2007/4/12 日本経済新聞 有機EL事業 本格展開
ソニー、超薄型TV商品化 年内に月1000台 初の有機EL 11型、厚さ3ミリ
ソニーは表示装置に有機EL(エレクトロ.・ルミネッセンス)を使い、液晶やブラズマよりも大幅に薄いテレビを年内に発売する。まず縦16.5cm×横27cm(画面サイズ11型)で、パネルの厚さ3ミリメートルの製品を月1千台前後生産するもよう。有機ELテレビの商品化は世界で初めて。液晶とプラズマがしのぎを削る薄型テレビ市場で次世代をにらんだ競争が本格化する。
有機ELは液晶やプラズマに比べて軽く、薄い画面を作れる。ほとんど熱を発しないこともあり、壁に張り付けるなど新しい使い方が可能になる。有機ELの寿命が短いという課題があったが、素材の改良などで液晶並みの耐久性を持たせたという。
販売価格は未定だが、需要開拓を優先し「戦略的に設定する」(ソニー幹部)。量販店では10-15型の小型液晶テレビの店頭価格は5万ー10万円程度。当面、有機ELのコストは液晶を大幅に上回るが、店頭価格は数倍程度にとどめたい考え。需要動向をにらんで41cm×65cm(画面サイズ27型)の製品の販売も検討する。家庭用のほか広告や案内表示など、新たな需要を開拓する。
豊田自動織機と折半出資のディスプレー製造会社、エスティ・エルシーディ(愛知県東浦町)でパネルを量産する。現在は携帯端末用の有機ELを手掛けている。テレビの組み立ても既存の工場を活用、コストを抑える。
ソニーが他社に先駆けて有機ELテレビの量産に乗り出すのは、社内外に技術力をアピールし、次世代の薄型テレビの開発競争で主導権を握る狙いがある。有機ELは画面の大型化、低コスト化では現在主流の液晶やプラズマと対抗するには課題も多い。あえて商品化に踏みだすことで、有機材料や部品、製造装置などのメーカーに対し、供給体制の整備を促す。本格的な量産と、それによるコスト低減が可能な環境づくりを急ぐ。
ソニーは平面ブラウン管の成功が足かせとなり、液晶などの薄型テレビにシフトするのが遅れた苦い経験がある。今度は逆に、次世代の薄型テレビで先行し、市場を押さえることを狙う。
これまで後ろ向きのリストラが続き、士気が落ちていたエレクトロニクスの技術陣に対して刺激を与える意図もあるとみられる。
▼有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス) 電圧をかけると光を放つ有機化合物から成るパネル向け電子材料。明暗がはっきりとした画面表示が可能で、応答速度が速い特徴がある。材料そのものが発光するため、画面の背後から光を当てる必要がある液晶や、発光するための空間が要るプラズマに比べて大幅に薄型化できる。携帯音楽プレーヤーや車載オーディオ機器の表示パネルに利用されているが、大画面化に課題がある。 |
次世代開発競争に拍車 ソニー有機EL、主導権狙う
ソニーが有機ELテレビを商品化することで、薄型テレビの開発競争は新しい局面に入る。
液晶やプラズマに続く薄型テレビとして、主な電機メーカーはより画質に優れる有機ELやSED(表面電界ディスプレー)の開発に取り組んでいる。有機ELはソニーのほか松下電器産業、東芝、キヤノンなどが手がけ、SEDはキヤノンが開発中だ。
商品化計画ではSEDが有機ELに先行した。大型化技術を確立し、キヤノンと東芝が2006年にも発売する予定だった。しかし、生産コスト低減が液晶やブラズマの価格低下に追い付かず、発売を延期。両社はそれぞれ今年末からの販売を目指している。
有機ELは画面の大型化に課題を残し、「薄型テレビの主役となるのは2015年以降」(西田厚聡東芝社長)との見方が多い。だが、ゾニーが業界の予想より早く市場に投入することで、各社も追随せざるを得ない状況になりそうだ。
液晶も当初はプラズマに比べて大型化が難しいとされたが、今では50型以上の製品も登場し、プラズマとの画面サイズの差はほとんどない。表示装置の技術革新のスピードは速まる一方で、有機ELの画面大型化も一気に進む可能性がある。
薄型テレビは価格競争が厳しく、採算確保が難しい事業。各社は現行の薄型テレビのシェアを確保するための設備増強と同時に、次世代の表示装置の技術開発を続けなければならず、高水準の投資が必要。開発負担を軽減するための合従連衡が加速する可能性もある。
主な薄型テレビの方式と特徴
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日本経済新聞 2007/4/14
有機EL事業 本格展開
住友化学 来年にもパネル
三井化学 発光材料増産へ
化学大手各社が有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)関連事業を相次ぎ本格化させる。有機ELの中核素材となる発光材料を手がける住友化学は2008年にもパネル生産に進出。三井化学などは発光材料の量産投資に乗り出す。年内にはソニーが世界で初めて有機ELテレビの販売を始める。有機ELが今後、本格的な普及期に入るとみて投資を加速、液晶、プラズマテレビ向けに続くデジタル素材の新たな柱に育てる戦略だ。
住友化学は薄型テレビや携帯電話のディスプレーに使う有機ELパネルを生産する工場を国内に新設する。投資額は約50億円を見込む。参入にあたっては電機メーカーとの提携をめざす。
電気を通すと発光する有機化合物である発光材料をインクジェットで塗布する「高分子系」というタイプの有機ELの事業化をめざしている。高分子系は現在主流の「低分子系」に比べて色や寿命などの面で完成度は低いものの、大画面化や低コスト化では有利とされる。同社の米倉弘昌社長は「今年度中に性能面では低分子を超える。来年度に実用化する」と話している。
パネルも含めた一貫生産体制を敷くことで性能向上やコスト削減といった開発面の課題も克服しやすいとの判断がある。将来は照明や、紙のように薄く折り曲げられる表示装置「電子ペーパー」としての利用も視野に入れている。
2005/5 住友化学、英VBと合弁 有機EL材料 開発加速
2005/5 住友化学、ダウから高分子有機EL用材料事業を買収 城戸淳二教授住友化学は,フェニレンビニレン系,アリーレン系を中心に高分子有機EL材料を開発してきた。さらに,米Dow Chemical社から高分子有機EL材料「Lumation」のビジネスを買収し,フルオレン系材料を品ぞろえに加えることで,事業を強化した。さらにCDT社と高分子有機EL材料の開発および販売を行う合弁会社を設立する覚書を締結している。
2007/7/28 米倉社長コメント
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日本経済新聞 2007/3/6住友化学 3年で3700億円投資 液晶部材や医薬に重点
1989年から研究開発を続けてきた薄型テレビなどの表示装置として期待される有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)を近く事業化する。08年に携帯電話向け、09年に大型テレビ向けを事業化する計画。
一方、三井化学は08年にも大阪府にある製造子会社に数億円を投じて有機ELに使う発光材料を増産する。
生産するのはソニーが採用した低分子系の材料。三井化学は有機ELディスプレーの開発でソニーと提携する出光興産と同材料事業で連携体制を敷いており、出光も静岡県に15億円を投じて発光材料などの専用工場を来週から稼動させる。
有機ELは液晶などに比べ明暗のはっきりとした映像を表示でき、画像の応答速度も速い特徴がある。材料そのものが発光するため、液晶のように画面の背後から光を当てる必要もなく大幅な薄型化が可能になる。
有機ELパネルに使う有機材料の特徴
高分子系 | 低分子系 | |
パネルの製法 | 簡素(インクジェットによる塗布) | 複雑(真空内での蒸着) |
