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2009/8/23  原油価格アップ

8月21日のニューヨーク原油先物市場でWTI原油(10月限)は一時1バレル74.72ドルまで上昇し、終値も73.89ドルで年初来高値を更新した。これは昨年10月20日の74.25ドル以来の高値である。

株式市場の上昇が原油市場を押し上げている。

 

ナフサ価格も上昇している。東京市場のオープンスペックナフサ価格は8月20日に660ドル/トンを記録した。(21日終値は642ドル)

これも昨年10月初め以来の高値となった。

660ドル/トンは43,000円/kl 程度となる。(2ヵ月後入着)

5月の輸入平均価格は30,783円/kl、6月は33,544円/klであった。

 


2009/8/24 デュポン、太陽光発電事業拡張に120百万ドル投資 

デュポンは8月20日、120百万ドルを投じて、太陽電池バックシート材料のTedlar(R) ポリフッ化ビニル樹脂フィルム(PVF)の製造用のモノマーとレジンの能力を50%以上増強すると発表した。

モノマーは Louisville, Ky工場で、レジンはFayetteville, N.C工場で、それぞれ増設する。2010年央にスタートする。モノマー増設が45百万ドル、レジン増設が55百万ドルで、残り20百万ドルの用途は明らかにされていない。

デュポンでは太陽光発電の市場は今後数年にわたり急速に発展し、Tedlar(R) や他の材料の需要を押し上げるとみている。
同社では既に Tedlar® PV2100
シリーズのフィルムの能力拡大を行っており、Tedlar® PV2000 シリーズのフィルムの能力拡大の準備を行っている。これらにより、太陽光発電用の Tedlarフィルムの能力は倍増する。
同社では
2012年には太陽光産業向けの製品売り上げは10億ドルを超えると期待している。

デュポンTedlarフィルムは、太陽電池バックシート材料として25年以上の歴史を持ち、抜群の耐候性、耐紫外線性、防湿性能から、業界標準として広く認識されている。これは太陽電池モジュールの寿命を延ばすことを可能にした。
また、耐久性、耐候性に優れていることから、航空宇宙、建築・建設およびグラフィックアートといった分野での重要な用途にも使用されている。

同社ではこの投資は、クリーンで再生可能なエネルギーに対する需要増大に対応するものとしている。

DuPont は813、今後、4つの新しいトレンドに革新エンジンを集中すると発表したが、その一つが「化石燃料依存度の減少」で、これに対応して「持続可能性、および世界中の人々にクリーンで再生可能なエネルギーをもたらす製品を提供する」というのが同社の公約となっている。

 4つの新しいトレンド
 ・食糧需要増大への対応

 ・人間と環境の保護
 ・
化石燃料依存度の減少
 ・新興成長市場への投資

同社の太陽光発電材料はほかに以下がある。

・ Evaflex(R) :エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂
        太陽電池封止材として、人工衛星から住宅用まで幅広い分野で四半世紀以上の実績がある

・ Kapton(R):超耐熱・超耐寒性ポリイミドフィルム
         この使用で、従来にはないフレキシブル性、軽量性、加工性に富んだ太陽電池基板を提供

・ SentryGlas(R):ガラス−ガラスタイプの太陽電池モジュール用封止材(アイオノプラスト樹脂)

・ Solamet(TM):太陽電池の前面または背面電極用(銀ペースト、銀アルミペースト、アルミニウムペーストなど)

・ Butacite(R) :ガラス−ガラスタイプの太陽電池モジュール用封止材(ポリビニルブチラール樹脂)

・ Rynite(R):自動車用電装部品、外装品など/剛性、高温特性に優れている

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デュポンは71日、米エネルギー省と共同で産業用および家庭用太陽電池に関する研究プログラムを立ち上げることを発表した。デュポンが600万ドル、DOEが300万ドルを出資する。

共同研究では、CIGS太陽電池 (シリコンを使わない次世代の太陽電池)向け超薄型保護フィルムの早期実用化を目指している。開発する超薄型保護フィルムは、人間の毛髪の3000分の1の薄さで、湿気による発電効率の低下を防ぐなどの特徴がある。

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同社はまた、2010年までに使用する電力の少なくとも10%を再生可能エネルギーにするとしている。

 


