ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
2017/11/16 大塚製薬、世界初のデジタル錠剤のFDA承認を取得
大塚製薬と米国の Proteus
Digital Health
は11月13日、世界初のデジタル錠剤「エビリファイ
マイサイト (Abilify MyCite®)」の承認を米国FDAから取得したと発表した。
大塚製薬によると、このような医薬品と医療機器を一体化した製品の承認は世界初という。
「エビリファイ マイサイト」は、
抗精神病薬のエビリファイの錠剤に摂取可能な約3mmの極小センサー
Ingestible
Event Marker sensor を組み込んだもので、同剤の適応である成人の統合失調症、双極性T型障害の躁病および混合型症状の急性期、大うつ病性障害の補助療法において使用され
る。
この錠剤を服用するとセンサーが胃内でシグナルを発し、患者の身体に貼り付けたシグナル検出器「 MYCITE
Patch 」がそれを検出する。
この検出器は、患者の服薬データだけでなく、活動状況などのデータを記録し、専用のアプリケーション「 MYCITE
APP 」を備えたスマホなどに送信する。
アプリには、睡眠や気分などを患者が入力することもできる。
これらのデータはスマートフォンなどのモバイル端末に転送され、患者の同意があれば医療従事者や介護者との情報共有も可能にな
る。
医師の処方通りに患者が薬を飲んだかどうかを第三者が確認でき、効果的な治療ができ、医療費の削減にもつながると期待される。
@ センサー入りの薬を飲む。 A 錠剤が胃に到着
B 薬が溶け、センサーが胃に残る。
C センサーが胃液に反応、身体に貼り付けた MYCITE
Patch に信号を転送。
D MYCITE Patch がスマホなどに いつ薬が飲まれたかを送信
E センサーは排泄される。
米国内の試算では、処方通りに薬を飲まなかったことで病気が悪化したり、別の治療が必要になったりして年間に計1千億ドルのコストがかかっているという。
一方、
患者の様子を遠くから監視することにもつながりかねないとの懸念があり、患者のデータ管理や利用にはより慎重さを求める声が上がる。
両社は、 このシステムにより、服薬や活動の状況を把握できることで、患者と介護者および医療者のコミュニケーションを促進し、それぞれの患者により適した治療の選択に寄与
するとしている。
米国において、まずは少数の患者の使用経験を通じ、製品の価値を確認していく としている。日本での販売は現在予定していない。
2017/11/17 TPP 11 と RCEP
米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)署名11カ国は11月11日、新協定( CPTPP
旧称 TPP 11)について大筋合意 の詳細な内容を発表した。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉参加16カ国(ASEAN
10+日・中・韓・印・豪・NZ)は11月14日、フィリピンで首脳会合を開き年内合意の先送り を決めた。
TPP
米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)署名11カ国は11月11日、新協定(TPP
11)について大筋合意の詳細な内容を発表した。
大筋合意は英文では「agreed on the core elements」である。
2015年10月のTPP閣僚声明も、政府説明は「大筋合意」であるが、この時の英文は「come to an agreement 」である。
今回は継続協議分がある。
11月9日の閣僚会議では大筋合意されたが、10日に予定されていた首脳会合での合意は、カナダが難色を示し、先送りされた。
米国と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を進めるカナダやメキシコは TPP 11に慎重で、最終合意を不安視する声がある。
一連の交渉では「凍結項目」の取り扱いが最大の焦点となった。
各国が米国に配慮し譲歩を余儀なくされた計60項目超を米国が復帰するまで「凍結」するよう要求したが、調整の結果、最終的に20項目の凍結が決まった。
このうち11項目は医薬品の開発データの保護期間など知的財産分野だった。
しかし、4項目については、凍結対象とするかどうか決めきれず、交渉を継続する。
新協定の名称は「包括的および先進的なTPP」( Comprehensive
and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership :CPTPP) に改める。
大筋合意の内容は下記の通り。
・著作権の保護期間など知的財産や投資の規定を中心に20項目の効力を凍結する。
植物由来の発明への特許
特許を与える当局の不当な遅延についての特許期間調整
生物製剤医薬品のデータ保護期間を実質8年に統一
著作権の保護期間(日本は現在50年)を米国並みの「作者の死後70年」に統一
急送貨物のうち、少額貨物の関税免除
投資家と国との紛争解決手続き(ISDS)のうち、「投資合意」と「投資許可」
その他
農産物などの輸入関税の撤廃・削減などは変更せず。
また、繊維で関税撤廃・削減の対象を厳しく制限する原産地規則に関する項目も含まれなかった。
・4項目は継続協議
マレーシア:国有企業の優遇策の制限
ブルネイ:石炭産業のサービス投資ルール
カナダ:文化保護のための国内企業優遇
ベトナム:労働の紛争処理
・ 農産物の緊急輸入制限(セーフガード)の発動基準などは発効後に見直し可能
・ 新協定は11カ国が署名後、6カ国の国内承認手続き完了してから60日後に発効
(元の協定にあった「参加国のGDP総額の85%以上」という条件は削除した。)
・ 新協定の正式名称は「包括的および先進的なTPP」
ロス米商務長官は11月14日、ワシントンでの講演で、「TPP11」に関して
、「米国という巨大市場の存在が多くの国にとってTPPに加わる動機だった」と指摘し、「最終合意は難しいだろう」との見通しを示した。
ーーー
RCEP
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉参加16カ国は11月14日、フィリピンで首脳会合を開き「年末までに重要な成果を達成すべく最大限努力する」との声明を採択した。
年内合意の先送りを確定させ、新たな合意時期は明示しなかった。経済発展の度合いごとに「特別かつ異なる待遇」を設けることや、各国の政策に配慮することも明記した。
共同声明は「現代的・包括的で、質が高く互恵的な協定を達成する」という目標を掲げた。一方で交渉は「引き続き複雑で困難な作業」であるとの認識を示し、妥結を急ぐ考えを暗に否定した。
RCEPの概要を示す付属文書も公表された。一般的な自由貿易協定(FTA)に盛り込まれる章のほかには、インドが重要視する域内の自由な人の移動を保障する「人の移動章」や、日本が重視するデータの自由な流通を促す「電子商取引章」が盛り込まれている。
ASEANの一部の国は中国と歩調を合わせ、議論を関税引き下げに絞って年内妥結に導こうとしていたとされる。
これに対し、日本はオーストラリアなどは、貿易・投資ルールを含め質の高い協定を目指した。
閣僚会合の席上、世耕弘成経済産業相が「関税に比べ、ルール部分の内容が乏しい。バランスが取れていない」と述べた。その後の討議でASEANの閣僚の1人が知的財産権の保護や貿易手続きの円滑化などルールを議論する時間が足りなかったと認め、年内妥結の機運は後退した。
2017/11/18 Trinseo、張家港工場でABSの生産開始
Bain Capital PartnersがDowのスチレン系事業を買収して設立した Trinseo(旧称
Styron )は このたび、Latexを生産している中国の張家港工場で MAGNUM™
ABSの生産を開始した。
11月21日に式典を行う。
能力については明らかにしていない。
中国で 生産されているABSと比較し、高品質の MAGNUM™
ABSを中国で製造、販売する計画の検討は2015年に開始され、2016年10月に発表された。
MAGNUM™
ABSは連続塊状重合方法で生産され、製品の安定性が高く、品質も向上する。射出成型、押出成形などのコスト低減が可能としている。
ーーー
スチレン系の大手であったDowは 2010年3月2日、 Styron
DivisionをBain Capital
Partnersに16.3億ドルで売却する契約を締結したと発表した。ポリカーボネートや合成ゴムも含まれる。
Dow は2007年にChevron PhillipsとのSM/PSの50/50JV 、Americas
Styrenicsを設立 し 、米国と南米のPS工場を拠出したが、この持分も売却対象に含まれる。
Bain Capital Partnersは買収した事業会社をとりあえず Styron
とした。
住友ダウのDow Chemical 持ち分も2010年10月に Styronに 売却され
、 「住化スタイロンポリカーボネート」と改称し た。
なおDowは、韓国のPCのJV LG Dow Polycarbonate についてはStyronへの売却ではなく、2010年10月にLG Chem
に売却している。
2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了
StyronはSMやPS 以外にも事業を展開するため、2011年末に社名をTrinseoと改称した。
TrinseoはIntrinsic (「固有の」、「本質的な」、「内在する」)から取った。
同社の製品や技術が、需要家の製品にintrinsic な役割を果たし、需要家の成功に不可欠なものになるという意味。
なお、PSの商標は従来通り Styron を使用する。
住友化学と
Trinseo は2017年1月26日、両社のポリカーボネートの50/50合弁会社「住化スタイロンポリカーボネート」について、住友化学が Trinseoの持ち株を買い取る契約を締結した。
2017年1月31日に取引完了の予定で、社名を「住化ポリカーボネート」と改称する。
今回の住友化学への売却については、Trinseoが環境に優しいタイヤに経営資源を集めることとし、住友化学に持ち掛けたとされた。
しかし、一方で中国でのABS新設を検討していたこととなる。
2017/1/31 住友化学、ポリカーボネートJVを100%子会社化
現在のTrinseoの製造拠点は下記の通り。
PS ABS SAN
PC
SM
Latex
合成ゴム
機能樹脂
USA
Midland, Michigan
〇
Dalton, GA
〇
Midland, MI
〇
〇
Brazil
Guaruja
〇
Limao
〇
台湾
新竹
〇
〇
中国
張家港
ABS
〇
香港
〇
韓国
蔚山
〇
インドネシア
Merak
〇
〇
ベルギー
Tessenderio
〇
ドイツ
Boehlen
〇
Schkopau
〇
〇
Stade
〇
Rheinmuenster
〇
オランダ
Temeuzen
〇
〇
〇
〇
フィンランド
Hamina
〇
イタリア
Livomo
〇
スウェーデン
Norrkoping
〇
合成ゴム:E-SBR、S-SBR、Lithium-Butadiene
