2024 年 8 月22 日 日本製鉄
豪州 Blackwater 炭鉱への出資について
日本製鉄は、豪州 Whitehaven Coal Limited (WHC)が保有する豪州クイーンズランド州(QLD 州) Blackwater
炭鉱(BW 炭鉱)の権益の 20%を取得する出資契約を、WHC 社と締結しました。
また、BW 炭鉱で生産される優良製鉄用原料炭を長期に亘って引取るオフテイク権利契約を WHC 社と締結しましたので、お知らせします。
1.本件権益取得の背景と目的
(1)経営戦略上不可欠な製鉄用原料炭権益確保
日本製鉄は、カーボンニュートラルの実現に向け、「高炉水素還元」「大型電炉での高級鋼製造」「水素による還元鉄製造」の3つの超革新技術の複線的開発によるカーボンニュートラルの実現を目指しています。高炉水素還元プロセスにおいて二酸化炭素排出削減と銑鉄生産の安定性・効率性を両立させるためには、投入するコークスの品質(強度等)を高めることが有効です。
BW
炭鉱から産出される製鉄用原料炭(非微粘結炭・準強粘結炭)は、当社の技術的な強みである石炭事前処理プロセスを最大活用することにより、コスト低減を図りながら二酸化炭素排出削減に寄与する高品質コークスの製造が可能となる石炭です。
また、BW
炭鉱は日本から近距離にある豪州に立地する大規模露天掘り炭鉱で、資源量は潤沢であり、安定的な品位の原料炭を長期的に供給可能であることから、当社の調達・操業の安定性向上に寄与することが期待されます。
今後も当社の技術的先進性をフルに活用し、コスト低減を図りつつ高品質コークスを製造し続けるべく、BW 炭鉱への投資を行うことと致しました。
(2)優良原料権益確保による連結収益の安定化
日本製鉄は「中長期経営計画」において、国内製鉄事業、海外製鉄事業、原料事業、鉄グループ会社、非鉄 3 社の 5
つの事業領域による利益成長を通じて名実ともに総合力世界 No.1
の鉄鋼メーカーとなることを目指しています。しかしながら、資源開発投資の構造的な減少等により鋼材市況変動とは無関係に原燃料価格が高止まりするリスクが現実のものとなりつつある状況は、連結収益安定化にとっての大きな課題です。
日本製鉄は、今回の権益取得により、必要とする製鉄原料の安定調達に加え、BW
炭鉱の当社持分を連結することが可能となります。これにより、外部環境に左右されにくい厚みを持った連結収益構造の構築を一層推進していくとともに、原料権益の収益拡大を通じて、連結収益水準の向上にも寄与することが期待できます。
日本製鉄は、カーボンニュートラルの実現に向けた超革新技術の他国に先駆けた開発・実機化に果敢に挑戦していますが、そのために必要な巨額の研究開発投資および実機化設備投資の原資確保に向けて、引き続き原料〜製造〜流通一貫での厚みを持った事業構造の構築と、各事業領域の収益基盤の強化を通じた連結収益水準の向上に取り組んでいきます。
2.今回取得する権益・出資スキームおよび製鉄用原料炭オフテイク権利契約の締結について
日本製鉄は BW 炭鉱の権益の一部を取得する出資契約を締結するとともに、原料炭を WHC
社から長期に亘って安定調達することが可能となるオフテイク権利契約を締結しました。また、Blackwater Joint
Venture(以下、BWJV)を設立する合弁契約を WHC 社と締結し、BWJV の重要事項に関する当社の拒否権等を定めます。
(今回取得する BW 炭鉱の権益等の概要)
取得権益比率 BW 炭鉱権益持分の 20%
権益取得形態 Un-Incorporated JV
BWJV 出資構成 WHC 社 70% 日本製鉄 20% JFE スチール 10%
取得金額 720 百万米ドル(約 1,080 億円)
(参考1) Blackwater 炭鉱の概要
場所 豪州クイーンズランド州 Bowen Basin
生産量 年間 1,010 万 t(2024 豪州会計年度実績)
採掘方法 大規模露天掘り
(参考2) Whitehaven 社の概要
名称 Whitehaven Coal Limited
本社所在地 Level 28, 259 George Street Sydney NSW 2000
代表者 Paul James Flynn
事業内容 石炭事業専業
沿革 1999 年会社設立
以後、豪州ニューサウスウェールズ州ガネダ地区を中心に石炭事業を展開。
2024 年 4 月より豪州クイーンズランド州の原料炭事業に本格参入。
なお WHC 社プレスリリースについては、下記の WHC 社ウェブサイトより参照ください。
三菱商事は豪州クイーンズランド州において、同社100%子会社のMitsubishi Development
を通じ、資源メジャーのBHPと共同で、BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA)
原料炭事業を展開しているが、
今般、両社は各々50%の権益を保有するBlackwater炭鉱、及びDaunia炭鉱の全権益を、豪州のWhitehaven
