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2008/5/1 ホンダの中国四輪車事業の移転価格税制問題

ホンダが東京国税局の税務調査を受け、2002年3月期以降の収益について中国の四輪事業で総額1,400億円を超える巨額の申告漏れを指摘された。

国税局は技術移転や設備、部品の販売、日中間の利益配分など事業全面にわたり、問題を指摘した。

   移転価格税制については
     2006/6/29
武田薬品、移転価格税制に基づく更正 (他の例も記載) 
       
     2008/2/7 
信越化学の移転価格課税 
     

これに対し、ホンダは、「中国の合弁会社との取引条件についても、日本・中国両国の法令等を遵守し、適切な取引価格が実現されるよう努め、結果得られる利益に対しては日本・中国両国において適正に納税を行っております」としている。

中国では多くの産業が、現地との合弁を義務付けられており、ホンダの子会社も地元の有力企業との共同出資である。

ホンダの中国での活動は以下の通り。

合弁会社 Honda 提携先 立地 製品 備考
広州本田汽車 50% 広州汽車 50% 広州市 第一工場 四輪車24万台/年
第二工場 四輪車12万台/年
合計 36万台/年
1999年スタート
東風本田汽車 50% 東風汽車 50%     (3段階計画)
 東風本田汽車零部件 広東省恵州市 四輪車の部品 1994年スタート
 東風本田発動機 広州市 エンジン 1998年スタート
 東風本田汽車(武漢)* 湖北省武漢市 四輪車 12万台/年 2003年*
本田汽車(中国) 65% 広州汽車 25%
東風汽車 10%
広州経済技術開発区
輸出加工区
欧州向け Jazz 5万台/年 輸出専用生産拠点
        (四輪車 合計53万台/年)  
五羊−本田摩托(広州) 50% 広州摩托集団 50% 広州市 二輪車 100万台 2006年新工場に移転
新大洲本田摩托 50% 海南新大洲摩托車47.33%
天津摩托集団 2.67%
天津市、上海市、海南市 二輪車  
嘉陵−本田発動機 70% 中国嘉陵工業 30% 重慶市 汎用エンジン、芝刈機、ポンプ  

  *東風本田汽車(武漢):東風の武漢万通汽車の50%をホンダが引受

 

中国での大規模事業の合弁契約は政府の承認が必要で、政府から条件を付けられることが多い。

ホンダの場合も政府からロイヤリティの率に制限がつけられ、これが問題になったという。

米国でProcter & Gamble IRS(国税庁)から移転価格税制(税法482条)で追加課税されたことがある。スペインのEspanaへのライセンスについて、スペインの法律で禁止されていることからロイヤリティを取らなかったのが問題となった。
この件は裁判になり、スペインの法律の規定が優先され、
P&Gの勝訴となった。

今回の場合、国税局はロイヤリティの率制限が「法律」ではなく、「行政指導」であるとして、これを認めなかった模様である。

しかし、中国政府の条件を呑まなければ事業ができない状況にあることから、これが前例となると、移転価格税制に関する問題が新たな「中国リスク」として浮上する。中国に進出する企業のほとんどが対象となる。

今回のような場合、もし日本で課税を受ければ、本来は契約を変えてロイヤリティを高くすることになるが、中国がそれを認める筈はなく、結局二重課税となってしまうこととなる。

もう一つの問題は、ホンダのJVのうちメインの広州本田と東風本田は50/50JVであることだ。

米国では海外取引だけでなく、国内取引でも移転価格税制が適用される。関係会社との取引価格は第三者との間の取引価格に調整して課税所得を計算する。(税法482条)
逆に第三者との取引価格はどんなものでも問題ない。利益が対立する第三者との間で、仮に安い価格を決めるとすると、他で何らかのメリットがあるからの筈である。(それがなければ背任となる)
この意味で、第三者との50/50のJVの場合は、移転価格税制は問題にならない。

日本の国税局は武田薬品の場合も50/50JVとの取引価格を問題とした。敢えて相手に利益を与える筈はなく、この措置はおかしい。

ーーー

別途、中国の法人税が低いことから、ロイヤリティや求償価格を低くすれば、企業にとって有利になるという背景もある。(出資比率による)

200811から新企業所得税法が施行されたが、それまでは外国企業には優遇税率が適用され、かつ「2免3減制度」で、黒字化から2年間は免税、その後3年間は税率が半分になるという恩典があった。

  一般 輸出比率7割超の企業など
中央指定の開発区  15%    10%
地方指定の開発区  24%    12%
 * 黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分

改正後でも、国内外企業に対する所得税率は25%で、日本よりはるかに低い。 

   2008/1/4 中国、新企業所得税法施行

通常は法人税率の低い国で事業をしても、配当を日本で受ける際には、日本の法人税率で課税されるため、メリットはない。
ただし、開発途上国が産業育成のために税の免除をしているのに、日本で課税されれば目的が果たせないため、途上国の場合は「みなし外国税額控除」を適用し、相手国で日本と同じ税率で納税したとみなす措置が行なわれる。

