日本経済新聞 2007/9/14
旭硝子、液晶パネル撤退へ
製造子会社売却へ入札 ガラス基板に集中
旭硝子が液晶パネル事業から撤退を検討していることが13日、明らかになった。
オプトレックスは旭硝子が6割、三菱電機が4割を出資し、1976年設立した。売上高は700億円程度で、ここ数年は採算が悪化していた。米調査会社によると、中小型液晶パネル業界でのシェアは1%程度にどどまっている。
関係者によると、旭硝子はオプトレックスの売却先を決める一次入札をこのほど実施した。
旭硝子は12日、100%子会社のガラス繊維メーカー国内大手、旭ファイバーグラスを日本政策投資銀行などに売却することを決定。本業とシナジー効果が薄い子会社を売却するなどして事業の選択と集中を急いでいる。
オプトレックス株式会社の株式譲渡に関するお知らせ
当社は、平成19年12月25日開催の取締役会において、中小型液晶表示装置、その他電子・光学表示装置を製造・販売している、当社子会社のオプトレックス株式会社の全株式を譲渡することを決議しましたので、下記の通りお知らせします。
株式の譲渡先
当社は、当社が所有するオプトレックス社の全株式を、日本産業パートナーズ株式会社が運営するファンドである、日本産業第二号投資事業有限責任組合及び日本産業第二号パラレル投資事業有限責任組合に譲渡します。
6.今後の見通し
本件により、平成19年12月期において、特別損失が連結で約38億円、単独で約63億円それぞれ発生する見込みですが、既に業績予想に織り込んでいます。
日本経済新聞 2010/2/24
液晶用フィルム増産
住友化学、台湾で クラレ、国内新設備
新興国の需要増に対応
素材各社が液晶テレビ用フィルムの生産を一斉に拡大する。住友化学は約200億円を投じて主要部材である偏光フィルムの台湾工場での生産能力を倍増。クラレは国内2工場で光学フィルムの新ラインを稼働させ、約1割能力を増やす。各社は金融危機後の需要急減で投資や設備稼働を凍結したが、増産にかじを切り直して新興国の需要増に対応する。
住友化学は2011年7月に台湾工場の偏光フィルムの年産能力を12OO万平方mから2700万平方mに拡大する。日本、韓国、台湾の3工場を合わせた生産能力は約2割増える。08年夏に能力増強を決めていたが、需要急減を受けて09年3月にいったん投資を凍結していた。今回の増強で台湾や中国の液晶パネルメーカーへの供給を拡大する。
住友化学は09年1〜3月に偏光フィルムの設備稼働率が約5割に落ち込んだ。ただ、同年8月に新ラインを建設した愛媛工場(愛媛県新居浜市)でフル稼働が続くなど国内も回復基調にある。
クラレは偏光フィルムの原料となる主力の「光学用ポバールフィルム」の生産を増やす。倉敷事業所(岡山県倉敷市)で稼働を延期していた年産1500万平方mの新設ラインの稼働を09年10月に始め、ほぼフル稼働に入った。
08年度の生産開始を予定していた西条事業所(愛媛県西条市)の年産1500万平方mの増産ラインも、需要動向を見極めたうえで、今春にも稼動させる。クラレの国内2拠点の年産能力は合計で1億3600万平方mとなる。
一方、日本ゼオンは約20億円を投資して富山県氷見市の工場で「位相差フィルム」と呼ばれる光学フィルムの生産能力を4割増の6500万平方m に拡大。東レも11年に液晶テレビ用フィルムの中国生産を開始し、韓国工場では年産能力を倍増する。総投資額は約100億円で、全体で約1割増産する計画だ。
液晶テレビ本体や主要部材となる液晶パネルでは韓国・台湾勢が高いシェアを持つが、フィルムなどの素材分野では日本企業がトップシェアを占める。
各社は「リーマン・ショック」後の急激な在庫調整で09年初めに稼働率が5〜6割に落ち込んだが、昨年秋以降は中国の家電購入補助策や日本のエコポイント制度で需要が回復し、高水準の生産が続いている。化学会社は汎用樹脂や合成繊維など伝統的な事業を縮小しており、液晶や半導体といった高機能の電子材料分野に経営資源を集中する。
最近の液晶関連素材工場の生産拡大
住友化学 | 台湾で偏光フィルムの生産を倍増 |
