ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


2023/10/16 キオクシアとWestern Digital、経営統合へ 

経営統合に向けて協議しているキオクシアと米国のWestern Digital が月内にも合意する見通しと報じられている。

Wall Street Journalは2021年8月25日、米半導体大手Western Digitalが、同業のキオクシアホールディングスを買収する交渉が大きく進展していると報じた。しかし、双方の資産査定で意見が一致せず、進展しなかった。

最終的には両社の株式価値を対等とするなど、大枠が固まったが、本社所在地や上場市場などで合意できず、暗礁に乗り上げたとされる。

2021/9/31  Western Digital、キオクシアを買収か?

今回は、2022年夏からのメモリー不況で両社とも赤字となり、財務悪化で投資余力が細るなか、再編せざるをえない状況に追い込まれた。

キオクシアの2023/4-6月期連結決算は売上高2511億円、1031億円の当期赤字を計上するなど業績が低迷している。

Western Digital は下記の通り、ハードディスクドライブ(HDD) 専業メーカーで、2011年に日立から事業を買収して大きくなった。2015年にSunDiskを買収し、日本でキオクシアとNAND型フラッシュメモリー を共同生産する。

同社は6月決算で、業績は下記の通り(百万ドル)。前年比で大幅な減収、減益である。

  2021/7-2022/6 2022/7-2023/6
売上高 Flash 9,753 6,063
HDD 9,040 6,255
合計 18,793 12,318
営業損益 2,391 -1,285
純損益 1,500 -1,730

ーーー

付記

経営統合に関し、金融機関が1兆9000億円の融資を確約したことが10月20日に判明した。

3メガバンクと日本政策投資銀行が合計1兆9000億円を融資する。このうち、4000億円は運転資金として引き出せる融資枠(コミットメントライン)

同社は2019年5月31日に日本政策投資銀行から3000億円、メガバンク3行から9000億円、合計1兆2000億円を調達しており、3行は1000億円の追加融資枠も設定した。統合に当たり、この借り換えが必要となる。


付記  交渉打ち切り

Western Digital は10月26日までに交渉打ち切りをキオクシアに通知した。

SKハイニックスの同意が得られず、キオクシア筆頭株主のペインキャピタルとも統合条件で折り合わなかった。


ーーー

報道では統合は下記の通りとなる。

持ち株会社 Kioxia Holdings の下に両社がぶら下がる形になる。統合比率はキオクシア側が49.9%、Western Digital側が50.1%だが、実質的な経営権はキオクシア側が握る見通し。

登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。

統合にあたり日本の3メガ銀行と日本政策投資銀行などが1兆5千億〜1兆9千億円程度の融資を検討しており、20日までに金融機関と融資条件などを詰める。

キオクシアの大株主であるBain Capital が企業合併のために資金5000億円の拠出を検討しているとも報じられた。 

 

 

キオクシアは半導体フラッシュメモリーで世界3位、Western Digital は4位。統合でシェアは31.7%となり、2位のSK hinixを抜き、首位の韓国サムスン電子33.7% に並ぶ規模となる。


合意後に各国での規制当局の承認が必要となるほか、キオクシアに間接出資する韓国 SK hinix が反発しており、実現にはまだ不透明な部分も残る。

中国が合併を承認しないだろうとの見方が強い。米国と日本は半導体製品の中国への輸出を規制しており、中国の反発は大きい。

東芝は2017年9月28日、東芝メモリのBain Capital への株式譲渡契約を締結したと発表した。

2018年5月に中国の独占禁止法当局が売却案を最後に承認したことが分かり、2018年6月1日に譲渡が完了した。2018年3月末までに中国の承認が得られる見通しがないため、3月決算で売却益を計上できず、債務過剰となるため、第三者割当による新株式の発行を余儀なくされた。その後、長年「物言う株主」に悩まされることになった。

現在はキオクシアの中国向け輸出は日本政府の規制下にあるが、合併に当たり、米国政府が中国向け輸出の規制を厳しくする可能性がある。

SK hinixはBain Capitalを通じ、14.96%を出資している。同社はNAND型フラッシュで2位のメーカーであり、合併により 1位、2位と大きく話される3位メーカーに陥落するため、統合に反対している。
韓国政府が合併に条件をつける可能性もある。

ーーー

現時点でのキオクシアの株主、出資比率は下記の通り。

2020年8月の優先株転換後の出資比率のままである。

Bain/SK hinix の出資は4口に分かれているが、そのうちBCPE Pangea Cayman2, Ltd.はSK hinix の出資分と推定される。

  出資比率  
東芝 40.64%  
HOYA 3.13%  
Bain/SK hinix BCPE Pangea Cayman, L.P. 25.92%


Bain  Capital  
          41.28%
 

BCPE Pangea Cayman 1A, L.P. 9.37%
BCPE Pangea Cayman 1B, L.P. 5.99%
BCPE Pangea Cayman2, Ltd. 14.96%

SK hinix

合計 100%  

 

東芝は2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する Pangeaで、譲渡価額は2兆円。

2018年6月1日に譲渡が完了した。

東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億 円分(総数の約40.8%)取得し、その結果、約40.2%の議決権を取得した。 Hoyaは9.9%の議決権を得た。

NAND型フラッシュメモリーで競合するSK hinixの参加については、下記の条件を付けた。

SK hinixは、1290億円は今後議決権がある株式に転換できる転換社債形式で、残りはBain Capitalが組成する会社に融資する形とする。

融資の一部(1290億円)については、株式(15%分)に転換する権利が付与されているが、今後10年間は 15%超の議決権を保有することはできず、当該転換権の行使には各国競争法当局の承認が必要となる。

東芝メモリとの間には、少なくとも10年間、ファイヤーウォールが設置され、SK hinixによる東芝メモリの機密情報へのアクセスは制限される。

Apple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの需要家4社が(議決権無しで)4,155億円を出資している。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

東芝メモリは2,019年5月31日、日本政策投資銀行による出資とメガバンク3行からの借り入れで、6月末までに総額1兆2000億円を調達すると発表した。3行は1000億円の追加融資枠も設定する。

今回の調達資金 1.2兆円(他に融資枠1千億円)で Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却する。
残りの資金で金融機関からの借入金 6千億円を返済する。現金700億円が手元に残ることとなる。

(単位:億円) 出資 合計 転換
社債
借入金 再計 今回 処理後
議決権 優先株
東芝 40.2% 1,096 2,409 3,505     3,505   3,505
HOYA 9.9% 270   270     270   270
(日本側) (50.1%) (1,366) (2,409) (3,775)     (3,775)   (3,775)
Bain 49.9% 1,361 759 2,120     2,120   2,120
SK hinix     2,660 2,660 1,290   3,950   3,950
(Bain / SK) (49.9%) (1,361) (3,419) (4,780) (1,290)   (6,070)   (6,070)
Apple ほか4社
(買戻し額)
    4,155 4,155     4,155

-4,155
(-5,300)

0

金融機関           6,000 6,000

-6,000
9,000

9,000
日本政策投資銀行               3,000 3,000
INCJ
(産業革新機構)
              0  
合計 2,727 9,983 12,710 1,290 6,000 20,000 1,845 21,845
(今回のCash 増)             700  

2019/4/5   東芝メモリ、1.3兆円調達

2020年8月に優先株を転換した。

  当初   現状(議決権)
東芝 40.2% 2020/8/27
優先株
 転換
210,300千株 40.64%
HOYA 9.9% 16,200千株 3.13%
Bain/SK hinix 49.9% 291,000千株 56.23%
合計 100%   517,500千株 100%

