日本経済新聞 2003/1/8

大学発VBの素顔 ジーンコントロール

遺伝子改変マウス 安価に

 ジーンコントロールは遺伝子改変マウスの作製を手がける近畿大学で初の大学発ベンチャー企業。資金や人材面で大学側が全面支援体制を敷き、共同出資者である日本農産工業と近大の新規事業という側面も強い。
 近大の先端技術総合研究所(和歌山県海南市)が持つクローン技術を使って、病気などに関係する特定の遺伝子を人為的に欠落させたノックアウトマウスを安価に短期間で作る。
 研究所所長を兼務する入谷明社長は「作製に必要な期間は従来の半分の約3週間。価格も半分にできる」と自信を見せる。国内に20億−30億円の潜在需要があると判断、2008年3月期に3億−5億円の売上高を目指す。資本金は3千万円で近大が51%、農産工が49%を出資。マウスの生産管理や筥業は農産工グループが担当、経理は近大事務局が代行する。
 入谷社長は近大理事で学内では理事長に次ぐ存在。社長に学内ナンバーツーを据え、設立時から1500万円超の資金を出すなど大学発ベンチャーの中でも大学の関与の強さが際立っている。
 将来は増資や融資に応じる可能性もあり、近大のリスクは小さくない。ベンチャー創出には「企業の現実に触れることで若手研究者を育てる意昧もある」(中林大二・生物理工学部事務部主任)ため、リスクを上回る利点があるとみている。

▽本社   和歌山県海南市
▽設立   2002年11月
▽社長   入谷明氏
▽従業員   4人
▽売上高   3000万円(2004年3月期見通し)
▽電話   073・483・7887

 


日本経済新聞夕刊 2003/2/27

東大と産総研 エイズ薬研究
 特定遺伝子の働き抑制 新技術使い創薬VB

 東京大学と産業技術総合研究所の研究者らは、最近、脚光を浴びている新しい遺伝子技術を使った創薬ベンチャーを設立する。狙った遺伝子の働きだけを強力に抑える「
RNA(リボ核酸)干渉」を利用して様々な難病の治療薬を開発する。1−2年内にもエイズ治療薬の臨床試験を米国で始める考えだ。
 新会社は「
iGENE」(アイジーン、茨城県つくば市、須藤鎮世社長)。産総研の遺伝子研究リーダーでもある多比良和誠東大教授とエイズやがんに関する有力研究機関の米シティ・オブ・ホープのジョン・ロッシ教授らが2千万円を出資。内外の大手製薬企業数社と共同研究契約を結び、年間数億円の研究費を受け取る。
 RNA干渉は特殊な人工RNAを利用して狙った遺伝子の働きをほぼ完全に抑える技術。病気に関係する遺伝子を抑制すれば、効果的な治療法になると考えられる。バイオ分野で爆発的に普及し始め、欧米では、この技術を中核にした創薬や遺伝子機能解析のベンチャー企業が相次ぎ発足している。
 多比良教授らは同技術を人間に応用する際のカギを握る要素技術を開発済みで、病気治療への実用化で優位に立てるとみている。
 この手法は基礎研究の道具としても使えるので、キット化して研究機関や企業向けに近く販売を始める。年間1億円以上の売り上げを見込んでいる。
 多比良教授やロッシ教授らはサイエンティフィックアドバイザー(科学顧問)として同社の研究開発を助ける。
 RNA干渉など人工のRNAやDNA(デオキシリボ核酸)を使った薬は「核酸医薬」と呼ばれる。本物の遺伝子を使ってたんぱく質を作る従来の遺伝子医薬品とは異なる新タイプで、世界的に研究競争が激しくなっている。
 核酸医薬分野の先発べンチャーは、大阪大学の森下竜一・助教授の研究成果をもとに創薬に取り組む
アンジェスエムジー。同社は大学発のベンチャー企業として昨秋、初めて東京証券取引所マザーズ市場に株式上場した。


日本工業新聞 2003/8/27

米研究所がRNA干渉法に警鐘、細胞死の危機も

 遺伝子ノックアウトの代わりに、特定のタンパク質の合成を抑制する方法として、「RNA(リボ核酸)干渉法」が研究者に多用されている。ところが、この新しい研究ツールが、特定のタンパク質合成を特異的に止めるだけでなく、ほかの生理効果も生じることが明らかになった。英科学誌ネイチャー・セルバイオロジーの9月号に掲載される。

 RNA干渉法では、短い二重鎖RNAを使い、それに対応するメッセンジャーRNAを分解し、細胞中の特定のタンパク質の発現を抑制する。遺伝子やタンパク質の機能を調べる実験や治療を成功させるうえで、RNA干渉法の特異性が高いことが重要となる。