クラレ | ポバールフィルムの2つの新設備を稼働 |
東レ | 液晶用フィルムの中国生産を開始 |
日本電気硝子 | 滋賀県でガラス基板の生産能力を増強 |
富士フイルム | 熊本県で保護フィムの新ラインを稼働 |
JSR | 佐賀県で配向膜などの生産能力を増強 |
日本ゼオン | 富山県で位相差フィルムを4割増産 |
東芝、サムスンと提携 先端LSI生産委託 投資競争から撤退 メモリー事業に集中
東芝は韓国サムスン電子と半導体のシステムLSI(大規模集積回路)分野で提携する。巨額な設備投資が必要な先端品について東芝は2011年度から設計だけを手がけ、生産はサムスンに委託する。東芝は不採算のシステムLSI事業では投資競争から手を引き、得意のメモリー事業に経営資源を集中する。世界の半導体市場で競ってきた2、3位メーカーの提携は、新たな業界再編の呼び水になりそうだ。
システムLSIは携帯電話やテレビなどの家電製品や自動車部品などに使われている。東芝は今後受注する最先端のシステムLSIについては、幅広い顧客が求める機能を満たすような半導体の回路図を設計し、サムスンに生産を委託する。既存の顧客に供給しているLSIは自社工場で生産を続ける。
半導体回路の微細化に伴い、製造装置は年々高額になり、新工場を建設するには3000億円規模の投資が必要になっている。東芝はサムスンとの提携を機に、システムLSIでは今後、自前の生産能力増強はしない。
システムLSIは大分工場と長崎工場で生産している。大分工場は世界的に需要が拡大している画像センサーの専用工場に衣替えする。長崎工場はソニーに売却し、懸案だったLSI事業の収益改善につなげる。
生産委託先について複数の侯補の中から1年以上かけて絞り込み、サムスンとの間でこのほど基本合意した。微細化の技術や、消費電力を抑えるノウハウなどが豊富で、高性能の半導体を安く大量に生産できる点を評価した。
サムスンは他の半導体メーカーからの受託生産を成長事業と位置付け、專用ラインも持つ。ただ、受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に比べると生産能力は小さく、顧客開拓も遅れている。東芝からの受託で、同事業の拡大に弾みをつける。
東芝は画像などの保存に使う半導体メモリーに集中投資する。NAND型フラッシュメモリーの世界シェアは34.9%で、サムスン(39.3%)に次いで2位。四日市工場(三重県四日市市)では1000億円以上を投じて新生産棟を建設中で、11年夏の稼働を目指している。メモリー分野では引き続きサムスンと競争を続ける。
今回の提携は世界3位の東芝でさえ、LSI事業を続けるために必要な投資負担の重荷に耐えられなくなったことを意味する。今後、世界の半導体業界では米インテルやサムスンなどの巨大メーカーを中心に再編が加速しそうだ。
2010年 世界半導体ランキング (米アイサプライ予測)
順位 | 企業 | 売上高 (億ドル) |
シェア (%) |
||
1 | インテル(米) | 400 | 13.2 | パソコン用MPU(超小型演算処理装置)で世界首位 | |
提 携 |
2 | サムスン電子(韓) | 281 | 9.3 | NAND型フラッシュ、DRAMのメモリー.で世界首位 |
3 | 東芝 | 131 | 4.3 | NAND型フラツシュで世界2位 | |
4 | テキサス・インスツルメンツ(米) | 130 | 4.3 | アナログ半導体、マイコンが主力 | |
5 | ルネサスエレクトロ二クス | 118 | 3.9 | 機器を制御するマィコンで世界首位 |
東芝、Cell生産から撤退 ソニーが工場買い戻し
東芝は、08年にソニーから買収したCell工場をソニーに売却する方向。ソニーは工場の設備の一部をCMOSセンサー用に変え、増産に乗り出す方針だ。
