バレル以上に増やす。資源・エネルギー価格の高騰で、大手商社は過去最高益を更新しており、大型不良資産の処理が済み身軽になった丸紅も攻勢に転じる。
 米中堅石油開発会社のパイオニア・ナチュラル・リソーシズ(テキサス州)からテキサス州、ルイジアナ州などのメキシコ湾沖で生産中の4鉱区と、新規開発する2鉱区の権益を得る。生産原油は米国向けに出荷する。
 丸紅の現在の持ち分生産量は英領北海やカタールなどで日量5万バレル。4鉱区の生産権益だけで3万バレルが上乗せされる。新規開発分は数千バレルを見込んでおり、大手商社では三菱商事に並ぶ水準。
 丸紅の単独投資としては過去最高額だが、丸紅の持ち分が若干減る可能性もある。投資資金は銀行からの借り入れなどで賄い、大半は3年程度で回収する計画だ。
 原油価格は1バレル60ドル前後と依然高水準。今後も大きな値崩れはないとの見方が大勢で、丸紅も今後5年間は50ドル台で推移するとみている。権益自体の価格も上がっているが、採算は十分にとれると判断した。


日本経済新聞 2006/5/8

東南ア、バイオ燃料に力 官民挙げて生産設備を増強 パーム油など活用

 石油依存度が高い東南アジア各国が原油高騰の影響回避を狙い、代替エネルギーであるバイオ燃料の開発・製造を本格化し始めた。域内で豊富に産出する原料のパーム油やサトウキビなどを活用する。利用拡大の流れが定着すれば、化石燃料の節約につながるうえ、温暖化ガスの排出削減も実現できるだけに、官民を挙げて活用を急ぐ。

 「10社以上に“バイオディーゼル燃料”製造施設の建設許可を出した。ほかにも多くの審査中案件がある」。4月中旬、マレーシアのチン・プランテーション事業・商品相はこう明かした。地元企業に加え、日英韓の企業などが名乗りを挙げており、各社はそれぞれ3千万リンギ(9億3千万円)以上の設備投資をして生産拠点を造るという。
 バイオディーゼル燃料は植物油から精製。軽油に混合すればディーゼルエンジンの自動車などを動かせる。世界一のパーム油生産量を誇るマレーシアは同燃料生産に潜在能力を持つ。同国政府は近く、軽油に同燃料を5%程度混ぜて市場に出す計画で、年約50万トンの軽油節約を目指す。

 インドネシアでは、地元財閥のシナル・マスグループと中国の大手投資会社、中国中信集団(CITIC)が近く約5億ドル(約560億円)を投資してパーム農園を整備、バイオディーゼル燃料の供給基地にする。生産量はインドネシア全体の1割強の年150万トンにのぼる予定で、国内最大のパーム油生産事業者になる。

 アジアの石油加工拠点、シンガポールも動く。2007年をめどに、ドイツの植物油脂会社ピーター・クレマーが2千万ドルを投資して年20万トンの生産設備を建設中。地元で食用油などを手掛けるウィルマーも米企業と組んで年30万トンのバイオディーゼル製造プラントをつくり、今年末にも操業を始める。
 ウィルマーのコック最高経営責任者(CEO)は「原料の産地マレーシアとインドネシアに隣接するシンガポールは好立地」と分析する。

 フィリピンでは現地化学メーカーのケムレッツなど3社が年約10万トンの生産体制を整備。今年からガソリンスタンドを通じて販売を始めた。

 ガソリンに混ぜて使う「バイオエタノール」普及に向けた動きも加速している。フィリピンでは昨年、植物からつくるエタノールを5%混ぜたガソリンの販売を石油会社に義務づける法案が下院を通過、年内にも成立の見通しとなった。
 マレーシアとインドネシアの2国は合計で世界のパーム油生産量の約8割を占める。フィリピンもサトウキビなどの世界有数の生産国。米コンサルティング会社のクリーン・エッジの調べでは、世界のバイオ燃料市場は05年に157億ドルで前年比15%増。15年には525億ドルに達するという。
 バイオディーゼル燃料もディーゼル燃料より格安だが、ガソリンなどの数分の1の価格であるバイオエタノールは既にブラジルなどが実用化、ガソリンに10%程度混合している。米国でも利用が拡大中で、東南アジアが豊富な原料を利用して生産拡大を進めれば、世界生産の一角に食い込める可能性を秘めている。


日本経済新聞 2006/6/21

新日石とJエナジー提携発表 
 製油所「統合」 原油高で拍車 合理化効果、年300億円

 石油元売り最大手の新日本石油と6位のジャパンエナジーは20日、石油精製など5分野で提携すると正式発表した。両社の水島製油所(岡山県倉敷市)の運営を一体化し、年間300億円程度の合理化効果を見込む。新日石の西尾進路社長は記者会見で「規模の拡大が国際競争力に直結する」と説明。原油高で石油製品の採算が悪化する中、アジアの大型製油所との競争に備える。
 新日石の水島製油所は原油処理能力が日量25万バレルで、Jエナジーの水島製油所は同20万5200バレル。両製油所を実質的に統合することで、45万バレル超の能力を持つアジアでも有数の規模の製油所になる。新日石の製油所が石油化学製品の製造装置を多く持つのに対し、Jエナジー側は原油の重質分を分解し、化学製品の原料を多く生産できる。Jエナジーの高萩光紀社長は「両社の製油所の特徴を補完し合うことで、相乗効果が期待できる」と強調した。
 両社は共同で今後10年間のうちに、水島製油所の生産設備に700億−800億円を投資する計画も示した。
 国内の石油元売り大手が製油所の一体運営に踏み込むのは今回が初めてとなる。両社は石油開発や物流、燃料電池、燃料油の技術開発の分野でも協力する。資本面での提携については「今のところ考えていない」(Jエナジー高萩社長)と否定した。
 新日石はコスモ石油や出光興産と生産や物流で連携しており、Jエナジーは昭和シェル石油と物流で提携関係にある。両社はこうした従来の他社との関係も継続する。

日本勢 国際競争へ合従連衡 アジアの製油所に対抗
 新日本石油とジャパンエナジーが製油所の一体運営を決めた背景にはアジアにおける製油所間の競争がある。中国や東南アジアでは米エクソンモービルや中東の国営石油会社などが相次いで大規模な製油所を建設する計画を明らかにしている。個々の規模で劣る日本の製油所は元売りの垣根を越えた合従連衡により、生産効率の向上に迫られている。
 国内の燃料油販売量は2002年度以降、前年割れが続いている。価格高騰や燃費効率の高い軽自動車の普及で主力製品のガソリンも昨年度21年ぶりに下落に転じた。新日石などは生産量の1割近くを輸出に回すことで製油所の稼働率を高めているが、アジア各地で建設中の製油所が完成すれば、輸出で利益を稼ぐ状況は一変しかねない。安価な輸入品が国内市場に流入する可能性もある。
 製油所の一体化で新たな設備の建設負担が軽減できる。市況に合わせた生産計画の柔軟性も増し、製油所の効率化につなげられる。
 1999年に旧日本石油と旧三菱石油が合併して現在の新日本石油が誕生したのを機に、元売りは経費削減のために流通面の提携を積極化。国内のグループ化が急速に進んだ。元売りによっては自社の看板を掲げるガソリンスタンドで販売するガソリンの半分近くが、別の元売りの供給品になっている。物流面の合理化は限界に近づきつつある。
 国内には水島地区のほか、東京湾岸や大阪湾岸、四日市地区などで複数の製油所が隣接しており、連携を模索する動きもある。
 元売りグループの枠組みを超えた新たな生産連携の動きが広がり、再び業界再編が起こる可能性もある。


日本経済新聞 2006/6/25

石油元売り提携、どこまで進む? ジャパンエナジー社長 高萩光紀氏
 操業一体化 経営主権は別

 石油元売り最大手の新日本石油と6位のジャパンエナジー(Jエナジー)が水島地区(岡山県倉敷市)に持つ製油所の一体操業を柱に提携した。元売り同士の協力が従来の物流分野から生産面の協業に発展する初めての事例となる。原油高に伴うコスト上昇や国内市場の縮小で石油業界の経営環境が巌しさを増すなか、元売りの提携はどこまで進むのか。Jエナジーの高萩光紀社長に聞いた。