素子構造 | 簡素 | 複雑 |
開発段階 | 色や寿命など発展途上 | すでに実用レベルに |
パネルの大型化 | 対応可能 | 今後の課題 |
主な材料メーカー | 住友化学、昭和電工など | 出光興産、米イーストマン・コダック、 新日鉄化学、東洋インキなど |
住友化学報告から
(techon.nikkeibp)低分子材料(アルミニウム錯体など)は,真空蒸着法で製造されている。蒸着温度は分子が気体になるような高温にする必要があるが,有機分子が分解するほど高温にはできないので温度管理が難しい。蒸着の際に,ガラス基板と金属マスクとの間で生じる熱膨張率の違いから,大型サイズになるほど成膜ムラが生じやすく,大型化が難しいと言われている。
一方,高分子(ポリマー状の分子)は液体に溶かすことができるので,ロール・ツー・ロール法(ロール状に巻いた基板に回路パターンを印刷し,やはりロールに巻いた封止膜などと張り合わせてから,再びロールに巻き取る生産性の高い回路基板の製造法)やインクジェット法などが適用できる。製造コストも比較的低い。低温で製膜できるためにプラスチック・フィルム上に製膜でき,フレキシブルなディスプレイが可能になる。
テレビ用普及見据える デジタル素材優位維持狙う
化学大手各社が有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の素材事業の強化に動き始めた背景には、同パネルが今後、本格的な普及期に入るとの読みがある。デジタル家電や半導体などに使うデジタル素材の市場規模は10兆円近くとみられ、特に液晶などの素材では日本メーカーが高い国際競争力を維持してきた。有機ELという次世代の素材でも各社は日本の優位を維持したい考えだ。
調査会社のディスプレイサーチによると、200年の有機ELパネルの世界出荷数は前年比29%増の7213万枚。現在は携帯音楽プレーヤーや車載オーディオ機器の表示パネル、携帯電話の補助画面などに利用されている。今年に入ってKDDI(au)が携帯電話の主画面に有機ELを採用した端末を投入するなど徐々に用途が広がりつつある。
今後の大きな期待はテレビ向けだ。ソニーが年内に世界で初めてとなる有機ELテレビをまず11型で商品化することを表明。30ー40型以上の中大型でも量産できるパネル製造技術の開発にメドをつけた。東芝も2009年度末までに有機ELテレビを商品化することを表明、32型で発売を検討する。全世界の年間販売が1億5千万台を超えるテレビ用に普及が進めば、需要はけた外れに大きくなる。
ただ、有機ELテレビが普及するには、コスト削減や大画面化などの課題を乗り越える必要がある。テレビメーカーと足並みを合わせ投資を本格化、実際の量産工場でこうした課題克服に取り組もうとしている。
新日鐵化学と米国UDC社との連携により有機EL・赤色燐光デバイスでの大幅な高性能化を実現
新日鐵化学株式会社(以下、新日鐵化学)と米国・
Universal Display Corporation (以下、UDC)は、次世代のフラットパネルディスプレイとして有望視されている、有機ELディスプレイにおいて、両社の材料の組み合わせで、駆動寿命や輝度効率など、従来を大幅に上回る赤色燐光素子の高性能化を実現しました。
両社の連携は、これまで、携帯電話ディスプレイ向けに赤色燐光材料(2004年)を世界で初めて実用化したことをはじめ、緑色燐光素子性能の大幅進展(2006年)などにおいて成果をあげてまいりましたが、今回はこれらに続くものです。
すなわち、燐光発光基本技術の権利を持つUDCの赤色燐光発光材料「UDC−RD39」と、新日鐵化学の「赤色ホスト材料」を組み合わせて使用したデバイスは、従来の性能を大幅に上回る、下記の基本特性を実現しています。
今後両社は、昨年開発に成功した「緑色燐光材料」の実用化推進と、「青色燐光材料」の開発にいっそう注力し、フルカラー燐光有機EL材料のラインナップの早期実現を図り、携帯電話やカーオーディオ、テレビをはじめとする、各種ディスプレイ向け市場の本格的な立ちあがりを目指してまいります。
<基本特性>
◆駆動寿命 ⇒
初期輝度1000cd/uで22万時間(従来比5倍)
◆輝度効率 ⇒
24cd/A(従来比60%向上)
◆外部量子効率 ⇒ 1000cd/uで19%
◆色座標 ⇒ C.I.E.(0.65,0.35)※標準ボトムエミッション構造
※(cd=カンデラ)
【参 考】
新日鐵化学は、複素環式芳香族化合物誘導体や、医農薬中間体製造などに関わる蓄積技術を活かし、早くから有機EL材料の事業化に取り組んでまいりました。独自に開発した昇華精製技術、不純物コントロール技術など、超高純度の製品を安定的にかつ大量に製造できる設備・技術の開発によって、業界のトップランナーとして高い評価を得ており、また、燐光材料で世界初となる実用化も相まって、これまでに国内外での採用実績を着実に増やしております。
UDCは、有機EL分野における燐光発光基本技術(PHOLEDTM)の権利保持者であり、燐光発光に関わる革新的な技術開発、材料開発ならびに、それらの商品化を行う世界的リーディングカンパニーです。また、有機EL技術の研究開発においては、プリンストン大学、南カリフォルニア大学およびミシガン大学と緊密な協力関係にあり、材料や素子構造等に関する各種重要技術を保有しています。
こうした背景のもとで両社は、2004年、従来の蛍光材料と比較して、大幅な発光効率の改善を実現する赤色燐光材料を開発し、世界に先駆けてその実用化に成功しました。また、2006年5月には、赤色燐光材料のマーケット開拓での連携についても共同発表するなど、ゆるぎない協力体制を築いています。
さらに、2005年に開催されたフラットパネルディスプレイの総合展「ファインテックジャパン2005」において、その当時の赤色燐光デバイスの実用化に関して、東北パイオニアおよびパイオニアとともに、アドバンストディスプレイオブザイヤーのグランプリを受賞するなど、その実績が高く評価されています。
Universal Display Corporation(www.universaldisplay.com)
設 立 : 1994年
本 社 : 375 Phillips Boulevard, Ewing, New Jersey 08618, USA
代 表 者 : Steven Abramson, President
売 上 高 : USD 10.1 Million (2005年)
事業内容 :
フラットパネルディスプレイ、照明及び光学電子機器類用の有機EL技術・製品の開発及び有機EL技術ライセンス供与
新日鉄化学は複素環式芳香族化合物誘導体などの技術を生かして低分子系有機EL材料に進出。リン光発光の基本技術「PHOLED」を有するUDCと提携して協力体制を構築している。すでに赤色材料は携帯電話のサブディスプレー用に採用実績があり、緑色材料でも寿命などの性能向上を果たしている。 |
有機エレクトロニクス研究室
SID2005最新情報 2005.5.3 山形大学 有機エレクトロニクス研究室 城戸淳二教授
化学業界では、ドイツの有機半導体材料専業メーカーであるコビオン社(Covion Organic Semiconductors GmbH)が親会社であるアビシア社(Avecia)からメルク社(Merck
KGaA)に売られていきました。http://www.knak.jp/big/MerckKGaA.htm#avecia
有機EL材料であるπ共役ポリマーや低分子系でスピロ化合物などオリジナリティの高い材料を開発しており、実際に、フィリップスから商品化されたポリマー有機ELディスプレイにはコビオン社のスーパーイエローというポリマーが使われてます。実績もあり、合成力もあるけれど、ポリマー有機ELの市場が非常に小さくて、儲けがでないことからアビシアがしびれを切らした感じですね。