2009/8/25 BASF、Masdar City 建設での戦略的パートナーシップ契約を締結

2008年2月、アブダビ首長国で世界最初のカーボン ニュートラルで廃棄物ゼロのMasdar City の起工式が行われた。

2009/3/18 アブダビのMasdar Initiative

Masdar BASF819日、Masdar City建設での戦略的パートナーシップ契約を結んだと発表した。

BASFは建設資材やシステム開発の「優先供給者」として指名された。Masdar City完成後はBASFはここに事務所を開設する。

Masdar Cityのエネルギー需要削減のため、BASFは省エネ建設のための幅広い解決策を提供する。

BASFはエネルギーや資源を節約し、同時に温室効果ガスを削減する多くの製品を上市している。

・建物の断熱のための発泡ボードに使われるポリスチレン、ポリウレタン

・相変化物質 Micronal PCMSmartBoard

ワックス(パラフィン)を特殊ポリマーでカプセルに閉じこめた白色微粉体(直径約5μ)を折り込んだ石膏ボード。

物質を加熱、冷却することで、分子・原子の配置が移動し、構造が変化する現象を「相変化」という。
温度が上るとワックスは溶けて(液化して)熱を吸収し、温度が低下すると、ワックスは固まり(固化して)、熱は放出する。
この媒体の量などの加減で、用途とする製品の希望する温度設定が可能。
BASFでは、
10,000サイクルの繰り返し実験により、蓄熱効果は30年以上保つ事を確認している。

このため、エアコンの代替となり、電力とメンテ費用の節約となる。

・屋根のコーティングの黒顔料

太陽赤外線をほとんど吸収せず、ヒートアップ防止となる。

・特殊コンクリート混和剤

CO2排出を60%以上下げる。

 


2009/8/25 韓国初の宇宙ロケット打ち上げ

韓国初の宇宙ロケット「羅老(Naro)」が8月25日午後5時に打ち上げられた。

全羅南道高興郡外羅老島(ウェナロド)の羅老宇宙センターで打ち上げられた「羅老」は発射から約200秒後、第1段ロケットの分離に成功、第2段ロケットに点火、目標軌道に入った「羅老」は、5時9分に重さ100kgの科学技術衛星2号の分離に成功した。

当初は5時12分に衛星が軌道に乗ったと報じられたが、その後、教育科学技術部長官は記者会見で「羅老号が地球周回軌道への進入に失敗した。現在、韓国とロ共同調査委員会で詳しい原因を調べている」と語った。

付記
教育科学技術部は26日、ロケット先端部の衛星保護カバーの1つが分離しなかったためと発表した。結果として飛行速度が大幅に低下、衛星は墜落して大気圏で消滅したとみられる。

付記
10月7日、国会教育科学技術委では、8月末の羅老1号打ち上げ失敗に関する問題点の指摘とともに、ロシアに対する技術従属から抜け出すべきだという声が相次いだ。

ハンナラ党の鄭斗彦議員は、「羅老の1段目のエンジンをロシアから導入したことで、その間 国内で液体ロケット(SKR-3)開発に参加してきた業者の相当数が生産設備を閉鎖または縮小するなど基盤が弱まった」と指摘した。
李負J議員(ハンナラ党)も「検証されたロケットも多いが、よりによって一度も使用されていないロシアのロケットを導入した理由が何か」と問うた。

羅老号は8月19日、発射に向けたカウントダウンが「7分56秒前」まで進みながら、ヘリウム貯蔵タンクの圧力を測定するソフトにトラブルが発生し、打ち上げが自動的に中止された。

「羅老」は第1段と第2段ロケットで構成され、全長33.5mで、 第1段ロケットは25.8m。
開発費用は5025億ウォン(4億ドル)。

韓国はこれで世界で10カ国目の「人工衛星打ち上げ国」となる筈であった。

順位 打ち上げ年月日 打上げ国 衛星名称 打上げロケット 備考
1 1957104 ソビエト連邦 Sputnik-1 R-7 84kg
2 1958131 アメリカ合衆国 Explorer-1 Jupiter-C 13.7kg
3 19651126 フランス Aesterix-1 Diamant  
4 1970211 日本 おおすみ L-4S 5号機 23.8kg
5 1970424 中国 東方紅 長征1  
6 19711028 イギリス Prospero Black Arrow オーストラリアで
7 1980718 インド Rohini-1 Satellite Launch Vehicle (SLV)  
8 1988919 イスラエル Ofek -1 Shavit 西向きに打上げ
9 200922 イラン Safir I Omid インド洋上に打上げ
(10) 2009年8月25日 韓国 科学技術衛星2号 羅老(KSVL-1)  

