公正取引委員会

  「独占禁止法研究会報告書について」(平成15年10月28日)
    

我が国の課徴金とEU の制裁金の賦課水準比較

日本企業を含む最近の国際カルテル事件

G7 諸国等におけるカルテルに対する措置


我が国の課徴金とEU の制裁金の賦課水準比較


                                 *単位:万ユーロ

リジン事件(平成12 年6 月)

  実行期間:1990 年〜1995 年(事業者により多少異なる)

企 業 名

EU による
制裁金賦課額
(A )

現行制度による
想定課徴金額
(B )

倍率(A /B )

A (日本)

5 ,670

約1 ,350

約4 .2 倍

ADM 社(米)

5 ,265

約738

約7 .1 倍

Sewon 社(韓国)

1 ,902

約270

約7 倍

B (日本)

1 ,890

約288

約6 .6 倍

Cheil 社(韓国)

1 ,755

約306

約5 .7 倍

総 額

16 ,482

約2 ,952

約5 .6 倍

(注1 )「EU による制裁金賦課額(A )」は,制裁金減免告示適用前の金額であり,実際には,同告示に基づき,A 50%,ADM 社10%,Sewon 社50%,B 30%,Cheil 社30%の各減額が行われた制裁金賦課決定がなされている。
(注2 )想定課徴金額の計算方法:
EEA (ヨーロッパ経済地域)域内における関係人によるリジンの年間総売上高×3年×6%。
関係人の当該売上高は,A 7500万ユーロ,ADM社 4100万ユーロ,Sewon 社 1500万ユーロ,B 1600万ユーロ,Cheil 社1700万ユーロ(いずれも1995 年,欧州委員会の決定文から抜粋)。

 

グルコン酸ナトリウム事件(平成13 年10 月)

  実行期間:1987 年〜1995 年

  EU による
制裁金賦課額(A )
現行制度による
想定課徴金額(B )
倍率(A /B )

総   額

5 ,753

約324

約17 .8 倍

(注1 )本件における「EU による制裁金賦課額(A )」は,欧州委員会の決定文が未発表のため,発表文記載の制裁減免告示適用後の金額である。
(注2 )想定課徴金額の計算方法:欧州委員会発表文に記載の実行期間中におけるEEA (ヨーロッパ経済地域)域内のグルコン酸ナトリウム年間市場規模1800 万ユーロ×3 年×6 %。
本件については,欧州委員会の決定文が未発表のため詳細は不明。


英国ニュースダイジェスト 2001-10-11

藤沢薬品など6社、カルテルで罰金

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、藤沢薬品工業株式会社やオランダの製薬会社など6社が化学品の国際カルテルに加担していたとして、6社に対し総額5,753万ユーロの罰金を命じた。委員会によると、6社は87年から95年まで、ガラス製品や食器、家庭用品の洗浄に使われる「グルコン酸ナトリウム」の価格維持や値上げを申し合わせていた。
 藤沢薬品への罰金は360万ユーロ。委員会は、捜査に協力したとして、当初より80%減額したとしている。同カルテルは98年に米司法省が摘発、各社は罰金支払いに同意している。

 

メチオニン国際カルテル事件(平成14 年2 月)

  実行期間:1986 年〜1999 年

  EU による
制裁金賦課額(A )
現行制度による
想定課徴金額(B )
倍率(A /B )

総   額

12 ,700

約4 ,680

約2 .7 倍

(注1 )本件における「EU による制裁金賦課額(A )」は,欧州委員会の決定文が未発表のため,発表文記載の制裁減免告示適用後の金額である。
(注2 )想定課徴金額の計算方法:欧州委員会発表文に記載の実行期間中におけるEEA (ヨーロッパ経済地域)域内のメチオニン年間市場規模約2億6000万ユーロ×3 年×6 %。
本件については,欧州委員会の決定文が未発表のため詳細は不明。


