日本経済新聞インターネット 2003/3/31
三井・住友化学、合併を白紙撤回
三井化学と住友化学工業は31日、今年10月に予定していた合併を白紙撤回することを発表した。合併比率などに関する調整がまとまらなかったうえ、アジアなど海外事業の成長により自力でも国際競争に生き残れるとの判断が、それぞれの社内で浮上してきたとみられる。化学業界では1994年の三菱化学誕生以来の大型合併案件だった。
両社は2000年11月に経営統合を発表した。当初は2003年10月に持ち株会社を設立し、2004年春に持ち株会社に事業会社を吸収する形で完全統合する二段階方式をとる計画だったが、その後、統合効果をより早く出すため、2003年10月に一気に合併する方式も検討していた。
事業統合の見送りについて
住友化学工業株式会社(社長:米倉弘昌、以下「住友化学」)と三井化学株式会社(社長:中西宏幸、以下「三井化学」)は、2003年10月に予定した対等の精神に基づく全面的事業統合に向け協議を重ねてまいりましたが、このほど本統合を見送ることで合意いたしました。
両社は、グローバルな企業間競争が激化するなか、将来の事業の発展を確保し、株主の皆様の期待に応え企業価値の更なる向上を達成するために、両社の事業を全面的に統合することが最善の選択と判断し、2000年11月17日に「事業統合に関する基本合意書」を締結いたしました。その後これまで、事業統合検討委員会のもと各種事業分科会及び制度分科会を設置し、精力的な統合準備、検討を行うとともに、両社のファイナンシャル・アドバイザー等専門家の知見も得ながら、統合条件について協議を続けてまいりました。
しかしながら、最も重要な統合条件である統合比率に関しては、本年6月の定時株主総会付議を目指し、双方誠意を尽くして協議を継続してきましたものの、両社の見解の隔たりが埋まらず、ここに至り、双方の株主の皆様にご納得いただける最終的な合意を得ることはできないとの結論に達しました。本統合実現のためさまざまなご支援とご理解をいただきました株主、取引先、その他多くの関係者の皆様のご期待に沿うことができなくなりましたが、両社ともに交渉成立のため最善の努力を尽くしたうえでの結果であることについては、ぜひご理解を賜りたく存じます。
両社は、今後とも個別事業における両社間の戦略的連携、協力などの方向性を探っていくことといたしますが、相互に制約や拘束を受けることなくそれぞれ独立に事業運営を行います。なお、両社が昨年4月設立いたしました三井住友ポリオレフィン株式会社につきましては、引き続き皆様方のご支援、ご協力をお願いいたします。
住友化学といたしましては、三井化学との全面的な事業統合により多種多様なシナジー効果を期待しておりましたが、これらについては断念せざるを得なくなりました。
しかしながら、本統合の具体的検討に入る以前に策定いたしました2001〜2003年度(〜2004年3月)の中期経営計画において織り込んでおりました事業計画等は、着々と進められております。
石油化学・基礎化学分野では、独自開発の新製法による単産法プロピレンオキサイドやカプロラクタムの新プラントがまもなく完成稼働いたす予定でございますし、シンガポール石化の次期大型増強計画もシェルと共同で本格FS(フィジビリティ・スタディ)に着手いたしております。石化、ライフサイエンスに次ぐ第三の柱と期待する情報電子化学分野におきましても、韓国、台湾等での現地事業拠点構築の一環として液晶用カラーフィルター、光学機能性フィルム等の大型投資が着々と進められております。また、農業化学分野では、近年国内外で実施いたしました大型M&Aの効果が具体的に現れてくることが期待されております。医薬分野でも、M&Aによる事業拡大と体質強化の機会を求めていくほか、住友製薬が新抗ガン剤カルセドを上市いたしましたし、日本メジフィジックスでは、画期的な新型検査用診断薬の事業化計画が進んでおります。
当社の今後の事業運営に関しまして、引き続きご理解とご支援をいただきますようお願い申し上げます。
事業統合の見送りについて
三井化学株式会社(社長:中西宏幸、以下「三井化学」)と住友化学工業株式会社(社長:米倉弘昌、以下「住友化学」)は、2003年10月に予定した対等の精神に基づく全面的事業統合に向け協議を重ねてまいりましたが、このほど本統合を見送ることで合意いたしました。
両社は、グローバルな企業間競争が激化するなか、将来の事業の発展を確保し、株主の皆様の期待に応え企業価値の更なる向上を達成するために、両社の事業を全面的に統合することが最善の選択と判断し、2000年11月17日に「事業統合に関する基本合意書」を締結いたしました。その後これまで、事業統合検討委員会のもと各種事業分科会及び制度分科会を設置し、精力的な統合準備、検討を行うとともに、両社ファイナンシャル・アドバイザー等専門家の知見も得ながら、統合条件について協議を続けてまいりました。
しかしながら、最も重要な統合条件である統合比率に関しては、本年6月の定時株主総会付議を目指し、双方誠意を尽くして協議を継続してきましたものの、両社の見解の隔たりが埋まらず、ここに至り、双方の株主の皆様にご納得いただける最終的な合意を得ることはできないとの結論に達しました。本統合実現のためさまざまなご支援とご理解をいただきました株主、取引先、その他多くの関係者の皆様のご期待に沿うことができなくなりましたが、両社ともに交渉成立のため最善の努力を尽くしたうえでの結果であることについては、ぜひご理解を賜りたいと存じます。
