ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/


2008/1/3 速報 NY原油 史上初めて100$

1月2日のニューヨーク商業取引所の原油市場は、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格が一時、1バレル 100ドルをつけ、史上初めて100ドルの大台に乗った。

正午すぎ(日本時間 3日午前2時すぎ)に 100ドルをつけた。
終値は 99.62ドルで、終値として史上最高。

2007年12月31日の終値は 95.98ドルだった。

これまでの最高は、2007年11月20日の99.29ドル(終値は11月23日の98.18ドル)。

付記

1月3日も一時 100.09ドルと最高値を更新、終値は99.18ドルとなった。
1月4日は需要減予測で
終値 97.91$/bbl にダウン

1月4日の東京市場オープンスペックナフサ 終値 887ドルで、東京市場ドバイ原油 終値は92.40$/bbl で、いずれも過去最高となった。

   最新グラフは http://www.knak.jp/index.html


2008/1/4 中国、新企業所得税法施行

「中華人民共和国企業所得税法」、「中華人民共和国企業所得税法実施条例」が200811日から施行された。

    2006/12/28 中国、法人所得税率を統一、一律25%へ 

新企業所得税法は2007年3月16日に第10回全人代で可決承認され、同日公布された。

旧企業所得税法では原則税率は33%だが、外国企業は以下の通り優遇税率が適用され、かつ、2免3減制度で、黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分になるという恩典があった。

  一般 輸出比率7割超
の企業など
中央指定の開発区  15%  10%
地方指定の開発区  24%  12%
 * 黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分

 

2008年1月1日からは国内外企業に対する所得税率が一律25%に統一される。
輸出型企業への半減政策は取り消しとなり、生産型企業の再投資税還付政策も取り消しとなる。

また、公布日(2007年3月16日)付けで2免3減優遇を規定した旧税法が廃止され、同日以降に設立される企業への2免3減は廃止となる。

従来恩典を受けていた進出企業には、以下の過渡的措置が取られる。
(国務院 「企業所得税法経過優遇政策表」2007/12/29 
   
http://www.gov.cn/zwgk/2007-12/29/content_847112.htm )

1)税率

  2007316日以前に工商登記を完了・設立した企業について、優遇税率は5年間にわたり調整される。  
  但し、
輸出型企業への半減政策は取り消される。

  優遇税率15%(及び10%)の企業は、
      
2008年 18%
      
2009年 20%
      
2010年 22%
      
2011年 24%
      
2012年 25%となる。

  優遇税率24%(及び12%)の企業は2008年から25%となる。

2)2免3減
  (黒字化から2年間は免税、その後3年間は税率が半分になるという恩典)

  2007316日以前に工商登記を完了・設立した企業は、引き続き、この恩典を受けられる。

  まだ利益が出ていない企業については5年を限度にこの恩典を受けられる。
  5年間利益がなければ、恩典は消える。

 

また、新税法では、中国税務機関に移転価格問題に対処できる以下の権限が付与された。

  ・親会社との取引に関する正確な関連資料請求権限
  ・その取引を調査する権限
  ・虚偽の報告をした場合、納税額を決定する権限
  ・利息を含め所得税を追徴する権限

 

参考資料  中国の外資優遇税制の新動向 (唐山市日本事務所 2007/4/4) 
         
 http://www.e-tangshan.cn/jyouhou/zhongguoxinsuodeshuifa070411.pdf


2008/1/5 アラビア石油、カフジ撤退

アラビア石油は1月4日、クウェート・カフジ油田の操業から撤退した。カフジ油田は日本企業にとって戦後初の自主開発油田だったが、半世紀に及ぶ元祖「日の丸油田」の役割を終える。

アラビア石油はサウジとクウェートの旧中立地帯で、1957年に(前身の日本輸出石油が)サウジの採掘権を、1958年にクウェートの採掘権を取得、1960年1月にカフジ油田を発見して 1961年2月に生産を開始した。1963年11月にはフート油田を発見した。

アラビア石油はここで日本の石油消費量の5%に相当する日量27万バレルを生産して日本に持ち込み、エネルギーの安定調達に大きく貢献してきた。
(原油累計生産量は約39億バーレルに達し、その内、約28億バーレルを日本向けに供給)

しかし政府の全面的な後押しを受けて臨んだサウジとの権益更新交渉に失敗して2000年2月にサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。

その後はカフジの操業は両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、今回、この契約の更新が出来なかった。

クウェート石油公社との間では2023年1月まで、最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェート原油の売買に関する取り決めを結んでおり、これは今後も継続する。
また、同社では両国政府の期待に沿って、クウェート国内において引続き事業を遂行する方策につき、クウェート政府当局との間で協議を継続している。

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立地

1922年12月に結ばれた国境協約(ウカイル協定)で、中立地帯が設定された。土地を両国で分割せず、双方が平等に半分ずつの権利を持つというもので、双方の遊牧民は自由に出入りできるとされ、両国が行政義務を果たすこととなった。

しかし、弊害が大きいので中立地帯は解消されることになり、1970年に南北に分割された。
但し、石油など天然資源の利権は引き続き双
方で平等に配分した。

2000年になって、サウジアラビアとクウェートは旧中立地帯の石油利権区域についても両国で境界線を定めて分割した。

  中立地帯地図は http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/zatsu/churitsu.html

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アラビア石油は “アラビア太郎” と呼ばれた山下太郎により設立された。

山下太郎は戦前の満州に進出、南満州鉄道の社宅建設などにより巨万の富を手にし、“満州太郎”の異名を得た。

1956年、「日本輸出石油株式会社」を設立し、石油の加工貿易を志した。
丁度、サウジが石油開発利権の分散政策を採ることを決め、未開発地域開発に日本の進出を求めていることを知り、サウジに飛んで交渉開始の覚書を交わし、帰国して財界を説得した。
1957年6月に政府が油田開発の閣議決定を行い、山下の事業を全面支援することとした。
1958年2月に電力、鉄鋼、商社など40社が参加し、アラビア石油が設立された。

メジャーが権利を押さえていない場所はサウジとクウェートの中立地帯の海底油田だけであった。
利権交渉は難航したが、1957年12月に協定を締結した。

引き続き、クウェートとの交渉を行ない、メジャーや独立系石油会社との競合となったが、1958年5月に契約を締結した。

  サウジ クウェート
探鉱期間の鉱区レンタル料 年額 150万ドル(540百万円) 年額 150万ドル(540百万円)
商業量発見後の年間最低支払額 250万ドル(900百万円) 250万ドル(900百万円)
利益配分率  サウジ側 56% クウェート側 57%
* それまでは利益分配率は50%が慣例であった。