ー 初めて生産分野の提携にまで踏み込んだ。
 「1996年に石油の輸入が実質自由化され、各社は合理化を競ってきた。当社もこれまでに計1200億円の合理化効果を出してきたが、もはや雑巾を絞りきった状態だ。石油需要が縮小するなかで単独での合理化は限界に達しており、(物流分野など)従来の提携とも違うことをやらないと駄目だと判断した。新たな合理化の種として一番手っ取り早いのが(互いの製油所が近いという)『地縁』だった」
 「当社と新日石の両水島製油所は巨大な海底パイプラインでつながっている。二つをあたかも一つであるかのように操業すれば大幅な効率化が図れる。今後両社は協力して割安な重質油の使用を増やし付加価値の高い石油化学製品をより多く作る。需要拡大期のような薄利多売の発想を捨て、量から質に切り替える」

ー Jエナジーの製油所は水島と鹿島地区(茨城県)の2カ所だけ。主力製油所を事実上統合することに抵抗はなかったか。
 「統合ではない。あくまで操業の一体化で経営の主権の話とは別だ。製油所を統合するとなると、互いの資産評価や労働条件の擦り合わせなど余分な作業が必要になる。一つの製油所とみなすだけでも、より効率的な生産・投資計画が立てられるはずだ」

ー 給油所の過当競争が進み原油価格の上昇分をガソリンなどの小売価格に転嫁しきれないのも収益悪化の要因。販売合理化を狙った提携拡大はないのか。
 「販売提携とは要は価格を擦り合わせることで、独占禁止法上の問題が生じかねない。確かに国内の給油所は過剰だが、8割は元売りとは別の資本の特約店が経営している。(統合した)銀行が重複店舗を統廃合するのとは違い、元売りの都合で店を閉めてくれとは言えないのが現状だ」

ー Jエナジーは昭和シェル石油、新日石は出光興産・コスモ石油と物流分野などで提携している。だが本格的な再編は99年の旧日本石油と旧三菱石油の合併を最後に起きていない。
 「かつてセブンシスターズ(七人姉妹)といわれた欧米石油メジャーも合従連衡が進んだ。国内の元売りも13社体制から半分に減ったが、欧米ほどダイナミックではながった。ただ今後も国内市場の縮小がこのまま進み、疲弊する会社が出てくれば、10年単位で次の再編が起きることは否定できない。その時に当社はのみ込まれないように体力をつけておきたい。今回の提携もそのための一つの方策だ」


日本経済新聞 2006/6/22

国際石油帝石/双日 ブラジル油田商業生産 2009年4月に、500億円投資 原油調達先を分散

 国際石油開発帝石ホールディングスや双日、米シェブロンなどで構成する企業連合はブラジルで開発中の油田に、総額24億ドル(約2760億円)を投じ商業生産への移行を決めた。生産量は日量10万バレルと日本の原油輸入量の2%程度で、生産開始は2009年4月の見込み。国際石油帝石など日本連合は計約4億4千万ドル(約500億円)を負担、保有権益相当分の原油を日本を含む海外で販売する。

 日本企業がブラジルで原油を生産するのは初めて。現在は9割超が中東に集中する原油の調達先分散につなげる。
 商業生産へ移行するのはリオデジャネイロの沖合120キロに位置するフラージ油田。国際石油帝石と双日、石油・天然ガ
ス金属鉱物資源機構の共同出資会社と、シェブロン、ブラジル国営石油会社のぺトロブラスが1999年から探鉱作業を続けてきた。
 企業連合はこれまでに約3億バレルの可採埋蔵量を確認、生産井の掘削や浮体式石油・ガス生産設備の建設に着手する。権益比率はシェブロンが42.5%、日本企業連合が15%だったが、商業生産に伴い権益の一部をぺトロブラスから譲り受けて、それぞれ51.7%と18.3%に引き上げることも合意。日本連合は権益に相当する日量約1万8千バレルを自由に販売する権利を獲得した。
 資金は参加企業が権益比率に応じて負担する。日本連合は負担額を国際協力銀行などの融資と石油・天然ガス金属鉱物資源機構による債務保証で確保する方針。
 国際石油帝石は世界で日量28万バレルの原油の持ち分生産量を10年に同50万バレルに引き上げる計画で、中央アジアや東南アジア、豪州などで新規油田・ガス田の開発に取り組んでいる。双日は同1万500バレルの持ち分生産量を3年後に3万ー4万バレルに引き上げるために、米国メキシコ湾などの油田に投資している。


毎日新聞 2006/6/26

日本の原油の1/4動かす
 新日本石油国際事業本部 藤原佳代さん




2006/8/7 BP

BP to Shutdown Prudhoe Bay Oil Field

BP Exploration Alaska, Inc. has begun an orderly and phased shutdown of the Prudhoe Bay oil field following the discovery of
unexpectedly severe corrosion and a small spill from a Prudhoe Bay oil transit line. Shutting down the field will take days to complete. Over time, these actions will reduce Alaska North Slope oil production by an estimated 400,000 barrels per day.

The decision follows the receipt on Friday, August 4 of data from a smart pig run completed in late July. Analysis of the data revealed 16 anomalies in 12 locations in an oil transit line on the eastern side of the oil field.

In response to the inspection data, BP conducted follow up inspections of anomalies where corrosion-related wall thinning appeared to exceed BP criteria for continued operation. It was during these follow up inspections that BP personnel discovered a leak and small spill estimated at 4 to 5 barrels.

The spill has been contained and the clean up effort is underway. The pipeline was shutdown at 6:30 am Sunday morning. BP has notified state and federal officials of the decision and will work closely with the U.S. Department of Transportation and the Alaska Department of Environmental Conservation, among others.
We regret that it is necessary to take this action and we apologize to the nation and the State of Alaska for the adverse impacts it will cause,said BP America Chairman and President Bob Malone. However, the discovery of this leak and the unexpected results of this most recent smart pig run have called into question the condition of the oil transit lines at Prudhoe Bay. We will not resume operation of the field until we and government regulators are satisfied that they can be operated safely and pose no threat to the environment.

BP is identifying and mobilizing additional resources from across Alaska and North America in order to speed inspection of remaining Prudhoe Bay oil transit lines. BP operates 22 miles of oil transit pipeline at Prudhoe Bay. Smart pigging inspection has been completed over about 40 percent of that length.

BP previously announced plans to replace a three-mile segment of pipeline following inspections conducted after a large spill discovered on March 2, 2006.


Platts 2006/8/15

PDVSA to sell Houston refinery stake to partner Lyondell

Citgo, the US-based subsidiary of Venezuelan state oil company PDVSA, will sell its share in Houston's 265,000 b/d Lyondell refinery to its partner, the Lyondell Chemical Co., PDVSA president Rafael Ramirez said Tuesday.
"Last Friday, the board of directors of PDVSA approved the sale of our participation in the Lyondell refinery," Ramirez said. "We're selling it to Lyondell. Today we are formally notifying our partner and we're waiting to make a public official announcement, but we're already starting to execute this sale."
The refinery was valued at $5.25 billion, and Lyondell agreed to pay Citgo $2.155 billion for its 41.25% participation, Ramirez said. Citgo will receive $1.313 million after taxes and debt are paid off, he added.
The sale will immediately terminate Citgo's current 25-year supply contract with the refinery, signed in 1993. Citgo will continue sending 265,000 b/d of Venezuelan crude to the refinery under a new five-year contract.
"Since this refinery has technical characteristics designed to process our crude, and since our interest is to keep putting those crude volumes in the North American market, we agreed to a supply contract of five years," Ramirez said.
Ramirez said PDVSA decided to sell the refinery because price formulas built into its contract with Lyondell discounted the price of Venezuelan crude when oil prices were low. Those price formulas forced Venezuela to sell its crude to the refinery at an average price of $2.09/barrel less than its price on the open market between 1993 and 2004.
The estimated fiscal loss due to the Lyondell contract was $705 million because of the discounts built into the formula and because lower royalty payments to the Venezuelan government resulted from those discounted prices, he said.
Citgo also invested more than $1.1 billion in the Houston refinery between 1993 and July 2006, he noted.