両社は、今後とも個別事業における両社間の戦略的連携、協力などの方向性を探っていくことといたしますが、相互に制約や拘束を受けることなくそれぞれ独立に事業運営を行います。なお、両社が昨年4月設立いたしました三井住友ポリオレフィン株式会社につきましては、引き続き皆様方のご支援、ご協力をお願いいたします。
三井化学といたしましては、住友化学との事業統合を見送ることとなりましたことは大変残念であります。当社にとって、本年は2001年から始まった3ヵ年中期経営計画の仕上げの年であり、これまで目指してきた「強い三井化学グループ」を実現し、新会社の2004年度中期経営計画にしっかりと繋ぎ込む予定でありました。
事業統合の見送りにともない、ある程度の戦略見直しは必要となりますが、基本戦略に変更はありません。当社は1997年の三井化学誕生以来目指してきた「世界の市場において存在感のある三井化学グループ」の実現に向けて全力を尽くす所存であります。
すなわち、
・ | 石化・基礎化学品分野においては、コア事業の一層の重点化を進め、収益の拡大を図ります。 |
・ | 機能性材料分野においては、コア事業での収益拡大とともに、当社の誇る技術力を背景に新製品の一層の拡大を加速してまいります。 |
当社は、企業理念に掲げておりますとおり、「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスをお客様に提供し、もって広く社会に貢献」してまいりますので、今後の事業運営に関しまして、引き続きご理解とご支援をいただきますようお願い申し上げます。
「統合比率合意できず」住友・三井両社長
住友化学・米倉弘昌、三井化学・中西宏幸の両社長は31日、緊急記者会見し両社の事業統合見送りについて説明した。まずはじめに、用意された発表文を読み上げ、記者団の質問に答えた。
一問一答の要旨以下の通り。
【質問1】解消はいつ決ったのか。
(両氏)6月の株主総会に付議するには3月末がタイムリミットなので、ぎりぎりまで誠心誠意調整に努力してきたが、株主の利益に結びつくものにならなかった。残念だが、事業統合解消を決意した。
【質問2】まとまらなかった理由は何か。
(両氏)統合比率をめぐって意見の一致ができなかったことだ。株価、資産、キャッシュフローの3点を指標に統合比率を決めるべく話し合ってきたが、見解の相違を埋めることができなかった。
【質問3】三井住友ポリオレフィンはどうなるのか。
(米倉氏)これまで通り続ける。問題ないはずだ。
【質問5】両社長の責任は。
(米倉氏)私の役割は、住友化学を強いコスト競争力、技術開発力をもち、躍動感あふれる会社にしていくことにあると思っている。やめるつもりはない。
(中西氏)体制を立て直して、全社員が同じベクトルで元気いっぱい働く、世界で認められる強い企業にしていくことが使命だ。まずは04年度中期経営計画をしっかりした内容のものにしたい。
日本経済新聞 2003/4/1
三井・住友化学 統合白紙に 株式比率溝埋まらず
生き残りの道 険しく三井化学と住友化学工業は31日、10月に予定していた経営統合を白紙撤回すると発表した。住友主導で進んだ交渉は統合比率などを巡り両社の溝が埋まらなかった。破談により両社は単独での生き残りを迫られる。しかし、欧米大手に対抗するのは容易ではなく、新たな業界再編の可能性も出てきた。
日本経済新聞 2003/4/6
「三井・住友化学」破談の教訓 本音の交渉後回しがアダ
「せめて1年前に断念すれば良かった」。住友化学工業と三井化学の経営統合が破談となり、両社の役員からため息が漏れている。基本合意から2年4カ月。日本では数少ない強者連合の誕生と期待されたが、膨大な時間とエネルギーの浪費に終わった。
両トップが「最後は折り合えるはず」と過信し、本音のぶつけ合いを先送りしたことがアダとなった。トップ人事などで妥協を重ねた結果、双方に不満や不安が蓄積。最後の統合比率交渉が発火点となり、爆発したというのが実情に近い。
Apr 02, 2003 Chemical Week
Sumitomo, Mitsui Abandon Merger Plans
Sumitomo Chemical and Mitsui Chemicals say they have scrapped plans to merge following a disagreement over the deal's share swap ratio. Sumitomo's share price was higher than Mitsui's when the merger was announced in 2000 but Mitsui's price has since overtaken that of Sumitomo. A swap ratio reflecting current share prices would have valued Sumitomo at less than the company considers