アラビア石油の資本金は35億円しかなく(1959年に半額増資で52.5億円)、両国へのレンタル料その他を払うと、試掘井は1本しか認められなかった。
(メジャーでさえも、油を掘り当てる確率は100本掘ってわずか3本なのに)

1959年7月に試掘が開始されたが、8月に暴噴が発生、火災が10日間続き、ダイナマイト爆破で消火した。

修理費は保険でカバーされたが、資金が切れた。このため、取締役会で100億円への増資決議を行い、議事録を担保に日本興業銀行から35億円のつなぎ融資を取り付けた。

燃えた掘削船を修理し、11月に試掘を再開した。

1960年1月、掘削に成功、カフジ油田と命名された。

1961年3月、第一船 鵜戸丸に22,958kl の原油が積み出され、日本鉱業・水島製油所に送られた。

その後、1963年11月にフート油田が発見された。

更に、1967年2月にはルル油田、11月にはドラ・ガス田が発見されたが、これらはイランとの国境問題などで操業に至っていない。

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトXI 夢 遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」

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2000年2月に40年の期限が切れ、サウジの利権協定が終了した。

サウジ政府は1990年代から、カフジ油田の利権は例外的な外国への特別扱いとし、よほどの日本側の見返りがなければ、延長を認めるわけにはいかないと、繰り返しアラビア石油に示唆していた。

サウジ政府は利権延長の条件として、日本側の資金提供による総額 2,000億円の鉱山鉄道を敷設するよう要求した。
アラビア石油が期限切れの際の設備接収リスクを恐れて維持・開発投資を手控えてきたため、原油の生産コストが高く、その分だけサウジ側が獲得できる利益が損なわれるので、利権を約30年延長するなら、その間の減収分を鉄道建設を通じて補償してほしい、というものである。

しかし、日本側は鉄道建設は採算性が見込めないとして拒否し、交渉は決裂した。

利権協定の期限は当初から決まっており、それに対して手を打ってこなかった後継首脳(天下り官僚)に対する批判がある。
  
アラビア石油破綻事件の深層  http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/fujiwara/article/zaikai0104.htm

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サウジの利権協定終了後は、アラビア石油はクウェート政府との利権協定に基づきクウェート側の権益を代表するオペレーターとして、サウジ側の権益を代表する Aramco Gulf Operations との共同操業を行った。

並行して、2003年1月4日に終了するクウェート政府との利権協定以降の同国との新たな関係構築に向けて、同国政府と約2年間にわたり協議を重ねた。

1962年に制定された現行のクウェート憲法は外資への所有権付与を禁止しているため、アラビア石油は油田を直接所有するのではなく、操業権を維持する方向で交渉を進めたが、クウェート議会が操業権も憲法違反との解釈を示した。

この結果、油田で産出する原油と生産設備の所有権は2003年1月に失うが、クウェート政府から操業を受託する契約を結ぶこととなり、産出した原油の大半も同国から仕入れる形で日本へ輸入できることとなった。

2003年1月5日以降、カフジ操業はKuwait Gulf Oil と Aramco Gulf Operations のカフジ共同石油操業機構による操業へ移行
     
  アラビア石油とクウェート側の契約 
  技術サービス契約(5年間、双方の合意により、さらに5年間の更新を重ねることが可能)
    Kuwait Gulf Oilへの人員派遣による広範な技術、操業管理業務の提供、教育訓練等の諸サービスに関する取り決め
     
  原油売買契約(2003年1月5日から20年間)
    最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェイト原油の売買
     
  融資契約
    Kuwait Gulf Oil の分割地帯沖合操業に要する投資資金の融資
     

アラビア石油は5年間で切れる同契約の更新に向け交渉を進めてきた。

しかしながら、操業経験を積んだクウェートは、人件費の高い約50人のアラビア石油社員を自国技術者に置き換えた方が得策と判断、今回の打ち切りとなった。

これで「日の丸油田」に幕が降りることとなった。

ーーー

アラビア石油と富士石油は2003年1月31日に、株式移転により完全親会社 AOC ホールディングスを設立した。

アラビア石油では現在、中国南シナ海およびノルウェー領北海において石油の開発・生産事業を行っている。

  ・新華南石油開発株式会社(珠江口沖プロジェクト)

設立:1985年12月12日
出資:アラビア石油 83.7/富士石油 0.6%)

新南海石油開発(石油資源開発 82%出資)および日鉱珠江口石油開発(ジャパンエナジー95%出資)との共同事業により発見した陸豊13-1油田(権益30%)において、1993年10月より原油の生産を開始し、現在、日量11千バーレルの水準で生産を行っている。

付記 2009年2月22日に生産期限

  ・Norske AEDC AS (ノルウェー領北海プロジェクト)

設立:1988年3月28日
出資:アラビア石油 100%

1990年6月より原油の生産を開始したギダ油田(権益比率5%、オペレーターはTalisman)において、現在、日量14千バーレルの水準で生産を行っている。

このほか、エジプトのスエズ湾で2件の開発を行なっている。

  ・ノースウェスト・オクトーバー鉱区 (100%権益)
     2006年9月に試掘に成功、開発計画をエジプト石油公社と協議中。

  ・サウス・ゼイト・ベイ鉱区
     2007年10月、スイスのALEXOILから90%の権益を取得することにつきエジプト政府承認取得
     試掘第1号井(陸上)掘削中


2008/1/7 韓国公正取引委員会、LDPEカルテルで6社に課徴金

韓国の公正取引委員会は2007年12月25日、LDPE の価格で11年間にわたり談合を繰り返していたとして、メーカー6社に合計541億7,500万ウォン(約65億8,400万円)の課徴金を科したと発表した。

公取委によると、湖南石油化学
を加えた7社は1994年から2005年にかけ、社長、営業本部長、営業チーム長など職位別の会合を定期的に開き、LDPE とLLDPE の価格と出荷量に関する談合を行っていた。11年間の7社の売上高は5兆616億ウォン(約6150億円)であった。

ハンファ石油化学、LG化学、サムスン綜合化学、サムスントタル、シーテック、SKエナジーの6社。
このうち、ハンファ石油化学、サムスントタル、SKエナジーの3社は検察に告発された。

