「人民網日本語版」2010年3月15日
第11期全人代第3回会議が閉幕
北京の人民大会堂で開かれていた第11期全国人民代表大会(全人代)第3回会議は、政府活動報告、全人代常務委員会活動報告、その他重要報告の承認、選挙法の改正に関する決定
の採択など、各議事日程を順調に終え、14日午前に閉幕した。
会議は、政府活動報告に関する決議を採択。過去1年間の国務院の活動を
高く評価し、同報告に示された2010年の主要課題と全体計画に同意し、同報告の承認を決定した。
ーーーーーーー
温家宝総理は14日午前、第11期全人代第3回会議の閉幕後に人民大会堂で開かれた記者会見に、同会議の李肇星報道官の招待で出席し、内外記者の質問に答えた。
上海や北京の発展は中国全体を代表するものではない
DPA記者:大国は責任もより多く担わなければならない。中国は現在台頭の過程にある。国際社会は中国がグローバルな試練への対応や、政治、安全保障、経
済面の問題で指導的役割を果たすことを期待している。中国政府内部でもこの問題について積極的な議論が行われていることは理解しているが、中国にはこの能力があるのか? 国際舞台においてより大きな役割を果たすことを望んでいるのか?
温家宝総理:比較的穏やかな質問だ。現在世論にはすでに「中国傲慢論」「中国強硬論」「中国必勝論」などが聞かれる。あなたの質問のおかげで、私たちが自らをどう扱っているのかを詳しく説明する機会を得られた。
第1に、中国は近年、確かに経済は急成長したが、都市・農村間の不均衡、地域間の不均衡に加え、人口の多さや基盤の弱さもあり、
まだ確実に発展の初級段階にある。少し前に私は、政府活動報告に対する民衆の意見を聞くため、北京からほんの150キロ離れたルアン平県を訪れた。そこで、人々の生産・生活環境がここ何年かでいくらか変化したものの、まだ北京とは大きな格差があることを目の当たりにした。この村にはすでに2000年、
2005年、2010年の計3回行った。私はいつも記者に、中国の農村や中西部をもっと見に行くよう勧めている。そうした地域を少し見てみれば、上海や北京の発展が中国全体を代表するものでないことがすぐにわかる。私たちが小康社会(ややゆとりのある社会)の目標を実現するには、なお困難な努力が必要だ。
中等先進国となるには、少なくとも今世紀中頃まではかかる。現代化を真に実現するには、まだ100年からそれ以上の時間が必要だ。
第 2に、中国は平和発展路線を堅持する。中国の発展はいかなる国にも影響を与えない。中国は発展していない時は覇権を唱えず、たとえ発展しても、やはり覇権を唱えない。永遠に覇権を唱えないのだ。
第3に、中国は主権と領土保全に関わる重大な問題においては、たとえ貧しいときでも、断じて揺るがない。
第4に、中国は責任ある国だ。中国は国際協力を主張し、これに積極的に参与し、国際経済・政治上の重大問題を解決する。
中国は発展途上国に援助する際、いかなる条件もつけていない。
この4点が、中国の対外政策の基本的立場だ。
温家宝総理「私は自由貿易の断固たる支持者」
人民日報記者:総理は先ほど質問に「国と国
との間では自由貿易を実行すべきだ。私たちは、中国が現在すでに世界第一の輸出大国となったことも知っている。また、中国を標的にした保護貿易主義的措置
が顕著に増加していること、特に米国との間で貿易摩擦が日に日に増えてきていることにも留意している」と答えた。保護貿易主義は世界経済の回復に大きな影
響を与えているとの指摘がある。中国政府はこの問題をどう見ているか。
温家宝総理:私は自由貿易の断固たる支持者だ。すでに指摘したが、自由貿易は世界経済の発展を促進するのみならず、世界の調和も促進し、さらには人々の生活を改善・向上させることもできる。一部の国が輸出割合を高め
