J−TEC http://www.jpte.co.jp/
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)はTissue
Engineeringを技術ベースとし、ヒトの組織・細胞を製品化する企業として1999年2月に愛知県蒲郡市に設立し、同年9月よりヒト組織・細胞製品の製造施設を保有している。
1997年に財団法人科学技術交流財団(愛知県)が主催した「臓器工学研究会」(名古屋大学医学部 上田実教授)において、Tissue
Engineering製品の企業化に賛同した企業が中心になり、企業内ベンチャーとしてJ-TECを立ち上げた。
J-TEC事業目的
医療の質的飛躍をもたらすTissue Engineering(組織工学)をベースに、従来型医療技術の延長にある維持療法ではない組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開します。
・医療の質的飛躍をもたらすことによる新市場創出
・再生医療技術の確立
商号 | 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 英文:Japan Tissue Engineering Co., Ltd. 略称:J−TEC(ジェイテック) |
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代表者 | 小澤 秀雄(おざわ ひでお) | |||
設立 | 平成11年2月1日 | |||
資本金 | 11億円 | |||
事業内容 | ・ヒト細胞・組織の培養又は加工による、又は人工素材との組み合せによる、 培養皮膚・培養軟骨・培養骨の研究開発、その成果にもとづく製造・供給。 |
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・関連の医療用具・医薬品の設計・開発・製造・輸出入及び販売 |
株主 | 株式会社ニデック
株式会社INAX 富山化学工業株式会社 UFJグループ (株式会社UFJキャピタル) |
出資割合 63.4% 出資割合 13.3% 出資割合 13.3% 出資割合 10.0% |
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役員 | <代表取締役>
小澤秀雄 <顧問> 藤沢寿郎 <取締役> 大須賀俊裕・石田秀輝・高倉勇・石川雅晟 <監査役> 小林一三武・有馬義雄・山下晶章 |
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従業員 | 36人 | ||
本社 | 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1 | ||
決算月 | 3月 |
株式会社ビーシーエス BCS, Inc. http://www.bcsinc.co.jp/nf/jp/
BCSは、組織再生工学技術による複合培養皮膚生成技術を東海大学と共同して開発し、他のメーカーに先んじて重症熱傷治療に実際に使用し良好な成績を収めております。今後、この技術を応用して、軟骨、骨、器官等の培養医療材料を開発し、新しい移植医療のイノベーションに貢献してまいります。
医療施設向けIT、それは膨大な量に達する医療情報データを効率よくストアし、有用な医療情報をタイムリーに提供することにより患者の診療、治療に役立てるネットワークシステムです。BCSは、海外から輸入する優れた医療画像データネットワークシステムと、自社開発の電子カルテシステムを組み合わせて高速で精度の高いデータ提供を行うネットワーク環境を実現することにより治療、診断に貢献すると同時に、増大する病院コストをフィルムレス、省力化をはかるトータルシステムを開発、販売しております。
広く生命科学は、情報工学と無縁ではありません。DNAもそれ自体非常に優れた情報伝達媒体であり、世代を通して情報伝達を行うことはまさに情報工学です。BCSは、この一見何の関連もないと思われている2つのテーマの融合をゴールと考え、研究、開発を進めることにより医療に貢献いたします。
代表取締役社長 | 稲見 雅晴 | |
本店所在地 | 東京都文京区本郷三丁目42番6号 NKDビル4F | |
研究所 | 神奈川県平塚市 | |
設立年月日 | 平成6年2月7日 | |
資本金 | 3億 3405万円 | |
従業員 | : | 30名 |
業務内容 | 組織再生工学技術による生体材料の研究・開発 熱傷治療をメインとした創傷治療材料の研究・開発 医療機器の輸入・販売 ITによる医療情報システムの開発及びパッケージソフトの開発・販売 画像解析、ファイリングシステムの輸入・販売 医療機器、施設に関するコンサルタント業務 |
日本経済新聞 2003/4/11
再生医療、初の事業化,培養皮膚VB、治験申請へ
再生医療ベンチャーのビーシーエス(BCS、東京・文京、稲見雅晴社長)は月内に、培養皮膚の商用化に必要な薬事法に基づく臨床試験(治験)の届け出を厚生労働省に提出する。承認が得られれば早ければ5月末にも治験を開始し、2004年中にも事業化する。やけど治療に有効な培養皮膚は100億円市場といわれ、実現すれば国内初の本格的な再生医療ビジネスとなる。
