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薬害肝炎救済法(特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法)は1月8日、衆院本会議で全会一致で可決、1月11日、参院院本会議で全会一致で可決、成立した。
原告・弁護団と政府は15日、和解基本合意書を締結した。
福田総理は基本合意書に調印した「薬害肝炎訴訟」の原告・弁護団100人余りと面会し、「行政の対応が遅れたことを情けなく思っている」とあらためて謝罪し、薬害の再発防止に努める考えを伝えた。
付記
2009年11月30日、参院本会議で議員立法の肝炎対策基本法を民主、社民、国民新の与党3党などの賛成で可決した。自民党は与党の議事運営に反発して欠席したが、公明党は出席した。
この法律は、肝炎患者や感染者に対する支援を総合的に進めるため基本理念を定めたもので、肝炎を国内最大の感染症と位置づけ、感染の拡大を防げなかった国の責任を認めている。。
そのうえで、国は、患者に対して経済的な負担を減らすために必要な対策を講じるほか、適切な医療を受けることができるよう、医療機関を整備するとしている。また、厚生労働大臣が肝炎の予防や検査の実施体制などに関する基本指針を策定することなどを定めている。
これまでの経緯は以下の通り。
1964年、日本で初めて、フィブリノゲン製剤の製造・販売が、1972年には、第9因子製剤の製造・販売が開始された。これらの血液製剤は止血剤として使用され、とりわけフィブリノゲン製剤は、先天性低フィブリノゲン血症のほか、産科出血や重傷外傷、外科的治療などに伴う出血に対し、止血剤として幅広く投与された。
しかし、これらの血液製剤にはC型肝炎ウイルスが混入しており、その結果、多くの人がC型肝炎に感染した。
薬害肝炎訴訟は、このような血液製剤を製造・販売した製薬企業(現三菱ウェルファーマ、子会社のベネシス、日本製薬)の責任を追及し、さらには、血液製剤の製造を承認した国の責任を追及する訴訟である。
三菱ウェルファーマ(現 田辺三菱製薬)は2001年10月に三菱東京製薬とウェルファイドが合併して設立された。
ウェルファイド(旧称 吉富製薬)は1998年4月に(旧)吉富製薬がミドリ十字を吸収合併した。
* ミドリ十字は薬害エイズ事件の民事訴訟被告製薬5社の1社(他は、バイエル薬品、バクスター、化学及血清療法研究所、日本臓器製薬)
三菱ウェルファーマは2003年10月1日に、血漿分画製剤事業を安全分社化し、株式会社ベネシスを設立した。
日本製薬は、1951年に我国で初めてエタノール分画法によるガンマグロブリンの製造に成功し、以後日本の栄養輸液製剤及び血漿分画製剤のパイオニアとして事業基盤を固めた。
武田薬品グループ(連結企業群)の中で、血漿分画製剤、栄養輸液製剤、殺菌消毒剤、ドリンク剤の製造販売事業に事業領域を特化した、いわゆるスペシャリティファーマ。
2002年10月、東京13名、大阪3名の被害者が原告となり、東京地裁および大阪地裁で損害賠償を求めて提訴し、その後、福岡地裁、名古屋地裁、仙台地裁で次々と提訴した。
血漿製剤: 血液の45%は赤血球、白血球、血小板の血球成分から成る。 凝固因子は12種類あり、発見順にローマ数字がつけられており(但しYは欠番)、第1因子がフィブリノーゲン・フィブリンである。 フィブリノゲン製剤とは、このフィブリノゲンをプール血漿(一定数の供血者の血漿を混合)中から分離精製して製造される血漿分画製剤である。 血液製剤は図のような工程でつくられる。(朝日新聞から) アメリカではFDAが、プール血漿由来のフィブリノゲン製剤が肝炎ウイルスに汚染される可能性が高いことと効果が疑わしいこと及びフィブリノゲン製剤の代わりとなる製剤として、濃縮凝固因子(クリオプレシピテート)が利用可能であることを理由に、1977年12月、フィブリノゲンと同成分の製剤の製造承認を取り消した。 日本国内で当初販売されていた製剤では不活化処理がなされており、C型肝炎ウイルスを不活化していたが、1985年に不活化処理方法が変更され、B型肝炎ウイルスのみの不活化となり、非A非B肝炎発生報告例が増加した。
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過去の各地裁の判決は以下の通り。
注 1985年8月は不活化処理方法の変更時で、これによりC型肝炎感染の危険性を一層高めた。
1988年6月はミドリ十字が緊急安全性情報を配布し返品を要請(以後、販売数量激減)。詳細は 2007/8/2 薬害C型肝炎で名古屋地裁判決
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2007年10月、薬害C型肝炎訴訟の被告となっている田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)が、2002年に提出した血液製剤投与でC型肝炎ウイルスに感染した恐れのある418人のリストを厚労省内に保管されていたことが明らかになった。
その後、田辺三菱製薬が、197人の実名と、170人のイニシャルか名前の一部を把握していることが判明した。
その結果、国と製薬会社側が投与を否定したため敗訴した原告のひとりについて、国側は、これまでの姿勢を一転、フィブリノゲンの投与を認めた。
リストが提出された時点で患者に連絡しておれば、早く治療を受け、病状がひどくなったり、亡くならずに済んだかも分からない。会社側と厚生省の責任が問われた。
(本年1月4日現在で、リストの患者のうち、死亡者は58人となっている)
大阪訴訟控訴審で、大阪高裁では9月14日に裁判長が和解による解決を打診、原告側は和解希望案(国が責任を認めて謝罪することを強く要求)を提出、国も和解協議に応じる意向を示した。
田辺三菱製薬は10月1日に合併会社が発足するため、回答を見送っていたが、10月31日、和解協議に応じる方針を示した。
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裁判とは別に、与党の肝炎対策プロジェクトチームは11月7日、ウイルス性肝炎治療の患者支援策の大枠を決めた。
インターフェロン治療はC型で 5〜9割、B型で 3〜4割の完治が見込めるとされるが、治療費の自己負担が年間80万円程度と高額なこともあり、インターフェロン治療を受ける患者は年間5万人程度にとどまっている。
このためインターフェロン治療を受ける患者の自己負担額を所得に応じて月1万〜4万4400円とし、残りを国と地方自治体が半額ずつ負担するというもので、助成対象はC型肝炎とB型肝炎のインターフェロン治療で、感染原因は問わない。
2008年度予算案に129億円を計上した。
これに対し、民主党は、自己負担を月O〜2万円にし、肝炎が悪化して起きる肝硬変、肝がんなどへの医療費助成も早急に検討するという案を作成した。
(これについては今回は両案を継続審議とすることとなった。)
救済対象となる患者数の推定は以下の通り。
・薬害被害者(血液製剤で感染) 1万人以上
うち、原告206人、投与証明可能な被害者 約1000名
・C型肝炎感染者(主に輸血や注射針の使いまわしで感染) 約200万人
・ウイルス性肝炎感染者(主に医療行為、母子間で感染) 約350万人
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大阪高裁(横田勝年裁判長)は12月13日、和解骨子案(非公開)を原告の肝炎患者と被告の国・製薬会社に示した。
骨子案は、2007年3月の東京地裁判決を踏まえ、フィブリノゲン製剤の投与をめぐって法的責任が生じる期間を、国については87年4月〜88年6月、被告企業の田辺三菱製薬側は85年8月〜88年6月と指摘、「クリスマシン」も84年1月以降、製薬会社に責任があるとした。
この範囲で被告側が責任を認め、原告らに謝罪するという趣旨の文言が盛り込まれた。
そのうえで被告側は、
(1)肝炎の発症患者に2200万円、感染者に1320万円の賠償を認めた同判決に沿い、この期間に投与を受けた人へ和解金を用意
(2)それ以外の原告には「訴訟追行費」の名目で計8億円を支給
(3)これらの総額は原告側に一括して支払い、分配は原告患者200人に任せる――などとした。
国と製薬会社の負担割合は1対2としていたという。
なお高裁の「所見」で、「全体的解決のためには原告らの全員一律一括の和解金の要求案は望ましいと考える」が、国・製薬会社の過失時期の認定が異なる5地裁判決を踏まえればその内容に反する要求とし、「国側の格段の譲歩がない限り、和解骨子案として提示しない」としている。
患者全員救済を求める原告側は「被害者を製剤の種類や投与時期、提訴時期で線引きする不当な内容」と批判し、「受け入れ拒否」を表明した。
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福田首相は12月19日、官房長官、厚生労働相などと協議し、東京地裁判決の基準から外れた被害者を救済する基金を8億円から30億円に積み増す政府修正案にゴーサインを出した。
原告の数が現在の200人から、最大1000人まで増えると想定。東京地裁判決の認定外の原告が3割、300人いるとさらに計算し、1人あたり約1000万円を分配することを念頭に置いた案で、舛添厚労相は、「事実上全員を救済する案」と強調した。
しかし、この基金案は、あくまで認定外の被害者を薬害被害者と認定したものではなく、原告側が求める「一律救済」と相いれないもので、原告側はこれを拒否した。全国弁護団の鈴木利広代表は「要はお金の問題だという矮小化した理解しかしていない。かえって原告の感情を逆なでする案だ」と一蹴した。
政府は大阪高裁の和解勧告の枠組みを超えることは不可能、と説明する。町村長官は、「支持率のために司法の判断はどうでもいいということにはならない」と説明した。
実際には「被害者の一律救済を認めれぱ際限がなくなる」との厚労省の主張を前に身動きが取れなくなっていた。厚労省は仮に一律救済に踏み込めば対象は1万2000人に達し、1800億円が必要、との試算を明らかにしていた。
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福田首相は12月23日、「薬害肝炎患者を全員一律で救済する」と述べ、薬害肝炎患者を一律救済するための法案を議員立法で臨時国会に提出する方針を表明した。