東証は2020年8月27日、キオクシアホールディングスの上場を承認した。上場予定日は10月6日であったが、上場を延期し、現在に至る。

2020/8/31 キオクシア、10月に上場 

ーーー

キオクシアとWestern Digital は日本でNAND型フラッシュメモリーの生産を共同で行っている。

発端は1999年の東芝と米国のSanDiskとのNAND型フラッシュメモリ事業に関する提携の基本合意である。

2000年5月にNAND型フラッシュメモリの製造合弁会社の設立

社名:FlashVision LLC
立地:バージニア州(東芝子会社Dominion Semiconductor内に700億円の設備投資)
出資比率、製品引取比率:50/50

2002年4月に「フラッシュビジョン(旧:Flash Vision LLC)」を東芝四日市工場内に移転

以降、順次増設、両社の出資比率はたびたび変更

詳細は 2017/4/14     東芝の半導体売却に新たな難問 

Western Digial はハードディスクドライブ(HDD) 専業メーカーで、2011年に日立から事業を買収して大きくなった。

Western Digital は2015年10月21日、SunDisk を190億ドルで買収すると発表、2016年5月12日、買収手続きを完了した。

2017/5/5 Western Digital の歴史

 

経営再建中の東芝は2017年4月に半導体のメモリー事業を分社化し、買収を前提に新会社「東芝メモリ」を発足させた。Western Digital とのJV持ち分も移管した。

これに対し、Western Digitalがクレームを付けた。

2017/4/14     東芝の半導体売却に新たな難問

2017/5/15  東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て

以降、下記の推移があり、最終的に東芝メモリとWestern Digital は和解し、このあとも共同で日本での生産を行っている。

2017/7/17 東芝とWestern Digital の法廷闘争

2017/8/8   東芝、東芝メモリの増設を単独実施

2017/9/7      東芝メモリの売却、9月13日に決定岩手県北上市に新規拠点)

2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表

2017/12/14 東芝、Western Digital と和解

東芝メモリとWestern Digital は、係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化することで合意した
建設中の最先端メモリ製造棟で
ある四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について共同で実施する

両社は2019年5月、北上市に東芝メモリが建設中の北上工場第1製造棟において両社共同で設備投資を実施する正式契約を締結した

2018/9/21 東芝メモリ 四日市工場 第6製造棟およびメモリ開発センターの竣工

2019/7/19   東芝メモリ、「キオクシア梶vに改称

2020/10/29 キオクシア、四日市工場で新製造棟を建設


2023/10/17 Exxon Mobil、米シェール大手Pioneer Natural Resources を595億ドルで買収合意 

Exxon Mobil は10月11日、米シェール大手の Pioneer Natural Resources を買収すると発表した。買収額は595億ドル(債務込みで645億ドル)で、Pioneerの株主は1株あたりエクソン株 2.3234株を受け取る。2024年前半の買収完了を目指す。

新型コロナウイルス禍からの経済再開後、化石燃料の収益力が高まっており、シェールの事業基盤を再構築する。

付記

FTCは12月5日、Exxon Mobil とPioneer Natural Resources に対し、買収取引に関する詳細情報を求める2度目の要請書を送付した。 FTCは、買収が競争環境を損なわないか調べており、調査後に買収案を阻止するために提訴するか判断する。

 

PioneerはScott Sheffield 氏が1997年に創業し、米国のシェール革命をリードしてきた。テキサス州西部のシェール鉱区「パーミアン盆地」で有数の生産量を誇り、日量60万バレル(原油換算)以上の石油・天然ガスを生産する。

パーミアン盆地はMidland Basin とDelaware Basinに分かれる。

PioneerはMidland Basinに大きなガス田を持つ。これに対しExxon Mobil はDelaware Basinに大きなガス田を持つが、Midland Basinにも鉱区を持つ。

Pioneerはパーミアン油田最大の油井運営会社で総生産量の9%を占め、Exxonは6%で第5位の座を占めている。

Exxon Mobil はPioneer の買収により、自社の両Basinの57万エーカーにPioneerのMidland Basinの85万エーカーを加え、取引完了時には、エクソンモービルのパーミアン地での生産量は2023年の生産量の以上の130万石油換算バレル/日(MOEBD)となり、2027年には約200万石油換算バレル/日に増加すると予想されている。

ーーー

本年5月にはChevron Corporationが米シェール開発会社 PDC Energy, Inc.を買収することで同社と合意した。買収額は63億ドル(債務を含めて76億ドル)で年末までに取得する見込み。

PDCはコロラド州のDenver-Julesburg (DJ) 盆地に27万5,000エーカー(約1,113平方キロ)の権益、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるPermian 盆地に2万5,000エーカー(約101平方キロ)の権益を保有している。

いずれもChevronが2020年にNoble Energy, Inc.から買収したガス田に隣接している。(2020/10/2 米シェール各社、業績悪化に悩む

2023/5/25     Chevron、米シェール会社 PDC Energy を買収



出光興産とトヨタ自動車は10月12日、バッテリーEV(BEV)用の有力な次世代電池である全固体電池の量産化に向けて、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築に両社で取り組むことで合意したと発表した。

全固体電池の材料開発等で世界をリードする両社が連携することで、2027〜28年の全固体電池実用化をより確実なものとし、その後の本格量産を目指す。

今回の協業は、BEV向けに高容量・高出力を発揮しやすいとされている硫化物系の固体電解質が対象で、この硫化物固体電解質は、柔らかく他の材料と密着しやすいため、電池の量産がしやすいという特徴がある。

出光はこれまで、石油精製の過程で得られる副産物を活用して、固体電解質の中間材料である硫化リチウムの製造技術を培い、安定供給体制の構築を目指した量産技術の開発に取り組んできた。

石油化学事業で培った高純度の硫化リチウム製造法を確立しており、さらに硫化リチウムを原料とする硫化物系固体電解質について数多くの特許を保有している。

全固体リチウムイオン二次電池の普及・拡大へ向け、固体電解質の小型実証設備第1プラント(稼働開始:2021年11月)の生産能力を増強すると発表した。加えて7月より小型実証設備第2プラントの稼働も開始し、全固体電池の開発を進める自動車・電池メーカーなどへ、当社の固体電解質を着実に供給するとしていた。


なお、同社は産業構造審議会 グリーンイノベーション部会の産業構造転換分野WG説明資料で、

「全固体電池の広がり」(将来像)として、

1. 高容量化 
 理論的には最大容量とされる硫黄系正極とLi金属負極の適用

2. 金属資源リスクの低減  
 Ni、Coなど高価格金属を使わない硫黄系正極の適用

3. リサイクル効率向上 
 Li.に特化した回収

を挙げている。

 


トヨタと出光は、本格量産に向けて数十名規模のタスクフォースを立ち上げ、以下の通り協業を進める。

第1フェーズ 「硫化物固体電解質の開発と量産化に向けた量産実証(パイロット)装置の準備」

  • 出光とトヨタは、双方の技術領域へのフィードバックと開発支援を通じ、品質・コスト・納期の観点で、硫化物固体電解質を作り込み、出光の量産実証(パイロット)装置を用いた量産実証に繋げる。

第2フェーズ 「量産実証装置を用いた量産化」

  • 出光による量産実証(パイロット)装置の製作・着工・立ち上げを通じた、硫化物固体電解質の製造と量産化を推進
  • トヨタによる、当該硫化物固体電解質を用いた全固体電池とそれを搭載した電動車の開発を推進し、全固体電池搭載車の2027−2028年市場導入を、より確実なものにする。

第3フェーズ 「将来の本格量産の検討」

  • 第2フェーズの実績をもとに、将来の本格量産と事業化に向けた検討を両社で実施

ーーー

全固体電池のメリットは、電解質が固体であるため、電気を伝えるイオンが速く動けること、それにより充電時間の短縮、航続距離の拡大、高出力化が可能になることである。温度影響を受けにくく、高温・高電圧に強いため、安定性が高いという特徴もある。