ELIMINATION OF SUPPLY CONTRACT DISCOUNTS
Ramirez said PDVSA will continue to revise all of its international supply contracts with the aim of eliminating price formulas that contain discounts for Venezuelan crude.
"We will undo all supply contracts where there have been discounts in their price formulas and establish new contracts that attend to the market price," Ramirez said. Venezuela's Energy Ministry will establish price formulas from now on, he added.
Citgo and Lyondell signed a letter of intent in April to jointly sell the whole refinery, which is the 11th largest in the US and can upgrade heavy crude and can process jet fuel and low-sulfur diesel.
Ramirez said Tuesday that 24 companies entered the bidding process for the sale and signed confidentiality agreements to receive information about the refinery. Twelve of those companies made offers, six of which were selected for a second phase of bidding. Those companies included Chevron, ConocoPhillips, Tesoro and Marathon. Of the four companies that made final
offers, Marathon's was the highest, valued at $20,000/barrel of capacity, Ramirez said.
But on July 16, Lyondell informed Citgo that it wanted to buy its participation in the refinery directly, citing its contractual preferences, he said.
"Since we already had this market value, PDVSA told Lyondell, "we'll sell our participation for the same price, for the greatest offer we received, which was Marathon's offer," Ramirez said. "So we're obtaining for Citgo and PDVSA a value equivalent to the amount Marathon offered for the same refining circuit."
Citgo subtracted $316 million in debt and $745 million in taxes from the $2.155 billion determined as the value of its 41.25% participation in the refinery, Ramirez said. Citgo added $116 million for the early cancellation of its supply contract, as well as another small amount based on additional offers made by Marathon.
PDVSA will deposit the final $1.313 billion made from the sale into a social development fund managed by the administration of Venezuelan President Hugo Chavez, Ramirez said.


2006年08月29日 朝日新聞

中国、東シナ海で新ガス田開発に着手 日本政府が抗議

 東シナ海のガス田開発問題で、中国が「八角亭」と呼ばれる新たなガス田開発に本格的に着手していることがわかった。8月に入り掘削やぐら(プラットホーム)の上に生産施設が立てられているのが見つかったため、日本政府は中国政府に抗議。八角亭は、日本が主張する中間線から離れた中国側の海域にあるが、日本の排他的経済水域(EEZ)内に含まれており、政府は開発の動きを注視していた。

 安倍官房長官は28日の会見で、「八角亭」開発の動きを念頭に「中国は日本が主張する中間線を認めない中、日本の200カイリ内の海域で開発作業による既成事実の積み重ねを行っている。強い関心と懸念を中国側に伝えた」と、中国に抗議したことを明らかにした。

 政府筋によると、同ガス田は、3月ごろプラットホーム建設が確認され、最近の数週間でプラットホーム上に本格的な生産設備が完成したという。日本政府は早い段階から繰り返し懸念を伝えていたという。

 八角亭ガス田は、中国が98年に生産を開始し、中間線より50キロ以上離れた「平湖」ガス田の北東約6キロ内にある。日本側が中国とのガス田開発協議で提案している共同開発海域には含まれていない。日本政府が「中間線の地下構造を通して日本側の天然資源が吸い取られる」と問題視している中国の春暁(日本名・白樺)ガス田からも50キロ以上離れている。

 


日本経済新聞 2006/9/6

ロシア、欧州ルート掌握狙う エ一ゲ海油送管建設合意 米との主導権争い映す


ロシアが自国の資源・エネルギーを武器に、欧州市場への影響力強化策を加速し始めた。ギリシャ、ブルガリアとの間でロシア産原油などをエーゲ海に運ぶパイブライン建設推進で合意したのに続き、ギリシャとトルコ、イタリアを結ぶ天然ガスパイプラインヘの参加も模索。対欧輸出ルートを確保すると同時に、パイプライン通過国との関係を深める。エネルギー供給を巡る米国との主導権争いもにらんだ戦略だ。
 ブルガリアのブルガス Burgas とギリシャのアレクサンドロポリス Alexandroupolis を結ぶ全長280キロのパイプライン建設推進は両国とロシアの首脳問で4日に合意した。ロシアの黒海沿岸都市ノボロシースク Novorossiisk の輸出基地を通じて原油を運ぶもので、輸送能力は日量80万バレル。建設費は10億ユーロ(約1500億円)を見込む。ロシア国営ガスプロムやロスネフチが参画意欲を示す一方、西側では米シェブロンが参加の意向とされる。
 ロシアの最大の狙いはプーチン政権の影響下にある企業主導で西側への輸送網を多様化する点にある。黒海経由でトルコのボスポラス海峡を抜ける現行のルートは通行能力が限界に近く、カザフスタンの油田が増産する事態となれば輸送手段が圧迫される見通しだからだ。
 プーチン政権はさらに「エネルギー中継基地」国を目指すギリシャに、同国とトルコ、イタリアを結ぶ天然ガスパイプライン事業へのガスプロム参加を働きかけている。原油だけでなく、天然ガスの分野でも新たな欧州向けルートを掌握しようというわけだ。
 一連の動きの背景には、資源を巡る米ロの主導権争いがある。
 プーチン大統領は4月、カザフのナザルバエフ大統領と会談。同国油田とノボロシースクを結ぶパイプラインの拡張を約束する一方、ボスポラス海峡を迂回するルートヘの参加を働きかけた。
 プーチン大統領の発言は、カスピ海の原油をアゼルバイジャンからグルジア、トルコを通じて西側に運ぶBTCパイプラインが米政府の後押しで開通し、カザフがその利用を決めたことを踏まえたもの。カザフヘの便宜を拡大することで、同国を取り込む狙いだった。
 資源輸送を巡るロシアの影響力排除を探る米政府の動きも急だ。ガスでもロシアを迂回するルートの構築を目指し、ギリシャ政府などにはパイプライン事業へのロシアの参加阻止を働きかけている。
 トルコ政府が伊ENIと共同で、黒海沿岸のサムスンと地中海都市ジェイハン Ceyhan を結ぶ新たな原油パイプラインの建設計画を打ち出した舞台裏にもロシアの影響力拡大を警戒する米国の思惑が働いているとされる。


Platts 2006/9/12

Brazil's Petrobras eyeing refinery purchase in Japan: CEO

Brazilian oil-giant Petrobras is considering entering into the Japanese oil refining business with a refinery asset purchase, as the company seeks to expand into the product-hungry Asian market, CEO Jose Gabrielli told reporters Monday.
"We are looking at refining in Japan as a possibility," Gabrielli said. He declined to give further details about any potential negotiations there.
Brazil has been considering purchasing several overseas refining assets as it boosts its crude export capacity, especially for heavy Brazilian crude. Petrobras has also been seeking, for the past two years, joint ventures with Chinese state oil companies to produce oil and gas in Asia, especially offshore in the China Sea, although there are no concrete deals yet.
Petrobras is on an overseas asset buying spree, with more than $12 billion budgeted for activities outside Brazil between 2007-2011. Petrobras previously said it would consider refinery asset purchases in North America, Europe or Asia. Early this year Petrobras bought a 50 percent stake in the Pasadena, Texas refinery from Belgium's Astra for around $370 million.


