トヨタ、燃料電池ハイブリッド乗用車の限定販売計画を前倒し
−本年末を目処に日米で限定販売を開始−
トヨタ自動車(株)(以下トヨタ)は、このほど燃料電池ハイブリッド乗用車の公道走行試験が1年の節目を迎えることを機に、当初の開発計画を早め本年末を目処に、日本および米国で限定販売を開始することとした。
トヨタは、FCHV-4(Fuel Cell Hybrid Vehicle:燃料電池ハイブリッド乗用車)
による公道走行試験を昨年6月より日本で、続いて7月より米国で開始し、これまでの1年間で公道およびテストコースを合わせ、延べ約11万kmの走行試験を行って来ており、今後も継続することとしている。
今回の決定は、この成功裡に進行している走行試験の成果を踏まえた上、社会要請に、より早く応えることを念頭に、当初計画の前倒しを図るものである。
今回限定販売を予定している新型燃料電池ハイブリッド乗用車では、FCHV-4のシステムの信頼性や、航続距離など使用性を一段と高めることで、市販車に求められる性能レベルを確保する計画である。
しかしながら、コスト面や、氷点下の低温適応性などに課題が残るため、その販売は、台数を日本向けと米国向けを合わせ、向こう1年間で20台程度とするとともに、販売先は、政府関係、研究機関、エネルギー関連企業などに限定し、地域も水素供給体制、点検整備体制など必要なインフラが整っていることを確認できた一部地域に限定し、行なう予定である。
今回の販売は、将来の燃料電池車普及に向けた規格・基準づくり、インフラ整備、そして水素燃料の社会的受容性醸成に向けたテストマーケティングと位置づけている。
本格的な市場導入には、こうした基準、インフラが整い、水素燃料に対する理解が浸透するという社会基盤ができることが必要で、その時期は早くとも
2010年以降になるものと予測している。
なお販売方法はリース販売とするが、リース料、リース条件などは今後決めて行く
計画である。
(参考資料)
【新型燃料電池ハイブリッド乗用車 主要諸元(計画値)】
車両 ベース車両 クルーガーV 全長/全幅/全高(mm) 4,735/1,815/1,685 重 量(kg) 1,850 最高速度(km/h) 150以上 乗車定員(人) 5 燃料電池 種 類 固体高分子形 出 力(kW) 90 モーター 種 類 交流同期電動機 最高出力(kW(PS)) 80(109) 最大トルク(N・m(kg・m)) 260(26.5) 燃 料 種 類 純水素 貯蔵方式 高圧水素タンク 最高充填圧力(MPa) 35 2次電池 種 類 ニッケル水素電池
日本経済新聞 2003/1/10
燃料電池「充電」可能に 北大が開発水素、繰り返し利用
水素と酸素を反応させて発電する燃料電池で、水素を繰り返し使えるようにする技術を北海道大学の市川勝教授らの研究グループが開発した。電気をかければ水素が再び燃料として使える状態に戻り、「充電」した状態となる。エネルギーを柔軟に利用できる利点があり、電源開発などと協力し実用化する。
同教授らはメタンから作るシクロヘキサンなどの液体をセ氏約300度で熱して水素を取り出す燃料電池向けの手法を開発済み。これを応用し、水素原料を霧状にして電池に供給するなどの工夫で、高温をかけて水素を作らなくても液体から水素を直接取り出して発電できるようにした。
発電後は水素は酸素と結合して水になるが、これを外からの電気で分解して水素を取り出し、発電後の水素原料に加えると再び発電ができる状態になる。充放電を繰り返す蓄電池と同じように使える。
今回の燃料電池を使えば、昼間不在のときに屋根に設置した太陽電池で発電して水素を燃料電池に蓄えておき、夜間に発電をして照明や暖房に使うことができる。液体から直接発電する燃料電池としては、携帯機器向けにメタノールを利用する方式の開発が進んでいる。北大グルーブの燃料電池はこれより発電性能もいいという。
燃料電池マッチ箱大 生ごみ原料、微生物活用 シャープなど基礎技術
経済産業省所管の地球環境産業技術研究機構(京都府木津町)とシャ−プは、生ごみを原料に微生物を使って水素を作り、発電する超小型バイオ燃料電池の基礎技術を開発した。液晶テレビの電気ならマッチ箱大の装置で賄える。小規模事業所や家庭で使う小型燃料電池として数年後の実用化を目指す。
装置は微生物の培養器と燃料電池からなる。専用施設で生ごみを溶解・精製して糖の水溶液を作り、培養器に入れると、微生物は糖を餌に大量の水素を生み出す。得た水素を燃料電池に送り込んで発電する。家電製品の電池代わりに使えるほか、2リットルのペットボトルほどの培養器で一家庭の電気を賄える。
糖の水溶液は灯油と同じ感覚で店で買えるようにすることを検討している。生ごみを有効利用するので地球温暖化や廃棄物対策にもなる。
研究グループは土壌微生物を改良して水素の生産効率を数百倍以上に高め、実用化に見通しをつけた。微生物の寿命を延ばすなど改良を加え、2年後をメドに実証試験を始め、4−5年以内に技術を確立する。
日本経済新聞 2003/4/16
三菱商事 燃料電池の素材開発 本荘ケミカルと共同で新会社