Rubber、Nickel-Butadiene Rubber
機能樹脂:自動車用プラスチック、消費財(Electrical、Lighting、Medeical Devices、Consumer
Electronics)
2017/11/20 石炭火力全廃へ20か国と7組織が連合
英国とカナダの両政府は11月16日、ボンで開催中の第23回気候変動枠組み条約締約国会議(COP 23)で、CO2
排出量が多い石炭火力発電所からクリーンエネルギーへの移行を促す国家連合 “Powering Past Coal Alliance”
を立ち上げたと発表した。
20カ国と米国の2州、カナダの5州・市の27国・組織が参加、CO2を回収・貯留する設備がない従来型の石炭発電の速やかな全廃を目指す。
1年後のCOP 24までに参加国・組織を50に伸ばす計画。
参加国は以下の各国:
(欧州)英国、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、イタリア、オーストリア、スイス、ポルトガル、フィンランド、
(北中米)カナダ、メキシコ、コスタリカ、エルサルバドル、
(オセアニア)ニュージーランド、マーシャル諸島、フィージー、ニウエ(Niueはニュージーランドの北東の島国)
(アフリカ)アンゴラ
他の参加組織:
カナダの
アルバータ、ブリティッシュコロンビア、オンタリオ、ケベック各州とVancouver 市
米国のオレゴン、ワシントン州
*欧州の主要国では、石炭火力が盛んなドイツは参加していない。
英国の 気候変動・産業担当大臣のClaire
Perry
は、「発電方法のうちで石炭は最もダーティで最も環境汚染を引き起こすものである。石炭消費を減らすことが全ての国や州にとって重要で緊急の優先事項である。“Powering
Past Coal Alliance”
は石炭の時代が終わったことを世界に示す。英国は2025年までに石炭火力を完全に無くす。各国がこれに従うことを望む」と述べた。
また、再生可能エネルギーのコストが下がっており、石炭からの切り替えは Win-Lose
ではなく、Win-Win の状態であるとしている。
Alliance
は石炭火力を順次無くしていき、石炭火力建設の資金を制限し、低カーボンの代替電力やCCUS(カーボン回収・貯留・利用)技術を進める政策を奨励する。
ーーー
これは、米国がクリーンな石炭技術が途上国にとって実行可能なエネルギー政策であるとするのと対照的である。
日本も、「日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)」で、先進的な原子力技術の促進、高効率の石炭火力技術
(HELE) の展開などを掲げていることや、 途上国の石炭火力発電所建設を支援していることで、批判されている。
世界各国の環境NGO でつくる「気候行動ネットワーク」(CAN:Climate
Action Network)は11月9日、地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞 (Fossil of the Day
Award)」を発表したが、日本は化石賞の常連で、本年も与えられた。
「気候行動ネットワーク」は11月16日、「パリ協定」から離脱宣言した米政府に、温暖化対策に極めて後ろ向きだとして「特大化石賞」(Colossal
Fossil Award)を贈った。
米国はトランプ政権はパリ協定から離脱し、石炭火力を推進するが、 米国の123の市・9つの州・902の企業と投資家・183大学などが、「We
are still in」(われわれはパリ協定に残る)としている。
2017/11/14
日本の石炭火力支援への批判
今後、“Powering Past Coal Alliance”
に加盟する国は増加すると見られており、石炭火力発電を国内で続けるだけでなく、開発途上国に 石炭火力技術を提供する日本は、孤立し、世界から批判されることにもなりかねない。
既に、温暖化ガス削減を妨げる勢力ともみられ始めている。産業界には世界の潮流に取り残されれば国際競争上、不利になるとの懸念もある。
ーーー
“Powering Past Coal Alliance” の宣言
In 2015, the world gathered in
Paris and committed to take action to spur clean growth and avoid
catastrophic climate change.
Coal-fired power plants produce
almost 40 per cent of global electricity today, making carbon pollution
from coal a leading contributor to climate change.
The health effects of air
pollution from burning coal, including respiratory diseases and
premature deaths, impose massive costs in both human and economic terms.
Recent analysis has found that more than 800,000 people die each year
around the world from the pollution generated by burning coal.
As a result, phasing out
traditional coal power is one of the most important steps governments
can take to tackle climate change and meet our commitment to keep global
temperature increase well below 2°C, and to pursue efforts to limit it
to 1.5°C.
To meet the Paris Agreement,
analysis shows that coal phase-out is needed no
later than by 2030 in the OECD and EU28, and no later than by
2050 in the rest of the world.
The cost of generating
electricity from wind and solar have plummeted, with the result that
clean power is the low-cost option in a
growing number of jurisdictions worldwide. Global investments in new
renewable power now significantly surpass those in new coal-fired
electricity, and clean growth represents an opportunity worth trillions
of dollars.
Countries moving to low-carbon,
climate-resilient economies are already seeing environmental, economic
and human health benefits. Our coalition wants to help accelerate that
transition.
Powering Past Coal brings
together a diverse range of governments, businesses and organisations
that are united in taking action to accelerate clean growth and climate
protection through the rapid phase-out of traditional coal power. We
commit to achieve that phase-out in a sustainable and economically
inclusive way, including appropriate support for workers and
communities.
More specifically: ・Government partners commit to
phasing out
existing traditional coal power in their jurisdictions, and to a
moratorium on any new traditional coal power stations without
operational carbon capture and storage within their jurisdictions.
・Business and other
non-government partners commit to powering their
operations without coal.
・All partners commit to
supporting clean power through their policies (whether public or
corporate, as appropriate) and investments, and to restricting financing for traditional coal power without carbon capture
and storage.
To support these goals, the
partners in Powering Past Coal will work together to share real-world
examples and best practices to support the phase-out of coal, including
through climate financing, and to adopt practical initiatives to support
this transition, including developing clean energy plans and targets.
We will also encourage our
peers to join us in powering past coal to build a better world for our
kids and grandkids.
As founding partners, we will
work to grow the alliance to 50 partners by COP24, to continue the
momentum towards a safer climate, healthier people, and a clean economy.