日本経済新聞 2006/9/15

ブラジル国営石油会社 日本の製油会社買収へ
 エクソン系南西石油 アジア供給拠点に

 ブラジル国営石油会社ぺトロブラスが日本の製油会社を買収する交渉を始めたことが14日明らかになった。米エクソンモービル系の南西石油(沖縄県西原町)を傘下に収める。産油国が日本に製油所を直接構えるのは初めてで、ブラジル産原油を日本でガソリンなどに精製し、日本や中国などアジア市場に供給する。欧米勢に加えBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が日本企業の買い手として台頭してきたことで、石油業界の勢力図が塗り替わる可能性がある。

 南西石油はエクソンモービル子会社の東燃ゼネラル石油が87.5%、住友商事が12.5%を出資している。ペトロブラスは東燃ゼネラルの持ち株を買い取る方針。今後エクソンモービルと買い取り金額や雇用継続などの詳細を詰める。
 南西石油は原油処理能力が日量10万バレルと小規模なうえ、付加価値の低い重油の生産比重が大きい。コスト競争力で見劣りしエクソンモービルは製油所の閉鎖を検討していた。ペトロブラスは南西石油を買収後、重油などを付加価値の高いガソリンや石油化学原料に処理する最新設備を数百億円かけて新設する方針だ。
 ペトロブラスはブラジルの原油生産(日量172万バレル=2005年実績)のほぼ全量を手掛ける。深海油田探査の技術は世界トップとされ、中南米やアフリカなどで次々と巨大油田を発見。産油量は過去10年で2.4倍に増え、年内には国内消費量の190万バレルを超すのが確実。ブラジルは原油の「純輸出国」に転じ、10年には輸出量を日量55万バレルに拡大する計画を進めている。
 ブラジル産原油は粘性の高い重質油で、中東やロシアなどの軽質油に比べ価格が安い。収益性を高めるためには自ら海外に製油所を持ち精製まで手掛ける必要があるとみて、今年に入り米テキサス州で製油所を買収。南西石油の買収でアジアで初の供給基地を手に入れ、需要が急拡大している中国などへの輸出を強化する。南西石油の株主である住商のアジアの販売網の活用も検討する。
 日本の石油市場にはエクソンモービルのほか、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが昭和シェル石油の筆頭株主として参入している。産油国ではサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが04年に昭和シェルに15%出資したが、経営権の確保には至っていない。

ペトロブラス
 1953年設立のブラジル国営石油会社。2005年の原油処理能力は日量175万バレル。深海油田の生産開始で今年中に国内の生産量が消費量を上回る見込み。米国で製油所を買収するなど輸出の拡大を進めている。自国だけでなく中東やアフリカなどでも資源開発を推進、バイオエタノールの生産販売も手掛ける、05年の純利益は過去最高の108億ドル(約1兆2700億円)。

南西石油
 1968年エッソ・スタンダード石油(現エクソンモービル)系の石油会社として設立。78年エッソがゼネラル石油(現東燃ゼネラル石油)に株式を譲渡した。沖縄県内唯一の製油所て、県内の石油製品需要の6割程度を供給する。原油処理能力は日量10万バレル。国内29製油所のうち26番目の規模。重質分の分解装置を持たず重油の生産量が多い。業績は未公表。

ブラジル国営石油 日本進出へ 産油国、アジアで攻勢
 製油所再編の受け皿に

 ブラジル国営石油会社ペトロブラスによる南西石油(沖縄県西原町)の買収計画が明らかになった。産油国は今後も需要が拡大するアジアで攻勢をかける見通しだ。日本国内の石油製品需要が減少するなか、余剰感の強まる製油所のリストラの受け皿となる可能性がある半面、成長するアジア市場に強力なライバルを招き入れることにもなる。
 国内には29製油所があり、原油処理能力は合計で日量約480万バレル。これに対し国内の石油製品需要は減少が続き同400万バレル強。石油元売りは製油所の稼働率維持のため1999年以降、8製油所を閉鎖する一方、アジアなどへの輸出
を増やしている。
 輸出先のアジアでの生産量拡大も著しい。韓国や台湾では日量50万バレルを超す製油所が稼働し、中国でも最新鋭の製油所建設計画が進んでいる。一方、国内製油所は大半が20万バレル以下。稼働から40年近い老朽設備が多く、事故による生産停止も多発している。生産効率はアジアの競合製油所に比べて見劣りする。
 最近の原油高に価格転嫁やコスト削減が追いつかず、新日本石油などは本業の石油精製部門が実質的な赤字体質に陥っている。収益性の高いアジア市場をぺトロブラスなどの新勢力に奪われれば、製油能力の一段の削減も不可避になる。
 全国に散らばる製油所は地元経済や雇用への影響が大きく閉鎖は容易ではない。ぺトロブラスのように受け皿に産油国が手を挙げれば「売りたい元売りと買いたい産油国」の思惑は一致する。
 原油高で資金力に余裕がある産油国の国営石油会社は原油の確実な売り先確保を狙い、消費国での販売網構築を積極化している。
 原油消費量が米国、中国に次ぐ世界3位の日本は依然として魅力的な市場に変わりない。需要拡大が続く中国と地理的に近く、輸出拠点としても活用できる。
 原油調達力の強い産油国が進出してくればアジア市場の奪い合いが激しさを増すのは確実。日本の石油元売りは苦しい選択を迫られる。

ペトロブラスと石油メジャーの原油生産量(2005年、万バレル)
社名(本社) 1日あたり
生産量
エクソンモービル(米国)     252
BP(英国)     251
ロイヤル・ダッチ・シェル(英国・オランダ)     208
シェブロン(米国)     166
トタル(フランス)     162
コノコフィリップス(米国)     112
国際石油開発帝石ホールディングス(日本)      22
 (注)国際石油帝石は2006年3月期実績

日本経済新聞 2006/11/4

ブラジル国営石油総裁 「日本で精製・販売狙う」   重要な輸出先、合弁も視野

 ブラジルが資源輸出を拡大している。けん引役の一つが国営石油会社のぺトロブラスだ。アジアでの精製拠点確保に向け日本でも米エクソンモービル系の南西石油(沖縄県西原町)買収に向けた交渉に入った。石油開発やアジア市場の開拓をどう進めるのか。ガブリエリ総裁に聞いた。

ー 今後の石油開発計画は。
 「今年4月にブラジルは石油の完全自給体制を確立した。原油生産量は日量188万バレルで国内消費量とほぼ同じ水準になった。2011年までに同237万バレルにまで拡大する計画だ」
 「現在の輸出量は日量28万バレルだが、11年には同95万バレルと3倍強に引き上げる。ただブラジル産の石油は重質油で国内の精製能力が足りない。欧米やアジアで現地企業の買収や提携などを通じ精製能力を拡大したい。今年2月に50%の株式を取得した米テキサス州のパサデナ製油所の精製能力も日量20万バレルに倍増させる」

ー アジア戦略は。
 「アジア向けに原油や石油製品の輸出が急増している。このため中国向けのオペレーションなどを管轄し貯蔵タンクも持つシンガポールの代理店を営業事務所に格上げした。中国石油化工(シノペック)とは油田開発や石油生産・精製で協定を結んだ。中国での製油所建設の実現は中国政府の意向次第だ」
 「インド国営石油会社オイル・アンド・ナチュラルガス(ONGC)とは今年、両国や第三国での海底油田や海底天然ガス田の開発・生産で協力する覚書を交わした」

ー 南西石油買収の狙いは何か。
 「交渉中の案件なので具体的には言えないが、南西石油の貯蔵能力(タンク33基で計153万キロリットル)は魅力的だ。日本との取引規模は小さいが、重要な輸出先の一つになる。ブラジル産重油を日本国内で精製し、日本市場で販売したい」
 「日本市場を開拓するには(南西石油のような)企業買収もあれば、日本と重油の長期供給契約を結ぶという方法もある。重油精製能力を拡大するために日本の石油会社などと合弁会社を立ち上げることも選択肢のひとつになるだろう」

ー ブラジルは新エネルギーとして注目されるエタノールの生産国だ。
 「ブラジルではゴイヤス州とサンパウロ州を結ぶ900キロがに及ぶエタノールパイプラインの敷設や、アルコール輸送専用のタンカー確保など物流にかかわるインフラを整備している。輸出拡大の武器になるだろう」