三菱商事は電池材料メーカーの本荘ケミカル(大阪市)と高温や低温の環境下でも使用できる燃料電池をつくるためのナノテクノロジー(超微細技術)素材の開発会社を共同で設立する。セ氏80−40度の温度帯でしか正常に動作しない燃料電池を、同120度−零下40度の厳しい環境下でも使えるようにできる素材の実用化を目指す。
新会社「プロトンC60パワー」(東京・港、本荘之伯社長)は資本金1億円。本荘ケミカルが51%、三菱商事が49%出資し今月中に設立する。大阪大学工学部の大島巧教授らと燃料電池の中核素材である電解質膜や電極の共同研究に取り組む。
電解質膜や電極は、三菱商事が日本や韓国などで独占的な製造・販売権を持つフラーレン(球状炭素分子)と呼ぶ超微細物質でつくる。膜にフラーレンを混入すると燃料電池の動作温度帯が広がることが実験レベルで確認済みという。
日本経済新聞夕刊 2003/5/8
GMとダウ・ケミカル提携
米ゼネラル・モーターズ(GM)と米ダウ・ケミカルは7日、次世代の発電方式である燃料電池の事業で提携すると発表した。発電装置の性能向上や電力の効率的な利用法などを実証的に共同研究し、本格的な実用に向けてコスト引き下げを目指す。
2003/5/7 GM
日本語版
Dow Plans To Use GM Fuel Cells in
World's Largest Fuel Cell Transaction
The Dow Chemical Company, the
world's largest chemical manufacturer, and General Motors Corp.,
the world's largest automobile manufacturer, have reached initial
understanding on the world's largest fuel cell transaction to
date.
The intent of this is for GM to commercialize
its hydrogen fuel cell technology to generate electricity from
hydrogen created as a co-product at Dow's operations in Freeport,
Texas. The 30-square-mile
complex in Freeport, 65 miles east of Houston, is Dow's largest
manufacturing facility.
If tests proceed according to plan,
Dow could eventually use up to 35 megawatts of power generated by
500 GM fuel cell units on an ongoing basis. This is enough
electricity to power 25,000 homes for a year and is more than 15
times bigger than any other known fuel cell transaction. The test
is expected to begin during the fourth quarter of 2003 and to run
through 2005, with plans to commercialize starting in 2006. Dow
and GM teams are currently working to remove the final hurdles
for placing the fuel cells in Dow's chemical manufacturing
facility. A final agreement between the two industrial giants is
expected to be signed in the next few months.
"This is a significant
milestone-not only from a technology and business perspective,
but from an environmental one as well," says Bill Jewell,
Dow's business vice president of energy. If the tests are
successful, Dow could become the largest user of fuel cell
generated electricity in the world. "Technology moves
forward in steps. This step can prove the feasibility of
manufacturing and using fuel cells in significant
quantities."
