日本経済新聞 2008/2/13
富山化学、富士フィルムが買収 総額1000億円超 医薬に本格参入
月内にもTOB 業界再編が加速
富士フイルムホールディングスが東証一部上場の新薬メーカー、富山化学工業を買収する。月内にもTOB(株式公開買い付け)を開始し、子会社化する。買収総額は1千億円を超える見通し。富山化学の持つ新薬開発力を足掛かりに医薬事業に本格参入する。富山化学に約22%出資している大正製薬とも連携し、成長戦略の柱に育てる。高齢化社会の到来で安定した需要が見込める医薬市場への異業種からの参入が加速してきた。医薬業界の再編に拍車がかかりそうだ。
週内にも発表する。TOB価格のプレミアム(価格上乗せ分)は平均とされる2−3割程度になるもよう。取得株数に上限は設けず過半数の取得を目指す。その後富士フイルムは富山化学の実施する数百億円規模の第三者割当増資を引き受け、出資比率をさらに引き上げる。富山化学は上場廃止になる公算が大きい。
富山化学の筆頭株主である大正製薬は、保有株を売却せずに富士フイルムによるTOBに賛同。富山化学の第三者割当増資の一部を引き受けて出資比率を拡大し、3社で医薬品の研究開発や販売などを推進する。大正製薬は12日、ビオフェルミン製薬の買収も発表しており、事業基盤の拡大に拍車をかける。富山化学への最終的な出資比率は富士フイルムが約3分の2、大正製薬が3分の1程度になる見込み。
富士フイルムは2007年3月期までに写真フイルム事業の構造改革を終了。画像情報装置や内視鏡など医療機器に加え、診断薬や再生医療など医療関連事業を強化している。ナノテクノロジー(超微細技術)などの独自技術と富山化学の創薬技術を合わせれば、競争力の高い医薬事業を展開できると判断した。
富山化学は鳥インフルエンザ治療薬などの開発を進めているが、新薬開発費用がかさみ07年3月期には最終赤字に転落。昨年9月末で160億円強の累積損失を抱えている。世界的に医薬品の研究開発費は膨らむ傾向にあり、資金不足に悩む中堅メーカーが増えている。資金力のある富士フイルムの傘下に入ることで、新薬開発を加速する。
富山化学を持ち分法適用会社にしている大正製薬も、富士フイルムの力を借りれば富山化学の収益基盤の立て直しが進むと判断した。富山化学と共同出資する医療用医薬品の販売会社の商品力の強化につながるとの思惑もある。
富山化学工業
東証一部上場の中堅製薬会社。研究開発に特化しており、タミフルなど従来品とは作用の仕組みが違うインフルエンザ治療薬や、リウマチ根治薬などを開発している。2007年3月期の連結売上高は167億円、87億円の最終赤字。07年9月末の連結従業員数は1056人。
2002 | 大正製薬、富山化学と提携 大正富山医薬品株式会社の設立 |
2003 | 大正製薬、富山化学の一般用医薬品販売権を承継 |
2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入
、メディカル・ライフサイエンス事業拡大
医薬再編、異業種が主導 規模、世界とは開き
富士フイルムホールディングスが新薬メーカーの富山化学工業を買収し医薬事業に本格参入する。4月にはキリンホールディングスが協和発酵を子会社化する予定で、異業種企業が国内医薬再編の主導役の一角に躍り出てきた。
富士フイルムの医療関連事業の柱はエックス線撮影装置や内視鏡などの診断機器。サプリメント(栄養補助食品)・化粧品と合わせ、ヘルスケア事業の年間売上高は約3千億円に達する。
国内の医薬再編はまず専業大手が口火を切った。欧米勢に対抗しうる事業規模の確保が狙いで、05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併しアステラス製薬に、三共と第一製薬が統合して第一三共が誕生した。
こうした流れが中堅にも波及。全体の事業規模は専業より大きく、資金力を背景に多角化を進めたい異業種を巻き込んだ再編に結びついた。05年には大日本製薬が住友製薬と合併し住友化学の傘下に入り、07年には田辺製薬が三菱ウェルファーマと合併し田辺三菱製薬となり、三菱ケミカルホールディングスの子会社になった。キヤノンも将来の医薬事業参入を視野に定款を変更した。
化学、食品メーカーにとり自社の技術を応用でき、本業より利益率が高い医薬事業は魅力的に映る。国内市場は6兆ー7兆円にとどまるが、現在7千億ドル台半ばの世界市場はアジアやアフリカの人口増を背景に拡大傾向が続く見通し。特色や技術力はあっても経営基盤の弱い中堅・ベンチャーを買収する形で、異業種による医薬事業参入が相次ぐ可能性がある。