メルクは同時にショット社の有機ELデバイス開発部門をも買収しており、有機EL材料からデバイスの開発までを行うつもりのようです。ショット社では白色有機ELを照明に応用しようと研究していたので、今後、メルク社は有機EL照明の開発を進めていくと思われますね。ちょうど、ドイツでは100ミリオンユーロ(約130億円)を投じた有機ELプロジェクトが始まるところであり、タイミングぴったしと言うところでしょうか。韓国だけではなく、ドイツまでもが国策として有機EL産業を支援していくということで、ここでも日本は負けそうですね。経営者も気合いの入れ方が違うし。10年先の有機EL市場占有率は、韓国>台湾>ドイツ>中国>バングラデッシュ>ベトナム>タイ>ラオス>日本の順番でしょうか。
そして、一番新しいニュースが住友化学の米国ダウ・ケミカル有機EL事業部門の買収でしょうか。ダウでは、有機EL材料の中でも青色π共役ポリマーのポリフルオレンの製造特許、製造ノウハウを有しており、いくらかは知らないけど(30〜40億円といううわさ)、それらの特許と製造ノウハウを手に入れたようである。詳しくは住友化学のホームページに掲載されてます。
このニュースには暗い面と明るい面がありまして、暗い面から指摘しますと次のようになります。これまで、有機ELのポリマー材料を開発していたのは、住友化学、前述のコビオン、そしてアメリカのダウでした。一方、有機ELの低分子材料を開発しているのは、国内だけでも出光興産始め10社以上あり、外国企業を含めると20社近くあるのではと思います。ですから、開発スピードも速く、寿命も効率も圧倒的にポリマー系を突き放しているわけです。だから、ポリマー系を手がける会社の数が、3から2に減ったと言うことは、ますますポリマーが不利になるわけです。ちなみに、デュポン社もポリマーディスプレイの量産を検討しておりましたが、昨年、大きく方針転換してディスプレイの開発はあきらめたようです。
ですから、考えようによっては、アビシアがポリマー有機ELをあきらめ、ダウがあきらめ、デュポンがあきらめ、ポリマー有機ELの研究開発の第一線から脱落していく会社が続出しているということです。これは、この分野にとっていいはずがありません。 じゃあ、明るい面とは何でしょうか。それは、住友化学が気合いを入れて本気で有機ELポリマーの開発に取り組み始めたということです。根性なしの経営者が多い中、住友化学の社長は立派だと思います。どなたかは存じ上げませんが、一度お目にかかりたいと心から思います。さぞかし、魅力的な方でしょう。
それに引き換え、他の国内大手化学会社、M化学とか、M化学(どっちもMや)、両方とも有機ELに対する取り組みが中途半端の極地で(どんなんや)、鳴かず飛ばず。やる気あんあのんか、って聞きたい。社長の顔も見たくない。(先日、一方のM社を訪問したとき、ノーネクタイの丹波哲郎似の根性のありそうな人がいた。けど、社長じゃなかった。この人が社長だったらね、おしいなあ。)
ただ、住化さんの残念なところは、ポリマーとかデンドリマーとか塗布型材料に賭けているところ。世界中のほとんどのディスプレイメーカーは低分子蒸着型で実用化、開発を進めており、ポリマーでディスプレイを開発しているのは、エプソンの様に研究費が潤沢にあって、別に有機ELをすぐに事業化しなくても液晶でもうかってるので、研究者に趣味でやらしているような会社や、サムスン電子のように、研究費を湯水のようにじゃぶじゃぶと使わないと怒られるような環境にあって低分子からポリマーからとりあえずなんでもやりまひょか、的に研究できる会社だけです。ポリマー有機ELを商品化したフィリップスやオスラムがいるけど、今のポリマーELの性能でいつまで事業が続けられるやら。
もし、このように数少ないポリマー有機ELパネルメーカーが低分子に乗り換え出したら住友化学のこの事業は自動的にお取りつぶしですね。開発すべきは、とりあえず3年以内に、青色ポリマーで、効率5lm/W以上、寿命は初期輝度1000cd/m2で5万時間でしょうか。これは最低でもということです。これができないと、終わりです。時間切れです。バイバイです。現在、青色ポリマー素子の寿命が100cd/m2で、1万時間程度ですから、素子特性を50倍から100倍延ばす必要がありますね。
それを達成するには、まずポリマーの研究に取り組む研究者や研究グループの数を増やすことですよ。今までみたいに、材料を大学研究室にも出さず、ごくわずかの企業仲間とこそこそ研究してたから、素子特性が向上しないんです。積極的に材料を外部に出して評価してもらうことです。そうしないと、低分子に追いつくどころか、特性が引き離されるだけでしょうね。とにかく、あと3年ですよ。
私の予想では、3年後には低分子はリン光を使って青色が純青で10lm/W超え、5万時間ぐらいの寿命は達成してるでしょう。現在、低分子リン光素子は青はスカイブルーで35lm/W、緑は90lm/Wを城戸研では達成しておりますから、将来的にはポリマーでもリン光なみの効率を達成しなければ、低分子に勝てません。
そう考えると、大金をはたいて買ったダウのポリフルオレンの技術にそれだけの価値があったのか、私ははなはだ疑問に思いますね。はっきり言ってないです。あれだけの金があったら、社内の研究員を増強し、国内の多くの大学研究室と共同研究を行い(とりあえず城戸研に1億円の研究費と共同研究員3名を送り込む)、より効果的に塗布型のリン光材料を開発できたのではないでしょうか。
選択と集中で有機EL材料に賭ける住友化学の態度には、そのへんのアホバカ国内企業には見られない見上げた、すばらしいものがありますけど、ちょっと方向を間違えてるような気がします。松下がプラズマに賭けてるみたいに。
From: "Junji Kido" <kid@yz.yamagata-u.ac.jp>
To: "knak" <knak@js2.so-net.ne.jp>
Sent: Monday, April 16, 2007
有機ELでは、ここのところソニーや東芝がテレビの発売を発表しておりますが、これらはすべて低分子蒸着系です。
特性面で十分な効率や寿命が得られるようになり、決断したものと思います。
一方、高分子は、寿命の点で低分子よりはるかに劣り、テレビに使えるどころか、携帯などの小型のディスプレイさえ実用化にほど遠い状況です。パネルメーカーとしては、オランダのフィリップスが最も早くから開発を始め、一部はフィリシェーブのディスプレイに採用しましたが、 結局は事業を売却しました。
現在では、低分子と高分子の差は開くばかりで、しかも高分子をたとえばインクジェットで成膜し、量産する技術さえ確立しておりません。
住友化学がパネル工場を建てても、その事業は成功するとは思えないです。
といいますのも、たぶん量産されるのは小型のパッシブ型と考えられますが、すでに価格が暴落し、台湾メーカーでさえ手を引き始めています。
マーケティングを行い、きちんと事業化計画を立てたとは思えませんね。
材料メーカーの中では出光と並び、突出して有機EL材料に力を入れておられるのですが、方向性に間違いがあり非常に残念です。
〒992-8510 山形県米沢市城南4-3-16
山形大学 大学院理工学研究科 有機デバイス工学専攻
城戸淳二
tel: 0238-26-3052, fax: 0238-26-3412
e-mail: kid@yz.yamagata-u.ac.jp
URL: http://ckido8.yz.yamagata-u.ac.jp/
日本経済新聞 2007/5/30ー
有機EL離陸
「極薄」次世代テレビに期待 画質は鮮明
耐久性に課題
液晶、プラズマに続く薄型パネルとして有機EL(エレクトロ・ルミネツセンス)に脚光が当たり始めた。照明への応用も可能で、材料や製造装置を含めた新たな産業としての将来を期待する声もある。離陸しつつある有機ELの実力を検証する。