2017/11/21 国際石油開発帝石、アブダビの上部サクム油田の能力引き上げ、権益期限延長
国際石油開発帝石(INPEX) は11月14日、アブダビの上部ザクム油田の開発・生産を行っているINPEXとアブダビ国営石油(ADNOC)、ExxonMobil
の3社が、油田の生産能力を日量100万バレルまで引き上げる計画に合意したと発表した。
2014年1月に同油田の権益期限が2041年12月31日まで延長されているが、今回の合意により、2051年12月31日まで更に10年延長された。
3社は2006年より、本油田上の人口島をベースとした革新的な開発方式と大偏距掘削技術(井戸を垂直に掘削した後、水平方向に遠くはなれたターゲットに向かって掘削)を用いて、本油田の生産能力を日量50万バレルから75万バレルに引き上げるための検討を行っている。
浅海に4つの人工島を建設し、沖合に実質的な陸上環境を構築することで、人工島に12基の掘削リグ、掘削・生産機材、オフィス・住宅施設を備えるもの。
100万バレルへの引き上げでは、人工島からの大偏距掘削技術を引き続き使用する。
ーーー
日本の原油輸入量(2015年で日量337万バレル)のうち、アブダビを主とするUAEに25%を依存し、サウジアラビア(33%)に次いで2番目に多い。
中でもアブダビ海上油田は日本が持つ油田権益の約4割を占める。
これらの油田の権益は次々と期限が到来する。
ーーー
アブダビ石油(コスモ 64.4%、JX石油開発 32.2%、関電、中電)の権益は 2012年に45年間の期限を迎えたが、新利権協定が発効した。
アブダビ石油が同国において操業中の既存3油田(ムバラス油田、ウルアルアンバー油田およびニーワットアルギャラン油田)の利権が今後30年にわたり更新されるとともに、既存3油田と同程度の生産規模が見込まれる既発見未開発の新鉱区(ヘイル油田)について、新たに30年の権益が確保された。
2009/1/23 アブダビ石油の油田権益
20年延長へ
ーーー
石油公団の子会社であったジャパン石油開発(JODCO)はADMA鉱区に権益を持つが、Inpexは2004年5月にJODCOを100%子会社とした。
同鉱区の油田の概要は下記の通り。
契約地域(鉱区)
権益比率
INPEX
ADNOC
その他
ウムシャイフ油田
12%
60%
BP
14.67%
TOTAL 13.33%
ナスル油田
ウムルル油田
下部ザクム油田
上部ザクム油田
12%
60%
ExxonMobil 28%
ウムアダルク油田
12%
(→40%)
88%
サター油田
40%
60%
このうち、上部ザクム油田は、上記の通り
2041年12月31日まで延長されているが、今回の合意により、2051年12月31日まで更に10年延長された。
ウムアダルク油田とサター油田については、世耕経済産業相が2017年1月15日、アブダビ国営石油会社(ADNOC)のCEOと会談し、両油田(合計生産量:日量約3.5万バレル)の権益期限の延長(25年間)とウムアダルク油田の権益比率増(12%→40%)
に基本合意した。
2017/1/18
アブダビ2油田の権益25年延長
問題は残る油田で、2018年3月に期限がくるが、生産コストが安く探鉱リスクもないことから、BPやTOTALが比率拡大を狙うほか、中国も新規参入を目指しており、今後、激しい国際競争が予想される。
ADNOCは8月7日、他数(more than a dozen
)の相手と交渉中であると発表した。
付記
国際協力銀行(JBIC)は2018年1月、アブダビ国営石油会社(ADNOC)に30億ドルを新たに融資することを決めた。日本が保有し、3月に期限が切れるアブダビ沖の油田権益の更新は正念場を迎えており、それを後押しする狙い。三井住友銀行、みずほ銀行、英HSBCとの協調で、JBICは21億ドル程度を負担する。
ーーー
なお、国際石油開発帝石は2015年4月27日、アブダビ首長国の陸上のADCO鉱区の5%の参加権益を取得し、 2015年1月1日からの40年間を契約期間とする利権契約を同国政府及びアブダビ国営石油(ADNOC)と締結したと発表した。
ADCO鉱区は同国陸上に位置する11の生産油田と4つの未開発油田から構成されており、本鉱区全体で日量約160万バレルの原油が生産されている世界でも有数の巨大油田群。
1)SE Hub (South East Asset)
Asab
油田
Sahil 油田
Shah 油田
Qusahwira 油田
Mender 油田 開発中、2017年生産開始予定
2)Bab Asset
3)Bu Hasa/Huwaila/BQ
Assets
Bu Hasa 油田
Huwaila 油田
Bida Al-Qemzan (BQ) 油田
4) North East Bab (NEB)
Dabbiya 油田
Rumaitha 油田
Shanayel 油田
2015/4/29
国際石油開発帝石、アブダビ首長国の陸上ADCO鉱区の権益取得
アブダビの陸上油田は1939年以降、外国の石油会社に採掘権を与えられてきた。
1971年の独立を機に、 Abu
Dhabi National Oil Company
(ADNOC)が参加し、Abu Dhabi Company for Onshore Oil
Operations (ADCO)を設立した。
当初
ADNOCの出資比率は15%であったが、1974年に60%となった。
他のメンバーは以下の通り。
BP、Shell、Exxon Mobil、Total
各9.5%、計38%
PortugalのPatex Oil and Gas 2% ( Mr.
5% と呼ばれた石油商人 Calouste Gulbenkian の権益を引き継ぐ)
これら各社の 権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。
新しく40%分の40年間の権益が外国企業に与えられることとなり、各社が応札した。
2015年1月1日付けでフランスのTotal が10%の権益を取得した。
上記の通り、 2015年4月27日 に国際石油開発帝石が5%を取得、その後、 韓国の GS
Energyも 3%を取得した。
BPは2016年12月17日、アブダビ政府とアブダビ国営石油 (ADNOC)
との間で、BPがADCOに10%の出資をすることと、ADCOが保有する陸上権益の10%を取得する契約に調印したと発表した。
見返りにアブダビ政府はBPに2% 出資する。
2016/12/28 BP、アブダビの権益取得、見返りにアブダビ政府がBPに出資
今後ADNOCは海外パートナーに割り当てられた40%の権益の残り12%分について、パートナーを探す。
2017/11/22 原電の廃炉費用引当金
日本原子力発電(原電)が、廃炉のために準備しておくべき資金を流用し、残高が大幅に不足している。11月17日付 朝日新聞が報じた。
原電では現有の3基が全て停止中。
敦賀第一は2015年に廃炉を決定した。 敦賀第二は2013年5月に直下の断層が活断層と断定された。その場合、再稼働は認められない。 原電側は活断層ではないと主張し、現在も審議中。
東海第二は再稼働審査が停滞しているが、2018年11月に40年となる。 原電は60年への延長申請を11月24日に規制委員会に申請する。
30キロ圏内に約100万人が住むが、避難計画は難航している。申請が認められるかどうか、不明。 (これまで延長申請は、関西電力の高浜@、Aと美浜Bの3基のみで、いずれも加圧水型。福島と同じ沸騰水型では初めて)
仮に認められた場合、安全対策費が1700億円超必要とされる。
(付記 他にテロ対策で1000億円程度)
敦賀第三、第四については、安全審査が棚上げされ、敷地が造成した段階で止まっている。
発電所名
運転開始
型式
能力
(万KW)
再稼動申請
状況
廃炉費用 要積立額
日本原子力
東海
@
1966/7/25
英国製黒鉛減速
ガス冷却炉
16.6
1998/3/31運転終了
2020年度に廃炉解体終了予定
490億円
合計
1800億円
現預金残
187億円
A
1978/11/28
BWR
110.0
2014/5/20
PWR優先で審査停滞
2018/11 に40年経過
60年への延長申請準備中
(安全対策費 1700億円超が必要)
530億円
日本原子力
敦賀
@
1970/3/14
BWR(Mark -I )
35.7
2015/3/17 廃炉決定
340億円
A
1987/7/25
PWR
116.0
2014/11/5
2013/5/27 敦賀2号機直下の断層を活断層と断定 *
440億円
B
計画中
APWR
153.8
2010/3 敷地造成完了
福島事故で安全審査が棚上げ、工事中断のまま
C
計画中
APWR
153.8
*会社側は2013年7月、データに基づき「D-1
破砕帯は活断層ではない」とする報告書を提出、現在、原子力規制委員会の評価会合で審議が進められている。
原発は廃炉費用の積み立てが義務付けられている。朝日新聞報道では、総額1800億円程度の引当金がある計算だが、福島第一原発事故の前に、敦賀第三、第四の建設費に流用することを決めたという。
事故後、全原発が停止し、資金繰りが苦しくなり、流用が続いた。