Coal Ltdに共同で売却する事に合意致したと2023年10月18日に発表した。
2023/10/20 三菱商事、豪州のBHP
Billiton Mitsubishi Alliance原料炭事業の一部炭鉱の売却
Blackwater 炭鉱
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2023/10 |
今回 |
三菱商事 |
50% |
ー |
ー |
BHP |
50% |
ー |
ー |
Whitehaven |
ー |
100% |
70% |
JFEスチール |
ー |
ー |
10% |
日本製鐵 |
ー |
ー |
20% |
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2024年8月22日 JFEスチール
豪州ブラックウォーター製鉄用原料炭事業への出資について
JFEスチールは、豪州の製鉄用原料炭サプライヤーであるWhitehaven
Coal Limitedが保有するブラックウォーター炭鉱の権益10%分を取得し、長期オフテイク契約を締結することを決定しましたので、お知らせします。
本投資の背景
ホワイトヘイブン社は豪州証券取引所に上場する鉱山会社です。保有するブラックウォーター炭鉱が生産する高品質原料炭は不純分が少ないため、製鉄プロセスにおける温室効果ガスの排出を一般的な原料炭と比較して低減でき、長期にわたり当社の主力の製鉄用原料炭の一つとして使用されています。
今後、インド、東南アジア地域において高炉法による粗鋼生産に伴うコークス需要の高まりが想定される一方、製鉄用原料炭炭鉱の新規開発や拡張が困難となりつつあり、将来的に原料炭の供給タイト化が懸念されています。
本投資は、このような環境下において、権益の一部取得により高品質のブラックウォーター炭を安定的に調達し、当社の収益安定化に寄与することを期待しています。
本投資の概要
当社は、100%子会社のJFE Steel Australia
Resources (JStAR社)
を通じて、ブラックウォーター炭鉱権益10%分を360百万米ドル(約540億円)にて取得する権益譲渡契約をホワイトヘイブン社と締結しました。
これにより、当該製鉄用原料炭事業運営の意思決定に参画するとともに、同炭鉱が生産する製鉄用原料炭の長期的な安定調達を行います。
【ブラックウォーター炭鉱の概要】
・所在地 : 豪州クイーンズランド州東部ボウエン地区
・生産量 : 年間1,010万トン(2024豪州会計年度実績)
・採掘方法 : 大規模露天掘り
・積出港 : グラッドストーン港(炭鉱より約300km)
・資源量 : 8億トン※(30年以上の採掘が可能)※Measured、Indicatedベース
【ホワイトヘイブン社の概要】
・社名 : Whitehaven Coal Limited
・本社 : 豪州ニューサウスウェールズ州 シドニー市
・社長 : ポール・フリン(Paul Flynn)
・主要事業 : 鉱山業
【今回投資の概要】
・取得権益比率:ブラックウォーター炭鉱権益の10%
・JV出資構成: 当社(JStAR社) 10%
ホワイトヘイブン社 70%
Nippon Steel Australia Pty Ltd.(以下、NSA社) 20%
・取得金額(当社分):360百万米ドル(約540億円)
3.当社の製鉄プロセスにおけるCO2排出量削減の取り組みとの関連
当社は、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、製鉄プロセスにおけるCO2排出量削減に取り組んでいます。
グリーンイノベーション基金事業を活用し、「超革新高炉(カーボンリサイクル高炉)」「直接還元製鉄法」「革新電気炉(高効率・大型電気炉)」の超革新技術を複線的に開発し、早期実装を目指しています。
特に、当社独自技術であるカーボンリサイクル高炉は、炭素資源として回収したCO2をメタネーション技術によりメタンに変換し、これを高炉プロセスの還元材として活用することで、カーボンを繰り返し利用できる超革新技術です。
このカーボンリサイクル高炉にCCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)を組み合わせることにより、実質CO2排出ゼロを目指しています。
このカーボンリサイクル高炉による製鉄プロセスにおいて、安定した効率の良い操業を実現するためには、今回権益を取得するブラックウォーター炭鉱から産出されるような高品質な原料炭が、一定量必要になります。
【カーボンリサイクル高炉の概念図】
当社は、今後も、さまざまな超革新技術の開発に複線的に取り組み、気候変動問題の解決に向けた取り組みを続けるとともに、必要不可欠な製鉄原料の長期安定調達の実現により、変化の激しい環境下においても安定した収益基盤を確立することで、長期的な持続的成長に取り組んでまいります。 |