ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/4/23 日本独自のプロセスによるGTL実証プラントが竣工

日本GTL技術研究組合に加わる6社は4月16日、新潟市の日産500バーレルのGTLGas To Liquids)の実証プラントの建設を完了し、竣工式を行ったと発表した。

今後は2年間の実証運転を行い、商業規模で適用可能な日本独自の技術を確立する。

GTLは、世界に広く存在する天然ガスから、化学反応によってナフサ、灯油、軽油等の石油製品を製造する技術で、石油代替の燃料ソースの確保と多様化を可能にする極めて有効な手段であり、また、GTLによって製造される燃料は、硫黄分や芳香族分などを含まないため、環境に優しいクリーン燃料としても期待されている。

海外企業(SasolShellExxonMobil など)はGTL技術の商業化を先行しているが、他社へ技術供与は行わない方針のため、 独自技術の開発が必要となる。

Sasol:カタールのOryx (34B/D)Oryx U(74B/D) が稼動中
   2006/6/22
 南ア・サソールの石炭液化技術 に記載

Shell:マレーシア Bintulu (15B/D)が稼動中、カタール Pearl (140B/D)は設計段階

ExxonMobil:カタール計画取り止め
   
2006/2/27 ExxonMobil、カタールのGTL計画取り止め

ConocoPhillipsBP:いずれも実証段階

国際石油開発帝石、新日本石油、石油資源開発、コスモ石油、新日鉄エンジニアリング、千代田化工建設の6社は2006年10月25日に日本GTL技術研究組合を設立し、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で実証研究を行なってきた。
(これに先立ち、北海道・勇払でパイロットスケール 7B/D のテストを行った)

実証研究の概要
(1) 目的:
商業規模の前段となる500B/D規模の実証プラントでGTL技術の実証、ならびに商業化へ向けたスケールアップの検討等を行い、商業規模(2万B/D)で技術的・経済的に競争力をもつGTL技術を開発する。
   
(2) 研究体制:JOGMECと日本GTL技術研究組合の共同研究
   
(3) 研究予算:総事業費 約360億円(補助金約240億円、日本GTL組合の負担額 約120億円*)
   
      * 国際石油開発、新日本石油、石油資源開発 各約30億円、残り3社 各約10億円
   
(4) 期間:2006〜2010年度 (5年間)
実証プラントの概要
(1)所在地:新潟市北区太郎代2881-45
(2)プラント能力:日量500バーレル(日量80キロリットル)
(3)主要プロセス設備
合成ガス製造設備:天然ガスを合成ガス(H2とCO)に転換。
FT(
Fischer-Tropsch)合成設備:H2とCOから炭化水素を合成する反応で液体燃料粗油を合成。
アップグレーディング設備(水素化処理設備):液体燃料粗油からナフサ、灯油、軽油等を製造。

今回のプロセスは、炭酸ガスを含む天然ガスをそのまま利用することが可能な、世界初の画期的な技術である。

天然ガスにはCO2を20%含有するため、従来プロセスではCO2を除去し、その上で、合成ガス製造のため、別途酸素を製造して供給する必要があった。このプロセスはCO2除去不要で、酸素製造プラント不要のため、CO2を含むために開発されずに放置されたガス田の有効活用が可能となる。

 


2009/4/23 SABICの第1四半期の損益、赤字に

SABICは21日、第1四半期の損益速報を発表した。

それによると、純損益は前年同期の69.24億リアルの黒字に対し、9.74億リアルの赤字となった。
これにはノレン償却 11.81億リアルを含むが、それを除いても2.07億リアルの黒字に過ぎない。

なお、昨年の第4四半期は3.11億リアルの黒字(2007年同期は68.7億リアルの黒字)であった。

営業損益も3.8億リアルの黒字で、2008年第1四半期の108.91億リアルに対し、97%の減となった。

SABIC業績                (単位:10億SAR、1SAR≒26円)
        1Q       4Q      年間
2009年 2008 前年比   2008 2007 前年比 2008 2007 前年比
Gross profit          3.51  13.35  -74%  48.1  47.73  
Operating profit   0.380  10.891  -97%    1.61  11.11  -86%  37.27  41.0   -9%
Net profit  -0.974*   6.924  -    0.311   6.87  -95%  22.0  27.0  -19%