2017年3月末での現預金残は188億円に過ぎない。(他に、内容不明の「短期投資」が460億円)
廃炉費用の引当金は、他の引当金と同様、現金で残す必要はなく、どのように資金運用するかは企業の判断に任されている。
原電の場合も、その意味では流用は問題ではない。
しかし、金融機関は、原電の全原発が止まっている状況では、新たな融資はしない。
このため、規制委が東海第二の再稼働や運転延長を認めない場合、廃炉費用がなく、廃炉できないこととなる。
再稼働が認められても、原電は1700億円超の安全対策費を調達する必要があり、廃炉資金を調達できないこととなる。
東海第二の運転延長申請は、廃炉費用が確保できないためともされる。
原子力規制委員会の運転延長の審査会合で、審査官が安全対策費について、「しっかりとした債務保証の枠組みを確認させて頂く必要がある」と告げたとのこと。
経産省内部でも、解体引当金の流用を規制するようルールの見直しが必要との意見が出ているという。
ーーー
日本原子力発電は日本で最初の原発を建設・運営するために電力9社が中心で設立したもので、発電した電力は電力9社が引き取っている。
原発停止で電力の引取はないが、Take or Pay
の形で固定費分の支払いを続けている。(各電力会社の分工場の位置づけ)
同社の決算は次の通り。(単位:億円)
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
売上高
1,524
1,258
1,328
1,149
1,099
経常収益
1,550
1,280
1,327
1,165
1,109
経常費用
1,540
1,193
1,277
1,101
1,060
経常利益
10
87
69
63
48
当期純利益
-5
16
-30
12
-64
付記 (日本経済新聞 2024/8/30)
2024年8月28日、原子力規制委員会は敦賀2号機を不合格とする審査書案を了承した。
敦賀2号機では、関西電力、中部電力、北陸電力が受電契約を結んでいる、契約電力比率は各社1/3ずつで、各社とも毎年100億円程度の基本料金を支払っているとみられる。
廃炉となった場合、総額715億円の工事費用が必要。
東海第二原発では防潮堤工事で施行不良がみつかり、安全対策工事完了が2年以上延期された。
同原発では東電と北陸電力が受電契約を結び、東電は毎年500億円規模の基本料金を払っている模様。
原電の原発が止まった2011年から電力5社が支払った基本料金総額は約1兆4000億円。各社の電気代に上乗せされている。
2017/11/22 番外編 話題の新聞広告
11月20日付の日経新聞のコマツの安崎元社長の広告が話題になっている。
付記 2018年5月26日逝去
2017/11/23 米国、NAFTA再交渉で新目標
米通商代表部(USTR) は11月17日、NAFTA再交渉での目標を見直したと発表した。
発表は次の通り。
https://ustr.gov/sites/default/files/files/Press/Releases/Nov
Objectives Update.pdf
USTRは7月17日に、再交渉に向け、貿易赤字の削減など22項目の協議目標を公表した。
米国の製品、農産品、サービスのカナダとメキシコへの市場アクセスを改善することにより、米国の貿易赤字を減らし、全ての米国民にとってフェアな、はるかに良い協定を目指すとし、次のように述べている。
USTRは初めて、NAFTA交渉の目的として貿易赤字縮小を含めた。
NAFTAは1994年に発効したが、それ以来、メキシコとの間の貿易収支は13億ドルの黒字から、2016年には640億ドルの赤字になった。
カナダとの間では、乳製品、ワイン、穀物、その他製品に関して市場アクセスの問題が生じている。貿易障壁の問題は現在の協定には含まれていない。
Digital Trade
(ソフトウエア、音楽、ビデオ、e-bookなど)が新しく加わる。
現在、付帯条項となっている労働・環境義務も取り入れ、強化する。
またアンフェアな補助金、国営企業による市場を歪める慣行、知的所有権に対する重い制限などを取り除く。
2017/7/19 米通商代表部 、NAFTA再交渉の協議目標を公表
これまでに4回の会合を終えた。
3カ国は8月20日、再交渉の第1回会合を終えた。年内の決着を目指し、政府間の協議を加速することで合意した。
3カ国は再交渉で野心的な成果を上げることで一致し、NAFTAのルールを改正する重要性を再確認した。初会合では20以上の交渉分野について協議した。
9月5日、第2回会合を終えた。
メキシコの経済相によると、25項目のうち電子商取引、中小企業対策など7項目について協議が進展しており、次回会合でまとまる可能性もある。一方、原産地規則に関しては米国側から具体的な提案はなかったとしている。
第3回会合は9月23〜27日にカナダのオタワで開いた。
第4回会合は10月17日
閉幕した。3カ国は2017年内の妥結を断念し、2018年1〜3月に先送りすることで一致した。
米国は自動車の関税をゼロにする条件として、現在の域内部材の62.5%以上使用を85%以上とするとともに、米国製部材を50%以上使うよう求めたほか、5年ごとに協定を見直す条項の導入などを提案したが、カナダ、メキシコが反発した。
なお、第5回会合は11月17日、開幕した。担当閣僚は参加せず、首席交渉官を中心に交渉する。
付記
第5回会合は11月21日に終了したが、重要項目では新たな対案や妥協はほとんどなく議論は平行線が続いた。
米国は、これまでの4回の会合で米国が出した要求を踏まえて 再交渉での目標を 見直し、今回発表した。
USTRの Lighthizer
代表は声明で「これらの目標を達成できれば、NAFTAを近代化し、再びバランスが取れた協定にし、労働者、農家、牧畜業者、企業の利益に資するものとなる」と述べ、要求が通らない場合は脱退する可能性を示唆した。
主な目標は次の通り。
カナダが乳製品や鶏肉加工品、卵製品にかけている関税を撤廃するよう求め、米国からの輸出増をめざす。
補助金の支給や価格操作など、米国の輸出を阻むような不公正な政策もやめるよう求める。
企業の投資については、受け入れ国が技術を渡すよう強制したり技術の現地化を求めたりするのを禁じる。
知的財産では、特許や著作権で米国の基準並みに厳しく保護するよう要求する。
関税をかけない条件として域内での部材の調達比率を定めた「原産地規則」では、特に米国の生産品を使う規則をつくる。
Update and strengthen the rules of origin ,
as necessary, to ensure that the benefits of NAFTA go to
products genuinely made in the United States
and North America.
Ensure that the rules of origin incentivize production in North America as
well as specifically in the United States .
2017/11/23 ドイツ、メルケル首相の4選に暗雲
メルケル独首相の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が自由民主党(FDP)や緑の党と進めていた連立協議が11月19日、決裂した。
メルケル氏の首相4選に暗雲が漂い始めた。
9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。大量の難民受け入れへの世論の反発があるとされる。
メルケル氏はキリスト教民主同盟 (CDU)
の党首。バイエルン州のみを地盤とするキリスト教社会同盟 (CSU) と連携している。
第一次と第三次政権で連立を組んだドイツ社会民主党(SPD)も大敗し(153議席)、連立離脱を宣言している。
このため、メルケル首相は、緑の党(67議席)、第二次政権で連立を組んだ自由民主党(FDP)(80議席)との3党連立を協議してきた。
3党連立で393議席となり、過半数(355)を上回る。
しかし、環境保護を党是とする緑の党はシリア難民の家族の受入、石炭火力発電の廃止を主張、経済界寄りの自由民主党(FDP) はこれに反発し、連立協議からの離脱を表明した。
先に連立離脱を表明しているドイツ社会民主党(SPD)(153議席)は、改めて連立を否定した。
キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と緑の党だけでは、313議席で過半数(355)を下回り、少数与党となる。
しかしメルケル首相は11月20日、少数与党政権について懐疑的だと語り、再選挙を示唆した。しかし、再選挙で更に議席を失う可能性もある。
ドイツ 下院選挙の結果は次の通り。
第一次
2005/11
第二次
2009/10
第三次
2013/12
今回選挙
キリスト教民主同盟 (CDU)
キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
連立
連立
連立
246
連立協議
少数与党?