22日から米カリフォルニア州で開かれたディスプレー関連学会。注目を集めたのはソニーが出展した「曲がる」有機ELだった。基板に樹脂を採用し、フルカラーの動画を表示しながら手で曲げられる。
「次世代パネルは有機ELという流れが強まってきた」。占部哲夫ディスプレイデバイス開発本部長は手応えを語る。年内に11型を発売し、世界初の有機ELテレビメーカーになる。曲がるテレビはその次の一手だ。大型画面を折り畳んで持ち運ぶなどディスプレーの可能性を広げられる。
東芝も2009年度中に32型テレビを発売する計画だ。生産は松下電器産業と共同出資の東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)が手掛けるとみられる。携帯音楽プレーヤーの表示画面など小型製品に限られていた有機ELがテレビ用として浮上してきた。
特徴は材料の有機物を含んだ樹脂が自ら発光する点にある。液晶のように背後から照らす光源が要らないから、より薄くしたり、曲げたりしやすい。画質も鮮やかで、速い動きもスムーズに映せるなどディスプレーとしての潜在力が高い。
キャノンが開発中のSED(表面電界ディスプレー)は大型化しやすく、高画質という利点を持つが、コスト高に苦しんでいる。実用化が遅れれば、有機ELを次世代テレビの本命とみる企業が増える。
「有機ELと液晶はお好み焼きの具が違うだけ。やろうと思えばいつでもできる」(シャープの町田勝彦会長)。ガラス基板上にトランジスタを形成するなどの初期工程は液晶とほとんど変わらないという。市場が広がり始めれば液晶メーカーが次々参入し、材料や製造装置のコストも下がるという循環が起こり得る。
最大の課題は寿命だ。ある電機メーカーの研究者は「ロウソクのように、使うほど劣化していく」と評する。テレビに求められる使用時問は6万時間といわれるが、現状は2万ー3万時間が限度との指摘もある。
「15年に中小型パネルの15%が有機ELにシフトする」(藤田勝治TMD社長)という予測の当否は耐久性の向上にかかる。
▼有機と無機
炭素を成分とする化合物を有機化合物と呼ぶ。有機ELは有機化合物を含んだ樹脂状の蛍光物質を透明な基板ではさみ、電圧をかけて光らせる。発光材料に炭素を含まない無機ELの開発も進んでいるが、カラー表示が難しいなどの課題がある。
薄型テレビの特徴
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注)有機ELの厚さはソニーの27型の場合。 液晶とプラズマは32〜46型の場合。 液晶の寿命はバックライトの寿命 |
デザイン自由 壁も照明に 実用化進むLED追う
天井や壁が輝き、空間全体を明るくできる。球形や曲面のユニークなデザインも可能ーー。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の用途はテレビだけではない。「薄い」「曲げられる」「明るい」という特長を生かせば、これまでにない照明機器を生み出せる。
今年3月、コニカミノルタホールディングスは米ゼネラル・エレクトリツク(GE)と業務提携し、3年以内に有機EL照明を商品化する計画を打ち出した。コニカミノルタは写真フィルムの製造技術を応用し、発光部分を生産する技術を開発していた。
パートナーに選んだGEは電球以来、百年以上にわたって世界の照明事業をリードしてきた。、今もオランダ・フィリップスや独オスラムとともに世界の三強を形成し、製品デザイン力や販売網で頼れる存在だ。
コニカミノルタは蛍光灯並みの明るさと1万時間の寿命を両立した有機EL照明を試作している。「将来は3分の1の電力で蛍光灯並みの明るさを出せる可能性もある」(コニカミノルタテクノロジーセンターの榎本洋道担当課長)という。
三菱重工業は照明用の有機ELパネルの量産を2009年中に始める。5年後をメドに蛍光灯とほぼ同水準の価格にする考えだ。
約10年前に研究に着手し、実用化を模索する松下電工も今年3月、有機EL照明を展示会に参考出品した。ただ、同社が描く商品化のスケジュールはコニカミノルタなどとはズレがある。「普及は5−10年先ではないか」(柚山光治専務)
慎重なのは白色発光ダイオード(LED)の存在があるからだ。実用化では有機ELの先を行き、大手照明メーカーの間ではむしろ「今年はLED照明元年」との見方が強い。松下電工や東芝系の東芝ライテックは高出力の家庭用LED照明を相次いで投入。自動車のヘッドランプも小糸製作所が製品化にこぎ着けた。
LEDの長所は蛍光灯の3−4倍にあたる3万ー4万時間という寿命の長さにある。有機ELは形状が自由という特質を生かし、まずはデザイン性を生かせる商業施設などを中心に普及を探っていくことになりそうだ。
▽有機ELとLED
LEDは光を出す半導体素子。電圧をかけると発光する材料という点で有機ELと似ている。
面で光る有機ELが広い空間を明るくするのに向くのに対し、小さい素子を束ねたLEDは狭い範囲を重点的に照らすのが得意。
次世代照明の比較 | ||||||||||||
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(注)有機ELの寿命はコニカミノルタの開発段階 |
デジタル素材次の主役に 日本勢、技術開発にしのぎ
今年4月、出光興産が静岡県御前崎市で稼働させた化学物質の合成拠点。「世界最大級の有機EL材料の専用工場です」。同社電子材料部の担当者が誇る。
出光は1985年に有機EL材料の研究に着手し、今では世界最大手の一角を占める。ソニーが年内に商品化する世界初のテレビを縁の下で支える。
有機ELは正負の電極の間に材料の層を複数重ねた構造を持つ。性能は光を放つ有機化合物などの材料が左右する。
液晶、ブラズマでは日本の材料メーカーがいち早く世界市場を押さえ、収益力の高い「デジタル素材産業」を確立した。有機ELを巡り、化学メーカーなどが成功体験の再現をもくろむ。
有機EL材料はまだ品質に課題を抱え、技術の主流が固まっていない。各メーカーは標準化を狙って技術開発にしのぎを削る。
例えば、心臓部の発光層。現在は出光などが手掛ける低分子系と呼ばれる化合物か耐久性などの点で有利とみられている。製造工程では真空内で材料を気化し、基板に膜を形成する真空蒸着という手法を用いる。
真空装置では液晶製造装置に強いアルバックが先行、複数の有機ELメーカーに試作装置を納入している。今年後半からは量産ラインの受注も期待できるという。東京エレクトロンも有望市場として研究開発体制を増強している。
一方、住友化学は高分子系材料の実用化を狙う。英国企業との提携などを通じて技術を蓄積してきた。長所はインクジェット方式で材料を基板に塗布できる点。真空蒸着に比べ生産効率が高く、パネルの大型化にも適している。米倉弘昌社長は「今年度中に性能面で低分子を超え、来年度に実用化する」と言う。追われる立場の低分子系の陣営も困難とされてきた塗布方式への転換に挑戦している。
現状では日本勢が目立つが、業界では「画期的な化合物が突然出てきて、プレーヤーが一変する可能性がある」とみている。サムスンSDIなど韓国のパネルメーカーが材料を韓国産で賄うとの見方もあり、激しい開発競争が続きそうだ。
▼低分子と高分子
有機EL材料は低分子系(一般に分子量1千以下)と高分子系に分かれる。低分子系は改良、量産がしやすいとされる。高分子系は一つの材料で複数の機能を兼ねられるが、構造が複雑で品質管理が難しいといわれる。
日本の主な有機EL材料メー力一の取り組み
企業 | 取り組み | |
低分子系 | 出光興産 | 4月に量産工場を稼働 |
新日鉄化 | 発光効率の良い材料開発に注力 | |
東洋インキ製造 | 赤色の発光材料に強み | |
三井化学 | 出光興産と研究開発・製造で協力 | |
三菱化学 | 塗布方式の実用化目指す | |
高分子系 | 住友化学 | 08年にも実用化。パネル・照明に進出も |
昭和電工 | 年内にもパネル生産 |