東芝が、高性能の半導体「Cell」を生産する長崎県の工場をソニーに売却する方向で調整していることが23日、分かった。売却額は数百億円規模 に上る見通し。Cellはソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」や東芝の高級テレビ「Cellレグザ」に搭載されている中核の半導体 だが、用途の広がりがみられず、東芝はCell生産から撤退する。一方、ソニーは工場の生産設備の一部を、スマートフォン(高機能携帯電話)用途などで需要が急増しているデジタルカメラの画像センサー用に切り替え、大幅な増産に乗り出す方針だ。
Cellは、東芝とソニー、米IBMが共同開発した高性能のCPU(中央演算処理装置)。東芝は、2008年にCellの製造設備をソニーから約 900億円で買収したが、不採算部門のLSI事業の構造改革を進めており、再びソニーに売却する方針を固めた。Cellレグザ向けなどのCellは今後、 ソニーなどから調達するとみられる。
一方、ソニーは、スマートフォンの人気で搭載カメラの画像センサー需要が拡大しているため、今年秋から生産能力の増強を進めていた。さらに、 PS3の販売が世界的に伸びていることもあり、新工場建設よりコストを安く抑えられる同工場の買い戻しを決めた。画像センサー向けのラインも今後拡充す る。
東芝発表
システムLSI事業の再編について 当社は、システムLSI事業の収益力強化のため、注力領域分野への集中的な資源投入、ファブレス化/ファブライト化を含む抜本的な事業モデルの見 直しなどの事業構造改革を推進しています。これらの取り組みを加速させるため、2011年1月1日付でシステムLSI事業部を2つの事業部に再編します。 今回の組織再編では、意思決定のスピードアップと経営リソースの効率的活用を目的にシステムLSI事業部を、先端SoCを中心とする「ロジックLSI事業 部」と、汎用性の高い製品群の「アナログ・イメージングIC事業部」の2つの事業部に組織分割します。 ロジックLSI事業部では、カスタム性の強い製品の需要の変動に対して自社の製造ラインとアウトソーシングを組み合わせ、柔軟な製造体制を構築し ます。2011年度から40nm製品を含む最先端製品については、複数の外部ファウンダリへの生産委託を拡大し、自社の300mmウエハ生産拠点を大分工 場へ集約することで経営効率を高めていきます。また、設計開発部門により集中的にリソースを投入していきます。 アナログ・イメージングIC事業部では、アナログIC、CMOSイメージセンサを含むイメージングICに注力します。生産については、大分工場や 岩手東芝エレクトロニクス株式会社などの、300mmウエハラインも含めた既存の生産ラインを活用します。汎用性の高い製品に注力することで、生産ライン の効率を高め、事業の拡大と収益性の向上を両立していきます。 2008年の金融危機以降、当社システムLSI事業では、「収益改善に向けた体質改革プログラム」の下、集中と選択により、アナログ、イメージセ ンサ、デジタルSoCなどの注力領域分野への集中的なリソース配分と不採算製品からの撤退、後工程拠点の再編と海外生産比率の向上を行ってまいりました。 さらに、本日、長崎セミコンダクターマニュファクチャリング株式会社の合弁関係を解消し、製造設備をソニー株式会社に譲渡することで基本合意しま した。今回の施策はシステムLSI事業部の構造改革を加速するものであり、アセットライト化を図るとともに、大分工場に経営資源を集中することで、生産性 とコスト競争力を高めていきます。 今回の組織再編を含む一連の事業構造改革を通して、システムLSI事業分野のそれぞれの事業領域の特性に応じた事業運営を行うことで、経営を効率化し、収益性の改善と事業体質の強化を図ってまいります。
