2026/1/19 AGC Biologics社が受託製造する遺伝子治療薬Waskyra™、米国・欧州の販売承認を取得
Waskyra™は、イタリア政府認定の非営利バイオメディカル研究団体Fondazione Telethonが開発した、ウィスコット・オルドリッチ症候群向けの希少免疫疾患治療薬です。本承認により、患者様に新たな治療の選択肢を提供することが可能となります。
Fondazione Telethon : 1990年に設立されたイタリア政府公認の非営利団体。希少かつ複雑な遺伝性疾患の治療法開発を目指すバイオメディカル研究を推進
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国立研究開発法人 国立生育医療研究センター ウィスコット・アルドリッチ症候群(Wiskott-Aldrich syndrome: WAS)は、易感染性、サイズの減少を伴う血小板減少、湿疹を3主徴とし、その他にも自己免疫疾患や悪性疾患も合併する原発性免疫不全症です。遺伝形式はX連鎖性であり、X染色体上に存在するWASP 遺伝子の変異によって引き起こされます。WASP遺伝子によりコードされるWASP(WASタンパク)は細胞骨格やシグナル伝達に重要であることが明らかになっています。
ほぼすべての患者で血小板減少が認められ、またT細胞の機能異常を中心とした免疫異常から細胞外寄生菌やウイルスへの易感染性が出現します。湿疹はアトピー性湿疹様で難治性であり、その他にも様々な自己免疫疾患(自己免疫性溶血性貧血や血管炎など)を合併します。その他に注意が必要なこととして、特に10歳以上の患者さんではリンパ腫などの悪性疾患の発症を認めるようになります。ウィスコット・アルドリッチ症候群の治療指針
支持療法
支持療法として、出血への対症療法(重大出血時の輸血)や感染症への抗菌薬、ガンマグロブリンの補充を行います。
造血幹細胞移植
感染症や出血、悪性疾患はWASの患者さんの予後を大きく低下させることから、これらの症状を呈する場合には、根治的治療が必要となります。根治的治療は造血幹細胞移植であり、これによってWASの様々な症状の改善、消失が期待できます。現在では、5歳以下で造血幹細胞移植を行った場合には、その長期生存率は良好であるとわかっています。同時に、5歳以上では様々な合併症からその成績が低下することもわかっていますので、このような場合には患者の状態や、移植のドナーの状況(HLAの一致した血縁者ドナーの有無など)を十分に検討した上で治療方針を決定します。
造血幹細胞遺伝子治療
上述したように、根治的治療である造血幹細胞移植が安全に行えない患者さんへの治療法として、近年自分の造血幹細胞(骨髄細胞)を利用した遺伝子治療が行われるようになりました。特にイタリアのグループ(本件と思われる)による治療法の報告では、7例のWAS患者さんに対して遺伝子治療が行われ、ほぼすべての患者さんで副作用を認めずに症状が改善しています。現在日本ではまだ行われていませんが、私たちはイタリアのグループとの共同研究として、このような造血幹細胞移植の最適なドナーがいない患者さんを対象とした遺伝子治療の開始に向け、準備を行っています。
Waskyra™は、患者自身の細胞を採取し、疾患の原因となる遺伝子を修正するex vivo遺伝子治療薬であり、ドナー依存や拒絶反応のリスクを回避しつつ、最小限の負担で根治を目指す革新的な治療法です。
レンチウィルスベクター:ベクターとは、目的の治療用遺伝子を細胞内に運ぶ役割をするもの(vector)。レンチウィルスベクターはベクターのうち、レンチウィルスを改変して用いるもの。