出光有機EL材料 IDEL
次世代ディスプレイ有機ELに向けた有機材料の提案
有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレイは自発光であり、視認性の良さ、画像品質の高さなどの特長から、次世代のフラットパネルディスプレイとして大きく期待されており、すでに携帯電話、カーオーディオ、PDA(電子手帳)などへの搭載が始まっています。
出光は市場ニーズに対応して、世界最高レベルの性能を持つ有機EL材料を提供するとともに、長年培ってきた技術をベースに、最適なデバイス構成の提案や、デバイス特許のライセンスなど、トータルソリューションを提供します。
有機EL(Electro Luminesence:エレクトロルミネッセンス)とは
電気エネルギーによって有機蛍光物質(EL材料)を発光させる現象をいいます。
出光CCM方式
(Idemitsu Color Changing Media)
有機ELカラー化の提案
有機ELのフルカラー化技術として、従来から「三色塗分け方式」が使われてきました。
しかし、この方式は、赤、緑、青の三原色の画素を細かく作り分けたり、色ずれを防止するために三色の材料の寿命特性を揃えなければならないなどの課題がありました。
出光は、これらの課題を解決する技術として、単色の有機EL発光に、パターン化されたCCM層(色変換層)を組み合せることで簡単にフルカラーを実現できる「CCM法」を提案しています。「CCM法」はデバイス製造が容易になるため、将来の大型有機ELテレビの実現には最も適したカラー化方法だと考えています。
日本経済新聞 2007/11/14
キャノン、トッキ買収へ 有機ELを内製化 デジカメ用など
キャノンは13日、ジャスダック上場で新型ディスプレーである有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の製造装置を手がけるトッキを買収すると発表した。買収額は約76億円で、年内に子会社化する方針。2010年にもデジタルカメラなど自社製品に搭載する有機ELパネルを内製化する。キャノンの参入で、高画質で薄型化しやすい次世代ディスプレーとして注目されてきた有機ELの普及に弾みがつきそうだ。
キャノンは14日から12月12日までトッキに対するTOB(株式公開買い付け)を実施。買い付け価格は1株556円で、1日の終値463円に20%のプレミアムを上乗せした。TOBにはトッキの津上健一会長ら創業者一族が応じる。
同時にトッキは12月28日にキャノンを引受先とする約59億円の第三者割当増資を実施。TOBと第三者割当増資によりキャノンはトッキの発行済み株式の少なくとも51.46%を取得する方針。キャノンは来春、代表権のある取締役を含め役員の過半数を派遣。トッキの津上晃寿・現社長は代表取締役として残る。
トッキは真空関連装置が主力で有機ELパネル製造装置も手がける。07年6月期の最終損益は47億円の赤字、有機ELの研究を進めてきたキャノンは買収で製造ノウハウを取得、まず自社のデジタルカメラやビデオカメラのモニター向けに開発する。
キャノンは生産コストの削減と競争力向上を狙って主力製品の部品内製化に取り組んでおり、製造技術取得のためM&A(合併・買収)を進めている。05年にはNECから半導体製造装置と真空製造装置のメーカー2社を買収した。
表示装置技術の開発では、1995年に「FLC(強誘電性液晶)」と呼ぶディスプレーを実用化したが、3年後に撤退。また東芝と次世代表示装置のSED(表面電界ディスプレー)を共同生産する予定だったが、今年1月に単独生産に転換。発売時期も07年末としていたが技術開発元の米社との訴訟が難航し、商品化のめどは立っていない。SEDの開発は今後も続ける方針。
新規参入する有機ELは現在、携帯電話の小型ディスプレーなどを中心に商品化されている。ソニーが来月に11型テレビを発売するほか、セイコーエプソンも8型のモニター用ディスプレーの量産にめどを付けている。
日本経済新聞 2008/3/8
パイオニア、プラズマ撤退発表 国内パネル再編一巡
松下から調達 09年にも
今期 最終赤字150億円に
パイオニアは7日、プラズマパネルの生産から撤退すると正式発表した。2009年にも松下電器産業からパネルの調達を始め、テレビの組み立て・販売に特化する。事業撤退に伴う減損処理で08年3月期の連結最終損益(米国会計基準)は150億円の赤字に転落する見通し。プラズマパネルを国内生産するのは松下と日立製作所の2社に絞られ、国内のパネル再編の枠組みが固まる。
パイオニアは鹿児島工場(鹿児島県出水市)、山梨工場(山梨県中央市)、静岡工場(静岡県袋井市)の3カ所でプラズマパネルを生産している。各拠点は今夏に発売するテレビ用パネルを最後に08年度内にも生産を終了。3工場で働く約1500人の従業員は配置転換などで対応、詳細を5月半ばまでに決める。同日の記者会見で須藤民彦社長は「技術力、資金力、販売方が世の中のスピードに追いつけなかった。1−2位を維持しないと生き残りは難しい」と語った。
撤退に伴い、工場の生産設備で190億円の減損処理を実施。今期の連結最終損益は、従来の60億円の黒字予想から150億円の赤字(前期は67億円の赤字)に転落する。最終赤字は4期連続。赤字転落を受け、期末配当を2.5円と前期末の半額に減配、年7.5円配にする。前期は年10円だった。
パイオニアは松下からプラズマパネルを調達してテレビのコスト競争力を高める。パイオニアの画像処理技術などを生かす形でパネルを共同開発し、松下に生産を委託する。調達量は今後詰める。
パイオニアがパネル生産から撤退するのはプラズマテレビ販売が伸び悩んでいるため。07年の世界販売シェアは7%台と5位に低迷。年率2−3割で進む価格下落にコスト削減が追いつかず、赤字が恒常化していた。コスト競争力の高い松下のパネルに切り替え、テレビを中心とする「ホームエレクトロニクス事業」を10年3月期に黒字転換させる考えだ。
筆頭株主のシャープからは液晶パネルの供給を受け、今秋に欧州で液晶テレビを発売する。基本的に50型以上はプラズマ、それ以下は液晶にする考え。超薄型の液晶テレビ用スピーカーを共同開発するなどシャープとの連携も強化する。
国内の薄型パネル業界では価格競争の激化と投資負担増を背景に再編が加速。液晶でも国内生産するのはシャープーソニーと松下ー日立の2連合に絞られている。今後は世界市場で韓国、台湾の薄型パネルメーカーとの国際競争が本格化する。
世界ではなお淘汰も 韓台の液晶メーカー
日本の大口顧客失う
パイオニアの撤退で世界のプラズマパネルメーカーは松下電器産業、韓国LG電子、サムスンSDI、日立製作所の4社に集約される。液晶パネルでも東芝が撤退するなど、巨額の投資負担が伴う薄型テレビ用パネルで淘汰が進んでいる。しかしテレビの価格下落は続く見通しで、生き残りが決まったわけではない。
松下は昨年末、同社と日立、東芝が共同出資する液晶パネル生産のIPSアルファテクノロジ(千葉県茂原市)の子会社化を決めた。同社経営の主導権を握っていた日立はパネルの自社生産から調達に軸足を移す。東芝は液晶パネルをシャープからの調達に切り替えた。パイオニアの撤退はこれに次ぐ動きだ。
テレビ用薄型パネルの再編は海外でも起きている。2006年10月、台湾最大手の友達光電(AUO)が域内4位だった広輝電子を吸収合併した。蘭フィリップスはLG電子と合弁で設立していた液晶パネル会社の保有株売却を決めている。
薄型テレビの価格下落はパネルの原価低減を上回るぺースで進んでおり、下位メーカーは事業からの撤退を余儀なくされている。その結果、液晶はシャープ、松下、サムスン電子、LG、台湾の奇美電子(CMO)、AUOにほぼ集約され、プラズマは日韓の4社体制となる。