日本経済新聞 2006/9/22

米ヘッジファンド巨額損失 「50億ドル」計上や解散も
 天然ガス急落響く

 米ヘッジファンドが天然ガス相場の急落で変調してきた。
アマランス・アドバイザーズ(Amaranth Advisors LLC)が50億ドルの損失を計上、マザーロック(MotherRock)は解散に追い込まれた。資源高をにらみ流動性の低い商品にまで手を広げた結果、市場の急変に対応できなかった。利益や損失を確定するため商品投資を縮小するファンドもあり、投資マネーの「商品離れ」が加速する可能性がある。
 アマランスはエネルギー取引など多様な投資手法を採用する「マルチ・ストラテジー」と呼ばれるファンド。ハリケーン到来による供給不足を予想して天然ガスを買い増す「ハリケーン・ロング」と呼ばれる投資に傾斜していたが、天然ガス先物の急落で9月第1週だけで50億ドルの損失を計上した。
 アマランスは他のヘッジファンドが抱えていた買い持ち高を買い取ったり、借入金を増やして購入額を膨らませていた。天然ガスは原油などに比べ流動性に乏しく、先物投資で大量の買い持ちのある同社は相場急落の局面で損失を出した。
 米国では8月にも中堅ヘッジファンドのマザーロックが天然ガス先物取引で失敗し解散を決めた。マザーロックは昨年初めに設立したばかり。一時4億4300万ドルの運用資産を抱えていた。

 ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の天然ガス先物は昨年12月に百万BTU(英熱量単位)当たり15ドルと最高値を付けたが、最近になって下げ足を加速。今週は一時4ドル台に下がった。原油先物も今週になって一時1バレル60ドルを割り込んだ。
 天然ガスや原油などの相場急落で商品先物を売買するヘッジファンドの運用成績を反映する「S&P ヘッジファンド商品先物指数」は急落。今月半ばに約1070ポイントを付け、ピークだった今年5月の1253ポイントから約15%下落した。
 ヘッジファンドは株式や為替など広範な変動商品を、先物やオプションといった金融派生商品(デリバティブ)を駆使して運用。運用資産は米国を中心に世界で1兆2千億ドルに達し、ファンドは一般投資家にも販売されている。最近の資源高をうけエネルギーや金属への投資を積極化するファンドが増加していた。
 アマランスには、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどが運用するファンドが出資している。商品投資の失敗はヘッジファンドに出資する年金基金など機関投資家の財務内容に影響する懸念もある。

天然ガス取引で46億ドルの損失を出したヘッジファンド、アマランス・アドバイザーズは、すべてのエネルギー取引を第3者に移管することで合意した。アマランスが20日、投資家に宛てた書簡で明らかになった。

マザーロックはNYMEXの社長以下大物が2005年にスタートしたファンドで、マングループ傘下の大手FoFであるRMFが大量に資金を突っ込み、最盛期には4億5千万ドルを運用していた。


毎日新聞 2006/9/24

アザデガン 視界不良 日の丸油田
 イラン核制裁論議 延びる開発着手

 イランの核開発をめぐる制裁論議が一進一退を続ける陰で、日本が権益を持つ同国のアザデガン油田が揺れている。中東最大級の自主開発油田を前に、日本側は制裁論を主導する米国への配慮から開発着手に踏み出せず、逆にイランは契約破棄もちらつかせて今月末までの着手を迫る。関係者の間では「イランの主張は駆け引き」との見方が大勢だが、04年の契約締結からずるずる引き延ばされてきた「日の丸油田」の行方は、安保理の議論と同じく視界不良のままだ。

国際情勢/権益確保 板ばさみ
 ◆駆け引き
 日本側が着手しない理由としているのが、「現地の地雷除去が済んでいない」ことだ。アザデガン油田はイラク国境に近く、イラン・イラク戦争時に地雷が埋設されたとされるが、実態は不明。
 これに対し、イランは地雷は9割除去した」などと主張。8月22日、9月15日、9月末と次々に交渉期限を切り、権益を持つ国際石油開発に圧力をかけた。イランにとっては、日本からの過去半世紀の累計投資約14億ドルを上回る巨額の投資への期待に加え、制裁論議で日本を米国と分断する意図が透ける。
 ただ、日本の関係者の闇では「揺さぶりの一環」(専門家)との見方から、9月末以降の契約破棄を危惧する空気は薄い。経済産業省幹部は「今は目立った動きができない。しばらく事態はこのままだろう」と話す。

 ◆採算に不安も
 04年の開発契約では、国際石油開発が75%、イラン国営石油会社が25%の権益を保有する。調印後4年4ヵ月後から日量15万バレル、8年後から同26万バレルの生産を見込み、投資総額20億ドルは契約期間の12年半で回収する計画。しかし、米・イランの対立も含め、当初からリスクの高さも指摘されてきた。
 関係者によると、契約は「バイバック」と呼ばれる特殊な方式。生産した原油の所有権はイラン政府にあり、開発後の操業権はイラン側に移転される。日本側は一定期間内で投資に見合う原油を報酬として受け取る。
 しかし、@決められた投資総額を超えた開発コストは日本側が負担A契約期間が短いーーといった不利な条件があり、取れるのは軽油やガソリン成分の少ない重質原油とみられる。開発資材の高騰などで、決められた投資額では生産性を十分上げられない可能性もあるため、両国間で条件見直しが争点になっているという。
 一方、フランス大手トタールが国際石油開発とともに開発に参加する意向と報じられており、国際的なリスク分散を図る動きも出ている。

 ◆悲願
 政府は建前上、「民間ベースの交渉を見守る」との姿勢を貫いているものの、アザデガン油田の権益獲得は事実上の「国策」だった。日本の代表的な権益だったサウジアラビアのカフジ油田を00年にアラビア石油が失い、それに代わる大型の自主開発案件として期待されたためだ。
 アザデガン油田は80年代以降に発見された油田としては、世界第2位の規模。最大生産量は日本の総輸入量の6%に当たる。自主開発比率を現在の15%から40%に高める政府目標に大きく寄与する。
 また、日本は原油輸入の15%をイランに頼っており、「経済制裁になればアザデガンよりよほど深刻な問題になる」(経産省幹部)。当面、開発着手を先延ばししながら国際情勢の沈静化に望みをつなぐ常態が続きそうだ。


日本経済新聞 2006/10/2

ミャンマー 「ガス外交」 中・印・タイが争奪戦
 軍事政権 自国利益守る切り札に活用


 ミャンマーの天然ガスを巡って、中国、インド、タイが激しい争奪戦を繰り広げている。マラッカ海峡を通らずにインド洋から中東への通路を確保したい中国はベンガル湾の港湾整備にも支援を申し出たが、ミャンマー軍事政権は中国の影響力が突出するのを警戒して「待った」をかけ始めた。米欧諸国の経済制裁を受ける軍政は、周辺国を競わせて自国の資源や立地条件をなるべく高く売りつける作戦だ。
 焦点の「シュエ・ガス田」はミャンマー西部ベンガル湾沖にあり、大宇グループや国営インド石油ガス公社など韓印4社の企業連合体が開発中。2004年発見の「Aーl」鉱区は推定埋蔵量4兆−6兆立方フィート(約1132億ー1698億立方メートル)で、アジア有数のガス田とされる。
 韓国は液化天然ガス(LNG)化して自国に輸入することを提案したが軍政の反応は鈍く、中印のパイプライン建設案が有力視されていた。
 中国は昨年、石油大手の中国石油化工(シノペック)を使い、ベンガル湾に臨むチャオピュー (Kyaukpyu) から雲南・四川両省に抜ける2380キロメートルのパイプラインを提案。チャオピュー港の近代化計画も持ちかけた。中国はインド洋への玄関として利用できるようになる。一方、インドはバングラデシュを経由しインド東部のコルカタに至るパイプライン建設案をまとめ、05年1月に関係3カ国が基本合意した。