「複合型自家培養皮膚」と呼ばれる培養法で、表皮だけでなく血管などを保有する真皮部分も併せ持つのが特徴。患者から切手大の皮膚を採取し、3−4週かけて培養する。傷の深い重度やけど治療に効果的。本人の皮膚を使うため拒絶反応が起きにくく、表皮だけの培養物や人工皮膚に比べ体に定着しやすい。
培養技術は東海大学の猪口貞樹教授が開発し、昨年7月には特許を取得。商用化の障壁となる安全性では、培養工程での生物由来の細胞の使用を避けるなど配慮した。東海大などですでに数十例のやけど治療に使用され、実績と安全面から商用化に最も近い培養皮膚として注目を集めていた。
BCSは大学病院などと月内に具体的な治験計画を策定する。治験では首都圏の約5病院の協力を得て約1年かけて詳細なデータを収集。事業化が認可され次第、培養拠点を整備し、国内外の医療機関から皮膚培養を受注できる体制を整える。
再生医療ビジネスは米国が先行。培養皮膚だけでなく、あらゆる組織に分化する万能細胞(ES細胞)を使って臓器を修復する技術の開発に移りつつある。
日本経済新聞 2003/7/5
丸紅 ビーシーエスに出資 5000万円 再生皮膚開発を支援
丸紅は再生皮膚を開発するベンチヤー企業、ビーシーエスの第三者割当増資に応じ、5千万円を出資した。ビーシーエスは2004年度にも培養皮膚を事業化できる見込み。丸紅は出資を機に海外進出やライセンス提携交渉などを支援する。
出資比率は4%程度。培養皮膚は本人の体の一部から切り取った皮膚を培養(自家培養)し、傷の深いやけど治療などに役立てる。
再生医療分野は米国が進んでおり、日本では事業化の例はない。ビーシーエスは厚労省に培養皮膚の臨床試験の届け出を提出するなど、開発の最終段階にあるため、丸紅は投資リスクは小さいと判断した。
丸紅は再生医療関連のベンチャー企業との連携を強化しており、これまでにリンパ球の活性培養を手がけるリンフォテック、せき髄損傷治療の開発を進めるジービーエスなどに投資した。商社の機能を生かして経営支援し、事業化後の株式上場益を狙う。
日本経済新聞 2003/4/11
再生医療VBを広大教授ら設立 医療機関に細胞供給
広島大学の加藤幸夫教授らは10日、骨や軟骨の再生技術の開発・実用化を進める新会社「ツーセル」(広島市)を設立したと発表した。治療に使う細胞を医療機関に供給する事業などを手掛け、2008年に20億円の売り上げを目指す。資本金1千万円を加藤教授と共同研究者の辻紘一郎氏が出資し、辻氏が社長に就いた。今夏をメドに再生医療に関心を持つ大手企業の出資も募る。
メニコンの再生医療事業
メニコン社長 田中英成
http://cont.trc-net.ne.jp/features/conf_sympo/1026tanaka_sum.html
企業として、どうして再生医療分野に飛び込んだかということと、今後、再生医療に取り組んでいくに当たっての課題などについて話をしたい。
まずメニコンという会社について紹介する。50年前に眼鏡店で働いていた田中恭一会長が進駐軍の将校夫人でコンタクトレンズを持っている人がいると聞きつけ、それを見せてほしいと何度も頼んだのだが断られた。そこで負けん気の強かった会長はまったく見たこともないコンタクトレンズをやすりと戦闘機の風防ガラスを拾い集めて自ら作り、現在のコンタクトレンズの基礎を作った。
1951年に角膜コンタクトレンズの実用化に成功して以降、水を含んだ柔らかいソフトコンタクトレンズの発売、酸素透過性の高いハードコンタクトレンズ「メニコンO2」の発売を経て、現在は、ほぼ裸眼に近い酸素透過性を持つハードレンズを開発中だ。当社は今までにまったくなかったものにチャレンジする精神がある。その中で10年くらい前に新たなビジネスに挑戦しようと考えた。そこで我々がすでに持っている基礎の技術、すなわち安全なコンタクトレンズを開発するために使われてきた角膜生理の研究と細胞レベルでの安全性評価の技術を用いて新たな技術が開発できないかと考えた。その結果、再生医療というテーマが出てきた。
医療用具の今後は人工代替物から生体代替物へ替わっていくという大きな流れと、実際に、やけどをはじめ皮膚の疾患で悩んでいる方が多く培養皮膚に対する非常に強い要望があるということで、皮膚に着目し、将来は角膜の再生に結び付けたいと考えた。92年に北里大学などと共同で培養皮膚の開発をスタートさせた。98年には国内で初めて臨床試験を行い、99年には本格的に推進していこうということで事業化を図ることを決めた。2000年には培養皮膚事業の拠点となるBIOセンターを愛知県春日井市に約18億円をかけて建設した。現在ではアジアでは最高水準の品質基準を持ったセンターだ。センターは培養皮膚の生産工場であると同時に、ティッシュエンジニアリングの研究開発施設で、自家培養表皮、他家培養真皮、コラーゲンマトリックスの開発に当面は力を入れていく。