 * ノレン償却 1.181SARを含む     

CEOのMohamed Al-Mady は、グローバルな金融危機、経済危機により、需要家が資金繰りに苦しんでおり、特に自動車、建設、電機産業が影響を受け、エンプラなど石化製品の需要減となり、これが価格低下につながったと述べた。

しかしSABICでは操業を維持しており、第1四半期の生産量は前年同期を若干上回り、販売数量も5%伸びたとし、同社の財務状況は健全であり、競争力を更に強化するとしている。


2009/4/24 シノペックとペトロチャイナ 2008年決算

シノペックの2008年アニュアルレポートが発表された。

2008年上半期は原油価格が高騰したが、中国では石油製品価格は政府が統制している。

このため、精製部門は営業損益が大幅な赤字となった。
化学部門も赤字となっている。

参考  2008/8/29 シノペックの上期損益、過去最悪に

                                                単位:百万元
  03 04 05 06 07 08
Sales   429,949   597,197   799,115  1,034,888  1,173,869  1,420,321
Operating profit    38,883    63,069    66,814    80,632    81,010   -22,292
Net Profit    24,396    41,791    44,776    55,038    58,721    26,115

これに対して政府は補助金を出して、この赤字を補填している。

補助金は2005年から始まった。
 
 2005年:9,415百万人民元
  2006年:5,000百万人民元
  2007年:
4,900百万人民元

2008年の補助金は50,300百万人民元の多額となった。
 (うち、精製部門で40,500百万人民元、販売部門で 9,800百万人民元) 

営業損益内訳   百万人民元
  03 04 05 06 07 08
Exploration and production   19,160   25,614   46,871    63,182   49,111    66,839
Refining    6,073    5,943    -3,505   -25,710   -13,666   -102,084
Marketing and distribution   11,943   14,716   10,350    30,234   33,597    28,308
Chemicals     3,543   18,721   14,296    14,458   13,416   -13,352
Others    -1,836   -1,925    -1,198    -1,532    -1,448    -2,003
合計   38,883   63,069   66,814    80,632   81,010   -22,292
補助金        9,415    5,000    4,900    50,300
再計   38,883   63,069   76,229    85,632   85,910    28,008
(うちRefining)   (6,073)   (5,943)   (5,910)   (-20,710)   (-8,766)   (-61,584)

精製部門は補助金を入れても、まだ多額の赤字となっている。 

ーーー

これに対して、PetroChina の場合は石油開発の比重が大きく、原油価格高騰によるメリットをフルに受けている。
精製では赤字が大きいが、補助金は出ていない。

  04 05 06 07 08
Sales  397,354  552,229  688,978  810,432 1,039,674
Profit from operation  152,434  193,765  199,897  200,771  159,300 
Net profit  107,646  139,642  149,397  154,311  125,946 

Chemicals は若干の赤字となった。

ーーー

両社の損益を対比すると以下の通りで、石油開発の差が全社損益に反映している。

 


2009/4/25  日立の冷蔵庫で「エコ偽装」、公取委が排除命令

公正取引委員会は4月20日、日立アプライアンス(日立製作所の100%子会社で、総合空調及び家電製品の開発・製造・販売)に対して、不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定に基づく「排除命令」を出した。

「冷蔵庫 総合カタログ」及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示内容について、需要家に対して、実際よりも著しく優良と誤認させる恐れがあると判断した。

昨年9月に発売した冷蔵庫R-Y6000(「栄養いきいき真空チルドV」シリーズについて、
「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料に
廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しており、また、この樹脂を使用することにより、「フレックス真空断熱材」の製造工程において排出する二酸化炭素の量を、当該樹脂を使用しない場合と比べて約48パーセント削減しているかのように表示した。

実際にはリサイクル樹脂の使用は一部機種・期間においてのみのものであり、また、実際の二酸化炭素の削減率も表示の数値より小さかった。
約48%という削減率は、4年前に採用していた製造工程との比較で、直近の新しい工程とではゼロから数%程度削減したに過ぎなかったという。