 初期の研究では、特に細胞の抗ウイルス応答経路が活性化するなど、いくつかの問題があったが、短いRNAを使うことで問題が解決されたと思われていた。

 米ラーナー研究所(クリーブランド市)のブライアン・ウイリアムズ氏らは、少なくとも6種類の短いRNAが細胞の抗ウイルス応答機構であるインターフェロン系の一部となっている遺伝子を活性化させることを明らかにした。インターフェロン系が完全に活性化すると、最終的には細胞死が起こる。細胞損傷の発生頻度と規模は、細胞に導入された短いRNAの量に依存している可能性があるが、今後のRNA干渉法の利用において非特異的効果を考慮しなければならないことを警告している。


日本経済新聞 203/4/23

大学発VBの素顔 クリングルファーマ
 がんの「凍結療法」研究

 クリングルファーマは大阪大学発の医薬開発ベンチャー。阪大の中村敏一教授、松本邦夫助教授の研究成果を生かし、正常な細胞を傷つけない新タイプのがん治療薬などの開発に取り組む。最大の目標は、両氏が1995年に発見したたんぱく質「NK4」を医薬品に応用し「がんの凍結・休眠療法」を確立することだ。
 NK4は血管や体内組織の修復・再生に重要な役割を果たす肝細胞増殖因子(HGF)の分子内の断片。がんの周辺組織への浸潤・転移を防ぎ、同時にがん組織に栄養を供給する血管の新生を阻害する。
 いわばがんを閉じ込めて兵糧攻めにする仕組みだ。医薬品として実用化すれば、強い薬や放射線などでがん細胞を攻撃する従来方法とは全く異なる療法が確立できる見込み。
 同社はアンジェスエムジーなどに続くバイオベンチャーの有望株として、ベンチャーキャピタル各社から注目を集めている。設立当初の1千万円から3月には5千万円まで増資した。
 経営面では3月、元北陸製薬社長の岩谷邦夫氏が社長に就任。豊富な人脈、米製薬大手のアボット・ラボラトリーズの子会社と北陸薬の合併交渉の経験を武器に、当面の課題である国内外の製薬大手との提携交渉にあたる。膨大な研究開発費のめどが立てば、新薬実用化へ大きく前進しそうだ。

▽本杜   大阪市
▽売上高   400万円(2002年9月期)
▽設立   2001年12月
▽社長   岩谷邦夫氏
▽電話   06・6258・5170
▽従業員数   1人

http://www.kringle-pharma.com/


化学工業日報 2003/5/7

セルフリーサイエンス社、内外で創薬提携を拡大へ

 無細胞たん白合成技術を中核とするバイオベンチャーのセルフリーサイエンス(CFS、本社・横浜市鶴見区小野町)は、たん白合成技術、選択的RNAi(SiRNA)技術、インシリコによるドラッグデザイン、そしてカイネースなどのプロテインカタログにより構成される同社のドラッグ・ディスカバリー・プログラムについて内外研究機関、製薬企業、ベンチャーとのアライアンス構築に乗り出した。すでに米ベンチャーと契約、さらにアカデミック・パートナーとして米ウィスコンシン大学、日本の大手研究センターなどとの提携、共同研究を進めつつある。


セルフリーサイエンス社 CellFree Science

大学最新情報2002年7月5日号

ベンチャー企業設立へ(愛媛大学)  

 愛媛大学工学部の遠藤弥重太教授が開発したタンパク質合成システムの特許管理などを行う株式会社が7月1日、設立された。愛媛大の教職員が株式を所有し、愛媛大色を強く打ち出した大学初のベンチャー企業として、関係者らの期待を集めている。

 企業名は無細胞科学を意味する「セルフリーサイエンス」。学長や副学長をはじめ、教職員が株式の約8割を所有し、実質的に愛媛大がオーナー。社長は、システム開発時からかかわりのある大手化学メーカーから迎え、社員は数人程度。本社は横浜市に置き、松山支店の設置を視野に入れる。主に化学メーカーなどへの特許の貸出料などから得る利益は、100%愛媛大に寄付され、年間数千万円が期待できるという。

 大学発のベンチャー企業。研究の宝庫だけにこれからも期待大だ。


シリコンバレーを目指せ  
    
http://www.tokyo-np.co.jp/shinshun/2003/kanagawa/kanagawa_5.html

 横浜市鶴見区小野町に建設中の「リーディング・ベンチャープラザ」。新事業の展開を目指すベンチャー企業を対象に、市が賃貸型で提供する事業拠点だ。今年4月にオープン予定で、研究室の機能を備えたオフィスに22の企業の入居が決まっている。市が企業と研究機関の共同研究の場として建設した「市産学共同研究センター」「理化学研究所」と隣接しており、市立大大学院にも近い。市は一帯を「横浜サイエンスフロンティア」として発展させる考えだ。