再生医療の問題点が表面化している。米国ではオルガノジェネシス社が200億円、アドバンスト・ティッシュ・サイエンス社が300億円といった累損を抱えて再生医療分野のベンチャー企業が倒産した。我々も20億円以上の投資を行っており、今のところ売上げはまだ上がっていないという状況だ。企業単独の力では事業化が困難な状況になってきている。日本ではあえて申し上げると厚生労働省の慎重な許可姿勢に問題があると思う。例えば私どもの培養表皮も治験を進めようということで今、確認申請を行っているところだが、ここに至るまでもう10年間の時間を費やしてきた。企業が存続できる、また日本のバイオ産業が伸びることができるかを考えると非常に危機的な状況である、と考える。例えばシンガポールではバイオ産業を国家戦略として進めようとしている。資金支援や薬事認可対応において連携を図っているし、さらに教育についても小学校の時からバイオの教育が始まっている。そういった世界の動きも見ながら進めていかないといけない。
今後の事業展開としては自家表皮からマトリックス、他家真皮へと製品開発をスピードアップさせるとともに、量産時のノウハウ開発、すなわち品質管理とコストダウンを図っていく必要があると考えている。また、BIOセンターの生産効率を高めるためにも他企業等からの生産受託を行い、新しい分野として軟骨や角膜、血管新生といった分野へ進んでいくために、大学や研究機関との連携が不可欠であると考えている。
再生医療を発展させるためには、まず社会の理解が必要だ。例えばBIOセンターを作るときにも住民から非常に強い反対があった。センターで遺伝子操作をして変わった動物を作るのではないかという誤解に対し、我々はやけどの人を治すための皮膚を作るということを根気よく説明した。それと適切な水準の行政規制が求められる。さらには産官学のさらなる強力、国家戦略としての産業育成、人材育成の視点が必要であると考えている。
(株)メニコン http://www.menicon.co.jp/company/mew/index.html
オリンパスが再生医療事業に参入
〜培養骨・多検体自動細胞培養装置の販売を目指す〜
オリンパス光学工業株式会社(社長:菊川
剛)は、このたび新規事業として骨の再生医療事業に参入致します。
本事業は、患者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養後、β-TCP※1上で骨細胞に分化させ、培養骨として医療機関に供給するものです。今後、高齢化に伴い骨疾患の増加が予測される中で、当社は再生医療による治療を支援していきます。神戸医療産業都市構想の中核的な施設である先端医療センター※2で細胞培養技術の研究を進め、2003年秋を目処に培養骨の臨床治験を開始し、薬事承認を経て2006年末から販売を開始する予定です。さらに、多検体の細胞培養を行なうための多検体自動細胞培養装置をバイオベンチャーのワンセル社(本社:広島市・代表取締役:福嶋
久)と共同開発し、社内生産に活用するとともに、2006年迄には外部への販売も予定しています。10年後(2012年度)の売上目標として、培養骨・多検体自動細胞培養装置を含め100億円を目指します。
※1 β-TCP: | |
ベータ・リン酸三カルシウムの略です。当社では、このβ-TCPを高純度で精製し、骨補填材「オスフェリオン」として商品化しています。「オスフェリオン」は、自家骨に置換される優れた生体親和性と骨伝導能をもつ人工骨補填材です。 | |
※2 神戸医療産業都市構想の中核的な施設である先端医療センター: | |
GMP(製造管理及び品質管理規則)に準拠して安全にヒトの細胞・組織を培養することが可能な細胞培養センターを備えています。 |
事業概念図
培養骨について
現在、手術等で大きな骨欠損が生じた場合、その骨欠損修復に対しては、患者自身の骨や人工骨が使われています。この場合、患者自身への侵襲、採取骨の不足、骨再生の遅延などが見られました。このような問題を解決する為に、骨の再生医療が期待されています。
事業参入の背景
当社医療システムカンパニーでは、内視鏡(消化器・外科・処置具・超音波)、顕微鏡、分析機、ゲノム解析システムなど、医療市場における研究・検査・診断・治療の全ステージのトータルソリューションを目指して事業を展開しています。この中で、整形外科分野の事業拡大を図るために生体材料分野に進出し、1999年4月に骨補填材「オスフェリオン」の販売を開始しました。その後、β-TCPが培養骨の担体※3として有用であることが研究で確認され、この研究成果を足がかりに、このたび再生医療分野に参入することになりました。培養骨及び多検体自動細胞培養装置の事業を行なうにあたっては、当社の顕微鏡(細胞組織観察技術)、分析機(感染検査技術)、外科用内視鏡(低侵襲手術機器)の事業をシナジーとして活用し、骨の再生医療の普及に貢献していきたいと考えています。
※3
担体:細胞を培養する足場となる材料。
※
本リリースに掲載されている社名、製品名、技術名は各社の商標または登録商標です。
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
オリンパス光学工業、骨の再生医療事業に参入