また同社が新聞各紙に掲載した新聞広告及び取引先販売店舗等に掲示したポスターにて、「栄養いきいき真空チルドV」シリーズ及び「ビッグ&スリム60」シリーズの計9機種の冷蔵庫全てにおいて、「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料として、廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しているように表示した。

実際には一部機種においてのみ使用していた。

製品の設計から試作段階に移った2008年夏ごろには開発設計部門でリサイクル材活用が技術的に間に合わないことが分かったが、宣伝部門などに状況が伝わらなかったという。

同製品は3月末までに15万台を販売、300億円を売り上げたという。

本年2月10日に、この冷蔵庫9機種で「平成20年度省エネ大賞 省エネルギーセンター会長賞」を受賞しているが、同社では自ら取り下げを申し出た。

なお、同社では、本件はカタログ及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示に関する問題の指摘を受けたものであり、対象の冷蔵庫「栄養いきいき 真空チルドV」シリーズならびに「ビッグ&スリム60」シリーズ計9機種の年間消費電力量や2010年省エネ基準達成率等、冷蔵庫の性能・機能自体には問題はないとしている。

付記

安井先生の「市民のための環境学ガイド」(2009/5/17)はこの問題を分析している。

日立のお詫び自体にも誤魔化しがあるという。

真空断熱材の芯材には元はガラスファイバーが使用されていた。
これをリサイクル樹脂に代えて、CO2排出抑制を図ったが、実際には元のガラスファイバーが使用されていた。
(これは公取委の発表に記載されている。)

ガラスファイバーを樹脂に代えるのが目玉で、樹脂がリサイクル材であってもなくても、CO2排出量はほとんど変わらない。

上の宣伝文句は実は次のように読むべきもの。
  ・リサイクル樹脂を活用
  ・ガラスファイバーを樹脂に代えることにより、CO2排出量を削減

実際には
  ・リサイクル樹脂は活用されなかった。
  ・ガラスファイバーを樹脂に代えられなかったため、CO2削減が出来なかった。

ーーー

今回、公取委が排除命令を出した根拠の「不当景品類及び不当表示防止法」の条文は下記の通り。

違反に対しては公取委は排除命令を出せるが、罰金などはない。

(不当な表示の禁止)

第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも 著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引 し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

三 前2号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの

 


2009/4/25 豪州政府、中国五鉱集団による豪州OZ Minerals 買収を条件付で承認

豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業 五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals を約17億米ドルで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収  

しかし、豪州財務相は3月27日声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

実際には、鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。

Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

両社は協議の結果、Prominent Hill 鉱山を買収対象から除外し、買収額を12.1億米ドルに修正した。

ーーー

豪州財務相は423日、条件付でこの買収を承認した。

条件は以下の通り。

五鉱集団は取得した鉱山を別会社で運営する。
鉱山運営会社は豪州に本社を置き、豪州人の経営陣で運営する。CEOとCFOは豪州在住とする。
五鉱集団との取引価格は国際市況に沿った市価基準とする。
Century, Rosebery, Golden Grove 各鉱山の生産と雇用を維持又は増やし、Avebury鉱山を復活、Dugald Riverを開発する。(経済状況にもよるが)

五鉱集団はこの決定を歓迎、中国/豪州の相互投資にとって重要な一里塚であると評価した。

今後、中国政府の承認を受け、6月のOZ Minerals の株主総会にかける。

OZ Minerals は今後も上場を続け、Prominent Hill 鉱山の開発、運営に携わる。

 


2009/4/25 中国商務部、条件付で三菱レイヨンのLucite International 買収を承認

中国商務部は独禁法の規定に基づき三菱レイヨンのLucite International 買収を審査していたが、4月24日、条件付でこれを承認した。
これで独禁法上の問題は全てクリアしたこととなる。

付記

三菱レイヨンは4月27日、全ての関係各国で独禁法当局の認可取得を完了したと発表した。
今後、ルーサイト買収の手続きを開始し、本年5月末日頃全ての買収手続きを完了する予定。

