http://www.knak.jp/japan/idemitu.htm
出光、石化子会社テコ入れ
増資100億円引き受け 海外不採算事業から撤退
出光興産は収益が悪化している石油化学事業をてこ入れする。子会社の出光石油化学が財務改善のために実施した百億円の増資を全額引き受けたほか、ブラジル事業など不採算分野から撤退する。拡張志向が強かった出光石化は4千億円の有利子負債を抱えている。2006年度の株式上場を目指す出光興産はグループの懸案である出光石化の体質改善を急ぐ。
出光石化の2001年度売上高は約3300億円の見込みで、出光興産グループの約15%を占める。化学品の基礎原料のエチレンは業界3位で、1割強のシェアを持つ。ただ原料高、製品安に需要低迷が加わり、最終利益は10億円前後にとどまるもよう。有利子負債は約4千億円に達する。
すでに着手している設備投資の資金調達では、財務の悪化につながる銀行借り入れを避けるため、増資を活用。出光興産を引き受け先とし、124億円だった資本金を100億円増やした。今後も出光興産が資金支援を継続する可能性が大きい。
海外事業の見直しはブラジルでのポリカーボネート樹脂(年産2万トン規模)の合弁生産では年内に出資分約3割を地元企業へ売却する方向。台湾の発泡ポリスチレン生産からも撤退する。ともに採算が低く成長が見込めないと判断した。
出光興産は出光石化との間で、千葉県、山口県などで隣接している製油所と石化工場の一体運営による効率化も進める。樹脂事業は同業他社との事業提携を検討する。これらの対策で、現在4千億円ある出光石化の有利子負債を2005年度までに35%削減する。
出光興産は間接金融に依存していたが、銀行の融資姿勢が厳しくなったため株式上場の方針を決定。約1兆4千億円ある連結有利子負債を2005年度末までに1兆円以下に削減する計画で、2、3年内に500億円程度の普通株による増資も予定している。出光石化の早期立て直しで上場に向けた環境整備を進める。
石油各社連結収益改善急ぐ
石油系化学会社の収益が悪化している。エチレンや合成樹脂の値上げが進まず、高付加価値製品の育成も遅れているためだ。連結経営重視の流れが進む中、石油会社にとって石化事業の立て直しが急務となっている。
出光石化は今秋に徳山工場(山口県徳山市)でエチレンの年産能力を17万トン(37%)増やす。投資額は数十億円だが、設備過剰傾向のエチレン業界では3年ぶりの増設となる。しかし出光興産はここにきて出光石化の拡張路線にブレーキをかけ始めた。
昨年後半から石化業界の経営環境が急速に悪化したのが背景だ。石油系化学会社は医・農薬原料や樹脂加工製品など高収益事業が少ないだけに、他の化学会社以上に収益が不安定になりがちだ。日石三菱系の日本石油化学の2002年3月期決算も2500億円の売上高に対し経常損益はトントンの見込みだ。
石油会社は従来、石化事業に対しナフサの供給先という位置づけが強く経営に対する関心は薄かったが、連結経営重視で路線を転換。日石三菱も日石化学と原料の相互融通などに取り組み、全体で約70億円のコスト削減を目指す。丸善石化もコスモ石油などとの連携を強める考えだ。
汎用樹脂は輸入関税が2004年までに段階的に引き下げられ、輸入品との競争が激化する。石化コンビナートの統廃合も必要となる見込み。収益力に劣る石油系化学会社の合理化が進まなければ、系列を超えた再編につながる可能性もある。
日本経済新聞 2006/10/25
出光輿産上場、時価総額4183億円 「資源開発に重点投資」
石油元売り2位の出光興産が24日、東京証券取引所第一部市場に上場した。同月午後に記者会見した天坊昭彦社長は最大1200億円の調達資金を「戦略投資に使っていく」と述べ、原油・石炭などの資源開発や電子材料、機能性樹脂などの高付加価値製品に重点的に投じる方針を示した。出光株の同日終値は1万770円で、公募・売り出し価格(9500円)を13%上回った。
天坊社長は株主配分について「同業他社にそん色のない安定配当を実施したい」と述べた。
出光は1990年代に連結有利子負債が2兆円を超えて経営不振が深刻化。当時10億円の過小資本と相まって、経営不安説が高まり、2000年に外部資本導入と株式上場を表明した。
上場に向け財務改善を進め、06年3月期末の有利子負債は約9900億円と半分以下になった。上場後も創業家の出光家が大株主にとどまるが、持ち株比率は31%から約20%に下がる。天坊社長は「今後は他の大株主と同様に接していく」と語り、創業家の存在が企業統治の妨げにはならないと強調した。
この日の出光株の売買代金は867億円と東証一部で3位。市場では「老舗企業として知名度や信頼度が高く、長期保有目的の株主が多いのでは」(国内投資顧問)との見方があった。
終値べースの時価総額は4183億円で、元売り大手6社の中では昭和シェル石油に続き5番目。首位の新日本石油(約1兆3千億円)とは大きな差があり、今後は市場の期待を上回る利益成長が求められそうだ。