上述のとおり日本の問題は拮抗力(チェック・アンド・バランス)の欠如と自己責任の認識の欠如である。
国民の意識改革(同時に新聞その他の姿勢の改革)により自己責任の原則を確立するとともに、政官財のあらゆる側面で拮抗力を生かすことが必要である。
法律や制度においては既にこの体制ができている。後は国民の手でこれを実行するだけである。
既述のとおり日本の問題はチェック機能の欠如の結果、政官財が自らの利益のための制度を作り上げてしまったことにある。これを本来の姿に戻す必要がある。
日本国憲法は国民主権をうたっており、国民が選挙で国会議員を選ぶこととなっている。
そして「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」となっている。
しかし現状は国会議員のほとんどは所属する党の一部の人が定めた方針に従って投票するだけである。
議員立法もほとんどなく、官僚が自らのために作成した法律をそのまま通すだけである。
国会での議論は党利党略のためのものがほとんどである。このように現在の国会は憲法の理念をほとんど無視したものとなっている。
この結果、一部の政・官・財の連合が自らの利益のために国民を犠牲にする仕組みが出来上がっている。本来これをチェックすべき国民は無力感から政治離れを起こし、その結果が更に国民搾取の体制を強化することになっている。
これの打開のためには本来の姿に戻すことである。
そのためには国会議員が国民の代表として立法を行う体制と、代表として適当でない議員を次の選挙で落とす仕組みが必要である。
しかし、今の選挙は人を選ぶのではなく党を選ぶものとなっており、他よりましな政党を選ぶしかない状況である。
今の国会議員は議員立法の機会などほとんどなく、議会での投票は党議拘束により執行部が決めた案に投票するだけである。
改革のためには二つの方策が必要である。
まず国民の代表を選ぶシステムである。国民の代表である議員が本当に代表として働いているかどうかを常にチェックする必要がある。
それには各議案に対してどう投票したかを新聞やその他の報道機関が常に報道する仕組みである。要は学生のテスト結果の発表であり、それらを一定期間でまとめた「通知簿」も公表し、各議員が本当に国民のために投票したのか、特定の利益集団のために働いたのかを誰でも分かるようにし、次の投票の指針とするシステムである。
しかし今の党議拘束のもとでは、議員はこれに反した投票はできず、せいぜい欠席する程度である。これを変えなければ改革はできない。
党議拘束とは何か。
議員は党員として党の方針に従う義務がある。しかし議員は国民の代表であり、国民のために働く義務を持つ。今までは党員としての義務が優先していた。しかし、これは基本的に間違っている。党員として党の問題では党の方針に従うのは当然である。しかし、国会ので議決について党議拘束するのは憲法違反である。
憲法51条は以下のとおり述べている。
「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」即ち、国会議員は国民の代表として投票するのであり、党のために投票するのではない。党の執行部がいかに決めようと、国民の代表として投票するべきであり、その結果、党から責められたり、除名されたりした場合、憲法違反として訴えるべきである。
国会議員が真に国民の代表として働く意識をもつなら、議員立法により、各投票の結果を公表するべく法案を提出するとともに、党議拘束を憲法違反とし、これに反する投票を敢えてすべきであり、選挙民もこの点を認識して、これに反対する議員への次回の投票の基準とすべきである。
第二の改革は議員立法制度の拡大である。
唯一の立法府でありながら、実態は政府すなわち官僚が政官財のためにつくった法律を単に承認するだけである。自ら法案をつくるにはスタッフもいない。
上の第一の改革も議員立法が必要であり、以下に述べる官・財の改革も議員立法を必要とする。
憲法で決められたことをやらなかったことが現在の状況を生んでおり、これを改革しないと日本の今後はないとまで言えよう。
現状は議員立法のための制度ができていない。だから(特定の議員を除き)議員立法ができない。だから官僚に任せる。また党が決めたとおりしか投票できないため、党の意向に反した法案を出しようもない。こうしたことが今の状況を生んだ。
たとえば議員立法しか認めない(政府提案も与党の議員名で提案する)とか、両議院に立法スタッフを置くとか、内閣法制局を両議院に移すとかの抜本策が必要であろう。
要は以下に述べるとおり本来立法権限がなく、国民の審判を仰ぐことのない官僚の手から立法権を奪うことである。それは議員立法で簡単に変えられる。その法案に対して各議員がどう投票したかも次の選挙で議員を選ぶ一つの判断材料となる。
この二つの改革で国会議員は、特定の利益のためではなく、国民の利益のために働くようになる。この点は地方自治体にも当てはまる。
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