報道によると、12月21日に与謝野前官房長官が首相に、「このまま放置すれば内閣も自民党も支持率が下がる一方だ」とし、次のように議員立法による解決を進言した。
@司法も行政も行き詰まった「国の責任」の壁を越え、人道的観点で全員一律救済を急ぐには、三権のうち残る立法府が乗り出すしかない。
A(「特別救済立法」の骨子案を用意) 「法務省の専門家にも相談してある」
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今回成立した薬害C型肝炎救済法の骨子は以下の通り。
・ | 政府は甚大な被害が生じ、被害拡大を防止できなかった責任を認める |
・ | 救済対象はフィブリノゲン製剤と第9因子製剤の投与(後天性の傷病に係る投与に限る)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内または産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者 |
死亡の場合はその遺族 | |
・ | 給付額 |
慢性C型肝炎が進行して、肝硬変もしくは肝がんに罹患し、または死亡した者 4000万円 慢性C型肝炎に罹患した者 2000万円 それ以外 1200万円 |
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・ | 投与の事実、因果関係の有無、症状は裁判所が認定 |
・ | 請求期限は5年以内、10年以内に症状が進行すれば追加給付金を支給 |
・ | 付金支給のため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に基金を設置 |
・ | 費用の負担の方法及び割合について、製造業者等と協議し、あらかじめ基準を定める |
一方、血友病など先天性の病気で血液製剤が必要な患者らで作る23団体は、法案の対象が「後天性の傷病」に限定しているのは問題だとして、衆参両院に慎重な審議や国会決議を求める意見書を提出した。
血友病など先天性疾患の患者の多くは、原告団と同じ血液製剤で肝炎に感染したが、「治療として有用だった」として法案の救済対象から外れた。
衆院厚生労働委員会では、救済対象を血友病患者らに拡大することの検討を盛り込んだ5項目の委員会決議を全会一致で採決した。
参院厚労委でも同様の10項目の決議が採決された。
法案の前文には以下の通り記されている。
フィブリノゲン製剤及び血液凝固第9因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。
政府は感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。
もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においてはそのような企業の責任が問われるものである。
法案の成立を受けて1月11日、福田総理は談話を発表した。
本日、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法が成立いたしました。
これら製剤による感染被害者とその遺族の方々は、これまで長きにわたって、心身ともに言葉に尽くせないほどのご苦労があったと思います。感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止できなかったことについて、率直に国の責任を認めなければなりません。感染被害者とその遺族の皆さまに心からお詫び申し上げます。
私自身、一日も早くこの問題を解決したいと思ってまいりました。大阪高等裁判所における和解協議にも誠実に対応してまいりましたが、地方裁判所ごとに異なる内容の判決が出されてきたC型肝炎訴訟について、司法の判断を踏まえつつ、一方でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請に応えるには、現行法制の下では限界があり、議員立法による全面解決を決断いたしました。
一日も早い救済を実現するために、与党と弁護団との精力的な協議、迅速な立法化作業、会派を超えて国会での速やかな対応が行われ、本日、法案が成立し、長年にわたるC型肝炎訴訟の解決が図られることになりました。心より感謝を申し上げます。
感染被害者の方々は、国に対し、肝炎対策の充実を要請してこられました。その懸命な活動が一つの契機となり、政府・与党において肝炎対策について真剣に検討を進めることになりました。
その結果、無料で受けられる肝炎ウイルス検査を拡大するとともに、来年度から国と地方公共団体が協力して7か年で総額1800億円規模のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこと等を内容とする新たな肝炎総合対策を実施することといたしております。これにより、肝炎の早期発見、そして必要な方々すべての早期治療が進むことを期待いたしております。
さらに、今回の事件の反省に立ち、薬害を繰り返してはならないとの決意のもと、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に向けた医薬品行政の見直しに取り組んでまいります。
改めて、長年にわたる感染被害者の方々のご労苦にお詫び申し上げるとともに、再発防止に最善、最大の努力を重ねることをお約束いたします。
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全国弁護団の鈴木代表は1月14日、政府と締結する和解の基本合意書について仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の各原告団が了承したことを明らかにした。
1月15日、原告・弁護団と舛添厚労相による基本合意書の調印式が行われた。
冒頭で「国は、甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかった責任を認め、心からおわびする」と、救済法と同じ表現で国の責任と謝罪に言及した。
投与事実の証明などは「医療記録(カルテ)か、同等の証明力を有する証拠に基づく」とした。
国が認否にあたり、むやみに証拠を否定しないよう「新法の一律救済の理念を尊重する」との項目も加えた。
投与事実が争いになれば裁判所の判断を仰ぎ、所見は双方が尊重する。
厚労省は今後の提訴者について「カルテがない場合も一概に否定せず、投与を信じるに足る証拠が示されれば争わない」としている。合意書では、国は血液製剤の投与を受けた人の確認の促進や投与患者への検査の呼びかけを約束。
肝炎の医療提供体制の整備のほか、第三者機関による薬害の検証、再発防止策について原告・弁護団と継続的に協議する場の設定、なども盛り込んだ。
現在の原告の中には血液製剤の投与事実や因果関係を争ってきたケースもあるが、全員を被害者として認定する。
政府は1月15日の閣議で、救済法を16日に施行することを決めた。
舛添厚生労働相は、閣議後の記者会見で、「襟を正して、新しい体制を一刻も早く打ち立てたい」と薬害根絶に向けた決意を述べた。
基本合意には製薬会社は含まれず、舛添厚労相は「製薬会社は責任を痛感し、謝罪してもらいたい」と要望。
被害者救済に向けた費用負担については、これまでの薬害事例などを参考に「国が3分の1、企業が3分の2という比率になる」と説明、折衝中であることを明らかにした。
製薬会社は大阪高裁の和解協議の席には着いたものの、その後は対応を明らかにしていない。
原告側は、謝罪などを求めた「全面解決要求書」を製薬会社3社に送付し、月内に文書で回答するよう求め、それがない場合は、製薬会社との訴訟を継続する意向。
三菱ケミカルホールディングスの小林社長は社員向けの新年挨拶で次のように述べている。
「我々としては、今後、行政、司法当局とともにこの問題の早期解決に向け、誠実かつ真摯に対応していかなければなりません。」
2008/1/17 INEOS、 BP から酢ビモノマーとエチル酢酸事業を買収
INEOS は1月11日、BPから酢ビモノマーとエチル酢酸事業を買収することで合意したと発表した。
取引には英国のHull
近郊の
Saltend 工場にある25万トンの酢ビモノマー工場(2002年稼動)と25万トンのエチル酢酸工場(2001年稼動)と、Teesside からSaltend までのエチレンパイプラインを含んでいる。
買収完了後、酢ビモノマーはINEOS Enterprises に属し、エチル酢酸はINEOS Oxide に属することとなる。
INEOS Enterprises は旧称 INEOS Chlor Enterprises で、電解などのほか、エステルも扱っている。
INEOS Oxide はEO、EGが主力だが、2001年にBPから酢酸エステル事業(オランダの工場を含む)を買収している。INEOS は2005年末に、BPが同年4月に石油化学の大半を分離して設立した Innovene を買収している。
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社
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BPは2007年3月に、これら事業の売却を決めたことを発表している。
これにより、酢酸と無水酢酸に集中するとしている。
BP は当初、石油化学については7つのコア事業を決めていた。
エチレン、HDPE、PP、アクリロニトリル、PTA、パラキシレン、酢酸であった。
2004年3月に同社は、アジア市場で成長が著しく、BPが技術面で優位に立つ “advantaged products” (PTA、パラキシレン、酢酸)に集中するとの戦略を発表、同年4月にオレフィンと誘導品の売却の意向を発表した。
2005年4月1日に石油化学の大半をInnoveneとして分離、2005年末にIneosに売却した。
なお、石油化学のうち、上海SECCO石油化工(Sinopec
とのJV)については、Sinopec との間で2つの酢酸JV(重慶のYarco Acetyls、南京のBP
YPC Acetyls Company (Nanjing) Ltd.)