新薬を継続的に生み出すのに必要な研究開発投資をまかなうには、年間売上高30億ドル以上が必要とされる。1980年代の参入以来、自社開発品を製品化できていない日本たばこ産業(JT)の例をみても壁は厚い。長期の投資に耐え回収にこぎ着けられるか異業種組の底力が試される。
海外では、独ヘキスト(現・仏サノフィ・アベンティス)が90年代に化学事業を分離するなど10年前から医薬特化の動きが続く。年間売上高約450億ドルの米ファイザーをはじめ世界上位は欧米の専業メーカーが占める。国内最大手の武田薬品工業も10位以内に入れず、規模では欧米大手との差は依然大きい。
大手製薬5社と主な兼業メー力一の連結売上高と時価総額(単位 億円)
製薬大手5社 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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兼業メーカー(傘下の製薬会社) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)売上高は2008年3月期予測。中外製薬とキリンHDは07年12月期実績。 医薬亮上高はセグメント情報から作成。時価総額は2月12日の終値から算出 |
日本経済新聞 2008/2/13
大正 発表
大正はビオフェルミン買収 TOBで270億円
大正製薬は12日、大証一部上場のビオフェルミン製薬を買収すると発表した。13日からTOB(株式公開買い付け)を実施、最大で発行済み株式の62.0%を取得して子会社化する。買収額は最大272億円。乳酸菌技術を持つビオフェルミンを傘下に収め、自社の医薬品や健康食品の開発に役立てる。
買い付け価格は1株3620円で、8日の直近終値を約23%上回る水準。TOB期間は3月11日までの20営業日で、最大753万5500株を取得する。TOB後もビオフェルミン製薬は大証一部への上場を維持する。
ビオフェルミン製薬はTOBに同意。ビオフェルミン株の40.19%を保有する筆頭株主の投資会社TZCS(旧
T.ZONEキャピタル)も買い付けに同意している。10.01%を保有する二位株主の武田薬品工業は「慎重かつ迅速に検討する」としている。
ビオフェルミン製薬は乳酸菌を利用した整腸剤が主力。医療用医薬品と一般用医薬品(大衆薬)の両方を扱い、2007年3月期の売上高は77億5千万円、純利益は9億6千万円。
整腸剤市場は年間340億円で拡大傾向にある。大衆薬最大手の大正製薬は整腸剤分野が手薄なため、ビオフェルミン製薬を買収して成長分野に本格参入する。
ビオフェルミン製薬株式会社株券に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
大正製薬株式会社(以下「当社」又は「公開買付者」といいます。)は、平成20年2月12日開催の取締役会において、下記のとおりビオフェルミン製薬株式会社(コード番号4517
大証第一部、以下「対象者」といいます。)株券を公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)により取得することを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
記
1. 買付け等の目的
(1) 本公開買付けの概要
公開買付者である当社は、対象者を連結子会社化することを目的として、対象者の発行済株式の総数の40.19%である4,884,100株(当該株式数に係る議決権数が、対象者の発行済株式の総数から対象者が所有する自己株式の総数を控除した数に係る議決権数に占める比率(以下「議決権比率」といいます。)41.75%)を下限とし、62.00%である7,535,500株(議決権比率64.42%)を上限として、対象者の普通株式を取得する目的で、本公開買付けを実施いたします。