キリスト教社会同盟 (CSU)
ドイツ社会民主党(SPD)
連立
連立
153
離脱表明
緑の党
67
連立協議
少数与党?
自由民主党(FDP)
連立
議席 0
80
連立協議→離脱
ドイツのための選択肢(AID)
議席 0
92
左派党
69
無所属
2
合計
709
ドイツのための選択肢(AID)は、2013年のギリシャ経済危機を契機に反EUを掲げて結党され、ドイツのEU離脱を最大の目標として掲げている。移民問題についても強く反対しており、極右政党ともされる。
議席ゼロから92議席を獲得、注目されている。
東芝は11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。
新株式の発行総額は約 6000億円(新株式1株あたりの発行価格262.8円) で払込みは12月5日に完了する予定。
経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上
困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King
Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てる。
主な投資家は次の通りで、「物言う株主」も多い。Effissimo
は昨年の川崎汽船の総会で社長再任議案に反対したとみられる。
増資全体の比率
東芝持株比率
Effissimo
Capital Management
14.0%
9.89%→11.34%
Segantii Capital Management
13.1%
Harvard
Investment
7.4%
Elliot Management
5.6%
King Street
Capital
4.2%
Cerberus Capital
Management
2.3%
Third Point Management
2.3%
Oasis Management
1.7%
調達した資金は、Westinghouseの米国原子力発電所建設プロジェクトに関する親会社保証の一括弁済に充てる。
現在は保証損失を有税で引当てしているが、一括弁済によりこれを損金算入することにより、税金を 3400億円圧縮する。
これにより債務超過額の大部分を占める税負担が減るため、6000億円の新規調達で資産が債務を上回る見通しで、2期連続の債務超過による上場廃止を回避することが確実となる。
東芝は9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。 売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。
今回の増資が完了すれば、東芝メモリ売却が完了しなくても、債務超過を免れる。
この場合も、東芝メモリの売却は実行する。
取引銀行はこれまで融資の条件として東芝メモリの売却を提示している。
東芝メモリは今後も毎年 多額の投資が必要で、東芝として対応が難しい。 ーーー東芝は8月10日、PwC
あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。
確定した2017年3月期及び2017/4-6月期決算と、現時点での2018年3月期決算予想の概要は次の通り。(億円)
16/3
17/3
増減
6/23発表
見通し
増減
17/1Q
18/3予
売上高
51,548
48,708
-2,840
48,708
0
11,436
49,700
営業損益
-4,830
2,708
7,538
2,708
0
967
4,300
(うち東芝メモリ)
(1,100)
(1,866)
(766)
(903)
(3,712)
(東芝メモリ以外)
(-5,930 )
(842)
(6,772)
(64)
(588)
非継続事業純損益
-1,298
-12,801
-14,099
-13,065
264
−
−
純損益
-4,600
-9,657
-5,057
-9,952
295
503
2,300
株主資本
3,289
-5,529
-8,818
-5,816
287
-5,043
-4,100
2017/8/14 東芝、有価証券報告書を提出、決算発表
東芝は9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain
Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。
売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。
上の表の株主資本は -4100 億円 + 7400億円=+3300億円となる。
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
同社は10月23日、業績予想を修正した。
営業損益等は上図と同じである。
東芝メモリの売却では、売却額が2兆円、税引前利益が1兆800億円、税金が3400億円、差引税引き後損益が+7400億円であるが、今回の業績予想では、税金3400億円
のみを追加計上した。売却利益
1兆800億円については、各国の承認が得られていない状況であるため、保守的会計原則により、計上しなかった。
この結果、この時点での債務超過は7500億円に拡大する。来年3月末までに承認が得られれば、株主資本は3300億円になり、債務超過を免れるが、ダメな場合は2年連続債務超過となり、上場廃止となる。
今回、6000億円の増資と、増資資金による親会社保証の一括弁済で税金が2400億円減ると、資本勘定は8400億円増加し、差引
プラス 900億円となり、東芝メモリの売却益なしでも、債務超過を免れる。
不足する場合は、東芝が保有債権の一部を売却するなどして賄う方針。ただ、さらなる財務基盤の健全化のため、増資額を上積みする可能性もある。
18/3予
2017/10/23
今回
売却の税額影響
(株式売却)
売却なし
増資のみ
売上高
49,700
営業損益
4,300
(うち東芝メモリ)
(3,712)
(東芝メモリ以外)
(588)
株式売却(税引前)
(10,800)
売却関連税金
-3,400
引当損失の損金算入
2,400
非継続事業純損益
−
−
純損益
2,300
-3,400
(+10,800)
増資
6,000
株主資本
-4,100
-7,500
(3,300)
900
この後、東芝メモリの売却が完了すれば、株主資本は1兆800億円増える。
2017/11/25 EU、日本の自動車メーカー向けの自動車安全部品のカルテルで5社に制裁金
EUは11月22日、東海理化、タカタ、丸高、豊田合成、およびスウェーデンのAutoliv
の5社に対し、日本の自動車メーカー向けのシートベルト、エアバッグ、ハンドルでのカルテルに参加したとして合計34百万ユーロの制裁金を課したと発表した。
5社はカルテル参加を認め、示談に同意した。
摘発されたカルテルは、トヨタ向けシートベルト、トヨタ向けエアバッグ、スズキ向けシートベルト、ホンダ向けのシートベルト・エアバッグ・ハンドルのカルテル。
5社は欧州経済領域(EEA:EU
+EFTA加盟のアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)にプラントを持つ自動車各社への部品供給でカルテルを結んだ。 シートベルト、エアバッグ、ハンドルの供給について価格や市場について談合し、重要な情報を交換した。談合はEEA外の主として日本で行われた。
最初のカルテルは東海理化がカルテルの存在を伝え、15百万ユーロを免除された。
残り3つのカルテルでは、タカタがカルテルの存在を伝え、合計74百万ユーロを免除された。
他社も協力の程度により減額されたほか、全社が制裁に同意し、 「 同意決定手続
(settlement
procedure) 」による制裁金10%の減額を受けた。
同意決定手続 は 2008 年 6 月 30 日に制定され、同年 7 月 1 日から運用された。
裁判所への控訴による長期の争いを避け、他の事件の摘発に要員を向けることが目的。
各社の制裁金の内訳は次の通り。
数字は順に、Leniencyによる減額率、 同意決定手続き による減額率、制裁金(千ユーロ)
トヨタ向け
シートベルト
トヨタ向け
エアバッグ
スズキ向け
シートベルト
ホンダ向け
合計
東海理化
100%
10%
0
46%
10%
1,818
1,818
タカタ
50%
10%
12,724
100%
10%
0
100%
10%
0
100%
10%
0
12,724
Autolive
30%
10%
265
50%
10%
4,957
50%
10%
2,829
8,051
丸高
0%
10%
156
156
豊田合成
28%
10%
11,262
11,262
合計
13,145
16,219
1,818
2,829
34,011
ーーー
自動車部品カルテルは各地で摘発されている。
EUは既に、下記の摘発を行っている。
2016/2/1
EU、自動車部品カルテルで日本メーカーに制裁金
2017/3/11 EU、自動車用エアコンカルテルで制裁金
2017/11/27 中国初のエタンクラッカー計画 進展
香港のSP Chemicals Holdingsの子会社 SP
Chemicals (Taixing)
は 江蘇省泰興市で
中国初のエタンクラッカー計画を進めているが、11月17日付化学工業日報はその現状を報じている。
それによると、当初能力はエチレン年産65万トンの計画であったが、実際は
2割増しの78万トンで、2019年第1四半期の稼働を予定している。
エチレンは半量を自社で引き取り、残りは周辺企業へ供給する。