三菱レイヨンは5月29日、全ての手続きが完了したと発表した。
  買収完了日 2009年5月28日
  買収費用総額 約16億米ドル(既存外部借入金の引受けを含む)
  同社保有のルーサイト株式数 9,556千株(発行済株式総数の100%)

昨年12月に一次審査を開始し、2月20日に競争上問題ありとして、二次審査に入った。

中国ではLucite 上海にACH法MMAモノマー 10万トンのプラントを稼動させている。
また、三菱レイヨン
100%子会社の恵州恵菱化成有限公司が広東省恵州市大亜湾経済技術開発区で2006年12月に直酸法MMAモノマー 7万トンで生産を開始したが、2万トンの増強を決めている。

これが問題とされた。

2009/4/14 三菱レイヨンのルーサイト買収に中国が反対?

その後、三菱レイヨン、Lucite International と協議を行い、今回の結論に至った。公告28号で経緯を説明している。

条件は以下の通り。

1.能力除去

中国Lucite5年間、生産能力の50%を第三者に原価(製造コスト+管理費、利益なし)で供給する。原価は独立した監査人の監査を受ける。(買収後6ヶ月以内に行う。正当な事情があれば、更に6ヶ月延長。)

期間内にこれが出来ない場合は、商務部は独立した受託者を指名、中国Luciteを第三者に売却させる。

付記

Lucite中国は2009年11月に50%分の売却先を中国商務部に提案、2010年1月4日、商務部の承認を得た。

ルーサイト中国(上海市、MMAモノマー年産能力101千トン)の50%相当を中国国内外の企業4社に販売する。
売却価格は「製造コスト+管理コスト」で、売却契約締結日より5年間。

2.上記期間中の扱い

上記の期間中は、中国Luciteは三菱レイヨンからは独立した管理体制で運営する。

その間、両社は価格や顧客について情報交換しない。

この約束に反した場合、25万〜50万元の罰金を課す。

3.5年間の新事業禁止

商務部の許可なしで次の行為を行わない。 

1)中国でMMAモノマー、PMMAレジン・板のメーカーの買収

2)中国で新しくMMAモノマー、PMMAレジン・板の製造


2009/4/27 LyondellBasell、親会社も米国の民事再生法対象に追加  

LyondellBasell 16日、米国事業 とドイツの持株会社Basell Germany Holdings GmbH について米国の民事再生法 (破産法 Chapter 11)の申請を行った。

それ以外の国での活動は従来通りとしていた。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

しかし、同社は4月24日、欧州にある全体の持株会社 LyondellBasell Industries AF S.C.A. (以下、親会社)も米国の民事再生法の対象に加えたと発表した。

親会社は製造も販売も行っておらず、従業員もいない。  

今回の措置により、米国子会社の債権者が、親会社が米国子会社に対して行っている債務保証の実行を求めたり、親会社の長期借入金(Senior Notes due in 2015 ) の繰上返済を求めるのを防ぐ。(金利の支払いが止まっており、2月に米国の裁判所が60日間の猶予を認めていた。)

同社では今回の措置は欧州の法律での破産には当たらず、米国以外の事業活動は全く影響を受けないとしている。

ーーー

同社の資本構造は以下の通り。

(4) The Senior Secured Credit Facilities comprise a $2,000 million term loan A facility, a $7,550 million and Euro 1,300 million term loan B facility and a $1,000 million revolving credit facility.

(5) The Asset-Based Facilities include an inventory facility of up to $1,000 million and a receivables facility of up to $1,150 million.

ーーー

これまでの経緯は以下の通り。

200916日 
  米国事業(合計81社)とドイツ持株会社Basell Germany Holdings が民事再生法を申請(図 参照)
  民事再生計画認可までの間の倒産を防ぐため、80億ドルのDIPファイナンスをアレンジ。

DIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスは一時的な運転資金の手当てのこと
うち、
32.5億ドルは新規借り入れ、32.5億ドルは既存の担保付借入金の再借り入れ、
残り
15.15億ドルは既存運転資金の再借り入れ。

   
2月26日
  破産裁判所が下記に関して、60日間の禁止命令を出す。
  米国子会社の債権者が、親会社が米国子会社に対して行っている債務保証の実行を求めること。     
  親会社の長期借入金の繰上返済を求めること。 
  