しかし、羅老は完全な自前ロケットではない。

「羅老」開発事業は2002年8月に始まった。

韓国航空宇宙研究院は2004年10月にロシアのKhrunichev State Research and Production Space Center とロケットシステム協力契約を締結した。

当初は「第1段ロケットをロシアと共同開発している」と広報していたため、打ち上げが成功すれば、自前ロケットによる人工衛星打ち上げ国になるとされた。

しかし航空宇宙研究院によると、契約は「第2段固体ロケットとロシアの第1段ロケットを組み立てて全体のロケットを作るための発射体の共同開発」で、第1段ロケットについては韓国には技術移転されていない。

付記

韓国は2010年6月10日午後5時1分に全羅南道外羅老島の羅老(ナロ)宇宙センターで人工衛星搭載ロケット「羅老」を打ち上げた。
しかし、地上を離れてから137秒後、高度70キロ地点で通信が途絶えたが、墜落していたことが分かった。撮影された映像では、通信が途絶える直前に機体から閃光が発し、その後ロケット推進体の光が消えていることが確認された。

当初、9日午後5時に打ち上げが予定されていたが、発射台周辺で午後2時前に火災発生時用の非常消火設備に誤作動が起き、ノズル3カ所から消火溶液が噴出したため、打ち上げに向けた措置は直ちに中止された。

今回の打ち上げには、前回の打ち上げと同じく「科学技術衛星2号(STSAT−2)」が搭載された。この衛星は韓国航空宇宙研究院と韓国科学技術院衛星研究センターなどが共同開発したもので、重さ約100kg。マイクロ波ラジオメータ観測器やレーザー反射鏡などを搭載し、低軌道で約 2年間にわたって、大気と海洋を観測し、衛星技術の検証などを行う予定であった。

ーーー

朝鮮日報は8月23日の紙面で、「朝鮮はロケット先進国だった」という記事を載せている。

それによると、韓国はロシアよりもはるかに長いロケットの歴史を持っている。

韓国で初めて開発されたロケットは、高麗末期の1377年、崔武宣が作った「走火」で、このロケット兵器は、1448年に「神機箭」という兵器へと進化した。紙を巻いて作った「薬筒」に詰めた黒色火薬の力によって矢を放つ兵器である。

「小神機箭」「中神機箭」「大神機箭」「散火神機箭」の 4種類があった。
このうち、「散火神機箭」は、2段式ロケットの構造を有するもので、薬筒の上方に小型の爆弾「小発火」と、小型のロケットエンジンといえる「地火筒」を合わせたものを幾つも取り付けた。
第1段ロケットに当たる薬筒が燃え尽きた後、第2段ロケットに当たる地火筒に点火され、あちこちを飛び回った後、最後に「小発火」が爆発する仕組みという。

記録によると、1447年に平安道と咸吉道(後の咸鏡道)だけで約3万5000発の「走火」や神機箭が作られた。
当時、イタリアのレオナルド・ダビンチが火薬を用いた兵器の想像図を作成していたが、韓国ではすでにロケット兵器が実戦配備されていた。

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北朝鮮外務省の報道官は「わが国は4カ月前、人工衛星の打ち上げで、国連安保理から制裁を受けた。6カ国協議が尊重する自主権と平等権の原則が打ち壊された現在、ロケットの打ち上げを予定する韓国に対して、(6カ国協議での)平等の原則は今も存在するのだろうか」と発言、韓国の宇宙ロケット打ち上げが、国連安保理などの制裁の対象にならないことへのいら立ちを示した。

 


2009/8/26 112番目の元素 Copernicium

8月24日の朝日新聞は「ドイツで見つかった原子番号112番の元素の存在が日本の研究などで再確認され、国際機関が公式に認めた」と報じた。

112番元素は、1996年にドイツ Darmstadt の重イオン研究所(Centre for Heavy Ion ResearchGSI)の加速器で初めて合成された。Sigurd Hofman 教授のチームは、荷電した亜鉛イオンビームを鉛原子に衝突させることで、これを生成した。