をもつ関係で、BPに残している。
2006/4/6 中国のエチレン合弁会社ー1
BPの現在の石化事業の体系は以下の通り。
BPの Saltend 工場には、今回売却する酢ビモノマー 25万トン、エチル酢酸 25万トンのほかに、酢酸 60万トンと無水酢酸 15万トンのプラントがある。
BPとそのJVの世界全体の能力は、酢酸 290万トン、無水酢酸 15万トン、酢ビモノマー 40万トン、エチル酢酸 30万トンとなっている。
PTAではBPは30年以上にわたり世界のリーダーで、2006年4月現在で、アジア、米大陸、欧州に21の工場を持ち、合計能力は900万トンを超え、JVを含めた世界シェアは31%となっている。
中国では珠海に富華集団とのJVのBP
珠海ケミカル(BP
85%)が第1期
35万トン(その後増強して現在
50万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。
PTAの状況について
2006/7/26 BPが韓国のPTA事業から撤退
米国商務省は1月17日、2007年12月の住宅着工件数を発表した。
季節調整済みの年率換算は
予想の1,150千戸を大きく下回って 1,006千戸となった。
1991年5月の 996千戸以来の16年7ヶ月ぶりの低水準となった。
2006年1月は2,265千戸で最高となっており、これと比較すると半分以下で、1,259千戸も低い。
2007年の合計も 1,353.7千戸と、1993年の
1,288千戸以来、14年ぶりの低さとなった。
前年比では 24.8%減で、これは1980年の26.0%以来の大きさ。
バーナンキ米連邦準備制度理事会議長は1月17日の下院予算委員会で証言し、サブプライムローンの焦げ付きは、現時点で1,000億ドルに達し、今後「その数倍」に膨らむ恐れがあるとの見方を示した。ただ5,000億ドルには達しないとしている。
米国の住宅ローン残高は約10兆ドルで、そのうち、サブプライムローンの残高は1兆3千億ドル。
変動型ローンで2008年末までに高利率に金利が改定されるものが8,000億ドル規模あるといわれる。
付記
IMFは2008年10月7日発表した「世界金融安定性報告」で、サブプライム問題による世界の金融機関の損失が今後数年間で約 1兆4050億ドルに上がるとの推計をまとめた。
2008年4月の推計では、約9450億ドル。
EUは1月16日、Pfizer、GlaxoSmithKline、Sanofi Aventis などの医薬メーカーを立ち入り調査した。
EU Competition
Commissioner のNeelie Kroes は、全医薬業界を調査しており、なぜ新薬が出ないのか、ジェネリック医薬品の発売が遅いのかを調べるとしている。調査には1年以上かかるとみられている。
立ち入り調査は極秘資料が廃棄されるのを防ぐため。
世界の三大医薬メーカーのPfizer (米)、GlaxoSmithKline (英)、Sanofi-Aventis (仏)のほか、AstraZeneca、Merck Sharp & Dohme、Johnson & Johnson、Wyeth、Sandoz (Novartis の部門)、Teva (ジェネリック医薬品メーカー)は調査を受けていることを明らかにしている。
EUは米国の当局とも連携をとっているとしている。
医薬メーカーが特許権を濫用したり、訴権を濫用したりして新しい企業が市場に参入するのを妨害しているのではないかを調べる。
AstraZeneca が潰瘍薬のLosec
のジェネリック品出現を遅らせるため特許当局に誤った情報を提出したとして2005年に
60百万ユーロの罰金を科せられたのが一つのきっかけとなっている。
1995年から1999年までに40
の新薬が出たが、2000年から2004年の間には28
しか新薬が出ていないが、これは競争力が働いていないことを示しているのではないかと見ている。
EUは競争を制限するような合意があるのか、支配的地位の一方的な濫用がこれに結びついているのかどうかを調べたいとしている。
また、特許紛争の解決のような医薬メーカー間の取引も調べ、EUの競争ルールに違反していないかどうかチェックする。
欧州は医薬品に毎年2000億ユーロ(一人当たり400ユーロ)を使用している。
EUではテレコミュニケーション、エネルギー、ファイナンシャルサービスなどの分野で同様の調査を行なっている。
2008/1/19 SABIC、新規JV設立で MOU 締結
SABICはこのたび、OSOS Petrochemical (新設)との間で、PBT などを生産するJV設立の覚書を締結した。
JVは投資額10億ドルで、Yanbu で以下の製品を製造する。
PBT | 60,000t/y |
ブタンジオール | 50,000 |
テトラヒドロフラン | 3,500 |
無水マレイン酸 | 85,000 |
SABICは2ヶ月以内でJV計画を検討する。参加する場合は同社は35%の出資をすることとなっている。
付記 2008年4月、SABICは本件から手を引くと発表した。両社の交渉が合意に達しなかった。
OSOS Petrochemical はYanbu でPBT を生産するため、サウジの私企業
United
Maritime Lines によって設立された。
原料のブタンは石油鉱業省により割当を受けている。
同社は同社の目標を、エンプラとスペシャルティ製品製造のワールドリーダーになることとしている。製品は世界中で販売することを目指している。
なお、SABICは GE Plastics を買収し、SABIC Innovative Plastics と改称したが、同社でもPBTを扱っている。
付記 サウジでは Sipchem (Saudi International Petrochemical) がマジョリティのInternational Diol Company が
ブタンから無水マレイン酸→ブタンジオール→テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトンを生産している。JV名:International Diol Company
従来名 GACIC (Gulf Advanced Chemical Industries Ltd.)出資 :Saudi International Petrochemical 53.9%
Saudi Public Pension Agency (PPA)
General Organisation for Social Insurance(GOSI)
Huntsman Corp.
Davy Process Technology
Sabih Tahir Darwish Al Masri
A.S. Albabtain & Company
製品:Maleic Anhydride 10千トン Huntsman technology
(butane-to-maleic anhydrid)
BDO 75千トン Davy technology
(MAH to produce BDO)
Tetrahydrofuran (THF)
Gamma-butyrolactone (GBL)
アラブ首長国連邦アブダビの国際投資会社 IPIC はこのたび、カザフスタンの国営石油・ガス会社のKazMunayGas との間で、西カザフスタンで石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結した。現在、FSを実施中。
IPIC (International Petroleum Investment Company) はアブダビ国営石油会社 ADNOC が50%、アブダビ投資公社とアブダビ国営銀行のJVが50% 出資する会社で、アブダビ政府の石油・化学分野での海外投資を担当する。
デンマークの石油会社 Borealis は当初はStatoil 50%、Neste 50% のJVであったが、現在は IPIC が65%、オーストリアのOMVが 35% 出資となっている。
付記 このIPICとの契約は取り止めとなり、別計画が進行中。
カザフスタンには現在、KazMunayGas が15%、私企業で多角化したコングロマリットのSat & Company が85%出資する合弁会社 Kazakhstan Petrochemical Industries (KPI:旧称 Atoll ) のAktau Polystyrene Plant (SM 300千トン/ PS 54千トン) と Atyrau Polypropylene Plant (PP 30千トン)がある。
カザフスタン政府は世界市場でのプレーヤーになることを目指し、海外大手と提携して石油化学コンプレックスを建設することを決めた。
KazMunayGas とSat & Company のJVのKPI
で、西カザフスタンの天然ガスを利用して大規模石油化学コンプレックスを建設することとした。
Shellや韓国のLG、中国企業などが提携相手として挙げられた。
第一期として、Tenghiz ガス田のドライガスからKulsary 近郊でエタン抽出を行い、Atyrau でエタンクラッカーとプロパン脱水素設備、PE、PPプラントを建設し、第二期ではKashagan ガス田のドライガスを利用してコンプレックスを拡大するというもの。
第一期はエチレン120万トン、プロピレン40万トン、HDPE 40万トン、LLDPE 40万トン、PP 40万トンを考えており、12億ドルの投資を想定、最終的にはPE 150万トン、PP 45万トンを計画している。
Tenghiz ガス田は1993年から開発されている。
開発会社はTengizchevroil で、株主はChevron (50%)、ExxonMobil (25%)、KazMunayGas (20%) とロシアのLukArco (5%) となっている。
KazMunayGas は現在、Chevron との間で、ガスの価格を交渉している。Kashagan ガス田はカスピ海北部にある海上ガス田で、Eni が主体で開発しており、日本の国際石油開発 (Inpex) も参加している。
出資比率は、Eni (18.52%)、Shell (18.52%)、Total (18.52%)、ExxonMobil (18.52%)、ConocoPhillips (9.26%)、KazMunayGas (8.33%)、Inpex (8.33%)。参考 2007/9/6 カザフスタンの石油開発中断
2008年1月14日、カザフスタン政府はKashagan 油田の持分変更で合意したことを発表した。17.8億ドルを支払い、KazMunayGas持分を倍増し、トップ4社に並ぶ。スタート時期は2011年末に延期された。
新比率 KazMunayGas、Eni、Shell、Total、ExxonMobil 各16.81%
ConocoPhillips 8.40%、Inpex 7.55%
2005年12月、Foster Wheeler はKazMunaiGas との間で新しい石油化学コンプレックスの詳細FS実施契約を締結した。
2006年3月にBasell はKazMunayGaz とSAT との間でこの石化計画参加の覚書を締結した。2010年のスタートを目指すとした。
Sat
がKPI の持株のうち35%をBasellに譲渡し、Sat 50%、Basell 35%、KazMunayGaz 15% 出資とすることも含まれている。
