温暖化問題  

 環境税

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石油連盟

 CO2排出権取引

 日経連載 京都議定書発効へ 秒読み 温暖化対策


地球を救う税システムの活用
(温暖化防止のための税制の国際的動向)

 株式会社 三菱総合研究所 林 希一郎
http://www.iis-net.or.jp/shinko/Topics.nsf/0/AC4AB947AF13911049256CDC001C971B?OpenDocument

表1 各国のエネルギー製品への課税状況と温暖化対策税の概要

 1997年に京都で開催された気候変動枠組み条約第3回締約国会合(通称COP3京都会議)において、先進国全体で温室効果ガスを2008年から2012年の期間に8%削減(1990年比)する京都議定書が採択された。日本の目標は6%削減と設定された。京都議定書の削減目標の達成に向けて、各国で様々な国内措置の導入が検討されている。その有力な方法の一つとして、欧州諸国ではエネルギーや炭素の消費量に応じて課税する温暖化対策税が位置付けられている。

 温暖化対策税は、消費されるエネルギー製品(ガソリン、軽油、灯油、天然ガスなど)の炭素含有量に比例した課税を行う炭素税消費エネルギー量に比例した課税を行うエネルギー税、それらを組み合わせて二酸化炭素排出削減や省エネルギーを目的とする税など、様々なパターンがある。
 最も早く導入されたのは、1990年1月のフィンランドである。その後、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダなどに導入の動きが広まった。その後、COP3京都会議以降、イタリア、ドイツなどに導入の動きが広まり、更に2001年4月よりイギリスにおいても類似の税が導入される予定である。
 1990年当初に導入が進んだ温暖化対策税は、純粋に炭素含有量に依存する炭素税や炭素要素とエネルギー要素をある一定の割合で配分(例えば50:50)する炭素・エネルギー税の形で導入されたものが多かった。しかし、1990年代後半に導入が進んでいる温暖化対策税(イタリア、ドイツ、イギリスなど)は、
既存のエネルギー関連製品への課税の見直しにより、温暖化対策税を導入した側面が強く、純粋な炭素税とは言えない。しかし、導入目的が二酸化炭素排出量削減や省エネルギー推進などであるために温暖化対策税に含められている。
 欧州で進んだ温暖化対策税の導入は、労働や資本などの良いもの(グッズ)から悪いもの(バッズ)への課税対象のシフト、いわゆるグリーン税制改革の一環として進められているところが多い。この場合、既存の所得税や社会保障負担の抜本的見直しと既存のエネルギー製品課税を進めた結果、環境に悪い影響を及ぼすバッズへの課税が進められたものと考えられる。これをグリーン税制改革と呼ぶ。

 温暖化対策税の税率は、国よってかなり大きな差がある。通常の場合、エネルギー製品に個別課税される物品税に加えて、炭素税やエネルギー税等の温暖化対策税が課税される(表1)。温暖化対策税も厳密には物品税の一部であるが、ここでは分けて考えている。
 エネルギー製品別に課税負担額を見ると、エネルギー個別物品税と炭素税の合計額は、概ねガソリンで60〜90円/L程度、軽油では10〜40円/L程度である。日本の現状の課税状況を見ると、ガソリンの場合、石油税2.04円/Lに加えて、ガソリン税53.8円/Lが課税されている。軽油の場合は、石油税2.04円/Lに加えて、軽油引取税32.1円/Lが課税されている。

 わが国では、温暖化対策税が、京都議定書に定められた温室効果ガス排出削減目標を達成するための有力な方法と考えられており、その検討が進められている。具体的な税システムの考え方はまだ提示されていないが、既にエネルギー製品に課税されている既存税制との関連や、温暖化対策税の導入により大きな影響を被る恐れのある産業部門への配慮などを考える必要がある。

 