http://www.innervision.co.jp/products/data/18etc/etc%202003_1_1.htmlオリンパス光学工業(株)は,骨の再生医療事業に参入することを発表した。患者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養し,担体となるβ-TCP(ベータ・リン酸三カルシウム)上で骨細胞に分化させる。また,細胞培養装置の開発,販売も行う。神戸医療産業都市構想の先端医療センターで細胞培養技術の研究を進め,2003年秋から臨床治験を開始,薬事承認を経て2006年から販売する予定。細胞培養に使う多検体自動細胞培養装置については,バイオベンチャーの(株)バイセル(広島市)と共同開発し,社内生産に生かすほか,外部への販売も計画している。同社では,2012年度に100億円の売り上げを目指す。
株式会社セルシード http://www.cellseed.com/
◇本社 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿6-29-8 新宿福智ビル1F | |
◇設 立 | 2001年5月 | |
◇代表取締役社長 | 長谷川 幸雄 | |
◇資本金 | 1億6000万円 | |
◇従業員 | 11人 | |
◇事 業 | (1)角膜移植、心筋パッチによる心不全の治療などの再生医療事業
(2)細胞、組織を用いた薬効、毒性薬理試験などの創薬事業 (3)バイオ医薬品などの分離精製事業 |
羽ばたけ!大学発ベンチャー http://dnd.rieti.go.jp/habatake/005.html
病気などで傷ついたり、失った臓器や組織を蘇らせる再生医療が、新たな巨大ビジネスとして脚光を浴び始めている。「細胞シート工学」という新しい技術を基に、国内でその先頭グループにいち早く食い込んだのが、大学発ベンチャーの株式会社セルシードだ。東京女子医科大学や大阪大学とタッグを組み、再生医療産業の創出をめざす。
■ 角膜の手術が30分で完了 ■
「くっつけて、はがす。簡単にいえば、これが基本技術」と長谷川幸雄社長は説明する。東京女子医大の岡野光夫教授らが開発した「細胞シート作製技術」は、特殊な温度応答性ポリマーを利用して、1ミリ四方の細胞をシート状になるまで増殖させ、傷つけることなく回収できる手法だ。外資系バイオ関連機器会社に務めていた長谷川社長は、この技術を中核にした事業を立ち上げたいと、何年も前から考えてきたという。
温度応答性ポリマーを細胞と培養皿の間にコーティングすると、37℃の温度ではポリマーの表面が疎水性で細胞シートが接着した状態だが、30℃以下に下げると親水性となり、簡単にはがせるようになる。タンパク質分解酵素などを用いず温度変化だけで細胞シートをはがせるので、シートに穴があいて感染症を引き起こしたり、酵素の成分によって汚染される恐れがない。また、培養でシートの裏面に生じた接着因子も破壊されず、「のり」の機能をもつ、セロハンテープのような細胞シートを得ることができる。
同社は大阪大学の西田幸二講師と共に、まず角膜の再生医療に取り組んでいる。培養した角膜の細胞シートを、患者の眼球の表面に貼り付けて、移植する。「もともと接着因子があるので、くっつけるだけですむ。縫合が不要なので、従来1時間30分かかった手術が、30分で完了する」と長谷川社長は、そのメリットを強調する。
■ 組織再生ロボットの共同開発も ■
角膜移植については、動物実験を終了し、大阪大学医学部で臨床研究をスタートしたばかり。治験開始の承認を来夏以降に、2006年には医薬品として認可を得たいと考えている。長谷川社長は、「日本で角膜の移植者は、年間約1700人、世界では6万5000人。ただ、角膜の提供を待っている潜在的な患者は、日本だけでも2万〜5万人、世界では100万人以上いる。低コストでできる角膜移植を待ち望んでいる人が、これほどいる以上、1日でも早く事業化したい」と意気込む。
細胞シートは、一枚一枚を培養皿で3週間かけてつくられるが、栄養素の補充などで人手がかかるのが現状だ。この手作業を自動化するため、日立製作所と組織再生ロボットの共同開発も始まった。再生角膜を大量生産して供給すれば、国内だけでも市場規模は年間76億円以上、多ければ190億円まで膨れ上がると予想される。また、コストが下がることで、「発展途上国でも角膜の治療が行えるようになることも期待できる」(長谷川社長)という。世界での市場は2700億円との試算もでてきている。
さらに、虚血性心疾患の治療にも、この細胞シートが有用であることがわかってきた。心臓の損傷部位に何枚も積層した心筋細胞シートを貼り付けると、心機能が劇的に改善することが動物実験で確認されている。日本で虚血性心疾患による死亡者数は年間5万人。毎年18万5000人が発症し、増加傾向にある。血管のバイパス手術などの高度な治療を必要とするケースが多いが、これに代わる治療法としても注目され始めた。
■ 有機溶媒を使わずに分離精製 ■
ただ、細胞シートが医薬品として、厚生労働省の認可を得るまでには2〜3年は待たなければならない。それに先駆けて、来夏に販売を開始するのが、「グリーンクロマトグラフィー」。カラムに温度応答性ポリマーを詰め、温度差を利用して吸着と脱離を行うことで、試料を分離精製する仕組みだ。有機溶媒を使わずにすむため、環境汚染が抑えられるうえ、有機溶媒で変性するタンパク質の分離精製が可能になる。
カラムの温度を高精度に制御する温調機器の試作モデルも、すでに完成している。ペルチェ素子と超小型の冷却器を組み合わせた高精度の恒温槽で、温度勾配分離手法を実現することで、従来分離できなかった生体成分の分離、回収も可能となる。「水を流すだけで、すばやく精製できる。有機溶媒がいらないのでコストもかからない」と長谷川社長は胸を張る。既存の液体クロマトグラフィーに取って代わる製品として売り込んでいくという。
