中東・中央アジア諸国の原油・天然ガス輸出パイプライン計画 イラン産ガス・IPーパイプライン実現、不透明に
IEEJ:国際動向:2001 年12 月
中東・中央アジア諸国の原油・天然ガス輸出パイプライン計画の現状
http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_04.pdf
カザフスタン
(既存ルート)
ソ連邦が崩壊した1991
年末時点では、カザフスタンの原油輸出パイプラインは産油地帯Atyrau(アティラウ)からロシアのSamara(サマーラ)に至るルートだけであった(Samaraからはロシア国内のパイプラインを通って原油が欧州に輸出される)。全長270km、輸送能力は当初20
万B/D
で、ロシアは同ルートのカザフスタン原油の輸送割り当て量を抑制していた。
しかし、ロシアが西シベリアのコミ自治共和国からバルト海に至る原油パイプラインBaltic
Pipeline System(BPS)構想を具体化していく中で、ロシアの姿勢に変化が出てくる。ロシア政府はこのBPS(当初の輸送能力は24
万B/D)経由でロシアおよびカザフスタンの石油企業に原油を輸出して欲しいと望んでいる。それゆえ、Atyrau〜
Samara 間パイプラインの能力を30 万B/D
まで増強した。
もう一つの既存ルートはTengiz(テンギズ)とNovorossiysk
とを結ぶCPC(Caspian
Pipeline Consortium)パイプラインである。同パイプラインは全長1,580km、輸送能力は56.4
万B/D である。
Tengiz
油田はカザフスタン最大の油田(埋蔵量約7
億トン)であり、1993 年から合弁企業Tengizchevroil(出資比率はChevron:45%、Mobil:25%、Tengizmunaigaz:25%、LukArco:5%)が原油生産を行っている。CPC
パイプラインはTengiz 油田が本格的な生産段階に移行したときに既存のパイプラインだけでは輸出能力が不足することを見越して計画されたものである。1992
年に同ルートのパイプライン建設・運営を目的としたCaspian
Pipeline Consortium(CPC)が設立された(出資者はロシア、カザフスタン、オマーン政府、Chevron、Mobil、Oryx、LukArco、Rosneft/Shell
Caspian Ventures、Agip、British Gas、Kazakh Pipeline Ventures)。
1999 年2 月にロシア政府はCPC
パイプライン建設のFS を承認し、1999 年5
月にはパイプライン建設が開始された。2001 年3
月に完工し、2001 年10
月に稼動を開始した。輸送能力は2003 年に76 万B/D、2007
年に96 万B/D、2011 年に117 万B/D、そして最終的には2015
年に134 万B/D まで増強される予定である。
(新規ルート)
カザフスタンには以下の4つの原油輸出パイプライン建設構想がある。
(1)「中国向け」:Aktyubinsk(アクチュビンスク)〜新疆。全長1,100km。輸送能力40万〜80
万B/D。
(2)「イラン向け」:カザフスタン〜トルクメニスタン〜Kharg
Island(イラン)。全長580km。輸送能力100 万B/D。
(3)「カスピ海海底ルート」:Aktau(アクタウ)〜Baku(Ceyhan
まで延長の可能性あり)。全長230km(Baku
まで)。輸送能力に関する情報なし。
(4)「中央アジア原油パイプライン」:カザフスタン〜トルクメニスタン〜アフガニスタン〜パキスタン。全長650km。輸送能力100
万B/D。
「中国向け」パイプラインに関しては、1997 年6
月にカザフスタン政府と中国のCNPC(China National
Petroleum Corporation)が推定投資額35
億$とされる同プロジェクトのFS
実施協定に調印した。だが、1999 年9 月にFS
は一時中断された。これは中国側が同パイプラインの採算ラインとされる40
万B/D の原油を現時点ではカザフスタンが輸出することは困難であると判断したためである。
「イラン向け」パイプラインに関しては、1999
年10
月にカザフスタンの原油パイプライン運営企業KazTransOil
が同国政府の指示で建設のためのFS
を開始した。一方のイラン側は同パイプラインの建設に積極的であり、30
万B/D を採算ラインとみている。現在、TotalFinaElf
がFS を実施中であり、2005 年にはFS
が完了する予定である。