提案てんびんに
 だが、事態は中印の思惑通りには進んでいない。中国の誘いには軍政が珍しく首を縦に振らない。軍政高官によると、パイプラインが少数民族の支配地域を通過するため「安全確保の名目で中国軍が入り込む恐れがある」。中国のインド洋進出を可能にする港湾整備計画にも警戒感が強い。
 インドのパイプライン計画にはバングラデシュが変心し、領内通過を拒否した。インドは自国領を通る新計画を出したが「建設費が30億ドルと当初案の1.5倍以上に膨れ、現実的ではない」(インド外交官)という。
 バングラデシュのジア首相は01年の就任後、中国を3回訪問し結びつきを強めている。「中国がバングラデシュに働き掛けてインドのパイプライン通過を拒否させた」。軍政高官は推測する。

米欧包囲に対抗
 中印がにらみ合う状況に、割って入ったのがタイだ。タクシン前首相が8月、ミャンマーの新首都ピンマナを訪れ軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長にガス購入を直談判した。国営石油会社PTTグループによるシュエ・ガス田までのパイプライン建設も提案したという。
 タイにはアンダマン海のガス田まで延びるパイブラインがあり「この延長が最も現実的」(ミャンマーのエコノミスト)。タイヘのガス輸出は05年で約15億ドル。近く発足するタイの暫定政権も方針を引き継ぎ、ガス購入を求めるもようだ。
 人権弾圧を続けるミャンマー軍政に対し、米国は国連安全保障理事会で民主化を要求する決議の採択を目指す。しかしミャンマーの利用価値を高く評価する中国は採択に強く反対している。軍政は天然ガスや港湾整備を自国を守る「カード」として使う構えで、今後、中印など周辺国に一段と傾斜する公算が大きい。

別情報では「ミャンマー−雲南−重慶原油パイプライン構想」はミャンマーのSittweから雲南省・昆明市まで原油パイプラインを建設し、その後昆明から重慶市まで延長するというもの。

 


毎日新聞 2006/10/19

LNG調達 将来に不安 各国争奪、開拓にリスク

 天然ガスを冷却、圧縮して海上輸送する液化天然ガス(LNG)の調達に懸念が広がっている。日本は現在、世界の輸入量の半分を"独占"しているが、世界各国での需要急増で、将来の安定調達に不透明さが出ているためだ。国際石油開発がインドネシアでガス田開発を進めるなど、政府、企業は新規の調達先の開拓に力を入れる方針だ。

◆欧米で調達が増加
 LNGは家庭用の都市ガスや発電用の燃料として使われ、96%は海外からの輸入頼み。日本の全消費エネルギー量の約15%を占める。
 石油危機後"脱石油"を進めるため、日本は天然ガスに着目し、船で運べるよう液化する冷却技術を開発した。日本仕様のエネルギーとも言われ、世界のLNG市場をリードしてきた。
 しかし、パイプラインで天然ガスを運ぶ方式が主流だった欧米が、効率的に運搬できるLNGに注目し始め、近年調達量を増やしている。2020年には北米・欧州向けの輸出シェアが現在の3割から5割に増え、日本は2割程度に落ち込むとの試算もある。

◆「201O年問題」
 長期的にはLNG需要はひっ迫が見込まれている。日本エネルギー経済研究所の試算では、30年の世界需要量は4億9500万トンで、現在計画中の新規ガス田開発が順調に進めば、ぎりぎり調達できる。だが、開発が停滞すれば2億トン以上も不足する。その時は資源の争奪戦が起きることは必至だ。
 需給に余裕がある10年ころに問題が起きる可能性もある。LNG輸入量全体の25%を占める最大の調達先、インドネシアでは、多くの日本企業の長期契約が10年ころに更新時期を迎える。しかし、インドネシアでは原油生産が減り、自国で使うLNG需要が高まっているため、輸出余力は小さくなっている。「契約更新で調達量が半減してもおかしくない」(経済産業省幹部)との見方さえある。

◆獲得競争激化
 ガス田開発の動きは活発化している。豪州・東ティモールにまたがる地域にあるガス田から、東京電力と東京ガスが今年から年300万トンを輸入する。国際石油開発は豪州・イクシスガス田(年産600万トン)を12年に生産開始、インドネシアのアバディガス田(年産300万トン以上)は14年ごろの生産開始を目指すなど、自主開発を進めている。
 ただ、ロシアの原油・天然ガス開発計画「サハリン2」で、ロシア政府が環境問題を理由に事業差し止めを求めるなど、新規開拓にはリスクもつきまとう。
 サハリン2では、日本の輸入量全体の18%に当たる年960万トンのLNG生産が見込まれており、「サハリン2がなければ、今後の調達計画はかなりきつい」(勝俣垣久・東京電力社長)との本音も漏れる。政府や企業はカタールなど、別の有望調達先の開拓も進めているが、事情は欧米も同じで、LNG獲得競争は激しさを増す見通しだ。


日本経済新聞 2006/11/22

コスモ石油 1000億円投資、ナフサ増産 堺に新装置 需要減の重油減産

 コスモ石油は21日、堺製油所(堺市)に重質油分解装置を新設すると発表した。1千億円を投資して、2010年度の運転開始を目指す。需要が堅調なナフサやジェット燃料などの生産量を増やし、需要が激減している重油の生産を減らす。処理する原油の種類も割安な重質原油に置き換えられるため、年間に最大で300億円の収益押し上げ効果が得られるとみている。
 同製油所では1日に8万バレルの原油を蒸留装置で分解し、ガソリン、ナフサなどを生産している。分解しきれずに残る重質油は主に重油として販売してきたが、需要が減少している。新装置はこの重質油をさらに分解してナフサなどを取り出す装置で、1日に2万5千バレルを処理できる。
 年間生産量はナフサ25万キロリットル、ジェット燃料70万キロリットル、軽油35万キロリットル、石油コークス40万トン。一方で、重油の生産量を150万キロリットル減らせる。製品から硫黄分を取り除く装置なども併設する。
 堺製油所の原油処理能力はコスモの4製油所のうちで最も小さい。木村弥一社長は堺製油所の処理能力の拡張も視野に入れていることを明らかにした。
 発電や産業用の燃料に使う重油は今年度上半期の国内販売量が前年同期より1割以上減った。コスモも販売量を12%減らした。今後も需要減は続くとみて、大型投資に踏み切る。
 07年4月からは米国カリフォルニア州向け規格の軽油生産を開始し、現地で卸売りを始める。年間40万−60万キロリットルを国内の4製油所から輸出する。同州での販売価格は国内より1リットルあたり1−4円高い。国内市場では軽油需要も縮小傾向にあり、新規の有力な販売先として位置付ける。

重質油分解装置
 原油から一定の割合で出る重質油をナフサやジェット燃料の原料などに分解する装置。重質油から生産する重油の国内需要が減っているほか、重質油分が多い重質原油と、少ない軽質原油との価格差が拡大しているため、装置を保有する製油所のコスト競争力が高まっている。国内ではジャパンエナジーや九州石油などが相次いで装置の能力を増強している。


日本経済新聞 2006/11/30

太陽石油 石油化学品など増産 500億円投資 重油低迷、生産シフト

 石油元売り中堅の太陽石油は四国事業所(愛媛県今治市)に500億円を投じて重質油分解装置を新設する。2010年度下半期に稼働の予定で、販売量が急減している重油の生産を減らし、需要拡大が見込める石油化学品やガソリンに改質して販売する。石油製品は需要が激変しており、元売り各社は設備転換で付加価値の高い品目への生産シフドを急いでいる。
 四国事業所の原油処理能力は1日12万バレル。原油を蒸留しても分解できない
重質油2万5千バレルを触媒を使って分解する装置を新設。プロピレンやベンゼンなど石油化学品の製造装置も整備する。
 新設備の稼働後は
ガソリン原料年間60万キロリットル、灯油や軽油など30万キロリットル、プロピレン10万トン、ベンゼンとキシレン計5万トンを増産。既存設備分と合わせた石油化学品の生産量は年間100万トンになる見込み。重油生産量の減少分は120万キロリットルになる。
 太陽石油は軽質原油から石油製品を精製してきた。新装置で重質油の割合が高い重質原油の精製が可能になる。重質原油は軽質原油より1バレルあたり8ドル以上安く原料費を大幅に削減できる。輸入で補っているガソリン原料の内製化と合わせ、年間100億円程度の収益押し上げ効果を見込む。
 石油化学品などの生産で余った可燃性ガスを燃料に使う出力4万3千キロワットの発電機も建設。自社使用分以外の電力は新規電力小売事業者などに卸販売する。重油販売量は原油価格の高騰にともなう価格上昇などで2006年度上半期は前年同期より1割以上減少した。