当社は「健康と美を願う生活者が納得する、優れた医薬品・健康関連商品、情報及びサービスを、社会から支持される方法で創造・提供することにより、社会へ貢献する」ことを使命とし、この使命を全うすべく、国際的な競争の中でも着実に成長・発展し続けられるように、一層強固な経営基盤を構築することを目指しております。平成18年には、創業100周年にあたる平成24年度を目標年度とする中期業績目標を策定し、新たな挑戦に向けてスタートいたしました。当該目標の下、主力のセルフメディケーション事業(一般用医薬品及び健康関連商品事業)の拡充と医薬事業(医療用医薬品及び同関連事業)の強化を図って盤石な経営基盤を構築し、更なる業容の拡大と企業価値の最大化に努めております。主力事業であるセルフメディケーション事業においては、生活者のニーズをとらえた商品開発に注力し、消費者の皆様から評価され、愛用されるようなブランドの育成、強化に努めております。これらの方針の下、当社の研究開発、マーケティング、販売体制などとのシナジー効果が発揮できるようなアライアンスなどにも取り組んでおります。又、医薬事業においては、国際的に通用するオリジナリティの高い新薬の研究開発に注力するとともに、有望薬剤の導入についても積極的に検討を進め、パイプラインの充実・強化を図っております。
一方、対象者は、大正6年の設立以来、活性乳酸菌製剤“ビオフェルミン”の製造販売に特化し、ビオフェルミンブランドを確固たるものに高め、人々の健康増進に積極的に寄与してきました。乳酸菌そのものが持つセルフメディケーション(自己治療)やセルフプリベンション(自己予防)の可能性を徹底的に追求し、優れた『ヒト由来の乳酸菌』の多方面への有用性を解明する中で、『腸は健康の源』を基本理念とした新製品の開発を促進するため、試験研究・管理棟を竣工し、製品製造専用棟となる既存建物との効率化・合理化、生産体制の一層の拡充を目指しています。対象者は、業績については会社創立90周年を迎えた直近の平成19年3月期は非常に好調でしたが、このような好調な時にこそ、将来の持続的成長に備えた戦略的提携が必要であるとの今回の判断に至ったとのことです。
当社は、当社と対象者のそれぞれが有する高価値のブランド、研究開発・マーケティングのリソース、安全確実な品質保証の仕組みなどを相互に活用・融合して、乳酸菌が持つ未知の可能性の追求と開発をより積極的に行うことにより、当社と対象者との間に高度のシナジー効果をもたらすことができると考えております。現時点で想定されるシナジー効果は、@当社にはない乳酸菌技術・ノウハウを活用し、双方の強みを融合した商品開発、製品ラインアップの充実、A未知の分野、新用途における研究開発のコラボレーション、B双方の生産技術を効果的に融合した生産性の向上、C資材等の共同調達ほか経費削減です。当社は、対象者の企業価値を向上させる方策を今後幅広く追求することにより、中長期的な観点から対象者の企業価値の増大に努める予定です。当社は、現時点において、本公開買付け成立後、当社と対象者との間で取締役派遣を含む人的関係を構築することも視野に入れておりますが、対象者の役員の構成の大きな変更は予定しておりません。
対象者の取締役会は、本公開買付けの買付価格その他の条件、安定した株主関係の構築のメリット、当社と対象者との間に生じるシナジー等を総合的に考慮し、本公開買付けは、対象者の企業価値ひいては株主共同の利益の向上に資すると判断し、平成20年2月12日、本公開買付けに賛同する旨の決議をしております。
(2) 本公開買付けに関する合意等
本公開買付けについては、対象者の筆頭株主である株式会社TZCS(東京都中央区日本橋室町三丁目2番15号、以下「TZ」といいます。)から、その所有する対象者株式4,884,100株(対象者の発行済株式の総数に対する比率40.19%、議決権比率41.75%)の全てについて、本公開買付けに応募することについての同意を得ております。
(3)
本公開買付けによる上場廃止の可能性の有無及びその事由
本公開買付けは、買付けの上限株式数を7,535,500株(対象者の発行済株式の総数に対する比率62.00%、議決権比率64.42%)としており、対象者の上場廃止を企図するものではなく、当社は、本公開買付けが成立した後も引き続き対象者の株式上場を維持する方針です。
ビオフェルミン製薬株式会社
資本金 1,227百万円(平成19年9月30日現在)
大株主及び持株比率 T・ZONEキャピタル 38.28% 武田薬品工業 10.01% 日本トラスティ・サービス信託銀行 6.73%
平成20年2月13日 富士フイルムホールディングス/大正製薬/富山化学工業
富士フイルム、大正製薬、および富山化学による戦略的資本・業務提携の基本合意について
富士フイルムホールディングス株式会社(社長:古森重隆、以下富士フイルム)、大正製薬株式会社(社長:上原明、以下大正製薬)、富山化学工業株式会社(社長:菅田益司、以下富山化学)の三社は、本日、富山化学の「医療用医薬品事業」の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意に至りましたので、お知らせいたします。