「環境税」に関する見解
http://www.jisf.or.jp/kankyo/images/030919position_paper.pdf

平成15年9月19日
(社)日本鉄鋼連盟

1.地球温暖化問題は世界全体で取り組むべき課題

 地球温暖化問題は人類共通の重要課題であり、一国のみならず世界全体で対策に取組むべきである。
 一方で、京都議定書は世界のCO2排出量の1/4を占める米国が入っていないことや、中国(第2位)やインド(第5位)が削減義務を負っていないこと等から、世界のCO2排出量の1/3しかカバーしていない(図@、A)。真に実効性のある国際的枠組みとするためにも、また、国際競争力上のイコール・フッティングの観点からも、米国と途上国を含む共通のルール作りが強く求められる。

2.地球温暖化問題は各主体(国、自治体、企業、国民)が責任を持って取り組む課題

 地球温暖化問題は、企業のみが「加害者」ではなく、エネルギーを消費し、CO2を排出する誰もが「加害者」であり、「被害者」でもある。従って、各主体(国、自治体、企業、国民)がそれぞれ、CO2削減に向けて努力すべきである。
 わが国のCO2排出量の半分弱を占める産業界は、1997年のCOP3(京都会議)以前から積極的にCO2排出削減を実行してきており、地球温暖化対策推進大綱の中心施策である日本経団連自主行動計画の目標(CO2排出量対1990年度±0%)に対して、▼3.2% (2001年度)と着実に成果を挙げている。また世界最高のエネルギー効率の素材や製品を提供し、民生・運輸部門のCO2削減にも貢献している。
 しかし、2001年度のわが国のCO2総排出量は、対1990年度▼6%目標(2010年度)に対し、+5.2%となっており、特に国民が主体である民生部門(わが国CO2排出量の1/4)と運輸部門(同1/4)が計画に対して大幅な未達となっている(図B)。
 こうした実情にも拘らず、本来国民が自ら削減すべき民生・運輸部門の未達分をCO2削減に努力している産業界に「環境税」を重課することにより負担させることは本末転倒であり、先ずは国民に対して省電力等の実践によるライフスタイルの見直しを要請すべきである。その上でなお民生・運輸対策の財源が必要というのであれば、既存の予算を最大限活用するとともに、日常生活(民生)や車の運転(運輸)でエネルギー消費の恩恵を被り、CO2を排出している国民一人ひとりに、何らかの経済的負担を求めるべきである。

3.新たな「環境税」の導入は、鉄鋼業に壊滅的な打撃を与える

 日本鉄鋼業は1971年度から1989年度までに3兆円もの環境対策・省エネルギー対策費(図C)を費やし、▼20%の省エネルギーを実現した。また、わが国の最終エネルギー消費量の11%を占めているため、「省エネルギー目標の達成は社会的公約」との認識のもとに、さらにエネルギー消費量▼10%(1990年度対2010年度)を上乗せするという極めてチャレンジングな目標を掲げ、2001年度には既に▼8.5%(図D)を達成している。この間(1990年度〜2001年度)、1兆4千億円の環境対策・省エネルギー対策費を投じてきている。
 世界最高のエネルギー効率(中国は日本の1.5倍の低いエネルギー効率図E)と国際競争力(コスト、品質)を有する日本鉄鋼業が、将来に亘る鋼材の供給基地として、高級鋼を使用する自動車や電気機器等の国内需要家、或いは中国等、アジアの各国と強いリンケージを保ちながら共に発展していくことが、グローバルな地球温暖化防止とアジアの発展に貢献しうるものと考える。
 現在、韓国の有力鉄鋼メーカーは固定資産税等が極めて軽く、トータルの税負担が事業収益の30%程度であるのに比べて、日本の鉄鋼メーカーは、事業収益の60%もの負担を強いられており、税制上劣位にある。そのうえ仮に、3,000円/t-Cの「環境税」が導入されるとすれば、鋼材1トン当たり約2,000円の追加負担となるが、激しい国際競争の中での価格転嫁は、到底困難である。その結果、これまで国際競争力を堅持してきた日本の鉄鋼業は、ここ3年間の年度経常利益(1,300億円/年度1999〜2001年度)を上回る税額を毎年支払うことになる(表@)。これは環境対策・省エネルギー対策に多大の投資を行っている鉄鋼業に対して、「二重の負担」を強いるものであり、競争条件の劣位がさらに拡大する。
 この結果、鉄鋼業は壊滅的な打撃を被り、国内での継続的な事業存立が危うくなり、鉄鋼生産を海外に移転せざるをえないという、極めて重大な事態を引き起こすことすら考えられる。日本鉄鋼業は勿論のこと、需要産業(自動車、電気機器等)の国際競争力にも極めて深刻なダメージを与えることになる。同時に製鉄所が立地する地域に加えて、関連する産業の立地地域にも打撃が波及し、経済・雇用にも甚大な被害を及ぼすことになりかねない(表A)。このように「環境税」の導入は政府の掲げる「環境と経済の両立」と逆行するものである。