談合に加わったが、談合事実を自主申告した湖南石油化学は課徴金と告発を免れた。
LG化学は2番目に自主申告したことから、課徴金の一部が減免され、告発対象から外れた。
また、サムスン綜合化学とシーテックは刑事訴訟法上の公訴時効(3年)前に事業譲渡しているため、告発されなかった。

シーテックは、旧現代石油化学がLGとロッテに買収・分割された際に、用役、輸送、研究、パイロットプラントなどのコンプレックスの共通業務を行うために設立された会社で、旧現代石油化学時代の課徴金と思われる。(現代石油化学のPE、PPのブランドは「シーテック」であった。)
サムスン総合化学はサムスントータルに事業を譲渡している。

 

公取委は2007年2月に、国内石油化学会社10社が1994年から談合を通じ HDPE と PP価格を決めていたことを摘発し、是正命令を出すとともに、1,051億ウォン (134億円) の課徴金を科している。
このケースではポリミレイ(サンアロマー、バゼルが出資)のみが課徴金対象外となっている。

   2007/2/24 韓国公正取引委員会、石化メーカーを価格カルテルで摘発

 

韓国のポリオレフィンメーカーと課徴金・告発対象              能力(千トン 2006/2時点) 
立地         2007/2        2007/12
HDPE
能力
PP
能力
課徴金 告発 LDPE
能力
LLDPE
能力
課徴金 告発
Daelim Industrial(大林産業) Yeochun   380    −  ○  ○    −    −  −  −
Polymirae Companyポリミレイ Yeochun    −   615  なし  −    −    −  −  −
Korea Petrochemical Ind.(大韓油化) Ulsan   390   310  ○  ○    −    −  −  −
三星総合化学 ↓ Daesan   175   270  ○  −   100   125  ○ 時効
Samsung Total  ○  −  ○  ○
GS Caltex Oil (旧 LGカルテックス Yeochun    −   180  ○  −    −    −  −  −
LG Chem LG Chem Yeochun   310    −  ○  ○   156    −
減額
(申告)
免除
(申告)
(旧 LG Daesan Petrochemical Daesan   160   280   135    80
Hyundai Petrochemicalシーテック Daesan (売却)   ↑↓  ○  −   ↑↓   ↑↓  ○ 時効
湖南石化 Lotte Daesan Petrochemical Daesan    −   250  ○  −   110   160 免除
(申告)
免除
(申告)
Honam Petrochemical Yeochun   370   380    −    −
SK Energy(旧 SK Corporation ) Ulsan   190   340  ○  ○    −   160  ○  ○
Hyosung Corporation(暁星) Ulsan    −   268  ○  ○    −    −  −  −
Hanwha Chemical Ulsan    −    −   −  −    76    −  ○  ○
Yeochun    −    −   290   351
Total    1,975  2,893     867   876  

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付記

2007年4月に、韓国公正取引委員会は2000年3月から2003年3月までの間、タイヤ向け合成ゴムの価格カルテルを行っていたKumho Petrochemical Co. Seetec (旧現代石化)に対し,是正命令及び総額56億超ウォンの課徴金を賦課する決定を行った。
  前者のシェアが68.7%、後者のシェアが22.2%だった。

2008年6月、韓国公正取引委員会は石油化学企業8社が2000年以降、スチレンモノマー、トルエン、キシレン、エチレングリコールなど6種類の製品で価格の談合をしていたとし、総額127億ウォン(約13億2300万円)の課徴金納付命令と是正命令を下した。

会社別の課徴金の額は以下の通り。
 SKエナジー:48億3600万ウォン(約5億600万円)
 GSカルテックス:28億7200万ウォン(約3億円)
 サムスン・トータル:17億6800万ウォン(約1億8500万円)
 湖南石油化学:8億9800万ウォン(約9400万円)
 シーテック:8億4400万ウォン(約8800万円)
 大林コーポレーション:6億1900万ウォン(約6500万円)
 東部ハイテック:4億7100万ウォン(約4900万円)
 サムスン総合化学
3億9500万ウォン(約4100万円)


2008/1/8 アブダビの石油権益は延長か

アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国を訪問した甘利明経済産業相は1月6日、アブダビ石油公社のユセフ総裁と会談した。
総裁は「油田開発には日本企業の関与継続を求める」と述べ、2012年から順次失効するアブダビ石油など日系4社の自主開発油田の権益延長・拡大を認める方針を示唆した。

昨年12月17日、福田康夫首相は、来日中のムハンマド・アブダビ皇太子と会談したが、その席でアブダビ石油の自主開発油田の契約更新に向け、原油の安定供給について意見交換している。
また、会談後にコスモ石油や丸紅などとアブダビ側との発電などのエネルギー事業契約に関する署名式を、首相と皇太子が同席して官邸で行った。

付記

2013年2月、アブダビ首長国を訪問中の茂木経済産業相は、石油関係の同国高官と会い、2018年に期限切れとなる海上鉱区の権益更新と、2014年1月(Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operationsが持つ陸上権益が更新期限)の陸上鉱区の新規参入をそれぞれ要請した。アブダビ側は「しっかり検討したい」と応じた。

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アブダビ石油(コスモ石油63%、JX日鉱日石開発31.5%)は2012年に45年間の期限を迎えるが、2011年2月に30年更新の新利権協定を締結した。

既存のムバラスなど3油田の24千バレルに加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得する。
ヘイル油田は2017〜18年の生産開始を目指す。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

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2014年1月20日、国際石油開発帝石(INPEX)の上部ザクム油田の権益の契約期間が、15年延長されることになった。2026年3月9日までの契約が2041年12月31日まで延長されることになった。1日あたりの生産能力は全体で約55万バレルで、INPEXの取り分はその12%分の日量6万バレル以上になる。
(アブダビ国営石油:ADNOCが60%、ExxonMobilが28%)

 

アラブ首長国連邦結成(1971年)以前の1968年にアブダビ石油が石油利権を取得。その後も1970年に合同石油開発がエル・ブンドク油田に参加、1973年にジャパン石油開発が設立されアドマ鉱区の事業に参加、1996年に国際石油開発がアブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hess社から権益を取得(Inpex ABK)するなど、二国間関係は石油関係を中心に発展している。

* 石油公団解散により、国際石油開発(Inpex)がジャパン石油開発(JODCO)の親会社となった。

2005年現在、UAEは日本の原油輸入量第2位(24.5%:このうち99%はアブダビで産出)、ガス輸入量第4位(12%:ほぼ100%アブダビで産出)を占めており、わが国自主開発原油の中でUAEが占める割合は約50%(約20万B/日)。