「カスピ海海底ルート」に関しては、1998 年12
月にカザフスタン政府、RD/Shell、Chevron、ExxonMobil
が建設のためのFS 実施協定に調印した。RD/Shell、Chevron、ExxonMobil
の3社によるFS が着手された模様であるが、その後の進展を伝える情報はほとんどない。
カスピ海沿岸のロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、イランの5ヶ国は現時点ではカスピ海の領有権に関して意見が一致せず、協議を続けている段階である。カスピ海の海底にパイプラインを建設することは、この「領有権」の問題が絡むために難しい問題である。
最後の「中央アジア原油パイプライン」は米国のUnocal
が計画していたものである。しかし、パキスタンへの通過ルートであるアフガニスタンにおける政情不安や内戦により、この計画は失敗に終わっている。
BTCパイプライン(Baku-Tbilisi-Ceyhan
oil pipeline) プロジェクト
カスピ海沿岸のアゼルバイジャン共和国バクー市からグルジア共和国トビリシ市を経由し、地中海に面するトルコ共和国ジェイハン市を結ぶ総延長1,760kmにおよぶBTC原油パイプラインプロジェクト
BTCパイプラインプロジェクトは、11社で構成される国際コンソーシアムによって、建設され、操業が行われます。同パイプラインの建設は2003年に開始され、2005年からACG油田で生産される原油の輸送を開始する予定であり、通油量は約100万バレル/日が見込まれております。
BP 30.10% / AzBTC 25.00% / Chevron 8.90% / STATOIL 8.71%
Turkey’s TPAO 6.53% / ENI 5.00%/TOTAL 5.00%
ConocoPhillips 2.50% / Amerada Hess 2.36%
伊藤忠 3.40% / 国際石油開発(INPEX)
2.50%
*AzBTC はこの事業のための会社で、出資はアゼルバイジャン国営石油(SOCAR)と同国の経済開発省(MED)
アゼルバイジャン共和国領カスピ海海域 ACG油田(インペックス南西カスピ海石油株式会社)
2002年12月、当社はアゼルバイジャン共和国領南カスピ海沖合のACG(アゼリ・チラグ・グナシリ)油田の権益取得に係る契約に調印しました。その後、2003年4月には、アゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR社)及び他のプロジェクトパートナーの承認を得て、ACG油田の10%の権益が当社に譲渡されました。
ACG油田は、1997年よりチラグ油田にて原油の生産を開始し、2005年2月にはアゼリ油田中央部からの原油生産が開始され、現在日量約27万バレルの原油を生産しております。今後段階的に増産し、2009年には日量100万バレルの水準に達することが見込まれております。生産された原油は、現在は主にバクー市から黒海のスプサ市に至るルート(西ルート)を使用して輸送・販売されておりますが、BTCパイプラインが完成した後には、主として同パイプラインで地中海まで輸送し、出荷されます。
日本経済新聞 2006/6/2
カスピ海産原油出荷へ パイプライン完成 伊藤忠など引き取り
完成したのはアゼルバイジャンの首都バクーからグルジアを経由して、トルコの地中海岸まで1760キロを結ぶ「BTCパイプライン」。英BPなど11社で構成する国際企業連合が総額34億9千万ドル(約3900億円)を投じて建設してきた。BPや伊藤忠、国際石油開発などがバクー沖合のACG油田で産出する原油を輸出するために使用する。
ACG油田はインドネシアを上回る埋蔵量を持つ巨大油田だが、外洋に遠く搬出路の確保が課題となっていた。
Georgian Celebrations
Mark Major Step Towards BTC Pipeline Completion
http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7010774
Today’s inauguration of the Georgian
section of the Baku-Tbilisi-Ceyhan oil pipeline marks a major step towards
completion of this strategically important energy project, which
will deliver a major new oil resource to global markets.
