日米貿易交渉は最初は日本の個別製品の輸出制限の議論から、輸出の自主規制、日本の輸入規制の排除・輸入促進の議論に移った。
その後個別製品の市場解放では問題を解決しえないことが分かり、周辺分野も含めたMOSS協議に入った。
更に1988年頃から米国政府は財務省次官補であったチャ−ルズ・ダラ−ラを中心に「構造協議」の検討に入った。ダラ−ラは上のような状況を正しく理解し、貿易交渉では解決しないと考えたに違いない。
現在の交渉は個別問題や構造問題のありとあらゆる問題をごっちゃにしたもので、焦点がぼやけており、その結果相互に批判の応酬が続いている。
将来の輸入目標を決め、実行を約束せよなどという米国の主張は確かにまったく馬鹿げたものである。本当にやるべきことは貿易黒字の本当の意味を理解し、夫々の国民の富を増やすために障害となっている構造問題を取り除くことである。
本当は原因をもつ国が夫々まず解決すべきであって、米国は財政赤字解消に努めるべきであり、それ以上に日本が消費を妨害している構造問題を解決すべきであろう。
しかし日本が自主的にやらない(又はやれない)なら、ダラ−ラの発想の「日米構造協議」は非常に意味がある。
これを内政干渉であると批判するのは筋違いである。
日本の一人勝ちで、どんどん失業を輸出されれば、相手国がこれにクレームをつけるのは当然である。
昔と異なり日本の経済力が大きくなった今では、日本の勝手な行動が世界経済全体を破壊させることにもなりかねない。これは「日本の内政」への干渉ではなく、日本による世界経済への打撃に対するクレームである。
かりにこれが内政干渉であったとしても、我々日本人にとってはよい内政干渉であれば面子にこだわる必要はない。
歴史的に見ても明治維新での封建時代からの離脱は黒船による内政干渉で始まった。
第二次対戦後の連合軍による軍国主義から平和主義への移行も同様である。一生懸命働いて他の諸国に恨まれ生活水準は向上するどころか悪化しつつある状況から、真に生活しやすい国になり更に他の諸国民の富を増やす役目を果たすことができるのであれば、それが他国の内政干渉によろうがよるまいが結構なことではないか。
では日本の構造問題で解決すべき真の問題は何か。 → 7へ