残ったメーカーは一層のコスト削減のため、量産効果の見込める大規模工場の建設に乗り出しているが、自社製品への供給だけでは稼働率が維持できない。外販先囲い込みに失敗すれば投資が回収できず行き詰まる。
松下が液晶パネルの自社生産に参入、ソニーはサムスンのほかシャープとも共同生産に乗り出す。国内の生産体制が集約されたことで、日本メーカーにパネルを外販してきた韓国、台湾メーカーは大口顧客を失う。世界規模のパネル再編はまだ終わりそうにない。
当初 今後 松下 自製 自製 パイオニア
(シャープと提携)自製 撤退→松下から購入 日立 自製 自製→2008年度内に撤退、松下から購入 韓国LG電子 自製 自製 サムスンSDI 自製 自製
液晶
当初 今後 ソニー サムスンとのJV
S-LCD(第8世代) 50/50(合わせて)
シャープとJV 34/66
(第10世代)シャープ 自製 (合わせて)
ソニーとJV 66/34
(第10世代)パイオニア
(シャープと提携)シャープから購入 シャープから購入 日立ディスプレイズ
(中小型)
日立
キャノン
松下
100%
−
−
50.1%
24.9%→過半数
24.9%PS αテクノロジー
(大型)
日立
松下
東芝
50%
30%
15%
minority →(実質)松下から購入
過半数
離脱 →シャープから購入
液晶テレビ用パネルの世界シェア 市場規模 335億1900万ドル
サムスン電子 25.7% ソニーと提携 LG Display 22.1% フィリップス撤退 友達光電 19.4% 広輝電子を吸収 奇美電子 13.4% シャープ 12.4% その他 7.0%
米国デュポン社と大日本スクリーン、新たな有機EL製造技術を共同開発
〜有機ELの製造コストを削減し、薄型パネル市場のさらなる成長を目指す〜
米国デュポン社(本社:デラウェア州ウィルミントン/会長兼最高経営責任者:チャールズ・O・ホリデー・ジュニア)と大日本スクリーン製造株式会社(本社:京都市上京区/社長:橋本
正博)はこのほど、有機ELディスプレー製造技術の開発に関する提携に合意しました。これにより今後両社は、さらに高性能・低コストの有機ELディスプレーの商業化・量産化を実現するため、材料、プロセス技術、装置をはじめとするあらゆる技術を結集し、開発を推進します。
有機ELディスプレーは、有機材料の薄膜を発光させることにより画像を形成するもので、表示したい部分だけを発光させるため、バックライトやカラーフィルターが不要となるほか、液晶ディスプレーに比べコントラスト比、消費電力、高速応答性の面で優れています。しかし、パネルメーカー数社から小サイズの有機ELディスプレーが実用化されているものの、従来の生産プロセスではコスト面での課題が大きく、薄型テレビ用途など大サイズのディスプレーの開発・生産を困難にする大きな要因となっています。
これまで両社は、過去3年以上にわたり、可溶性低分子の発光材料を効率良く塗布する技術の共同開発を進めてきました。大日本スクリーンが開発した、有機EL材料を超高速で高精度に塗布できる独自技術「ノズルプリンティング法」に、デュポンが既に実現している、独自の可溶性低分子有機EL素材および卓越したプロセス技術を組み合わせ、今までにない画期的な製造技術を確立。間もなく、ノズルプリンター装置の生産モデル1号機が完成します。
今回の提携により、デュポンと大日本スクリーンは、大型有機ELディスプレーの量産化に向けた製造ラインの開発を促進し完成させるとともに、有機ELディスプレーの製造コストを大幅に削減し、液晶ディスプレーに対する価格競争力の強化技術を確立し、提案していきます。
■米国デュポン社
電子・情報技術部門担当副社長 デビッド B.
ミラー(David B. Miller)のコメント
「薄型パネルディスプレーの市場規模は年間約1,000億ドルに達し、今なお成長を続けています。デュポンの技術は、現在の液晶よりも低コストで高精細なディスプレーを実現します。より高精細なテレビやその他のディスプレーの製造におけるコア技術を市場に提供するため、大日本スクリーン独自のプリンティング技術とわれわれデュポンの得意とする技術を融合できることを、大変うれしく思います」
■ 米国デュポン社(E. I. du Pont de Nemours and Company)
デュポン社は、科学的な発見や発明を基盤に製品やサービスを提供する企業です。創立は1802年、本社は米国デラウェア州ウィルミントンに置かれています。世界70カ国余りに拠点があり、農業・食品関連、建築・建設、通信、輸送の分野で、革新的な製品やサービスをお届けしています。世界中の人々の生活をより安全で豊かにするために、科学の力を生かした持続可能なソリューションを創出しています。
■大日本スクリーン製造株式会社
専務執行役員 FPD機器カンパニー社長
矢追善也のコメント
「大日本スクリーンは、液晶ディスプレー製造装置において培った豊富な技術を有機EL市場に応用展開することに、大いに関心を持っています。デュポン社は、コスト削減効果の高い有機ELの商品化を実現するさまざまな有機EL素材や技術を開発してきました。われわれの持つ独創のノズルプリンター技術が、高品質な大型有機ELパネルの生産の鍵になると確信しています」
■ 大日本スクリーン製造株式会社
1943年設立。フラットパネルディスプレー、半導体製造装置の世界的大手メーカー。創業事業である画像情報処理(画像処理、転写、露光など)をコア技術として事業領域を拡大し、現在では、フラットパネルディスプレー、半導体、プリント配線板の各製造装置事業、およびサーマルCTP装置やオンデマンド印刷機器などの印刷・製版機器事業を幅広く展開している。
これは3年前にすでにアメリカのディスプレイ学会で発表された技術
これまでは塗布成膜ではインクジェットが主に使われてきたけど、この方法はインクジェットより吐出安定性がすぐれているというのがメリットのようだ。
世界初の有機EL発光材料塗り分け技術の独自開発に成功
〜次世代ディスプレーの大サイズ化を実現〜
大日本スクリーン製造株式会社(本社:京都市上京区)のFPD機器カンパニー(社長:矢追
善也)は、このほど有機ELディスプレー※1製造の重要プロセスを担う材料塗り分け技術「ノズルプリンティング法」の開発に、世界で初めて※2成功しました。
有機ELディスプレーは、自発光による高い輝度、広視野角、高速応答性など視認性に優れ、薄型・軽量、低消費電力、低コストの次世代ディスプレーとして最有力視されています。しかし、テレビやパソコンのディスプレーとして実用化するためには、発光体の寿命や生産コストの問題だけでなく、大型化の実現に向けて多くの課題が残されており、各デバイスメーカーでは材料および製造プロセスのさらなる技術開発が急務となっています。
このような業界の動向にいち早く対応するため、当社は液晶・半導体製造装置で培った塗布技術を活用し、微小ノズルから溶液を吐出して均一な薄膜を形成する「ノズルプリンティング法」を開発しました。ノズルプリンティング法は、各種発光体や発光のために必要な薄膜を、微小の線幅に高精度に塗布することが可能。また、大気圧の下で材料を塗布するため、従来の真空蒸着プロセスでは不可欠だった減圧環境が不要となることに加え、デバイスの位置合わせも容易なことから、これまで困難とされていた10インチ以上の大サイズ画面の製造を可能にします。さらに、従来の真空蒸着法と比べて材料使用効率が5倍以上となり、近年注目を集めていたインクジェット法と比べても高い吐出安定性を実現できるため、生産コストも大幅に削減できます。
当社では、2005年度の後半にこの新技術を搭載した装置を製品化し、有機ELディスプレーの本格的な開発・量産に取り組む80社以上のデバイスメーカーのニーズに対応します。また、有機ELの市場が2,000億円に達すると見込まれる2007年には、量産化ラインをリリースする予定です。
なお、この技術はアメリカ・ボストンで開催中の「Society