原子の核は重くなると壊れやすく、放射線を出しながら分裂などにより、より軽い原子核に変わってしまう。
このため天然にはほとんど存在せず、93番元素のネプツニウム(Np)以上の元素は原子核反応によって人工的に合成されている。

現在名前の付いている元素は1995年にドイツのGSIが見つけた111番の「Roentgenium」。

しかし、短時間しか存在できないことなどから再現実験が難しく、新元素としての認定に必要な再実験と検証が十分でなく、国際純正応用化学連合(IUPAC)はこれを仮に ununbi (ラテン語で112)と名づけた。

その後2007年に、理化学研究所の仁科加速器研究センターは、理研の重イオン線形加速器によって光速の10%にまで加速された原子番号30の亜鉛(Zn)原子核を原子番号82の鉛(Pb)の原子核に衝突させて、両原子核の完全融合反応によって合成された112番元素の観測に成功したと報告した。

これらを受けて認定機関であるIUPACが今年5月、公式に認めた文書を発行した。

IUPACではこの元素の命名権をGSIに与えた。研究チームは、ポーランドの天文学者で地動説を唱えたコペルニクスに因んだ「Copernicium」を提案している。意見募集などを経て、数カ月後にIUPACが最終決定する。

付記

コペルニクスの誕生日「1473年2月19日」に合わせ、2009年2月19日に正式に発表された。
元素の記号は「Cn」となる。

ーーー

理化学研究所は2004年9月28日、これまで確認されている元素より、さらに重い113番元素の発見に成功したと発表した。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2004/040928_2/

中央研究所加速器基盤研究部が、世界最高のビーム強度を有する理研線形加速器を80日間連続稼働させて得られた実験結果によるもの。

113番元素は、2004年2月にロシアの研究所が、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表した。
しかし、崩壊連鎖が既知の原子核まで到達していないため、現在はこれら115番、113番元素の命名権を獲得するに至っていない。

理研では、原子番号83のビスマスに、1秒間に2.5兆個の原子番号30の亜鉛ビームを80日間照射し続け、約100兆回の衝突を行わせ、原子番号113の原子を1原子合成し、確認することができた。
寿命は約0.0003秒で、次々にアルファ線を出し、さらに核分裂していった。

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日本では1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム Nipponium: Npと命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。

 


2009/8/26 世界の石油化学製品の今後の需給動向

経済産業省は
825日、エチレン系・プロピレン系誘導品及び芳香族製品等の石油化学製品についての、西暦2013年までの世界の需給(需要、生産能力、生産量)の動向をとりまとめ、発表した。(例年よりかなり遅れている)

概要は、以下のとおり。
1.金融危機の影響
世界の金融危機の影響や、原油価格の乱高下など、過去に類を見ない混乱に見舞われる中、各地域とも需要の落ち込みが見られるが、
2009年後半以降は、世界経済の回復と相まって需要も回復の見込み。

2.アジア(中国)における需要の伸び
その中でも、アジアでの需要は、
2009年(予想値)から2013年までに、年平均でエチレン系誘導品では5.7%(エチレン換算1,037万トン)、プロピレン系誘導品では5.4%の伸び。とりわけ中国では、エチレン系誘導品7.4%(エチレン換算686万トン)、プロピレン系誘導品7.8%と、引き続き堅調に伸びると見込まれる。

3.中東等における供給能力の増強
他方、中東(
2009年に、エチレン換算で726.1万トンの能力増強)、中国(2009年にエチレン換算で339.6万トンの能力増強)等を中心に、大幅な能力増強が予定されている。世界全体で見れば、計画通り運転開始に移行した場合、供給余力が生じるものと見込まれる。

世界のエチレン換算生産能力及び需要 (単位:千トン)

詳細データの発表後、地域別、製品別グラフを掲載します。

参考 2008/5/29  世界の石油化学製品の今後の需給動向

 


2009/8/27 藍星集団、南京でメチオニン工場建設

藍星集団と同社のフランスの子会社Adisseo Groupは8月19日、メチオニン工場を南京市に建設する契約を締結した。 

能力は年産7万トンで、2012年下半期に稼動の予定。

同社は2008年1月にメチオニン計画を発表しているが、その時点では立地は天津市を予定しており、第1期 7万トン、第2期 7万トンで合計14万トンの計画となっていた。今回の発表にはないが、恐らく第二期計画も考えていると思われる。