再生医療の国内市場規模は、2010年には数千億円市場に達するといわれ、製薬大手も名乗りをあげ始めた。しかし、「大学を含めて連携しているスタッフは、この分野で実績のある人ばかり。しかも、医療の変革に直に関わって、再生医療という新しい産業を創出するという意欲に満ちている。寝るのも忘れて働いている感じだ。負ける気がしない」と長谷川社長は断言する。「命に関わるビジネスだけに、途中で止めるわけにはいかない」というだけあって、事業戦略に抜かりはなさそうだ。
ジービーエス研究所
東京都港区
創立 2001年10月
【事業内容】
慶応大学医学部付属病院の医師であり弁護士である古川俊治氏が設立
免疫機能を持つ物質を使って脊髄損傷を治療
2002/12/27 http://sekizui.obi.ne.jp/kako2002.htm#1227
脊髄損傷治療法研究に取り組むジービーエス研究所
日経産業新聞は12月18日に定期特集である「疾走バイオベンチャー」のなかで、ジービーエス研究所について伝えた。ジービーエス研究所の研究する治療法は現役の慶応大学の医師である戸田正博氏の治療法を中心しているとのこと。
戸田氏の治療法は人間の血液から比較的簡単に摘出できる樹状細胞等や免疫細胞を活発にするたんぱく質を患者の脊髄の受傷部分に注射して人間の免疫反応を利用し、脊髄を再生させようとするもの。注射する細胞は患者自身から取り出すので拒絶反応が少ない。
戸田氏はこの治療法の動物実験や臨床試験を行いたがったが、それには巨額な資金が必要になるために、友人であったベンチャーキャピタルに通じた古川俊治氏とジービーエス研究所を興したという。インタビューの中で戸田氏は「学問の世界ではよほど著名な研究者でもない限り十分な研究予算は得られない」と研究資金をなかなか集められない現状を明かした。
研究所では5年後までに臨床試験を行うことを目指しているという。また同研究所ではガンの遺伝子治療なども研究しているとのこと。
日本経済新聞 2003/10/27
外科医、弁護士、医療ベンチャー社長 古川俊治氏(40)
「三足のわらじ」融合し視界広く
外科医、古川俊治にはほかに2つの顔がある。医療過誤や環境問題に立ち向かう弁護士。そして次世代医療技術を開発するベンチャー企業の社長だ。
常人なら押しつぶされそうな多忙と重責の三役を、古川ばフルマラソンで鍛えた体で、しなやかに演じる。周りから「どれか一つに絞ったら」と忠告されるが、「医療をやるには、どれも必要」と、三足のわらじを脱ごうとはしない。
医師の父を持つ古川は物心つくころから日々の診療に忙殺される医師の姿に疑問を持っていた。「専門バカになっては患者のための医療はできない」。漠然とした思いは、慶応大学医学部を卒業するころには確信へと変わっていた。研修医の傍ら、医学以外の学問をむさぼる生活が始まった。
初めは社会学。フランスの哲学者フーコーを学び、「社会における医学」という知識の存在を再確認した。さらに医療と密接な法の道に進み、法学部卒業の年に司法試験に合格した。
寝食を惜しんで机に向かう毎日。しかしその疲れを医学研究の場に持ち込むことはなかった。医師としてのテーマは患者の体への負担軽減。開腹が不要な遠隔・ロボット医療の推進に国内外を奔走。同僚との遺伝子関連などの研究成果は「ジービーエス研究所」の設立につながった。
1日を半分に分け、医師と弁護士の顔になる。弁護士活動を始めた当初は医療過誤訴訟への依頼が殺到したが、いまは医学を生かせる環境ホルモンなど生態系に関する訴訟に情熱を傾ける。ロボット医療では工学研究者と組み、アームの先端が触れた臓器の硬さや弾力を操縦する医師に伝える技術に取り組む。時には社長として、慣れない投資家との交捗にも臨む。
3つのフィールドを駆けめぐるうち、それぞれの知識が融合し視界はさらに開けた。医師という職業に縛られることを嫌い、「四足目、五足目もあり得る」。医療を追い求めた十年余の険しい道のりは、古川にとっては単なる折り返し地点に過ぎないようだ。
株式会社ジービーエス研究所への出資の件
丸紅株式会社は慶應義塾大学発の癌治療薬、脊椎損傷治療法開発バイオベンチャー、株式会社ジービーエス研究所への出資(30百万円、5.4%)を行いました。
丸紅ではバイオテクノロジー、ナノテクノロジー等を中心とした新技術や、在宅医療事業等を中心とした産業横断型のヘルスケアなど、成長産業における新規ビジネスを開拓し、シーズの事業化を手がけています。その一つの手法として、高い技術力を有するベンチャー企業に出資して海外進出を支援したり、日本展開支援を手がけるベンチャー企業のインキュベートを加速させています。特にバイオテクノロジー分野においては当初より再生医療分野を重点注力分野としており、リンフォテックやオステオジェネシスといった再生医療関連ベンチャーへ既に出資しています。今回のジービーエス研究所への出資はこうした戦略の一環であり、他にも近々投資予定の有望案件を開拓しています。