本日の基本合意に基づき、まず富山化学が実施する第三者割当増資を富士フイルムおよび大正製薬が引き受け、次に、富士フイルムが富山化学の公開買付けを行います。さらに富山化学による全部取得条項付株式の発行を通じた方法を経て、富士フイルムから大正製薬に一部の株式譲渡を行い、最終的に富士フイルムが66%、大正製薬が34%の富山化学の株式を保有する予定です。
今回の戦略的資本・業務提携は、「インフルエンザ治療薬」、「アルツハイマー病治療薬」などの有力なパイプラインを保有し、優れた創薬力を有する富山化学を、特定領域(感染症、抗炎症、中枢神経など)における世界基準の有力創薬企業として大きく飛躍させていくと共に、こうした富山化学の企業力の向上、および、三社の研究開発・販売面でのシナジー拡大による新たな価値創造を通じて、富士フイルムおよび大正製薬が、それぞれの企業価値の最大化を実現していくことをその狙いとしています。また、富山化学が現在開発中のインフルエンザ治療薬「T-705」の早期開発と安定供給体制の構築に向けた取り組みを加速させ、大規模な人的被害の拡大予想から、今や世界中でその発生が恐れられている新型インフルエンザの大流行(パンデミック)への対応という社会的要請にこたえていきます。
富士フイルムは、現在を「第二の創業期」と位置付け、中期経営計画「VISION75」の基本戦略に基づき、積極的な施策展開による大胆な事業構造の転換を進めております。この数年間で、写真関連事業の大規模な構造改革を断行し、同時に、重点事業への集中的な経営資源の投下を進めたことで、平成20年3月期は売上高2兆8500億円、営業利益2100億円と過去最高の達成を見込み、中期経営計画「VISION75」の最終年度である平成22年3月期には、売上高3兆1500億円、営業利益2500億円以上を目標値として掲げています。富士フイルムは、この中期経営計画の着実な実行を進める一方で、さらにその先を見据えた中長期的な視点から、企業の永続的な成長を実現していくための戦略推進を検討しています。
医療用デジタルX線画像診断システム、医用画像情報ネットワークシステム、内視鏡、血液の臨床検査用システムなどを中心に高い実績と豊富な知見を有する富士フイルムの「メディカル・ライフサイエンス事業」は、上記中期経営計画における重点事業の中でも、特に積極的に、設備投資・研究開発の強化やM&Aの推進を進めている分野です。従来、「診断」の領域を中心に事業展開を進め、また各種サプリメントなどの機能性食品、機能性化粧品分野への進出により「予防」分野にも事業領域を広げている「メディカル・ライフサイエンス事業」を、さらに「治療」の領域にまで拡大していくために、高い研究開発力を有し、かつ、技術的なシナジーが見込め、また、成長への潜在能力の高い戦略的パートナーとの連携を検討してきました。
今回、富士フイルムは、連結子会社の富士フイルムRIファーマ株式会社(放射性医薬品事業)、富士フイルムファインケミカルズ株式会社(医薬品原薬・中間体事業)に加え、研究開発型企業として高い実績をあげている富山化学と株式取得による戦略的提携を行い、医療用医薬品事業に本格参入することで、今後は「予防〜診断〜治療」という全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーグループとして、新たな事業ドメインによる戦略展開を進めます。富士フイルムグループの「治療」領域の中核企業として、資金・人材・技術の側面から支援を進めて収益性の向上を図り、特定領域(感染症、抗炎症、中枢神経など)における世界基準の有力創薬企業として大きく飛躍させていきます。研究開発面においては、富山化学のもつ高い技術力に、富士フイルムの乳化分散技術によるナノ粒子化など、独自のFTD(Formulation
Targeting Delivery)技術をはじめとする多彩な技術を組み合わせて、新たな価値創造による新薬パイプラインの強化および治験期間の短縮化を目指します。生産面においては、富士フイルムファインケミカルズ株式会社の有効活用などを通じて、外注品の内製化を始めとする生産体制の効率化、災害リスク分散体制の構築、原材料共同購入などを検討していきます。販売面においては、富士フイルムグループの海外販売ネットワークやブランド力・知名度などを最大限に活用した、海外販売体制の構築などを進めていきます。