藍星集団では、「豊富な原料供給を満たせることが、両社が南京をメチオニン中国工場の建設地に選んだ理由だ。また、南京は恵まれた立地条件を備えており、川上・川下産業のサプライチェーン配置の合理化に有利で、同時に製品をアジア太平洋地域に輸送することにも便利な土地だ」と述べた。

藍星集団は2006年1月にCVC Capital Partners から動物用栄養製品メーカーのAdisseoを買収した。 AdisseoはCVCがAventis (現在はSanofi Aventis)の動物栄養製品部門を2002年に購入して設立した会社で、メチオニン、ビタミン、飼料用酵素を製造販売しており、年間売上高は5億ユーロ。メチオニンは年20万トンを生産し、世界シェアは29%。

同社は本年6月にフランスとスペインの工場でメチオニンを合計25千トン増強することを明らかにしている。 

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中国は世界第2位の飼料生産国として、メチオニンの需要は大きく、現在の需要は12万トン程度とされる。

しかし、中国のメチオニンの生産能力は低い。

石家荘海天精細化工、山東天一化学、Degussa Rexim(Nanning) Pharmaceutical などが生産しているが、いずれも少量の生産で、Degussaの場合で年産 350トンに過ぎない。

Degussa Rexim(Nanning)2001年にDegussaNanning Only-Time Pharmaceutical JVNanning Only-Time Rexim Pharmaceutical として設立されたが、2005年にDegussa 100%子会社となり、改称した。広西チワン族自治区南寧市にあり、アミノ酸の生産がメイン。

このため輸入に大きく依存しており、2008年の輸入数量は90,705トンとなっている。

山東天易科技、本渓化工集団精細化工など多数企業が新しいメチオニン進出の意向を示している。

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住友化学によると、世界的な人口の増加、発展途上国や新興国の経済成長による食肉文化の広がり、健康を意識した鶏肉志向の高まり、家畜排泄物の管理や規制といった環境問題への対応、中長期的な飼料用穀物の不足や高騰に対する懸念など、さまざまな理由から、メチオニンの需要はここ数年拡大を続けており、現在全世界で約700千トンといわれる市場は、今後も年率5%程度で増加していくものと見込まれる。

住友化学は6月8日、メチオニンの増強を発表した。
旺盛な需要に対応するため、愛媛工場に1系列40千トンを新たに増強し、生産能力を合計で約140千トンとする。
増強設備は2010 年第1四半期に操業を開始する予定。

住友化学は、メチオニンのグローバルサプライヤーとして、今後の需要の拡大に対応すべく、今回の愛媛工場の増強に続き、現在、中国における生産を含め、さらなる増強を検討している。

 


2009/8/28 KingBoard Chemical 建滔化工集団)の中国での活動

KingBoard Chemical Holdings (建滔化工集団)は1998年に香港で設立されたラミネートを製造する会社で、中国各地に工場をつくるとともに、ラミネート原料(メタノール→ホルマリン、エポキシ、その他)に遡及してきた。

メタノールについては、中国海洋石油との合弁会社 CNOOC-KBChemical (CNOOC が60%、KingBoard が40%)を設立して、 2006年9月から海南島の東方市で 60万トン/年の天然ガスベースのメタノールを生産したのを初めとして、単独で重慶ケミカルパーク(45万トン)、河北省Xingtai 市、その他で生産している。

2008/1/11  重慶ケミカルパークのメタノール事業

KingBoard Chemical は8月20日、湖南省衡陽市で第4次計画の建設開始の式典を行った。

第4次計画全体は投資額40億人民元で、イオン交換膜法ソーダ 30万トン、PVC 20万トン、エピクロルヒドリン 5万トン、ソーダ灰 30万トン、カーバイド 30万トンなどから成るが、このうち、イオン交換膜法ソーダ 10万トン、エピクロルヒドリン 5万トンの建設を開始した。

衡陽 KingBoard Chemical は、2003年にKingBoard Chemical が衡陽苛性ソーダ工場を買収して設立し、その後、増設を繰り返している。(単位:トン)