東芝及びソニーによる半導体製造設備の譲渡に関する基本合意書の締結について 本日、株式会社東芝(以下、東芝)及びソニー株式会社(以下、ソニー)は、東芝とソニー及び株式会社ソニー・ コンピュータエンタテインメント(以下、SCEI)三社の合弁会社である長崎セミコンダクターマニュファクチャリング株式会社(以下、NSM)が操業する 東芝所有の半導体製造設備を東芝からソニーに譲渡する旨の意図を確認する基本合意書を締結しました。なお、この譲渡に伴い、NSMに関する三社の合弁関係 は解消される予定です。 NSMは、2008年3月に設立され、ソニーセミコンダクタ九州株式会社(以下、SCK)長崎テクノロジーセンター敷地内において、高性能プロセッサ「Cell Broadband EngineTM」 や画像処理用LSI「RSX」等の高性能半導体のほか、東芝及びソニーのデジタルコンシューマー機器等向けの最先端システム・オン・チップ(SoC)を生 産しています。なお、今回譲渡を予定している製造設備は、2008年に東芝がソニー及びSCKから購入しNSMに貸与していた長崎テクノロジーセンター内 の300mmウェーハラインの設備、ならびに東芝がその購入後にNSMによる操業のために投資を行ったもののうち、東芝とソニーで別途譲渡につき合意する その他の設備です。 今後、東芝とソニーは半導体製造設備の譲渡に関して、譲渡対象設備の精査の手続きなどを経て、2010年度内早期に法的拘束力を有する正式契約を締結し、その後、関係当局の必要な承認及び認可を条件として2011年度初頭の譲渡実施を目指します。 NSM概要 設立:2008年3月3日 |
リチウムイオン電池正極材料の本格的事業拡大
−ベトナムでの新工場建設について−
住友大阪セメント株式会社(東京都千代田区、社長:関根
福一)は、リチウムイオン電池正極材料の需要拡大に応えるべく、リン酸鉄リチウムの年産2,000
トン能力の新工場建設を決定いたしました。投資金額は約50
億円で、2012 年上期稼動の予定です。
当社は2007 年12 月に船橋の当社事業所内に年産150
トンのパイロットプラントを導入し、性能向上や品質管理など量産検証を重ねてきました。その結果、リン酸鉄リチウムを使用した電力貯蔵用大型リチウムイオン電池を国内で唯一量産しているエリーパワー株式会社(東京都品川区、社長:吉田
博一)をはじめ、複数のユーザーを確保し、さらに昨今の電力事情やエコカー普及などを受け急激な需要拡大が確実となり、新たな大規模量産工場の建設が必要であると判断いたしました。
新工場は、2012
年上期中の稼動を計画しており、2013
年中にはフル生産の2,000
トンレベルの操業になる見込みです。建設地については、国際取引への対応やコスト低減などを考慮し、ベトナム北部の工業団地内を予定しております。また、今回手当てした土地は10,000
トンレベルまでの設備拡張が可能です。
当社は1980
年代から培ったナノ粒子合成技術による水熱合成法によりリン酸鉄リチウムを開発し、2010
年12 月には、抜群の安全性を確保しつつ性能を大幅に向上できる改良型リン酸鉄リチウムの開発にも成功し、ほぼ理論値通りの電池特性を達成しております。
今後、国内外において、CO2
削減や災害時対応につながる自然エネルギーの活用、地域内の効率的な電力利用いわゆるスマートグリッドの進展、及び、EV・PHV
といったエコカーの本格的な普及が見込まれております。それらのニーズに応えるものとして安全性と長寿命に優れたリン酸鉄リチウムの需要が急速に拡大することが想定され、各電池メーカーでも量産体制構築の動きが活発化しております。また喫緊の課題である蓄電池普及に対応するため、消防法適用のきわめて安全性の高い正極材の登場が期待されています。
更に、当社は次期正極材料として注目されている「リン酸マンガンリチウム」の開発にも成功しており、リン酸鉄リチウムの需要増に対応するだけでなく、独自のナノ粒子製造技術を活かした高性能の製品を開発することで、より一層エネルギー分野の事業拡大を推進していく方針です。
《製造子会社の概要》
名称:エスオーシー ベトナム( SOC Vietnam COMPANY
LIMITED )
所在地:ベトナム
フンイエン省イエンミー地区タンロンU工業団地
資本金:11.8 百万US ドル 住友大阪セメント100%出資
設立時期:2011 年7 月
事業内容:リチウムイオン電池正極材料の製造販売
設備能力:2,000 トン/年
稼動時期:2012 年上期
従業員数:約200 名