2026/6/29 米最高裁、Monsantoの 除草剤Roundup
の裁判でMonsantoに有利な判決
米最高裁は6月25日、Bayerの子会社Monsantoの グリホサート系 除草剤
Roundup の裁判でMonsantoに有利な判決を下した。
これまで多数の州での多数の裁判でMonsantoが敗訴していた。
多数の原告は個人で、庭などの除草のために長年にわたりRoundupを使用し、癌になったとして訴えている。
カリフォルニア州などでは、発癌性の恐れのある薬剤のラベルには「発癌注意」の表示をすることを義務付けている。
EPAはRoundupの審査で発癌性のないことを確認し、承認した。このため、Roundupのラベルには発癌性について記載していない。 Bayer
はこれが理由で多数の訴訟で敗訴となった。
Bayer
(Monsanto) は、@ Roundupに発癌性はないこと、A 州の主張のように「発癌性のおそれあり」とラベルに書くと法律違反になる 、B
国(EPA)の規制は州の規制に優先するとしている。
米EPAと司法省は2019年12月20日、friend of the court brief (=amicus
curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。
このなかでEPAは、Roundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。
2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書
Bayerは2021年8月16日、子会社Monsantoの除草剤 Roundup が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決を不服として、米最高裁に上訴した。
Roundupの発癌性について、連邦法(FIFRA=Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act
)とカリフォルニア州法で意見が異なることから生じたもので、最高裁の判断を求めた。
(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、EPAが承認したラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮にEPAが承認した以外のことを表示すれば違法となる。
(州法) カリフォルニア州はRoundup を発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法 であるとして有罪とし、一審の裁判官も、控訴裁の裁判官もこれを認めた。
Bayerはこれを 不服として、米最高裁に上訴した。
2021/8/21 Bayer、除草剤Roundup訴訟で最高裁に上告
最高裁は2021年12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。
これに対し 当時の Biden 政権は2022年5月10日、Bayerによる上告を拒否 するよう求めた。
訟務長官は、「FIFRAでのEPAラベル承認」が州法が求める「警告がなかった」ということに優先するというBayerの主張を拒否するよう求めた。
「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。
これまでのEPA、司法省の主張(トランプ大統領時代のもの)と真逆である。
EPAが発癌性を認めていないことは発癌性がないことを示している訳ではなく、「発癌性のおそれ」をラベルに書くことが違法であるというのは、無理があ るとした。
2022/5/13
バイデン政権、Bayerによる除草剤Roundup訴訟での最高裁上告に反対
医薬品ラベルの有名判例
Wyeth v. Levine で最高裁は、 連邦当局の承認があっても、州法上の警告義務が当然に消えるわけではないとし、当時、司法省は、この理屈を農薬にもかなり広く適用していた。
最高裁は訟務長官の説明をそのまま受け入れたとみられる。
2022/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず
その後も、ラベルに「発がん性の危険」を書くか、EPAの認めたラベル(発がん性の言及なし)を変更できないという争いが続いた。
今回、DurnellーRoundup訴訟が最高裁で取り上げられた。
・原告の主張: John Durnell がRoundupを長年使用したことで非ホジキンリンパ腫を発症したと主張し、製品ラベルに発がんリスクの警告を怠った(警告義務違反)としてMonsantoを提訴した。
・陪審と控訴審: 2023年9月、ミズーリ州の陪審はDurnellの訴えを認め、125万ドルの損害賠償を命じる評決を下した。この判決は控訴審でも維持された。
・最高裁への持ち込み: Monsantoの親会社のBayerは、「EPAの規制ではグリホサートに発がん性があるとは認定されておらず、連邦法に基づくラベルの記載をしているにもかかわらず、州法に基づいて企業に警告表示を強制することは不当である」として米連邦最高裁に上告した。
Monsantoは2025年4月、Roundup訴訟全体に関わる重要な論点である「連邦法による優先適用」の適用をめぐり、連邦巡回区控訴裁判所間で判断が分かれている状況を解消するため、連邦最高裁に本件の審理を申し立てた。。
連邦最高裁判所は2026年1月16日、「DurnellーRoundup訴訟」を審理対象とすることを発表した。
Bayerは「最高裁が本件の審理を行うという決定は、規制に関する明確な指針を必要としている米国の農家にとって朗報だ。また、これは一連の訴訟を大幅に抑制するための我々の多角的な戦略における重要な一歩でもある。連邦法の定める警告表示要件を遵守した企業が、州法に基づいて処罰されるべきではないということを、米国の法制度が確立すべき時が来ている」と述べた。