しかし、その後の進展は報道されていない。
今回の IPIC との覚書締結はこれに代わるものと思われる。
IPICは現在 110億ドルの海外投資を行なっており、2007年初めには、世界の石油・エネルギー産業での戦略的投資者として5年間で海外投資を200億ドルまで増やす方針を明らかにしている。
ガソリン税に関する租税特別措置法の期限切れの可能性が高まり、与野党の攻防が激しくなってきた。
通称ガソリン税とは揮発油税と地方道路税法に基づき揮発油(ガソリン)に対して課せられる税金で、1954年に道路特定財源となった。
税率は、揮発油税法(第9条)でリットル 24.3円、地方道路税法(第4条)で同 4.4円と決められているが、1974年に第7次道路整備5箇年計画の財源確保のため「暫定的」に租税特別措置法で引き上げられ、その後、順次引き上げられている。
現行の租税特別措置法では以下の通りとなっている。
基本税率 追加分 暫定税率 揮発油税 24.3円 24.3円 48.6円 地方道路税 4.4円 0.8円 5.2円 合計 28.7円 25.1円 53.8円
今回租税特別法の延長ができなければ、基本税率に戻り、リットル 25.1円だけガソリン代が安くなることとなる。
これは国民にとっては、道路を取るか、ガソリン代の値下がりを取るかの選択になる。
ーーー
問題は今回の期限切れの租税特別措置法がこれだけに止まるのではなく、合計で43件あることである。
研究開発税制や中小企業の投資促進税制など法人税減税が19件、他に土地の所有権移転登記や、産業再生法に基づくリストラ計画に伴う登録免許税の軽減措置も含まれる。
従来、租税特別措置法は一つ一つの措置を個別審議するのではなく、すべての措置を1本の租特法改正案としてまとめて審議されることになっていた。
ガソリン税で野党が反対すれば、改正案が成立せず、対象となる租税特別措置のすべてが期限切れとなる。
このため、野党側はガソリン税だけを分離して審議するよう要求しているが、与党側は要求には応じない構えである。
ーーー
石油化学業界にとって最大の問題は石油化学用ナフサの石炭石油税免税措置の延長が今回の租税特別措置法改正案に含まれていることで、改正案が通らない場合、免税措置が切れることとなる。
石油石炭税法(昭和53年4月18日法律第25号)では、原油及び石油製品、ガス状炭化水素(LPG及びLNG)、石炭に対して石油石炭税が課せられている。
現在の税額は次の通り。
: | 原油及び輸入石油製品 | 1キロリットルにつき 2,040円 |
LNG | 1トンにつき 1,080円 (平成17,18年度は960円) | |
LPG | 1トンにつき 1,080円 (平成17,18年度は940円) | |
石炭 | 1トンにつき 700円 (平成17,18年度は460円) |
租税特別措置法では、
石油化学製品製造用の輸入ナフサ、灯油、軽油に関して、石炭石油税が免税となり(租特法
第90条の4)
石油化学製品製造用の国産ナフサ、灯油、軽油に関して、石炭石油税が還付されることとなっている。(同第90条の5)
(灯油、軽油は2004年4月から対象に追加となった)
この租税特別措置はこれまで、2年ずつ延長されており、本年3月31日で期限となる。
なお、2006年にナフサは
生産 21,758kl
輸入 28,360kl
となっており、2,040円/kl が課税されると、年間
約1,000億円のコストアップとなる。
2006年のエチレンセンター11社の経常損益は2,725億円であった。
付記
自公両党は1月30日、3月末に期限切れを迎えるガソリン税の暫定税率などを5月末まで延長する議員立法での「つなぎ法案」を衆院の財務金融、総務両委員会で可決した。同日午後にも衆院本会議で可決し、参院に送付する方針だった。
しかし、河野議長は江田五月参院議長と会談、あっせん案で与野党の歩み寄りを求めた結果、各党が受け入れた。
(1)総予算及び歳入法案の審査にあたっては、公聴会や参考人質疑を含む徹底した審議を行ったうえで年度内に一定の結論を得るものとする
(2)国会審議を通し、税法について各党間で合意が得られたものは立法府で修正する
(3)両院議長の下で、(1)と(2)について、与野党間で明確な同意が得られた場合、つなぎ法案は取り下げる――との内容。
付記
租税特別措置法改正案のうち、道路関連の暫定税率を除いた優遇措置を5月末まで延ばす「つなぎ法案」が3月31日に成立した。
6月19日の衆議院本会議で再可決、平成22年3月31日まで延長された。(措法90の4)。
殺虫剤最大手のアース製薬が3位のフマキラーの筆頭株主になったことが、1月19日の日本経済新聞で報じられ、各紙がフォローした。
フマキラーの創業者一族の大下(おおしも)高明氏が8.5%を所有するが、アースは市場で買い進め、わずかだがこれを超えて筆頭株主になった。
国内の殺虫剤市場は成長が頭打ちで、販売促進競争が過熱気味となっており、これに対処するため経営統合を目指しているとみられている。また、フマキラーの海外の営業基盤もアースにとって魅力である。
アース製薬はこの報道を受け、フマキラーに正式に経営統合を申し入れした事実はなく、株式取得はあくまでも「純投資」が目的、としている。しかし、1997年ごろから取得を始めており、今後も買い進める方針。フマキラーに非公式に経営統合を打診したことも認めており、「統合する場合は合意のもとで行いたい」としているという。
フマキラーは、アースからの具体的な提案はなく、経営統合を検討したことはない、としている。
なお、フマキラーでは2006年5月に、買収防衛策を決めている。
特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする買付行為に対して、
1)大規模買付情報の提供を求め
2)取締役会による評価、検討を行なうというもの。
ルール遵守しない場合には、新株発行等の対抗措置を取る。
ルールを遵守した場合、反対意見の表明などはありうるが、原則として対抗措置とらない。ーーー
付記 (日本経済新聞 2008/2/6)
アース製薬の大塚達也社長は「フマキラー株の取得を継続する」と強調した。
今後10年以内に日用品業界で再編が必ず起きるとし、M&Aなどにより主導権を握りたい考えを示した。
フマキラーについては、同業で企業内容もよく分かり、製品力や海外展開力に魅力を感じるとした。ーーー
付記
アース製薬は2008年7月、フマキラーの「どこでもベープNo.1」など2商品が、自社の特許「携帯用害虫防除装置」を侵害しているとして、製造と販売の禁止を求めて提訴。
フマキラーは、同特許には公知例があって無効と主張していた。2009年8月31日、東京地裁は、アース製薬の特許は公知例から容易に類推できると判断。特許は無効として、アース製薬の提訴を棄却した。
付記
フマキラーとアースは携帯型電池式虫よけ器で訴訟合戦をしていたが、和解した。
2010/5/1 フマキラーとアース製薬、携帯型電池式虫よけ器紛争で和解
付記
フマキラーは2010年5月13日、消臭芳香剤大手のエステーとの資本業務提携を締結したと発表した。
フマキラーはエステーを引受先に12.5%相当の第三者割当増資(約16億円)を実施する。
エステーのフマキラーへの出資比率は4.76%から15.1%になり、アース製薬を抜き筆頭株主になる。
増資によりアース製薬の出資比率は11.8%から10.5%に低下する。エステーはフマキラーに 取締役1人を派遣する。
フマキラーは増資で得た資金を、広島工場内の開発・生産設備「ブレーンズ・パーク」(投資資金26億円)の建設に充てる。
提携の理由を、フマキラーの大下一明社長は「協力することで収益性が向上する」と説明。
エステーの鈴木喬社長は 「すでに世界80カ国に進出しているフマキラーと提携することで、海外展開を加速させたい」と話した。
実際には、現在の筆頭株主のアース製薬は経営統合を視野にフマキラー株を買い増しており、買収防衛策とみられる。
ーーー
フマキラーによると、国内の家庭用殺虫剤市場は約1,000億円となっている。
国内の家庭用殺虫剤市場(2007年:フマキラー推定)
− 種類別 電池式 75億円 マット式 18 リキッド式 139 線香 92 蝿・蚊エアゾール 113 ゴキブリ 〃 129 不快害虫 〃 155 医薬品(薬局扱い) 115 その他 158 (合計) 995 :
害虫別 蚊 388億円 蚊・蝿 113 ゴキブリ 209 ダニ 59 蟻・蜂その他不快害虫 154 ねずみ 42 その他 30 (合計) 995
アース製薬、大日本除虫菊(金鳥)、フマキラーが熾烈な競争をしており、これに、大正製薬の殺虫剤「ワイパア」の商標貸与を受けた白元、中外製薬の「バルサン」事業を譲受したライオンの5社で全国シェアの9割以上を占めている。
このほか、蚊取り線香の発祥の地の和歌山県有田市近辺などに多数のメーカーがある。
蚊取り線香の歴史については 2006/8/21 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史
これに対して、同じくフマキラーによると、全世界の家庭用殺虫剤市場は約 6,000億円(小売ベース)で、アジアが50%を占めている。
世界の家庭用殺虫剤の地域別シェア(フマキラー推定)
: アジア 日本 17% インドネシア・ 4 インド 5 その他 24 合計 50% 北米 20% 中南米 13% 欧州・アフリカ 17% 合計 100%
フマキラーはインドネシア、インド、マレーシアに合弁会社を持ち、10カ国で現地ライセンス生産を行い、68カ国に輸出している。
(77カ国で同社のブランドで販売している)
同社の2007年3月期の連結売上高201億円のうち、海外売上高は52億円で、25.7%を占めている。
フマキラー株式の4.8%を所有し、第3位株主のエステーは、フマキラーインドネシアで消臭芳香剤を生産している。
ーーー
フマキラーは1890年に大下(おおしも)回春堂(薬種商)として創業、1920年に専売特許殺虫剤「強力フマキラー」を開発した。
1924年に株式会社とし、1962年にブランド名をとって、社名をフマキラーに変更した。
(フマキラーの名は、Fly,
Mosquito
Killer
「ハエ・蚊・キラー」から取っている)
1967年に世界ではじめての電気蚊取「ベープ」を開発した。
ーーー
アース製薬は1892年に木村秀哉が大阪で創業、1916年に炭酸マグネシウムの国産化に成功した。
1925年に木村製薬所を設立、1929年に家庭用殺虫剤アースを発売、その後、蚊取り線香、エアゾールを発売した。
1964年にアース製薬と改称したが、その後倒産、1970年に大塚製薬が資本参加し、大塚グループに入った。
1973年に「ごきぶりホイホイ」発売で売上を伸ばし、1978年には水を注いで蒸散させる「アースレッド」を発売している。
1月11日に薬害肝炎救済法が成立し、15日に原告・弁護団と政府は和解基本合意書を締結した。
同じく被告側の田辺三菱製薬などは未だに何らの発表もしていない。
(報道では田辺三菱製薬広報部では「現在、国との間で補償の配分などを協議している。1月末までに何らかの対応がとれるはず」としているという。)
ーーー
田辺三菱製薬の前身の三菱ウェルファーマは2007年7月9日に、薬害肝炎事件と同じく血液製剤が原因となった薬害エイズ事件(HIV事件)について、「HIV事件に関する最終報告書」を発表している。