利率 8.375%の2015満期の借入金(615百万ドル)の金利が未払いとなっている。            
   
2月27日
  破産裁判所がDIPファイナンスを承認
     32.5億ドルは新規借り入れ、32.5億ドルは既存の担保付借入金の再借り入れ、
   15.4億ドル(1/6案では15.15億ドル)は既存運転資金の再借り入れ(→3月に15.7億ドルに増額)
   期間は1年
   
4月8日
  再生計画で当初の固定費削減を上乗せ
  損益改善を13億ドルに、うち固定費削減を当初の2億ドルから7億ドルに。(2010年末 目標)
    従業員 3,000人(17%)、下請け 2,000人(30%)カット、10以上のプラント閉鎖
     

同社は324、昨年12中頃から休止しているChocolate Bayou のオレフィンコンプレックスを閉鎖すると発表した。
同コンプレックスは 土地をSolutia からリースしており、市況悪化に加え、リース料も負担となっていた。
Chapter 11でのオプションを行使し、リースを打ち切った。
他の6
つのコンプレックスで、需要家のニーズは十分賄えるとしている。

Equistar Chemicals のオレフィンコンプレックスは以下の通り。(能力は若干古い資料)

立地 エチレン能力
Chocolate Bayou, Texas   545千トン
Channelview, Texas  1,750千トン
LaPorte (Deer Park), Texas   790千トン
Corpus Christi, Texas   770千トン
Lake Charles, Louisiana   385千トン
Clinton, Iowa   435千トン
Morris, Illinois   545千トン

 


2009/4/28 Rio Tinto、中国のアルミJVの株式を譲渡

Rio Tinto は借入金返済のため、資産の売却を続けている。

Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、承認を決める豪州のForeign Investment Review Board レビューを6月まで延長している。

2009/4/1 中国アルミのRio Tinto への出資のその後

本年に入り、Alcan(2007年に買収)が持っていた中国のアルミ関連の2つのJVの持分を相次いで売却した。

Rio Tinto Alcan は本年1月、寧夏のアルミ精錬JVのAlcan Ninxgia(能力 16万トン)の50%持分をJV相手の青銅峡アルミ(Qingtongxia Aluminium)に125百万ドルで譲渡した。
同時に増設(能力 25万トン)精錬所の権利を80%まで取得するオプションを放棄する代償として13百万ドルを受け取った。

1964年設立で寧夏回族自治区に本拠を置く青銅峡アルミ外資との提携で能力拡大を図り、2004年3月にカナダのAlcan との間で合弁契約を締結した。
Alcanは150百万ドルを投資し、既存の150千トンの製錬所と所要の電力の50%の権利を得るとともに、建設中の250千トン精錬所の権利を80%まで取得するオプションを得た。

ーーー

Rio Tintoはこのたび、アルミの押出・建材製造販売のJVの深センの華加日*業有限公司:Nonfemet International(China-Canada-Japan)Aluminum Company Ltd. (*は金偏に呂)の持株27%のうち、17%をJV相手の中金嶺南有色金属公司に売却した。

Rio Tintoは持分の27%全体の売却を提案していたが、何故か、17%となった。
中金嶺南有色金属の持分は72%にアップした。

なお、中金嶺南有色金属は豪州New South Walesの亜鉛や鉛の採掘業者のPerilya に50.1%の出資を行っている。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収 に記載

ーーー

華加日は名前の通り、中国の中金嶺南有色金属が55%、カナダのAlcanが27%、日本の日本軽金属が18%出資している。

華加日は1986年に中国が55%、日軽金とAlcanが22.5%ずつで設立、1992年に日軽金がAlcanの持分を譲り受けた。

日本軽金属とAlcanは1996年にアジアのアルミ加工事業を統合、持株会社 Alcan Nikkei Asia Holdings を設立した。

タイのAlcan Nikkei Siam Reynolds Aluminumが設立、その後日軽金が70%を取得したが、Alcanとの持株会社設立で持株会社に移管した。(その後、30%を買い増し、100%とした)
華加日も持株会社に移した。