2007年9月に、アブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社IPICが約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になることが発表されている。コスモヘの出資を機に対日輸出を拡大、日本市場への影響力を強める。
また、アブダビ政府が同国で計画する石油精製と石油化学の複合事業にコスモが出資することも検討する。

  地図 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/231/0511_out_f_ae_expansion_adco_zadco.pdf

 

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アブダビ石油

丸善石油と大協石油(現在は両社合併しコスモ石油)と日本鉱業(現 ジャパンエナジー)が1967年12月にアブダビ土侯国より海上4,416km2の石油開発利権を獲得した。
  A地域 2,810km2、B地域 1,596km2
  ロイヤリティ 12.5%
  鉱区使用料 5万ドル/年
  利権協定 45年 探鉱期間8年
  8年の探鉱期間に最低1300万ドル投資

1968年1月、3社均等でアブダビ石油を設立
   現在の株主:コスモエネルギー開発 63%、ジャパンエナジー石油開発 31.5%、
           東京電力 1.8%、関西電力 1.8%、中部電力 1.8% 

1969年9月、ムバラス1号井 出油

1973年、
ムバラス油田が生産開始。
その後、子会社のムバラス石油が1989年にウム・アル・アンバー油田、1995年にニーワット・アル・ギャラン油田で生産を開始した。
(ムバラス石油は2006年1月、アブダビ石油が吸収合併した。)

アブダビ石油が同地域で生産する原油量は2006年実績で日量約2万3,800バレルとなっている。
2012年に45年の契約期限を迎える。

付記

アブダビ石油は2011年2月、アブダビ首長国沖合で操業中の3油田の権益を30年間更新する新たな利権協定を締結した。協定には新鉱区の権益取得も盛り込まれた。

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合同石油開発

株主
コスモエネルギー開発 35%
ジャパンエナジー石油開発  35%
三井物産 20%
三井石油開発 10%

合同石油開発は、アラブ首長国連邦・カタール国両国境線上に位置するエル・ブンドク油田の利権保有者であるブンドク社の株式の1/3を所有、またブンドク油田の開発所要資金の97%(残る3%はBP)を負担しているため、これに見合う生産原油の97%を取得している。

ブンドク油田は1970年11月より商業生産を開始し、2006年3月に累計生産量2億バレルを達成した。

付記 2010/3/29

ジャパンエナジー石油開発は三井物産から10%を取得、持株比率を45%にした。

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ジャパン石油開発(JODCO)
(当初 石油公団の子会社、現在は
国際石油開発:Inpex の子会社)

石油ショックに際し、政府も財界も新たな油田を求めて奔走した。

1972年、BPからアブダビ・マリン・エリアズ(ADMA)の持つ利権の30%を780百万ドルで買収したが、1974年に国営石油会社ADNOCが参加比率を引き上げた結果、比率は12%に下がった。

当時操業していたのは下部ザクム油田、ウムシャイフ油田で、これらの権益比率は、
 JODCO 12%、ADNOC 60%、BP 14.67%、TOTAL 13.33%

JODCOでは未開発の上部ザクム油田(既存の下部ザクム油田の上層)の開発を要請したが、先ずウムアダルク油田開発を指示された。
実際はメジャーも投げ出した油田で、1985年に生産を開始したが、油と一緒に水が噴き出し始めた。
シミュレーションで圧力を調整して水を止めることに成功、その後、水平掘りを実施して生産量を上げた。

その後、上部ザクム油田(可採埋蔵量世界4位)、サター油田の掘削にも成功した。

ウムアダルク、上部ザクムの権益比率はJODCO 12%、ADNOC 88%であったが、
上部ザクムの権益については、2006年1月1日を発効日としてADNOC社の権益88%のうち28%をExxonMobil Abu Dhabi Offshore Petroleum社(EM社)に譲渡された。

  JODCO ADNOC BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムシャイフ油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムアダルク油田   12%   88%   ー   ー   ー
上部ザクム油田   12%   60%   ー   ー   28%
サター油田   40%   60%   ー   ー   ー

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトXI 夢 遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」の後半部分

付記

2014年1月20日、国際石油開発帝石(INPEX)の上部ザクム油田の権益の契約期間が、15年延長されることになった。2026年3月9日までの契約が2041年12月31日まで延長されることになった。1日あたりの生産能力は全体で約55万バレルで、INPEXの取り分はその12%分の日量 6万バレル以上になる。
他油田の延長については先送り。

ーーー

インペックスエービーケー石油

設立:1996年2月29日

出資:国際石油開発 95%、三菱商事 5%
   (当初は石油公団が40%、国際石油開発=石油公団子会社が55%)

1996年、アブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hessから権益を取得した。

 


2008/1/9 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後

2007年12月21日(金)午前11時32分頃に、茨城県神栖市の三菱化学鹿島事業所 第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。

  2007/12/24 三菱化学鹿島事業所 火災事故

ーーー

三菱化学は 12月27日、経済産業省 原子力安全・保安院および茨城県に対し、中間報告資料を提出した。
  http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2007/20071228-2.html#tmp1 

この中で、漏洩原因としては、
「直接原因」として、仕切板の抜き出し作業中に何らかの原因により空気駆動弁(
AOVair operated valve )が開いて、クエンチオイルが流出したものと推察されるとし、
「間接原因」として、
AOVの誤作動を回避するため、バルブ施錠等の安全措置を講ずるべきであったが、作業指示書等による明確な手順が示されていなかったとしている。

尚、着火原因については、
@自然発火
A高温部接触
B静電気着火
の可能性が考えられるが、詳細について調査・検討中であるとしている。

 

付記 本報告に対してMETI から追加報告の指示があり、2008年1月9日、追加報告が提出された。
 
http://www.meti.go.jp/press/20080109001/M.pdf

それによると設備設置後の最初の工事(2006年2月)実施前の安全打合会で、「AOV施錠」などの安全措置を決め、工事安全指示書を作成したが、今回、メンテナンス担当による施錠の確認がされていなかったという。
メンテナンス担当と運転担当の間で、安全措置の実施に関する仕組みが明確に定められていなかったことが挙げられている。

付記 三菱化学が1月9日に出した追加報告に、過去の事故の記録が出ている。(報告書 P.19)