日本企業を含む最近の国際カルテル事件

  日本 米国 (1 ドル=120 円) EU (1 ユーロ=120 円)
ビタミン事件

(国際市場分割協
定事件)
2001年4月5日 1999年 2001年11月21日
措置
内容  
B社及びC社に対し警告 米・スイス・独・日・加の計11社に総額9億1050万ドルの罰金
A 社 7200万ドル(約86億円) 武田
C 社 4000万ドル(約48億円) エーザイ
B 社 2500万ドル(約30億円) 第一工業製薬
Roche 500百万ドル 
      史上最高(2008年時点)
BASF 225百万ドル
Merck 14百万ドル
Degussa-Huls 13百万ドル
Lonza  10.5百万ドル

全摘発事業者の減額率 ?〜100 %
DOJ発表
スイス・独・蘭・仏・日の計8社に総額8億5522万ユーロの制裁金
A 社 3705万ユーロ(約44億円)【35%】
B 社 2340万ユーロ(約28億円)【35%】
C 社 1323万ユーロ(約16億円)【30%】
全摘発事業者の減額率 ?
リジン事件
(国際数量割当協
定・価格カルテル
事件)
  1996年 2000年6月7日
措置
内容

米・韓・日の計5社に総額9125万ドルの罰金
A 社 1000万ドル(約12億円)味の素
B 社 1000万ドル(約12億円)協和発酵
DOJ発表
米・韓・日の計5社に総額1億1000万ユーロの制裁金
A 社 2830万ユーロ(約34億円)【50%】
B 社 1320万ユーロ(約16億円)【30%】
全摘発事業者の減額率 10 〜50%
グルコン酸ナトリ
ウム事件
(国際市場分割協
定・価格カルテル
事件)
  1998年 2001年10月2日
措置
内容

蘭・日・仏の計3 社に総額3250万ドルの罰金
A 社 2000万ドル(約24億円)藤沢薬品
DOJ発表
米・蘭・日・仏・スイスの計6社に総額5753万ユーロの制裁金
A 社 360万ユーロ(約4億円)
【80%】
全摘発事業者の減額率 20 〜80%
(資料)

(注1 )表中のA 〜E 社はすべて日本企業。
(注2 )網掛けした事件は,
リーニエンシーを適用している。【  】内は減額率。
(注3 )米国はリーニエンシー申請等の情報を秘密としていることから,リーニエンシーの適用が判明している事件のみリーニエンシー適用の旨を記載。

リーニエンシー:
  カルテルの情報を提供し,事件の解明に協力した企業に対する処分を減免する制度


G7 諸国等におけるカルテルに対する措置

  刑事罰
(@法人,A個人)
行政措置
(排除措置を除く)
措置減免制
度の有無
日本 @5億円以下の罰金
A3年以下の懲役又は
500万円以下の罰金
カルテル対象商品の売
上額に一定率(原則
6%)を乗じた額の課徴
  X
アメリカ @1000万ドル以下の罰金(注2 )
A3 年以下の自由刑
又は35万ドル以下の罰金(注2 )
 −   ○
カナダ @1000万カナダドル以下の罰金
A5年以下の自由刑
又は1000万カナダドル以下
の罰金
 −   ○
イギリス A5年以下の自由刑又は罰金 総売上高の10%以下
の制裁金
  ○
フランス A4年以下の自由刑又は7万
5千EUR 以下の罰金
総売上高の10%以下の
制裁金
  ○
ドイツ A5年以下の自由刑又は
罰金(入札談合のみ)
50万ユーロ以下又は違反
行為による超過売上高
の3倍以下の額の過料
  ○
イタリア  − 総売上高の10%以下
の制裁金
 X(注3 )
(参考)韓国 @2億ウォン以下の罰金
A3年以下の自由刑又は
2億ウォン以下の罰金
総売上高に一定率を乗
じた額以下の課徴金
  ○
(参考)EU  − 100万ユーロ以下又は総
売上高の10%以下の
制裁金
  ○

(注1 )上記は,カルテル等の主要な違反行為に対するもの。
(注2 )上記法定刑については,1984 年量刑改善法により,違反行為により獲得した利益又
は与えた損害額の2 倍まで引き上げることが可能(実際の罰金額は量刑ガイドライン
によって算定され,違反行為によって影響を受けた取引額の15 %〜80 %の範囲で
決定されている。)。
(注3 )制裁金の額は当局の裁量で決まるため,制度として公表されたものはないが,運用
上一定の場合に処分の軽減が行われている。