Larry Burns, GM vice president of
research and development and planning, and Peter Molinaro, global
leader of climate change for Dow, jointly announced the
arrangement in the U.S. capital.
"While this is a milestone
event," Burns said, "and it points to a growing
interest among businesses in using fuel cells to power factories
and buildings, the most compelling reason for GM to collaborate
with Dow is ultimately to reduce the cost of fuel cells and
improve their durability so that we may put them in cars by the
end of the decade."
Though Texas is the first place
where Dow and GM will test this technology, the two companies are
already discussing the use of fuel cells to convert hydrogen to
electricity in other Dow locations in the U.S. and Europe. "
Using hydrogen to generate
electricity is no longer reserved for spacecraft," said
Dow's Molinaro. "This collaboration can place us at the
threshold of common use of fuel cells to power significant
portions of our economy. We are very excited about this
collaboration with General Motors and about what it could mean in
the pursuit of greater energy diversity, ultimately leading to a
hydrogen economy."
"This is a small but
significant step on the path to a more sustainable energy
future," Molinaro stated."We applaud this move by Dow
to be a fuel cell pioneer and to explore new technologies that
lead to a more sustainable energy profile," Burns added.
The Dow-GM opportunity typifies the
type of creative deals that will arise in the new Hydrogen
Economy."
This is an excellent example of
environmental stewardship making good business sense," Burns
said. "By
efficiently recycling co-product hydrogen with a fuel cell, Dow would be able to reduce its emissions
and create electricity competitive with its other energy
supplies. This kind of creativity will generate a stream of
entrepreneurial thinking that will ultimately accelerate the
arrival of the Hydrogen Economy. This deal is just a start."
"As we reduce costs and improve
durability, new applications will emerge that serve industrial,
commercial and, finally, consumer power and transportation
needs," Burns said. "GM will continue to lead the
development of these applications."
Both Dow and GM are members of the
Green Power Market Development Group, a unique partnership
between the World Resources Institute (www.wri.org) and twelve
major U.S. corporations, dedicated to building corporate markets
for green power. WRI praises the Dow-GM fuel cell plan."
With a fuel cell transaction this
size, Dow and GM continue to show that they are serious about
alternative energy," said Jonathan Lash, president of WRI.
"This collaboration between Dow and General Motors, two
partners in WRI's Green Power Market Development Group,
demonstrates the type of innovation and leadership that will be
required to build sustainable energy markets."
General Motors (NYSE: GM), the
world's largest vehicle manufacturer, designs, builds and markets
cars and trucks worldwide, and has been the global automotive
sales leader since 1931. GM employs about 350,000 people around
the world. More information on GM can be found at www.gm.com.
Dow is a leading science and
technology company that provides innovative chemical, plastic and
agricultural products and services to many essential consumer
markets. With annual sales of $28 billion, Dow serves customers
in more than 170 countries and a wide range of markets that are
vital to human progress, including food, transportation, health
and medicine, personal and home care, and building and
construction, among others. Committed to the principles of
Sustainable Development, Dow and its approximately 50,000
employees seek to balance economic, environmental and social
responsibilities.