日中租税条約では中国の経済開発奨励措置に関する「みなし外国税額控除」の適用を決めているが、中国の所得税法改正後もみなし外国税額控除が適用されることが、日中両国の税務当局間で確認されている。

国税局がこの視点で企業の行動を見るという可能性もある。

ーーー

ホンダは2008年3月期の(米国会計基準に基づく)連結財務諸表で、関連負債および税金費用として800億円を計上した。
同社は、調査は現在も進行中であり、「あくまでも将来の税金費用の発生を米国会計基準の解釈指針48号に基づき見積もる」という連結財務諸表上の会計処理であるとしている。
(日本の会計原則にはこの規定はなく、単独決算には反映させていない)

米国財務会計基準審議会(FASB)は2006年6月に解釈指針第48 号「法人所得税の申告が確定していない状況における会計処理」を発表、2006年12月16日以降開始事業年度から適用することとなり、ホンダは2007年4月1日から適用している。

従来は法人所得税の不確実性は「偶発事象の会計」でカバーされ、偶発損失は発生可能性が probable(70%程度以上)で、かつ金額の合理的見積が可能な場合に認識することとなっていた。(偶発利益は認識せず)

新しい指針では、税務当局との論争が最終的に裁判所に持ち込まれた場合、申告通りとなる可能性が「50%を超える」かどうかが基準となる。


2008/5/2 2008年3月期決算 信越化学 好調

信越化学工業が4月28日に発表した3月期連結決算は、経常利益が前期に比べ21.5%増加し、当期純利益も19.2%増加した。
配当は前期の70円を90円に増やした。次期は100円を予定している。

                                   単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末

07/3

1,304,695

697,248

241,028

81,200

247,018

80,075

154,010

51,085

25.0

45.0

08/3

1,376,364

708,580

287,145

81,931

300,040

92,528

183,580

50,229

40.0

50.0

09/3

1,400,000

730,000

307,000

88,000

320,000

95,000

200,000

61,000

50.0

50.0

セグメント別営業損益は次の通り。(単位:億円)

  07/3 08/3 増減
塩ビ系 420 315 -105
シリコーン系 423 431 8
その他有機・無機 224 249 25
(有機・無機化学品) (1,067) (995) (-72)
電子材料 1,066 1,621 555
機能材料ほか 276 260 -16
全社 1 -4 -5
営業損益計 2,410 3,867 1,457

 

塩ビについては、国内は需要低迷で厳しい状況が続いた。
オランダのシンエツPVCは欧州の販売が好調で業績を伸長させた。

米国Shintechは住宅不振が影響し、前年比で経常損益が125億円減少した。
しかし、同業他社が稼働率を落とし大幅な減益や赤字に転落する中で、長年にわたり培ってきた米国および海外への顧客への販売網を活かした拡販により、フル操業を継続した結果、300億円を超える経常損益を確保した。

米国の同業他社との対比は以下の通り。(Oxy の2007年下期損益は不明)
Georgia Gulf と Polyone は年間ベースで前年の黒字から赤字に転落している。

金川社長は米国の住宅市場は引き続き厳しいとみているが、同社はLouisiana 州 Plaquemine の新工場(塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トン)の第1期(塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トン)を本年5月に稼動させる。
世界全体の需要開拓で対応し、引き続きフル稼働を狙う。

付記 2008/6/9

金川社長は9日、都内で会見し、シンテックが建設を進めてきた新工場について「7月後半に稼働する。米国市場は悪いが、幸い世界的には需要が伸びている。基本方針であるフル生産・フル販売の実現に、まったく不安はない」と、計画の推進に自信をみせた。

ーーー

半導体シリコンは携帯電話やデジタル家電用などの需要増を背景に好調で、特に300mm ウエハーの出荷が増加し、業績は大きく伸長した。
信越半導体グループ(信越半導体、SEHアメリカ、SEHマレーシア、SEHヨーロッパ、SEH台湾)の損益推移は以下の通り驚異的である。


2008/5/7  血液凝固防止ヘパリン製剤問題のその後

本年2月28日、米食品医薬品局(FDA)は、昨年12月以降に米Baxter 製のheparin 製剤を投与された448人がアレルギー反応を起こし、21人が死亡したと発表した。FDAによると、Baxter が仕入れている米国Scientific Protein Laboratories (SPL) と、同社の中国JVのChangzhou (常州SPLの原液を使ったheparin 製剤の一部から不純物が見つかった。

厚生労働省は3月10日、血液凝固防止作用があり、透析治療に不可欠なヘパリン ナトリウム製剤について、予防的な措置として、国内メーカー3社が自主回収を始めたと発表した。