事故:1999年1月に第1エチレンで死亡事故(死亡1、負傷 6 )発生

状況: 
熱交換器の配管を修理するため、保温材を剥がしていたところ、配管が破裂、水蒸気が噴出し、作業員が被災した。

原因: 
工事に係わる
安全措置確認の不足により、本来閉止すべき弁の閉止操作が行なわれず、低圧系配管に超高圧蒸気の圧力が加わったため、エロージョンで減肉していた部位が破裂した。

対策:
・運転指示、作業指示に係わる管理の徹底
・作業発生時の「作業安全確認書」使用の徹底(義務付け)
「バルブ等施錠管理」の制定

ーーー

年明けの1月7日、茨城県警は三菱化学鹿島事業所と、同事業所内にあってプラントの維持・管理などを請け負っている三菱化学エンジニアリング鹿島支社を家宅捜索した。

三菱化学は中間報告のなかで、バルブの誤作動を回避するための安全対策を作業指示書などに記載していなかったことを明らかにしているが、捜査本部では、メンテナンス作業中の安全対策を怠っていた可能性があるとして、業務上過失致死容疑での立件も視野に捜査を進める。

 

また、茨城県が設置した事故調査委員会(委員長:長谷川和俊・千葉科学大教授、危機管理)の第1回会合が8日午前、同事業所で開かれた。
調査委は危険物や高圧ガスの保安、高温火災を含む特殊災害、危機管理システムなどについての専門家6人で構成され、三菱化学からの聞き取りや現地調査を実施し、事故原因や再発防止策について検討する。
施設の老朽化が進む鹿島コンビナート全体の課題についても議論するという。

会合では、作業手順について三菱化学と下請け会社の間で安全意識が共有されていたか検討する必要があるとの意見が出たという。
調査委は月に1回程度、会合を開いて3月末までに報告書をまとめたいとしている。

 

第2エチレンプラントの操業再開には、まだ時間がかかりそうだ。

三菱化学は化学各社に原料や製品の融通を要請しているが、各社工場とも高水準の稼働が続いており国内からの供給には限界があり、商社を通じて海外調達の可能性も探っている。

この結果、アジア市場で石化製品の取引価格が年明けから急騰している。
エチレン価格は昨年12月下旬に比べ 8%アップ、ブタジェンは同じく 15%アップし過去最高値を更新した。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスは1月7日、小林喜光社長の社員向けの新年挨拶の要旨を発表した。
  
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1199668375.pdf

この中で、小林社長は、三菱化学の鹿島事業所火災事故について、「事故に対する猛省と、決意新たに徹底した安全意識を」と呼びかけた。
また製品供給について、「製品の融通など他社のご協力も得ながら、お客様第一との考えであらゆる方策を考え、最大限お客様の要請にお応えするよう努力していただきたい」と述べた。

また昨年10月に新しく発足した田辺三菱製薬の薬害C型肝炎問題、本年4月1日にグループの機能材料分野の事業を包含して新発足する三菱樹脂については塩ビ管価格カルテル容疑での公取委の調査が継続していることについて触れ、「グループの社会的信頼回復に向け、誠実かつ真摯に対応」するよう、求めた。

そのうえで、三菱ケミカルホールディングスグループは極めて大きな課題を抱えており、まさに「グループ゚存亡の危機」にあり、“崖っぷちに立っている”という危機感を共有して危機を乗り切ろうと、呼びかけている。

 

同社では社長、取締役、役付執行役員、関係執行役員の役員報酬の一部を12月分から当分の間(時期は未定)返上することとした。
また、既に発表していた1月1日付人事異動のうち、一部については、事故対応に注力するため、当面の間延期した。

ーーー

付記 三菱化学はアプコ(コンパウンドメーカー)を2008年4月1日付けで吸収合併する。

薬害肝炎問題では、1月8日に肝炎救済法案が衆院を通過し、週内に成立する見通しだが、原告・弁護団は、国側と基本合意を結んで裁判上の和解を進める一方、製薬企業(田辺三菱製薬と子会社のベネシス、日本製薬)に対しては加害責任を認めた謝罪などがない限り、形式的に訴訟を続ける方針を明らかにしている。

新生 三菱ケミカルホールディングスは苦しいスタートとなった。

 

付記  2008年2月1日 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後(2)


2008/1/10 ダウのダイオキシン問題

ダウのダイオキシン対策が問題となっている。

ダウはミシガン州Midland の本社工場で、何十年にも亘って、Tittabawassee 川に工場廃水を流していたが、それにダイオキシンとフラン類が含まれていることはダウも認めている。

この結果、川水及び川の氾濫に伴う周辺地域の汚染が問題となっている。ダウのMidland 工場の上流から始まり、下流のSaginaw 川、その氾濫地域、Lake Huron Saginaw 湾にいたる地域である。

EPAは昨年6月に本件をミシガン州環境局(Michigan Department of Environmental Quality)から肩代わりした。

EPAは昨年10月に Superfund 法に基づいて、ダウに対してクリーンアップ計画の提案を60日以内にするよう期限を切った。12月10日にダウは計画を提出し、EPAは残る問題を決着し最終合意を得るべく、期間を30日間延長した。
ダウは1月4日に修正案を出す予定であった。

EPAは1月4日、汚染のクリーンアップに関して、これまでダウとの間で続けてきた話し合いを取り止めると発表した。
クリーンアップをやめるのではなく、効果のない話し合いをやめるだけだとしている。詳細は秘密保持契約があるため、明らかにされていない。
EPAとしては、いろいろなオプションがあり、今後どうするか考えるとしている。

ダウ側はEPAの行動に対し驚きと失望を表明した。ダウとしてはEPAのガイドラインに沿ってクリーンアップを始めるべく、膨大な人的・金銭的資源の投入を用意していたとしている。

州の環境局は引き続きダウと話し合いを続ける。

昨年12月にはEPAの秘密メモが間違って流出した。
メモでは、ダウがクリーンアップをさせようとする州の努力を邪魔し、データや資料を隠し、公開すべき資料を秘密扱いとし、交渉を州の環境局とではなく州知事とするよう主張したり、ダイオキシンの危険性について住民をミスリードしてきたとし、政治家がダウのために介入し基準を弱めようとしたとしている。

これに対してダウでは、メモにあるのは昔の話しであり、最近では川の特にダイオキシンの濃度の高い部分(hot spot) をクリーンアップしたり、洪水のあった場所で高いレベルのダイオキシンが見つかった300戸の土地をクリーンアップするなど、努力をしていると述べた。