また、富士フイルムは、富山化学の企業力強化に向けた取り組みにおいて、大正製薬と強固な協力体制を構築していくと共に、OTCトップ企業としてセルフメディケーション分野での豊富な知見とノウハウを有する同社と、研究開発、販売分野を中心に、両社の企業価値の向上に繋がる協業の検討を進めていきます。
大正製薬は「健康と美を願う生活者が納得していただける、優れた医薬品・健康関連商品、情報およびサービスを、社会から支持される方法で創造・提供することにより、社会へ貢献する」ことを使命とし、この使命を全うすべく、国際的な競争の中でも着実に成長・発展し続けられるように、一層強固な経営基盤の構築を目指しております。平成18年には、創業100周年にあたる平成24年度を目標年度とする中期業績目標を策定し、新たな挑戦に向けてスタートいたしました。当該目標の下、主力のセルフメディケーション事業(一般用医薬品および健康関連商品事業)の拡充と医薬事業(医療用医薬品および同関連事業)の強化を図って盤石な経営基盤を構築し、さらなる業容の拡大と企業価値の最大化に努めております。一方で、薬価改定、後発品の使用促進などの医療費適正化政策の浸透や外資系製薬会社の攻勢など医薬事業における事業環境はますます厳しさを増しています。その様な事業環境の中、今回、富山化学への資本比率を引き上げ、今まで以上に両社が行ってきた業務提携関係を強化し、厳しい環境を乗り切る所存であります。具体的には、大正富山医薬品株式会社設立以来、感染症、炎症・免疫に重点を置いた営業活動を実施してまいりましたが、昨年10月には大正製薬・富山化学の両社が共同開発を行った合成抗菌剤「ジェニナック」を上市することができ、現在、臨床の現場からも高い評価をいただいております。今後は、さらに共同研究開発体制を強化し、感染症、炎症・免疫の領域で日本のトップ企業となることを推進してまいります。
また、富士フイルムのもつ独自技術の導入による健康関連商品への応用などセルフメディケーション事業での協業を図ってまいります。
富山化学は、「ライブサイエンス*で健康文化を創造する」という独自の企業理念を掲げ、自らを「健康文化創造企業」と位置付けて企業活動を推進しています。研究開発型企業として「新薬開発を通じて世界の医療の発展に貢献する」という経営目標を掲げ、その強みである研究開発力・生産技術力の強化によって、世界基準の新薬候補化合物を安定的に創出する体制の構築を進めてきています。優れた研究開発力を背景に、富山化学の得意とする感染症領域を始め、同規模の業界他社に比べ開発パイプラインに「インフルエンザ治療薬」「アルツハイマー病治療薬」「リウマチ治療薬」など有望な新薬候補を有しており、また世界的な企業への開発品の導出実績を多数有しております。
*ライブサイエンス:
生命科学(Life Science)を研究活動の基礎とするだけでなく、まず私たち自身が”生き生き”(Lively)と働き、人々に健康で”生き生き”した暮らしをお届けしたい、という考えから生まれた当社による造語。
富山化学にとっては、富士フイルムが写真事業を通じて長年蓄積してきた多様な独自技術(各種診断技術、解析技術、ナノ乳化分散技術、薄膜形成技術、精密合成技術、RI標識抗体技術、コラーゲン技術など)や人材、そしてグループ会社の生産技術や開発力という経営資源の提供を受けることで、富山化学が有する新薬パイプラインの強化および治験期間の短縮化が期待され、また、富士フイルムの分散技術によるナノ粒子化など、富士フイルム独自のFTD(Formulation
Targeting Delivery)技術の応用展開により、従来にない新たな医薬品を開発することが可能となります。
さらに、富士フイルム、大正製薬との戦略的な業務提携および資本提携により得られる資金支援、生産支援、海外販売網の構築支援を通じて、富山化学は収益性を大幅に向上させるとともに、特定疾患領域における有力製薬メーカーへの飛躍が期待できるものと考えております。
現時点で予定している今回の資本提携の概要は次のとおりです。富士フイルムによる富山化学の公開買付けの詳細については、本日、富士フイルムが公表した「富山化学工業株式会社株式などに対する公開買付けの開始に関するお知らせ」、富山化学が公表した「富士フイルムホールディングス株式会社による当社株券などに対する公開買付けに関する当社の賛同意見表明のお知らせ」「第三者割当により発行される株式の募集に関するお知らせ」をご参照ください。なお、本資本・業務提携による業績への影響が見込まれる時は、別途公表いたします。