    2008/3/14 血液凝固防止ヘパリン製剤 自主回収

その後米国では785人に重いアレルギーなどの副作用が確認され、少なくとも81人の死亡例がheparin との関連が疑われている。

Baxter International のRobert Parkinson CEOは4月29日、米下院のエネルギー商業委員会小委員会の公聴会で、同社の血液凝固阻止剤 heparin に不純物が意図的に混入されていたとの見方を示した。
原料が中国のSPLの工場に到着する前に不純物が混入されていたとしている。

FDAは3月にheparin に「過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)」が含まれていたと発表した。
(専門家はheparin に5%から20%含まれるOSCSがアレルギー反応を引き起こしたとの確証は得ていないとしている。)
FDAの医薬品評価研究センターは「
heparin に混入していたOSCSを検査した結果、12社の中国企業に行き着いた」と語った。

動物軟骨由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチンは軟骨という意味のギリシャ語)は関節炎治療に広く使われているサプリメントで、抗凝血性はないが、分子の改変が抗凝固性をもたらす。
コンドロイチン硫酸は通常2糖あたり1つの硫酸基を含んでいるが、2つの硫酸基を含む過硫酸コンドロイチン硫酸が見つかっている。一つはサメ軟骨中のコンドロイチン硫酸D、もう一つはイカ軟骨で見つかったコンドロイチン硫酸Eである。
今回の「過硫酸化型」は化学的に合成された可能性がある。

Heparin は通常はブタの腸などから製造されるが、OSCSを使用すると安価に製造できるという。増量のためにOSCSを混入したのではないかとみられている。
heparin
のコストが1ボンド当たり900ドルなのに対して、OSCSはたった9ドルといわれる。

中国当局はOSCSは死亡やアレルギー症状に関係ないと主張している。他の国でもOSCSの混入が見つかっているが、どこでも副作用は報告されていないとしている。

ーーー

厚生労働省は3月22日、輸入業者などが保管していた中国SPL社とドイツCKW社の原料に同じ不純物の混入が確認されたことを明らかにした。いずれも製剤にする前で流通はしなかった。

伊藤ハム子会社伊藤ライフサイエンは4月30日、輸入した原薬から微量
OSCSが検出されたとして、同社の血液抗凝固剤「パルナパリンナトリウム」約10万本を自主回収すると発表した。対象製品は1〜2月に出荷されたが卸業者の倉庫に保管されており、患者への使用はなかった。

扶桑薬品工業も5月2日、「ヘパリンナトリウム製剤」の自主回収を始めた。米国メーカーから購入した原薬中にOSCSが約0.2%混入していた。
同社は原薬の調達先がバクスターと同じだったため、3月に予防措置として自主回収し、別のメーカーの原薬で製剤化した製品を代替品として出荷していた。今回、この代替品の原薬から異物が検出された。

 


2008/5/8  公取委、塩ビ管のカルテル疑惑 刑事告発を断念 

公正取引委員会は2007年7月、上下水道に使用される塩化ビニル管を巡り違法な価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして強制調査に入った。

対象となったのは、三菱樹脂、積水化学工業、クボタシーアイ、アロン化成、信越ポリマー、前澤化成工業、ヴァンテック、日本プラスチック工業、ダイカポリマー、日本ロール製造、旭有機材工業のメーカーの11社とクボタシーアイの親会社クボタ、シーアイ化成の計13社。

     2007/7/16 塩ビ管カルテル調査l

公取委はこのたび、本件での刑事告発を見送る方針を固めた。各紙が報じた。

公取委の強制調査は刑事告発相当事案を担当する犯則審査部が令状に基づき捜索・差し押さえを行なう。

改正独占禁止法(2006年1月施行で認められた強制調査(家宅捜索)権を行使した事案では、過去3件(2006年の汚泥処理施設談合、07年の名古屋市営地下鉄談合、緑資源機構発注の林道整備調査談合)とも刑事告発していたが、4件目で初めて事件化が見送られることになる。

今回の件では公取委は、2006年の合意内容が徹底されずカルテルの実効性に疑問があるうえ、一部メーカー関係者が06年のカルテルを否認していることも考慮、告発見送りの方針を固めたとみられる。課徴金減免制度に基づく企業からの自主申告もあったとみられるが、申告企業以外のメーカーを含めたカルテルを認定するには至らなかった模様。

行政処分とは異なり、個人の刑事責任を問う刑事事件では、法廷で厳密な犯罪立証が求められる。
刑事事件では公取委が集めた証拠をそのまま使うことはできず、検察は告発を受けると証拠収集を一からやり直す必要がある。

2000年のポリプロカルテル事件では、公取委は刑事告発しようとしたが、検察が告発を受けないことを決めたという。
(本件は2001年5月に公取委が勧告を行い、これを拒否した住友化学、サンアロマー、出光興産、トクヤマに対して、公取委は2007年8月、独禁法違反の審決を出した。各社はこれを不服として抗告訴訟をしている。)