石油元売りの製油所への主な大型投資
社名 投資額
(億円)
内容 場所 (運転開始)
太陽石油   500 重質油分解装置、発電設備の新設 四国事業所 (2010年度)
コスモ石油  1000 重質油分解装置の新設 堺製油所 (10年度)
新日本石油   600 石油化学品増産装置など新設 仙台製油所(07年度)
  500 重質油から石油化学品を製造する装置の新設 仙台製油所もしくは水島製油所(09年メド)
ジヤパンエナジー   700 石油化学品増産設備の新設 鹿島製油所(08年1月)
富士石油   300 重質油分解装置の増設 袖ケ浦製油所

 


日本経済新聞 2007/3/4  

天然ガスの固形化 三井造船が事業化へ 近距離輸送 LNGより低コスト

 三井造船は2010年度をめどに、天然ガスを産出地で固形化して海上輸送する事業を始める。天然ガスに水を加え「天然ガスハイドレート(NGH)」と呼ばれる固形にする独自技術を使う。固形化プラントや専用の輸送船を建設し、ガス開発事業者などと共同で輸送を手掛ける。液化天然ガス(LNG)にして運ぶより初期投資が少ない利点を生かし、東南アジアに点在する中小ガス田の効率的な開発を目指す。
 中国電力と共同で同社の柳井発電所(山口県柳井市)に日産5トンの実証プラントを建設中で、10年度に同200トン規模の商用プラントをガス田近くで稼働させる計画。場所は海外を含め検討する。専用輸送船は07年度から模型による輸送実験を始め、09年度に設計・建造にかかる。
 当初はガス開発事業者などと組んで輸送業務も手掛け、NGHの普及を目指す。軌道に乗った時点で設備建設や船の建造に特化する考えだ。
 日本は天然ガスを輸入する際、パイプラインではなく海上輸送に頼っている。現在は産地で低温・高圧で液化し、LNGの状態で運び込んでいるが、液化設備や輸送船の建設費が高く、一つのプロジェクトあたり1兆円程度の投資が必要といわれている。中東などの巨大なガス田でないと採算が合いにくい。
 NGHはより常温に近く、設備を簡素化できる一方で、LNGほど体積が小さくならない。中東などの遠距離から大量に輸送する場合はLNGが有利だが、東南アジアなどから日本へ運ぶにはNGHが向いている。
 東南アジアからの輸送の場合、投資額はLNGに比べ約2割減るといい、開発に適さなかった中小規模のガス田を有効利用できる可能性が出てくる。
 NGH技術は三菱重工業なども開発を進めている。


天然ガスハイドレート
 天然ガスの主成分であるメタンを水分子の中に閉じこめた固形物質。天然ガスと水を高圧下で安定した状態にし、氷状にする。体積の約170倍の天然ガスを含み、火を付けると発火するため「燃える氷」とも呼ばれる。
 セ氏マイナス20度前後で輸送でき、同162度まで冷却する液化天然ガス(LNG)に比べプラントや輸送船の設備孝簡素化できる。

NGH 東南アジアなどからの近距離・少量輸送向き セ氏マイナス20℃前後で固形化、1/170に圧縮
LNG 中東などからの長距離・大量輸送向き セ氏マイナス162℃で液化、1/600に圧縮

 


2007/6/27 日本経済新聞夕刊   

ベネズエラ主要油田 米石油大手、権益失う エクソンは撤退 資源国有化で

 米石油最大手の米エクソンモービルと3位のコノコフィリップスは26日、南米ベネズエラで主要油田の開発権益を失った。チャベス政権が油田の国有化を進めているためで、エクソンは同国から撤退する。原油高を背景にした資源国有化の動きが欧米石油大手の経営に打撃を与えている。
 エクソンなどが権益を失ったのは、北部のオリノコ川流域に広がる重質油地帯。埋蔵量はサウジアラビアを超えるとみられる。ベネズエラ政府は今年1月に開発事業の国有化を決め、国営石油会社(PDVSA)側の持ち分比率が6割以上となるよう、欧米勢に求めた。2社との間で持ち分などの条件で折り合えず交渉が決裂したため、開発権益をはく奪する。
 エクソンは他地域でも豊富な権益を保有しており、撤退に伴う業績への影響は軽微とみられる。コノコにとってベネズエラは埋蔵量の9%を占める主要拠点で、4−6月期決算で権益の減損処理に伴う45億ドルの損失を計上する計画で、これは2006年の純利益の29%分に当たる。
 他の欧米勢では仏トタルの持ち分が47%から30.3%に、ノルウェーのスタトイルは15%から9.7%に低下したもよう。税率引き上げで採算は低下しているが他に有力な開発権益を手当てするのが難しく悪条件下での操業継続を選んだ。


日本経済新聞 2007/8/28

カザフ 最大油田の開発中断 「環境違反」で外資に圧力 契約見直し迫る

 中央アジア最大の産油国カザフスタンのイスカコフ環境相は27日、日本企業を含む外資が主導するカシャガン油田の開発工事について、環境面で違反があったため3カ月停止の処分にしたと発表した。カザフ政府は外資との契約を見直し、石油販売で得られる取り分の増加を求めている。環境違反で圧力を掛けることで契約見直しを迫るものとみられる。
 インタファクス通信などによると、環境相は「環境面での違反行為があったが、開発業者は対応策をとらなかった」と指摘。さらに3カ月の工事停止は「破壊ざれた環境を回復する以外の目的はない」と強調した。
 カシャガン油田はカスピ海の大陸棚に位置し、確認埋蔵量は70億ー90億バレルと同国最大の油田。イタリアのENI、米エクソンモビル、仏トタル、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどのほか、日本の国際石油開発も8.33%の権益を持つ。当初は2008年にも商業生産が始まる予定だったが、10年後半に延期され開発費も大幅に増加した。
 カザフ政府は開発免許剥奪の可能性にも言及。利益配分を巡る契約見直しも要求し始めた。旧ソ連ではロシアが環境面で圧力を掛け、日本企業が参加するサハリン2の権益の過半数を獲得した。カザフの決定もこれと同様の手法だ。

   2006/6/7 
BTCパイプライン完成 参照

インぺックス北カスピ海石油 8.33%
Eni / ExxonMobil / Shell / TOTAL / 各 18.52%
ConocoPhillips 9.26%
KazMunaiGas 8.33%

カザフスタン北カスピ海沖合鉱区では、1999年9月より掘削された試掘第1号井にてカシャガン油田の発見に成功しております。カシャガン油田は、カザフスタン領カスピ海における最初の発見であり、世界的な油田発見の歴史からみても有数の巨大油田であることが確認されております。
同鉱区では、カシャガン油田のほかに、カラムカス、南西カシャガン、アクトテ、カイランの4構造にて炭化水素の存在が確認されており、カシャガン油田の開発と並行してこれら既発見構造の評価作業を行い、同鉱区からの更なる生産拡大を目指しております。

日本経済新聞 2007/9/7

カスピ海油田開発 カザフ、外資に圧力 国営石油の権益拡大要求

 カザフスタン政府は6日、日米欧企業が出資するカスピ海沖のカシャガン油田開発を巡り、カザフ国営石油会社カズムナイガスの権益を拡大するよう外資に要求した。環境問題などで外資に圧力を掛け、資源の国家管理を強める構えで、サハリン沖の石油・天然ガス開発で外資の権益を奪ったロシアの強硬手法が中央アジア最大の産油国にも波及してきた。
 マシモフ首相が6日、「カズムナイガスを主要共同開発者とするよう要求する」と表明した。権益について具体的に言及しなかったが、現在9.3%の同社の権益を開発を主導する伊ENIなどの持ち分(18.5%)以上に引き上げることを求めているとみられる。首相は「要求を受け入れなければ他の手段に訴える」とも述べ、外資の免許剥奪などの可能性も示唆した。
 カスピ海の大陸棚に位置するカシャガンは確認埋蔵量70億ー90億バレルのカザフ最大の油田。利益配分などを定めた生産分与協定(PSA)に基づき、外資主導で開発していた。


Aug 27, 2007 Reuters

Kazakhstan halts Kashagan oilfield, pressures Eni

Kazakhstan halted work at the huge Kashagan oilfield on Monday and opened a probe into customs violations there, putting further pressure on the project's Western operators led by Eni as it seeks more revenues.