ジービーエス研究所は慶應義塾大学医学部が産学連携の一環として建設した信濃町リサーチパークへの入居第一号企業で、慶應義塾大学の全面的なバックアップを受けています。同社は文部科学省のマッチングファンドを得るなど、将来が極めて有望視されているバイオベンチャーです。具体的には、脳腫瘍における診断薬及び分子標的療法の開発、神経損傷に対する免疫機構利用による再生医療法の開発、不活性化ヘルペスウィルスを用いた癌治療薬の開発などを手がけており、癌や脊椎損傷など従来の治療法では手におえない疾患を対象としていることから、その将来性が高く評価されています。
丸紅は今回の出資をきっかけに、ジービーエス研究所の海外進出支援やライセンス提携交渉などの事業支援を積極的に行なうことにより同社の事業基盤の強化を後押しすると共に、株式公開の確度を高め、キャピタルゲインを目指す方針です。
株式会社ジービーエス研究所 概要 | |
所在地 | :東京都港区虎ノ門三丁目5番1号 |
資本金 | :120百万円 |
設立 | :2001年11月 |
事業内容 | :癌治療薬、脊椎損傷治療法の開発 |
再生医療に参入加速 日立 グループ一体で
日立グループが新設する再生医療戦略会議(仮称)は日立製作所のほか日立化成工業、日立メディコ、日立ハイテクノロジーズなどが参加。研究開発や製造プラント建設などの事業をグループ内で調整しながら再生医療の有望分野を手がける。
まず角膜移植が必要な患者向けに本人の目の細胞から角膜を再生する事業に乗り出す。東京女子医科大学などが開発した技術をもとに専用施設で移植用材料を生産する体制を2年以内に整える。
角膜に続き日立メディコが研究中の歯の再生などの事業化を計画。医療用材料の生産・供給のほか培養設備や検査技術の外販などを手がけ、再生医療の専門病院の経営も検討する。再生医療の本格的な普及時期とされる2010年に数百億円の売り上げを目指す。
日立評論 2003年1月号:日立グループの技術戦略04
http://www.hitachi.co.jp/Sp/TJ/2003/hrnjan03/gijutsusenryaku04.html
日立グループの医療分野における展開
2002/10/31 日立製作所
今後の事業構造改革について
「安心健康ソリューション」の分野では、2002年10月に「メディカル戦略会議」を設立し、日立グループとしての事業戦略の立案を進めています。「メディカル戦略会議」では、画像・体外診断事業などの既存事業の強化策に加え、バイオ受託解析サービス事業や陽子線治療装置、DNAシーケンサなどの高度先進医療機器事業など成長分野の強化戦略を検討します。また、再生医療、ロボット技術を応用した手術支援技術、光トポグラフィを応用した脳機能画像化技術 などの次世代技術の開発や、糖尿病関連の在宅検査ソリューション、介護をはじめとする医療サービスなどの新たなソリューションの事業化を検討することにより、メディカル事業全体の成長戦略を立案・実行していきます。
2003/1/30 日立次期中期経営計画「i.e.HITACHIプランU」を策定
バイオ・メディカル事業
バイオ・メディカル市場では、高度先進医療の拡大、医療サービスのパーソナル化(テーラーメード化)、バイオ技術の医療分野への応用などが進み、日立グループにとっての事業機会は明らかに拡大しつつあります。日立グループでは、2002年10月に「メディカル戦略会議」を発足させ、主力である診断医療機器事業の更なる収益力強化と新分野の早期事業化の戦略を、グループ横断的に策定しています。今後、@PET(ポジトロン断層撮影法)がん診断、陽子線がん治療、インテリジェント手術室、ロボット支援手術などの先端技術を用いた検診・治療システムを提供する「高度検診・先端治療」、Aグローバル市場において高いシェアを獲得しているDNA解析装置などのバイオ研究機器と、バイオ受託解析事業への取り組みによって蓄積された技術等を融合することによって展開する、遺伝子診断や再生医療などの「バイオ技術応用医療」、B糖尿病の予防・治療用等に拡大が見込まれる在宅診断装置の販売・サービスや医療機関向けの経営支援サービス事業を含む「医療サービス」などの新分野を育成し、2005年度に、2002年度の1.8倍の約4,000億円の売上高を目指します。
田辺製薬 創薬研究所 先端医学ユニット http://www.tanabe.co.jp/
ES細胞を中心とした再生医療研究のパイオニア的存在
先端医学ユニットでは1999年から再生医療研究を行っています。再生医療とは、病気や事故などで体の細胞や組織が機能を失ったり欠損した場合に、体の中にある幹細胞を増殖させて、細胞移植を行う新しい治療法です。当ユニットでは、2000年に京都大学などとの共同研究より、米ウイスコンシン大学に続き世界で二番目に霊長類(サル)ES(embryonic
stem)細胞の樹立に成功しました。ES細胞は無限増殖性を有しながら、体のすべての細胞に分化できる能力をもった幹細胞で、再生医療への応用が最も期待されています。既に先端医学ユニットではサルES細胞を用いて、心筋細胞や神経細胞を作製することに成功しています。
また、実用化研究を進めるためにヒトES細胞を用いた研究を計画し、2002年4月に文部科学大臣に使用計画の申請を行いました。そして同年6月に、国内では京都大学に引き続き2番目に、民間企業では最初にヒトES細胞の使用が認められました。
2002/6/25 第一製薬