 プラザを拠点に、新たな事業に乗り出す企業の一つが「セルフリーサイエンス」。愛媛大(松山市)遠藤弥重太教授を中心とする大学発のバイオ分野のベンチャーだ。従来、大腸菌などの微生物から作っていたタンパク質を、細胞を使うことなく、試験管の中で自由自在に合成する世界唯一の技術を開発した。

 名取幸和社長は2年前に「ヒトゲノム(全遺伝情報)で勝負しても世界にかなわない。次はタンパク質の時代だ」と遠藤教授を口説き落とし、昨年7月に同社を設立。松山を中心に事業を行ってきたが、新たな拠点を考えた際、「人材が集まりやすい場所」を視野に模索し、「バイオの研究に力を入れている横浜なら研究者が集まるのにアレルギーはない」と入居を考えた。

 「ハード(建物や設備など)ではなく、人材に投資したい」という信念を持つ名取社長にとり、研究室の機能があらかじめ備わったプラザはまさに渡りに船だった。「バイオの研究室をつくるのは簡単ではないし、何より時間が惜しかった。時間は買えないから」。入居を機に、松山を基礎的研究、横浜を製品開発の拠点にする考えだ。「研究の『知』を社会に還元する場合、マーケットに近いに越したことはない。横浜ならそれが実現できる」

 名取社長はプラザの将来像を、シリコン素子メーカーが密集する米カリフォルニア州のシリコンバレーと重ね合わせる。「スタンフォード大を中心に、いい人材が集まって切磋琢磨することで知的興奮が得られ、さらに人材が集中した。研究者が行き詰まった時、気晴らしに出掛けるダウンタウンが近くにあるのも大きかった」と語る。

 そしてプラザを中心に「グレート・ヨコハマ構想」を思い描く。プラザ周辺とみなとみらい(MM)地区を一体としてとらえ、プラザ周辺で研究に打ち込み、MMで気分転換を図るイメージだ。さらに、横須賀市の海洋科学技術センターなど、近隣の学術機関とも連携を取りたいという。

 「ハコを作っても中身がつまらなかったらどうしようもない。すべてを決めるのは人材。人材を引きつけるような街をつくっていかないとね」。名取社長は力を込める。


日本経済新聞 2003/5/19

たんぱく質 高速・大量に合成 愛媛大発VB 新型装置を開発

 愛媛大学の教官らが設立したバイオベンチャー、
セルフリーサイエンス(横浜市、名取幸和社長)は、生命機能の解明や医薬品開発に役立つ様々なたんばく質を高速合成できる新型装置を開発した。同大の遠藤弥重太教授が開発した合成法を自動化した。従来に比べ30倍程度速く合成できる。新装置を使ってたんぱく質の機能解析を本格的に始める。
 新装置は遺伝子の情報を基にして1日に400種類のたんぱく質を合成できる。手作業でたんぱく質を合成すると、1週間かけても1人で約100種類が限界だった。
 遠藤教授の合成法は「無細胞たんぱく質合成法」。大腸菌など生きた細胞でたんぱく質を合成する一般的な手法と異なり、小麦はい芽内のたんぱく質合成機構を利用する。目的のたんぱく質の設計図である遺伝子のコピー(伝令リボ核酸)と原料のアミノ酸などを小麦はい芽の抽出液に入れ、合成する仕組み。
 大腸菌や酵母の細胞内で作る場合、人間の体内で働くような複雑なたんぱく質を合成することが困難だったが、新手法なら様々なたんぱく質を大量合成できる。作業を自動化した機械の実現が期待されていた。
 同社は装置を6台使ってたんぱく質を合成し、機能を調べて特許の取得を進める。他の研究機関や製薬会社などとも共同で、医薬品開発につながるたんぱく質の実用化を目指す。共同研究契約を結んだ企業や研究機関には装置を提供する予定。
 生命科学の分野では、解読が終わったヒトのゲノム(全遺伝情報)を有効活用する研究に焦点が移っている。特に遺伝子から作られるたんぱく質の機能を調べ、医薬品開発に役立てる研究が盛んになっている。開発した装置は今後のたんぱく質研究を効率的に進める有力な武器になりそうだ。