  苛性ソーダ 過酸化水素 PVC エピクロル
ヒドリン
ソーダ灰 カーバイド
第1次 2003年
 衡陽苛性ソーダ工場買収 
  30,000          
第2次 2005年   60,000   80,000        
第3次 2007年  100,000    120,000      
広東省広州(Panyu)の
ホルマリン工場から移設
    65,000        
(現状) ( 190,000) ( 145,000) ( 120,000)      
第4次-1  100,000       50,000    
    -2  200,000     200,000    300,000  300,000
(完成後 合計) ( 490,000) ( 145,000) ( 320,000) ( 50,000) ( 300,000) ( 300,000)

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同社のホームページによると、中国での活動は以下の通り。

  立地 製品
Kingboard (Hengyang) Chlor-Alkali Co., Ltd
Kingboard (Hengyang) Industrial Co., Ltd.
Hengyan, Hunan Caustic SodaHydrogen PeroxidePVC
Kingboard ( Hengyan ) Chemical Co., Ltd Hengyan, Hunan Caustic Soda Flakes, Liqudified Chlorine, Sodium Hydroxide, Chlorinated Wax, Hydrogen Peroxide
Hebei Chung Shun Chemical Co., Ltd Xingtai, Hebei ethanoic acid
Kingboard (Hebei) Cokechem Co., Ltd.
Kingboard (Hebei) Chemical Co., Ltd.
Xingtai, Hebei Coke, Coke Oil, Benzene, Ammonium Sulphate, Methanol
Shanxi Kingboard Wanxinda Chemical Ltd Linfen, Shanxi Methanol
HuiZhou ChungShun Chemical Co., Ltd Huizhou, Guangdong Phenol/acetoneBPA
Kingboard Natural Gas Chemical (Chong Qing) Limited Chongqing Methanol
CNOOC Kingboard Chemical Limited Dongfang, Hainan Methanol (JV with CNOOC)
Kingboard (Shaoguan) Chemical Co., Ltd. Shaoguan, Guangdong Formalin
Kingboard (ChangZhou) Chemical Co., Ltd ChangZhou, Jiangsu Formalin
Kingboard (Taicang) Chemical Co., Ltd. Taicang, Jiangsu Formaldehyde, Methanol
Kingboard (Fogang) Chemical Co., Ltd Qingyuan, Guangdong Formalin
Kingboard ( Panyu ) Chemical Co., Ltd. Panyu, Guangdong Formaldehyde, Hydrogen Peroxide
Kingboard (Fogang) Special Resin Co., Ltd Qingyuan, Guangdong Polyvinyl Butyral (PVB) Resin
Kingboard (Jiangsu) Chemical Co.,Ltd Jiangyin, Jiangsu Epoxy Resin
Kingboard (Panyu Nansha) Petrochemical Company Limited Guangzhou, Guangdong Epoxy Resin, Formaldehyde, Tetrabromobisphenol,
Hydrogen Peroxide
Kingboard ( Gaomi ) Chemical Co., Ltd. Gaomi, Shandong Hydrogen Peroxide

2009/8/29 中国、新産業でも過剰能力を抑制

中国国務院は8月26日、風力発電装置などの新産業分野での過剰能力について懸念を表し、過剰能力や不必要なプロジェクトなどの問題について行政指導を進めることを決めた。

過剰設備は鉄鋼やセメント産業で以前から問題となっているが、最近は風力発電やポリシリコンのような新産業でも不必要なプロジェクトが出てきた。

政府の4兆元の景気刺激策で新エネルギーや環境産業が重点投資分野に指定され、全国各地で投資が増えた。

特に、鉄鋼、セメント、板ガラス、石炭化学、ポリシリコン、風力発電分野で指導を強化する。

付記

NDRC では他に、アルミ電解、造船、大豆油抽出などで明らかな設備過剰があると警告している。

他に、2009/9/23 中国国家発展改革委員会(NDRC)、自動車の過剰能力を警告

ーーー

付記 風力発電

NDRCでは中国では再生可能エネルギーは引き続いて開発を進める必要があり、規制が必要なのは風力発電事態ではなく、設備の製造であるとしている。

国際的には有力な風力発電機器のメーカーは67社しかないのに、中国では政府の推進策に刺激されて、7080社が参入するか、参入を検討しており、弱小企業の乱立で海外企業に対し競争力を欠いている。

行政指導には、新規進出に対する厳密なコントロール、環境監査の強化、土地利用の制限などが含まれ、金融機関はその産業分野についての産業政策に従って融資するよう命じられた。