The 1,768-kilometre pipeline will carry one million
barrels of oil a day
from the BP-operated Azeri-Chirag-Gunashli field in the
Azerbaijan sector of the Caspian Sea to the eastern Mediterranean
port of Ceyhan, bypassing the sensitive and
heavily used Bosphorus Straits. Staged filling of the pipeline is
a gradual process over a period of several months, involving more
than 10 million barrels of oil. The oil is currently on its way
towards the Georgia/Turkish border, and the loading of
the first tanker at Ceyhan is expected around the end of the
year.
The
South Caucasus gas pipeline (SCP), will carry Shah Deniz gas from
the Caspian to Georgia and Turkey and runs in parallel to BTC. It
is currently 60% complete and on schedule to deliver first gas in
the winter of 2006.
日本経済新聞 2006/5/30
イラン産ガスパイプライン実現、一段と不透明 印パ、米の意向に配慮か
イラン産天然ガスをパキスタン、インドに輸出する通称「IPーパイプライン」計画の実現に向けた展望が一段と不透明さを増してきた。成否の鍵を握る大消費国インドが消極姿勢を鮮明にし、イラン・パキスタン間でも価格を巡る対立が表面化。3カ国が目指していた6月最終合意と年内着工は事実上、不可能となりつつある。印パ両国が米国の意向に配慮した跡も読み取れる。
日本経済新聞 2006/6/29
ロシア通らぬパイプライン建設 E∪・通過5ヵ国合意 カスピ海産天然ガス供給
カスピ海や中東産の天然ガスを欧州に供給するパイプラインの建設計画が実現に向け動き出した。ロシア依存を減らし、供給源の多様化を目指す欧州連合(EU)と関係国が合意した。2011年の稼働を目指す。
新パイプラインはトルコから東欧を経由してオーストリアに達する全長3400キロメートル。このほどウィーンでEU欧州委員会のピェバルグス委員(エネルギー担当)とパイプライン通過国であるオーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、トルコの関係閣僚が建設促進の合意書に調印した。
建設は関係5カ国の主要エネルギー会社の5社が20%ずつ出資した共同運営会社のナブコ・ガスパイプライン・インターナショナルが担う。当初計画より工期を1年前倒しし、07年に着工する。建設費は46億ユーロ(約6700億円)の見込み。最大で年間300億立方メートルの輸送能力を持つ。
パイブラインはアゼルバイジャンなどのカスピ海産ガスをトルコ経由でウィーン近郊まで通し、その後、ドイツなどEU諸国に供給する。将来はイランなど中東産の供給も予定している。EUはガス需要の35%をロシアに依存し、供給源の多様化が緊急課題になっている。
Nabucco Pipeline
The proposed path of the
Nabucco pipeline is the solid green line stretching from Turkey
to Bulgaria, Romania, Hungary, and Austria.The Nabucco pipeline
is a proposed natural gas pipeline that is planned to transport
natural gas from Turkey to Austria, via Bulgaria, Romania, and
Hungary. Construction of the 3,300-kilometer pipeline is expected
to begin in 2008 and is planned to be finished until 2011. The
construction work, estimated to cost 5 billion USD, is to be
shared between the five gas companies in each of the countries.
The company leading the project is OMV from Austria.
Once completed, it would allow transportation of natural gas from
producers in the Middle East and Caspian region such as Iran,
Azerbaijan and Turkmenistan to Western Europe and to the
countries along its path. The western end of the pipeline will be
Baumgarten an der March, a major natural gas hub in Austria. The
transport capacity of the pipeline will reach up to 30 billion
cubic meters per year in the long term.
The Nabucco project is included in the EU Trans-European Energy
Network program.