itself to be worth, analysts say. Sumitomo declined to comment but confirms that its board voted unanimously to call off the merger, "in the interests of shareholders." The share swap ratio was "the most critical item" among the terms and conditions of the merger, Sumitomo and Mitsui say. "A gap between the positions of the two sides could not be bridged," they say. Sumitomo and Mitsui, and their respective advisers, Morgan Stanley and Goldman Sachs, had also disagreed over a potential $1-billion valuation gap resulting from the companies’ differing accounting practices, and its possible impact on their respective pension plans. Sumitomo and Mitsui say they will seek to form alliances with each other in individual businesses. Sumitomo Mitsui Polyolefin Co., a 50-50 joint venture created last year through the merger of the companies' polyolefins businesses, will continue to operate, they say. Sumitomo and Mitsui say they will also step up their separate restructuring efforts and Sumitomo says it will continue to study a recently announced petrochemicals jv project in Singapore with Shell Chemicals. Canceling the merger will not have an immediate negative effect on the companies' businesses, observers say. "Amid a difficult external environment, Sumitomo and Mitsui have been able to secure stable profits and reduce debt," says Standard & Poors (Tokyo). "The companies will pursue their own strategies separately, and cancellation of the merger is unlikely to cause substantial damage to their businesses in the short term." Abandoning the deal will, however, hit Mitsui harder than Sumitomo in the long term, since bulk petrochemicals account for a larger proportion of Mitsui's portfolio and Sumitomo has substantial pharmaceutical and agchem businesses, analysts say. Merging Sumitomo and Mitsui would have created Asia's biggest chemical company and the world's fifth-largest, with annual sales of about Y1.8 trillion ($15 billion). The deal received approval from Japan's Fair Trade Commission last December and the companies had been scheduled to start integrating their operations next October. Sumitomo and Mitsui are Japan's third- and fourth-biggest chemical companies in sales terms, behind Mitsubishi Chemical and Asahi Kasei.