電池がより小型で高性能になることで、動力性能が求められるスポーツカーから、急速充電の頻度が高い商用車まで、バッテリーEVで多様なニーズに応える。

最も大きな課題は耐久性で、充放電を繰り返すと、正極・負極と固体電解質の間に亀裂が発生し、電池性能が劣化してしまうことが長年の技術課題であった。

2013年以降、この課題解決に出光とともに取り組んできた。

そのひとつが、柔軟性と密着性が高く、割れにくい固体電解質の技術である。両社の材料技術を融合させることで、割れにくく、高い性能を発揮する材料を開発することができた。この新しい固体電解質に、トヨタグループの正極・負極材、電池化技術を組み合わせることで、全固体電池の性能と耐久性を両立できるメドがついた。

今後、「量産化」に取り組む。実用化のターゲットは2027年から2028年。

 


2023/10/19   ENEOS和歌山製油所 10月16日に操業停止、跡地で持続可能な航空燃料「SAF」の製造へ

ENEOSは10月16日、有田市の和歌山製油所の操業を停止した。

今後、跡地を活用して、持続可能な航空燃料「SAF」の製造など、再生可能エネルギーの供給を目指す。

石油元売り最大手のENEOSの和歌山製油所は、1941年に有田市で操業を開始し、ガソリンなどの燃料を中心に生産してきた。

<和歌山製油所の概要>
所在地 : 和歌山県有田市
操業開始 : 1941年(昭和16年)
原油処理能力 : 127,500バレル/日


同社は2022年1月、和歌山製油所の精製・製造および物流機能について、2023年10月を目途に停止することを決定したと発表した。

国内石油製品の構造的な需要減退やアジアを中心とした国際競争の激化に加え、今般の新型コ ロナウイルスによる急激な需要減少等、石油精製販売事業を取り巻く様々な環境を総合的に勘案 した結果、製油所・製造所の生産・供給体制の再構築が急務と判断し、停止を決めた。

2022/1/28 ENEOS、和歌山製油所を2023年10月に停止

跡地については、脱炭素化を進める「GX=グリーントランスフォーメーション」のモデル地区とするビジョンを掲げていて、持続可能な航空燃料「SAF」の製造など、再生可能エネルギーの供給を目指すとしている。

SAF(サフ)とは「Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料」である。主に植物などのバイオマス由来原料や、飲食店や生活の中で排出される廃棄物・廃食油などを原料とする。

ENEOSは2022年11月、持続可能な航空燃料(SAF)について、生産拠点を当初検討した根岸製油所(横浜市)から和歌山製油所(有田市)に変更すると発表した。生産開始年も1年遅らせて2026年とする。

同社は仏トタルエナジーズと事業化調査を進めている。本検討対象の設備では、主に廃食油、獣脂といった廃棄物や余剰物を原料とし、将来的に年間約30万トン(40万KL)のSAF製造を想定している。両社はSAF製造の合弁会社を設立する予定。

ENEOSは三菱商事とも、2027年をめどに原料調達を含むSAFの供給網をつくる検討をしている。


日本政府は、2030年までに国内航空会社の航空燃料需要の1割をSAFにする方針を掲げているが、商用化に成功したのはフィンランドのネステなど一部の企業にとどまっており、日本勢は出遅れている。

経産省 持続可能な航空燃料(SAF)の導⼊促進に向けた施策の方向性について

 

 

参考 ENEOSの体制の推移:

 


 

2023/10/20 三菱商事、豪州のBHP Billiton Mitsubishi Alliance原料炭事業の一部炭鉱の売却

三菱商事は豪州クイーンズランド州において、同社100%子会社のMitsubishi Development を通じ、資源メジャーのBHPと共同で、BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA) 原料炭事業を展開しているが、今般、両社は各々50%の権益を保有するBlackwater炭鉱、及びDaunia炭鉱の全権益を、豪州のWhitehaven Coal Ltdに共同で売却する事に合意致したと10月18日に発表した。
 
本売却に伴い、両社は権益対価として合わせて32億米ドル(21億米ドルを売却完了時に受領、11億米ドルを売却完了後3年間に亘り延払いで受領)に加え、将来の原料炭価格に応じて最大9億米ドルを売却完了後3年間に亘り受領(最大受領額は41億米ドル)する。
 
生産規模は年約1500万トンでBMA全体の約25%を占める。
 
Whitehaven Coal は豪州証券取引所に上場する石炭専業会社で、豪州ニューサウスウェールズ州において4つの一般炭及び原料炭炭鉱を保有しており、安定した操業実績がある他、豪州クイーンズランド州においても未開発の原料炭鉱区を保有している。
 
売却は豪当局の承認手続きを経て2024年度中に完了する見通し。
 
ーーー
 
BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA) はオーストラリア最大の石炭生産企業で、原料炭の海上輸送シェアは世界一である。2001年に三菱商事がBHP Billitonから権益を取得することにより発足した。BHP Billitonの原料炭事業における中核である。

BMAはオーストラリア東部クィーンズランド州の大規模石炭埋蔵地域であるBowen Basinの、北部の都市 Moranbahから南部 Blackwater まで広域にわたって9つの炭鉱で露天堀及び坑内堀を行っていた。また、石炭を出荷するための港湾施設Hay Point の操業も行っている。

9つの炭鉱のうち、Norwich Park炭鉱(現在名はSouth Saraji) は石炭価格下落、洪水による生産減、高コストを理由に2012年5月に休止、現在はケア&メンテナンス中。

Gregory Crinumは2012年10月に休止したが、2018年5月30日、双日がGregory Crinum の権益 100%を取得することで合意したと発た。取得金額は100百万豪ドル(約82億円)になる。

  2018/6/13    双日、三菱商事 / BHPBillitonから豪州の休止中の炭鉱を買収

今回、Daunia 炭鉱とBlackwater炭鉱をWhitehavenに売却する。

当初の9炭鉱のうち、3炭鉱を売却、1炭鉱はケア&メンテナンス中で、稼働中は5炭鉱となる。

 

 
三菱商事は金属資源ポートフォリオの優良化・下方耐性の強化に向けたレビューを継続的に行っており、今回の2炭鉱売却もその一環で、BHP Billiton Mitsubishi Allianceに於いては、高品位原料炭を産出する炭鉱群への集約が完了する。

同社は、BMAを今後も金属資源ポートフォリオに於ける中核事業と位置付け、高品位原料炭を長期に亘り安定供給していくとしている。
 
BMAが生産する高品位原料炭は、高炉に於いて排出される温室効果ガスが通常の原料炭と比較して少なく、高炉の低炭素化に資する製鉄原料。

 


2023/10/23 米、中国向け半導体輸出規制を強化

米政府は10月17日、中国に対するこれまでの半導体輸出規制を大幅に強化すると発表した。

バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術の新しい輸出規制を実施すると発表した。その後、日本やオランダが追随した。 

2022/10/10   米国、半導体の対中輸出制限を拡大

今回の新たな規制のポイントは下記の通り。

中国通信機器大手の華為技術(Huawei)は8月に回路線幅 7ナノメートルの半導体「キリン9000s」を搭載したスマートフォン「Mate60Pro」を発売した。この先端半導体は、中国の半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が受託生産した製品とされ、高速通信規格「5G」相当の通信性能も持つ。

2023/9/11  中国Huawei、米国の制裁を克服し5G対応のスマホ発売

SMICがそれを製造する際に米国の技術(機械、コンポーネント、スペアパーツ、材料)を使用していることは明らかであるとされるが、その入手経路は明らかとなっていない。

これにより、従来の規制の有効性を危ぶむ声が高まった。

今回、世界各地の中国企業の子会社や事業所への輸出も事実上、禁じる。中国と関係が近いおよそ45の国も輸出規制の対象にし、第三国を迂回して仕入れる抜け穴を封じる。

米技術を使った製品であれば日本などの海外企業も規制の対象になるとみられ、中国企業の子会社との取引を精査する必要がでてくる可能性がある。

Bahrain、Egypt、Kuwait、Oman、Qatar、Saudi Arabia、アラブ首長国連邦(UAE)など40を超える国に先端半導体を輸出する際も、米当局に許可を求める。中東の国々のほか、ベトナムやラオスなども対象に入った。

