米国バード修正条項
Continued Dumping and Subsidy Offset Act of 2000
(the CDSOA or Byrd Amendment)


平成16年11月24日 外務省            バード修正条項解説

米国のダンピング防止(AD)措置に関するWTO協定に基づく協議要請について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/16/rls_1124c.html

1. わが国政府は、11月24日(水)、米国政府に対し、同国のダンピング防止(AD)措置におけるダンピング・マージン計算方法等に関し、WTO協定に基づく協議を要請した。
   
2. 具体的な協議日程は現時点では未定であり、今後米国政府との間で調整をはかっていく予定である。
   
3. わが国の協議要請の要旨
 
(1) 米国は、ダンピングの存否の認定及びダンピング・マージンを決定する初回調査、およびその後の実際のダンピング税率を決める年次行政見直しにおいて、ダンピング・マージンを計算する際に、国内正常価額より対米輸出価格が安価であるもののみをマージン計算の対象とする、いわゆるゼロイングの手法をとっている。
   
(2) わが国は、関連米国国内法令の下での同慣行及び同慣行に基づいて米国が我が国企業にとったダンピング防止措置は、WTO協定に整合していないと考えている。
     
(3) そのため、日本政府は米国政府に対し、WTO紛争解決了解に基づく協議を要請することとした。

平成16年11月10日 外務省

米国バード修正条項に対するわが国の対抗措置承認再申請について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/16/rls_1110c.html

1.  10日(現地時間)、わが国はEC、インド、メキシコ、韓国、カナダと共にWTOに対し、米国バード修正条項への対抗措置の承認を再申請した。
   
2.  バード修正条項は2003年1月にWTO協定違反が確定したが、米国は未だに違反状態を是正していない。本件については、本年8月、WTOの仲裁が、わが国を含めた共同申立国に対し、バード修正条項の下で行われた米国企業への分配額の72%に当たる金額を対抗措置の規模として認める決定をしたが(わが国については約7630万ドル)、今回の承認申請は、この仲裁決定に沿って行ったものである。
   
3.  WTOの関係機関(紛争解決機関)は今回の承認申請を24日の会合で検討することになる。WTO協定上、申請は自動的に承認され、その後はわが国として対抗措置を発動する権利が確保される。実際に対抗措置を発動するかどうかを判断するに当たっては、改めて政府として意思決定を行うこととする。
   
4.  わが国としては、米国が今回の再申請を真摯に受け止め、WTOの勧告に従ってバード修正条項を早期に撤廃することを強く期待しており、他の申立国とも連携しつつ、引き続き米国側に必要な働きかけを行っていく。
   

(参考)
バード修正条項の概要
 バード修正条項とは、ダンピング防止税および相殺関税により米国が得た税収を、ダンピングまたは補助金提訴を支持した国内業者等に対して分配することを定める米国国内法(2 000年10月成立)である。バード修正条項に基づく分配額は毎年変わるが、米国政府が公表している数字では、2003年度は総額約1.9億ドル、このうちわが国からの輸入に起因する額は約1億600万ドルである。

これまでの経緯
 日本、EC、オーストラリア、ブラジル、チリ、インド、インドネシア、韓国、タイ、カナダ、メキシコの11加盟国は、バード修正条項がWTO協定に違反するとして、2001年、WTOに申立てを行い、2003年1月、同条項のWTO協定違反が確定した。米国の勧告実施のための妥当な期間(RPT)は同年12月27日までとされたが、バード修正条項が撤廃されないまま同期間は経過した。
 これを受け、わが国は、本年1月15日、WTOに対し対抗措置の承認を申請した。わが国以外で対抗措置を申請した国は、EC、ブラジル、チリ、インド、韓国、カナダ、メキシコ。これに対し、米国は申請された対抗措置の規模について異議を申し立て、同年1月26日、問題は仲裁に付託された。

仲裁決定の内容
 本年8月31日、WTO紛争解決機関は、バード修正条項に基づき米国企業に支払われる分配金が与えるわが国他申立国の米国向け貿易への影響を考慮し、毎年の分配金額に0.7 2を乗じた金額を対抗措置の規模とする判断を下した。上記1.の2003年度の分配額を基に試算すると、わが国の対抗措置の規模は約7,630万ドル(=約1億600万ドルラ0.72、日本円で約80億円、1ドル=105円で計算)となる。

米国内の状況
 米国議会では、上・下院それぞれに、バード修正条項を廃止(下院)ないし改正(上院)する内容の法案が提出されているが、審議の見込みは立っていない。米国行政府は、バード修正条項を廃止ないし改正すべきとの立場。

申請された品目
 バード修正条項で被害を受けている鉄鋼製品やベアリングを含め約370品目。実際に対抗措置を発動する際には、これらの品目の中から追加関税を賦課する品目を選定する。


2004年9月8日   読売新聞 

なるほど経済
WTOが不当性認定 米バード法

◆日本、報復関税 体制整えるが… “被害”年118億円/「日米関係に水差す」の声

バード法とは

 米政府が不当に安値だと判断した海外からの輸入品に関税を上乗せし、この関税の収入を、ダンピング被害を受けた米企業に分配することを定めた法律。関税法を一部修正する形で、2000年10月に成立した。産業保護に熱心な有力政治家のロバート・バードRobert C. Byrd上院議員(民主党)らが主導したためこの名がついた。

バード法をめぐる動き

2000年10月   バード法が成立
   12月   日本、EUなど11カ国・地域が共同でWTOに提訴
2003年1月   バード法のWTO協定違反が確定
2004年1月   日本、EUなど8カ国・地域が共同で対抗措置の承認を申請
   8月   WTOが日本など8カ国・地域の申請を認める

 バード法の対象品目は現在、鉄鋼製品、ベアリングなど工業品を中心に38品目だ。日本製品に上乗せ関税を課して米企業に分配した金額は2001年度が約1億1000万ドル(約121億円)、2002年度が約1億800万ドル(約118億円)にのぼり、日本は最大の“被害国”となっている。

 

 

 

 

 


WTO紛争処理
(米−バード修正条項:第一回パネル実質会合の概要)
 2004年3月5−6日、WTO事務局(ジュネーブ)

日本の主張の要点

(1) バード法は行政府に裁量を与えない義務的な(分配を行うことを義務づける)法律であり、法の適用ではなく法の存在そのものについてパネルで違法性を争うことが可能。
(2) ダンピング(又は補助金)に対抗するための措置は、AD協定(補助金協定)でAD税(又は相殺関税)、暫定措置、価格約束の3つに限定されており、バード法による分配は、そのいずれにもあたらず協定違反。
(3) 分配は提訴者及び提訴支持者に対して行われるため、分配の受け取りを求める国内産業者が当局による調査開始を支持するインセンティヴとなり、ダンピング・補助金調査の要件たる支持の比率に係る規定の適用が歪曲される。
(4) 上記(3)と同様の理由で、国内産業者が価格約束を米政府が受け入れることに反対するため、価格約束の成立が阻害される。
(5) 上記の違反等により、AD税及び相殺関税に関する米国法の一律、公正、合理的な運用ができなくなるのでガット10条に違反する等。
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米国の主張

(1) 税収の使途は国家主権の問題でありWTO協定は明文上いかなる制約も課していない。
(2) バード法は補助金のプログラムである(AD・CVDとは無関係)が、違反補助金ではない。
(3) 調査開始要件及び価格約束に関する申立国の主張は推測に基づくものであるし、協定の明文には違反しない等。