る必要があることは理解するが、理解できないのは、彼らが自国の輸出を高めるためにその通貨価値を切り下げ、反対に他国には圧力を加えてその通貨価値の上昇を迫ることだ。これは一種の保護貿易主義的手法だと考える。世界金融危機の拡大・深刻化にともない、保護貿易主義は弱まるのではなく、強まった。全世界の
各国はこれに警戒すべきだ。私たちは輸入拡大措置を講じる。昨年、最も困難な時期に、私たちは欧米に何度も買付団を派遣した。私たちは国際収支の基本的均衡の実現にも努力する。私は、自由貿易は危機対策と経済回復に力強い推進力をもたらすと信じている。
現在最も重要なのは、ドーハ・ラ
ウンドを推進し、公正でバランスある成果を上げ、合理的な貿易秩序を構築することだ。米欧が中国の市場経済地位(MES)を認定し、かつ、ハイテク製品の
対中輸出制限を撤廃することを心から望む。これは貿易の均衡にプラスだ。記者の皆さんがあまり知らない事実をここで紹介したい。中国の貿易は総量は大きい
ものの、50%が加工貿易で、60%は外資系企業または外資との提携企業による輸出貿易であるということだ。中国に対して制限措置を講じるのは、自国の企業に打撃を与えるのに等しいということだ。
中国経済:成長維持・構造・インフレの関係調整が必須
新華社記者:国際通貨基金(IMF)は先般、今年から来年にかけての世界経済と中国経済について共に比較的楽観的な予測を示した。だが、両者共に二番底の危険性が存在する、さらには不可避だと考
える経済学者も少なくない。温総理も政府活動報告の中で、「極めて複雑」という言葉で今年の中国の情勢を形容した。こうした世論の心配をどう見るか。中国経済はどうすれば二番底を回避できるのか。「極めて複雑」な経済情勢の、「複雑さ」とはどこにあるのか。
温家宝総理:複雑さは、不確定要素の多さにある。世界経済は全体的に回復基調を呈しているが、その主たる矛盾や問題が完全に取り除かれたわけではない。一部の主要経済体は失業率が高いままであり、一部の国は債務危機を露呈し、金融・財政にもリスクを抱え、大口商品と主要通貨の相場は不安定で、一部の国はインフレ期待のため政策選択に困難を抱えている。これらはいずれも、経済回復への妨げとなる可能性があり、二番底をもたらす恐れすらある。
中国経済は世界と切り離せない。私たちは経済の下げ止まりと回復を果たしたが、多くの中国企業の経営状況はまだ根本的な好転を果たしていない。主に政策的支援に頼っているのだ。
世界金融危機が中国経済に与えた打撃は、一定程度において、その経済構造と成長パターンへの打撃だったと言える。そして構造調整と成長パターンの転換は短期的なプロセスではなく、粘り強い努力が必要だ。私たちは成長パターンの転換と構造調整を重要な位置に据え続け、不均衡、不協調、持続不可能といった中国の経済成長が抱える問題を変えていかなければならない。中国経済は今年、安定した比較的速い経済成長の維持、構造調整、インフレ期待の管理という3者の関係をうまく処理し、明るい道へと出て行かなければならない。そうして初めて、二番底の回避が可能になるのだ。
人民元相場の安定維持は世界経済の回復に重要な貢献
英紙「フィナンシャル・タイムズ」記者:中国の通貨政策について質問したい。中国経済は現在急成長している。中国経済は下げ止まりと回復を迅速に達成した。インフレも進行しており、温総理が政府活動報告で打ち出した
約3%のインフレ率維持という年内目標に、すでにほぼ達している。外国が中国にどのような圧力を加えるか、中国の通貨政策をどう論じるかに関わらず、人民元の切り上げは中国自身の利益に合致する事なのではないのか?