輸出管理規則(EAR)のカントリー・グループで区分


 

輸出先が「D:5」に指定の国に本社がある企業

輸出先が「D:1」「D:4」「D:5」に指定の国
(ただし、カントリー・グループで「A:5」か「A:6」にも指定されている国は除く。)    イスラエルはD4でA6、キプロスはD5でA6

このうち米国が武器の禁輸対象国としている21カ国(「D:5」に指定されている国)には半導体製造装置でも別途、輸出の認可を要求する。米商務省は原則は申請を拒否する見通し。

 

人工知能(AI)に使われる先端半導体の輸出をより厳しく制限するのも柱になる。

人工知能(AI)半導体開発を手掛ける中国スタートアップの上海壁仞智能科技(Biren Technology)とMoore Thread Intelligent Technology およびその関連会社を含む13の中国企業を輸出管理規則上のエンティティー・リストに追加した。

商務長官は「本日の改定規則はわれわれの輸出管理の効果を強化し、その迂回経路を遮断するもの」との声明を出し、規則改定の背景を説明している。
例えば1年前の規則導入以降、AI半導体を扱う米国のNVIDIA Corporationは規則に該当する製品よりもわずかに仕様を落とした製品を中国に納入していたが、米国政府高官によると、今回の改定でそれら製品も実質的に対中輸出ができなくなる。

NVIDIAは昨年、輸出規制で先端AIチップである「A100」「H100」を中国に販売できなくなると、低仕様の「A800」および「H800」を販売してきた。今回の規制で「A800」および「H800」の販売が阻害される。

ゲーム向け半導体のうちの一つも規制の対象になる。

NVIDIAはデーターセンター用半導体の売り上げの25%を中国市場に依存しており、今回の規制強化に苦慮している。

アメリカの半導体業界の売り上げの99%を占めている米半導体工業会は、新たな措置は「過度に広範」であり、「海外の顧客に他を当たるよう促すことになるため、国家安全保障を促進することなく、アメリカの半導体業界のエコシステムを害する危険がある」と述べた。

中国商務省は10月18日、「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。「中国は、自国の合法的な権益を断固として守るためあらゆる必要な措置を講じる」と対抗措置をとる可能性を示唆した。

西村経済産業相は10月20日の閣議後の記者会見で、先端半導体を巡る米国の対中輸出規制強化に関し、日本企業への影響を注視していく考えを示した。

 


2023/10/24 第一三共、抗がん剤3製品について米Merckと開発・販売契約締結

第一三共は10月20日、米製薬大手Merck (北米以外での社名はMSD)と抗がん剤3製品の開発、販売に関する契約を締結したと発表した。第一三共は、契約時一時金や販売額に応じたロイヤルティーなど最大で220億ドル(約3兆3000億円)を受け取る。

3製品は薬物をがん細胞に直接届ける「抗体薬物複合体(ADC)」という仕組みを使っている。

抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)は低分子医薬品(薬物)と抗体医薬を組み合わせた複合体で、抗体が「運び役」となることでがん細胞をたたく。

薬物(ペイロード)は、新規で強力な薬剤である「DXd」で、周囲のがん細胞にも作用するバイスタンダー抗腫瘍効果を発揮し、抗体から外れた後、血液中から速やかに代謝される特徴がある。

リンカーの特徴  抗体1つ当たり最大8個のペイロードの搭載可能、血液中での高い安定性、がん細胞に多く発現する酵素で選択的に切断
ペイロードの特徴 新規ペイロード(フルDXd)、強力な活性、バイスタンダー抗腫瘍効果、血液中からの速やかな代謝

同社は現在、5つの主力抗体薬物複合体(5DXd-ADCs)を開発している。

DS-8201 エンハーツ®
DS-1062 Dato-DXd

HER3-DXd
DS-7300
DS-6000

第一三共は2019年3月29日、開発中の抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(「DS-8201」エンハーツ®)について、英AstraZenecaとグローバルな開発・販売提携を結んだと発表した。

更に2020年7月27日に、同社が保有するTROP2に対する抗体薬物複合体のDS-1062 ダトポタマブデルクステカン (Dato-DXd/DS-1062)について、AstraZenecaとグローバルな開発及び商業化契約を締結したと発表した。

2020/7/29   第一三共、抗体薬物複合体の開発・商業化で AstraZeneca と2件目の提携

今回、同社は同社独自のDXd-ADC技術を用いた残り 3つの製品、
 パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402、抗HER3 ADC)、
 DS-7300(I-DXd、抗B7-H3 ADC)及び
 DS-6000(R-DXd、抗CDH6 ADC)
について、Merck & Co., Inc.と全世界での開発及び商業化契約を締結した。
 

両社は、第一三共のADCに関する専門性及びDXd-ADC技術と、Merck のがん領域における豊富な経験及び優れた開発力を合わせ、様々ながん患者に3製品を広範囲かつ迅速に届けるため、全世界( 日本は第一三共が独占的権利)において、3製品を共同で開発し、商業化する。

3製品の製造及び供給は第一三共が担当する。

3製品は、複数の固形がんを対象とした単剤療法や併用療法において、様々な開発ステージにある。

  パトリツマブ デルクステカンは、EGFR変異を有する前治療歴のある非小細胞肺がんを対象として2023年度下期に米国で承認申請予定。
 DS-7300は、前治療歴のある進展型小細胞肺がんを対象とした第2相臨床試験を実施中。
 DS-6000は、卵巣がん等を対象とした第1相臨床試験を実施中。


第一三共は、40億米ドルの契約時一時金、15億米ドルの後払い一時金及び最大165億米ドルの販売マイルストン、合計で最大220億米ドルを受け取る。

契約時一時金:DS-7300について契約時に15億米ドル、パトリツマブデルクステカンについて7億5千万米ドル、DS-6000について7億5千万米ドル
       将来的な開発費として10億米ドルの払い戻し可能な契約時一時金(パトリツマブ デルクステカンについて5億米ドル、DS-7300について5億米ドル)
後払い一時金:パトリツマブデルクステカンについて1年後に7億5千万米ドル、DS-6000について2年後に7億5千万米ドル
販売マイルストン:製品毎に最大55億米ドル、合計最大165億米ドル
 

合計 最大220億米ドル

両社は、日本を除く全世界における利益と費用を折半する。第一三共が独占的権利を有する日本においては、 第一三共はMerck に売上に応じたロイヤルティを支払う。

全世界における3製品合計の売上規模は、2030年代半ばに向け、数十億米ドルに達する可能性があるとしている。

ーーー

Pfizer Inc.は2023年3月13日、抗体薬物複合体(ADC)でのがん治療の次世代薬開発で先行する米新興企業 Seagen Inc. を430億ドルで買収すると発表した。

2023/3/16 Pfizer、がん治療薬を手がける Seagen Inc. を430億ドルで買収 


2023/10/25 中国、EV電池材料の黒鉛製品に輸出許可義務付け

中国商務省は10月20日、商務部税関総署公告第39号を出し、一部のグラファイト(黒鉛)製品について12月1日から輸出許可を義務付けると発表した。国家の安全保障と利益を守るためとしている。

新たな規制の下で、高純度、高硬度、高強度の人造黒鉛材料、天然薄片黒鉛とその製品を含む2種類の黒鉛の輸出業者に許可申請を義務付ける。
 (1) 高純度(純度>99.9%)、高強度(曲げ強さ>30Mpa)、高密度(密度>1.73g/立方センチメートル)の人造黒鉛材料及びその製品(税関商品番号:3801100030、3801909010)、6815190020)。
 (2) 天然鱗片状黒鉛及びその製品(球状化黒鉛、膨張黒鉛等を含む。)(関税番号:2504101000、2504109100、3801901000、3801909010、3824999940、6815190020)。