http://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/mpc/2007/pdf/HIV070709report.pdf
1996年にミドリ十字の株主が起した株主代表訴訟が2002年3月に和解したが、その和解条件として、 | |
・ | 役員側が(後継の)三菱ウェルファーマに1億円の和解金を支払うのと同時に、 |
・ | ミドリ十字がHIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因について調査検討し、薬害事件の再発防止策についての提言をとりまとめること |
が決められた。 |
上記報告はこれに基づくもので、
第1編 HIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因
第2編 再発防止策についての提言
から、成っている。
原因の背景としては、当時のミドリ十字に関して、以下の点を挙げている。
・行政当局の意向・動向を窺うに汲々とし、自主的な判断で実行する意識に欠けていた。
・上司の指示がなければ動かないという企業風土
・創業者の死後、全社横断的な観点で総括・指揮する人・組織の欠落
・業績回復を急ぐ意識
・製造元の子会社アルファ社(アボットから買収)の管理が不適切
そして、再発防止策として
・意識改革・社内風土の改善
・コーポレート・ガバナンスの強化
・組織の改善
・安全性確保の措置
・グループ全体での取組み
を挙げている。
ーーー
HIV事件は、血友病等の治療のために投与された血液製剤にHIVが混入していたため、多くの患者がHIVに感染し、エイズを発症した事件である。
1989年、非加熱製剤の投与によりHIVに感染したとする被害者らが、国および製薬企業5社に対して、東京地裁と大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。
製薬企業5社
(1)ミドリ十字:製造販売:原料血漿を米国子会社Alpha Therapeutic (Abbott から買収)から輸入
(2)化学及血清療法研究所:製造販売
(3)バクスター:親会社の米 Baxter International から輸入
(4)バイエル薬品(カッタージャパンを合併継承):米 Bayer Corp. から輸入
(5)日本臓器製薬:オーストリア Immuno AG から輸入
1995年10月6日、東京、大阪両地裁が統一的な解決を図るため協議し、一次和解勧告を同時に提示した。
和解案概要:
: | @ | 原告の感染者、発症者、死亡者全員に一人一律 4,500万円を払う。 |
A | 和解金の負担割合は製薬会社6、国4とする。 | |
B | 原告らが和解成立時までに製薬会社など出資の友愛福祉財団から受けた給付金のうち、特別手当、遺族見舞金、遺族一時金の5割に相当する額を和解金から控除する。 | |
C | 未提訴者についてはなお協議する。 | |
D | 和解一時金による救済を補完する恒久対策はなお協議する。 |
裁判長は以下の見解を示した。
◆原告らの被害を放置することは許されない
◆製薬会社、国は救済責任がある
◆早期・全面的に救済する和解が必要とした。
このまま裁判で判決を出せば、最終的に確定するまで被害の救済が行われないという問題点を重視、「一刻も早く和解によって原告らHIV感染者の早期かつ全面的救済を図ることがぜひとも必要で、(約2千人にのぼるエイズウイルス感染者全員を)一律かつ平等に救済する内容でなければならない」と述べ、和解の成立に向けた関係者の努力を促した。
しかし、特にDの「恒久対策」の負担などをめぐって難航した。
恒久対策に伴う追加負担分を聞いた外資系企業が、「本国への影響が大きすぎる」として和解協議をポイコットする姿勢を見せた。
国も、手当などを予算年度を超えて継続して支払うことには難色を示した。
膠着した状況が変わったのは1996年2月9日、菅直人厚相の「AIDSファイル」発見の記者会見だった。
「確認できない」はずの資料が見つかって、菅厚相が初めて国の責任を認める姿勢を示した。
バイエル薬品も裁判所に基金方式で救済資金を出す「試案」を出した。
1996年3月7日、両地裁は第二次和解案と所見を出した。
以下の点が追加された。(国は和解金以外の各費用も、4割を負担する)
・健廉管理手当
HIV感染者でエイズを発症しているものに対し、一人当たり月額15万円を給付する。(国の負担割合は4割)
・友愛福祉財団による救済事業継続(5年程度)
(国が救済事業に要する資金のうち4割相当額を拠出)
・弁護士費用等
原告らに対し、弁護土費用・訴訟費用として、感染者一人当たり350万円を支払う。
第七次訴訟以降の原告らについては、150万円。(負担割合は製薬会社6、国4)
・被告製薬会社間の負担割合
1983年当時の国内の非加熱濃縮製剤のシェアによる。
・その他の恒久対策は国がHIV感染者と引き続き協議を行い、適切な措置を取る。
HIV感梁症の研究治療センターの設置、
拠点病院の整備充実、
差額ベッドの解消、
二次・三次感染者の医療費等のHIV感染症の医療体制
1996年3月29日、東京地裁103号法廷で和解が成立した。
その後、同地裁別室で確認書調印式が行なわれ、菅直人厚相が「国を代表して心からおわびします」と述べた。
確認書では、「本件和解及びその前提とされた裁判所の各所見に基づき、本件非加熱濃縮製剤の使用によりHIV感梁被害を受けたすべての血友病患者及びその遺族が被った物心両面にわたる甚大な被害を救済するため、次のとおり合意に達したことを確認する」とし、最初に以下の誓約を行なっている。
1)厚生大臣及ぴ製薬会社は、本件について裁判所が示した前記各所見の内容を真摯かつ厳粛に受けとめ、わが国における血友病患者のHIV感染という悲惨な被害を拡大させたことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省して、原告らを含む感染被害者に物心両面にわたり甚大な被害を被らせるに至ったことにつき、深く衷心よりお詫びする。
2)厚生大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、前後2回にわたり、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、再び本件のような医薬品による悲惨な被害を発生させるに至ったことを深く反省し、その原因についての真相の究明に一層努めるとともに、安全かつ有効な医薬品を国民に供給し、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く認識し、薬事法上医薬品の安全性確保のため厚生大臣に付与された各種権限を十分活用して、本件のよろな医薬品による悲惨な被害を再ぴ発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを改めて確約する。
3)製薬会社は、安全な医薬品を消費者に供給する義務があることを改めて深く自覚し、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを確約する。
なお、この和解の当事者とならなかった被害者については、訴訟上一定の手続を踏んだ上で、同一内容にて和解することとされ、1996年3月の和解以降、2007年6月末現在までに1,378名の被害者と和解が成立しており、現在もなお係属中の訴訟がある。
注1)サリドマイド訴訟
サリドマイドは「安全な」睡眠薬として開発・販売されたが、妊娠初期の妊婦が用いた場合に催奇形性があり、四肢の全部あるいは一部が短いなどの独特の奇形をもつ新生児が多数生じた。
日本においては、諸外国が回収した後も販売が続けられ、この約半年の遅れの間に被害児の半分が出生したと推定されている。
大日本製薬と厚生省は、西ドイツでの警告や回収措置を無視してこの危険な薬を漫然と売り続けた。
1974年10月13日、全国サリドマイド訴訟統一原告団と国及び大日本製薬との間で和解の確認書を調印、続いて26日には東京地裁で和解が成立した。以後、11月12日までの間に、全国8地裁で順次和解が成立した。
(企業と国の負担比率は2:1)
確認書 | |
「厚生大臣及び大日本製薬は、前記製造から回収に至る一連の過程において、催奇形性の有無についての安全性の確認、レンツ博士の警告後の処置等につき落ち度があったことに鑑み、右悲惨なサリドマイド禍を生ぜしめたことにつき、薬務行政所管庁として及び医薬品製造業者としてそれぞれ責任を認める」 | |
「厚生大臣は、本確認書成立にともない、国民の健康を積極的に増進し、心身障害者の福祉の向上に努力する基本的使命と任務をあらためて自覚し、今後、新規薬品承認の厳格化、副作用情報システム、医薬品の宣伝広告の監視など、医薬品安全性強化の実効をあげるとともに国民の健康保持のため必要な場合、承認許可の取消、販売の中止、市場からの回収等の措置をすみやかに講じ、サリドマイド事件にみられる如き悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をすべきことを確約する」 | |
: |
注2)キノホルム(スモン)訴訟
スモンは、腹部膨満のあと激しい腹痛を伴う下痢がおこり続いて、足裏から次第に上に向かって、しびれ、痛み、麻痺が広がり、ときに視力障害をおこし、失明にいたる疾患である。膀胱・発汗障害などの自律障害症状・性機能障害など全身に影響が及ぶ。
スモンは、整腸剤「キノホルム」を服用したことによる副作用だと考えられている。1970年8月に新潟大学の椿忠雄教授が疫学的調査を踏まえてキノホルム原因説を提唱し、厚生省はこれを受けてキノホルム剤の販売を直ちに停止した。
国と製薬会社の武田薬品、日本チバガイギー、田辺製薬に対する裁判が行なわれた。
田辺製薬はウイルス説を全面展開し和解を拒否してきたが、1979年、キノホルムとスモンの因果関係を認め、9月15日に、国及び製薬企業がその責任を認め、被害者救済の道筋を定めた確認書に調印した。
(企業と国の負担比率は2:1)
このスモン被害者の運動は1979年9月の薬事二法(薬事法の改正と医薬
品副作用被害者救済基金法)成立の原動力となった。
確認書 | |
「被告国は、安全かつ有効な医薬品を国民に供給するという重大な責務をあらためて深く認識し、今後薬害を防止するために、新医薬品の承認の際の安全確認、医薬品の副作用情報の収集、医薬品の宣伝広告の監視、副作用のおそれのある医薬品の許可の取消など、薬害を防止するために必要な手段をさらに徹底して講ずるなど行政上最善の努力を重ねることを確約する。」 | |
「被告製薬3社は、スモン被害者が強く訴えてきたノーモア・スモンの要求が極めて当然のものであることを理解し、これを機会に、医薬品の製造・販売等に直接携わるものとして、医薬品の大量販売・大量消費の風潮が薬害被害発生の基盤ともなり得ることを深く反省し、医薬品の有効性と安全性を確保するため、その製造・販売開始時はもとより、開始後においても、副作用の発見及び徹底した副作用情報の収集につとめ、それらに対する適切な評価や必要かつ充分な各種試験を実施し、更にそれらのデータを厚生省に提出し、医者や使用者にも副作用情報を提供し、効能や用法・用量に関しては、適正な宣伝、情報活動をなすなどし、薬害を発生させないための最高最善の努力を払う決意を、スモン被害者のみならず国民全体に表明する。」 | |