付記
2019年8月19日、エタンクラッカーがスタートアップした。能力はエチレン
68万トン、プロピレン 15万トンで、エチレンは自消と外販、プロピレンは全量外販する。
原料エタンは米国からの輸入で、関税は通常の2%に対米貿易戦争での5%が加わるが、ナフサベースよりも競争力があるとされる。
ーーー
SP Chemicals (Taixing)
は2016年3月、 Technip
SAとの間でエタン原料のエチレンプラント建設の技術ライセンス、設計の契約を締結した。
江蘇省泰興市に年産65万トン(当初計画)のエチレンプラントを建設するもので、北米の安価なエタンとプロパン(合計年110万トン)を輸入し、原料とする。
Technipは同社のエチレン技術、プロセスデザインのパッケージ、技術サービス、機器を供給する。
Technip はSP Chemicals
に対し、Badger法のエチルベンゼン/スチレンモノマー技術を提供して以来、親密な関係にある。
SP Chemicals (Taixing)は中国で4番目に大きいクロルアルカリメーカーで、イオン交換膜法では最大のメーカー。
SP Chemicalの概要は次の通り。
1990/11
シンガポールで Panasia Investment ( 汎亞控股 ) 設立
1995/12 Asiawide Chemicals (汎亞 化学 ) と改称
2003/2 Singpu Chemicals と改称
2005/4 SP Chemicalsと改称
1995/12 中国に100%子会社 Singpu
Chemicals Industries (Taixing) を設立
中国名 新浦化学( 泰興)
2005/4 SP Chemicals (Taixing) と改称
中国名 新浦化学(泰興)
現在の生産品目と能力は次の通り。(単位:千トン)
苛性ソーダ
750
当初 150千トン
塩素
660
当初 132千トン
アニリン
135
当初 45千トン
VCM
500
Solvay技術 当初能力200千トン 2007年完成
スチレンモノマー
300
2013年生産開始
120MW のコジェネプラントを持つ。
(2005年に60MW、その後倍増)
同社の変遷については下記を参照。
2007/10/16 中国のSP
Chemicals、スチレンモノマーに進出
同社は2007年 4月にベトナムのPhu
Yun 省との間で、同省の Hao
Tam-Vung Ro
に石化コンプレックスを建設する覚書を締結した。
12億ドルを投じて、クロルアルカリ、アニリン等の工場を建設する計画で、詳細はFSの結果次第としていたが、その後の報道はない。
2017/11/28 日本ペイント、米塗料大手に買収提案
日本ペイントは11月22日、同業の米Axalta Coating
Systemsに買収を提案したことを明らかにした。
付記 全株式買取で、提示した価格は1株37ドルとされる。総額92.5億ドル(1兆円超)となる。
日本ペイントの2017年9月末の現預金・有価証券は1340億円で、多額の借り入れが必要となる。
Axalta
も同日、日本ペイントと交渉していることを明らかにした。しかし双方とも合意できるかどうか不明としている。
付記 日本ペイントは12月1日、買収交渉を打ち切ったと発表した。買収金額などの条件面で折り合わなかった。
Axaltaは、自動車用塗料や同補修用塗料を主に手がけ、2016年の売上高は41億ドル。
Axalta Coating
Systemsは150周年を迎えた。自動車OEM、商用車両、補修用アプリケーションから、電気モーター、ビル、パイプラインまで扱う。
日本ペイントは売上高の6 割を中国などアジアに依存しており、Axalta
と組んで北米での展開を急ぐ。
しかし、Axalta の時価総額は
9600億円に及んでおり、日本ペイントが何割を取得しようとしているのか、多額の買収資金をどうするのかなど、不明な点が多い。
ペイント業界の状況は以下の通り(日経による)で、日本ペイントは売上高で世界5位、Axaltaは同7位で、買収が成功すれば4位になる。
世界の塗料業界では規模拡大でコスト競争力を強めようと、大型のM&Aが続いている。
首位のAkzo Nobel は、2008年1月にICIを買収している。
1994年2月に Nobel Industries AB とAKZO
N.V. が合併し Akzo Nobel N.V. となった。
世界有数の総合化学会社であったICIは、1997年に、事業を化学品のなかでも付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決めた。
既存事業を順次分離・売却していき、スペシャリティ化学品を中心とした「新生ICI」に生まれ変わった。 塗料のほかは、 Unileverから購入した National
Starch、Quest、Uniqema が中心である。
2006年にはQuest、Uniqema
を売却し、売却代金を 退職年金不足額の充当と負債の返済に充てた。
そして、塗料事業はAkzoに買収され、 National
Starch はHenkel と Corn Products International
に売却された。
2007/8/13
Akzo が ICI を買収
Akzo Nobel
は2016年12月、BASFの工業用塗料事業を買収した。
BASFの工業用塗料事業は、コイル、パネルコーティング、壁紙用塗料や風力向け等の工業用塗料を欧州・中東・アフリカ地域で行っていた。
2015年のBASFコーティングス事業部の世界売上高は32億ユーロで、Akzoに売却した工業用塗料事業の売上は、全体の1割にあたる約3億ユーロであった。
なお、BASFのコーティングス事業部は、引き続き既存の自動車用OEM塗料、自動車補修用塗料、ブラジルでのSuvinil®
ブランドによる装飾用塗料の事業を展開していくとしている。
Axalta 自身、塗料世界首位のAkzoNobel と経営統合に向けた交渉をしていたが、11月21日
交渉を打ち切った。11月22日に日本ペイントとの交渉を発表。
10月30日に、 Axalta
はAkzoNobel との間で対等合併の交渉を行っている と発表した。
11月21日、同社の基準に沿った条件での交渉が出来ないと判断し、交渉を打ち切ったと発表した。代替案の追及を続けるとしていた。
世界3位であった米 Sherwin-Williamsは2017年6月に米の同業のThe
Valspar Corporation を買収し、2位に浮上した。
2016年3月、113億ドルでの買収契約を締結した。相互に補完的であるとしている。
米国FTCとカナダのCompetition Bureau
の審査の結果、Valsparの北米の Industrial Wood Coatings事業をAxalta Coatings Systems に売却した。
ーーー
日本ペイントと、シンガポール国籍のGoh Cheng
Liangが設立した Wuthelamグループは、1962年にJVの Ni ppon
P aint
S outh e ast
A sia
グループ(NIPSEAグループ)をつくり、 その後、アジア各国で自動車や建築用塗料などを中心に、日本ペイントが技術、Wuthelam
がマーケティングを担当して合弁事業を展開してきた。
日本ペイントは2014年2月、Wuthelam
Groupを引受先とする約1000億円の第三者割当増資を実施すると発表した。
Wuthelam は日本ペイントの筆頭株主で14.5%を出資するが、増資により出資比率は30.3%に高まる。
更に、Wuthelam は、第三者割当後の2年間に限り、市場での購入で出資比率を39.0%まで増やすとした。(2016年末時点で38.99%を所有している。)
Wuthelam
Groupは2013年1月21日、日本ペイントへの出資比率を約45%まで高めて傘下に収めるため、720億円を投じて8千万株を取得する提案を日本ペイントの取締役会に提出した。
しかし、日本ペイントとの協議の結果、Wuthelamは3月12日付で日本ペイントへのTOB提案を取り下げた。
両社は、Wuthelamの日本ペイントに対する持株比率の引き上げと、両社のJVの日本ペイントによるマジョリティ化について協議してきた。
Wuthelam
Groupが日本ペイントに38.99%出資する見返りに、日本ペイントは両社のJVの出資比率を引き上げた。
2014/2/6 日本ペイント、Wuthelam
Groupとの戦略的提携の基本合意
日本ペイントと Wuthelam
Groupのアジアの連携の全貌は以下の通り。
日本ペイント
本部
シンガポール
Nipsea
Management
50%
アジア地域統括
Nipsea Technologies
50%→51%
研究開発
一般
シンガポール
Nippon Paint (Singapore)
40%→51%
スリランカ
(60%) Nippon Paint Lanka
Silicon Coatings 40%
マレーシア
Paint Marketing Co. (M)
25% →51%
Nippon Paint (Malaysia)
25%→51%
バングラデシュ
(90%) Nippon Paint
(Bangladesh)
現地10%
タイ
Nippon Paint (Thailand)
40%→51%
Nippon Paint
Decorative Coatings (Thailand)
51%
上記から分離
韓国
Nipsea Chemical
40%→51%
台湾
Asia Industries
34.8%→51%
香港
Nippon Paint (H.K.)