「機密性の高い」3種類の黒鉛製品は既に一時的な管理下にあり、新たなリストに含まれるという。

中国商務部は、世界のサプライチェーンと産業チェーンの安全性と安定性を確保するためでもあると説明、特定の国を標的にしているわけではないとも付け加えた。

実際には中国向けの半導体の輸出規制を強めるアメリカ、中国製EVが補助金を通じて安価に販売され競争を不当に阻害していないか調査を始めたEUなどをけん制するねらいもあるとみられる。

中国からの主要な買い手には日本、米国、インド、韓国が含まれている。日本は大部分を中国からの輸入に依存している。

 

黒鉛は電気自動車(EV)向け電池に使用される。

中国は世界最大の生産国で、米地質調査所によると世界の供給量の65%を占める。

 

中国政府は、ことし8月にも半導体の材料などに使われる希少金属、ガリウムとゲルマニウムの関連品目について、輸出規制を実施している。

   2023/7/6   中国が半導体材料ガリウムなど輸出規制 


2023/10/26   ChevronHess Corporationを530億ドルで買収

米石油大手Chevronは10月23日、米同業Hess Corporationを530億ドルで買収すると発表した。

買収は全額、株式交換方式で行う。Hess株主は1株あたりChevron株 1.025株を受け取る。負債込みの買収額は600億ドルとなる。

Hessの買収により、Chevronの既に有利なポートフォリオがアップグレードされ、多様化される。

買収完了後1年以内のコストシナジーは約10億ドルとなる見込み。

Chevronは買収完了後、自社株買いプログラムを25億ドル拡大し、年間200億ドルの上限まで引き上げる意向という。

 

Hessの主要事業は次の通り。

 

ChevronとHessの主要事業地域

 

1. ガイアナ事業(南米ガイアナ及びスリナムでの石油およびガスの探査・生産)

南米ガイアナ沖のStabroek鉱区(総面積26,820平方キロメートル)では、ExxonMobil(権益保有比率45%)、Hess(同30%)およびCNOOC(同25%)により組成されるコンソーシアムが2015年にLiza油田を発見して以降、30以上の油田が発見された。2022年4月には、同鉱区の可採埋蔵量が110億バレルを上回ることが明らかにされた。

ExxonMobilとパートナーは、ガイアナ環境保護庁(EPA)に対して、同鉱区で試掘井と評価井を合わせて35坑を掘削することについて申請を行っていたが、2023年7月にこれが認められた。掘削は2023年第3四半期に開始される予定で、2028年まで続く可能性があるという。

今後の10年にわたる生産拡大が期待されている。

2016年にHessは隣接のスリナム沖のBlock 42 の1/3の権利を取得した。 その北側のDeepwater Block 59は2017年にHess、ExxonMobil、Equinor が取得した。. 

 

2.シェール事業: (上図)

  • Hessは、主にBakkenシェールプレーンとPermian盆地でのシェール資産を保有しており、これらの地域での探査・生産活動を展開している。
  • これらのシェールプレーンは、アメリカにおける重要なエネルギー生産地域であり、Hessはこれらの地域で高い生産能力を持つことから、国内のエネルギー供給の一翼を担っている。

 HessのBakken資産は、ChevronのDJおよびPermian Basin にさらに優れた米国のシェールポジションを追加し、国内のエネルギー安全保障を一層強化する。

3.   Gulf of Mexico

4. Malaysia / Thailand

  

 

買収完了は来年上半期ごろの予定。ヘスのジョン・ヘス最高経営責任者(CEO)は買収完了後にシェブロンの取締役会に入る。

ChevronのCEOは「独占禁止法上の懸念はない」とし、今回の買収は「エネルギー安全保障にとって素晴らしいことだ」と述べた。


2023/10/26  米下院議長に共和党のMike Johnson 議員を選出 

米国議会下院では、多数派を占める共和党の内部対立で、共和党強硬派の反対を押し切って「つなぎ予算」を通したMcCarthy議長が今月3日に史上初めて解任され、3週間以上にわたって法案の採決などができない状況が続いていた。

2023/10/2 米議会、土壇場で政府機関閉鎖を回避 付記

共和党は党の議長候補が内部対立で支持をまとめられず相次いで撤退する中、24日、4人目の議長候補として下院共和党会議の副議長を務めるMike Johnson 議員を決めた。

これを受けて下院は25日に本会議を開き、投票を行った結果、Mike Johnson 議員が、投票した共和党議員全員の支持を固め、下院の過半数215票を超える220票を獲得して、正式に議長に選出された。

「党内で内紛が続く状況に疲弊した共和党議員たちがジョンソン氏の選出に向けて結束した」と報道されている。

下院議長の不在という異例の事態は22日ぶりに解消された。

       10/25 投票結果 共和党 民主党 合計 欠員
共和党 Mike Johnson 220   220  
民主党 Hakeem Jeffries院内総務   209 209  
投票合計 220 209 429  
(過半数)     (215)  
棄権 1 3 4  

合計

221 212 433 2


これまでの経緯:

マッカーシー下院議長の解任を受け、共和党は10月11日、Steve Scalise 院内総務を議長候補に選んだ。強硬派のJim Jordan司法委員長を破った。情報によると、221名の議員のうち、111:39であった。

民主党は満場一致で Hakeem Jeffries 院内総務を候補に選んだ。

共和党のScalise 院内総務は、本会議で必要な過半数(217票)を確保できる見通しが立たず、10月12日、一転して辞退を表明した。

10月13日、保守強硬派のJim Jordan司法委員長を選出した。この日の投票では、Jordan氏が124票を獲得し、ジョージア州選出のAustin Scott議員(81票)に勝利した。しかし、本選挙の下院採決でJordan氏を支持するかどうかの信任投票では、賛成は152票で、反対が55票に達した。

ジョーダン氏は、トランプ前大統領が推薦する右派議員で、保守強硬派でつくる「フリーダム・コーカス(自由議連)」の創設メンバー。下院議長解任の原因となった強硬派議員と近く、党内穏健派の一部が反発している。

前回1月の下院議長選でマッカーシー氏が選出された際は、党強硬派の造反で決着までに15回の投票を要した。

2023/1/7   米下院の議長選挙、ようやく決着

下院での議長選出投票の結果は次の通り。

       10/17 投票結果 共和党 民主党 合計 欠員
共和党 Jordan司法委員長:候補に選出 200   200  
Scalise院内総務:選出されるが辞退 7   20  
McCarhty 前議長:解任動議可決 6    
その他(1名3票、4名各1票)    
民主党 Jeffries院内総務    212 212  
棄権   1  

合計

221 212 433 2
       10/18    投票結果 共和党 民主党 合計 欠員
共和党 Jordan司法委員長:候補に選出 199   199  
Scalise院内総務:選出されるが辞退 7   22  
McCarthy 前議長:解任動議可決 5    
その他(1名3票、7名各1票) 10    
民主党 Jeffries院内総務    212 212  
棄権        

合計 (過半数 217)

221 212 433 2

ジョーダン下院司法委員長は10月19日、共和党議員らとの数時間におよぶ非公開会合後、次期下院議長を選出する3回目の投票に臨むと表明した。

ジョーダン氏は当初、Patrick McHenry 下院議長代行の権限を拡大する案での投票を提案し、下院議長選への出馬を事実上辞退した。下院民主党やホワイトハウスは同案を受け入れたが、共和党議員の大半が拒否したという。

       10/20   投票結果 共和党 民主党 合計 欠員
共和党 Jordan司法委員長:候補に選出 194   194  
Scalise院内総務:選出されるが辞退 8   25  
McCarthy 前議長:解任動議可決 2    
その他(6票、4票、2票、1票x3人) 15    
民主党 Jeffries院内総務    210 210  
棄権 2 2 4  