世界中の主要な規制当局は、いずれもグリホサート系除草剤を安全に使用できると結論付けている。
最高裁はこれ以前に訟務長官に対して本件の見解を求めていた。これに対し、長官は2025年12月、米国政府を代表して意見書を提出し、最高裁が本件を審理して巡回区控訴裁判所間の判断の不一致を解消し、Bayerに有利な判決を下すべきだとする同社の主張に同意した。
訟務長官は意見書の中で、Durnell
訴訟の判決を支持することは、陪審員がグリホサートの安全性に関してEPAが下した専門的かつ科学的な判断を無視することを許容しかねないと主張した。「EPAは、グリホサートがヒトに対して発がん性を示す可能性は低いと繰り返し判断しており、発がん性に関する警告を含まないRoundupのラベル表示を幾度も承認してきた……FIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)の優先適用条項に適切な効力を持たせるためには、最高裁による介入が必要である」と述べている。
また、訟務長官は過去の最高裁判例を引用し、Durnell
訴訟の判決を支持した場合の結果について警告を発した。「本件のように、EPAが特定の農薬のラベルに記載すべき健康上の警告を指定している場合、製造業者は『それぞれ異なる要件を規定する(50州の)50通りのラベル表示規制』にさらされるような状況に置かれるべきではない」と記している。
今回の意見は2022年の 訟務長官の 意見と180度転換だが、背景には3つあるとされる。
米連邦最高裁判所は6月25日、Bayer傘下のMonsantoに有利な判決を下した。
判決は、除草剤Roundupの発がん性リスクについて警告を怠ったとして同社を訴えることはできないとするもの。7対2の多数決
。
Monsanto v. Durnell
訴訟の焦点となったのは、農薬の登録・販売・使用に関する権限を米環境保護庁(EPA)に与える「連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)」。裁判所は、ラウンドアップのリスクに関する警告を怠ったとする州法に基づく主張に対し、連邦法であるFIFRAが優先されるかどうかを審理した。
世界保健機関(WHO)は、Roundupの主成分であるグリホサートを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある物質」に分類している。 しかしEPAは、指示通りに使用すれば安全であり、発がん性に関する警告ラベルの表示は不要であるとの見解を示している。
多数意見を執筆した Brett
Kavanaugh 判事は、FIFRAの下では、各州が連邦機関の規定とは異なるラベル表示要件を課すことはできない と述べた。
一方、 Ketanji Brown
Jackson 判事は反対意見を執筆し、「FIFRAは農薬ラベルの規制に関する州の権限を明示的に制限 してはいるものの、その権限を完全に排除するものではない 」と主張した。この反対意見には Neil
Gorsuch 判事も同調した。
Jackson 判事は次のように述べている。「Monsantoの主張を受け入れ、警告不備を問う Durnell 氏の訴えがFIFRAによって排除される(先占される)と判断したことは、FIFRAの要件に対する誤解であり、同法の先占範囲の誤った解釈である。その結果、 Durnell 氏が被った甚大な被害に対する救済の道が断たれてしまうことになる。」
調査報道ジャーナリストの報告によると、今回の最高裁判決を受け、Monsanto社に対して同様に提起されている訴訟も、今後進展しない可能性が高いと見られている。また、製品が公衆に何らかの危険を及ぼすような事態において、企業に責任を問うこともより困難になるだろう。「私と同じようなケースが何千件もありますが、それらが法廷で争われることはもうないでしょう」と Durnell 氏は語っている。。 「それが私にとって最大の失望です。」
環境保護団体や農業関連の擁護団体は、この判決が当該除草剤のリスクに関する科学的証拠に反するものであるとして、失望を表明した。団体「Food & Water
Watch」はこの決定を「公衆衛生にとっての惨事」と呼び、「最高裁はまたしても、人々や環境よりも大企業の側に立った」と述べている。
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その前の2026年2月17日、BayerはRoundup関連の現在および将来の請求を、長期的な請求処理プログラムを通じて解決するための、米国全土を対象とした 72億5000万ドルの クラス・アクション和解案を発表し、 ミズーリ州セントルイス市巡回裁判所に対し、この和解案の暫定承認を求める申し立てを行った。
今回のクラス・アクション和解案と、Durnell 訴訟における最高裁での審理は、同社がRoundup訴訟を大幅に抑制するために策定した多角的な戦略において、それぞれ不可欠かつ相互に補完し合う措置であるとしている。
上記の通り、連邦最高裁判所は2026年1月16日に「DurnellーRoundup訴訟」を審理対象とすることを発表しているが、 Bayerはこの結果を待たずに和解案を出した。
最高裁の判断前に和解案を提示した理由 は、主に「法的リスクのコントロール」と「経営上の不確実性の解消」にあるとみられていた。
@ 最高裁の判断は“勝てる保証”はない。
A 数千件の訴訟リスクを早期に限定したい。
巨額の陪審評決が出ているケースもある。
将来的にも新規訴訟が続く可能性がある。
和解プログラムを作れば、現在の請求と将来の請求を 長期的な枠組みで処理できる
、即ち、 損失額を「7.25億ドルでほぼ固定できる」
B 投資家・株価への配慮
C 最高裁との“二段構え戦略”
和解で大部分のリスクを処理
同時に最高裁で法的論点を争う
という 保険付き戦略 を取っ
たもの。
最高裁で勝訴した場合、既存分は和解、将来の訴訟が減る。
敗訴した場合、既存分の和解は有効だが、将来リスクは残る。