公取委は今後、事案を行政調査部門に移管し、排除措置命令などの行政処分を目指して調べを進める。

付記
公正取引委員会の伊東章二事務総長は7日の定例会見で以下の通り述べた。

塩化ビニル管のカルテル事件については、刑事告発相当の事案に該当し得ると考えて昨年7月から犯則調査を進めてきたが、刑事事件とするには難しい点があるということから告発を見送ることとした。その理由は「立証上の問題」ということで、今後,行政調査を進める。
行政事件と刑事事件では、立証すべき事項と立証の程度が異なるわけで、刑事事件とするには難しいという判断をした。

刑事告発については、告発方針を明らかにしており、その中で、例えば、国民生活に重大な影響を及ぼす悪質な事件等の基準を挙げており、そういう基準に該当し得る事件であろうと判断した。それとその事件をどこまで立証できるのか、立証のための証拠をどの程度集められるのかということは、全く別の問題。

ーーー

独禁法では行政処分である排除措置命令や課徴金と、刑事罰が併科されている。(財界はこれに反対している)

当初は「排除勧告」(2006年1月から排除措置命令)と刑事罰の二本立てであったが、制裁効果が薄いため、1977年に課徴金が導入された。
当時は売上高の1.5%で、1991年に6%に引き上げられた。
2006年に課徴金の性格を「不当利得の没収」から「違反への制裁金」に変えて10%に引き上げられ、同時に自主の場合の減免制度が導入された。この結果、課徴金=制裁金は「罰金」と同じで憲法の二重処罰禁止に抵触するとの批判が生まれた。

独禁法第89条では、第3条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者、第8条第1項第1号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの(いずれも未遂を含む)に、3年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する、と規定している。
第95条では、上記の場合、その法人に対しても、5億円以下の罰金刑を科するとしている。

企業への罰金は当初500万円であった。1992年12月改正で1億円に引き上げられた。2002年に5億円に引き上げ。

なお、企業への罰金額が確定すれば、罰金額の半額が課徴金から控除される。
課徴金納付済みの場合は、審決で課徴金納付命令の額を変更し、還付を行なう。

これらは公取委が告発することとなっており、第一審の裁判所は、地方裁判所となる。

当初は第一審は東京高裁。

独占禁止法の2005年改正により、公取委に従来よりの行政調査権の他に犯則事件についての犯則調査権が与えられることとなった。

第101条(1)、「公正取引委員会の職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し若しくは置き去った物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し若しくは置き去った物件を領置することができる。」
第102条(1)、「委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、公正取引委員会の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。」

ーーー

刑事告発は1974年に石油闇カルテル事件でなされたが、過去に行政指導で生産調整が行なわれてきた経緯もあり、最終的に生産調整カルテルは無罪、価格協定カルテルも一審では有罪だが、最高裁で一部が無罪となった。この後、17年間、刑事告発はなされなかった。

海部内閣は1990年4月、日米構造問題協議中間報告で、独禁法運用強化を施策として推進すると表明、@独禁法改正で課徴金引き上げ、A刑事告発の積極化を関係機関に指示した。
課徴金は1991年4月の独禁法改正で売上高の1.5%から6%に引き上げられた。
企業への罰金は1992年12月改正で500万円から1億円に引き上げられた。

公取委は1990年6月、次の場合には積極的に刑事処罰を求めて刑事告発を行う旨を公表した。

(1) 一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル、供給量制限カルテル、市場分割協定、入札談合、共同ボイコットその他の違反行為であって、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案
   
(2) 違反を反復して行っている事業者・業界、排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち、公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案

2005年10月、独禁法改正法の施行に伴い、公取委は以下の方針を発表した。

法改正後においても、
国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案、
違反を反復して行っている,排除措置に従わないなど行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案、
について,積極的に刑事処分を求めて告発を行うこととする。

化学業界では過去に次の例がある。

1991年 ラップフィルム価格カルテル 罰金600万〜800万円、懲役6月〜1年(執行猶予2年)
1999 ダクタイル鋳鉄管 シェアカルテル 罰金3000万〜1億3000万円、懲役6月〜10月(執行猶予2年)

1991年のラップフィルム事件は、独禁法での刑事告発としては1974年の石油闇カルテル事件以来17年ぶりのものであった。
なお、ラップフィルム価格カルテル事件判決で、東京高裁は刑事罰併科について、以下の通り述べている。

独禁法による課徴金は、一定のカルテルによる経済的利得を国が徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって、社会的公正を確保するとともに、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効性を確保するために執られる行政上の措置であって、カルテルの反社会性ないし反動特性に着目しこれに対する制裁として科される刑事罰とは、その趣旨、目的、手続等を異にするものであり、課徴金と刑事罰を併科することが、二重処罰を禁止する憲法39条に違反するものではないことは明らかである。
(2006年改正で課徴金の性格が「不当利得の没収」から「違反への制裁金」に変更したため、上記理由の前半は当てはまらなくなった)