4.他国への鉄鋼生産移転は地球規模での温暖化防止に逆行

 地球温暖化防止の観点からも、世界で最もエネルギー効率の良い日本から、エネルギー効率の低い他国(図E)に鉄鋼生産が移転することによって、却って世界のCO2排出量は増えることになり、地球規模の温暖化防止にとっては全く逆効果となる。

5.「環境税」ありきを前提とした議論に踏み込むことに反対

 環境問題に対する税制面の検討に際しては、京都議定書批准を巡る不透明な国際情勢を踏まえた環境施策全体の中での幅広い視点が重要であり、さらには国民の十分な理解・協力が得られなければならない。
 また、今年10月には石油石炭税が施行され、石炭も加えた全ての化石燃料に課税されることになっており(2007年度までに段階的に税率アップ)、その使途は、経済産業省と環境省の共管のもとに、地球温暖化対策に充当されることになっている。「環境税」は、石油石炭税と歳出、歳入とも同じ性格を有しており、石油石炭税を課税強化する同じタイミングに、「環境税」を議論しようとする考えは極めて遺憾であり、「環境税」ありきを前提とした議論に拙速に踏み込むことは避けるべきである。
 日本鉄鋼業としては、率先して自主行動計画を推進することによって、目標を着実に達成する考えである。同時に、あらゆる主体の活動こそが重要であることから、民生・運輸部門に関しても、削減に向けた国民一人ひとりの着実な行動が求められる。国や自治体としても、とりわけ遅れている民生・運輸部門の具体的な施策を早急に推し進めて戴くよう、強く要望する。

 

 


石油連盟


2004年10月19日

化学関連産業5団体で「化学産業団体・地球温暖化対策協議会」を設立

社団法人 日本化学工業協会
石油化学工業協会
日本ソーダ工業会
塩ビ工業・環境協会
日本化学繊維協会

 日本化学工業協会(会長:大橋光夫(昭和電工株式会社社長))と石油化学工業協会(会長:蛭田史郎(旭化成株式会社社長))、日本ソーダ工業会(会長:福澤文士郎(東亞合成株式会社会長))、塩ビ工業・環境協会(会長:中原茂明(株式会社トクヤマ社長))、日本化学繊維協会(会長:津村準二(東洋紡績株式会社社長))とは、本日、一層の省エネルギーに努めるとともに、環境と経済の両立を図る観点からの適切な地球温暖化防止策を提言していくために、化学関連産業5団体で「化学産業団体・地球温暖化対策協議会」を設立しました。

 化学業界は、地球温暖化対策が重要かつ不可欠と考え、社団法人日本経済団体連合会の提唱に賛同し、1997年に温暖化対策推進のための環境自主行動計画を作成・公表して、1998年以降年々着実に成果を上げてきています。化学業界としましては、今後とも継続して地球温暖化防止対策に取り組んでいく所存でありますが、この課題は国、自治体、企業、家庭などのあらゆるレベルにおいて対策を実行していくことが重要であり、国民一人ひとりが地球温暖化問題を意識し、それぞれ行動に結び付けていくような施策が不可欠と考えます。