東京大学大学院医学系研究科に寄付講座
「血管再生医療(第一製薬)」が開設
第一製薬株式会社の寄付により、東京大学大学院医学系研究科に7月1日寄付講座「血管再生医療(第一製薬)」が設置されます。
本寄付講座の発足にあたり、東京大学において独自に研究テーマの選定および担当教官の選出が行われ、以下のように決定されました。
(1)研究内容・課題
近年、遺伝子治療や再生医療といった新規治療の実現を目的に、大学や研究機関で蓄積された基礎的な研究をヒトに応用するトランスレーショナル・リサーチの重要性が大きくなってきており、東京大学においても、現在、材料学・組織工学を基盤とした血管、骨・軟骨、角膜、神経、皮膚などの組織再生とその臨床応用を目指した研究テーマが検討されています。今回の寄付講座では、血管再生の観点から、血管新生による組織再建や再生臓器への微小循環血行付加の技術の検討を行い、その臨床応用を目指す研究テーマが取り上げられました。今後、その研究を通じて、血管新生による組織再建を可能にする新たな血管再生療法の確立、血管再生療法の発展により組織工学的手法で再生された臓器に対する微小循環血行付加技術の確立が期待されています。
(2)担当教官
担当教官には小山博之氏(現:東京大学医学部附属病院 血管外科助手)が客員助教授に選出されました。 小山氏は、血管外科領域における優れた研究者であり、米国ワシントン州ワシントン大学医学部病理 血管生物学センターシニアフェローを歴任しました。
寄付講座の設置期間は2002年7月より2007年6月までの5年間であり、第一製薬株式会社は本講座の趣旨に賛同し、その助成のため総額1億5000万円を東京大学に寄付致します。
日本経済新聞 2003/3/8
再生医療
臨床段階へ 京大など近く試験開始
京都大学や関西医科大学などが心臓や骨を再生する医療の臨床試験に着手、11日から神戸市で開く日本再生医療学会で発表する。基礎研究から臨床段階に移ることで、人間の臓器や器官を修復する再生医療の商用化に向けた動きが本格的に始まる。
京大の米田正始教授は、心臓手術で切断した胸の骨を再生する手法を開発、40人規模の臨床試験を近く始める。骨の再生を促すたんぱく質をゼラチンに混ぜ、接合したい骨の部分に塗る。ゼラチンからたんぱく質がしみ出して患部に働き、骨が再生する仕組みだ。
手術後、日常生活できる程度に回復するまでの期間を従来の2−3カ月から1カ月程度に短縮できるという。このたんぱく質は床ずれなどで傷んだ皮膚を修復する医薬品として販売されている。既存薬を使うことで再生医療の早期実用化を目指す取り組みだ。
慶応大学の福田恵一講師と東海大学の安藤潔助教授らのグループは、がん治療や骨髄移植などに使う薬「GーCSF」を心筋細胞の再生に応用する動物実験に成功した。心筋こうそくの治療に有望とみられる。
関西医科大の松原弘明助教授は狭心症の患者の血管を再生する試験を始める。患者の太もむの血管から心臓に向かって差し込んだ管を通じて患者の骨髄細胞を心臓に注入し、血管を再生させる。胸を切開する必要がないため、患者の負担を軽減できる。既に1人を治療、他の医療機関とも組んで今後1年間に計20人を治療する計画だ。
再生医療は2010年に3800億円の市場規模が見込まれている。製薬会社による臨床試験が本格的に始まれば既存薬の販売増などにつながり、再生医療関連市場が離陸することになる。
主な大学の再生医療関連の臨床研究
大学 | 対象 |
奈良県立医科大学 | 皮膚、軟骨や骨 |
奈良県立医科大学と 京都府立医科大学 |
人工チュ一ブを使った神経 |
関西医科大学 | 心臓や足の血管 |
聖マリアンナ医科大学 | 皮膚 |
名古屋大学 | 皮膚 |
リンフォテック http://www.lymphotec.co.jp/
国立がんセンター研究所在職時に確立した活性化自己リンパ球大量培養技術を基盤として、関根暉彬(代表取締役社長)が平成11年4月26日に資本金1,250万円で設立したバイオベンチャー企業です。
本社・研究所 | 東京都文京区白山5丁目26−9 | |
白山CPC | 東京都文京区白山5丁目8−2 |
事業展開
1)活性化リンパ球の医薬品化、2)活性化リンパ球に関連した医療支援業務、3)試薬販売、4)研究受託を行っています。今後は、活性化リンパ球だけでなく種々の細胞の医薬品化および医療支援業務を予定しています。
日本経済新聞 2003/11/5
リプロセル 再生医療用の細胞研究
再生医療に不可欠なのは、体内の様々な臓器や組織に成長する能力である「多分化能」を持つ細胞。リプロセルは中辻憲夫・京都大学教授と中内啓光・東京大学教授の研究をもとに、この多分化能を持つ細胞の研究開発に取り組んでいる。
再生医療用の細胞で最も有名なのは受精卵から取り出す胚性幹細胞(ES細胞)で、どんな臓器や組織にも分化する能力がある。ただ、ES細胞は患者にとっては他人の細胞のため、移植時に拒絶反応などの問題が起こりやすい。
同社が取り組むのは、「ES細胞に通常細胞(体細胞)を融合することで多分化能を持たせる研究」(桑名隆滋社長)。中辻教授の研究室がマウスなどの細胞で成功した。再生医療関連企業に技術指導しながら、最終的には多分化能を持ったヒト細胞を開発、製薬会社などに技術供与する計画だ。