: |
ーーー
本件では、上記の民事訴訟、株主代表訴訟の他に、以下の刑事訴訟がある。
@元帝京大学副学長 安部英 業務上過失致死事件
1985年5月、6月頃の帝京大学医学部附属病院における非加熱製剤(日本臓器の非加熱製剤)の投与によって、血友病患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、元帝京大学副学長である医師安部英が、業務上過失致死罪にて東京地裁に起訴された。
2001年の一審では無罪判決。
2005年4月に被告人が死亡したため、公訴棄却となって終結している。
付記 中西準子のホームページ 2009.1.5
「阿部英医師がなぜ無罪になったかが分かる−80歳の老医師を痛めつける理由があったのか−」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak456_460.html#zakkan459
A元厚生省生物製剤課長 松村明仁 業務上過失致死事件
1996年10月、上記帝京大学ルート刑事事件およびミドリ十字元3社長業務上過失致死事件で採り上げられた2件の被害事実について、厚生省の元生物製剤課長である松村明仁が、業務上過失致死罪で東京地裁に起訴された。
2001年9月、帝京大学ルート刑事事件における被害事実については無罪(検察官は上告せず、無罪確定)、
ミドリ十字ルート刑事事件における被害事実については執行猶予付有罪(禁鋼刑)の第1審判決が出された、双方が控訴したが、双方の控訴が棄却された。被告人は、現在上告中。
付記
2008年3月3日、最高裁第二小法廷は、元厚生省生物製剤課長・松村明仁被告の上告を棄却する決定をした。
一、二審の禁固1年執行猶予2年の有罪判決が確定。2008/3/6 薬害エイズ事件、最高裁判決
Bミドリ十字 元3社長 業務上過失致死事件
大阪医科大学附属病院における1986年4月の肝臓病治療の際に、止血を目的とした非加熱濃縮第\因子製剤(クリスマシン)の投与によって,患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、ミドリ十字の当時の歴代3社長(松下廉蔵・須山忠和・川野武彦)が、業務上過失致死罪で大阪地裁に起訴された。
2000年2月、それぞれ禁鋼刑に処する旨の有罪判決があり、被告人3名は控訴したが、被告人川野武彦は死亡のため公訴棄却となり、その余の被告人2名については、大阪高裁が第1審判決を破棄し、刑期が短縮された。
ーーー
この後、薬害ヤコブ訴訟が起こった。
脳外科手術の際、ヒトの死体から取った脳硬膜(脳を覆っている硬い膜)の移植を受けた患者がクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「ヤコブ病」)を発症した。
ドイツのB.Braun
Melsungenから輸入(輸入は日本ビー・エス・エス)したヒト乾燥硬膜ライオデュラが、病原体に汚染されていた。
B.Braun は製造に当たり、ドナーの選択をせず、ドナーの記録もなく、多くの硬膜をプール処理し、滅菌が十分でないなど、ずさんな管理をしていた。
厚生省は、1973年に単なる書面審査でライオデュラの輸入を承認したが、1997年の使用禁止までの間、硬膜移植によるヤコブ病伝達の危険性に関する多くの論文や報告があったにもかかわらず、全く何の措置も取らなかった。
1987年に硬膜移植後にヤコブ病を発症した第1号患者の報告論文が発表され、アメリカではその年に使用を禁止したが、厚生省は何もしなかった。
感染した患者と家族・遺族が1996年11月に大津地裁に、1997年9月に東京地裁に訴訟を提起した。
両地裁は和解案を示し、2002年3月25日に確認書に調印した。(企業と国の負担比率は2:1)
確認書には国と企業のおわびが明記された。
厚生大臣は、(これまでの訴訟の和解による解決で)薬害の再発を防止するための最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、−−− としている。
2007年3月、2005年に提訴した患者(2006年に死亡)の和解が大津地裁で成立した。
計42件の大津訴訟(患者42人は全員死亡)は、これですべて和解が成立した。
東京訴訟は65件のうち55件で和解し、10件で協議している。
ーーー
上記の4件の和解で、ミドリ十字の入っている薬害エイズ事件のみ、企業と国の負担が6:4で、他はすべて2:1となっている。
今回の薬害肝炎事件での負担割合について、舛添厚労相は、これまでの薬害事例などを参考に
2:1で折衝中としている。
2008/1/25 Chevron Phillips のサウジ石化事業
Chevron Phillips Chemical は昨年12月、同社のサウジでの3番目の石化事業NCP Project に関し、日本の日揮、韓国の大林産業と設計、機材調達、建設工事(EPC)契約を締結したことを発表した。(日揮も受注を発表)
NCP Project はChevron Phillips とサウジの投資会社 Saudi Industrial Investment Group (SIIG)の50/50JVの Saudi Polymers Companyが実施するもので、オレフィン、ポリオレフィンを製造する。
付記 2012/10/1発表
商業生産開始
出資比率 Chevron Phillips 35%、National Petrochemical Company (Petrochem) 65%
計画は以下の通り。
立地:ジュベイル工業地区 →は2012/10/1発表
製品 | 能力 | EPC担当 | 技術 | |
エチレン | エタンクラッカー | 1,165千トン→1,200千トン | 日揮 | Lummus |
プロピレン | metathesis | 445千トン→440千トン | 日揮 | Lummus OCT(Olefins Conversion Technology) |
1-hexene | 100千トン | 日揮 | Chevron Phillips | |
PE | 550千トン 2系列 | Daelim | ||
PP | 400千トン | Daelim | ||
PS | 100千トン 2系列 | Daelim |
日程:建設開始 2008年1月、商業生産開始 2011年9月
原料のエタン、プロパンは Saudi
Aramco から供給を受ける。
付記
Saudi Industrial Investment Group (SIIG) とArabian Chevron Phillips Petrochemical (ACP)は2010年6月、polyamide 6,6 プラントとポリマー加工プラントを建設すると発表した。
ポリアミドは主導的メーカーからライセンスを受ける。
ポリマー加工には、高機能jポリエチレンパイプ、灌漑関係製品、使い捨て医療用品、ポリアミドコンパウンド、自動車部品などを含む。
Chevron Phillips とSIIGは、同じジュベイル工業地区に既に2つのJVを持っている。
いずれも50/50のJVとなっている。
今回の計画のPS用のスチレンモノマー、PP用の不足プロピレンはここから供給する。
1)Saudi
Chevron Phillips Petrochemical
製品:Benzene
485千トン→790千トン ( CPChem
のAromax (R)技術)
Cyclohexane 220千トン→ 360千トン
ガソリン
2000年に生産開始
2)Jubail Chevron Phillips
Company
製品:エチルベンゼン
SM 715千トン
プロピレン 140千トン
ガソリン 300千トン
スチレンモノマーのEPCは日揮が受注している。
付記
3)Petrochemical
Conversion Company
ナイロン6.6 50千トン
ナイロンコンパウンド 20千トン
HDPE pipes and engineering plastics
injection-moulded parts 120千トン
1)のシクロヘキサンを利用
2013年生産開始予定
ーーー
今回の発表では、Saudi Polymers Company の出資は、最終的には、Chevron Phillips が35%となり、新しくサウジに設立されるNational
Petrochemical Company (Petrochem)が65%となるとしている。
(記載はないが、他の2つのJVも同様と思われる)
2008/1/26 EU、NBRカルテルで日本ゼオンに制裁金
EUの欧州委員会は1月23日、NBRのカルテルでバイエルと日本ゼオンに制裁金を科したと発表した。
2000年から2002年にかけて、両社が会合その他を通じて価格を引き上げたり、維持したりしたとしている。
欧州委員会は2003年3月に第三者(名前非公表)からの免責を求めた申告を受け、調査を開始した。
制裁金は以下の通り。
Name | 減額 % |
減額 (Euro) |
Fine (Euro ) |
Bayer (Germany) | 30 | 12 380 000 | 28 870 000 |
Zeon (Japan) | 20 | 1 340 000 | 5 360 000 |
TOTAL | 34 230 000 |
バイエルは再犯のため50%増しとなっている。
両社は調査に協力したため、バイエルは30%、ゼオンは20%の減額を受けた。
欧州委員会では、これが合成ゴム業界では3年程度の間で4度目のカルテル事件であり、これが最後としてほしいとしている。
また、合成ゴム需要家はカルテルでどれだけ高く買わされているかを注意すべきだし、違反企業の株主は制裁金でどれだけ損をしているかに関心を払うべきだと述べた。
日本ゼオンは米国で2002年5月から12月にかけて社名非公表の企業と共謀して価格の維持を図ったとして訴えられ、2005年1月に10.5百万ドルの罰金を支払っている。
また、これに関して米国のNBR需要家から損害賠償の民事集団訴訟を提起され、2005年9月に16百万ドルを支払って和解した。
ーーー
過去のケースは以下の通り。
1)2004年12月 ゴム薬品
Name | 減額 % |
Fine (Euro million) |
Flexsys NV | 100 | 0 |
Bayer AG | 20 | 58.88 |
Crompton
Europe Ltd. +Crompton Manufacturing Company, Inc. (former Uniroyal Chemical Company, Inc.) + Chemtura Corporation (former Crompton Corporation) |
50 | 13.60 |
General
Quimica SA+ Repsol QuimicaSA + Repsol YPF SA |
10 | 3.38 |
TOTAL | 75.86 |
2)2006年11月 BR/ESBR
Name | 減額 % |
減額 (Euro) |
Fine ( Euro ) |
Bayer, Germany | 100 | 204 187 500 | 0 |