富山化学は、富士フイルムおよび大正製薬を割当先とした約300億円の第三者割当増資を実施し、両社はそれぞれ約198億円、約102億円を引き受けます。
富士フイルムにより富山化学株式の公開買付け(1株あたり880円。ただし、応募株式が73,190,000株に満たないときは、応募株式の全部買付けを行わないものとします。)を実施する予定です。(買付け期間予定:2008年2月19日〜同年3月18日)なお、本日開催の富山化学の取締役会において、本公開買付けに関する賛同決議がなされています。
第三者割当増資を実施し、本公開買付けが成立した後、富士フイルムおよび大正製薬は、合わせて富山化学の発行済株式総数の3分の2以上を取得することになり、富山化学は臨時株主総会の決議により、その発行するすべての株式を全部取得条項付株式に変更した上で、その株式の取得と引き換えに富山化学は新たな株式を交付します。かかる交付に際して富山化学は、富士フイルムおよび大正製薬以外の富山化学の株主に対して交付する富山化学株式の数が1株に満たない端数となるよう決定し、富士フイルムおよび大正製薬以外の富山化学の株主には当該端数の合計数を売却することによって得られる金銭を交付する方法により、富山化学を富士フイルムおよび大正製薬の両社により100%の株式を所有する会社にすることを予定しています。この場合の1株に満たない端数の株主に対し交付される金銭の額については、特段の事情がない限り本公開買付けの買付価格を基準として算定する予定です。
なお、本公開買付けの成立または富士フイルムおよび大正製薬の両社による富山化学株式の100%所有完了に伴い、証券取引所の上場廃止基準に従って、所定の手続きを経た上、富山化学株式は上場廃止となる可能性があります。第三者割当増資および本公開買付けを通じ、富士フイルムは富山化学を連結子会社化することとなります。最終的な議決権保有割合については、富士フイルム66%、大正製薬が34%となるよう富士フイルムより大正製薬に対し株式の一部を譲渡する予定です。また、富士フイルムと大正製薬は原則として当該譲渡の完了を効力発生条件とする富山化学に関する株主間契約を締結する予定です。
日本経済新聞 2008/3/2
医薬事業、本格進出の狙いは?
富士フイルムホールディングス社長 古森重隆氏
M&Aで収益構造を転換
富士フイルムホールディングスは1300億円を投じて富山化学工業を買収、医薬事業に本格参入する。ドル箱だった写真フィルムの急激な市場縮小に直面し、M&A(合併・買収)をテコに事業の構造転換を進めてきた。古森重隆社長に医薬進出の狙いと買収戦略について聞いた。
ー 主力の映像・情報と医薬は異質の事業分野だ。
「これまでデジタル画像診断など『診断』を軸に医療事業を手掛けてきた。富山化学の買収で『予防』『治療』の技術を持つ総合ヘルスケアカンパニーに飛躍する。医薬品の市場規模は世界で70兆円。新興国の需要増も見込める。医療事業の売上高を10年後に1兆円(07年度は3千億円)、売上高営業利益率は最低でも10%を目指す」
ー なぜ赤字企業の富山化学を買うのか。
「インフルエンザやアルツハイマー病など有力な新薬候補を持ち創薬に定評がある。財務力が弱いため研究開発投資が続かず新薬候補を他社に売る例が多かった。当社の資金力、海外販路、分子制御技術と融合すれば相乗効果が見込める」
ー 2000年の社長就任以来、4千億円を投じ20社超を傘下に収めた。
「デジタルカメラの普及で00年を境に写真フィルム市場は急速にしぼんでいった。営業利益の約6割を占めていた写真関連事業も、05年には赤字に転落。会社の存亡が新たな収益源の確保にかかっていた」
「歴代社長も光ディスクや抗がん薬など事業の多角化に取り組んだが、どれも中途半端にやめてしまった。自社開発に拘泥していては技術進化に取り残される。M&Aは時間を買うという意味で有効な手段だ」
ー M&Aで狙うのは。
「規模拡大だけを追うM&Aはせず技術の相乗効果を狙う。例えば当社は物質をナノメートル単位にまで小さくする最先端技術を持つ。これに富山化学の創薬力を足せば薬の成分を効率的に患部に届けることが可能だ。自社技術が生かせない『飛び地』の案件はやらない」
ー 今後の買収戦略は。
「医療分野ではさらにM&Aが必要だ。写真フィルムのような突出した収益源がない今、医療、高機能材料、印刷、光学部材、複写機・プリンターの5つの成長分野がM&Aの対象になる。常に手元に約1千億円を用意しており、機動的に買収を手掛けたい」