 しかし、現状の対策では京都議定書によるわが国の温暖化ガス削減目標の達成が困難になるとの見通しから、政府の関係審議会等から追加的施策案が打ち出されています。中でも中央環境審議会地球環境部会は、
「地球温暖化対策税」の新設、企業にCO2の割り当てを行う「国内排出量取引制度」の導入を提案しています。

 化学業界としましては、温暖化対策を目的の一つとして昨年改正された石油石炭税により、既にエネルギーに対して高額な税を負担しています。温暖化対策税は、エネルギーに新たに追加される税であり、同税による所期の効果が疑問視されているのみならず、エネルギー消費税の更なる増税により、わが国産業の国際競争力を失わせ、産業の空洞化を招来し、CO2の削減義務を負わない途上国等への生産移転により地球規模でのCO2排出量が増加するおそれがある等の理由から
温暖化対策税の導入には反対です。

 また、国内排出量取引制度につきましては、政府が企業のエネルギー使用量を事前に定める
規制的・統制経済的な色合いの濃い政策であり、本来、市場メカニズムによって図られるべき産業構造の転換・高度化をいたずらに歪めるおそれがあるので反対です。

 ロシアの批准により京都議定書が発効する見通しとなった現在、地球温暖化対策の推進は急務でありますが、世界最高水準のエネルギー効率を達成しているわが国の化学産業としては、環境との調和を目指した経済発展を実現していくために、連携して本問題への対応策を検討実施していくとともに、機会あるごとに化学業界の取り組みについて積極的に意見を述べていく所存です。

 なお、5団体だけでなく関係化学企業の本協議会への参画も要請していくことにしています。本協議会の代表者には大橋光夫日本化学工業協会会長が就任し、事務局は日本化学工業協会の中に置きます。


日本経済新聞 2004/10/21

温暖化ガス排出 企業に報告義務 政府、通常国会に法律 
 1万4000ヵ所 自主削減促す

 政府は先進国に温暖化ガスの排出削減を求めた京都議定書が来春にも発効することを踏まえ、大企業を中心に温暖化ガスの排出量を国に報告することを義務づけ、公表する方針だ。約1万4千カ所の工場や事業所ごとの排出量を毎年報告させる。環境問題で批判を避けたい企業心理を利用し自主削減を加速する。削減が進まない企業には省エネ努力を強く求める。産業界は規制強化と反発する可能性が大きい。
 対象は、一定量以上の電気や化石燃料などのエネルギーを使用する工場や大規模なオフィスなどで、1万4千カ所程度になる見込み。製鉄所、化学プラントなどのほか、百貨店、ホテルなども含まれる。
 報告させる温暖化ガスは二酸化炭素(CO2)やメタン、代替フロンなどの京都議定書で定める6種類のガス。CO2については省エネルギー法に基づいて経済産業省が報告を受けている各工場・事業所のエネルギー消費量から算出する。
 環境省などが22日の自民党環境部会に報告。次期通常国会に地球温暖化対策推進法や省エネ法などの改正案を提出、来年度にも実施したい考え。温暖化を食い止める対策メニューで改定作業中の地球温暖化対策推進大綱にも盛り込む。
 2002年度の国内の温暖化ガス排出量は13億3100万トン。約8割は主に企業が排出している。これまで企業に排出量の報告・公表を義務づける制度はなく、自主的に公表しているのは上場会社の2割にとどまる。約1万4千の工場・事業所の排出量を報告させ、日本全体の排出量の約4割を占める企業の実態を明らかにする。それにより同業の企業間で排出量を比べやすくし、省エネ化を競わせるのが狙い。
 工場・事業所の排出量を正確に把握すれば、各企業に温暖化ガスの排出上限枠を設けて国内で排出権を売買する「排出権取引」の制度づくりにも役立つ。議定書が求める1990年比6%削減は、省エネ努力だけでは難しいとの見方が強く、環境省は化石燃料に課税する環境税とともに排出権取引も必要とみている。
 一方、報告義務づけに産業界の反発は必至。日本経団達は「報告・公表の目的があいまいだ」と指摘。将来の排出上限枠の割り当てにつながり、企業活動が制約されることを強く警戒している。