関係政府機関はこれら分野の能力の監視を強化し、操業度や需要、政府のポリシーのような情報を共同で発表する。

工業情報化部(Ministry of Industry and Information TechnologyMIIT) は813日、鉄鋼業において新規拡張計画の承認を3年間認めないと発表した。着工済の約58百万トン分の計画は続行する。

鉄鋼業は最も過剰能力の目立つ業界で、需要が470百万トンと推定されるのに対し、能力は660百万トンとなっている。

合わせて企業の統合により旧式の設備の廃棄を進める。
河北省の鉄鋼は
23年かけて現在の120百万トンから80百万トンにする。

MIITでは鉄鋼業の統合のガイドラインを作成している。

MIITはまた、セメント産業での過剰能力を減らすため、規制案を作成したと報じられた。
昨年ではセメント生産能力の2/3しか稼動していない。

またMIITでは化学や鉄鋼などの主要セクターでの省エネ、排出削減のガイドラインを出す予定。


2009/8/31 溶融亜鉛めっき鋼板カルテルに排除措置及び課徴金納付命令

公正取引委員会は8月27日、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯の製造販売業者に対し、不当な取引制限の禁止の規定に違反する行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

3社に対する課徴金合計155億円は、1事件の課徴金としては、ごみ焼却炉建設工事を巡る談合で2007年に出された約270億円(審判中でいったん失効)に次いで過去2番目で、カルテルとしては過去最高額となった。

付記
自治体発注のごみ焼却炉建設をめぐり、談合があったと認定した公取委の審決を不服として、大手プラントメーカー5社が審決取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は2009年10月6日、5社の上告を退ける決定をした。請求を棄却した東京高裁判決が確定した。
訴えていたのはJFEエンジニアリング、日立造船、タクマ、川崎重工業、三菱重工業。

  排除命令 課徴金(千円)
行為 A    行為 B 行為 C 行為 A 行為 B 行為 C
日鉄住金鋼板  3,763,200  1,239,550  1,338,010 6,340,760
  大洋製鋼
(日鉄住金鋼板と合併)
X 対象外 対象外 対象外 対象外
住友金属建材
(日鉄住金鋼板が承継)
X 対象外 X 対象外
日新製鋼    3,218,380 811,750 1,460,620 5,490,750
淀川製鋼所   1,644,500 1,275,610 755,560 3,675,670
JFE鋼板   X X X
  NKK鋼板
(JFE鋼板と合併)
X X X
合計 7社中3社  5社中3社  6社中3社 8,626,080 3,326,910 3,554,190 15,507,180

* 日鉄住金鋼板は日鉄鋼板と住友金属建材が2006年12月に事業統合

付記

上の行為Aの刑事事件について、東京地裁は2009年9月15日、罰金の刑に処する判決があり、9月30日に確定した。
独占禁止法第51条第1項の規定で、課徴金の額を罰金額の2分の1だけ減額することとなっており、公取委は11月9日、審決を行い、減額した。(千円)

  課徴金 罰金額 減額 減額後
日鉄住金鋼板  3,763,200  160,000  80,000  3,683.200
日新製鋼     3,218,380  180,000  90,000  3,128,380
淀川製鋼所  1,644,500  180,000  90,000  1,554,500

付記

公取委は11月26日、上記のうち、Cについて日新製鋼から審判請求があったため、審判を開始すると発表した。

→ 2012年6月13日、審判請求棄却の審決

違反行為は次の3つに分かれる。

A   GL鋼板の店売り取引
    7社は、平成14年8月下旬ころ以降、GL鋼板の店売り取引での販売価格について合意することにより、公共の利益に反して、我が国におけるGL鋼板の店売り取引の販売分野における競争を実質的に制限していた。
     
B   軽量天井下地材メーカー向けGI鋼板ひも付き取引
    5社は、平成15年8月下旬ころ以降、軽量天井下地材製造業者向けGI鋼板のひも付き取引での販売価格について合意することにより、公共の利益に反して、我が国における軽天メーカー向けGI鋼板のひも付き取引の販売分野における競争を実質的に制限していた。
     