for Information Display 2005」で発表しました。
※1 有機ELディスプレー(organic electroluminescence display)
電界をかけると発光する物質を利用したディスプレー。発光体をガラス基板に形成し、5〜10Vの直流電圧をかけて表示を行うため、バックライトが不要。発光体の材料に有機物を使うことから有機ELと呼ばれている。すでに携帯電話やカーオーディオなど小型のディスプレーに採用されており、今後はテレビ、モバイル機器、ウェアラブル機器、フレキシブルディスプレーなど、さまざまな分野への応用が見込まれている。また、表面自身が光源となるため、白熱灯や蛍光灯に代わる新たな照明器具としても注目を集めている。
※2 2005年5月26日現在
2008/5/19 日本経済新聞
有機EL寿命 蛍光灯の30倍 山形大 ディスプレーも2倍に
山形大学の城戸淳二教授の研究グループは、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の寿命を大幅に延ばす技術を開発した。製造技術を改良し、赤色に光る有機EL素子を作った。緑、青などほかの色の素子にも応用が可能。有機ELディスプレーの寿命を現在の2倍に延ばせるほか、蛍光灯の30倍の寿命を持つ照明の開発につながる成果という。
有機EL素子は一般に、発光分子や電子輸送材など3種類の材料を基板の表面に層状に重ねて作る。研究グループは材料を蒸発させて基板にくっつける「蒸着」と呼ばれる製造技術を改良。3種類の材料を同時に蒸発させ、その中を基板が移動する。各材料の濃度が微妙に異なる膜が基板表面にできる。
従来は3種類の材料を別々に重ねて作るので、使用中に材料の境界に負担がかかり、素子が劣化しやすかった。新技術で2mm角の赤色の有機EL素子を試作、強い光を出させる過酷な条件で寿命を調べたところ、約3万時間だった。通常の使用環境に換算すると30万時間(34年)に相当するという。
材料の濃度などを最適に調整すれば、さらに寿命を延ばすことが可能とみている。新技術は緑色や青色の素子にも応用できる。城戸教授によると、実用化している有機ELディスプレーの寿命は15万時間程度で、寿命を2倍以上にできる可能性があるという。
有機ELは照明としての開発も進んでいる。天井一面を照明にするといった使い方が可能で、蛍光灯に比べ消費電力を大幅に減らせる。ただ、価格が高いため採用は美術館など特殊用途に限られている。
新技術で白色の発光素子を作り、照明に応用すれば寿命1万時間の蛍光灯に比べ約30倍寿命が長い有機EL照明が作れるとみている。買い替えや電気代を合わせた総コストで蛍光灯と競争力のあるものが作れれば、一気に有機EL照明が普及する可能性があるという。
2008/5/19 出光興産/ソニー
有機EL
青色素子で世界最高レベルの発光効率を達成
出光興産株式会社(以下、出光)とソニー株式会社(同、ソニー)は、次世代テレビとして注目される有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用材料の共同開発の成果として、NTSC
標準を超える深い青色色度をもつ有機EL素子において世界最高レベルの発光効率を達成しました。出光の材料技術とソニーのデバイス技術の融合により、25%が限界と言われている蛍光型発光材料を用いて、素子の内部発光効率(内部量子収率※1)を28.5%まで高めることに成功しました。これにより、有機ELディスプレイの低消費電力化を実現することが可能です。
両社は今後も共同開発を積極的に推進し、有機ELディスプレイのさらなる高性能化を目指してまいります。
出光とソニーは、2005年11月29日に有機ELディスプレイ用材料の共同開発を発表し、発光材料から周辺輸送層に至るまで、有機ELテレビを実現する高性能な有機EL材料の開発を進め、順次ソニー製品へ展開してまいりました。今回の世界最高レベルの青色発光素子についての成果も、今後、製品への導入を目指して両社で検証を進めてまいります。
本成果は、出光が開発した蛍光型青色発光材料及びキャリア注入輸送材料とソニーが開発したデバイス構造の融合によって達成されたもので、さらにソニー独自のスーパートップエミッション構造を導入することにより、NTSC
標準(CIE(x, y)=(0.14, 0.08))を超える深い青色色度
(CIE(x,y)=(0.137, 0.065))を28.5%という高い内部発光効率で実現したものです。
この技術は、RGB3原色の中で現在最も消費電力の大きい青色素子の駆動電流を大きく低減する事が可能な技術であり、有機ELディスプレイの低消費電力化を実現し、今後の中大型有機ELテレビ実用化への貢献が期待できる成果です。
本成果については、2008年5月18日より米国ロサンゼルスで開催しています「SID2008(Society
for Information Display)」にて発表する予定です。
性能概要
方式 蛍光型青色有機EL
内部量子収率※1 28.5%
輝度半減時間※2 3万時間以上
(初期輝度200cd/m2、環境温度50℃でのテスト素子による連続点灯試験の結果)
電流輝度効率※3 3.9cd/A
色度 ( 0.137,0.065) (CIE1931
色度座標)
※1 内部量子収率:
注入電子数に対する発生光子数の比率
※2 輝度半減時間:
明るさが半分になるまでの連続点灯時間
※3 電流輝度効率:
単位電流当たりの明るさ(cd/A:カンデラ・パー・アンペア)
日本経済新聞 2008/7/29
有機ELテレビ 松下、40型級を商品化
11年にも
姫路工場で量産 ソニー・韓国勢に先手
松下電器産業は大画面の有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビを商品化する。2009年春に数百億円を投じて試作ラインを設け、量産技術を確立して11年にも40型級の製品を発売する。有機ELは液晶やプラズマより高画質で、次世代テレビの最有力技術とされる。松下はいち早く大画面機を発売し、ライバルであるソニーや韓国サムスン電子との市場争奪戦で主導権を握る考えだ。
有機ELを巡ってはソニーが昨年末に世界初の製品として11型を発売。サムスン電子も大画面の31型の試作品を公表したが、発売時期は明らかにしていない。松下の商品化により各社が大画面製品の投入を急ぐのは確実で、競争が本格化する。
松下は大画面化に適した高分子タイプの有機ELの基本特許を保有している米ケンブリッジ・ディスプレー・テクノロジー社と06年にライセンス契約を締結。京都市の半導体研究所で開発を進めてきた。実用化に向け、同研究所を有機EL専門拠点に転換し、20型以上のパネルの試作ラインを設け来春稼働させる。開発要員も200人規模に倍増する計画で、自社技術者を活用するほか、有機材料などに精通した技術者を中途採用する。
材料メーカーとも連携しながら、課題である長寿命化や大画面化に向けた技術を確立。兵庫県姫路市で10年の稼働を目指して建設中の液晶パネル工場内に、40型まで対応できる有機ELパネルの量産設備を新設。11年にも稼働、テレビに搭載して発売する。量産設備の投資額は1千億円単位になる見通し。開発状況や需要動向次第で発売前倒しも検討する。
松下は液晶とプラズマ式の薄型テレビを販売している。有機ELは、高画質で薄型という特長を生かした高級機と位置付ける見込み。価格は未定。液晶テレビの店頭価格は現在40型で20万円強まで下がっており、当初は液晶より高い数十万円での発売を目指す可能性が高い。
有機ELでは携帯電話などに搭載する中小型で韓国勢が先行。テレビに使う大型を巡っては今年7月、ソニーやシャープなど約10社が経済産業省の支援を受け、省電力化など量産技術の共同開発で合意、15年までの技術確立を目指している。松下も東芝との共同出資会社を通じて同事業に参加しているが、自社では量産目標時期を11年とし、市場開拓で先行する考えだ。