Dow, USA | 40 | 43 050 000 | 64 575 000 |
Eni, Italy | 272 250 000 | ||
Shell, Netherlands | 160 875 000 | ||
Unipetrol, Czech Republic | 17 550 000 | ||
Trade-Stomil, Poland | 3 800 000 | ||
TOTAL | 519 050 000 |
2006/12/5 EC、合成ゴム価格カルテルで5社に約800億円の罰金支払い命令
3)2007年12月 クロロプレン
Name | 減額 % |
減額 (Euro ) |
Fine (Euro ) |
Bayer, Germany | 100 | 201 000 000 | 0 |
Tosoh, Japan | 50 | 4 800 000 | 4 800 000 |
DuPont,
US (うち Dow, US) |
25 | 19 750 000 ( 16 225 000) |
59 250 000 ( 8 675 000) |
ENI, Italy | 132 160 000 | ||
Denka, Japan | 47 000 000 | ||
TOTAL | 243 210 000 |
2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 243.2 百万ユーロの制裁金
なお、電気化学は欧州第一審裁判所へ提訴した。
ーーー
日本ゼオンは、自動車用タイヤなどの汎用ゴム分野で世界屈指の生産量を誇るだけでなく、ゼットポールをはじめとする各種耐油性特殊ゴムでも、種類、量ともに世界のトップレベルを維持している。現在、日米欧三極の生産・販売体制を構築し、さらにマレーシア・タイでの合併事業、シンガポール・上海での販売拠点を通して、アジア市場への販売にも力を注いでいる。(同社HP)
同社は1999年に米Goodyear からNBR事業を買収した。
それ以前に DSM Copolymer から欧州のNBR事業を買収している。
このほか、Enichem
からアクリルゴムの事業も買収している。
現在の同社のNBR能力は、日本が45千トン、米国で35千トン、欧州で15千トン、合計95千トンとなっている。
同社は1999年の発表時に、特殊ゴムの世界シェアを次の通りとしている。
NBR 40%(日本55%、北米50%、欧州20%) アクリルゴム 54% ヒドリンゴム 76% 水素化NBR 75%
BPは1月18日、北京の人民大会堂で、訪中している Gordon Brown 首相と中国の温家宝首相の見守る中、中国での事業を拡大する一連の契約書の調印を行なった。
BPは、「30年前に進出して以来、中国への投資は40億ドルを超えるが、これらは中国の消費者の生活水準を向上させ、環境を保護するための高品質の製品、資材を供給するという明確な目的を持って行なってきた」とし、これを更に推し進めたいとした。
BP は1970年代初めから中国に進出しており、これまでに43億ドル以上を投資している。
その中には、天然ガスの製造、航空機燃料の供給、LPGの輸入販売、燃料販売、潤滑油ブレンドと販売、石油化学、太陽光発電などがある。石油化学には上海SECCO石油化工(Sinopec
とのJV)と下記の酢酸、PTA事業がある。
BPは中国に30以上の子会社・JVを持ち、約4,000人の従業員を抱えている。
今回の契約は以下の通り。
1)クリーンエネルギー商業化センター
BPと中国のAcademy of
Sciences (CAS)
はこれまで検討してきた
Clean
Energy Commercialization Centre (CECC) を共同で設立するFSを実施する契約を締結した。
中国内外の個別のクリーンエネルギー技術(石炭ガス化、石炭液化、Coal to chemical、CO2捕捉・貯蔵、炭床メタンなど)を統合し、Polygeneration(複数のエネルギーを併給する熱電併給システム)のような競争力のある統合フィードストック製造流通システムを構築しようとするもの。
2001年11月にBPはCASと共同でクリーンエネルギー計画を打ち出した。
2)風力発電
BPはBeijing Tianrun
New Energy Investment との間で、共同で内蒙古自治区の白雲鄂博(Bayan Obo)
近郊に49.5メガワットの風力発電3基を建設、運営する契約を締結した。
両社は内蒙古自治区の他の場所での風力発電に投資することを検討することに合意した。
3)酢酸
BP と Sinopec は重慶にある両社のJVのYangtze River Acetyls Company (YARACO) で65万トンの酢酸の新工場建設の覚書に調印した。2011年に生産開始の予定。
1995年にBP 51%、Sinopec 44%、地元 5%のJVでYARACOを設立、当初能力は15万トンであったが、その後増強し、現在は35万トン(→その後40万トン)となっている。このほか8万トンのエステルも生産している。
なお、BPとSinopecは江蘇省南京市に50/50JVのBP YPC Acetyls Company (Nanjing) Ltd. (BYACO) を設立し、50万トンの酢酸工場を建設している。
付記
BYACOの酢酸は2010年8月に商業生産を開始した。
原料COは揚子石化の天然ガスベースの合成ガス工場で、Technipの天然ガス変性技術と Air Productsの分離技術を使用して生産。(CO 年産250千トン、水素36.8千トン)
BPは石油化学では酢酸とパラキシレン及びPTAに注力している。
PTAに関しては、BPは中国では珠海に富華集団とのJVのBP 珠海ケミカル(BP 85%)が第1期 35万トン(その後増強して現在 50万トン→その後58万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。
三菱レイヨンは1月24日、同社と米国子会社が米国で提起されていた、モディファイヤー(塩ビ樹脂強化剤=MBS)事業に関する集団民事訴訟について、原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意したと発表した。
2003年2月、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会は塩ビ樹脂強化剤の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手した。
9カ国の14社以上のメーカーに調査が入った。
Akzo Nobel、Rohm and Haas などのほか、日本では三菱レイヨン、呉羽化学(現
クレハ)、鐘淵化学(現 カネカ)に調査が入った。
この価格カルテル事件は、公取委が米国や欧州の独禁当局と審査着手前から連携して取り組んだ初めてのケースであった。
公取委は日米間の協力協定を1999年10月に締結しており、EUともこの後、2003年7月に締結した。
ーーー
日本での容疑は、三菱レイヨン、呉羽化学、鐘淵化学の3社が、
・1999年11月21日からの価格引き上げ
・2000年12月前後からの価格引き上げ
を合意し、この分野における競争を実質的に制限したというもの。
3社の当時のMBS事業は以下の通りであった。
鐘淵化学 | 高砂 | 35千トン | |
カネカ・テキサス | 50千トン | 鐘化 100% | |
カネカ・ベルギー | 51千トン | 鐘化 90%、三井物産 10% | |
カネカ・マレーシア | 15千トン | 鐘化 100% | |
呉羽化学 | 錦 | 13千トン | |
Kureha Chemicals (Singapore) | 30千トン | 呉羽 75%、R&H 25% | |
Rohm and Haas (Scotland) | 55千トン | 呉羽 25%、R&H 75% | |
三菱レイヨン | 大竹 | 25千トン | |
Metco North America | ( 26千トン) | (三レ/Atofina 50/50)* | |
Metablen Company B.V.(蘭) | ( 13.5千トン) | (三レ/Atofina 50/50)* |
* 三菱レイヨンとAtofina のJVは、2002/5に合弁解消、Atofina (Arkema) 100% になった。
付記 2008年4月、ArkemaはAxis (Alabama)工場停止を発表。
製品はVlissingen (Netherlands) から供給する。付記 カネカの2010/10現在の能力は以下の通り。
高砂 50,000トン ベルギー 60,000トン テキサス 63,000トン マレーシア 20,000トン 2012年春 +10,000トン 合計 193,000トン → 203,000トン
呉羽化学は「選択と集中」の観点に立ち、同事業からの撤退を決定し、2003年1月1日にこの事業を提携先のRohm & Haas に譲渡している。呉羽は1981年にMBS技術をRohm and Haas に供与し、その後、協力関係を深めていた。
1. 呉羽化学はプラスチック添加剤事業の全世界営業権をR&Hへ譲渡
対象:
@MBS系プラスチック改質剤
Aアクリル系耐候性強化剤、加工助剤2. 両社のMBS製造のJVで、呉羽75%出資のKureha Chemicals (Singapore) 、同25%出資のRohm and Haas (Scotland) は Rohm and Haas 100% とする。 3. 日本国内では、呉羽が錦工場において製造を継続し、Rohm and Haas に供給する。
ーーー
2003年12月11日、公正取引委員会は、三菱レイヨンと鐘淵化学に対し、排除勧告を行なった。
(呉羽化学は既に事業を譲渡しているため、排除勧告は不要)
両社はこれに応諾せず、公取委は2004年2月に審判開始の決定を行なった。
この審判はまだ続いている。
呉羽化学に対しては、公取委は2005年7月、2億6,849万円の課徴金納付命令を出した。
しかし、同社は、事実関係を含めて、公取委の判断との間に看過できない相違があるとして、審判手続の開始を請求、この審判もまだ続いている。
付記
公取委は2009年11月9日、両案件について審判審決を行った。
三菱レイヨンとカネカに対しては排除命令、クレハに対しては2億6,849万円の課徴金納付命令を認めた。
クレハは11月12日、審決取消訴訟を提起しないと発表。
三菱レイヨンは11月19日、「審決内容には実質的な証拠に基づかない部分が多々ある」と判断し、東京高裁に審決取消訴訟を提起すると発表した。
カネカも12月8日、「審決内容には実質的な証拠に基づかない部分が多々あると判断し」、審決取消訴訟を提起すると発表した。
カネカは2010年12月10日、高裁で敗訴したと発表。
最高裁への上告も含む対応策を決定する所存としている。----
付記
公取委は2010年6月4日、三菱レイヨンとカネカに課徴金納付命令書の送達をしたと発表した。
カネカ 6億 458万円
三菱レイヨン 5億4361万円
合 計 11億4819万円
カネカは6月18日、三菱レイヨンは6月21日に、いずれも審判を請求した。公取委は2010年8月27日、審判開始決定を行った。
ーーー