確かに Hot spot は緊急措置としてクリーンアップされたが、1980年代の初めに議論が起こって以来、Saginaw Bay に至る50マイルの川及び洪水地のクリーンアップは未だに着手されておらず、住民の不安と、ダウ及び州当局に対する不満は高まっている。


2008/1/11  重慶ケミカルパークのメタノール事業

重慶ケミカルパークで2007年12月に、一つのメタノール計画が商業生産開始の式典を、他の一つの計画(三菱ガス化学が参加)が定礎式を執り行った。

いずれも原料は同地の天然ガス田からの天然ガスである。

国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表した。
限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙い、2007年8月30日以降、天然ガスを原料とするメタノールの生産を禁止した。
   2007/9/7
 四川−上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始 後半部分

この結果、前者の第二期計画は実現不可能となった。
三菱ガス化学の計画は、8月30日以前に事業実施の承認を得ており、かつ、それまでに天然ガスの供給契約を締結しているため、禁止の対象外となる。おそらく、中国での最後の天然ガス原料のメタノールプラントとなる。

1)KingBoard Chemical Holdings (建滔化工集団)

香港のラミネート会社 KingBoard Chemical は12月17日、重慶ケミカルパークでメタノール工場の商業生産開始の式典を行なった。
2005年の第2四半期に建設を開始し、本年8月に完成した。

能力は45万トンで、運営は KingBoard 天然ガス化学 (重慶) 社が担当する。
原料の天然ガスは同地の天然ガス田から供給を受ける。
製品メタノールは揚子江の水運を利用して中国東部の市場に輸送する。

KingBoard では当初、第一期の完成後、市場の状況にもよるが、能力を135万トンまで拡大することを検討していた。
しかし、上記の規制により、増設は不可能となった。

ーーー

KingBoard Chemical Holdings (建滔化工集団)は1998年に香港で設立されたラミネートを製造する会社で、中国各地に工場をつくるとともに、ラミネート原料に遡及してきた。

メタノールについては、KingBoardは重慶計画に先立ち、中国海洋石油との合弁会社 CNOOC-KBChemical (CNOOC が60%、KingBoard が40%)を設立して、 2006年9月から海南島の東方市で 60万トン/年の天然ガスベースのメタノールを生産している。
184百万ドルを投じたもので、ルルギ技術を採用、CNOOCの東方市近辺のガス田からの天然ガスを原料とする。

KingBoard はまた、2007年3月に河北省Xingtai 市の内丘で100万トンの固焦炉コークス、10万トンのメタノール、12千トンのベンゼンの建設を開始した。第一期と同じ能力で、完成すればメタノール能力は合計20万トンとなる。

ここでは更に、河北省に本拠を置く上場会社、Jinniu (金牛)Energy Resources との合弁で大規模メタノール事業を計画している。
450百万ドルを投じて、年産180万トンの石炭ベースのメタノールを生産するもので、KingBoard が60%、金牛が40%を出資する。
現在FS中で、完成時期は未定。
これに加え、原料の石炭を確保するため、金牛51%、KingBoard 49%出資のJVの石炭会社を設立する予定。

同社は山西省呂梁でも、コークス180万トン、メタノール20万トンの石炭化学プロジェクトをもっている。

NDRC は20067月に通達を出し、小規模石炭化学を禁止した。(乱立防止)
年産300
万トン未満の石炭液化、100万トン未満の coal-to-methanol DMT、60万トン未満のcoal-to-olefin は禁止された。

上記のKingBoard 河北省Xingtai 市(メタノール10万トン)、山西省呂梁(メタノール20万トン)は、いずれも、禁止対象の石炭液化によるメタノール生産ではなく、コークス炉のオフガスを原料とするため、規制から外れる。

ーーー

2)三菱ガス化学

三菱ガス化学と重慶化医集団の合弁のメタノール計画の定礎式が2007年12月26日、副市長その他の出席のもと、重慶市の重慶ケミカルパークで行なわれた。

投資額は21億人民元(約290百万ドル)で、公称能力は年産85万トンだが、重慶化医集団によると、実能力は100万トンになるという。
本年上半期に着工し、2010年の下半期のスタートを目指す。

2004年8月に国家発展改革委員会(NDRC)から詳細事業化調査を行う正式許可を得て、FSを続けていた。

当初の計画では、2005年上半期に三菱ガス化学 51%、重慶化医 49%出資で JV を設立し、投資額 2億ドルで、2008年建設完了を予定していた。

重慶化医集団によると、2007年7月5日に事業実施の承認を取得した。
(このため、8月30日からの天然ガス原料によるメタノール新規事業禁止から外れる)

 

注. 本件には不思議な点がある。

   この記事は重慶ケミカルパークのホームページに記載されており、式の写真も載っているので、
   式典が行なわれたことは事実である。
   しかし、三菱ガス化学側は何も発表していない。
   三菱ガス化学としては本事業をやるかどうかについて、まだ結論を出していないとしているとの情報もある。
   中国側の今回の発表も、合弁会社の社名や出資比率などを明らかにしていない。

   上記の天然ガス規制などに関連して(承認取り消しを恐れて)、中国側が実績つくりをしている可能性もある。
    

ーーー

なお、三菱ガス化学では南京市の南京ケミカルパークにメタノール誘導品の子会社を設立している。
2006年4月に建設を開始し、昨年9月に完成、11月から試運転に入っている。

社名: 菱天(南京)精細化工 Lingtian (Nanjing) Fine Chemical Company Ltd.
出資:三菱ガス化学 85.1%
    伊藤忠ケミカルフロンティア 10.0%
    伊藤忠商事 4.9%

製品:ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド(40千トン)及びジメチルアセトアミド(10千トン)

   
第二期計画として、トリメチロールプロパン

ーーー

参考   2007/10/2 内蒙古で100万トンのメタノール工場竣工 


2008/1/12 中国、第2回「加工貿易禁止商品目録」 589件を発表

中国商務部と関税総署は2007年12月24日、共同で第2回目の「加工貿易禁止商品目録」、合計589件(関税コードベース)の商品を発表した。この規定は2008年1月21日から実施される。
  目録(中国語) 
http://www.mofcom.gov.cn/accessory/200712/1198545071384.xls

商務部では 「今回の加工貿易禁止商品目録は、中国の輸出商品の構造を適正化するため、付加価値の低い商品や、加工技術レベルの低い商品の輸出を抑制し、加工貿易をレベルアップさせ、貿易拡大方式への転換を目的としている」とした。