大型有機ELテレビの開発状況 | ||||||||||
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次世代薄型テレビ 有機EL
パナソニック・住友化学 量産
40型の消費電力 プラズマの1/10に
パナソニックと住友化学は薄型テレビ用の次世代パネルで本命とされる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)事業で提携する。 2010年度メドに世界初となる40型以上の大型パネルを共同開発・生産し、15年までに同サイズで消費電力を現在のプラズマテレピの10分の1程度に低減することを目指す。在来の薄型テレビの価格下落が続く中、画面の薄さや明るさ、低消費電力といった強みを持つ有機ELでテレビ事業の収益回復を狙う。
住友化学の英子会社は低コストでパネルを大型化できる「高分子型有機EL」と呼ぷ独自技術を持つ。パナソニックは住友化学と研究から生産まで広範囲に手を組むことで、開発費負担の軽減と早期の実用化をめざす。
両社が共同出資会社を設け、パナソニックの10年夏稼働の液晶パネル新工場(兵庫県姫路市)に専用ラインを設けることを検討している。
両社は15年までに40型で消費電力を40ワット前後と現在の液晶テレビの3分の1、プラズマテレビの10分の1程度に低減することを目指すとみられる。有機ELは厚さ3mmと現在の最薄の液晶テレビに比べて3分の1以下。画面の明るさはプラズマテレビの20倍以上となる見込み。
パナソニックはまず、こうした有機ELの付加価値を武器に薄型テレビの低価格化に歯止めをかけ、量産効果が出る15年以降はパネルの普及の目安とされる1インチ1万円を目指すとみられる。
パナソニックは国内で唯一、プラズマ、液晶、有機ELの3つを手掛け、薄型テレビに対するあらゆるニーズに対応できる体制をつくる。
住友化学は07年に高分子有機EL技術開発で先行した英ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー(CDT)を買収。同社の技術を生かして有機EL素材の量産技術を研究している。
有機ELを使ったテレビはソニーが07年末に、世界で初めて11型を商品化。サムスン電子が31型を開発するなど韓国勢も注力する。ただ従来の低分子有機ELでは低コストでの大画面化が難しいとされてきた。
液晶など在来型の薄型パネル市場は販売価格が下落。国内電機各社の大部分のテレビ事業は赤字に陥っている。
現時点における薄型テレビ用パネルの特徴 | ||||||||||||||||||||||||||||
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城戸淳二教授のブログ http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/el-8229.html
いやあ、大胆な戦略ですなあ。
インクジェットで高分子有機ELを生産しようとしたあのエプソンですらあきらめた技術。
しかも高分子有機ELはかつてフィリップスやオスラム(ドイツ Osram) が小型を少量生産し、投げ出した技術。
それをいきなり大型テレビへ使うと言うのだから、大胆と言うか、なんというか。
確かに高分子有機ELの寿命は延びているものの、マルチフォトン低分子有機ELには遠く及ばず。
発光効率に関してもリン光低分子には遥か及ばず。
何か秘策でもあるのだろうか…。
出光とLG Display有機EL事業における戦略的提携関係構築について
〜有機EL技術の相互協力、有機EL関連特許のクロスライセンスに合意〜
出光興産株式会社(以下、出光)とLG
Display Co.,Ltd.(以下、LGD)は6月24日、次世代ディスプレイとして注目される有機EL(エレクトロルミネッセンス)分野において、高性能ディスプレイ開発のための技術的な相互協力及びクロスライセンスを含む戦略的提携関係を構築することに合意しました。
今回の戦略提携において、出光はLGDに対し、高性能有機EL材料の提供及びデバイス構成などの提案を行います。これにより、ディスプレイ業界のリーディングカンパニーであるLGDを顧客として確保できるようになります。LGDは出光との今回の提携により、有機ELの研究、製品開発及び生産を強化させ、新しい成長分野として注目される有機EL事業を加速することができるようになります。
また、両社が保有する有機EL関連特許のクロスライセンスについても合意し、両社が保有する有機EL関連特許を自由に利用できるようになります。
今回の戦略提携を通じて、両社は有機EL分野におけるシナジー効果を相互に享受し、業界でリーダーシップを発揮するための基盤を構築していきます。
【出光興産 執行役員電子材料部長
松本佳久のコメント】
「ディスプレイ業界のリーディングカンパニーであるLGDと戦略的提携関係を構築することを大変光栄に思います。今回の戦略提携によって、両社の有機EL事業における取組関係をより強固なものに発展させることを期待し、更に出光の有機EL技術を高めることで有機EL関連事業の強化、拡大を図っていきます。」
【LGD 安炳(Ahn Byung-chul) 常務OLED事業部長のコメント】
「今回の契約締結はLGDの有機EL事業強化に役立つだけでなく、中長期的にはノートパソコンやTVなど中大型有機EL市場へ当社が参入することにも大きく貢献します。このようなWin-Winの協力関係は両社の有機EL事業に大きなシナジー効果をもたらすと期待します。」
LGDはアクティブ型有機EL について、2004年に20.1インチワイドTV用を開発したのに続き、2007年には世界初となる4インチのフレキシブルディスプレイを、その後15インチのノートパソコン用及びTV用を開発し、次世代ディスプレイ開発でその技術力を高く認められています。
当社は、2005年から行っているソニー株式会社との有機ELディスプレイ用材料の共同開発を主軸とし、携帯機器用途については、東芝モバイルディスプレイ株式会社と技術開発を進めております。更に今回、LGDと戦略的提携を行うことで、出光の有機EL材料事業を強化することになります。なお、出光は有機EL技術に関する重要特許を多数保有しており、知的財産権の保護・尊重・活用についての取り組みを積極的に進めています。
参 考 資 料
1. 有機ELディスプレイとは
有機ELディスプレイは有機材料に電流を加えることで材料自らが発光する自発光型ディスプレイデバイスです。バックライトやカラーフィルターなどが不要なため、部品数を大幅に減らすことができます。そのため、省資源になり製造段階のエネルギー消費も抑制できることが期待されます。また、優れた動画応答性や鮮やかな色表現が可能なため、次世代の薄型ディスプレイとして注目されています。
2.有機EL市場
民間調査会社であるディスプレイサーチ(DisplaySearch)によると、急成長している有機EL市場は2009年には10.5億ドル、2010年末には33.3億ドルに達すると見通しています。
3.会社概要
LG Display Co.,Ltd.
(1)設立 1985年 2月
(2)所在地 Seoul市 Yeongdeungpo-gu、Yeoido-dong 20
(3)CEO 権暎壽(Kwon Young-soo)
(4)資本金 1兆 789億ウォン (2009年 3月末現在)
(5)従業員 27,000名 (2009年 3月末現在)
出光興産株式会社
(1)設立 1940年 3月 30日
(2)所在地 東京都千代田区丸の内三丁目1番1号
(3)代表取締役社長 天坊 昭彦
(4)資本金 1,086億円(2009年 3月末 現在)
(5)従業員 7,826名(2009年3月末現在)連結