米国においては、米国司法省は、モディファイヤーの販売に関して、価格カルテル、独禁法違反の容疑で3社の米国子会社に対する刑事調査を行ったが、2006年4月に容疑なしとして不起訴となり終了した。
(欧州委員会による調査も2007年1月に終了した。)
しかし、米国のMBSの購入者から、価格維持等の米国独占禁止法に違反する行為により損害を被ったとの主張で、3社の子会社に対してそれぞれ損害賠償請求訴訟(民事集団訴訟)が提起された。
・クレハは2005年11月、原告団に対して500万ドル(約565 百万円)の和解金を支払うとの内容で、原告団と和解した。
・カネカは2007年4月、原告に対して590万ドル(約7億円)の和解金を支払うとの内容で、原告と和解合意した。
・三菱レイヨンは上記の通り、本年1月に原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意した。
各社とも、違法な行為は一切存在せず、原告の主張には根拠がないとしながら、今後の訴訟遂行に要する費用、関係者が負担する時間やエネルギー、それらの事業活動への影響等を総合的に考慮した結果、和解が最善であるとの判断に至ったとしている。
2008/1/30 イスラエルのCarmel Olefins が欧州 PPメーカーに出資
イスラエル最大の石油精製会社Oil Refineries Ltd. は1月24日、同社が50%出資するCarmel Olefins Ltd.が欧州のPPメーカーのDomo Polypropylene BV に49%出資する契約に調印したと発表した。
付記 2011年7月、Domo Polypropylene はDucor Petrochemicalsと改称した。
Carmel
Olefins は昨年11月に、欧州PPメーカーの49%を買収する覚書を締結したと述べたが、社名等は明らかにしていなかった。
同社は 20百万ユーロを支払うとともに、2013年から5年間、年に1百万ユーロを支払う。
Carmel Olefins については 2006/7/24 イスラエルのCarmel Olefins、戦闘激化で操業停止 参照
Oil Refineries はHaifa に年900万トンの製油能力を持っている。
Carmel Olefins に50%出資するほか、100%子会社のGadiv Petrochemical Industries Ltd.で芳香族、脂肪族の溶剤、無水フタル酸、その他を生産している。
このほか、電力と蒸気をHaifa湾周辺の需要家に供給している。
Domo Polypropylene BV はベルギーのカーペットメーカーのDomo Group の子会社。
Domo
Group はDomo Industries でカーペットや人工芝生などを製造販売しているが、原料遡及に熱心で、1983年にGent
でポリアミドの生産を開始したが、1994年に当時のLeuna-Werke
AG (2005年11月にBASFが買収、2006年5月にBASF Leunaと改称)からカプロラクタム プラント(能力27千トン)とフェノール
プラントを買収した。
その後、350百万ユーロを投じて、この設備の近代化と拡張を行い、カプロラクタム能力を100千トンにすると同時に、次の設備を新設した。
Polyamide
6、BCF-yarns、Sulphuric
acid、Cumene、Hydroxyl
ammonium sulphate、Cyclohexanone
更に、Domo Group は2001年、Basell からオランダのRozenburg にある年産 18万トンのPP プラント(Novolen
gas phase)を買収し、Domo Polypropylene
とした。
同工場の生産量の1/3 はDomo が自家消費している。
ーーー
今回の投資はCarmel Olefins の最初の海外への投資で、海外も含めて同社の事業を拡大していくという戦略に基づいている。
2008/1/30 速報 2007年4Q 国産ナフサ基準価格
2007年4Qのナフサ輸入価格は次の通りとなった。
07/10 56,744円/kl 07/11 59,037 07/12 62,850 平均 59,560
この結果、4Qの国産ナフサ基準価格は61,600円/kl となり、1980年2Qの60,000円/kl を抜いて、史上最高となった。
* 国産ナフサ基準価格については 2006/7/29 2Qの国産ナフサ基準価格 49,800円/klに
2008/1/30 「NHK TV プロフェッショナル 仕事の流儀」
1月29日の放送
「リーダーは太陽であれ」を見た。
主人公は、サウジアラビアのペトロラービグ計画で奮闘する日揮の現場所長・高橋直夫氏。
NHKのPR:
世界最大の産油国・サウジアラビアで建設が進む、投資額 1兆円の巨大石油化学プラント「ペトロラービグ・プロジェクト」。敷地面積は18平方キロ。完成すれば、その規模は世界最大級のものとなる。その中枢部の建設現場の総責任者を務めるのが高橋直夫(56歳)。高専卒業後、日本のプラントエンジニアリング会社に入社後、海外の現場一筋35年のたたき上げで現場トップに上り詰めた、世界屈指のプラント建設のプロだ。100万点に及ぶ部品を、7000人がひとつひとつ組み上げる高橋の現場。トラブルは日常茶飯事。
次々とふりかかる難問に対して、高橋は瞬時に解決策をひねり出していく。サウジアラビアの建設現場に一か月密着。重いプレッシャーのなか、あらゆる手を尽くして仕事を完遂させようとする巨大プロジェクトのリーダーの流儀を描く。
「ペトロラービグ・プロジェクト」は住友化学とサウジアラムコの大規模石化プロジェクト。
2006/3/25
ペトロラービグ起工式
日揮はこのうち、エタンクラッカー(130万トン/年)と流動接触分解装置:High Olefin FCC (プロピレン90万トン/年)及び、これら設備に係る設計、機材調達および建設役務をランプサム(一括請負)契約している。
中東の石油化学計画の難しさがよく分かる。
再放送予定 2月5日(火) 午前1時5分
2月5日(火) 午後4時5分
2008/1/31 ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表
ダウは1月29日、テキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備の建設を開始すると発表した。
2011年のスタートを目指す。
同地の既存のプラントの多くは経済的な耐用年数に近づいており、今後3年間で順次停止する。
今回の投資はS&Bで、設備能力は差引減少する。
付記 2009年2月、ダウは経済情勢悪化によるプロジェクト見直しの結果、本計画を延期すると発表した。
同社のAndrew N. Liveris 会長兼CEOは、「塩素はダウの機能製品事業の重要な原料で、ポリウレタン、エポキシ、特殊化学品、特殊プラスチック、農業化学品の将来の成長の鍵を担っている」と述べた。
同時にダウは、30年以上の需要家であるシンテックとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。
(信越化学も30日に発表した。)
同会長はこれについて、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、シンテックはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」としており、同社が石油化学事業で進めているAsset-light
戦略の延長であるとしている。
Asset-light
戦略については
2007/2/3 ダウ、PSとPP事業のJV化を検討
2007/12/14 速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立
Freeport の当局は昨年10月に新工場誘致のためダウに7年間の固定資産税免税の提案をしていた。
ーーー
ダウは2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。
今後の設備の維持更新費が多額となるのに加え、エネルギー・原料価格の高騰に伴い、採算が合わなくなったためと説明した。
更に2006年8月には、カナダの電解、EDCプラント停止を発表している。27年間経過したプラントを今後長期間維持するためには多額の投資が必要で、現在の想定収益性ではこれを認められないのが理由。
これらの動きから、ダウがクロルアルカリ事業を重視しなくなったとみられた。
一方、シンテックはこれまで原料VCMを全量ダウに依存してきたが、現在ルイジアナ州で塩素45万トン、VCM75万トン、PVC60万トンの工場を建設中で、更に2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。
2007/6/1 シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請
これにより、両社の関係が薄まりつつあるとの見方がなされていた。
今回の動きは関係を再度強化するもので、シンテックのテキサス計画は延期されるのではないかとみられている。
なお、Freeport の当局はシンテックの計画に期待しており、本年1月初めにシンテックに対しても新工場建設に対して7年間の固定資産税免税を決めた。免税額は合計で13百万ドルに達する。
シンテックのルイジアナ州での塩素からの一貫増設の第一期 30万トンは、当初予定では2006年末の完成であったが、需要状況を勘案して1年遅らせ、昨年の中間発表時には本年2月の完成としていた。
今回の発表では本年5月完成予定としている。
(現在の需要の状況では難しいのではないか)
ーーー
ダウは昨年、中東と中国でのクロルアルカリの投資計画を発表している。
中東ではダウはサウジアラムコとの間で、サウジのラスタヌラに世界最大級の石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結したが、これにはワールドスケールの電解設備と、VCM、ポリウレタン、エポキシレジンなどが含まれている。
2007/5/15 アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設
中国では中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals
コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。
計画では "clean coal" technologies
を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産するが、電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。
2007/5/21 ダウの海外進出
付記
旭化成ケミカルズは2月5日、ダウ・ケミカルからテキサス州Freeport
工場向けにイオン交換膜法食塩電解の大型設備を受注したと発表した。受注金額は約70億円。
今回の新プラント建設により、Freeport
工場はイオン交換膜法食塩電解では世界最大規模の生産能力をもつ工場となるが、全設備が旭化成ケミカルズのプロセスとなる。