日軽金は2003年9月末にAlcanとの関係を整理した。

今後の東南アジアにおけるアルミニウムの需要拡大に対応し、より効果的かつ積極的に事業展開を推し進めるためには、タイの会社を100%出資会社として直接事業運営することが望ましいものと判断した。
この時点で中国のJV
華加日についても18%を取得した。

日軽金は中国の自動車市場への対応をはかるべく2004年4月に、華加日との合弁で、自動車部品用アルミ押出材加工販売会社「華日軽金(深セン)有限公司」を設立している。(日軽金55%出資)

 


2009/4/28 2009年第1四半期 国産ナフサ基準価格

財務省が4月28日に発表した3月の輸入通関速報によると、3月のナフサ輸入価格は28,632円/kl となった。また、1、2月の金額も修正された。

この結果、第1四半期のナフサの平均輸入価格は 24,970円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は27,000円/kl となる。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格     修正後
輸入平均   基準価格
3Q平均  83,820  85,800      
08/10  67,110      66,923    
08/11  48,593      48,456    
08/12  29,780      29,780    
4Q平均  50,162  52,200  50,047  52,000
09/1  21,462      21,500    
09/2  23,717      23,836    
09/3  28,632      28,632    
1Q平均        24,970  27,000

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


2009/4/29 GlaxoSmithKline の動き

製薬業界は新薬の特許の期限切れなどに伴い、有望な新薬の開発に重点投資する必要に迫られており、M&Aや事業の統廃合が加速している。

現在の金融危機のなかで、手元資金の多い医薬業界だけが多額の買収資金の借り入れが出来る。

本年1月PfizerWyeth 680億ドルで買収すると発表、3月にはMerck Schering-Plough 411億ドルで買収することで合意した。

2009/1/27 PfizerWyeth を買収

2009/3/11 Merck、米Schering-Plough を買収

416日、英国のGlaxoSmithKline GSKと米国のPfizer は、それぞれの抗エイズウイルス(HIV)薬事業を統合すると発表した
GSKは主力の抗ウイルス事業を強化、Pfizer Wyeth 買収で補強するバイオ医薬品の開発に集中する。

GSKは更に、420日、皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表している。

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GSKPfizerWyeth の関係は以下の通り。

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GlaxoSmithKline(GSK)/ PfizerのHIV事業統合:

GSK PfizerHIV医薬品に特化した合弁会社を設立することで合意した。

新会社はGSKにとっては、製品の幅を広げ、将来の特許切れに対応でき、また新薬候補を追加する意味がある。
PfizerにとってはSelzentry/Celsentri や新薬候補をGSKの販売ルートで拡販できる。

当初の出資比率はGSKが85%、Pfizer15%で、GSKの連結子会社となる。
しかし、今後、新薬候補の力を勘案して見直すこととした。

全ての新薬候補が承認された場合は、GSKが75.5%、Pfizer24.5%となる。
GSKの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが91%、Pfizer9%となる。
逆に
Pfizerの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが69.5%、Pfizer30.5%となる。

また、いずれかの会社が拠出した製品がある基準を達成した場合には、その会社に優先配当を払う規定も入っている。

新会社は11の製品を持つ。主力はGSKCombivirKivexa、PfizerSelzentry/Celsentriである。
2008年の合計売上高は16億ポンド(23.6億ドル)に達する。新会社のシェアは19%を占める。

Product Class
Agenerase Protease inhibitor
Combivir NRTI
Epivir/3TC NRTI
Epzicom/Kivexa NRTI
Lexiva/Telzir Protease inhibitor
Rescriptor NRTI (US only)
Retrovir/AZT NRTI
Selzentry/Celsentri CCR5 antagonist
Trizivir NRTI
Viracept Protease inhibitor (N.America only)
Ziagen NRTI

Protease inhibitor:蛋白分解酵素阻害剤(エイズウィルスの増殖防止)
NRTI:ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(エイズウィルスの増殖防止)
CCR5 antagonist
HIVの侵入阻害剤

新会社は、phase II 段階で4種、phaseT段階で2種の新薬候補を持っている。

Product Class Phase
GSK 1349572 Integrase inhibitor II
UK-453061 NNRTI II
GSK 2248761 (IDX899) NNRTI II
PF-232798 CCR5 antagonist II
PF-3716539 PK enhancer I
GSK706769 CCR5 antagonist I