三菱化学 冨沢龍一社長 日本経済新聞 2003/4/11
ー 三井化学と住友化学工業の経営統合が破談になった。
「石油化学業界は過当競争・供給過剰から抜けられずにいる。再編は避けられない。再編の核ができると期待していただけに、統合がうまくいかなかったのは残念だ」。
日本経済新聞 2003/4/16
「対等」合併は難しい 昭和電工 大橋光夫社長
▽…三井化学、住友化学工業による経営統合の白紙撤回に「過当競争の化学業界にとっても交渉がまとまるのが最善だったが、当事者が一緒にやっていけないと判断したのなら仕方がない」。と理解を示す。
▽…2社は「対等の精神」をうたっていたが、自社の経験から「折半出資など対等の立場で作った会社は主導権争いに終始してうまくいかない」という。統合がかえって業界の混乱を招くなら「思い切って白紙撤回したのは次善の選択」と冷静に分析していた。
当社の新しい経営体制について
当社(社長:中西宏幸)は、経営革新のスピードアップを図るため、下記のとおり、経営体制を刷新することと致しました。新体制により、「強い三井化学グループ」の実現に向けて総力を結集し、引続き株主、顧客をはじめとするステークホルダーの皆さまのご期待に応えてまいる所存でございます。
1.取締役数の削減と執行役員制の導入 | |
1) | 当社は、意思決定のスピードアップを図るため、本年6月27日付で取締役数を半減します。(現状の29名を14名に削減。) |
2) | 一方、業務執行機能の強化を図るため、同日付で執行役員制を導入します。 |
3) | 取締役会は、経営監督機能と全社戦略の策定機能を有しますが、事業運営実態との乖離を招かぬよう、取締役会の構成員である事業グループ長(後述)が業務執行の責任者を兼ねます。 |
2.事業グループ制の導入 | |
1) | 当社は、本年6月27日付で従来の事業部門制をより強化した事業グループ制(「石化」「基礎化学品」「機能樹脂」「機能化学品」の4事業グループ制)を導入し、事業グループ長の責任権限を強化して経営のスピードと効率を高めます。 (現在の石化事業部門、基礎化学品事業部門、機能樹脂事業部門、機能化学品事業部門は、それぞれ石化事業グループ、基礎化学品事業グループ、機能樹脂事業グループ、機能化学品事業グループに改称します。) |
2) | 事業グループは、生産・販売・研究の機能を有する自立的経営体として、関連する工場、研究所に対する指揮権を強め、自律的な成長・拡大と資産効率の改善を目指します。 |
3.新情報システムの導入 | |
当社は、新しい経営システムをサポートし、業務の効率的遂行を促進するため、2004年度(2004年1月の予算策定時)から本格的に新情報システムを立ち上げます。新情報システムは、SAP社R/3を中心として、本年3月末まで進めてきた住友化学工業株式会社との情報システム共同開発の成果を最大限に活用し、当社の新体制向けに構築するものです。 | |
4.本社オフィスの移転 | |
当社は、本年内に本社オフィスを霞が関ビル(東京都千代田区)から汐留シティセンター(東京都港区)に移転し、「強い三井化学グループ」の実現を目指して心機一転を図ります。 |
日本経済新聞 2003/4/30
検証 化学統合破談 三井・住友 思惑すれ違い
統合比率 事業評価で暗礁
人事・組織 「水と油」譲らず
三井化学、住友化学工業が今年10月に予定していた経営統合を白紙撤回して1カ月。金融分野で実現した三井・住友グループ企業の経営統合がなぜ失敗したのか。連結売上高2兆円、欧米大手に対抗できる化学メーカーの誕生が幻に終わった背景には、「相手にのみ込まれまい」と躍起になる両社の意地の張り合いがあった。
「自社が手がけない事業についての互いの評価の食い違いが大きかった。同じような商品を扱う銀行、保険業界などとは事情が違う」。三井化学の子安龍太郎専務は2年半におよんだ統合交渉を振り返る。
三井化学と住友化学の統合破談までの経緯
2000 | 初め | 三井化学の幸田重教会長(当時)が住友化学に統合を申し入れ |
11月 | 03年10月をめどに統合することで合意。ポリエチレンなど汎用樹脂事業を先行統合すると発表 | |
2001 | 4月 : | 03年10月に株式移転による共同持株会社を設立、04年4月に傘下の事業会社を吸収し単一会社になるとの手続きを発表。社名は「三井住友化学」 |
2002 | 4月 | 汎用樹脂の統合会社「三井住友ポリオレフィン」発足。国内シェア3割の最大手に |
10月 | 米倉住友化学社長が記者会見で「03年初めまでに統合条件決める」 | |
12月 | 公正取引委員会が統合を了承 | |
年末 | 首脳人事などは決まるが、統合比率で折り合えず。03年3月を期限に再交渉することで合意 | |
2003 | 1月 | 住友化学が英蘭系シェルグループと共同で運営する石化コンビナートを大幅増設すると発表 |
3月末 | 統合比率をめぐって再び交渉に臨むが溝は埋まらず、統合を断念 | |
31日 | 統合計画の白紙撤回を発表 |