合計

221 212 433 2


投票後の秘密投票で共和党はJordan氏を112 対86で候補から外した。

10月22日(日)までの立候補は下記の9人、このなかから共和党としての候補を選ぶ手続きに入る。
  Tom Emmer、Mike Johnson、Kevin Hern、Byron Donalds、Austin Scott、Jack Bergman、Pete Sessions、Gary Palmer、Dan Meuser

10月24日午前の非公開会合
    投票前にDan Meuser、Gary Palmer が撤退
   次の順で落選 @Pete Sessions、A Jack Bergman、B Austin Scott、C Byron Donalds and Kevin Hern

 残ったのがTom Emmer、Mike Johnsonの2人で、下院共和ナンバー3のTom Emmer院内幹事を議長候補に選んだ。Mike Johnson が次点。
 しかし、Donald Trump がEmmer指名に反対を表明。党内の反対にあって、
Tom Emmerは同日午後に就任を断念し、Mike Johnsonを支持した。

米下院共和党、10月24日夜 Mike Johnson (128票)を候補に選んだ。McCarthyが43票を得た。

Johnson議員への反対も多く、これまでの経緯からは、下院での過半数は難しいとみられた。

しかし、McCathy前議長が共和党内の反対を押し切って通した「つなぎ予算」は11月半ばごろまでの45日分の予算を確保するもので、期限切れが近づく。

バイデン政権はイスラエルとウクライナへの軍事支援と、米・メキシコ国境警備強化の資金として、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表したが、棚上げになっている。

今回、「党内で内紛が続く状況に疲弊した共和党議員たちがジョンソン氏の選出に向けて結束した」

 


2023/10/27  Samsung SDI、現代自動車にEV用電池を供給へ

韓国の電池大手Samsung SDIは10月23日、現代自動車の欧州工場に対して2026年から7年間にわたってEV用電池を供給すると発表した。 両社にとって初めての電池供給契約となる。

Samsung SDI のハンガリーの工場で生産 する現在開発中の「角形バッテリー」を2026年から2032年まで現代自動車の チェコの完成車工場に供給する。ニッケル比率を高めた正極材と独自素材の負極材を使うことでエネルギー密度を高めてEVの航続距離を伸ばせる。(Samsung SDIは2017年5月にハンガリーのグドゥ(Goed)市に、蔚山と中国西安に次ぐ3つ目の工場を新設した。)

両社はまず欧州で供給を始め、徐々に取引関係を拡大していく方針。

 

現代自動車はこれまでLG Energy SolutionやSK On からパウチ型の車載電池を主に調達してきた。新たにSamsung SDI から角形電池を調達することでサプライヤーを分散し、安定的なEV生産体制につなげる。

ーーー

現代自動車グループは2023年4月25日、韓国SK Onと合弁で電池セル生産会社を米国に設立する計画を発表した。両社は2022年11月に北米向け電気自動車(EV)用電池の供給について覚書を締結していた。

合弁会社はジョージア州Bartow Countyに電池セル工場を建設する。総投資額は50億ドルで両社折半出資。

 

現代自動車グループ とLG Energy Solutionは2023年5月26日、米国に自動車用バッテリーのJV工場を建設すると発表した。

現代自動車のEV新工場が建設される米ジョージア州ブライアン郡に建設する。JVは折半出資で、総投資額は5兆7000億ウォン(約43億ドル)。年間約30ギガワット時(GWh)のバッテリーセル(EV 約30万台) を生産する。

2023/5/31 現代自動車、SK On とのJV 及び LG Energy SolutionとのJVで米国にバッテリー工場建設

ーーー

Samsung SDIはGM、ステランティス、BMWといった自動車メーカーにEV用電池を供給している。

2023/4/27 Samsung SDIとGM、バッテリー生産のJV設立

2023/10/11 SamsungとStellantis、米国で自動車用電池の第2工場建設を決定

ドイツ高級車メーカーのBMWは2019年11月21日、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)及びSamsung SDIの2社に合わせて100億ユーロ超に相当する電池を発注したと発表した。

2018年半ばに公表したCATLへの最初の発注額である40億ユーロから今回73億ユーロに引き上げ、契約期間は2020年から2031年とした。

またSamsung SDIとも29億ユーロ相当の電池を調達する契約を締結した。2021年から2031年までの契約である。

BMWは電池生産に必要なコバルトをオーストラリアとモロッコの鉱山から調達し、CATLとSamsung SDIに供給する。またリチウムはオーストラリアなどから入手する。

ーーー

LG Energy Solutionについては http://www.knak.jp/blog/2023-10-1.htm#toyota-LG

SK on については http://www.knak.jp/blog/2023-5-2.htm#Hyundai-sk-lg

 


 

2023/10/27 パレスチナ問題に関する国連事務総長の演説 

パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突をめぐり、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は10月24日、イスラエルによる空爆と封鎖が続くガザ地区で「国際人道法違反」が見られるとの認識を示した。

イスラエルのエルダン大使は、グテレス氏が演説でパレスチナ人の苦境に触れて「ハマスの攻撃は、何もないところから起きたわけではない」と述べたことを問題視した。ハマスのテロを「容認」する発言だと主張し、グテレス氏に辞任を要求。イスラエルは発言への対抗措置として国連当局者へのビザ発給を停止するという。

これに対し事務総長は記者団に読み上げた声明で、イスラエルの名指しは避けつつ「私の発言について、まるでハマスのテロ行為を正当化しているかのような誤解があり、ショックを受けている」と言及。イスラエル側から糾弾された自身の演説は、ハマスを名指ししてテロ行為を非難したと強調し、「パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化することはできない」との演説の一部を再度読み上げた。

Guterres 国連事務総長はポルトガルの政治家。第114代ポルトガル首相、欧州理事会議長、第10代国際連合難民高等弁務官を歴任した後、2017年から第9代国際連合事務総長。

中東に関する国連安全保障理事会の公開討論でのAntonio Guterres 国連事務総長の声明は下記の通りだが、ハマスのテロを「容認」しておらず、非難すべき点は全く無い。

ハマスによる攻撃の背景に「パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきた」ことがあるとしつつ、
「パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化するものではない」
としており、
市民を故意に殺害、傷害、誘拐すること、または市民を標的にしたロケットの発射を正当化するものは何もない」としている。
「ハマスによる2023年10月7日の恐ろしいかつ前例のないテロ行為を断固として非難した」
と述べた。

イスラエルに対しては、「(ハマスの)それらの恐ろしい攻撃は、パレスチナの人々への集団的な処罰を正当化するものではありません」ともしており、
「イスラエル軍によるガザへの執拗な爆撃、市民の犠牲者数、地域の壊滅的な破壊は増え続けており」、「ガザで目撃している国際人道法の明白な違反に深刻な懸念を抱いている」としている。

イスラエルの不満は、「パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきた」と事実を指摘され、これが遠因であるとされたことにある。これまでに多数の非難決議が出されたが、米国の拒否権ですべて否決された。
2011年2月18日には、パレスチナ地域におけるイスラエル人入植地が違法であることを再確認し、東エルサレムを含む同地域でイスラエルがすべての入植活動を停止するよう要求する安保理決議(120を超える国々が共同提案国となった)に、14の理事国が賛成したが、米国のライス国連大使は、「続行中のイスラエルの入植活動の合法性については強く否定する」と述べながら、拒否権を行使した。

 

 (ChatGPTの翻訳)

中東の状況は刻一刻と悪化しています。ガザ地区での戦争は激しさを増し、地域全体に波及の危険があります。分裂が社会を分断しています。緊張が爆発の危機をもたらしています。

このような重要な瞬間に、原則を明確にすることは不可欠です。それは、市民を尊重し保護するという基本原則から始まります。私は、ハマスによる2023年10月7日のイスラエルでの恐ろしいかつ前例のないテロ行為を断固として非難しました。

市民を故意に殺害、傷害、誘拐すること、または市民を標的にしたロケットの発射を正当化するものは何もありません。すべての人質は人道的に扱われ、条件なしに即座に解放されるべきです。私は、その家族のメンバーが私たちの中にいることに敬意を表します。