改正独禁法により課徴金減免制度が始まったが、これを受けた場合に、刑事罰についても刑事訴追を免ずる規定はない。

これについては上記の2005年10月の公取委方針で、調査開始日前に最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の提出を行った事業者(及び調査に協力した個人)については告発を行わないこととするとした。
(但し、虚偽の報告をしたり、資料提出をしなかったり、他の事業者に対し違反行為をすることを強要したり他の事業者が違反行為をやめることを妨害していた場合は除かれる)

また、2005年独禁法改正法の国会審議では、法務省刑事局長が質問に対し、「公取委に対しては専属告発制度が認められていることの趣旨を踏まえると、公取委が刑事告発しなかったという事実を検察官は十分考慮することになるので、課徴金減免制度は十分機能することになると思われる」旨の答弁を行っている。

課徴金減免制度の本来の趣旨は、当局の探知していない談合やカルテルを申請し、摘発につながった見返りに課徴金を減免し、刑事告発を見送るというものであった。

名古屋市地下鉄談合事件では、既に地検と公取委が合同で捜査を続けていたが、立入調査前にハザマが減免申請した。
これは制度の本来の趣旨に合わないが、上記方針で減免となった。

 

参考文献 村山治(朝日新聞記者) 「市場検察」 文藝春秋
         独禁法改正の背景、経緯が詳しく述べられている。


2008/5/9 木くずからバイオディーゼル

4月17日、木屑から発生させたガスでバイオディーゼルを生産する本格的な製油所がドイツ東部で稼働を始めた。記念式典にはメルケル独首相も出席した。トウモロコシやサトウキビ原料の第一世代のバイオ燃料と異なり、食糧と競合しないため、注目を浴びている。

Choren Industries GmbH が東ドイツSaxony 州の Freiberg Biomass-to-Liquid (BtL) 工場をスタートさせた。
8〜12ヶ月でフル稼働(18百万リットル)にする。廃材や木屑など65千トン(乾燥ベース)を原料とする。

木屑などのセルロースを利用する「第二世代のバイオ燃料」(穀物・油料作物・砂糖作物を原料としないバイオ燃料)であるが、醗酵によるセルロースエタノールとは異なる。

1992年にバイオマスのガス化、精製技術改良を目的に、CHORENの前身のCRG Kohlenstoffrecycling Ges. mbH. が設立された。
創業者の
Dr. Bodo Wolf は光合成で植物に蓄えられたエネルギーの利用:「太陽をあなたの燃料タンクに」を目的とした。

現在の社名のCHOREN は次の意味を持つ。

  • C (carbon),
  • H (hydrogen) and
  • O (oxygen), that in turn we convert into
  • RENewable energy
  • 独自に開発したCarbo-V ® process を使用するもので、Daimler Volkswagen と提携し、両社が燃料のテストを行なった。
    Fischer-Tropsch Synthesis の適用ではShell と提携している。

    製品は非常にクリーンで、Daimler Volkswagen はこれを SunDiesel® と名付けた。通常のディーゼルと比較すると、有害な排出物、汚染物質を30-40% 減らすことができる。芳香族や硫黄分はほとんどゼロ。
    また、これは原料として使われるバイオマスが吸収したCO2と同量のCO2しか排出せず、最初の真のゼロエミッション燃料であるとしている。
    現在及び将来のどんなディーゼルエンジンにも改造なしで使用できる。


    Choren はBrandenburg 州Schwedt で年産能力270百万リットル(200千トン)の本格商業生産プラントを計画している。
    最終決定は2009年でFS次第であるが、実施の場合は2012年か13年スタートとなる。
    しかし、現時点ではコストは化石燃料より高く、使用には税務上のインセンティブが必要となる。
    但し、ドイツでは第二世代のバイオ燃料の免税は
    2015年までのため、法改正が望まれている。

    なお、同社はCarbo-V ® processを利用した発電の開発を進めている。

     

    付記 

    DuPont 515日、デンマークの食品材料メーカー Danisco A/S Genencor division との50/50JV DuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLC を設立し、トウモロコシ茎葉やサトウキビの絞りかすを原料とするセルロールエタノールの開発・商業化を行なうと発表した。

     


    2008/5/12 2008年3月期 注目会社決算 三菱ケミカルホールディングス

    2008年3月期には、三菱ケミカルホールディングスにはいろいろなことが起こった。

    2007年10月に田辺製薬と三菱ウエルファーマが合併して田辺三菱製薬となり、三菱化学、三菱樹脂、田辺三菱製薬の3社体制となった。(三菱樹脂は更に本年4月に再編)

