2005年7月31日 三井物産フューチャーズ経済講演会
中国激変一日本を襲うチャイナショックー
三井物産戦略研究所中国経済センター長 沈才彬
はじめに「チャイナショック」とは何か
.中国の台頭
第5の波(産業革命、米国経済、日本/西欧の高度成長、米国のIT革命に次ぐ)
MARKETへの影響
爆食から安定への移行(経済調整局面)での影響大
人民元切り上げの影響
1. 時代の変化の深層底流一東アジア・極東地域の2つの流れ一
*「相互接近」の流れー中韓連携、中ロ接近、中印和解、中国・ASEAN友好ムードー
@中国の路線転換 革命優先→経済成長最優先
A中国市場の魅力
*「相互乖離」の流れー日中対立、日韓乖離、北朝鮮問題ー
*2つの流れの主役はいずれも中国
*日中乖離の底流にが2つの「政経乖離」があり
・日本 変わった経済・貿易構造と変わらぬ政治・外交構造の乖離
以前はともに米国依存→政治・外交は今も米国依存
・中国 進む経済改革と進まぬ政治改革の乖離
1981、86、89の経済挫折の原因は民主化
*相互依存の日中関係はこれから変わるか
・相互補完が深まる日中経済関係
・高まる日本の対中依存度、低下する中国の対日依存度
過去10年で中国の対日輸出は30%減、GDP依存度は横ばい
2.もの凄いスピードで変化する中国経済
*猛スピードで続く経済拡張
*新たな拡張期の4つの特徴
・加速する経済規模の拡大
・われわれの想像を超える大量生産・大量消費
・懸念される過熱経済の行方 バブル
・素材・エネルギーの爆食
3.「世界の工場」から「巨大市場」へ
*巨大市場の原動力ー4つの人口数字に注目ー
・国民の豊かさの加速(13億人)
・急速な都市化(5億4000万人) 96年以降年に2000万人増加(出稼ぎ除く)→住宅需要等
・.三大成長エリアの形成(3億人) 広東、長江デルタ(上海)、渤海湾(北京、天津、大連)
・富裕層の出現(5000万人) 個人資産10万ドル以上(日本での1億円の感覚)
*中国市場の巨大化と日本へのインパクト
輸出増の8割は中国(含む香港)
4.爆食型経済の行方と日本への影響
*素材・エネルギーの「爆食」の実態
2004年
GDP 世界の4%
石油消費 8%
粗鋼 27%
石炭 31%
セメント 40%効率は悪い エネルギー効率、日本の4.4倍
*「爆食型成長」の歪み
占有量は 石油 11%、天然ガス 4.5%
*政策転換で2006年から経済調整期へ 資源と環境の調和
*日本経済は本当の「チャイナショック」に耐えられるか
ーダメージを受ける分野 鉄、化学、造船、海運、工作機械
ー出番が増える分野 省エネ、環境
◎中国経済=「自転車経済」 速ければ危ない、遅すぎると倒れる
◎BRICs 日本からの輸出は 中国が13兆円、BRI 3国合計が1兆円
5.時系列で見た中国の4つの懸念材料
*2006年問題(不良債権悪化)
対GDP比で日本の3.6倍
2006年に外資系に人民元取扱い開放(顧客、人材がシフト)
→優良債権が移動し、不良債権が残る
*2008年問題(台湾独立の懸念)
台湾総統選挙(独立問題がテーマに)
*2010年問題(政治民主化リスク)
「GDP2000ドルの壁」
スペイン、韓国、台湾:GDP2000ドルで民主化定着腐敗問題
*2015年問題(石油危機の恐れ)
過去10年 GDP 8.4%、石油消費 7.3%
このままでは10年後に石油危機
6.注目される人民元の行方
終わりに 中国ダイナミズムと日本の進路
*日本企業が持つべき2つの視点
・「国内だけでは飯が食えない」…の視点
・中国ダイナミズムの視点
*中国ビジネスの3つの課題
人流、物流、金流
*2つのキーワード:「情熱」と冷静」
〜爆食型経済の行方と注目の人民元切り上げの影響〜 対論「中国金融事情」
沈才彬(三井物産戦略研究所中国経済センター長)
江守哲(三井物産フユーチャーズ上席ストラテジスト)
1.人民元切り上げ問題への2つの視点
・通貨攻防戦は経済攻防の前哨戦
事前に2%案と5%案を検討
5%ではGDP 1.5%ダウン 打撃大きい
・中国経済は新たな転換期に入った
2.今回の人民元切り上げを読む“キーワード”
「柔軟性拡大」
「管理可能」
「投石問路」(石を投げて道を問う。試行錯誤の意味)
「米中連携」
3.人民元切り上げで中国経済はどう動くか
・当面は緩やかな元高が続く 年内は5%以内にとどまる
・経済は減速し、来年は8%前後へ
・輸出・雇用に打撃を与える一方、企業競争カアップの起爆剤にも
・中国株式、ファンド、不動産価格はどう動くか
4.日本を襲うチャイナショック
・100円ショップの存続が難しくなる
・「リスク分散」と「分散リスク」を複眼的に見る
・日本は中国企業のビジネス現場になる
・アジア基軸通貨をめぐる円と元の主導権争いが懸念される
・中国ダイナミズムに着眼