ー NHK経営委員長も務める。(1月に就任した)福地茂雄NHK会長はデジタル化投資もあり11年までの大幅な受信料引き下げは難しいと主張する。
「NHKの経営改革に向けて福地会長と意見にズレがあるとは思わない。まずはきちんとした経営を取り戻すという意味で、必要な投資をすべきだとの会長の姿勢は正当だと思う」
「私も最初から『値下げありき』ではない。ただ、前の執行部は当初、値下げを計画に盛り込んできた。私も(値下げの余地は)あると思う。どれだけ経費削減ができるかを精査した後に議論すべきだろう」
「医療で1兆円」問われる成果
かつて写真フィルムの「巨人」だった米イーストマン・コダックの低迷が続く半面、富士フイルムは過去最高益を更新するなど拡大路線を走る。その差を古森社長は「自社技術を徹底的に鍛え成長のバネとしたかどうか」と分析する。
今の好業績は化学や光学など過去の技術の蓄積が開花した部分も多い。株式市場は富山化学買収などを通じた「医療事業1兆円構想」にあまり反応しなかった。真の構造転換を果たすにはM&Aを確実に収益に結びつける道筋を明確に示す必要がある。
富士フイルム 急成長する中国医療IT事業に本格参入
中国の医療ITシステムでトップシェアの天健社を子会社化
富士フイルム株式会社(社長:古森 重)は、中国の医療ITシステム会社 北京天健源達科技有限公司(本社:中国 北京、以下天健社)を株式取得により子会社化し、12月より急成長する中国医療IT分野における事業拡大に向けた取り組みを本格展開していきます。
天健社は、病院全体の診療・会計情報を統合・管理する病院情報システム (HIS)を中心に、電子カルテシステム(EMR)、放射線科管理システム(RIS)、医用画像情報システム(PACS)、病理情報システム(PIS)、 地域医療システムなどの医療ITシステム製品を幅広く取り扱い、開発からマーケティング、販売、保守サービスまでを一貫して提供しています。医療現場の ニーズに対応したソフトウエア開発力および幅広い製品ラインアップを持ち、これらを組み合わせた総合的なソリューション提案力で、中国全土の1,000を 越える病院を顧客とし、現在中国医療ITシステムでトップシェアを獲得。今後も大きな成長が期待されています。
富士フイルムは、世界に先駆けて1983年にデジタルX線画像診断システム 「FCR」(*1)を発売し、医療分野におけるデジタル化を先導してきました。また、1999年に発売した医用画像情報システム 「SYNAPSE」(*2)は、稼働率99.99%という抜群の安定性と高画質により、世界中の約2,000の医療機関に導入され、日本国内でトップシェ アを誇るなど、高い評価を得ています。
中国市場においても天健社の子会社化により、年率20%以上で急速に拡大しているHIS、電 子カルテなど病院全体の医療ITシステム事業に本格参入するとともに、「SYNAPSE」の積極的な拡販を進めます。また、現在中国市場で約4割のシェア を有しているFCRや消化器内視鏡などについても、医療ITシステム商談の機会を利用してさらなるシェア拡大を目指します。
富士フイルムは、先進・独自の技術をもって、『人々のクォリティ オブ ライフのさらなる向上に寄与していく』という企業理念のもと、「メディカル・ライフサイエンス事業」を重点事業分野とした成長戦略を掲げ、設備投資や研究 開発の大幅強化とともに、積極的なM&Aの展開による新たな事業拡大を進めています。
メディカル事業の成長を通じて、医療の質や効率の向上、人々の健康の維持増進、クォリティ オブ ライフの向上に貢献していきます。
北京天健源達科技有限公司の概要
所在地 |
中国 北京(本社) その他拠点 瀋陽、石家荘、南京、長沙、広州、西安、重慶 |
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事業内容 | 中国における医療IT製品の開発、販売、保守サービス |
売上高 | 約13億円(2007年度) |
従業員数 | 約370名 |
*1 Fuji Computed Radiographyの略。イメージングプレート(IP)に記録したX線画像情報を読み取り、診断目的に合わせて最適なデジタル画像処理を行うことで、高精度の診断画像を生成する医療用デジタルX線画像診断システム。
*2 富士フイルムの医用画像情報システム(CT、MRI、CRなどの医療画像診断装置からの検査画像を電子的に保存・検索・解析する画像データベースシステム)の製品名称。