もう一つの開発テーマは、中内教授の成果をもとに赤血球などあらゆる血液細胞のもとになる造血幹細胞を増殖させる研究。増殖にかかわる遺伝子を発見済みで、これをもとに増殖を促す低分子化合物を見つけ出す。
両教授の出資比率が1、2位だが、経営を担うのは富士通で社内ベンチャーを立ち上げたこともある桑名氏。資金面では、大学発ベンチャーなどに投資するトランスサイエンスの支援を受けている。
▽本社 東京都千代田区
▽設立 2003年2月
▽社長 桑名隆滋
▽従業員 9人
▽売上高 1000万円(2004年3月期見込み)
株式会社 リプロセル http://www.vbl.kyoto-u.ac.jp/Press/030827.html
(株)リプロセル (ReproCELL, Inc.) は、京都大学再生医科学研究所の中辻憲夫教授と東京大学医科学研究所の中内啓光教授が蓄積してきた幹細胞に関する基礎研究のシーズを、先端医療やバイオテクノロジーなどの産業界に応用するために設立された大学発ベンチャーです。幹細胞の産業応用を促進するための技術開発研究と技術移転を事業の根幹と致します。京都では、(株)リプロセルと京都大学との共同研究契約に基づき、胚性幹細胞(ES細胞)を再生医療とバイオテクノロジー産業において有効利用するための技術開発研究を進めますが、特に幹細胞に関する再プログラム化(リプログラミング)機構の解明と応用技術の開発研究を行うことによって、幹細胞の医療応用のために克服すべき重要問題の解決を目指します。
日本経済新聞 2003/11/5
骨の再生医療向け培養装置 オリンパス 開発
発表
オリンパスは4日、病気やけがで傷んだ骨を患者自身の細胞を使って治す再生医療向けの自動培養装置を開発したと発表した。患者から採取した数ミリリットルの骨髄液から骨を修復するのに使う「培養骨」をつくる装置で、一度に20人分まで扱える。3年以内に100人分以上を扱えるよう改良を加え2006年末の製品化を目指す。
バイオベンチャーのワンセル(広島市)と共同開発した。骨髄液から幹細胞という特殊な細胞を分離・培養して人工骨材料に付着させ培養骨を完成するまでの一連の作業を2−4週間で行う。
条件を変えれば、あらゆる臓器や組織に成熟する能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)や血液細胞などの自動培養にも使えるという。異なる患者同土の培養細胞の取り違えを防ぐため、容器などに識別コードを添付して管理する。
2003年11月 4日 オリンパス
オリンパスとワンセル
世界初、細胞播種機能*1付き多検体自動細胞培養装置を共同開発
http://www.olympus.co.jp/jp/news/2003b/nr031104amsccsj.cfm
オリンパス株式会社(以下オリンパス、社長:菊川 剛)とバイオベンチャー・株式会社ワンセル(以下ワンセル、本社:広島市・代表取締役:福嶋 久)は、再生医療を始め細胞培養の研究に利用でき、20検体の細胞を同時に培養可能な多検体自動細胞培養装置の試作機を共同開発しました。骨髄液から抽出した間葉系幹細胞を大量培養し、それを担体*2に播種して目的の細胞まで分化できる装置として世界で初めて実現しました。2003年11月からオリンパス及びワンセルで機能検証をした上、2006年までには100検体以上の細胞の同時培養が可能な多検体自動細胞培養装置として再生医療、細胞培養の研究を行う企業、研究機関向けに販売を開始する予定です。
*1 細胞播種機能:培養された細胞を担体に播く機能。
*2 担体:細胞を培養する足場となる材料。
多検体自動細胞培養装置への期待
患者への負担を少なくするために、従来の外科手術や臓器移植に代わって、患者自身の細胞を使い失われた部位の再生や機能回復を果たす再生医療が注目されています。
再生医療を実現する上で、生産性、品質、安全性の高い培養プロセスの確立は不可欠です。当社では多検体自動細胞培養装置を開発することによりこれらを実現して参ります。
また、開発した装置は、再生医療ばかりでなく、間葉系幹細胞やES細胞(胚性幹細胞)等を使用した細胞培養及び分化に関する研究にも使用することができます。
多検体自動細胞培養装置試作機の工程図(培養骨作製の例)
多検体自動細胞培養装置試作機の主な特長
1. | 多検体の細胞を同時に自動培養可能 |
20検体の細胞を同時に培養する能力を持ち、遠心分離、培養、担体への細胞播種、分化までの作業を自動で行えます。培養骨の作製では、骨髄液から抽出した間葉系幹細胞を大量培養、それを担体に播種して分化することにより培養骨が得られます。なお、培養する細胞は特定の細胞に限定されず、各種の細胞にも対応可能です。近年、再生医療で注目されている間葉系幹細胞を得ることも可能です。 | |
2. | 微生物汚染を防止 |
培養や細胞播種などの処理のために培養容器の蓋を開けますが、高性能フィルターによりクリーン度クラス100を維持しているため、微生物汚染を防止できます。 | |
3. | 検体の取り違えを防止 |
培養容器等に添付された検体識別コードを用いて検体管理することにより、検体の取り違えを防止します。 | |
4. | コスト低減と品質の一定化 |
手作業によらず多検体の細胞を同時に自動培養できるため、コスト低減や培養細胞の品質の一定化が図れます。 |