40%→51%
中国統括&塗料販売
中国
(100%) Nippon Paint China
Holdings
(40% →51% )
(100%)Langfang Nippon
Paint
(100%) Nippon Paint
(Tianjin)
廊坊立邦立東塗料&
天津立邦聖連達粉末塗料を統合
Nippon Paint (China)
40%→51%
Guangzhou Nippon Paint
40%→51%
Nippon Paint (Chengdu)
40%→51%
Guang Li
Chemicals (Shanghai)
38.65%
Nipsea Chemical (Shanghai)
51%
フィリピン
Nippon Paint Philippine
51%
インド
Nippon Paint
(India)
50%
パキスタン
Nippon Paint
(Pakistan)
船舶
日本
日本ペイントマリン
60%
Nipsea Pte.,Ltd 40%
シンガポール
Nippon Paint Marine (Singapore)
マレーシア
Nippon Paint Marine (Malaysia)
韓国
Nippon Paint Marine (Korea)
台湾
Nippon Paint Marine (Taiwan)
中国
Nippon Paint Marine (China)
Nippon Paint Marine (Zhangjiagang)
Nippon Paint Marine (H.K.)
2017/11/28 楽天、がん治療に参入 光免疫療法の 米 Aspyrian
Therapeutics に出資
楽天の三木谷浩史会長兼社長は、新しいがん治療法として注目される「光免疫療法 :
Photoimmunotherapy」の商業化を進めている米ベンチャー企業、Aspyrian Therapeutics,
Inc.に2割超出資して持ち分法適用会社とすることを明らかにした。11月28日付の日経が報じた。
現在の癌治療では「手術」「放射線療法」「化学療法」の3つの方法が主流になっているが、これらの治療にはいずれも副作用が付いてくる。
「放射線療法」「化学療法」は癌細胞を殺すが、正常細胞も殺す。
副作用を最小限にするため、「分子標的薬」が開発されてきたが、その数はまだ少ない。
米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らの研究チームは 2011年11月6日のNature
Medicine で初めて「光免疫療法」を報告した。
この報告は注目を集め、 オバマ大統領が2012年の一般教書演説で「米政府の研究費によって、癌細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と紹介し、 2014年にNIH長官賞を受賞した。
小林主任研究員は2011年設立のバイオベンチャー企業のAspyrian
Therapeutics, Inc. と組み、2015年4月30日にFDAの計画承認を受け、治験を開始した。
研究チームは 2016年8月17日付けの米医学誌
Science Translational Medicineで、 光免疫療法(PIT)により、癌細胞を免疫の攻撃から守っている仕組みを壊し、癌を治す動物実験に成功したと発表した。
付記
日本での初の臨床試験が2018年3月に国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で、再発頭頚部がん患者を対象に始まる。
概要は次のとおり。
1) 癌にくっついて熱で殺す
癌が生体で増殖し続けるのは、癌の周りに「制御性T細胞」が集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけて守っているためである。
制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、波長700nmの近赤外線を受けると 光エネルギーを吸収し、化学変化を起こして 発熱する「IR700」と呼ばれる色素をつけ、 肺癌、大腸癌、甲状腺癌をそれぞれ発症させたマウスに注射した。
体外から近赤外光を当てた結果、約1日で全てのマウスで癌が消えた。
光を当てた約10分後には制御性T細胞が熱で大幅に減り 、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れて、癌への攻撃が始まったためとみられる。
このための光は、光化学反応を効率よく起こせるだけの波長の短い光で、なおかつDNAに損傷を起こさないために可視光よりも長い波長の光である必要と、体内の光吸収物質に吸収されずに体の深部にまで到達する光である必要があり、その条件に合致するのが700nm
あたりの近赤外領域の光である。
2) 光を当てない癌も消える
さらに、1匹のマウスに同じ種類の癌を同時に4カ所で発症させ、そのうち1カ所に光を当てたところ、全ての
癌が消えた。
光を当てた場所で癌への攻撃力を得たリンパ球が血液に乗って全身を巡り、癌を壊した と考えられる。
この治療で壊れなかった局所のがん細胞や近赤外光の到達できなかった場所のがん細胞、ひいては遠隔臓器に転移したがん細胞にも効果を起こせる可能性があり、「転移があっても効果的に治療できる方法になると期待できる」と話す。
3) 癌だけを殺せる!
この薬は癌細胞にくっつかない限り、体に害を与えない。
癌細胞にくっついて初めて、近赤外線を当てるとそのくっついた癌細胞を殺す。
2016/8/22 光免疫療法による癌治療
ーーー
今回、楽天が2割超出資するが、実は楽天の三木谷 浩史・会長兼社長が個人としてAspyrian
Therapeuticsに出資し、 筆頭株主として資金面で支援 するとともに、 同社の代表取締役会長として経営にも携わっている。
同社のホームページでの小林久隆・主任研究員との対談のなかで、以下の通り述べている。
父がすい臓がんを患いました。ーーー どうすれば父のがんを治せるか、あらゆる可能性を探しました。
小林先生に「近赤外線光免疫療法」の原理を聞いた瞬間、「楽天市場」を始めた時と同じように、「これはいける」と思いました。賭けてみる価値のある革新的な治療法であると、確信したので す。父は2013年に亡くなり、治療には間に合いませんでしたが、研究段階のこの治療法が実用化されれば、「父のかたきをとれる」「がんで苦しむ世界中の多くの患者さんを救うことができる」と。
小林先生から、臨床で実用化するための資金集めに苦労しているという話を聞き、資金面でのサポートをすることを決めました。
まず私自身がアスピリアンの経営に深く参画しており、サンディエゴにあるアスピリアンの本社に足繁く通っています。アスピリアンの経営を通じて、近赤外線光免疫療法の実用化を主導していきます。事業化に向けては、楽天も支援していくことになると思います。
小林主任研究員も、 「三木谷さんの支援がなかったら、近赤外線光免疫療法の臨床への応用は全く進んでいなかったかもしれません。事業化に向けて楽天とのパートナーシップは、極めて重要と思っています」と述べている。
https://rakuten.today/mickeyvoice-ja/aspyrian-cancer-treatment-j.html?lang=ja
2017/11/29 塩野義製薬参加のViiV Healthcareの2剤配合錠、抗HIV治療でFDAの承認取得
塩野義製薬は11月11日、塩野義とGlaxoSmithKline、Pfizer のJVのViiV
Healthcareの2剤配合錠(Juluca®)について、FDAが抗HIV治療における維持療法として承認したと発表した。
同剤については2017年2月に、医療現場のニーズが高い場合に適合される「優先審査」の対象となるとの通知をFDAから受けている。通常より審査期間が4カ月前後短くなる。
Juluca®はViiV社のHIVインテグラーゼ阻害薬 Dolutegravir 50mgとJanssen
Therapeutics社の非核酸系逆転写酵素阻害薬 Rilpivirine 25mgの合剤。
HIV治療薬には、
・核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸型逆転写酵素阻害剤(いずれもウイルスのRNAをDNAに変える逆転写酵素を阻害)、
・プロテアーゼ阻害剤(ウイルスのタンパク質を作る過程を阻害)、
・インテグラーゼ阻害剤 (インテグラーゼの動きを止め、ウイルスDNAがヒトDNAに侵入することを防止)、
・CCR5阻害剤(HIVとCCR5受容体との結合を邪魔する)
などがあり、それぞれ作用が異なる。
既存のインテグレース阻害薬は、ウイルスの耐性化や1日2回投与またはブースター(薬剤を代謝する酵素を阻害する薬剤)が必要という服用の煩雑さ等があるが、Dolutegravir