主に動物製品をはじめ、植物製品、動植物油脂、食品、飲料、原鉱製品、化学製品、プラスチックおよびプラスチック製品、鋼鉄および鋼鉄製品、アルミニウム製品にまで及んでいる。
また、皮革製品や動物の毛およびそれを使った織物、靴・ブーツなど、いくつかの絶滅に瀕している動植物を使った製品も禁止目録にリストアップされている。

なお、2007年4月に発表した第1回目の「加工貿易禁止商品目録」では、合計1,138 の商品が加工貿易禁止対象として挙げられている。
(2005年と2006年に公布・施行された加工貿易禁止目録を整理統合したもので、以前の目録は廃止される。)

  目録(中国語) http://www.mofcom.gov.cn/accessory/200704/1175767532591.xls

ーーー

加工貿易とは、中国国内に登記された製造業による、海外顧客・関連会社などから請け負った製品製造事業(委託加工生産)に伴う、原材料・部品・消耗品・設備などの輸入と製品の輸出業務のことを指す。

進料加工と来料加工がある。

進料加工は、対外貿易権を有する中国内登記企業が、原材料や部品等を有償輸入し、代金を外貨で対外支払いする。
加工後の製品、半製品を国外に輸出し、輸出代金を受領する。
外資系企業が行う加工貿易には、この進料加工がほとんど。

来料加工は、原材料や部品等を無償輸入し、加工生産後の製品を、すべて加工契約相手先へ輸出するという加工貿易形式のことで、部品・原材料の無償供給者と製品の輸出相手先は、海外に所在する同一企業であるため、対口貿易と呼ばれる。

加工貿易契約締結後、加工企業は所轄税関へ加工契約内容を登録し、登記手冊を取得する。
この登記手冊に登録・記載された資材・部品、及び製品リストの範囲内(品目・数量)で、
免税にて輸出入することが出来る。

ーーー

商務部が述べているように、中国政府は付加価値の低い商品や、加工技術レベルの低い商品の輸出を抑制し、加工貿易をレベルアップさせ、貿易拡大方式への転換を目的としている。

中国政府はまた、付加価値が高い重化学工業へと産業構造を転換するため、外資系企業に対する税制優遇を削減し、環境規制を強化するなどしている。

この結果、中国の低賃金を活用し、繊維など軽工業に従事する海外企業は苦しくなっている。

 

朝鮮日報によると、中国に進出した韓国企業が経営悪化で賃金や税金を支払わずに無断撤退し、現地でトラブルとなるケースが続出しているという。

2007年11月には上海市崇明県の和仁紡織で韓国人社員が現地労働者に監禁される事態となったほか、山東省青島市では従業員の給与を支払わないままに夜逃げした韓国系中小企業があったという。

このため、韓国の産業資源部は、外交通商部、労働部、法務部、大韓商工会議所と共同で対策チームを結成し、政府レベルで実態調査を進めることとなった。対策チームは1月21日から中国の山東省青島市、広東省広州市など韓国企業の進出が集中する地域を対象に現地調査を実施する。


2008/1/14  中国、6月1日からレジ袋を有料化 

国務院弁公庁はこのほど、各省・自治区・直轄市の人民政府、国務院の各部・委員会、直属の各機関に向けて、「ポリエチレン製レジ袋の生産・販売・使用の制限に関する通知」を出した。

通知によると、レジ袋が「白色汚染」(白いレジ袋のゴミによる汚染)の主要因になっていることを踏まえ、各地の人民政府や部門、委員会などは今後、
極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売 ・使用を禁止するとともに、レジ袋の有料化制度を実施しなくてはならないとしている。
(極薄袋は簡単に破れ、ゴミとなって散らばるので「白色汚染」の主原因とされる。)

今年6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止することになる。

商務部はレジ袋有料化についての詳細な規則を国家発展改革委員会(NDRC)と協議している。



これとは別に、チベット自治区政府は9日、本年から、有料であっでもレジ袋を顧客に渡すのを禁止する規則を発表した。
首都のラサ市では「白色汚染」防止のため、2004年にプラスチック袋の使用を禁止している。


ーーー

人民日報は今回のレジ袋有料化について、各界の声を伝えている。

中国加工工業協会:
中国加工工業協会の李国俊・副会長は、生産段階においてレジ袋のメーカーをなくすことは現実的に難しいため、スーパーなどでのレジ袋無料配布を禁止することは、レジ袋の削減にとって有効な手段だと述べた。
李副会長によると、プラスチック加工品メーカーは全国に約6万社あり、そのうち極薄ポリ袋メーカーのほとんどは投資規模が極めて小さい。数千元のポリ袋生産機が1台あればすぐに開業することが可能で、原料はすべて回収されたゴミ袋。そのため工商部門に登録していない零細企業も多く、極薄ポリ袋メーカーの会社規模や業界に占める割合を正確に把握することには困難があり、生産段階で超薄手ポリ袋を根絶することは難しいという。

中国消費者協会:
中国消費者協会の武高漢・副秘書長は、レジ袋有料化を支持しているばかりではなく、ペナルティーの意味もこめた高めの代金を課すべきだとも主張している。わずかなレジ袋代を徴収するだけでは十分な効果が得られないと考えているからだ。徴収されたペナルティとレジ袋コストとの差額は「環境保護事業に運用してはどうか」と提案している。

環境保護局:
北京市環境保護局の程霞・副総工程師は、「レジ袋有料化の実施によって、『白色汚染』は確実に減少するだろう。しかし、本当に100%禁止するためには、法律執行部門が管理の届きにくい一部の小さな自由市場やマーケットに対する法律執行をより厳格に実施する必要がある」と述べた。
程氏は、レジ袋の使用量の削減のほか、過剰包装の制限やゴミ収集などでも相応の措置を講じて初めて、汚染の減少が実現すると指摘した。

環境学教授:
中央民族大学生命環境学院の薛達元教授は、レジ袋有料化政策は消費者のレジ袋乱用を抑制するための極めて効果的な措置だと評価し、「売り場ではリサイクル可能な紙袋を提供することも可能だが、最も理想的なのは買い物客がマイバッグを持参することだ」と指摘した。
薛教授はまた、「国家がレジ袋有料化政策によって真の効果を得ようとするなら、具体的な料金システムを打ち出す必要がある。庶民にとって無視できない程度の価格を設定すれば、レジ袋の使用は確実に減る」とコメントした。