C   建材製品製造業者向け特定カラー鋼板ひも付き取引
    6社は、平成16年1月中旬ころ以降、建材製品製造業者向け特定カラー鋼板のひも付き取引での販売価格について合意することにより、公共の利益に反して、我が国における建材製品製造業者向け特定カラー鋼板のひも付き取引の販売分野における競争を実質的に制限していた。
   

7社のうち、大洋製鋼は2002年10月に日鉄住金鋼板の製造子会社となり、2004年4月に日鉄住金鋼板と合併した。
住友金属建材は2006年12月に日鉄鋼板と合併、日鉄住金鋼板になった。
NKK鋼板は2004年4月にJFE鋼板と合併した。

このため、現在存続するのは4社で、このうち、JFE鋼板は課徴金減免制度を利用し、公取委に自主申告したため、排除命令と課徴金(全額)を免除された。

日鉄住金鋼板と淀川製鋼所も30%免除された。

ーーー

本件に関しては公取委は2008年11月11日に、日鉄住金鋼板、日新製鋼、淀川製鋼所の3社を検事総長に告発している。

更に12月8日には各社の専務、執行役員、担当部長ら(いずれも当時)6人が起訴され、東京地裁で公判中。検察側は懲役1年〜10月を求刑している。

付記

東京地裁(半田靖史裁判長)は9月15日、3社の当時の担当役員や幹部ら6人に、懲役 1年〜10カ月の有罪(いずれも執行猶予3年)とした。
会社に対しては、日新製鋼と淀川製鋼所が各1億8千万円、日鉄住金鋼板が1億6千万円の罰金(求刑はいずれも罰金2億円)となった。

半田裁判長は「鋼板の原材料価格の高騰で製品価格も引き上げの必要に迫られる中、単独で値上げをするとシェアが減るため、共同値上げを図った」、「別のカルテルで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた後も、食事会を開くなどの方法で価格調整を繰り返していた。価格カルテルの根は深く、被告会社内の法令順守の意識も低い」と非難した。

ーーー

鉄鋼業界はこの数年間に何度も独禁法違反で摘発されている。

・2005年3月11日 冷間圧延ステンレス鋼板の製造販売業者に対する課徴金納付命令

  課徴金  
日新製鋼  1,607,520千円  
新日本製鉄  1,284,690 2003/10/1付けで
新日鉄住金ステンレス
住友金属工業   977,160
日本冶金工業  1,107,590  
日本金属工業  1,035,430  
JFEスチール     764,330  
合   計  6,776,720  

・2007年12月4日 東京瓦斯、大阪瓦斯が発注するガス導管工事の入札参加業者に対する課徴金納付命令

  課徴金
東京瓦斯
高圧ガス導管
大阪瓦斯
中圧ガス導管
合計
住友金属パイプエンジ  252,000千円   20,010千円  272,010千円
新日本製鉄  156,870   89,530  246,400
JFEエンジニアリング   ー  182,830  182,830
住友金属工業   ー   37,640   37,640
合計  408,870  330,010  738,880

・2008年6月4日 鋼管杭及び鋼矢板の製造販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令

  排除措置 課徴金
特定
鋼管杭
特定
鋼矢板
特定
鋼管杭
特定
鋼矢板
合計
JFEスチール  ○  ○   710.100千円   426.680千円  1,136,780千円
新日本製鉄  ー  ー   345,540   334,830   680,370
クボタ  ○ 対象外   212,910  対象外   212,910
住友金属工業  ー  ー    ー    ー    ー
合計      1,268,550   761,510  2,030,060

改正独禁法は2006年1月から施行となった。
溶融亜鉛めっき鋼板については、その直後の同年4月ごろ、4社は小口顧客向けの亜鉛めっき鋼板を約10%値上げすることを決め、7月出荷分から実施している。

2008年11月12日付けの日本経済新聞は社説で、「目に余るカルテル、鉄鋼業界は猛省を」とし、上記の過去の例も挙げ、次のように述べている。

違法行為に対する処分を強化した改正独禁法の施行後のカルテルであり、悪質極まりない。
消費者やユーザー企業の負担を重くし、日本の国際競争力をそいでいる事実に罪の意識はないのだろうか。カルテル・談合を早くやめるよう鉄鋼業界に猛省を求めたい。

改正法の精神を全く理解しない違反で刑事告発は当然である。

鉄鋼業界の独禁法違反は目に余る。
昔からのカルテル・談合体質を変えられないとしたら、事態は深刻である。

 


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