温総理:第1に、人民元相場は過小評価されていない。統計を見てみよ
う。昨年私たちがとった統計では、37カ国中16カ国が対中輸出を伸ばしている。EUは輸出全体は20.3%減少しているが、対中輸出は1.53%の減少に過ぎない。ドイツを例にとると、昨年の対中輸出は760億ユーロに達し、過去最高を記録した。米国は昨年輸出が17%減少したが、対中輸出は0.22%
の減少に過ぎない。中国はすでに、日本や韓国といった周辺国にとって主要な輸出市場となっており、欧米にとっても重要な輸出市場となっている。
第2に、世界金融危機が発生し、拡大していた期間、人民元相場の基本的な安定の維持は、世界経済の回復に重要な貢献を果たした。05年7月に人民元為替制度改革を開始して以来、人民元の対米ドル相場は21%上昇し、実質実効為替レートは16%上昇した。08年7月から09年2月まで、つまり世界経済が最も困難を抱えてもいた時期に、人民元は下落するどころか、実質実効為替レートで14.5%上昇したことを特に強調しておく。この間、09年に中国の対外輸出は16%減少したが、輸入は11%の減少に過ぎず、黒字額は1020億ドル減少した。世界金融危機が拡大する中で、人民元相場の基本的安定は、世界経済の
回復を促進する役割を果たした。
第3に、一国の為替制度はその国の経済によって決まるものだし、為替レートの変動も総合的な経済状況によって決まるものだ。私たちは自由貿易を主張している。自由貿易が経済を流水のように動かすのみならず、人々に幸福と平和をもたらすからだ。私たちは各国が互いを非難し合い、さらには強制的な方法で一国の為替相場の切り上げを迫ることに反対する。そのような方法は、人民元相場の改革に有益でないからだ。
貿易問題においては、話し合いを主張している。平等な話し合いをすれば、2国間または多国間のウィンウィンの道を見出すことができる。
第4に、人民元は引き続き市場需給を基礎とする管理フロート制を堅持する。私たちはさらに人民元為替制度改革を推し進め、人民元相場の合理的で均衡ある水
準での基本的安定を維持する。
貧しい人や弱者層により関心を
シンガポール「聯合早報」記者:最初の質問は外交と関係する
内容ですが、民意の角度からお訊ねしたい。中国経済の成長に伴い、多くの国民が国力に対して自負心が生まれ、社会的な雰囲気が変化してきている。中国は強
大になった、国際的にも意気昂然としている。といった一部の国民の声や、やや極端な反応を示す国民の声などがマスコミでたまに報じられているが、こうした
民意は中国政府の対外政策にいかほどの影響力をもつか?
また、民生問題についても伺いたいが、政府活動報告の中で、社会の財産という
「ケーキ」をうまく分けるには、社会の公正と調和を促進し、人民がより幸福になり、より尊厳ある生活を送る必要があると言及されているが、政府はいかに社
会の公正と正義を促進しようとしているのか?中国人民のより幸福な、よりすばらしい、より尊厳ある生活をいかに確保するのか?
温総理:
近代以降、中国人民は非常につらい苦しみを受けてきた。このため、われわれは国の独立、主権、領土保全に対し強烈な感情を持っている、われわれの外交政策の基本的な出発点は国益の保護で、もっとも重要なのは主権と領土保全だといえる。当然、われわれの外交方針は国内外の大局を総合的に考慮しなければならな
い。中華民族はまた友誼を重んじ、信用を守り、尊厳ある民族でもある。われわれに対して友好的な民族を平等に待遇する。世界の文化は多様であり、国の社会
制度も異なるが、このことが異国間、異民族間の相互尊重、平等待遇、相互学習を妨げることはない。開放的で包容的な国こそが富み、強くなる、と私はかつて
シンガポールで申し上げた。民意については開放と包容の2つをいずれも尊重する必要がある。
中国の発展は経済建設、社会の公平かつ正義、ひとの全面的かつ自由な発展の3つが欠かせない。生産に精力を集中するその根本目的は、日増しに増幅する人々の物質文化のニーズを満たすことにある。
社会の公平かつ正義は、社会の安定の基礎になる。公平かつ正義は太陽よりも輝かしいと私は思う。隠すまでもないが、現在、社会には収入分配の不公平、司法
の不当など多くの不公平な現象が存在している。これらは全て重視しなければならない問題だ。私はかつて、真の経済学は高尚な倫理学とは切っても切り離せな
いと話したことがある。つまり、われわれの経済活動や社会の発展は貧しい人や弱者層により関心を寄せるべきなのだ。彼らは社会の多数を占めるのだから。わ
れわれが経済体制改革、政治体制改革、その他の方面の改革を推進する根本目的は、生産力を高め、社会の公平かつ正義を実現すると同時に、一人ひとりに自由
で全面的な発展のチャンスがあるようにすることにある。中国の現代化とは、経済の発達だけでなく、社会の公平、正義、道徳の力をも包括するものだ。私の在
任中の最後の数年間はこのことに最大の力を尽くしたい。われわれに続く指導者もこの問題により関心をよせると私は信じている。