日本経済新聞 2003/12/10

大学発VBの素顔  ジェー・ビー・セラピュティクス
 樹状細胞でがん治療研究

 
ジェー・ビー・セラピュティクスは血液中で免疫細胞の働きを促す樹状細胞を使ったがん治療の研究開発を手がける。東京女子医科大の外科医師、谷川啓司氏が同技術をがんの治療法として確立するために設立した。実際に患者を治療する「ビオセラクリニック」を併設。研究成果を実践すると同時に研究開発資金も確保している。
 患者の血液から取り出した樹状細胞に、人工的に作製したがん関連たんぱく質の一部分であるペプチドを添加してがんだけを認識する機能を持たせる。これを患者に投与しリンパ節で免疫として働くT細胞ががん細胞を攻撃するように促す。従来の抗がん剤と異なり、副作用がほとんどないのが特長という。
 谷川氏が東京女子医大から米ミシガン大に留学した際に、細胞治療に従事したことが、この研究に取り組むきっかけとなった。今後は東京女子医大の研究拠点などと協力し、前立腺がんの免疫治療への取り組みを強める方針だ。
 事業拠点も増強する。福岡県久留米市の久留米大との提携を生かし、2004年中に同市内にビオセラクリニックの分院を設置する。末期がん患者の生活の質を高めるための疼痛(とうつう)緩和ケア病棟の運営支援も進める。
 2004年3月期売上高は前期比58%増の4億円を見込む。将来は株式上場も視野に入れる。

▽本社   東京都新宿区
▽売上高   2億5300万円(2003年3月期)
▽設立   2001年3月
▽社長   谷川啓司氏
     


会社名 ジェー・ビー・セラピュティクス株式会社
  http://www.jb-t.co.jp/jbt/jgaiyo.html
      J. B. Therapeutics, Inc.(英語名)

設立   平成13年3月16日
所在地   東京都新宿区余丁町14-4 NH市ヶ谷ビル3F
代表者   代表取締役社長 谷川 啓司
事業内容   1: 癌免疫療法専門クリニックの運営サポート
2: リンパ球・樹状細胞等免疫担当細胞の加工受託業務
3: 腫瘍免疫学に対する研究所の運営
4: 癌免疫療法を中心とした医療分野・医学研究分野の医薬品、医療器具等の輸入・販売
5: 癌免疫療法分野における医師・看護師・培養技師・研究者等の人材育成
資本金   48,275千円
主な株主   会社役員
個人(大学関係者)
特許キャピタル(株)
大和銀企業投資(株) 他

会社プロフィール
 ジェー・ビー・セラピュティクス株式会社の企業目標は、癌免疫療法を中心とした全人的治療の発展であり、その活動を通して臨床および研究面で医学に貢献することです。この目標を達成するために東京女子医科大学、米国ミシガン大学をはじめとした国内外の学術機関との交流をはかっています。
 弊社は腫瘍免疫学に対する研究所の運営を行なうとともに、これに伴う新規技術・組織の研究開発の促進や、研究開発に不可欠な医薬品、医療器具の輸入・販売も視野に入れた総合的な癌免疫療法推進のサポートを行ないます。また癌免疫療法を専門に行なうクリニックの運営サポートだけでなく、今後の事業拡大として緩和ケア病棟(ホスピス)の運営サポートをも視野にいれ活動しています。

会社の特徴
 最先端の癌免疫療法はすでに大学病院等で厚生労働省から認可された高度先進医療や各大学の臨床研究として行なわれています。しかし公的な研究助成がそれほど期待できない現状では、わずかな患者様が治療を受けられる狭い適応範囲の中での研究にとどまらざるを得ません。したがって臨床研究自体がそれほど進まないために、日本での癌免疫療法の進展が阻まれているのが現状です。
 弊社は、強く関連づいた癌免疫療法専門のクリニックを運営・サポートすることにより自費でありながらも研究に参加して頂き、狭い適応範囲を超えて、多くの患者様に最先端の癌免疫療法を受けられることを可能とし、その臨床データを全国の提携・協力する大学付属医療機関等と共有することにより新しい癌免疫療法の研究・開発に貢献することを目指しています。

開発プログラム
 弊社は東京女子医科大学消化器病センター・久留米大学集学治療センターや今後増加する地方地域での提携大学病院等の研究機関とともに癌免疫療法の基礎学術的検討から臨床成績にいたるまで癌免疫療法のプロトコールの標準化を進めています。

関係医療機関
 ビオセラクリニック
 東京女子医科大学 消化器病センター
 久留米大学 集学治療センター

関連企業  特許キャピタル(株)
主要取引銀行  みずほ銀行 本店

  平成15年1月7日 現在