    三菱化学では鹿島で火災事故が発生、長期間操業を停止した。
    田辺三菱製薬では薬害肝炎問題で補償の交渉を続けている。
    三菱樹脂が塩ビ管・継手のカルテル問題で公取委の強制調査を受けた。
    (決算短信の「追加情報」で本件により排除措置命令、課徴金納付命令等を受ける可能性があるとしている。)

    決算では売上高は大きく増加、営業損益、経常損益は減少したが、当期損益は大幅増となっている。配当も増やした。
    しかし、これにはいろいろの要素がある。
    特別利益に田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円含まれており、これを除くと実質は減益である。

    連結決算 単位:百万円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3 2,622,820 128,589 141,296 100,338 14.00
    08/3 2,929,810 125,046 128,885 164,064 16.00
    増減 306,990 -3,543 -12,411 63,726 2.00
    09/3予 3,340,000 158,000 166,000 70,000 16.00
    増減 410,190 32,954 37,115 -94,064 0.00

    法人税法の改正に伴う影響:
      有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 30億円減少
      償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 88億円減少

     

    部門別営業損益は以下の通りとなっている。(単位:億円)

      07/3 08/3 増減
    石化 282 92 -190
    機能化学 350 361 11
    機能材料 243 192 -51
    ヘルスケア 396 572 176
    サービス 106 131 26
    全社 -92 -99 -7
    営業損益合計 1,286 1,250 -35

    1)石化

     原材料価格高騰によるスプレッドの縮小が160億円、償却制度変更が40億円と、悪化要因となっている。
     このほか、鹿島の事故の影響を営業損益に82億円折り込んでいる。

     同社は2008年度を含めた事故の影響額を-47億円とみている。(損失 -187億円、保険金 140億円)
     2008年3月期には営業損益で -82億円、特別損失で -30億円、合計 -112億円を計上している。

        鹿島事故損失予想(億円)

      2008/3 2009/3 合計 科目
    減産、減販、代替品調達  - 82  -55  -137 営業損益
    プラント停止・低稼働    -20  - 20 営業外費用
     - 30    - 30 特別損失
    合計  -112  -75  -187  
    保険金    140   140 営業外収入
    差引合計  -112   65  - 47  

    なお、運休している鹿島の第2エチレンプラントの第6ナフサ分解炉の稼動が間もなく再開できる見通しとなった。
    これが再稼動すると合計8炉のうちの6炉が復帰、第2エチレンプラントのの82%までカバーされる計算となる。
      付記 5月15日再開

    第7号炉(分解能力は年7万トン)の稼動再開が認められるのは、今年秋から年末までの間となる見通しで、最新の第8炉はダメージが大きく再稼動のめどは立っていない。

    2)ヘルスケアでは2007年10月から田辺三菱製薬が発足し、旧田辺製薬分が加わった。

     三菱ケミカルの連結損益には、上期はウエルファーマ分、下期は合併した田辺三菱製薬の分が入っている。
     連結調整前では営業損益は 540億円となり、前年比では141億円の増となる。

     比較のため、田辺製薬の上期分を加えると725億円となり、前年と余り変わらない。(2009/3月期はこれがベースとなる。)

        田辺三菱製薬 営業損益(億円) 

       07/3   08/3 増減
    上期 下期
    田辺製薬  305  184  ー  
    ウエルファーマ
    →田辺三菱
     400

      540 
      141
    合計  704   725   21

    ーーー

    当期損益の内訳は以下の通りとなっている。(億円)

      07/3 08/3 増減
    経常損益  1,413  1,289   -124
    特別利益   114  1,233  1,119
    特別損失   -149   -344   -195
    税引前損益  1,378  2,178   800
    当期損益  1,003  1,641   637

    特別利益のうち、田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円と大半を占めるが、これは連結決算作成上の計算手続である。

    特別損失には上記の鹿島事故損失 30億円、田辺三菱製薬の合併関連費用 49億円が含まれている。

    なお、田辺三菱製薬では、薬害肝炎被害者を救済するための救済法が施行されたことを踏まえ、同社負担の見積り額 91億円を特別損失に計上した。

    本件では被害者と政府の和解は順次行なわれているが、メーカーとの間は依然交渉中である。
    費用のメーカー負担額については政府との交渉で決定することとなっているが、まだ決まっておらず、見積り額は今後の協議の結果で変動の可能性があるとしている。

    舛添厚生労働相は1月の薬害肝炎救済法成立時点で、費用負担については、これまでの薬害事例などを参考に「国が3分の1、企業が3分の2という比率になる」と説明している。

    サリドマイド訴訟、キノホルム(スモン)訴訟、薬害ヤコブ訴訟での和解では国が1/3、企業が2/3(66.7%)となっている。
    但し、田辺三菱製薬の元のミドリ十字が係わったHIV訴訟では国が40%、企業が60%となっている。