Integrase inhibitorHIVのDNA組み込み阻害
NNRTI:非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬

既存製品を入れると、新会社は17の製品を持つこととなる。

更に新会社は両社とResearch Alliance Agreement を締結する。両社は引き続き研究開発を行い、新会社は第一に交渉する独占権を有する。

なお、Pfizerのワクチンは新会社に移さない。
同社は
Wyeth買収で幅広いワクチン事業を入手する。

2002年にFDAはネコ免疫不全症を予防する世界初のワクチンを承認した。

カリフォルニア大学とフロリダ大学が特許を持ち(発明者はJanet Yamamoto
Wyethの動物用医薬品事業部門であるFort Dodge Animal Health社がFel-O-Vax FIV として販売している。

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GSK/Stiefel Laboratories

GSK皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表した。

Stiefel の全株式を29億ドルで買い取ったうえ、同社の4億ドルの借入金を肩代わりする。
更に、今後の業績しだいで、
3億ドルの現金支払いを行う。

買収後、GSKの皮膚薬はStiefel の事業と統合、GSK Groupの中でStiefel の名前で事業を続ける。

両社の皮膚薬を統合すると、2008年ベースで売上高は約15億ドルとなり、全世界の処方箋皮膚薬の市場で8%のシェアとなる。
Stiefel 製品が9億ドル、 GSK製品が5.5億ドルとなっている。

統合により、Stiefel 製品は特にブラジル、ロシア、インド、中国、日本などでGSKのグローバルな販売ルートを利用でき、GSK製品はStiefel の皮膚薬専門の販売力、医者との関係などを利用できる。


2009/4/30 欧州の過酸化水素カルテル被害で代理訴訟

ブラッセルのCartel Damage Claims (CDC) は4月23日、過酸化水素の価格カルテルで被害を蒙ったパルプ、製紙業の32社に代わって、カルテルに参加した6社をドイツの法廷に訴えた。

まず情報提供を求め、その後に損害賠償を求める。
予備的に賠償額を430百万ユーロとしており、金利を加算すると約50%増しになる。

CDC2002年に設立された会社で、独禁法違反に対して私的な損害賠償を代行する。
(ホームページ:
http://www.carteldamageclaims.com/english/introduction_engl.htm

訴えられたのは次の6社:
 
Evonik Degussa GmbH (Germany
 
Akzo Nobel N.V. (Netherlands
 
Solvay SA/N.V. (Belgium
 
Kemira Oyj (Finland
 
Arkema SA (France
 
FMC Foret SA (Spain):米国FMCの子会社

被害者の32社は欧州13カ国に94の工場を持ち、過酸化水素を各社から購入していた。
社名は公表されておらず、各社は損害賠償権をCDCに売却し、委任している。

この方式は、これまで米国流の集団訴訟を受け入れるのを渋っている欧州で、私的な損害請求を進める新しい方式とされている。

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EUは2006年5月3日、過酸化水素及び過ホウ酸塩のカルテルに参加したとして、7社に合計388百万ユーロの制裁金を科したと発表した。

下記9社は1994から2000までの間、過酸化水素及び過ホウ酸塩について情報を交換、生産を制限、シェアと需要家を割り当て、価格を操作していた。

200212月に Degussa が減免を申請した。これを受けECが調査を開始し、その結果、減免を求めて情報提供が相次いだ。

社名 減額(%) 制裁金
(千ユーロ)
 
Degussa   100      0 重犯50%加算、減免制度で  129.938→0
Solvay    10   167,062 重犯50%加算、減額
Total/Elf Aquitaine/Arkema    30   78,663 重犯50%加算、減額
Akzo Nobel    40   25,200 減額
FMC Foret     25,000  
Kemira     33,000  
Edison (now Solvay Solexis)     58,125 重犯50%加算
Snia/Caffaro      1,078  
L'Air Liquide      − 時効1998に事業中止)
合計    388,128  

発表には、この決定がカルテル被害者が損害賠償を訴えるのに利用できると付言している。

 


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