Kazakhstan's approach, chiefly citing environmental issues, echoed Russia's row with Royal Dutch Shell, which ended with the oil firm losing control of a major oilfield to the Russian state gas monopoly last year.

"The permit for 2007 has been suspended. That is, we are suspending work for three months on our part," Kazakh Ecology Minister Nurlan Iskakov told reporters.

Kashagan's start-up delays have long irked Kazakhstan, which has threatened to revoke a permit, held by the consortium led by Italy's Eni to exploit the world's biggest oil find in decades.

In a further twist, the Kazakh prime minister replaced the energy minister -- a key figure overseeing Kashagan -- with Sauat Mynbayev, the head of the state asset management firm Samruk.

An Eni spokeswoman said consortium representatives planned to meet Kazakh officials on Monday to "analyse the situation". Eni shares were down 1.05 percent at 24.60 euros at 1200 GMT.

In another allegation, the Finance Ministry's customs committee said it had uncovered customs violations at the deposit, concerning imports of two helicopters, and was opening a criminal case against unidentified consortium officials.

"The actions by a number of officials at the AgipKCO branch contain criminal activity ... that is, evasion of significant customs payments," it said in a statement, putting total budget losses at $2.5 million.

"The Committee ... has also uncovered other serious violations of Kazakh legislation in connection to the AgipKCO branch's use of the country's customs regime. ..."

Agip KCO(Agip Kazakhstan North Caspian Operating Company N.V), a company fully owned by Eni S.p.A., operates on behalf of a consortium made of seven international oil companies: Eni (Operator), KazMunay.Gas, ExxonMobil, Shell, Total, ConocoPhillips and INPEX.

BETTER TERMS

Adding further fuel to the row, the Kazakh Emergency Ministry said separately it was suing Kashagan operators due to violations of fire safety rules. It said it would seek to halt construction of an oil and gas processing facility there.

Iskakov has not specified the nature of the environmental problems but a ministry official has said it was investigating deaths among baby seals and harm to fish populations. Laurent Paris, an Oddo-Pinatton analyst, said the move by the Kazakh government was part of its efforts to put "maximum pressure" on the Eni-led consortium. "They are doing everything they can to renegotiate to get better terms," he said.

The former energy minister, Baktykozha Izmukhambetov, said in July the government was in talks to revise the share of profit oil for Kazakhstan to 40 percent from 10 percent.

Kashagan's AgipKCO consortium on the Caspian Sea also includes Shell, Exxon Mobil Corp, Total , ConocoPhillips, Japan's Inpex Holdings Inc and the Kazakh oil company KazMunaiGas.

The consortium has put off the original startup of the world's biggest oilfield discovery in 30 years to the second half of 2010 from an original target of 2005.

Serzhan Duisebayev, acting head of the customs committee, denied the latest move sought to put pressure on Eni. "We made this announcement not because we want it to be seen as part of some kind of campaign against the consortium," he said. "All investors are equal for us."


日本経済新聞 2007/10/6

資源の国家管理、アジアにも波及 
 アジア最大のガス田権益 インドネシア、6割要求 エクソン側は反発 国庫収入増狙う

 ベネズエラなど南米で広がる資源国有化の動きがアジアに波及し始めた。インドネシア政府はガス田からの収入配分を求めて事業主体の米企業と交渉を開始。銅山の権益拡大にも乗り出した。エネルギー価格の高止まりを背景に国庫収入の増加を図るとともに、経済成長に伴う国内需要の拡大に対応する狙いがある。輸出が減れば、日本などへの供給に影響が出る可能性もある。

 インドネシア政府は同国西北部ナツナ島海域にあるアジア最大の天然ガス田に関して、開発主体の米エクソンモービルにガス販売収入に対する政府への配分比率を現在のゼロから60%超に引き上げるよう要請した。カラ副大統領は「国内の原油・ガス生産は低迷している。(政府の直接権益を設定し)自国に優先的にガスを供給する必要がある」と述べた。
 同ガス田の可採埋蔵量はロシアのサハリン2の3倍弱の規模。現在の配分比率はエクソンが76%、インドネシアの国営石油会社プルタミナが24%。同国政府が直接、ガス販売の収入を得ることができない契約になっている。このため政府はエクソンに契約の全面的な見直しを要請した。
 エクソン側は政府提案に反発しているもようだが、同国のエネルギー・鉱物省は「エクソンが拒否した場合は権益をプルタミナや他の欧米石油メジャーなどに全面移管する可能性がある」としている。法的な根拠は明らかにしていない。現行契約の期間についても双方の主張が対立。政府側は今年で有効期限を迎えるとしているが、エクソンは2009年まで延長可能としている。
 エクソンは1995年に同ガス田の権益を取得したが、二酸化炭素の含有量が多く採掘が難しいと判断。生産までの投資額が300億ドル以上に達すると見込まれるζとなどから、開発を延期している。これに対し政府側は開発延期を理由に契約の白紙撤回を通告したもよう。
 現在、インドネシア産の液化天然ガス(LNG)価格は国際水準を上回る百万BTU(英国熱量単位)当たり7−8ドル程度まで上昇。政府はガス田の権益拡大で国庫収入の増加も狙っている。
 
 インドネシア政府は鉱山の権益強化も検討中。対象となるのは同国パプア州で世界最大級の銅鉱山を保有するフリーポート・インドネシア。米企業とインドネシア政府などとの合弁企業で、05年の営業利益は20億ドルを突破。同国で最大の収益を上げる外資系企業となった。
 現地住民は「鉱山はもともと我々の土地」と返還を求めるデモを繰り返している。プルノモ・エネルギー鉱物相は「(同鉱山は)環境汚染などの問題があり、採掘権の見直しを検討する」と明言した。

インドネシア政府は1995年にエクソン(当時)と開発に係る基本合意(投資見積り額400億ドル)を結び10年以内の商業生産を目指していたが、掘削作業の失敗やその後の開発意欲の欠如(ガス販売先の開拓が意欲的でないこと)等を理由に、インドネシア政府は2006年後半、76%の権益を保有していたエクソンモービル(現在)に対し同鉱区の操業契約を打ち切ると通告し、現行契約を2007年1月9日に失効させた。


日本経済新聞 2007/10/6

エクアドル 石油収入超過分99%国庫に
 
 エクアドルのコレア大統領はは4日、外国の石油会社が契約時に取り決めた額を上回る収入を得た場合、超過分の99%を国庫に納めるように命じる大統領令を発した。同国エネルギー相は5日、国庫収入が「年間で8億3千万ドル増える」との見通しを示した。
 同国は超過分の50%を徴収する制度を導入しているが、比率をさらに引き上げる。今回の措置への外資系石油会社の反発は必至だ。
 南米では民族主義を掲げるベネズエラやボリビアの政権が、資源国有化を進めている。エクアドル政府は、ベネズエラが実施している政府による出資比率引き上げと比べると、今回の措置は外資系石油会社にとって受け入れられやすいと判断したもようだ。
 発表に対し、エクアドルで操業するブラジル政府系のぺトロブラスは、コメントを避けている。スペイン通信はスペイン・アルゼンチン系のエネルギー会社レプソルYPF関係者の話として「業績への影響は軽微」との見方を伝えた。