ハマスによる攻撃は無理に起こったものではないことも認識することが重要です。パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきました。彼らは自分たちの土地が入植地によって徐々に食い尽くされ、暴力に悩まされ、経済が窒息し、人々が避難させられ、家が破壊されてきました。彼らの窮状に対する政治的解決の希望は消えつつあります。

しかし、パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化するものではありません。そして、それらの恐ろしい攻撃は、パレスチナの人々への集団的な処罰を正当化するものではありません。

戦争にも規則があります。すべての関係者に国際人道法に従うよう要求し、軍事作戦の実施において市民を保護し、病院を尊重し、現在60万人以上のパレスチナ人が避難している国連施設の侵害を尊重する必要があります。

イスラエル軍によるガザへの執拗な爆撃、市民の犠牲者数、地域の壊滅的な破壊は増え続け、深刻な懸念です。

私は、ガザでの爆撃で亡くなったUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業団)のUN職員、少なくとも35人以上が数えられるということを悼み、尊敬します。その他多くの類似の殺人行為に対して、私は彼らの家族に対して非難を表明します。

市民の保護は武力紛争において最優先です。市民を保護することは、彼らを人間の盾として使用することを意味してはいけません。市民を保護することは、100万人以上の人々に対して南部に避難するよう命じ、そこには避難所、食べ物、水、薬物、燃料がなく、その後も南部自体を爆撃し続けることを意味しません。

私たちはガザで目撃している国際人道法の明白な違反に深刻な懸念を抱いています。はっきり言いますが、武力紛争のいかなる関係者も国際人道法の上に立つことはありません。

幸いなことに、ガザには遂に人道的支援が届きつつあります。しかし、UNのガザでの燃料供給は数日で切れてしまうでしょう。それは別の災害です。燃料がなければ、援助物資を届けることができず、病院には電力が供給されず、飲料水を浄化または供給することもできません。

ガザの人々は、巨大な必要に対応する程度の連続的な支援物資が必要です。その支援は制約なしに提供されなければなりません。ガザで危険な状況下で働き、命を危険に晒すUNの同僚や人道団体に敬意を表します。彼らはインスピレーションです。

壮絶な苦しみを和らげ、支援物資の提供を容易かつ安全にし、人質の解放を促進するために、私は即時の人道的停戦を再度訴えます。

この重大で直ちに危険な瞬間にさえ、真の平和と安定の唯一の現実的な基盤を見失ってはなりません:二国家解決。イスラエル人は安全保障の正当な必要性が具体化し、パレスチナ人は国連決議、国際法、過去の合意に従った独立国家の正当な志向が実現することを見なければなりません。

最後に、人間の尊厳を尊重する原則を明確にしなければなりません。偏向と非人間化は、ディスインフォメーションの津波によって助長されています。反ユダヤ主義、反イスラム主義、およびあらゆる形態の憎しみの勢力に立ち向かわなければなりません。

今日は国連の日であり、国連憲章が発効してから78年が経過しました。その憲章は平和、持続可能な発展、人権の推進への共有の約束を反映しています。この国連の日に、この重要な瞬間に、暴力がさらに多くの命を奪い、広がりをますます広げる前に、皆さんに崖から退くよう訴えます。

ーーー

国連安全保障理事会では、米国やロシアなど常任理事国が拒否権行使の応酬を繰り広げ、4度目の採決も決議成立に至らなかった。

決議採択には少なくとも9票の賛成と、常任理事国5カ国(米・英・仏・露・中)が拒否権を行使しないことが必要。

採決日 提案国 内容 賛成 反対 棄権
10/16 ロシア 人道危機を回避するための即時停戦を求める。
  ハマスが拘束する人質の解放、人道支援を可能にする、市民の安全な退避

米国反対 :ハマスへの非難無し、テロリスト擁護
中、露、UAE
など5国
日、
米、英、仏
6カ国
10/18 ブラジル ガザ地区での人道危機回避のため戦闘中断を求める。
ハマスによる凶悪なテロ攻撃非難

米国反対:決議案はイスラエルの自衛権に言及していない。
12カ国 露・英
10/25 米国 すべての国の自衛権を確認
ガザ地区への人道支援を行うために「戦闘の一時的な停止」を含むあらゆる措置

露反対:停戦の呼びかけなし。ガザの民間人への恣意的な攻撃に対する非難なし。米の中東政策の強化狙い。

中国反対:“即時停戦”要求なし。「先週、米が拒否権を行使したことを誰もが覚えている」
10カ国 露、中、
UAE
2カ国
10/25 ロシア ガザ地区の封鎖を非難
人道目的での「即時停戦」
中、露、UAE
など4国
米、英 9カ国

 

付記

国連総会(193カ国)は10月27日、「人道的休戦」などを求めたヨルダン提出の決議案を採択に必要な投票全体(賛否のみ)の3分の2以上にあたる121カ国が賛成し、賛成多数で採択した。

休戦や人道回廊の設置に加え、イスラエルに「占領国」としてパレスチナ自治区ガザ北部の住民や国連職員などに対して出した避難命令の撤回を求める。

最初の草案では即時停戦を求めていたが、採決を前に「人道的な休戦を求める」と変更した。

ハマスによる攻撃を非難する内容が含まれていなかったことから、アメリカやイスラエルは反対、日本やイギリスなどは棄権した。

一方、その前に行われた、イスラエルを支持する米国の意向が反映されたカナダ提出の修正案は必要な賛成票数に届かなかった。

ヨルダン提出案にハマスの攻撃や人質の拘束を非難する文言を加える。

カナダの国連大使は、ハマスの責任を明記しないヨルダン案を採択すれば、総会が「世界最悪のテロ攻撃の一つ」から目をそらすことにつながると主張した。

パキスタンの国連大使は採決前、ハマスを名指ししたカナダ案について「片方だけを非難するのは公平ではない」と表明。「イスラエルによる(パレスチナの)占領が問題の原罪だ」と訴えると、議場から大きな拍手が起きた。  
 

投票全体(賛否のみ)の3分の2以上(66.7%以上)で採択される。安保理と異なり、常任理事国の拒否権がないが、総会決議は強制力がない。

    賛成 反対 棄権 無投票 採択
カナダ案 ハマス明記 88 55 23 27 X  88 / (88+55)= 61.5%
ヨルダン案 ハマス明記なし 121 14 44 14 ◯ 121 / (121+14)=89.6%

付記

10月30日の安保理の緊急会合では、10月27日に国連総会で人道目的での休戦などを求める決議が採択されたことを受けて、各国からイスラエルに対し、ガザ地区の住民の保護を求める意見が相次いだ。

アメリカのグリーンフィールド国連大使は「イスラエルにはテロから自国を守る権利はあるが、国際人道法を順守しなければならない」と述べる一方、先の国連総会の決議については「ハマスの行動が非難されていないのは不合理だ」として、改めてイスラエルを擁護する姿勢を示した。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、総会決議の翌日にイスラエル軍が地上作戦を拡大したと非難したうえで「アメリカはイスラエルによる大規模な報復を支持しているのか」と詰め寄りアメリカも非難した。
 

 


2023/10/30   ウクライナ支援で不協和音 

EUは10月20日、ウクライナに対し2024〜27年に500億ユーロの支援を提供すると表明した。フォンデアライエン委員長は「世界のパートナーと民間部門と共に、EU加盟への道を歩むウクライナに予測可能な資金を提供していく」ことが目的だと述べた。

EU欧州委員会は2023年6月、2024〜27年にウクライナに500億ユーロを支援することを提案した。

EUは10月20日、ブリュッセルで開催された首脳会議で「ウクライナとその国民に必要な限り、強力な財政・経済・人道・軍事・外交支援を提供し続ける」と明記する声明を採択した。

