日本経済新聞夕刊 2006/6/26
アルセロール ミタルと合併決定
巨大鉄鋼企業誕生へ 年産1億1000万トン 新日鉄の3倍超
鉄鋼世界2位アルセロール(ルクセンブルク)は25日の取締役会で、最大手ミタル・スチール(オランダ)との合併を全会一致で決めたと発表した。ミタルによる事実上の買収提案を受け入れた。ミタルはアルセロールの株式の約49%を取得して「アルセロール・ミタル」を設立する。株主総会で承認されれば、年間粗鋼生産量が約1億1千万トンと、新日本製鉄の3倍超にあたる巨大企業が誕生する。アルセロールは先にロシアのセベルスターリとの合併を発表しており、同社の対抗策が今後の焦点となる。
ミタル・スチールMittal Steel
インド生まれのラクシュミ・ミタル会長が1976年にインドネシアで設立。現在はオランダに本社を置く鉄鋼世界最大手。90年代から新興市場国での買収を繰り返し事業規模を拡大した。2005年の売上高は281億3200万ドル。
アルセロールArcelor
フランス、スペイン、ルクセンブルクの鉄鋼3社が合併して2002年に発足。本社はルクセンブルク。自動車鋼材の世界シェアは15%ある。05年の売上高は326億1100万ユーロ。
世界の主要鉄鋼メーカーの粗鋼生産量ランキング (2005年、百万トン)
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株主圧力で「抗戦」一転
ロシア大手との合併案 警戒感強く裏目に
鉄鋼世界2位アルセロール(ルクセンブルク)は最大手、ミタル・スチール(オランダ)との合併を決めた。ミタルがTOB(株式公開買い付け)を発表して以来、5カ月にわたり徹底抗戦を掲げてきたが、株主に押し切られる形で180度方針転換した。ミタルは条件面で大幅譲歩したが、反目し合っていた両社だけに融合に時間がかかる可能性もある。
アルセロールとミタル・スチールを巡る主な動き <2006年> |
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1/ | 27 | ミタル、アルセロールに対し総額186億ユーロで買収を提案すると発表 | |
29 | アルセロール、買収提案を拒否すると発表 | ||
5/ | 18 | ミタル、アルセロールに対するTOBを正式1に開始 | |
19 | ミタル、買収額を3割以上引き上げた新提案を発表 | ||
21 | アルセロール、臨時取締役会でミタルの新提案を協議、検討の姿勢示す | ||
26 | アルセロール、ロシアのセベルスターリが合併計画発表 | ||
6/ | 12 | アルセロール、ミタルの新提案を拒否すると発表 | |
25 | アルセロール、取締役会でミタルとの合併で合意 |
日本経済新聞 2006/6/27
鉄鋼「規模競争」火ぶた
「アルセロール・ミタル」世界シェア10%に 年産1.5億トンヘ攻勢
1990年代末の自動車や石油のように、鉄鋼業界でも大型再編が一気に加速するとの見方が多い。「アルセロール・ミタル」はその火ぶたを切る可能性がある。欧州では独ティッセン・クルップ、英蘭コーラス、伊リーバの3社、米国ではUSスチール、ヌーコアが再編の軸となりそうだ。
先月末にアルセロールと合意した経営統合をそでにされたセベルスターリなどロシア勢の動向も焦点だ。プーチン政権に近いロシア最大の富豪、アブラモビッチ氏は同国鉄鋼大手を傘下に抱えるエブラズグループの約4割の株式取得で合意。同社を足がかりに世界的な再編を仕掛ける構えだ。
次の標的日本勢も 新日鉄は提携維持へ 技術流出には懸念
英国に本拠を置く「LNM」はイスパット・グループISPAT として知られる。
新日鐵はイスパットとJVをもっていた。
LNMグループの2社が合併すると同時に、米ISGも買収して新会社「ミタル・スチール」 を設立