     2008/1/24 資料 薬害エイズ事件 


    2008/5/13 2008年3月期 注目会社決算 武田薬品工業

    売上高は増加したが、営業損益、経常損益は減少した。配当は増加。
    税引前損益は前年度の6,254億円から5,768億円に485億円減少したが、前年度に
    移転価格税制に基づく更正処分追徴税 571億円を計上したことから、当期損益は結果として増益となった。

      2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4 

    連結損益                    単位:億円(配当:円)
      売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3 13,052 4,585  (1,922 ) 5,850 3,358 128.00
    08/3 13,748 4,231  (2,758 ) 5,364 3,555 168.00
    前年比 696 -354  ( 836 ) -486 196 40.00
    09/3予 15,700 2,400  (4,850 ) 2,600 1,600 170.00
    前年比 1,952 -1,831  (2,092 ) -2,764 -1,955 2.00

    売上高は国内外における糖尿病治療薬、高血圧症治療薬が伸長し、前年比696億円増の13,748億円となった。



    売上総利益は707億円増の10,962億円となったが、販売費一般管理費が1,060億円増加し、営業利益は354億円の減益となった。
    販売費一般管理費のうち、研究費は836億円の増加となっている。研究開発費は研究活動の強化、開発活動の進捗に、米国アムジェンが保有する癌、炎症、疼痛などの疾患領域における臨床開発品目に関するライセンス料も加わった。  

     2008/2/11
    武田薬品、アムジェンとの提携を発表 

     

    なお、特別利益に関係会社株式売却益 386億円を計上した。

      ワイス(米国ワイスに)、武田キリン食品(麒麟麦酒に)、ハウスウェルネスフーズ(ハウス食品に)、
      住化武田農薬(住友化学に)譲渡  

    前年度も関係会社株式売却益で171億円、事業譲渡益で190億円を計上している。
      ワイス(一部)、三井武田ケミカルの株式
      武田食品工業(ハウスとのJVに)

    ーーー

    2009年3月期予想に関し、同社は大幅減益になると発表した。

    売上総利益は増加するが、
    ミレニアム社の子会社化に伴う研究開発費や無形固定資産の償却費等の負担により、営業損益で1,831億円、当期損益で1,955億円の減となる。
    研究開発費が前年度に比較し、2,092億円も増加する。
    買収するミレニアム(下の図参照)や
    100%子会社化するTAPファーマシューティカルの開発中の新薬候補の価値を「仕掛中の研究開発費」(IPR&D) として一括計上するもの。(但し、金額は今後、外部専門家の評価、会計監査人による監査により最終決定する。)                   

    同社は3月19日、Abbott Laboratories との50/50JVのTAP Pharmaceutical Products Inc. を均等な価値で会社分割を実施することでAbbottと合意した。同社を100%子会社とする。

          2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編 

    また、2008年4月10日、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticals, Inc.を約88億ドルで買収することを発表した。
    同社は5月9日、91.9%の応募を受け、本TOBが成立したと発表した。

    Millennium社概要

    ・1993年創立
    ・癌領域におけるリーディングカンパニー
      優れた研究開発力
      高い米国販売プレゼンス
      ブロックバスター候補の癌治療薬を持つ
    ・グルーバルなバイオ企業の中で、時価総額で上位10社にランクイン
    ・2007年12月期売上高:528百万ドル、純利益:14.9百万ドル
    ・癌領域および炎症疾患領域において有望なパイプラインを保有
    ・研究〜開発〜販売までに至る質の高いフルライン機能


    2008/5/14  2008年3月期 注目会社決算 石油化学各社

    石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、旭化成を除き、減益となっている。

    今後更にナフサ価格の高騰が続けば、一層厳しくなる。

    ーーー

    三菱化学  2008/5/12記事参照 

    ーーー 

    住友化学

    増収だが、損益面では石油化学部門の落ち込みが大きく、減益となった。

    経常損益が652億円減益となったのに対し、当期損益が308億円の減に止まっているのは、特別損益にサウジのペトロラービグの新規株式公開に伴う持分変動利益288億円があったため。(住友化学とアラムコの出資比率はそれぞれ 50%から37.5%になる)

    連結決算           単位:億円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3  17,900  1,396  1,580   939   14
    08/3  18,965  1,024   928   631   18
    増減   1,065   -372   -652  -308    4
    09/3予  20,800   950  1,000   550   18
    増減   1,835   -74    72   -81    0

    法人税法の改正に伴う影響:
      有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
      償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 17億円減少

    セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

      06/3 07/3 08/3 増減 増減理由
    基礎化学   100   135   106   -29 原料価格高騰の影響固定費増
    石油化学   179   236    45  -191 原料価格高騰、4年に一度の大型定期修繕の影響
    精密化学    98   131   114   -17 原料価格高騰の影響
    情報電子化学   217    35    63   28 偏光フィルム価格の大幅減(下期赤字)、生産能力の向上でカバー
    農業化学   166   233   209   -23 住化武田農薬との統合に伴う一時的な費用の発生
    医薬品   383   562   465   -98 研究開発費増大(来期も)*
    その他    58    80    37   -43  
    全社    7   -15   -15    0  
    合計  1,208  1,396  1,024  -372  