GM、ダウ・ケミカル・ケミカル社、世界最大の燃料電池式発電設備設置に関し基本合意
米ゼネラルモーターズ(以下GM)と化学業界世界最大手、ダウ・ケミカル・ケミカル社(以下ダウ・ケミカル)はこのほど、世界最大規模の燃料電池式発電設備の設置に関し基本合意した。
GMは、燃料電池技術採用の分散型発電の商業化を目指しつつ、ダウ・ケミカル社に燃料電池技術を提供する。一方、ダウ・ケミカル社は、テキサス州フリーポートに在る最大規模のコンビナートにおいて、燃料電池発電設備を設置し、そこから副産物として得られる水素を利用して発電する。
計画では、ダウ・ケミカル社は500個のGM製燃料電池から、35メガワットの電力を発電する。これは25,000軒の一般家庭が1年間に消費する電力に相当するのもので、既存の燃料電池発電設備の15倍以上の能力。2003年第4四半期から2005年末までに運用試験を実施、2006年からの実用運転開始を目指す。
現在、GMとダウ・ケミカル社は、燃料電池をダウ・ケミカル社の施設に設置するための最終調整段階にあり、今後、数か月以内に正式契約を締結する予定。
燃料電池により発生される電力の世界最大のユーザーとなる、ダウ・ケミカル社エネルギー事業担当副社長、ビル・ジュエルは、「この共同プロジェクトは、技術的、商業的には無論のこと、環境面でも極めて画期的である。技術は段階を追って前進するもの。まずは、燃料電池の量産運用の現実性が立証されることになるだろう」と語った。
GM研究開発・企画担当副社長、ラリー・バーンズは、「共同プロジェクトの進行に伴い、各企業では工場やオフィスのエネルギー源としての燃料電池利用強い関心を寄せることになるだろう。しかし、GMがダウ・ケミカル社に協力する最大の理由は、燃料電池の生産コストを低減させると同時に、耐久性を向上させ、今後10年以内に実用的な自動車用動力源にまで昇華させることにある」と語った。
GMとダウ・ケミカル社では、今回のテキサス州におけるプロジェクト以外にも、既に米国内とヨーロッパの他のダウ・ケミカル社のコンビナートにおいて、燃料電池発電装置の設置を検討し始めている。
ダウ・ケミカル社、環境担当グローバルリーダー、ピーター・モリネーロは、「共同プロジェクトは、燃料電池を日常生活の中に採用するきっかけとなり、経済の活性化につながるだろう。そして、エネルギー資源を取り巻く環境には大規模な変革が促され、最終的には水素経済社会の到来に結びつくだろう。これは未来のエネルギー資源確保に向けた、小幅ではるが非常に重要な一歩である」と語った。バーンズは、「恒久的なエネルギー資源を確保するための新技術を探求するダウ・ケミカル社の姿勢に賛美の声を惜しまない」と応えた。
GMとダウ・ケミカル社の協調姿勢は、将来の新しい水素経済社会における典型的なビジネスモデルとなり得るものである。
バーンズは、「これは環境に対する企業の配慮が、結果として、優れたビジネスセンスをもたらすという例証である。燃料電池で水素の効率的なリサイクル化が進めば、ダウ・ケミカル社は、自社コンビナートの大気汚染を抑制することが可能となり、他のエネルギーを利用する場合よりも競争力を高めることが出来る。この優位性に気付いた企業家たちは、次第に水素経済社会の到来を加速する方向に動くだろう。今回のプロジェクトは単にそのスタートに過ぎない。燃料電池のコストの低下と耐久性の向上が実現すれば、あらゆる産業や商業ばかりでなく、最終的には一般家庭や運送手段向けの需要に応える新しい利用方法が可能になるだろう。GMは今後も燃料電池関連の開発をリードし続ける」と語った。
GMとダウ・ケミカル社は、世界資源研究所(以下WRI)と米国の主要企業12社で構成される自然エネルギー市場開発グループ(Green Power Market Group)のメンバーで、WRIはGMとダウ・ケミカル社による共同プロジェクトを賞賛している。
WRI 代表のジョナサン・ラッシュは、「この大規模なプロジェクトにより、GMとダウ・ケミカル社は代替エネルギーに対する真摯な姿勢を表明した。共同プロジェクトは、恒久的なエネルギーの確保に必要とされる革新性と強力なリーダーシップの典型を提示している」と語った。
GMは世界最大の自動車メーカーで、乗用車からトラックまで世界各国で設計・生産を行い、1931年から世界最大の販売台数を誇り、世界中で約35万人を雇用している。
ダウ・ケミカル社は化学業界の世界最大手企業で、革新的な薬品類、プラスチック、農産物をはじめ、多様な生活必需品を供給している。