は、1日1回投与でブースターが不要、優れた耐性プロファイルを示すなど、次世代のインテグレース阻害薬とされる。
非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、およびインテグラーゼ阻害剤を含む3剤以上を用いる多剤併用療法 は、強いウイルス増殖抑制効果を示す。
ViiV とJanssen Sciences Ireland UC(Johnson & Johnson 子会社の Janssen
Pharmaceutical Companiesの一つ)は2014年6月に2剤の合剤での開発で協力することで合意した。
塩野義は2001年9月に、GlaxoSmithKline plc.(GSK)との間で、両社の所有する複数の疾患領域における開発化合物を開発・販売することを目的とした合弁会社Shionogi-GSK
Healthcare を設立した。
2002年8月に、両社はこのJVでHIV インテグレース阻害薬(Dolutegravir)に関する共同研究を開始した。
2009年10月に、GSKとPfizerは両社のHIV 治療薬を供出し、英国にViiV
Healthcareを設立した。(GSK:85%、Pfizer:15%)
GSKはShionogi-GSKHealthcareの持分をViiVに譲渡し、名称をShionogi-ViiV Healthcareと改称した。
塩野義製薬は2012年10月29日、HIV治療薬JVの枠組み変更を発表した。
塩野義のShionogi-ViiV Healthcareの50%持分をViiV Healthcareに譲渡し、見返りにViiV
Healthcareの10%の権利を取得する。
2012/11/2
塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更
なお、ViiV Healthcareは2015年12月18日、米国のBristol-Myers
Squibbから、開発中のHIV治療薬(最終開発段階のものと、臨床試験前の研究段階の一連のもの)を最大15億ドルで買収する契約を締結している。
2015/12/23 GlaxoSmithKline子会社 ViiV
Healthcare 、Bristol-Myers Squibbの開発中のHIV治療薬を取得
今回FDAの承認を得た2剤配合錠(Juluca®)は Shionogi-GSK Healthcare で開発したインテグレース阻害薬を使うもの。
非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、およびインテグラーゼ阻害剤を含む3剤以上を用いる多剤併用療法 は、強いウイルス増殖抑制効果を示す。
これまでは、3剤以上の治療薬の服用で、エイズの発症を軽減し、長期の服用によりHIV非感染者に近い余命を期待できるようになっていた。
今回の承認は世界初の2剤のみによる抗HIV療法 で、医療従事者と患者に、長期間にわたる治療薬の総曝露を軽減できる新たな治療選択肢を提供する。
2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude
Oil-to-chemicals JVのMOU締結
Saudi AramcoとSABICは11月26日、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC
Complex : C rude
O il T o
C hemicals complex ) 設立のMOUを締結したと発表した。
本件は2016年5月にSaudi
Aramco のCEOが近くMOUを締結するとしていたもので、2016年6月に Heads
of Agreement
を締結し、FSを行ってきた。
今後、基本設計( Front
End Engineering Design)を行い、その後で最終決定を行う。
付記 SABICは2018年4月26日、この計画の管理及び基本設計(FEED)の契約を米国のKBRと結んだと発表した。
付記 両社は2018年11月1日、立地を Yanbuに決めたと発表した。
日量40万バレルの原油を処理し、年産約
900万トンの化学品やベースオイルを生産するもので、2025年の生産開始を見込んでいる。
Reutersは10月30日に SABICのCEO Yousef Al-Benyanとのインタビューを報じたが、本件について次の通り述べている。
SABICと Aramco
は既に原油から化学製品を生産する投資額200億ドル以上のJV構想を明らかにしている。
原油やガソリン・ディーゼルの価格が石油化学品の価格よりも下がっているため、原油をガソリンにするより、原油から石油化学品を生産しようとするもので、Arabian
Light やExtra Light 原油を原料とする。
日量40万バレルの原油蒸留設備や水素化などの原油処理設備とクラッカー、PE、PP、ブタジエンなどの設備を建設する。
この計画はCOTCと呼ばれる。(C rude
O il-t o-C hemicals
の意味)
立地としては、当初はYanbu かJubail か、Aramco/Dow
JVのあるSadara かとしていたが、今回、この計画の立地が紅海沿岸のYanbuに決まった。
「これは戦略的な立地だ。アフリカや欧州へのポジションを強化できる。Jubail
もまだ成長のオプションを持つが、設備を一か所に集中しない方がよい」と述べた。
2017/11/3
SABIC CEOの将来構想ーーー国内石化事業効率化、海外事業、Aramcoとの石油・石化JV
ーーー
新潟地裁は2016年5月30日、新潟市から法律に基づく水俣病の患者認定申請を棄却された市内の9人(故人1人を含む)が市に処分の取り消しと患者認定を求めた裁判で、市の処分を一部取り消し、原告7人を水俣病と認定するよう市に命じた。2人については請求を退けた。
原告は新潟市の50〜80代の男女で、1人は申請後に死亡した未認定患者の遺族。阿賀野川のメチル水銀に汚染された魚を食べ、しびれなどの症状があるとして市に認定申請し2007〜13年に棄却された。
水俣病の行政認定を巡る判決は最高裁が認定の幅を広げる判断を示した2013年4月の判決以来で、新潟水俣病では初めて。
裁判長は、軽度の水俣病の場合、手足の感覚障害の症状だけのものが存在すると指摘し、最高裁の見解
を踏襲した。
その上で、請求を認めた7人について「阿賀野川の魚介類を摂取するか、摂取した母親の胎内にいたことにより、高度のメチル水銀の暴露を受け、水俣病になった」と判断した。
また、メチル水銀が取り込まれてから数年後に発症した例や、発症後10〜20年後に症状が悪化した例があるとして、長期間経過後、老化に伴い症状がはっきり現れる「遅発性水俣病」があり得ることも認めた。
認められた7人は、症状は感覚障害だけだったが、同居する家族に認定患者がおり 、食生活が同じという点からもメチル水銀を摂取した可能性が大きいとし、水俣病と判断した。
7人は2015年3月、国や県、原因企業の昭和電工に未認定患者らが損害賠償などを求めた新潟水俣病第3次訴訟の地裁判決で、水俣病と判断されている。
一方、請求を棄却された2人は、感覚障害はあるが、家族に認定患者がおらず、 「汚染された阿賀野川の魚を多食した確かな証拠がない」とした。
判決後、記者会見を開いた高島章・原告弁護団長は、訴えを退けられた2人については「7人と同じような症状がある。家族が認められているかの違いしかない 」と複雑な表情を見せ、「家族の有無による線引きがいかに非科学的で根拠がないか、今後も主張していきたい」と述べた。
2016/6/2
新潟水俣病の患者認定申請、7人の請求認める
今回、東京高等裁判所の河野清孝裁判長は水俣病を引き起こす有機水銀が感覚障害の原因となったかどうかについて「ほかに原因があると疑わせるような事情がなければ、有機水銀が原因となった蓋然性が高い」という判断を示し、1審で訴えを退けられた2人も含め、9人全員を水俣病と認めるよう命じた。
高裁は、「医学的見地に照らし、水俣病の可能性が50%以上なら水俣病と認定する」とした公健法の前身の水俣病被害者救済法の趣旨を重視すべきと指摘した。
さらに、原告が訴える感覚障害について、市側は感覚障害の原因は水俣病以外にあると反論していたが、「市の指摘は抽象的」と退けた。 「他の原因がうかがえなければ、メチル水銀が影響した可能性が高いとすべきだ」との判断を示した。
2人について、「証言などによると、週に3回は食べていたと認められる」とした。同居していた家族の中に認定患者ではないものの、特別措置法で救済の対象になった人がいたことや、親戚が持ってきた魚を食べ、その親戚の親族に認定患者が複数いることなど を踏まえて有機水銀を摂取した可能性を否定できないとして、水俣病と認めた。
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