    * 大日本住友製薬 研究開発費
        2007/3    409億円
        2008/3    473億円(+64億円)
        2009/3予想 565億円(+92億円)
     

    情報電子化学部門の2006/3月期からの損益の落ち込みは非常に大きい。

    ーーー

    三井化学

    増収減益となった。

    連結決算           単位:億円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3  16,881   917   955   523   10
    08/3  17,867   772   661   248   12
    増減    986   -145   -293   -275    2
    09/3予  19,000   660   640   290   13
    増減   1,133   -112    -21    42    1

    法人税法の改正に伴う影響:
      有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 18億円減少
      償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 10億円減少  なお、同社は2006年3月期に建物を除き定率法に変更している。
    セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)


      2007/3 2008/3 増減 売価差 変動費差 差引 数量差 固定費差他
    機能材料   259   359   100   299   -165   134   11    -45
    先端化学品   117   108    -9    -4    -39   -43  -46    -12
    基礎化学品   531   334  -197  1,059  -1,205  -146  -21    -30
    その他    36    34    -2         -1    -1
    全社   -26   -63   -37            -37
    合計   917   772  -145  1,354  -1,409   -55   35   -125

     

    なお特別損失は、
    ・固定資産整理損・売却損 54億円、
    ・関連事業損失等 32億円(
    GEMPCなど)
    ・事業撤退損失 26億円(プラズマディスプレイパネル用光学フィルター事業終息)
    ・環境対策費用 117億円(
    三西化学工業 農薬製剤工場跡地環境対策等)
    などにより 244億円となっている。
    (特別利益は 29億円)

    ーーー

    東ソー

    増収減益となった。

    連結決算           単位:億円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3   7,813    603    580    285    8
    08/3   8,274    591    525    252    8
    増減    460    -12    -55    -33    0
    09/3予   9,000    480    470    260    8
    増減    726    -111    -55      8    0

    法人税法の改正に伴う影響:
      有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 15億円減少
      償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 34億円減少

    セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

      2005/3 2006/3 2007/3 2008/3 増減
    石油化学   107   128   140   150    10
    基礎原料   204    56    61    27   -34
    機能商品   227   266   372   380    9
    サービス    30    24    30    34    4
    合計   569   475   603   591   -12

    オレフィン、PE、クロロプレンゴム等の石油化学部門は増益となったが、VCMやPVCが中心の基礎原料部門は減益となった。

    基礎原料部門のうち自社分が19億円の悪化、関係会社分(大洋塩ビ等)が18億円の悪化(調整が+3億円)となっており、おそらくVCMとPVCがともに減益となっているとみられる。

    同部門の最盛期(2005/3)からの損益の落ち込みは非常に大きい。

    なお、同社は2009年3月期の営業損益を当期比 111億円減の 480億円とみている。

    ーーー

    旭化成

    増収で、損益面ではほぼ前期並みとなった。

    連結決算           単位:億円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
    07/3  16,238   1,278   1,265    686    5
    08/3  16,968   1,277   1,205    699    6
    増減    730     -1    -61     14    1
    09/3予  18,100   1,280   1,250    750    7
    増減   1,132     3     45     51    1

    法人税法の改正に伴う影響:
      有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
      償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 19億円減少

    セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

      2007/3 2008/3 増減 増減内訳 2009/3
    予想
    増減
    数量差 売価差 コスト差
    ケミカルズ    520    652    87    24   484   -422   600   -52
    (Life & Living)    46
    ホームズ    275    214   -61   -74   154   -141   260    46
    ファーマ    139    127   -12    56   -16    -52   160    33
    せんい    42    72    31    9    52    -30    60   -12
    エレクトロニクス    226    222    -4    24   -55    27   205   -17
    建材    50    28   -23   -23    5    -5    40    12
    Service & Eng.    39    52    13    15   ー    -2    45    -7
    全社    -58    -90   -32   ー   ー    -32   -90    0
    合計  1,278  1,277    -1    31   625   -657  1,280    3

    ケミカルズ:
    <モノマー系事業>
     原燃料価格高騰の影響を受けたが、堅調な需要を背景に市況が高騰したアクリロニトリル(AN)などを中心に、前期比増収、増益となった。
    <ポリマー系事業>
     合成ゴムなどが堅調に推移し前期比増収となったが、原燃料価格高騰の影響を受け、営業利益は前期並となった。
    <高付加価値系事業>
     リチウムイオン2次電池用微多孔膜が旺盛な需要を背景に販売量を伸ばしたことや、イオン交換膜法食塩電解プラント及びイオン交換膜の販売が好調に推移したことなどから、前期比増収、増益となった。


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