販売店:
フランス系のスーパー「家楽福(カルフール)」の北京市の店舗では15日から、環境保護への貢献を目的としたキャンペーンが開始され、一定額以上の買い物をした市民には不織布製のショッピングバッグがプレゼントされるという。
カルフールではキャンペーン修了後もショッピングバッグの低価格での販売を長期的に行っていく予定だ。
スウェーデン系の家具屋「宜家家具(イケア)」の中国区広報担当を務める許麗徳さんによると、イケアの北京四元橋店では2006年からレジ袋有料制を開始している。レジ袋の値段は5角(0.5元)と1元の2種類、再利用できる環境保護バッグは3.5元だ。
許さんによると、有料制を始めて間もない頃は戸惑いを見せる消費者も多かったが、市民もまもなく支持してくれるようになり、自分で袋を持ってくるのが今では消費者の習慣となったという。「有料制をはじめてからイケアのレジ袋使用量は明らかに減りました」と許さんは胸を張る。イケアの経験からみれば、レジ袋の有料化が売り上げに影響を及ぼすことはないようだ。

市民:
レジ袋の有料化について意見を求められた北京の市民の多くは、この措置に対して支持の立場を示した。
支持理由としては、「資源節約と環境保護の習慣づけに役立つ」ことや、「資源の浪費を削減し、環境への汚染を緩和することにつながる」ことなどが挙げられた。
一方、「買い物に出るときに自分で袋を持っていくことを忘れてしまうこともあるのだから、レジ袋の値段が環境保護の名のもとにあまりに高く設定されるのには納得がいかない」との意見もあった。

付記

レジ袋規制により、中国のプラスチック袋メーカー最大手が工場を閉鎖した。
河南省遂平県の華強プラスチックが2008年1月中旬に生産を停止、従業員2万人は全員解雇の見通し。
年間25万トンの生産能力があり、売上は3億500万ドル。

ーーー

 なお、オーストラリアでも環境相が2008年末までにレジ袋税課税か、全面禁止かの決定を行なう意向を示した。昨年末に政権をとった労働党は2004年以来、レジ袋禁止の政策を主張している。

 


2008/1/15 資源大国 日本

独立行政法人物質・材料研究機構は1月11日、危惧されている将来の金属資源の利用に対して、「都市鉱山」(アーバン・マイニング)と呼ばれるこれまで国内に蓄積されリサイクルの対象となる金属の量を算定し、わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模になっていることを明らかにした。

  「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」 http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/pdf/press215.pdf

レアメタルやレアアースなど多様な機能を発揮する金属元素は枯渇性資源と呼ばれ、資源リスクは著しく増大している。
これに対し、「減量」、「代替」の重要性が指摘され、「希少資源・元素戦略」の研究プロジェクトが2007年から動き出している。
今回は、資源リスクを軽減させる、もうひとつの有力候補であるリサイクルの可能性を定量的に表した。

計算には貿易統計が用いられるが、産業連関表を用いて、部品や製品を通じて輸出される素材の割合を推定し、その割合を、工業統計から得られる部品などへの部材需要に掛け合わせることで、製品としての海外流出量を差し引いて計算した。

計算結果は以下の通り。

金属 世界の年間消費(A)
        (トン)
世界の埋蔵量(B)
       (トン)
わが国の
都市鉱山蓄積(C)
      (トン)
(C/B)
  (%)
(C/A) 埋蔵量
国別順位
 
アルミニウム Al     177,000,000  25,000,000,000     60,000,000   0.24   0.3   12  
アンチモン Sb        112,000      1,800,000       340,000  19.13   3.1   3  
クロム  Cr      20,000,000    810,000,000     16,000,000   2.08   0.8   4  
コバルト Co        57,500      7,000,000       130,000   1.87   2.3   6  
銅 Cu      15,300,000    480,000,000     38,000,000   8.06   2.5   2 @チリ
金 Au         2,500        42,000        6,800  16.36   2.7   @  
インジウム In          450        2,800        1,700  61.05   3.8   @  
鉄  Fe     858,000,000  79,000,000,000   1,200,000,000   1.62   1.5   11  
鉛 Pb      3,300,000     57,000,000      5,600,000   9.85   1.7   @  
リチウム Li        21,100      4,100,000       150,000   3.83   7.4   6  
モリブデン Mo       179,000      8,600,000       230,000   2.69   1.3   6  
ニッケル Ni      1,550,000     64,000,000      1,700,000   2.70   1.1   9  
白金 Pt          445       71,000        2,500   3.59   5.7   3 @南ア Aロシア
レニウム Re       123,000     88,000,000       300,000   0.35   2.5   6  
銀 Ag        19,500       270,000       60,000   22.42   3.1   @  
タンタル Ta         1,290        43,000        4,400   10.41   3.5   3 @豪 Aタイ
スズ Sn       273,000      6,100,000       660,000   10.85   2.4   5  
タングステン W        73,300      2,900,000        57,000   1.97   0.8   5  
バナジウム V        62,400     13,000,000       140,000   1.08   2.2   4  
亜鉛  Zn      10,000,000    220,000,000     13,000,000   6.36   1.4   6  

注 (A)、(B)は米国鉱山局 2006年データ

電子部品などに多用され今後世界的な需要増と供給リスクが予想される金、銀が、それぞれ、16%、22%と、世界の現有埋蔵量に比べても大きな影響を与える規模の都市鉱山が国内に存在している。
おなじく電子部品などに用いられるタンタルTaやスズSnも世界の現有埋蔵量の1割を超える蓄積量となっている。
なお、同じく比率の高いアンチモン Sbはプラスチックの難燃助剤として用いられる元素である。
また透明電極としてディスプレイや太陽光発電に用いられるインジウム In の比率が極めて大きいのも特徴的である。

多くの金属について、世界の2〜3年相当の消費量に匹敵する蓄積がわが国の都市鉱山にはある。
特に、電池材料として期待されているリチウムLi 、触媒や燃料電池電極として不可欠とされる白金Ptでの蓄積量が大きい。

しかしながら、現状ではこのような国内の都市鉱山資源が、使用済製品の廃棄物処理で、本来得られる価値よりも安価に放出されている。

物質・材料研究機構では、都市資源をある程度金属を取り出しやすくした、天然資源で言う「精鉱」のようなかたちで付加価値をつけた取引にすべきであると考えられるとし、そのような「都市鉱山」からの「都市鉱石づくり」とでも呼べるようなシステムを今後提案していくとしている。


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