今回表明した支援のうち170億ユーロは無償で、残りは低金利融資として提供される。

しかし、全会一致が必要となる12月の詳細合意を前にハンガリーとスロバキアが難色を示し、EU内に亀裂が生じている。

ーーー

既報の通り、ウクライナはウクライナの穀物輸出をめぐり、周辺のEU各国と争っている。

欧州委員会は9月15日、ポーランド、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの東欧5カ国に認めていたウクライナ産穀物の輸入規制を、期限の15日以降、延長しないことを決めた。

ポーランド政府は9月12日、自国農業への打撃を防ぐために実施しているウクライナ産穀物の輸入規制を15日の期限後も継続する方針を発表した。
ポーランド政府に続き、ハンガリー政府も9月15日、ウクライナの農産物24品目について独自の輸入禁止措置を発表。
スロバキア
政府もウクライナ産穀物の輸入禁止措置を発表した。

3カ国とも、ウクライナ産穀物の国内通過は引き続き、認める方針。

ウクライナは9月18日、ウクライナ産農産物の禁輸措置を巡りポーランド、ハンガリー、スロバキアの3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。

これに対し、ポーランドはウクライナへの武器供給の停止を宣言した。

9月30日のスロバキアの選挙ではウクライナへの軍事支援停止を主張する左派政党が第1党を確保した。

このため、ウクライナのカチカ通商代表は10月5日、3カ国に対するWTOでの訴訟手続きを中断すると述べた。穀物輸出を巡る緊張を緩和し、支援継続を図りたい考え。

一方、ルーマニア政府はウクライナの行動計画の発表を待ち対応を決めるとしていたが、10月13日にルーマニアの農民を保護する仕組みを採用、小麦、トウモロコシ、ひまわり、大豆の輸入のみを許可した。

ウクライナのゼレンシキー大統領は10月10日、まもなくウクライナの穀物をモルドバとルーマニアを経由して輸出する新しい「穀物回廊」が運用されると発表した。

ブルガリア議会は9月14日、輸入規制の撤廃を議決している。

2023/8/16 ウクライナ産穀物の輸出問題


付記   

EU加盟の東部5カ国 ブルガリア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアは2024年1月15日、不公正な競争を理由にウクライナの穀物に輸入関税を課すようEUに要求した。
各国の農相は、ウクライナの安価な農産物が自国の輸出市場を侵害しているとして、欧州委員会に対策を求める書簡を送った。

5カ国は、ウクライナは農業規模が大きいため、同国の穀物輸出は割安になっていると主張。EUが昨年、ウクライナ産穀物について輸入割り当てと関税を停止して以来、農家は輸出市場から締め出され「多大な損害を被っている」と訴えた。

その上で「EUはウクライナと国境を接する加盟国の市場を保護するとともに、輸出の可能性を最大限に活用できるよう支援する措置を講じる必要がある」とし、最も影響を受けやすい農産物に対して輸入関税を課すことを求めた。
 

ーーー

米国議会下院では、多数派を占める共和党の内部対立で議長が今月3日に史上初めて解任され、3週間以上にわたって法案の採決などができない状況が続いていた。

下院は10月25日に本会議を開き、投票を行った結果、トランプ前大統領に近いMike Johnson 議員が正式に議長に選出された。

トランプ前大統領は以前に、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べている。

バイデン政権はイスラエルとウクライナへの軍事支援と、米・メキシコ国境警備強化の資金として、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表している。

予算案には 、イスラエルに対する軍事支援などとしておよそ140億ドル、ウクライナに対する軍事支援などとしておよそ610億ドル、ウクライナやイスラエル、ガザ地区などに対する人道支援として91億ドルが盛り込まれている。

これについて ジョンソン米下院新議長は、ウクライナとイスラエルへの支援策は別々に扱うべきだと述べ、1060億ドル規模の予算案を支持しないことを示唆した。「ウクライナ支援での最終目的は何かを知りたい」とし、「ホワイトハウスはそれを示していない」と述べた。


2023/10/31 インドネシア タングーLNG拡張プロジェクト  LNGの出荷開始  

インドネシアのタングーLNGは、増設した第三系列液化設備からのLNG生産を開始し最初のLNGカーゴを出荷した。
 
Tangguh LNGは、インドネシアの西パプア州のベラウ鉱区、ウィリアガール鉱区、ムツリ鉱区のガス田(3鉱区全体の確認埋蔵量は14.4兆立方フィート)から供給される天然ガスを液化するプロジェクト。

インドネシア西パプア州にあるビントゥニ湾に所在し、BPをオペレーターとするコンソーシアムが、SKK Migas(インドネシア石油ガス上流事業監督執行機関)との契約に基づきその操業を請け負ってい る。

各鉱区の権益は次のとおり。
Berau 鉱区 BP Berau 48%
MIベラウ 22.856%
日石ベラウ石油開発 17.144%
KGベラウ石油開発 12%
合計 100%
Wiriagar 鉱区 BP Wiriagar 37.59839%
CNOOC Wiriagar 42.40161%
KG ウィリアガール石油開発 20%
合計 100%
Muturi鉱区 BP Muturi 1%
CNOOC Muturi 64.76677%
LNGジャパン子会社 34.23323%
合計 100%

 

天然ガスは沖合に設置される2基の無人洋上プラットフォームで生産され、パイプラインを通じて陸上LNG液化プラントに供給される。

第一期(2系列計760万トン)は2005年3月に最終投資決定を行い、2009年7月に第一船を出荷した。

タングーLNGプロジェクトは、次の4社との間でLNG売買契約を締結している。
  中国海洋石油総公司の福建省LNG受入基地  年間260万トン
  韓国Kパワー  年間最大80万トン
  韓国ポスコ  年間55万トン
  米国Sempra EnergyのメキシコLNG受入基地  年間最大370万トン

企業連合は2016年7月1日、インドネシア西パプア州のTangguh LNG拡張プロジェクトに対する最終投資決定を行ったと発表した。

第一期は2系列で年間760万トンを生産しているが、今回、年間380万トンの生産能力を有する第三液化系列を増設するもので、液化設備に加え、2つの海上プラットフォーム、LNG運搬船用の桟橋の新設及び合計13坑の生産井の掘削等を予定、2020年中の生産開始を目指す。既存の系列を加えると、能力は1,140万トンとなる。

2016/7/6 インドネシア タングーLNG拡張プロジェクトの最終投資決定  

第3系列の完成でLNGの生産能力は合計で年間1,140万トンに増加する。

第二期のLNGの出荷先は次のとおりで、インドネシアと日本のエネルギー需要を支える。
  75%相当分 最大で年間約280万トン インドネシア国営電力会社 PT. PLN    2014年に締結済
  25%相当分 最大で年間約100万トン 関西電力  2013年に締結済


タングーLNGプロジェクトに携わる企業連合は現在、天然ガス田でのCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage:CO2の回収、利用、貯留)事業を含む追加開発を検討しており、今後LNG生産におけるCO2排出削減にも取り組む。
 

Tangguh LNG 企業連合のメンバーは次のとおり。
 
  当初 現在  
BP Berau (Operator) 37.16% 40.22%  
MI Berau B.V. 16.30% 16.30% 三菱商事(56%)、国際石油開発帝石(44%)
CNOOC Muturi   13.90% 13.90% 中国海洋石油総公司
日石ベラウ石油開発 12.23% 12.23% JX石油開発(51%)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(49%)
KGベラウ石油開発 8.56% 8.56% 海外石油開発(三井物産)、MIベラウジャパン(三菱商事、国際石油開発帝石)、JX石油開発、石油天然ガス・金属鉱物資源機構
Indonesia Natural Gas Resources Muturi 7.35% 7.35% LNG Japan (住友商事 50%、双日50%)
Talisman Wiriagar Overseas 3.06%  
KGウィリアガール石油開発 1.44% 1.44% 海外石油開発(三井物産)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 

 


目次     次へ